特許第5968558号(P5968558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5968558-亜鉛リジン錯体 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968558
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】亜鉛リジン錯体
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/76 20060101AFI20160728BHJP
   C07C 227/18 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20160728BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160728BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20160728BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20160728BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20160728BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20160728BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   C07C229/76
   C07C227/18
   A61K8/44
   A61Q19/00
   A61Q15/00
   A61Q19/10
   A61Q5/02
   A61Q5/12
   !C07F3/06
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-549326(P2015-549326)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-508978(P2016-508978A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2012070498
(87)【国際公開番号】WO2014098818
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002611
【氏名又は名称】コルゲート・パーモリブ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】パン・ロン
(72)【発明者】
【氏名】シャオタン・ユエン
(72)【発明者】
【氏名】ジャイラジ・マッタイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ジー・マスターズ
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−191416(JP,A)
【文献】 Ieva O. Hartwell, John C. BailarJr.,Preparation and characterization of tyrosine and lysine metal chelate polyesters and polyamides,Journal of the American Chemical Society,1970年,92 (5),1284-1289
【文献】 王賢賢,Research of synthesis process for new type laminine antihypertensives,化学工業与工程技術(Journal of Chemical Industry & Engineering),2012年 4月,33 (2),p.38-40
【文献】 LI Qun(李群) et al.,Progress in study of zinc L-lysinate chelate,APPLIED CHEMICAL INDUSTRY(応用化工),2010年,39 (3),P441-443,446
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[Zn(C14Cl]Clを有する亜鉛リジン錯体。
【請求項2】
結晶形である請求項1に記載の亜鉛リジン錯体。
【請求項3】
水和物形である請求項1または2に記載の亜鉛リジン錯体。
【請求項4】
式[Zn(リジン)Cl]Cl・2HOを有する水和物の形である請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜鉛リジン錯体。
【請求項5】
略立方晶系結晶形である請求項1〜4のいずれか一項に記載の亜鉛リジン錯体。
【請求項6】
Znカチオンは、エカトリアル面において2つのリジン配位子のアルファNH基由来の2つの窒素原子および該2つのリジン配位子のカルボキシル基由来の2つの酸素原子でもって2つのリジン配位子により配位された構造を有し、そのアピカル位が塩素原子に占められた歪んだ四角錘ジオメトリーを有して正のカチオン部分を形成しており、それと塩素アニオンが組合わさってイオン性塩を形成している請求項1〜5のいずれか一項に記載の亜鉛リジン錯体。
【請求項7】
実質的に図1に示された2つのパターンのうちの1つに対応する粉末X線回折パターンを有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の亜鉛リジン錯体。
【請求項8】
水で希釈していき酸化亜鉛沈殿物を形成する請求項1〜7のいずれか一項に記載の亜鉛リジン錯体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の亜鉛リジン錯体を美容的に許容される担体と組合せて含む皮膚に適用するためのパーソナルケア組成物。
