(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜6の何れかに記載の易開封性積層フィルムとプロピレン系重合体層を有する被着部とからなり、該積層フィルムとプロピレン系重合体層間の熱シール構造を有することを特徴とする包装体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<プロピレン系重合体(A−1)>
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるオレフィン系重合体組成物(E)の構成成分の一つであるプロピレン系重合体(A−1)は、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されている樹脂で、通常、密度が890〜930kg/m
3程度のプロピレンの単独重合体若しくは、プロピレン共重合体、すなわち、プロピレンと共に、他の少量のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーからなる共重合体である。共重合体においては、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。このプロピレンの共重合体の定義における他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4〜20程度のα−オレフィンを例示することができる。このような他のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上のα−オレフィンを組み合わせて共重合させてもよい。
【0011】
これらプロピレン系重合体(A−1)の中でも、得られる易開封性積層フィルムの熱融着性と耐熱性のバランスから、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が110〜145℃、とくに115〜140℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
【0012】
本発明に係るプロピレン系重合体(A−1)は、後述のエチレン系重合体(B−1)、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)及び粘着付与樹脂(D−1)と混合してなるオレフィン系重合体組成物(E)がフィルム形成能を有する限り、メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)は特に限定はされないが、押出加工性の点から、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分の範囲にある。
本発明に係るプロピレン系重合体(A−1)としては、2種以上のプロピレン系重合体を組合せて使用することもできる。
本発明に係るプロピレン系重合体(A−1)は、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0013】
<エチレン系重合体(B−1)>
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるオレフィン系重合体組成物(E)の構成成分の一つであるエチレン系重合体(B−1)は、密度が900kg/m
3以上、好ましくは910〜970kg/m
3、更に好ましくは930〜970kg/m
3の範囲にある、エチレンの単独重合体若しくはエチレンと少量の炭素数が3〜10のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどとのランダム共重合体であって、いわゆる、高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、直鎖状あるいは線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)と呼ばれているエチレンの単独重合体若しくはエチレン・α−オレフィン共重合体である。
【0014】
本発明に係るエチレン系重合体(B−1)は、それぞれ単一の重合体であっても、2種以上のエチレン系重合体の組成物(混合物)であってもよい。
本発明に係るエチレン系重合体(B−1)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、前記プロピレン系重合体(A−1)、後述のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)、及び粘着付与樹脂(D−1)と混合してオレフィン系重合体組成物(E)にした際に、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分の範囲にある。
【0015】
<エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)>
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるオレフィン系重合体組成物(E)の構成成分の一つであるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)は、密度が860kg/m
3以上〜900kg/m
3未満、好ましくは860kg/m
3以上〜895kg/m
3未満のエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体である。
エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)は、好ましくは、密度が860〜895kg/m
3の範囲にあり、α―オレフィンが炭素数4〜10である少なくとも1種類であるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C1−1)及び密度が865〜875kg/m
3の範囲にあるエチレン・プロピレンランダム共重合体(C1−2)から構成される。
さらに、好ましくは、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C1−1)10〜90質量部、中でも30〜90質量部、及びエチレン・プロピレンランダム共重合体(C1−2)90〜10質量部、中でも70〜10質量部 〔但し、(C1−1)+(C1−2)=100質量部とする。〕から構成される。
