特許第5968470号(P5968470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968470レドーム用セラミック材料、レドームおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968470
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】レドーム用セラミック材料、レドームおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/584 20060101AFI20160728BHJP
   B64C 1/36 20060101ALI20160728BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C04B35/58 102B
   B64C1/36
   H01Q1/42
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-558272(P2014-558272)
(86)(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-514657(P2015-514657A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】IT2012000052
(87)【国際公開番号】WO2013124871
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514211792
【氏名又は名称】エンメビディア・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MBDA ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ・ディ・マルティーノ
(72)【発明者】
【氏名】シーティ・ディレッタ
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ・エスポージト
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭60−502053(JP,A)
【文献】 特開平10−013129(JP,A)
【文献】 特開昭61−201667(JP,A)
【文献】 米国特許第04677443(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/584
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドーム用セラミック材料であって、
0〜94%(重量%)のSi;ならびに
3.2〜5.2%(重量%)のSiO、0.7〜2%(重量%)のMgOおよび2.1〜4%(重量%)のAlを含んだ6〜10%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウム
を含んで成り、
2.5g/cm以上の密度およびXバンド、Kuバンド又はKaバンドの測定周波数帯において6.5を超えない誘電率を有している、レドーム用セラミック材料。
【請求項2】
前記密度が2.5〜2.9g/cmであり、および/または、前記誘電率がXバンド、Kuバンド又はKaバンドの測定周波数帯において5.7〜6.4である、請求項1に記載のレドーム用セラミック材料。
【請求項3】
15〜35%(Siの全重量に基づく重量%)のSiがβ−Siである、請求項1または2に記載のレドーム用セラミック材料。
【請求項4】
90%(重量%)のSi、5.1%(重量%)のSiO、1.4%(重量%)のMgOおよび3.5%(重量%)のAlを含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載のレドーム用セラミック材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のセミラック材料を含んで成るレドーム。
【請求項6】
レドームを製造するための方法であって、
0〜95%(重量%)のSi粉末、ならびに、2.5〜12.5%(重量%)のSiO、0.5〜3%(重量%)のMgOおよび2〜6%(重量%)のAlを含んだ5〜15%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウム粉末の均一混合物を形成する工程a;
少なくとも1つの有機バインダーを前記混合物に加える工程b;
前記混合物を微粉末に変えるアトマイズ処理を行う工程c;
ールドで前記微粉末を周囲温度にて等方圧加圧に付して未焼結な半製品を形成する工程d;
未焼結な半製品を機械加工して未焼結な半製品に最終形状を実質的に付与する工程e;