【請求項10】
水で希釈した際に酸化亜鉛沈殿物を提供する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の重量あたり0.05〜40%の量で亜鉛リジン錯体を含む請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
総量0.05〜10重量%の亜鉛を含む請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記美容的に許容される担体が10%未満の水、もしくは5%未満の水を含むまたは無水である請求項9〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
美容的に許容される担体は、水溶性アルコール;グリコール;グリセリド;中鎖から長鎖有機酸、アルコールおよびエステル;界面活性剤;付加的なアミノ酸;構造化剤;皮膚軟化剤;フレグランス;および、着色剤から選択される1つまたはそれ以上の成分を含む請求項9〜13のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項15】
制汗剤および/またはデオドラントである請求項9〜14のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項16】
ボディウォッシュ、シャワージェル、固形石けん、シャンプー、またはヘアコンディショナーである請求項9〜13のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項17】
請求項9〜16のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物を皮膚に適用することを含む汗臭および/または体臭を低減させる方法。
【請求項18】
水性溶液中で酸化亜鉛および塩酸リジンを組み合わせることおよび前記水性溶液から亜鉛リジン錯体を沈殿させることを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の亜鉛リジン錯体を製造する方法。
【請求項19】
モル比ZnO:リジン・HClが1:1〜1:3の、酸化亜鉛および塩酸リジンを組み合わせる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記亜鉛リジン錯体が、逆溶剤、水性エタノールから又は噴霧乾燥により結晶化される請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記亜鉛リジン錯体が、酸化亜鉛および塩酸リジンからその場で、全部または一部として形成される請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
汗を減少させるためのおよび/または体臭を軽減させるための請求項1〜8のいずれか一項の亜鉛リジン錯体の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
[0001]
アルミニウムまたはアルミニウム/ジルコニウム塩に基づく制汗剤は既知である。これらの物質は、小孔を塞ぎ、それにより汗の放出を妨げることによって、制汗剤として機能する。アルミニウムまたはアルミニウム−ジルコニウム塩を含有する制汗剤組成物は、これらの塩が時間とともに重合して約500〜約500,000g/molの範囲の分子量を有する化学種を形成する傾向がある。一般に、より低分子量の化学種は、より高分子量の化学種よりもより大きな制汗作用を有する。理論に拘泥されるものではないが、より小さな分子は、より容易にかつより効果的に汗孔を塞ぎ、それにより、所望の制汗作用が奏されると考えられる。比較的低い分子量を維持して過度の重合を避けることは、制汗作用を高めて、発汗を制御するのに必要な制汗性の塩の量を減少させる。
【0002】
[0002]
腕の下のデオドラントは、臭気の原因となる細菌を排除することによって、臭気をコントロールする。従来の制汗性の塩は、水性溶液中で酸性を示す傾向があり、この特徴はそれらを効果的な殺菌剤とし、それによりデオドラント利益を提供するが、皮層刺激の原因ともなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]
汗を妨げるために小孔を塞ぐことができるサイズの分子量の錯体を与える、デオドラント/抗菌剤効能を提供する、および従来の制汗剤における酸性塩よりも皮膚を刺激しない、更なる制汗性活性薬剤についての要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(本発明の簡単な説明)
[0004]
本発明は、酸化亜鉛および塩酸リジンの混合物から形成される亜鉛リジン錯体(本文中ZLCと称することがある)を提供する。ZLCの化学構造は[Zn(C14Cl]Clである。この塩は、商用の制汗性の塩と競合可能とする重要な特徴(例えば、伝導度、加水分解反応およびタンパク質凝集)を有する。
【0005】
[0005]
既存のアルミニウムまたはアルミニウム・ジルコニウム制汗性の塩のように、ZLCは、発汗状況下で、小孔を塞いで汗の放出を妨げることができる沈殿物を形成する。タンパク質の存在下で、ZLCは凝集して汗腺を塞ぐ。水分量が増加するにつれて、イオン結合型錯体の場合に典型的にそうであるように、溶液として溶液に溶け込む又は溶液中に残ってより希薄になるというよりはむしろ、ZLC錯体は加水分解して、比較的不溶性の酸化亜鉛沈殿物を与え、それにより、さらなる小孔の閉塞を可能にし、および/または皮膚に酸化亜鉛の制御された沈着を可能にする。小孔からの汗の放出を妨げる沈殿物を与えることに加えて、亜鉛は抗菌性であり、それで、臭気の原因となる細菌を減少させることによってデオドラント利益を提供する。最後に、ZLCはほぼ中性pHの配合物中で提供でき、これは、pHに関して現在使用されている制汗性の塩または現行のデオドラント配合物よりも皮膚のpHにより近い。