なお、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C1−1)としては、下記の(c−1a)から(c−1c)の物性を少なくとも1個以上有するポリマーが望ましい。
(c1−1a)エチレン含有量が85〜93モル%である
(c1−1b)X線による結晶化度が7〜30%である
(c1−1c)示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での吸熱曲線から求めた融点が60〜90℃の範囲にある
このようなエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C1−1)として、(c1−1a)、(c1−1b)、または(c1−1c)の物性を有するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C1−1)があり、さらに(c1−1a)と(c1−1b)の物性、(c1−1a)と(c1−1c)の物性、または(c1−1b)と(c1−1c)の物性を有するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C1−1)があり、さらに(c1−1a)、(c1−1b)、と(c1−1c)の物性を有するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C1−1)がある。
また、エチレン・プロピレンランダム共重合体(C1−2)としては、同様に下記の(c1−2a)、(c1−2b)の物性の少なくともいずれかを有するポリマーが望ましい。
(c1−2a)エチレン含有量が75〜85モル%である
(c1−2b)X線による結晶化度が5%未満の範囲にある非晶性若しくは僅かに結晶性を有する
このようなエチレン・プロピレンランダム共重合体(C1−2)として、(c1−2a)、または(c1−2b)の物性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体(C1−2)があり、さらに(c1−2a)と(c1−2b)の物性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体(C1−2)がある。
これらの中では、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)としては、得られる易開封性積層フィルムの熱融着特性を考慮すると、エチレン含有量が85〜93モル%、X線による結晶化度が7〜30%及び示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での吸熱曲線から求めた融点が60〜90℃の範囲にある低結晶性のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C1−1)及び、エチレン含有量が75〜85モル%、X線による結晶化度が5%未満の範囲にある非晶性若しくは僅かに結晶性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体(C1−2)からなる組成物(混合物)が好適である。
【0016】
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)としては、前記プロピレン系重合体(A−1)、前記エチレン系重合体(B−1)及び後述の粘着付与樹脂(D−1)と混合してオレフィン系重合体組成物(E)にした際に、フィルム形成能がある限り、メルトフローレート(MFR)(ASTMD1238、190℃、2160g荷重)は、特に限定はされないが、オレフィン系重合体組成物(E)の加工性、耐油性等を考慮すると、メルトフローレート(MFR)(ASTMD1238、190℃、2160g荷重)が、好ましくは0.01〜20g/10分、更に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲のものが好適である。
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)は、例えば遷移金属化合物触媒成分、例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物と、有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンを共重合することによって得ることができる。
【0017】
<粘着付与樹脂(D−1)>
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるオレフィン系重合体組成物(E)の構成成分の一つである粘着付与樹脂(D−1)は、粘着付与剤として製造・販売されている公知の樹脂であり、具体的には、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。
脂肪族系炭化水素樹脂の例としては、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなど炭素数4〜5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0018】
脂環族系炭化水素樹脂の例として、スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などを挙げることができる。
芳香族系炭化水素樹脂の例として、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC8〜C10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種以上含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と上記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。
【0019】
ポリテルペン系樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α−ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物などを挙げることができる。
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。