最終形状を付与された未焼結な半製品を熱サイクルに付す工程f;
未焼結な半製品を焼結して最終製品を得る工程g
を含んで成る、レドームの製造方法。
【請求項7】
均一混合物を形成する工程aが、
SiをSiOと混合してプレ混合物を形成するサブ工程a’;および
プレ混合物をMgOおよびAlと混合するサブ工程a”
と2つのサブ工程を含んで成る、請求項6に記載のレドームの製造方法。
【請求項8】
最終形状を付与された未焼結な半製品を熱サイクルに付す工程fが
300℃〜390℃の温度に達するまで8℃/hで昇温する工程f’;
その温度に半製品を3〜6時間おく工程f”
と2つのサブ工程を含んで成る、請求項6または7に記載のレドームの製造方法。
【請求項9】
最終形状を付与された未焼結な半製品を熱サイクルに付す工程fが、サポート、および/または、有機バインダーがピースから出ていくことを確実にするようにガスを運ぶシステムを有して成る炉において行われる、請求項6〜8のいずれかに記載のレドームの製造方法。
【請求項10】
未焼結な半製品を焼結して最終製品を得る工程gを、半製品と同じ材料から成るサポート上で実施する、請求項6〜9のいずれかに記載のレドームの製造方法。
【請求項11】
前記混合物が、
0〜94%(重量%)のSi;ならびに
3.2〜5.2%(重量%)のSiO、0.7〜2%(重量%)のMgOおよび2.1〜4%(重量%)のAlを含んだ6〜10%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウム
を含んでなる、請求項6に記載のレドームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドーム用セラミック材料、レドームおよびその製造方法(または製造プロセス)に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明は、ミサイル用途および航空宇宙用途のためのレドーム用セラミック材料、ならびに、それらに関連した製造方法に関する。
【0003】
上記のような用途に用いられる材料に対しては、高い機械的耐性、高い熱耐性および良好な誘電性の点で特に厳格な要件が求められる。
【0004】
特に、レドーム用途に用いられる材料は、広い温度範囲において最適な機械的耐性、低い誘電率を確保できるものでなければならない。
【0005】
レドーム用途に用いられる材料は、長期において空気力学的な力、大気物質および熱衝撃に対し耐えれると同時に、電磁波を透過させるものでなければならない。
【0006】
レドームを作るためにセラミック材料を使用することは知られている。
【0007】
特に、レドームを作るために、外界温度および高い温度にて良好な機械的特性を呈すると共に、熱衝撃に対して良好な耐性を呈するゆえSi(窒化ケイ素)に基づくセラミック材料を使用することは知られている。
【0008】
しかしながら、焼結工程において窒化ケイ素は大気圧下で初めに溶融または焼結することなく潰れる(break down)傾向を有し、その点で上記セラミック材料は問題を有している。
【0009】
かかる理由により、上記材料から成る物品を形成する工程は、プレス(または加圧)によって行われる。これは、プレスによる形成ではもっぱら簡易形状のみを得れるといった制限があることを意味している。それゆえ、より複雑な形状を有する物品を製造するには、引き続いてピース(piece)に対し機械加工操作を行うことを要する。
【0010】
かかる機械加工操作は、材料の良好な加工特性にもよるが、長く、複雑でコスト的に高い操作である。特に、材料の硬度が高いと、機械加工操作が複雑となり、高価なツールが必要となってくる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術の解決法として、窒化ケイ素およびケイ酸アルミン酸バリウム(BAS:Barium AluminoSilicate)を含んで成る材料が提案されている。
【0012】
しかしながら、かかる解決法では、上記材料が、高い密度を有しているので、良好な機械特性を有するものの、誘電率が高く、それゆえ、誘電性は乏しい。
【0013】
更に、かかる材料を含んだレドームの製造法は、上述した不利益を伴うものである。
【0014】
更に、航空宇宙用途として研究されている窒化ケイ素に基づいた既知のセラミック材料の大部分は、工業的な用途で問題を生じる。具体的には、かかる既知のセラミック材料の性質は、ミクロ構造およびマクロ構造の双方に厳密に関係しており、それゆえ、その組成の僅かな変化、および/または、製造方法のわずかな変化であっても、かかる材料の性質が大きくかわってしまう。
【0015】
従って、本発明の目的は、広い温度範囲において機械的耐性、熱耐性、誘電性の点で高い性能を呈するレドーム用セラミック材料を提供することである。
【0016】
