(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態のプリント配線板10の外観の一例を
図1に示す。本実施形態のプリント配線板10は電子機器に用いられる、柔軟性を備えたフレキシブルプリント配線板(FPC)である。
【0013】
また、本実施形態のプリント配線板10は、他の電子機器のコネクタに電気的に接続される端子部TLを備える。本実施形態のプリント配線板10の端子部TLは、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介して液晶パネルに接続される端子である。
【0014】
図2は、
図1に示す破線で示す領域IIのプリント配線板10に対応し、
図1に示すII-II線に沿う部分断面図である。
図2に示すように、本実施形態のプリント配線板10は、絶縁性基材11と、絶縁性基材11の一方主面(図中+z側の主面)に形成された第1導電層12と、第1導電層12の一方主面(図中+z側の主面)の第1領域Q1に形成された第2導電層15と、第1導電層12の一方主面(図中+z側の主面)の第2領域Q2に形成された絶縁層14´とを備える。本実施形態では絶縁層14´を、接着層13と絶縁層14とを含むように構成する。本実施形態では、接着層13を形成し、その一方主面(図中+z側の主面)に絶縁層14を設ける構成としたが、接着層13と絶縁層14とは一体として形成してもよい。
【0015】
図2に示す形態では、接着層13は第1導電層12の一方主面(図中+z側の主面)の第2領域Q2に形成される。絶縁層14は、接着層13の一方主面(図中+z側の主面)を覆うように形成される。これに対し、接着層13を形成しない場合には、第1導電層12の一方主面(図中+z側の主面)の第2領域Q2には絶縁層14´が形成される。絶縁層14´は、接着層13を介在させないで、第1導電層12の一方主面(図中+z側の主面)の第2領域Q2に形成された絶縁層14に対応する。絶縁層14´は一の材質で形成され、その高さがT14´である。
【0016】
特に限定されないが、本実施形態のプリント配線板10のライン/スペース(L/S)は、50[μm]/50[μm]乃至200[μm]/200[μm]である。
【0017】
以下、各構成について説明する。
絶縁性基材11は、可撓性を有する絶縁性フィルムである。絶縁性基材11の材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド樹脂(PI)やポリエーテルイミド樹脂(PEI)等を用いることができる。特に限定されないが、絶縁性基材11の厚さは10[μm]以上120[μm]以下とすることができる。好ましくは、15[μm]以上75[μm]以下とすることができる。本実施形態においては、25[μm]のポリイミド樹脂製の絶縁性基材11を用いる。
なお、絶縁性基材11と第1導電層12との間に接着材層を形成してもよい。絶縁性基材11と第1導電層12との間に接着材層を形成したプリント配線板も、本実施形態のプリント配線板10の一態様である。
【0018】
本実施形態では、絶縁性基材11の主面に沿う平面(
図2中xy平面)上に、第1領域Q1及び第2領域Q2を設定する。プリント配線板10の幅方向(コネクタに対する接続方向に対して略垂直方向,
図2の例においては+/−y方向)と高さ方向(
図2の例においては+/−z方向)に設定された基準面Q0に対して、図中の−x側(左側)のxy面に第1領域Q1を設定し、基準面Q0の+x側(右側)のxy面に第2領域Q2を設定する。第2領域Q2は、第1領域Q1とは異なる領域である。第1領域Q1及び第2領域Q2のz軸方向の位置(z座標値)は、任意に設定できる。
【0019】
第1領域Q1は、基準面Q0に対して、外部のコネクタと接する端子部TL側(図中−x側)に設定される。第2領域Q2は、基準面Q0に対して端子部TL側とは反対側(図中+x側)に設定される。第1領域Q1と第2領域Q2とは異なる領域であり、両領域は重複しない。第1領域Q1はxy座標により定義できる。第1領域Q1はxy座標が共通する領域である。第1領域Q1は高さを持つ三次元領域として定義してもよい。この場合、xy座標に加えて、z軸に沿う任意の高さを設定し、xyz座標によりその領域を設定できる。同様に、第2領域Q2はxy座標により定義できる。第2領域Q2もxy座標が共通する領域である。第2領域Q2は高さを持つ三次元領域として定義してもよい。この場合、xy座標に加えて、z軸に沿う任意の高さを設定し、xyz座標によりその領域を設定できる。