スチレン系炭化水素樹脂としては、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の1種又は2種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
本発明に係るオレフィン系重合体組成物(E)を飲食品包装用の易開封性シール材料として使用する場合には、無臭性、食品衛生性、他成分との混和性などを考慮すると、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂あるいはポリテルペン系樹脂を使用することが好ましい。
【0020】
<エチレン系重合体(B−2)>
本発明の易開封性積層フィルムの中間層を構成するエチレン系重合体組成物(F)の成分の一つであるエチレン系重合体(B−2)は、密度が940〜970kg/m
3、好ましくは945〜967kg/m
3の範囲にあるエチレンの単独重合体、若しくはエチレンと少量の炭素数が3〜10のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどとのランダム共重合体であり、通常、高密度ポリエチレン(HDPE)として、製造・販売されているエチレンを主体とする重合体である。
本発明に係るエチレン系重合体(B−2)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、後述の高圧法低密度ポリエチレン(B−3)と混合してなるエチレン系重合体組成物(F)がフィルム形成能を有する限り特に限定はされないが、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分の範囲にある。
【0021】
<高圧法低密度ポリエチレン(B−3)>
本発明の易開封性積層フィルムの中間層を構成するエチレン系重合体組成物(F)の成分の一つである高圧法低密度ポリエチレン(B−3)は、密度が905〜935kg/m
3、好ましくは910〜925kg/m
3の範囲にある。
ここで、高圧法低密度ポリエチレン(B−3)は、通常、高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)として製造・販売されているエチレンの単独重合体、あるいはエチレンと少量の酢酸ビニルとの共重合体である。
本発明に係る高圧法低密度ポリエチレン(B−3)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、前記エチレン系重合体(B−2)と混合してなるエチレン系重合体組成物(F)がフィルム形成能を有する限り特に限定はされないが、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分の範囲にある。
【0022】
<エチレン系重合体(B−4)>
本発明の易開封性積層フィルムのラミネート層を構成するエチレン系重合体(B−4)は、密度が900〜950kg/m
3、好ましくは920〜940kg/m
3の範囲にあるエチレンと炭素数が4〜10のα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどとのランダム共重合体であり、通常、直鎖状あるいは線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)として製造・販売されているエチレンを主体とする重合体である。
本発明に係るエチレン系重合体(B−4)としては、エチレンと炭素数が4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。
本発明に係るエチレン系重合体(B−4)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分の範囲にある。
【0023】
ラミネート層には、上記のエチレン系重合体(B−4)と共に、これら以外のエチレン系重合体をはじめとするポリマーを併用する場合があり、その場合、他のポリマーは、一般には、ラミネート層を構成するポリマー成分の50質量%未満であり、その中でも30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
本発明に係るエチレン系重合体(B−4)には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。
かかる添加剤としては、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等を挙げることができる。また有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤等の配合もフィルム成形時、ラミネート加工時、包装作業時等における加工性や作業性の向上に有効である。
このような有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤として、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などを例示することができる。
【0024】
<オレフィン系重合体組成物(E)>
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層を形成するオレフィン系重合体組成物(E)は、
前記プロピレン系重合体(A−1)を79.8 〜94 質量%、
好ましくは81.1 〜91.3質量%、
前記エチレン系重合体(B−1)を 4 〜10 質量%、
好ましくは 5.5 〜 9 質量%、
前記エチレン・α―オレフィン
ランダム共重合体(C−1)を 1.5 〜 7.5質量%、
好ましくは 2.5 〜 7.5質量%、
及び
前記粘着付与樹脂(D−1)を 0.5 〜 2.7質量%、
好ましくは 0.7 〜 2.4質量%
〔但し、(A−1)+(B−1)+(C−1)+(D−1)=100質量%とする。〕含む組成物である。
オレフィン系重合体組成物(E)を構成する前記プロピレン系重合体(A−1)、前記エチレン系重合体(B−1)、前記エチレン・α―オレフィンランダム共重合(C−1)体及び前記粘着付与樹脂(D−1)が上記範囲を満たす組成物を用いた場合は、得られる易開封性積層フィルムは、易開封性と封緘強度のバランスに優れる。
【0025】
本発明に係るオレフィン系重合体組成物(E)には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。