更なる別の目的は、焼結問題がないレドーム用セラミック材料およびレドーム製造方法を提供することである。
【0017】
更に別の目的は、上述の機械的性質、熱的性質および誘電性を有するレドームを得ることを可能とする簡易で低廉なレドーム製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的または他の目的は、以下のレドーム用セラミック材料によって達成される。
約80〜95%(重量%)のSi;ならびに
2.5〜12.5%(重量%)のSiO、0.5〜3%(重量%)のMgOおよび2〜6%(重量%)のAlを含んだ約5〜15%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウム
を含んで成り、
2.5g/cm以上の密度および6.5を超えない誘電率を有している、レドーム用セラミック材料。
【0019】
好ましくは、誘電率の値は実質的に一定であり、あるいは、温度変動によって僅かに変わる。
【0020】
誘電率の値は、Xバンド、KuバンドおよびKaバンドにおいて測定される。
【0021】
好ましい態様では、前記密度が2.5〜2.9g/cmであり、および/または、前記誘電率が5.7〜6.4である。
【0022】
特に好ましい態様では、前記密度が2.65〜2.79g/cmであり、前記誘電率が5.9〜6.2である。
【0023】
有利には、15〜35%(重量%)のSiはβ−Siである。これによって、レドーム用セラミック材料の誘電性が向上し得る。
【0024】
レドーム用セラミック材料は、好ましくは、約90〜94%(重量%)のSi、ならびに、3.2〜5.2%(重量%)のSiO、0.7〜2%(重量%)のMgOおよび2.1〜4%(重量%)のAlを含んだ約6〜10%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウムを含んでなる。
【0025】
本発明の特に好ましい組成は、90%(重量%)のSi、ならびに、5.1%(重量%)のSiO、1.4%(重量%)のMgOおよび3.5%(重量%)のAlである。
【0026】
本発明の第2要旨に従えば、本発明は、上記セラミック材料を含んで成るレドームであって、かかるセラミック材料と同じ有利な事項(即ち、広い温度範囲において良好な誘電性のみならず良好な機械的耐性、熱耐性を有すること)を達成するレドームに関する。
【0027】
より一般的には、本発明は、上記セラミック材料を含んで成る物品が考えられる。
【0028】
本発明の第3要旨に従えば、本発明は、レドームを製造するための方法に関する。かかるレドームの製造方法は、
約80〜95%(重量%)のSi粉末、ならびに、2.5〜12.5%(重量%)のSiO、0.5〜3%(重量%)のMgOおよび2〜6%(重量%)のAlを含んだ約5〜15%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウム粉末の均一混合物を形成する工程a;
少なくとも1つの有機バインダーを前記混合物に加える工程b;
前記混合物をアトマイズする工程c;
特別なモールド(mold)で前記混合物を周囲温度にて等方圧加圧(または等方圧プレス、isostatic pressing)に付して未焼結な半製品を形成する工程d;
未焼結な半製品を機械加工して未焼結な半製品に最終形状を実質的に付与する工程e;
最終形状を付与された未焼結な半製品を熱サイクルに付す工程f;
未焼結な半製品を焼結して最終製品を得る工程g
を含んで成る、レドームの製造方法。
【0029】
かかる本発明の製造方法は既知の方法と比べて有利である。なぜなら、本発明の製造方法によって、広い温度範囲において良好な誘電性のみならず良好な機械的耐性、熱耐性を有するレドームを得ることができるからである。
【0030】
特に、本発明の製造方法の特有の工程の全体によって、セラミック材料(従って、レドーム)に上記特徴を付与するミクロ構造を得ることができる。
【0031】
更に、未焼結な半製品を機械加工するといった事項によって、機械加工性が向上し得、材料が回復し得、製造プロセスがより速いものとなり得、更には、最終製品の機械的特性が向上し得る。
【0032】
仮に仕上げ操作が焼結ピース(sintered piece)に求められるものである場合、時間および工具寿命の点で節約となり、従来技術に比して上記操作がより短いものとなり得る。
【0033】
更に、上記工程およびセラミック材料の組成の全体によって、工業用途に関連した問題を克服することができる。具体的には、プロトタイプ(または原型または試作品)のためのみならず、工業製品のために最適化されたものであるといった点で当該問題を克服することができる。
【0034】
好ましくは、均一混合物を形成する工程aが、
SiをSiOと混合してプレ混合物を形成するサブ工程a’;および
プレ混合物をMgOおよびAlと混合するサブ工程a”