【0020】
第1導電層12は、絶縁性基材11の一方主面上(図中+z側の主面上)であって、第1領域Q1内の少なくとも一部の領域及び第2領域Q2内の少なくとも一部の領域に設けられる。第1導電層12は、銅、銀、金、カーボンなどの導電性材料により構成される。本実施形態の第1導電層12は、銅又は銅を含む材料により構成される。第1導電層12は、第1領域Q1及び/又は第2領域Q2の全面に設けられる必要はなく、所望の配線パターンに応じて少なくとも一部の領域に形成される。第1導電層12の配線パターンは、絶縁性基材11に予め貼られた銅箔その他の金属箔の所定領域を、フォトリソグラフィー技術を用いて除去して形成できる。第1導電層12の配線パターンは、スクリーン印刷技術を用いて、導電性ペースト材料により形成してもよい。絶縁性基材11に予め貼られた銅箔は、圧延銅箔であることが好ましい。
第1導電層12は、めっきで形成してもよい。第1導電層12は、いわゆるセミアディティブ法により形成してもよい。
【0021】
特に限定されないが、第1導電層12の厚さ(z方向に沿う高さ)は3[μm]以上25[μm]以下とすることができる。好ましくは、10[μm]以上20[μm]以下とすることができる。本実施形態の第1導電層12の厚さは22[μm]である。なお、本実施形態における第1導電層12の機能は、信号線に限定されず、接点又はグランド層として機能するものを含む。
【0022】
本実施形態の第1導電層12の厚さ(図中z方向に沿う高さ)は、領域ごとに異なってもよい。本実施形態では、第1領域Q1の第1導電層12の厚さ(T12(Q1))の値は、第2領域Q2の第1導電層12(T12(Q2))の厚さの値よりも小さい。つまり、第1導電層12の端子部TLに近い第1領域Q1の厚さ(T12(Q1))は、端子部TLから遠い第2領域Q2の厚さ(T12(Q2))よりも薄い。なお、本実施形態の第1領域Q1の第1導電層12と第2領域Q2の第1導電層12とは、第1領域Q1と第2領域Q2との境界Q0において連続している。
第1領域Q1以外の領域にレジスト層を形成してエッチング処理を行うことにより、第1領域Q1の第1導電層12の厚さ(T12(Q1))を、第2領域Q2の第1導電層12の厚さ(T12(Q2))よりも薄くすることができる。なお、接着層13、絶縁層14を形成してからエッチング処理をしてもよい。この場合には、エッチング処理用のレジスト層を形成する工程を省くことができる。
また、第1領域Q1の領域にレジスト層を形成してめっき処理を行うことにより、第2領域Q2の第1導電層12の厚さ(T12(Q2))を、第1領域Q1の第1導電層12の厚さ(T12(Q1))よりも厚くすることができる。
【0023】
エッチング処理に用いるエッチング液の濃度、温度、反応速度、処理時間等のエッチング条件を設定することにより、第1導電層12のエッチング量を制御できる。これにより、第1領域Q1における第1導電層12の厚さ(T12(Q1))を所望の厚さにすることができる。
【0024】
第2導電層15は、第1導電層12の一方主面上(図中+z側の面上)であって、第1領域Q1に形成される。第2導電層15は、めっき層である。第2導電層15は、ニッケルめっき処理、金めっき処理、Ni/Au(ニッケル/金)めっき処理によって形成される。第2導電層15は、電解めっき処理により形成してもよいし、無電解めっき処理により形成してもよい。第2導電層15は、外部の電子機器との接点として機能する。第2導電層15の厚さ(z方向に沿う高さ)は、2[μm]以上20[μm]以下とすることができる。好ましくは、2[μm]以上5[μm]以下とすることができる。本実施形態の第2導電層15の厚さは2〜4[μm]である。
【0025】
接着層13は、第1導電層12の一方主面上(図中+z側の面上)であって、第2領域Q2に形成される。つまり、接着層13は、第2導電層15が形成されていない第2領域Q2に形成される。本実施形態で用いる接着剤は、アクリル系樹脂や、スチレンゴム、ポリフェニレンエーテル等を用いることができる。本実施形態で用いる接着剤は、特に限定されず、ポリアミド系の熱溶融型接着剤、ポリウレタン系熱溶融型接着剤、ポリエステル系熱溶融型接着剤、オレフィン系熱溶融型接着剤を用いることができる。特に限定されないが、接着層13の厚さは3[μm]以上25[μm]以下とすることができる。好ましくは、5[μm]以上15[μm]以下とすることができる。本実施形態においては、接着層13の厚さsを7.5[μm]とする。
【0026】