かかる添加剤としてシリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等を挙げることができる。また有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤等の配合もフィルム成形時、ラミネート加工時、包装作業時等における加工性や作業性の向上に有効である。
このような有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤として、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などを例示することができる。
【0026】
本発明に係るオレフィン系重合体組成物(E)は、プロピレン系重合体(A−1)、エチレン系重合体(B−1)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)及び粘着付与樹脂(D−1)の各成分、及び任意に配合される添加剤を、同時に又は逐次的に混合することによって調製することができる。
熱融着層には、上記のプロピレン系重合体(A−1)、エチレン系重合体(B−1)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)及び粘着付与樹脂(D−1)の各成分と共に、これら以外のエチレン系重合体をはじめとするポリマーを併用する場合があり、その場合、他のポリマーは、一般には、熱融着層を構成するポリマー成分の50質量%未満であり、その中でも30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
この樹脂組成物の調製に際しては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましく、その混合順序にとくに制限は無い。
【0027】
<エチレン系重合体組成物(F)>
本発明の易開封性積層フィルムの中間層を形成するエチレン系重合体組成物(F)は、
前記エチレン系重合体(B−2)を 50〜95質量%、
好ましくは70〜92質量%、
及び
前記高圧法低密度ポリエチレン(B−3)を 5〜50質量%、
好ましくは8〜30質量%
〔但し、(B−2)+(B−3)=100質量%とする。〕
含む組成物である。
エチレン系重合体(B−2)の量が50質量%未満の組成物を中間層として用いた場合は、得られる易開封性積層フィルムの製膜性が低下したり、フィルム強度や耐熱性などイージーオープン機能以外も劣る虞があり、一方、エチレン系重合体(B−2)の量が95質量%を超える組成物を中間層として用いた場合は、得られる易開封性積層フィルムのシール強度が強くなり、完全シールなどイージーオープン性能が無くなる虞がある。
【0028】
中間層には、上記のエチレン系重合体(B−2) 及び高圧法低密度ポリエチレン(B−3)と共に、これら以外のエチレン系重合体をはじめとするポリマーを併用する場合があり、その場合、他のポリマーは、一般には、中間層を構成するポリマー成分の50質量%未満であり、その中でも30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
本発明に係る中間層を構成するエチレン系重合体組成物(F)には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。
かかる添加剤としてシリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等を含んでもよい。また有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤等の配合もフィルム成形時、ラミネート加工時、包装作業時等における加工性や作業性の向上に有効である。
このような有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤として、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などを例示することができる。
【0029】
<易開封性積層フィルム>
本発明の易開封性積層フィルムは、前記オレフィン系重合体組成物(E)から構成される熱融着層、前記エチレン系重合体組成物(F)から構成される中間層及び前記エチレン系重合体(B−4)から構成されるラミネート層からなる。
本発明の易開封性積層フィルムを構成する中間層は、前記エチレン系重合体組成物(F)から構成される限り、一層でも二層以上から構成されていてもよい。
【0030】
本発明の易開封性積層フィルムの厚さは用途により種々決定されるが、三層構成の場合は、通常、熱融着層の厚さが1〜80μm、好ましくは2〜50μm、中間層の厚さが8〜498μm、好ましくは16〜96μm、ラミネート層の厚さが1〜80μm、好ましくは2〜50μmの範囲にあり、易開封性積層フィルム全体の厚さが、10〜500μm、好ましくは20〜100μmの範囲にある。
本発明の易開封性積層フィルムは、印刷性あるいは基材層等との接着性を改良するために、ラミネート層の表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0031】
《基材層》
本発明の易開封性積層フィルムは、基材層と積層して種々用途に使用し得る。本発明の易開封性積層フィルムのラミネート層と積層される基材層は、熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、アルミニウム箔等からなる。
熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。又、かかる熱可塑性樹脂フィルムからなる基材は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであっても良いし、1種或いは2種以上の共押し出し品、押出しラミ品、ドライラミ品等の積層体であっても良い。
【0032】
又、基材層の片面あるいは両面を、本発明の易開封性積層フィルムのラミネート層との接着性を改良するために、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。基材層の厚さは、通常5〜1000μm、好ましくは9〜100μmの範囲にある。
【0033】
<易開封性積層フィルムの製造方法>