と2つのサブ工程を含んで成る。
【0035】
好ましくは、均一混合物を形成する工程aでは、スラリーを形成するために混合物に水を加える工程が供される。
【0036】
有利には、等方圧加圧の工程dが、1500バール〜1800バールの圧力で実施される。
【0037】
本発明の製造方法の好ましい態様では、最終形状を付与された未焼結な半製品を熱サイクルに付す工程fが、
300℃〜390℃の温度に達するまで8℃/hで昇温するサブ工程f’;
その温度に半製品を3〜6時間おくサブ工程f”
と2つのサブ工程を含んで成る。
【0038】
好ましくは、最終形状を付与された未焼結な半製品を熱サイクルに付す工程fが、特別なサポートもしくはベース、および/または、有機バインダーがピースから出ていくことを確実にするようにガスを運ぶシステムを有して成る炉において行われる。これによって、有機バインダによってもたられる圧力に起因して半製品が壊れることを防止することができる。
【0039】
好ましくは、焼結の工程gは、1500℃〜1650℃の温度、および/または、不活性雰囲気(好ましくは窒素雰囲気)において液体相を用いて行う。
【0040】
このような温度が低いといった事項によって、プラント、それゆえ、製造方法の投資コストおよびランニング・コストを減じることができる。
【0041】
有利には、未焼結な半製品を焼結して最終製品を得る工程gを、半製品と同じ材料から成るサポート上で実施する。これによって、製品の変形を避けることができる。
【0042】
幾つかの態様では、焼結の工程gに先立って、製品の表面に酸化防止剤を適用する工程が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本発明のレドーム製造方法の工程を模式的に示している。
図2図2は、幾つかの特定の工程の間で、本発明の材料を使用して製造した物品の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明のより良い理解のため及び本発明の利点が分かるように、図面を参照しながら、本発明のレドーム用セラミック材料およびレドームの製造方法につき例示的かつ非制限的な態様を説明する。
【0045】
本発明のレドーム用セラミック材料は、窒化ケイ素に基づく材料であって、実際には約80〜95%(重量%)のSiを含んで成る。
【0046】
好ましくは、約15〜35%(重量%)のSiがβ−Siである。このような相の特定の制御された割合によって、低い誘電率が可能となり、それゆえ、レドーム用セラミック材料の誘電容量(dielectric capacity)、即ち、電磁波に透過性を有する容量が向上するといったことが実際見出された。
【0047】
特に、本発明の材料は、レドームに最適である。即ち、アンテナを保護するのに適した構造物にとって最適である。従って、「良好な誘電性」といった表現は、アンテナによって発せされる又は受信されるエネルギーに対して透過性を呈する材料容量を示している。
【0048】
本発明のレドーム用セラミック材料は、更に、2.5〜12.5%(重量%)のSiO、0.5〜3%(重量%)のMgOおよび2〜6%(重量%)のAlを含んだケイ酸アルミン酸マグネシウムを約5〜15%(重量%)含んで成る。
【0049】
好ましくは、本発明のレドーム用セラミック材料は、Siを90〜94%(重量%)、ならびに、3.2〜5%(重量%)のSiO、0.7〜2%(重量%)のMgOおよび2.1〜4%(重量%)のAlを含んだケイ酸アルミン酸マグネシウムを6〜10%(重量%)を含んで成る。
【0050】
本発明の特に好ましい組成は、90%(重量%)のSi、ならびに、5.1%(重量%)のSiO、1.4%(重量%)のMgOおよび3.5%(重量%)のAlである。
【0051】
かかる組成を用いることによって、特に望ましい結果を得ることができた。
【0052】
本発明では、本発明のレドーム用セラミック材料が、2.5g/cm以上の密度、好ましくは2.5〜2.9g/cmの密度を有している。
【0053】
かかる特徴は、材料組成と共に、材料の機械的耐性を規定する根本を成すものであり、それゆえ、航空宇宙用途に適した製品を得る根本を成すものである。
【0054】
更に、本発明のレドーム用セラミック材料の誘電率は、周囲温度およびXバンド、KuバンドおよびKaバンドにおいて、6.5を超えないものとなっており、特に5.7〜6.4となっている。
【0055】
更なる態様にて、本発明は、かかるセラミック材料を含んで成る物品に関する。特に、本発明は、かかるセラミック材料を含んで成るレドームに関する。好ましくは、それは、ミサイル用途や一般に航空宇宙用途のレドームであるものの、他の分野にも適用でき、航海・海事用途のレドームであってもよい。
【0056】
以下において、本発明のレドーム製造方法を説明する。
【0057】
本発明の製造方法では、レドームを製造するための方法であって、