絶縁層14は、接着層13の少なくとも一部を覆う。絶縁層14は、保護層(カバーレイ)として機能する。接着層13は第2領域Q2に設けられているので、その一方主面に設けられる絶縁層14も第2領域Q2に形成される。絶縁層14の材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド樹脂(PI)やポリエーテルイミド樹脂(PEI)等を用いることができる。絶縁層14は、絶縁性基材11と同じ材料で構成することが好ましい。特に限定されないが、絶縁層14の厚さは7.5[μm]以上35[μm]以下とすることができる。好ましくは、10[μm]以上15[μm]以下とすることができる。本実施形態においては、12.5[μm]のポリイミド樹脂製の絶縁層14を用いる。
本実施形態では、接着層13と絶縁層14を設ける態様を説明するが、先述したように、接着層13を設けることなく、絶縁層14´を設けてもよい。この場合は、液状レジストを用いて絶縁層14´を構成する。
【0027】
本実施形態のプリント配線板10の作製方法は、以下のとおりである。
まず、少なくとも一方主面に第1導電層12が形成された絶縁性基材11を準備する。第1導電層12の所定領域をエッチング処理により除去して、所望のパターンの第1導電層12を形成する。第1導電層12の一方主面側(図中+z側)の第2領域Q2に任意の厚さの接着層13を形成する。この接着層13を覆うように任意の厚さの絶縁層14を積層する。接着層13を形成しない場合には、第1導電層12の一方主面側(図中+z側)の第2領域Q2に任意の厚さの絶縁層14´を形成する。この場合は、液状レジストを用いることが好ましい。この状態で第1導電層12の第1領域Q1(接着層13及び絶縁層14が形成されていない領域)にエッチング液を作用させる。エッチング液を作用させる時間を調整して、第1領域Q1の第1導電層12の厚さが所定の厚さとなるように、エッチング処理を行う。
その後、第1領域Q1の第1導電層12の一方主面側(図中+z側)にめっき液を作用させる。第1領域Q1の第2導電層15の厚さが所定の厚さとなるようにめっき液を作用させる時間を調整して、めっき処理を行う。このめっき処理により形成された第1領域Q1の第2導電層15は、外部の電子部品のコネクタとの接点として機能する。つまり、本実施形態のプリント配線板10において、第1領域Q1の最上面には第2導電層15が形成され、第2領域Q2の最上面には接着層13及び絶縁層14(又は絶縁層14´)が形成される。つまり、本実施形態のプリント配線板10において、第1領域Q1には接着層13及び絶縁層14は存在せず、第2領域Q2には第2導電層15が存在しない。本実施形態のプリント配線板10において、第1領域Q1では第2導電層15が露出するが、第2領域Q2の第1導電層12は絶縁層14(又は14´)に覆われているために露出しない。
【0028】
これらの工程を経ることにより、第1領域Q1の第1導電層12の厚さ、第2領域Q2の第1導電層12の厚さ、第1領域Q1の第2導電層15の厚さ、第2領域Q2の接着層13の厚さ、第2領域Q2の絶縁層14の厚さについて、様々な組み合わせのプリント配線板10を得ることができる。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のプリント配線板10において、外部コネクタと電気的に接続する端子部TLは、プリント配線板10の端部(先端又は末端)ではなく、一方端部と他方端部との間に形成される。つまり、外部コネクタと電気的に接続する端子部TLは、プリント配線板10の端部(先端又は末端)に形成されるものではない。つまり、本実施形態のプリント配線板10は、ZIF(Zero insertion Force)コネクタ用のように、相手方の電子部品に実装するときに先端又は末端の端子部を電子部品のコネクタ突き刺して接続する形態のプリント配線板ではない。
本実施形態のプリント配線板10の端子部TLは、
図1、
図2に示すようにxy座標に沿う面において、他の電子部品と電気的に接続される。本実施形態のプリント配線板10の端子部TLが、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)などの導電性の接着媒体を介して他の電子部品に接続される。つまり、本実施形態のプリント配線板10の端子部TLは、他の電子部品との接続時において、ACF、ACP(Anisotropic Conductive Paste)などの接着機能を備えた導電性材料を介在させた状態で圧着により接続される端子である。