本発明の易開封性積層フィルムの製造には公知の種々公知のフィルム成形方法を採用し得る。その際、積層フィルム成形する前に、熱融着層を構成する上記組成のオレフィン系重合体組成物(E)を予め用意しておいてもよいし、プロピレン系重合体(A−1)、エチレン系重合体(B−1)、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)及び粘着付与樹脂(D−1)を所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。又、同じく中間層も前記組成のエチレン系重合体組成物(F)を予め用意しておいてもよいし、エチレン系重合体(B−2)及び高圧法低密度ポリエチレン(B−3)を所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。かかる積層フィルムは夫々別個にフィルムを成形後貼り合せてもよいが、少なくとも三層構造の多層ダイを用いて共押出し成形による方法が最も好ましい。
【0034】
<容器蓋材>
本発明の易開封性積層フィルムあるいは基材層と積層した易開封性積層フィルムは各種包装材料として使用することができる。好適な包装材料の例として、熱融着層を容器最内層として用いる容器蓋材がある。容器蓋材として用いる場合は、易開封性積層フィルムをそのまま蓋材として用いても良いし、印刷して用いても良い。更に印刷されたあるいはされていない紙、アルミ箔等と貼り合せて蓋材にしても良い。又、用途によっては予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしても良い。容器蓋材とする場合には、基材層を設けた熱融着性積層フィルムを使用するのが好ましい。
【0035】
<被着体>
本発明の易開封性積層フィルムは、各種被着体に熱融着させることにより熱シール層を形成させることができる。このような被着体としてプロピレン系重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を例示することができる。これら被着体は、フィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等、種々の形状のものであることができる。この中では特にプロピレン系重合体を被着体とすると、熱シール層の密封性、易開封性、耐熱性、耐油性などに優れており好ましい。かかるプロピレン系重合体は、プロピレン系重合体(A−1)と同一の範疇のものであるが、個々の物性は同一であっても異なっていてもよい。例えばプロピレン系重合体からなる被着体においては、被包装材料に合わせてプロピレン系重合体を公知の方法でフィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等の種々の形状に成形したものを使用することができる。フィルム若しくはシートの場合は、上記易開封性積層フィルムと同様な方法で製造し得る。トレー若しくはカップの場合は、一旦上記方法でシートを製造した後、真空成形、圧空成形等の熱成形によりトレー、カップ等の容器とすることにより製造し得る。又、カップあるいはボトルの場合は射出成形、射出中空成形(インジェクションブロー)、中空成形等により容器として成形し得る。
【0036】
<包装体>
本発明の易開封性積層フィルムを包装材料として使用する場合、易開封性積層フィルムそのものを、例えば、折りたたんで三方シールしたり、2枚の易開封性積層フィルムを四方シールして包装体としてもよいし、易開封性積層フィルムを上記各種被着体と熱シール層を形成して包装体を形成してもよい。本発明の包装体の形状は、被包装材料の形状、形態あるいは用途に応じて種々の形状を取り得る。例えば、フレキシブルな軟包装体としては、易開封性積層フィルムとプロピレン系重合体層からなる熱シール層を備えたフィルムとからなる三方シール袋に被包装材料を充填した後、口部をヒートシールしてなる四方シール包装体、プロピレン系重合体層からなる熱シール層を備えたシート、トレー、カップ、ボトル等に、被包装材料を充填した後、易開封性積層フィルムの熱融着層を最内層としてなる蓋材(シール材)で上面をシールしてなる包装体等が挙げられる。
本発明によれば、以下の包装体の製造方法を提供することができる。
すなわち、製造方法の一例としてプロピレン系重合体層からなる熱シール層を備えたプラスチック容器に内容物を収納した後、本発明の易剥離性積層フィルムを蓋材として用いて、そのオレフィン系重合体組成物(E)から構成される熱融着層と相対する面であるプラスチック容器の熱シール層とを、その両者の表面の温度を160℃〜210℃、好ましくは170℃〜200℃にして、熱融着させる方法を例示することができる。
【実施例】
【0037】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例で使用した重合体を以下に示す。
【0038】
(1)プロピレン系重合体(A−1)
(1−1)プロピレン・エチレンランダム共重合体(R−PP−1):
密度;910kg/m
3、
メルトフローレート(MFR)(230℃);9g/10分、
融点;115℃。
(1−2)プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(R−PP−2):
エチレン含有量;3.6モル%(2.4重量%)、
1−ブテン含有量;1.9モル%(2.5重量%)、
密度;910kg/m
3、
メルトフローレート(MFR)(230℃);7.2g/10分、
融点;143℃。
【0039】
(2)エチレン系重合体(B−1)
高密度ポリエチレン(HDPE−1):
密度;954kg/m
3、MFR(190℃);1.1g/10分、
融点;132℃。
【0040】
(3)エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)
(3−1)エチレン・1−ブテンランダム共重合体(EBR):
エチレン含有量;89.1モル%、
結晶化度;10%、
密度;886kg/m
3、
MFR(190℃);4.0g/10分。
(3−2)エチレン・プロピレン共重合体(EPR):
エチレン含有量;82.6モル%、
密度;870kg/m
3、
MFR(190℃);2.9g/10分。
【0041】
(4)粘着付与樹脂(D−1)
水素添加芳香族炭化水素樹脂(アルコン)(荒川化学(株)製、商品名:アルコンP115、環球法軟化点115℃)
【0042】
(5)エチレン系重合体(B−2)
高密度ポリエチレン(HDPE−2):
密度;954kg/m
3、