【0006】
[0006]
かくして、本発明は、ZLC自体を提供し、ならびにZLCを皮膚に送達するパーソナルケア製品、およびZLCを製造する方法および使用方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、ZLCを含む制汗性またはデオドラント組成物を提供する。ZLCの抗菌剤特性のため、本発明はまた、ZLC、例えば錯体1(以下参照のこと)および/またはその前駆物質のいずれかを含む、皮膚に適用するための他のパーソナルケア組成物、例えばハンドソープまたはボディウォッシュも包含する。本発明は、当該組成物を皮膚に適用することを含む発汗を減少させる方法、および細菌を当該組成物と接触させることを含む殺菌方法をさらに提供する。
【0007】
[0007]
本発明の応用性のさらなる領域は、以下に提供される詳しい説明から明らかとなるであろう。詳しい説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、例示を目的とするだけのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。
【0008】
(図面の簡単な説明)
[0008]
本発明は、詳しい説明および添付の図面からより詳細に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、研究所で合成したZLC粉末の粉末x線回折(PXRD)(上)、およびZLC単結晶のPXRD(下)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳しい説明)
[0009]
以下の好ましい実施形態(複数の実施形態)に関する説明は、性質上単なる例示であり、いかようにも本発明、その応用もしくは使用を限定することを意図するものではない。
【0011】
[0010]
したがって、本発明は、第一の実施形態において、式[Zn(C14Cl]Clを有する亜鉛リジン錯体(本文中、「ZLC」と称することもある)を提供する。例えば、以下を提供する:
1.1.例えば、モル比ZnO:リジン・HClが1:1〜1:3、例えば約1:2の酸化亜鉛および塩酸リジンの混合物から形成される、錯体1。
1.2.結晶形の錯体1または錯体1.1。
1.3.水和物形の前記錯体のいずれか。
1.4.式[Zn(リジン)Cl]Cl・2HOを有する水和物形の前記錯体のいずれか。
1.5.分子量464.4g/molのC1232ClZnを有する前記錯体のいずれか。
【0012】
1.6.略立方晶形の前記錯体のいずれか。
1.7.Znカチオンが、エカトリアル面において2つのリジン配位子のアルファNH基由来の2つの窒素原子および該2つのリジン配位子のカルボキシル基由来の2つの酸素原子でもって該2つのリジン配位子により配位された構造を有し、そのアピカル位が塩素原子に占められた歪んだ四角錘ジオメトリーを有して、正のカチオン部分を形成し、それと塩素アニオンが組合わさってイオン性塩を形成する、前記錯体のいずれか。
1.8.実質的に、図1で表される2つのパターンのうちの一方に対応する粉末X線回折パターンを有する前記錯体のいずれか。「実質的に対応する」は、当業者には、例えば、相対強度およびピーク間の間隔に関するその全体的なパターンに基づき、器械およびサンプル変動、例えばX線源による波長および強度の変動およびサンプルの純度の変動を考慮して、その結晶が同一であること、又はその大部分がそのZLC結晶で構成されることを示す対応を意味する。
1.9.水性エタノールから結晶化した場合の、前記錯体のいずれか。
1.10.水で希釈していく際に酸化亜鉛沈殿物を形成する、前記錯体のいずれか。
【0013】
[0011]
さらなる実施形態において、本発明は、ZLC、例えば上記した錯体1等のいずれかを美容的に許容される担体と組合せて含む、皮膚に適用するためのパーソナルケア組成物(組成物2)を提供する。例えば、本発明は以下を提供する:
2.1.モル比ZnO:リジン・HClが1:3〜1:1、例えば約1:2の酸化亜鉛および塩酸リジンを含む、組成物2。
2.2.ZLCがエタノールから結晶化された、前記組成物のいずれか。
2.3.ZLCが、酸化亜鉛および塩酸リジンからその場(in situ)で、全部または一部として、形成される、前記組成物のいずれか。
2.4.水による希釈の際に、ZLCが酸化亜鉛沈殿物を与える、前記組成物のいずれか。
2.5.使用の際に、皮膚に酸化亜鉛沈殿物を与える、前記組成物のいずれか。
2.6.組成物の重量あたり0.05〜40%の量でZLCを含む、前記組成物のいずれか。
2.7.組成物に存在する亜鉛の総量が0.05〜10重量%である、前記組成物のいずれか。
【0014】
2.8.美容的に許容される担体が、10%未満の水、例えば5%未満の水を含む、例えば実質的に無水である、前記組成物のいずれか。
2.9.美容的に許容される担体が、水溶性アルコール(例えば、エタノールを含むC2−8アルコール);グリコール(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびそれらの混合物を含む);グリセリド(モノ−、ジ−およびトリグリセリドを含む);中鎖から長鎖有機酸、アルコールおよびエステル;界面活性剤(乳化剤および分散助剤を含む);付加的なアミノ酸;構造化剤(structurant)(シックナーおよびゲル化剤、例えばポリマー、ケイ酸塩および二酸化ケイ素を含む);皮膚軟化剤;フレグランス;および、着色剤(染料および顔料を含む)から選択される1つまたはそれ以上の成分を含む、前記組成物のいずれか。