本実施形態のプリント配線板10では、第1領域Q1の第2導電層15の一方主面側(図中+z側)にACF又はACPが配置され、ACF又はACPを介して、第2導電層15が他の電子部品のコネクタと電気的に接続する。
【0030】
特に限定されないが、本実施形態において、第1領域Q1の第1導電層12と第2導電層15の合計の高さ(T12(Q1)+T15)と、第2領域Q2の第1導電層12の高さ(T12(Q2)との差を0.1[μm]以下とする。さらに好ましくは、第1領域Q1の第1導電層12と第2導電層15の合計の高さ(T12(Q1)+T15)と、第2領域Q2の第1導電層12の高さ(T12(Q2)との差をゼロ、すなわち両者の高さを略等しく乃至等しくすることができる。
【0031】
第1領域Q1の端子部TLを形成するために第2導電層15を形成すると、第1領域Q1の導電層の高さは、形成しない場合よりも高くなる。端子部TLを他のコネクタに圧着させる場合には、ACF又はACPのために用いられる導電性フィラーを第2導電層15の主面に配置する。第1領域Q1の導電層の高さが高いと、圧着時において導電性フィラーが押し出されて、第1領域Q1の導電層と導電層の間に逃げてしまうことがある。導電性フィラーが押し出されると、第2導電層15と他の電子部品のコネクタとの間に必要な導電性フィラーの数(量)が不足する可能性がある。導電性フィラーの数(量)が不十分である場合には接続抵抗が非常に高くなるおそれ、さらには接続不良が発生するおそれがある。
【0032】
本実施形態では、構造的な強度とのバランスを考慮しつつ、第1領域Q1の第1導電層12と第2導電層15の合計の高さ(T12(Q1)+T15)と、第2領域Q2の第1導電層12の高さ(T12(Q2))との差を微小乃至ゼロとする。他方、第2導電層15の高さが、第2領域Q2の第1導電層12の高さよりも低い場合には、接続される電子部品のコネクタとの距離が離れてしまう。この場合には、十分な電気導電性を確保できずに導電不良を起こす可能性がある。これらの理由から、第1領域Q1の第2導電層15の表面の高さの値と、第2領域Q2の第1導電層12の表面の高さの値の差分を小さくする、さらには、両者の高さを一致させる(差分がゼロとなる)ことが好ましい。この結果、プリント配線板10と他の電子部品との電気接続性を向上させることができる。
【0033】
ところで、本実施形態のプリント配線板10は、電子機器の筐体に折り畳んで収容されることがある。このとき、プリント配線板10は屈曲される。折り曲げる力を受けることにより生じた屈曲部分には様々な応力がかかる。特に、筐体内に収容されたプリント配線板10は、長時間にわたって屈曲状態となる。
【0034】
図3は、
図2に示すプリント配線板10を折り曲げた状態を示す。
図3は、プリント配線板10が曲げられる場合の応力のかかり方の一例を模式的に示す図である。
図3のプリント配線板は、絶縁性基材11、第1導電層12、第2導電層15、接着層13、絶縁層14の多層構造を有する。このような多層構造のプリント配線板10が折り曲げられると、その内側では圧縮応力S1がかかり、その外側では引張応力S2がかかる。そして、圧縮応力S1と引張応力S2とが均衡する中心(破線Nで示す)では応力が最小となる。応力が最小となる位置に第1導電層12を配置できれば、プリント配線板10の屈曲耐性を向上させることができる。
【0035】
しかしながら、本実施形態のプリント配線板10のように、プリント配線板10の一方端部と他方端部との間に端子部TLを形成するために、一部領域において外部に露出され、接点として機能する導電層を有する構造を有する場合、つまり、物理的に一つのプリント配線板10でありながら一部に異なる積層構造を有する場合には、応力が最小になる位置を画一的に判断することができない。本実施形態のプリント配線板10のように、第1領域Q1に形成された第1積層部QB1の積層構造と、第2領域Q2(第1領域Q1とは異なる領域)に形成された第2積層部QB2の積層構造とが異なる場合には、第1積層部QB1と第2積層部QB2の積層構造における圧縮応力S1と引張応力S2とが異なる。
本実施形態のプリント配線板10のように、第1領域Q1における第1積層部QB1の積層構造と、第2領域Q2における第2積層部QB2の積層構造とが異なる構造が採用される場合には、第1積層部QB1と第2積層部QB2との境界Bで亀裂が生じる可能性も否定できない。
なお、強度を向上させるために各材料の厚さを厚くすることも考えられるが、それでは電子部品の小型化・薄型化の要請に反する。
【0036】