約80〜95%(重量%)のSi粉末、ならびに、2.5〜12.5%(重量%)のSiO、0.5〜3%(重量%)のMgOおよび2〜6%(重量%)のAlを含んだ約5〜15%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウム粉末の均一混合物を形成する第1工程aが供される。
【0058】
好ましくは、レドーム用セラミック材料は、90〜94%(重量%)のSi、ならびに、3.2〜5.2%(重量%)のSiO、0.7〜2%(重量%)のMgOおよび2.1〜4%(重量%)のAlを含んだ6〜10%(重量%)のケイ酸アルミン酸マグネシウムを含んで成る。
【0059】
本発明の材料の特に好ましい組成は、90%(重量%)のSi、ならびに、5.1%(重量%)のSiO、1.4%(重量%)のMgOおよび3.5%(重量%)のAlである。
【0060】
かかる工程は、全ての成分を一緒に混合することによって、または、以下の順次のサブ工程(即ち、第1サブ工程a’および第2サブ工程a”)によって行ってよい。サブ工程につき、第1サブ工程a’では、SiをSiOと混合してプレ混合物を形成し、また、第2サブ工程a”では、プレ混合物をMgOおよびAlと混合する。
【0061】
双方のケースにおいて、混合は好ましくは水の添加を伴って行われる。これにより、後刻のアトマイズの工程cが助力される。別法にて、エタノールまたは他の既知の種類の溶剤を用いてもよい。
【0062】
混合は、均一化および粉末間の緊密な接触(または密接)を確実なものとすべく行われる。
【0063】
かかる混合の工程は、好ましくは、特別なミルまたはローラー・ミキサーで行われる。
【0064】
引き続いて、少なくとも1つの有機バインダーを前記混合物に加える工程bが実施される。
【0065】
バインダーは、既知の種類であってよく、例えばポリエチレングリコールであってよい。
【0066】
それは、粉末粒子間の緊密な結合を容易にする混合を助力する。
【0067】
引き続いて、工程cに従って、既知の手法で混合物がアトマイズ(または噴霧化)される。好ましくは、サイクロを備えたアトマイザーによって混合物がアトマイズされる。
【0068】
工程cを経ると、混合物は、均一であって、かつ、安定なアモルファスな分散形態を有することになる。
【0069】
引き続いて、混合物は、特別なモールドで周囲温度にて等方圧加圧(または、等静圧プレスもしくは均衡プレス、isostatic pressing)に付す(工程d)。かかる加圧は、1500〜1800バールの圧力でなされる。
【0070】
モールドは、意図された製品の形状に合う形状を有している。好ましくは、モールドは、エラストマータイプの形状に合う形状を有している。
【0071】
特定の用途においては、図2に示すように混合物に中空の円筒形状を付与すべく、モールドは円筒形状を有しており、それと同心円となるコアを備えている。
【0072】
混合物に円筒形状を導入した後、コアが導入され、そして、モールドが封止されて混合物が等方圧加圧に付される。
【0073】
得られる製品は、未焼結な半製品である。
【0074】
この時点で、工程eが実施される。つまり、未焼結な半製品を機械加工して未焼結な半製品に所望形状を付与する。これにより、図2に示すように、製品の最終形状と実質的と一致した形状となる。
【0075】
上述したように、未焼結な半製品に対して実施する工程e、即ち、より適応性(malleable)を有する製品に対して実施する工程eによって、製造方法および最終製品の特徴の点で相当な利点が得られることになる。
【0076】
従って、機械加工を経ると、半製品は、未焼結であるものの、その最終形状を実質的に有することになる。
【0077】
好ましい態様では、かかる最終形状は、円錐形状またはオージャイブ形状(ogive-shaped)である。
【0078】
引き続いて、工程fが実施される。つまり、有機バインダーを除去すべく、最終形状を付与された未焼結な半製品を熱サイクルに付す。
【0079】
それは使用される特定の組成および半製品の寸法に応じて最適化され、それは好ましくは大気下で行われる。
【0080】
好ましい態様では、熱サイクルは「徐々に昇温するサブ工程(サブ工程f’)、特に300℃〜390℃の温度に達するまで8℃/hで昇温するサブ工程」および「その達した温度に半製品を3〜6時間おく工程(工程f”)」といったサブ工程を有して成る。
【0081】
好ましくは、工程fが、特別なサポートもしくはベース、および/または、有機バインダーがピースから出ていくことを確実にするようにガスを運ぶシステムを有して成る炉において行われる。
【0082】
換言すれば、当該材料から蒸発した有機バインダーは、物品のキャビティ内にトラップされたままとなり得、それによって、変形または破壊がもたらされ得る。
【0083】