MFR(190℃);1.1g/10分、
融点;132℃。
(6)高圧法低密度ポリエチレン(B−3)
高圧法低密度ポリエチレン(HP―LDPE):
密度;917kg/m
3、
MFR;7.2g/10分。
(7)エチレン系重合体(B−4)
直鎖状あるいは線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)
エチレン・4−メチル−1−ペンテンランダム共重合体(これは、L−LDPEに属する。):
密度;935kg/m
3、
MFR;2.3g/10分、
融点;124℃。
【0043】
本発明の実施例及び比較例で得た熱融着性積層フィルムの物性は、以下の方法で測定した。
(1)易剥離性の評価
易剥離性を評価するために、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタ−トフィルム(PET)に、各実施例、比較例で得られたフィルムのコロナ処理を施した面にウレタン系接着剤を用いてドライラミネ−ションにより積層した積層フィルムを準備し、熱シール層として厚さ300μmのポリプロピレンシ−トを準備した。
ついで、各積層フィルムの熱融着層とポリプロピレンシ−トを重ね合わせ、表1に記載の所定の温度で、幅5mmのシ−ルバ−を用い、0.2MPaの圧力で1秒間シ−ルした後放冷した。その後ヒートシールした試験片を高温高圧殺菌装置(レトルト処理装置)を用いて、115℃で30分間処理した後、試験片を冷却した。これから15mm幅の試験片を切り取りクロスへッド速度500mm/分でヒ−トシ−ル部を剥離し、その強度をヒ−トシ−ル強度(N/15mm)とした。
【0044】
易剥離性の評価は、ヒートシール強度が15.0N/15mmを超えなく、凝集剥離傾向のある層間剥離で糸引きや膜状に汚く剥がれないものを○とした。ヒートシール強度が剥離状態が問題なくとも15.0N/15mmを超えるものを△とした。ヒートシール強度が15.0N/15mmを超えて完全シール傾向になるものを×とした。
【0045】
(2)簡易的封緘性の評価(簡便的に充填した果肉ゼリーの実包品)
易剥離性を評価するために作成したラミ品を蓋材とし、市販果肉ゼリーなどに利用されているPP系バリア容器(PP/接着層/EVOH/接着層/PP)を使用して、封緘性を評価した。内容物は市販されている果肉ゼリーの内容物を60℃に加温して溶かし、測定する容器に移し、ラミ品を蓋材としてカップシーラーを用いて温度185℃、時間1.0秒×1回、実圧1600N/カップでヒートシールした。ヒートシールした直後に内容物が60℃程度に保持されている状態で蓋材の上面に粘着テープ付きのゴムシート片を貼り付け、このシート面から針を差し込み常温下で内圧をかけて、蓋材シール部分から剥離もしくはエッジ切れし開封した時の強度を封緘強度(Mpa)とした。この測定は株式会社サン科学社製の封緘強度測定器(JIS-Z0238準拠)を用いて評価した。
封緘評価は、強度の平均値が0.045MPa以上のものを○、平均値が0.045MPa未満のものを△とした。
【0046】
(3)総合評価
総合的な評価としては、剥離状態が糸引きや膜状に汚く剥がれないもので且つヒートシール強度が15.0N/15mmを超えなく、封緘強度の平均値が0.045MPa以上ものを◎とした。剥離状態が糸引きや膜状に汚く剥がれたり完全シール傾向にあるヒートシール強度が20N/15mmを超えて強いものは×とした。ヒートシール強度が15.0N/15mmを超えて強いか、又は封緘強度が0.045MPa以下のものは△とした。
【0047】
[実施例1〜5]
熱融着層として、前記R−PP−1、R−PP−2、HDPE−1、EBR、EPR、及びアルコンを表1に記載の配合量で調整したオレフィン系重合体組成物(E)を用い、中間層として前記HDPE−2を85質量%及び前記HP−LDPE;15質量%とをドライブレンドしたエチレン系重合体組成物(F)を用い、ラミネート層として前記L−LDPEを用い、夫々別々の押出機に供給し、Tダイ法によって熱融着層/中間層/ラミネ−ト層となる構成の三層共押出フィルムからなる積層フィルムを成形し、ラミネ−ト層にコロナ処理を施して易開封性積層フィルムを得た。易開封性積層フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みは熱融着層/中間層/ラミネ−ト層=5.0/40.0/5.0μmであった。
得られた易開封性積層フィルムの物性を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1〜3]
熱融着層として、前記R−PP−1、R−PP−2、HDPE−1、EBR、EPR、及びアルコンを表1に記載の配合量で調整したオレフィン系重合体組成物、中間層として前記HDPE−2を85質量%及び前記HP−LDPE;15質量%とをドライブレンドしたエチレン系重合体組成物を用い、ラミネート層として前記L−LDPEを用い、夫々別々の押出機に供給し、Tダイ法によって熱融着層/中間層/ラミネ−ト層となる構成の三層共押出フィルムからなる積層フィルムを成形し、ラミネ−ト層にコロナ処理を施して易開封性積層フィルムを得た。易開封性積層フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みは熱融着層/中間層/ラミネ−ト層=5.0/40.0/5.0μmであった。
得られた易開封性積層フィルムの物性を前記記載の方法で測定した。結果を表2に示す。
[比較例4]
熱融着層として、前記R−PP−1、R−PP−2、HDPE−1、EBR、EPR、及びアルコンを表1に記載の配合量で調整したオレフィン系重合体組成物、中間層として100質量%の前記HDPE−2からなるエチレン系重合体組成物を用いた以外は、比較例1〜3と同様の積層フィルムを得た。その結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1に示すように、実施例1〜5で得られた易開封性積層フィルムはヒートシール強度は10〜15N/15mm程度と開封しやすい強度で剥離状態も糸引きや膜引きがなくきれいな状態であり、封緘強度は内容物が60℃程度と高温状態であるにも関わらず高い封緘強度であった。
それに対し、表2に示すように、比較例1〜4で得られた易開封性積層フィルムでは、ヒートシール強度は18〜38N/15mm程度と高くイージーオープンフィルムとしては適切でなかったり、また封緘強度が弱く内容物が高温状態で移送された場合、移送中に漏れが起きる可能性がある。