このように、プリント配線板10の一方端部から他方端部までの間に(端部と異なる位置に)、他の電子部品と電気的に接続される端子部TLとして機能する第2導電層15が設けられることにより、積層構造が異なる第1積層部QB1と第2積層部QB2を備えるプリント配線板10においては、薄型化の要請に応じることと、その屈曲耐性を向上させることを両立させることが困難であった。
【0037】
この課題に対し、本実施形態では、第1積層部QB1についての強度の評価値である第1評価値E1を算出し、第2積層部QB2についての強度の評価値である第2評価値E2を算出する。ここで、第1積層部QB1は、第1領域Q1に形成された第2導電層15を含み、接着層13、絶縁層14、絶縁層14´を含まない。第2積層部QB2は、第2領域Q2に形成された絶縁層14´(接着層13、絶縁層14)を含み、第2導電層15を含まない。第1積層部QB1は、第1領域Q1に対応する領域の絶縁性基材11と、その一方主面に形成された第1導電層12と、その第1導電層12の一方主面に形成された第2導電層15を含む。つまり、第1積層部QB1は、xy座標により第1領域Q1の平面上の外延を定義し、第1導電層12と第2導電層15との厚さの合計値によりz座標を定義できる。第1積層部QB1は、xyz座標により立体構造として定義される。
【0038】
第2積層部QB2は、第2領域Q2に対応する領域の絶縁性基材11と、その一方主面に形成された第1導電層12と、その第1導電層12の一方主面に形成された絶縁層14´を含む。第2積層部QB2において、接着材を使用する場合には、第1導電層12の一方主面に形成された接着層13と、その接着層13の一方主面に形成された絶縁層14を含む。つまり、第2積層部QB2は、xy座標により第2領域Q2の平面上の外延を定義し、第1導電層12と絶縁層14´の厚さの合計値(第1導電層12と接着層13と絶縁層14との厚さの合計値)によりz座標を定義できる。第2積層部QB2はxyz座標により立体構造として定義される。
本実施形態では、第1領域Q1における積層構造と、第1領域Q1とは異なる第2領域Q2における積層構造とが異なるプリント配線板10において、第1領域Q1における第1積層部の強度と、第2領域Q2における第2積層部の強度の関係を考慮することにより、薄型化を図りつつも、その屈曲耐性を向上させる。
【0039】
具体的に、本実施形態では、
図2に示す、第1領域Q1における第1積層部QB1についての強度の評価値である第1評価値E1を算出するとともに、第2積層部QB2についての強度の評価値である第2評価値E2を算出する。
【0040】
ここで、第1評価値E1は下記の式(1)を用いて求め、第2評価値E2は下記の式(2)を用いて求める。
第1評価値E1=(絶縁性基材11のヤング率×絶縁性基材11の厚さT11)+(第1導電層12のヤング率×第1導電層12の厚さT12)+(第2導電層15のヤング率×第2導電層15の厚さT15)…式(1)
第2評価値E2=(絶縁性基材11のヤング率×絶縁性基材11の厚さT11)+(第1導電層12のヤング率×第1導電層12の厚さT12)+(絶縁層14´のヤング率×絶縁層14´の厚さT14´)…式(2)
なお、第2積層部QB2において、絶縁層14´が接着層13を含まない場合には、接着層13の厚さT13はゼロになるので、上記式(2)の(絶縁層14´のヤング率×絶縁層14´の厚さT14´)=(絶縁層14のヤング率×絶縁層14の厚さT14)となる。
【0041】
第2積層部QB2において、絶縁層14´が接着層13を含む場合には、絶縁層14´の第2評価値E2を求めるにあたっては、下記式(2a)を用いる。
第2評価値E2=(絶縁性基材11のヤング率×絶縁性基材11の厚さT11)+(第1導電層12のヤング率×第1導電層12の厚さT12)+(接着層13のヤング率×接着層13の厚さT13)+(絶縁層14のヤング率×絶縁層14の厚さT14)…式(2a)
【0042】
本実施形態において、ヤング率(引張り弾性率)の計測手法は、ISO 527-1、JIS K 7127JIS K 7161などの規格に従い、出願時に知られた手法により測定する。上記の式(1)及び式(2)において用いる各材料のヤング率は、共通の測定手法により計測されることが好ましい。
そして、第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)を算出する。この評価値の比(E1/E2)が0.85以上、1.23以下であることが好ましい。本実施形態では、評価値の比(E1/E2)が0.85以上、1.23以下の範囲となるように、各部材である絶縁性基材11の厚さ、第1導電層12の厚さ、第2導電層15の厚さ、絶縁層14´の厚さ(又は接着層13の厚さ及び絶縁層14の厚さ)を調整する。