それを防止するために、炉にはグリッド(または格子)が設けられたり、あるいは、開口部を有するベースが設けられたりし、それによって、かかるバインダーの通過を可能とする。
【0084】
別法にて又は付加的に、ピースを開口部と共に位置付けることを可能とする(従って、凹面が上側を向くことを可能とする)適当なサポートを炉に設けてよい。
【0085】
別法にて又は付加的に、ガスを運ぶ更なるシステムは、移動可能なガス(motion gas)を所望の方向に向けるようなものであってよい。
【0086】
本発明の製造方法の好ましい態様では、後刻にて工程hとして、最終製品の表面に酸化防止剤を適用する。
【0087】
かかる酸化防止剤の適用は、好ましくは、スプレー処理によって行われる。
【0088】
そして、未焼結な半製品は工程gに付される。つまり、最終製品が得られるように、未焼結な半製品は焼結に付される。
【0089】
好ましくは、かかる工程gは、1500℃〜1650℃の温度、および/または、不活性雰囲気(好ましくは窒素雰囲気)にて液体相を用いて行われる。
【0090】
焼結のための熱サイクルは、特定のミクロ構造が得られるように最適化される。
【0091】
温度に加えて、材料の特定の初期の組成によって焼結動力学(sintering kinetic)は強く影響されることが見出された。
【0092】
好ましくは、焼結の工程gは、半製品と同じ材料から成るサポート上で実施される。
【実施例】
【0093】
水およびポリエチレングリコールと共に、90%(重量%)のSi、ならびに、5.1%(重量%)のSiO、1.4%(重量%)のMgOおよび3.5%(重量%)のAlをブレード・ミルで混合して、スラリーを得た。
【0094】
混合物は、アトマイズされた後、円筒形状のモールドにおいて1500バールの圧力および周囲温度で等方圧加圧に付した。
【0095】
このようにして得られた半製品は、オージャイブ形状が付与されるように、数値制御加工機によって外面を機械加工に付した。
【0096】
引き続いて、半製品は以下の熱サイクルに付した。
−300℃〜390℃の温度に達するまで8℃/hで昇温する。
−その温度を3〜6時間維持する。
【0097】
半製品は1550℃までの温度および約2時間の条件で焼成させ、最終製品を得た。
【0098】
最終製品は、標準的な実証試験に付し、以下の結果を得ることができた。
【0099】
【表1】
【0100】
ヤング率およびポアソン比に対しては、EN843−2標準のガイドラインに従って、80×10×8mmの寸法を有するピースに対して曲げ共振周波数の手法により測定を行った。
【0101】
屈曲抵抗の測定は、EN843−1標準屈曲のガイドラインに従って、ツヴィック(Zwick)Z050ユニバーサル試験機(ビームの0.5mm/分速度、上側ブレードに対する10mm距離および下側ブレードに対する20mm距離の試験機)を用いて、面取りエッジを有するバー(25×2.5×2mmの寸法を有するバー)の4つのポイントにて行った。かかる試験は5つのテスト・ピースに対して行った。
【0102】
破壊靱性の測定は、FprEN14425−3標準のガイドラインに従った曲げにおいて、シエブロンノツチ法(Chevron Notched beam method)を用いて実施した。曲げ試験は、ツヴィック(Zwick)Z050ユニバーサル試験機(ビームの0.02mm/分速度)を用いて実施した。試験は3つのテスト・ピース(25×2.5×2mmの寸法を有するピースであって、0.1mm厚さを有するブレードを用いて予め切欠きを施したピース)に対して行った。
【0103】
熱膨張係数に対しては、Netsch DIL E402膨張計を用いて、5℃/分の加熱速度および1450℃までの温度にてアルゴン流れの中で25×2.5×2mmの寸法を有するテスト・ピースに対して熱膨張試験を行った。
【0104】
誘電率の測定は、誘電材料で満たした導波管法でもって行った。
【0105】
密度測定は、焼結されたサンプルに対してASTM C373標準に従ったアルキメデス法(Archimede's method)を用いて幾何学的に行った。
【0106】
結論
得られた結果から、用いられた特定の組成および製造方法の特定の工程の組合せによって良好な機械特性、良好な熱耐性および良好な誘電特性を得ることができることが示された。
【0107】
上記の説明および特許請求の範囲において、量、パラメータおよびパーセントなどを示す全ての数値は、特に明記しない限り、いかなる場合であれ「約」といった用語と共に解釈されるべきである。更に、全ての数値範囲は、示された特定の値に加えて、最大値および最小値の考えられ得る全ての組合せならびに考えられ得る全ての中間値範囲などを示すものとされる。
【0108】
本発明のセラミック材料、レドームおよび製造方法は、偶発的なニーズおよび特定のニーズを満たすことを目的とする当業者によって、更なる変更および改変がなされる可能性がある。

図1
図2