これにより、プリント配線板10の各構成部材のヤング率と厚さとを考慮しながら、プリント配線板10全体の屈曲強度を向上させることができる。この結果、屈曲耐性に優れ、信頼性の高いプリント配線板10を提供することができる。
【0043】
第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)が、0.85以上、1.14以下であることが好ましい。これにより、上記作用及び効果をさらに奏することができる。
【0044】
第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)が、0.85以上、1.04以下であることが好ましい。これにより、上記作用及び効果をさらに奏することができる。
【0045】
本実施形態では、第2領域Q2に設けられた絶縁層14´の第1領域Q1側の端部(エッジ)の形状がプリント配線板10の平面視において直線にならないように形成する。
図4(A)は、
図1において破線で示す領域IVA)領域を拡大して示す部分拡大図である。
図4(A)は、第1領域Q1と第2領域Q2との境界領域を平面視にて示す。
図4(A)は、第2領域Q2の表面に形成された絶縁層14´と第1領域Q1の表面に形成されている第2導電層15との境界部分を示す。同図に示すように、第2領域Q2に設けられた絶縁層14´の第1領域Q1側の端部を構成するエッジ14Eの形状がプリント配線板10の平面視において直線形状ではない。
【0046】
図4(B)は、
図4(A)において破線で示すIV(B)領域を拡大して示す部分拡大図である。
図4(B)に示すように、第2領域Q2に設けられた絶縁層14´(14)の第1領域Q1側の端部を形成するエッジ14Eの形状は、直線ではない。つまり、エッジ14Eの図中X方向の位置は同一ではない。エッジ14Eの図中X方向の位置は、+X側にシフトする位置と、−X方向側にシフトする位置を含む。本実施形態のエッジ14Eは、頂点を有する線形となるように形成することが好ましい。頂点の位置は、所定の規則に従う位置であることが好ましい。特に限定されないが、本実施形態のエッジ14Eの形状は、波形となるように形成することが好ましい。波形は、上弦側の頂点と下弦側の頂点を有する形状であることが好ましい。図中+X方向に凸となる頂点(極大)と図中−X方向に凸となる頂点(極小)とが交互に現れる波形とすることが好ましい。
図4(B)は、
図4(A)に示す絶縁性基材14´(14)例では、上弦側(図中+X側)の頂点と、下限側(図中−X側)の頂点を有し、これらが隣り合う波形とした。波形の形状は特に限定されず、周波数、周期、位相、波長、振幅を任意に設定できる。例えば、エッジ14Eの形状を正弦関数とし、適宜に振幅、角周波数、位相を設定してもよい。
【0047】
このように、絶縁層14´の第2導電層15に接するエッジ14Eの形状を直線とならないようにすることにより、折り曲げたときに絶縁層14のエッジ14Eにかかる応力を分散できる。特に、エッジ14Eの形状を上弦側の頂点と下弦側の頂点を有する波形とすることにより、折り曲げたときに絶縁層14のエッジ14Eにかかる応力を均等に分散できる。この結果、本実施形態のプリント配線板10の屈曲保持回数をさらに向上させることができる。
特に限定されないが、シート状の絶縁層14´の端部を波形等の直線ではない形状にカットすることにより、絶縁層14´のエッジ14Eを波型等の直線でない形状とすることができる。上述した絶縁層14´が、接着層13及び絶縁層14から構成される場合も同様である。
【0048】
以下、本発明の本実施形態における実施例を説明する。
<実施例>
以下に、本発明をさらに具体化したテストピースを用いた実施例について説明する。
本実施形態のプリント配線板10の性能を確認するために、
図2に示す構造を備え、下掲の表1に示す銅箔エッチング量とNiめっきの厚さを備えるテストピースをそれぞれ5個ずつ作製した。各テストピースについて折り曲げ試験を行い、各テストピースの屈曲耐性について評価した。
【0049】
テストピースを以下の手法により作製した。
所定の大きさで厚さ25[μm]のポリイミド樹脂製の絶縁性基材11の一方主面に厚さ22[μm]の第1導電層12(銅箔)が形成された片面銅張基材を準備した。既知のフォトリソグラフィー技術を用いて第1導電層12(銅箔)の所定領域を除去して、所定の配線を形成した。
本実施例において用いたポリイミド樹脂(PI)製の絶縁性基材11のヤング率は、7.5[GPa]であった。また、銅製の第1導電層12のヤング率は130[GPa]であった。
【0050】
続いて、予め設定した基準面Q0(
図2参照)の右側/左側のうち一方側の所定領域を第1領域Q1とし、他方側の所定領域を第2領域Q2と定義した。第1領域Q1と第2領域Q2とは同じ面積とした。
そして、第2領域Q2にカバーレイフィルム(株式会社有沢製作所製 CVA0525)を貼り合せ、接着層13、絶縁層14を成形した。本実施例において用いた接着層13の厚さT13は7.5[μm]ヤング率は、1.3[GPa]であった。絶縁層14の厚さT14は12.5[μm]であった。本実施例において用いたポリイミド樹脂製の絶縁層14のヤング率は、4.1[GPa]であった。本例において、絶縁層14´は、接着層13と絶縁層14とを含む。
【0051】
その後、硫酸と過酸化水素水を混合したエッチング液で第1導電層12(銅箔)の表面をエッチング処理した。エッチング処理の時間を制御することにより、第1導電層12(銅箔)の厚さを調整した。具体的には、エッチング量が多いほど、エッチング処理時間を延長し、エッチング量が小さいほど、エッチング処理時間を短縮して下掲の表1に示すエッチング量を実現した。なお、エッチング液は、第1導電層12の金属種に応じて適宜に選択すればよい。例えば、第1導電層12がニッケルで形成されている場合には、硝酸と硫酸とを混合したエッチング液を用いることができる。
【0052】
続いて、第1導電層12の第1領域Q1にニッケルめっきをし、第2導電層15としてのニッケルめっき層を形成した。めっき処理においては、めっき処理時間を調整することにより、第2導電層15の厚さT15を、下掲の表1に示す厚さとした。本実施例におけるニッケルめっき層(第2導電層15)のヤング率は、200[GPa]であった。
【0053】
下掲の表1に示すとおり、元々の厚さが22[μm]である第1導電層12のエッチング量(厚さの減少量)と、めっき処理によって新たに形成した第2導電層15の厚さ(厚さの増加量)とが異なる各テストピース(比較例1〜4,実施例1〜19)をそれぞれ複数ずつ作製した。
【0054】
各テストピースについて、上記(1)式を用いて第1評価値E1を算出した。同様に、各テストピースについて、上記(2)式を用いて第2評価値E2を算出した。さらに第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)を算出し、下掲表1に示した。
【0055】
また、作製した各テストピースについて、折れ曲げ試験を実施して屈曲保持回数を計測し、その結果(屈曲保持回数)とそれぞれのテストピースの断面から各層の厚さを計測し、第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)を算出し、下掲表1に示した。なお、表1では、屈曲保持回数の値を基準として各データを並び替えた。
【0056】
本実施例における折れ曲げ試験は、以下の手法により行う。
所定の方向にテストピース(プリント配線板10)を配置した。テストピースの両主面に一対の金属ブロックをそれぞれ配置した。金属ブロックは直方体である。金属ブロックの側面をテストピースの一方主面に押し付けるとともに、同じ位置において、別の金属ブロックの側面をテストピースの他方主面に押し付ける。一対の金属ブロックにより、テストピースを両面から固定する。
【0057】
本実施例のテストピースは、金属ブロックに接していない開放端部を有する。開放端部は、所定の方向に沿うテストピースの両端に存在する。この両端の開放端部には、互いに導通可能であって、外部電極に接続可能な配線端部が設けられている。この配線端部は、後述する導通試験に用いられる。
【0058】
開放端部において、テストピースの主面と金属ブロックの面は直交する。つまり、テストピースの開放端部は、金属ブロックの頂辺(角)を回転軸として左右90度、合計180度の範囲で可動する。折れ曲げ試験において、開放端部側の各テストピースの長さは共通させる。つまり、各テストピースの大きさ、金属ブロックの大きさ、テストピースを固定する金属ブロックの位置(テストピースに対する位置)は、共通する。
【0059】
金属ブロックによって固定された状態で、テストピースの開放端部を金属ブロックの頂辺(角:カド)を回転軸として、右側(一方主面側の金属ブロック側)に90度折り曲げる。続いて、テストピースの開放端部を左側(他方主面側の金属ブロック側)に90度折り曲げる。この左右への折り曲げ動作(往復動作)を1回の屈曲保持回数としてカウントする。折り曲げ動作を5回行う度に、導通試験を行う。導通試験によって導通が確認されたら、さらに折り曲げ動作を続行する。他方、導通試験によって導通が確認できなかったら、テストピースの配線は断線したと判断する。
テストピースの配線が断線したときの折り曲げ動作の回数である「屈曲保持回数」を、テストピース(プリント配線板10)の屈曲耐性を示す結果として表1に示した。屈曲保持回数が大きいほど、屈曲耐性が高いと評価できる。
【0061】
本実施例では、屈曲保持回数が10回以上であるテストピース(プリント配線板10)の実施例は、屈曲耐性が優れていると評価した。表1に、屈曲保持回数と、テストピースの評価値の比(E1/E2)との関係を示した。各テストピースに対する評価は以下のとおりである。
【0062】
表1に示す結果によれば、実施例1〜実施例19において、第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)が0.85以上、1.23以下であるときに、屈曲保持回数が10回以上という優れた屈曲耐性のプリント配線板10を得られることが分かった。
【0063】
表1に示す結果によれば、実施例2〜実施例19において、第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)が0.85以上、1.14以下であるときに、屈曲保持回数が15回以上という優れた屈曲耐性のプリント配線板を得られることが分かった。
【0064】
表1に示す結果によれば、実施例7〜実施例19において、第2評価値E2に対する第1評価値E1の比(E1/E2)比が0.85以上、1.08以下であるときに、屈曲保持回数が30回以上という優れた屈曲耐性のプリント配線板を得られることが分かった。
【0065】
また、表1に、第1領域Q1の第1導電層12及び第2導電層15の合計の厚さに対する、第2領域Q2の第1導電層12の厚さの差を示す。この厚さの差は、第2領域Q2に形成された第1導電層12の厚さ(T12(Q2))を基準としたときの、第1領域Q1に形成された第1導電層12の厚さT12(Q1)及び第2導電層15の厚さT15の合計(T12(Q1)+T15)の差である。具体的に、表1に示す「厚さの差」は、同表に示すニッケルめっき実測厚さから銅箔エッチング量を差し引いて求めた。すなわち、表1に示す「厚さの差」がマイナスの値である場合には、第1領域Q1の第1導電層12及び第2導電層15の厚さ(T12(Q1)+T15)のほうが、第2領域Q2に形成された第1導電層12の厚さ(T12(Q2))よりも薄いということになる。
【0066】
表1に示す結果によれば、実施例8〜実施例19において、第1領域Q1の第1導電層12及び第2導電層15の合計の厚さが、第2領域Q2の第1導電層12の厚さよりも薄い(差がマイナスの値)場合には、屈曲保持回数35回以上という優れた屈曲耐性のプリント配線板を得られることが分かった。
【0067】
また、表1の結果から、実施例8〜実施例19において、第2領域Q2の第2導電層15の厚さT15の値は、0[μm]よりも大きい値であり、かつ4.0[μm]以下であるときに、屈曲保持回数が35回以上という優れた屈曲耐性のプリント配線板を得られることが分かった。
表1に示す結果によれば、第2導電層15の厚さT15の値が4.0[μm]以下であるときには、第2導電層15の厚さT15の値が4.0[μm]よりも大きい場合に比べて、屈曲保持回数の値が大きくなる傾向があることが確認できた。
【0068】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【解決手段】絶縁性基材11と、絶縁性基材11の主面に沿う平面上の第1領域Q1及び第2領域Q2に設けられた第1導電層12と、第1領域Q1に形成された第2導電層15と、第2領域Q2に形成された絶縁層14と、を備え、第1領域Q1における第1積層部QB1の強度の評価値である第1評価値E1の、第2領域Q2における第2積層部QB2の強度の評価値である第2評価値E2に対する比(E1/E2)が0.85以上、1.23以下であるプリント配線板を提供する。ただし、E1=(絶縁性基材11のヤング率×厚さT11)+(第1導電層12のヤング率×厚さT12)+(第2導電層15のヤング率×厚さT15)、E2=(絶縁性基材11のヤング率×厚さT11)+(第1導電層12のヤング率×厚さT12)+(絶縁層14´のヤング率×厚さT14´)である。