2.10.組成物が、制汗剤および/またはデオドラント、例えば、制汗性スティック(antiperspirant stick)、エアゾール制汗スプレーまたは液体回転塗布式制汗剤である;あるいは、ボディウォッシュ、シャワージェル、固形石けん、シャンプー、ヘアコンディショナー、練り歯磨き、歯磨剤またはマウスウォッシュである、前記組成物のいずれか。
【0015】
[0012]
さらなる実施形態において、本発明は、ZLC、例えば上記した錯体1等のいずれかを美容的に許容される担体と組合せて含む、口腔に適用するためのオーラルケア組成物(組成物3)を提供する。例えば、本発明は以下を提供する:
3.1.モル比ZnO:リジン・HClが1:3〜1:1、例えば約1:2の酸化亜鉛および塩酸リジンを含む、組成物3。
3.2.ZLCがエタノールから結晶化された、前記の組成物のいずれか。
3.3.ZLCが、酸化亜鉛および塩酸リジンからその場で、全部または一部として、形成される、前記組成物のいずれか。
3.4.水による希釈の際に、ZLCが酸化亜鉛沈殿物を与える、前記組成物のいずれか。
3.5.使用の際に、皮膚に酸化亜鉛沈殿物を与える、前記組成物のいずれか。
3.6.組成物の重量あたり0.05〜40%の量でZLCを含む、前記組成物のいずれか。
3.7.組成物に存在する亜鉛の総量が0.05〜10重量%である、前記組成物のいずれか。
3.8.美容的に許容される担体が、10%未満の水、例えば5%未満の水を含む、例えば実質的に無水である、前記組成物のいずれか。
【0016】
[0013]
本発明は、制汗的に有効な量の組成物2等のいずれかを皮膚に適用することを含む発汗を減少させる方法、デオドラント的に有効な量の組成物2等のいずれかを皮膚に適用することを含む体臭を軽減させる方法、および細菌を、抗菌的に有効な量のZLC、例えば錯体1等のいずれかと接触させること、例えば組成物2等のいずれかと接触させることを含む、殺菌方法をさらに提供する。
【0017】
[0014]
本発明は、水性溶液中で酸化亜鉛および塩酸リジンを組み合わせること、場合により、該混合物をエタノールに添加すること、およびかくして得られた結晶性沈殿物を単離することを含む、ZLC、例えば、錯体1等のいずれかを含む組成物を製造する方法をさらに提供する。
【0018】
[0015]
本発明は、(i)殺菌する、発汗を減少させる、および/または体臭を軽減させるための、ZLC、例えば錯体1等のいずれかの使用;(ii)殺菌する、発汗を減少させる、および/または体臭を軽減させるための組成物の製造における、ZLC、例えば錯体1等のいずれかの使用;ならびに、(iii)殺菌する、発汗を減少させる、および/または体臭を軽減させるのに使用するための、ZLC、例えば錯体1等のいずれかをさらに提供する。
【0019】
[0016]
ZLCは主として錯体の形であるが、酸化亜鉛および塩酸リジン前駆物質のある程度の平衡であってよく、その結果、実際に錯体である物質の比率が、前駆体の形の比率と比較して、配合、物質の濃度、pH、水の有無、他の荷電分子の有無などの正確な状態に応じて異なることがあり得ることは理解されるであろう。
【0020】
[0017]
ZLC、例えば錯体1等のいずれかは、適切な基剤、例えばわきの下に適用するためのスティック、回転塗布式、スプレーまたはエアゾールに組み込むことができる。適用の後、ZLCは、皮膚上に見出されるタンパク質などの荷電分子の存在下で凝集して、汗の放出を妨げる栓子を形成する。汗由来の付加的な水が、配合をさらに薄め、当該錯体を分解させる原因となり、酸化亜鉛の沈着が生じる結果となり、それで、上記したように汗および臭気を低下させ得る。同様に、ZLCがハンドソープまたはボディウォッシュ基剤中に与えられた場合、洗浄時のZLCの希釈が、皮膚上での酸化亜鉛のまばらな沈着を生じさせる結果となり、抗菌作用を与えることとなる。
【0021】
[0018]
本文中で使用されるように、用語「制汗剤」は、発汗を減少させるために小孔において栓子を形成することができる任意の物質、または「制汗剤」は、21CFRパート350の下、食品医薬品局により制汗剤と分類された物質を意味する。制汗剤はまた、特に本発明の場合、亜鉛が抗菌性特性を有し、皮膚上で臭気の原因となる細菌を減らすことができるため、デオドラントであってよい。
【0022】
[0019]
組成物は、ZLC、例えば、錯体1等のいずれか、および/またはその前駆体、例えば酸化亜鉛および塩酸リジンを含んでもよい。1つの実施形態において、ZLCは水溶液中で前駆体を室温で混合することによって調製される。その場形成は容易な製剤化を提供する。最初にZLCを形成しなければならないことに代えて、前駆体を使用することができる。他の実施形態において、前駆体からのZLC、例えば錯体1等のいずれかの形成を可能にする水は、適用後に組成物と接触する汗からもたらされる。
【0023】
[0020]
特定の実施形態において、本発明の組成物、例えば組成物2等のいずれかにおけるZLC、例えば錯体1等のいずれかの量は、組成物の重量あたり0.05〜40%である。特定の実施形態において、ZLC、例えば錯体1等のいずれかに化合された場合に、ZLC、例えば錯体1等のいずれかが組成物の重量あたり0.05〜10%の量で存在し得るような量で、前駆体、例えば、酸化亜鉛および塩酸リジンは存在する。これらの実施形態のいずれかにおいて、ZLC、例えば錯体1等のいずれかの量は、所望の目的、例えば抗菌剤または制汗剤について、変動し得る。他の実施形態において、ZLC、例えば錯体1等のいずれかの量は、組成物の重量あたり少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%または少なくとも4%、最大10%である。他の実施形態において、ZLC、例えば錯体1等のいずれかの量は、組成物の重量あたり9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満〜0.05%である。他の実施形態において、該量は、組成物の重量あたり0.05〜5%、0.05〜4%、0.05〜3%、0.05〜2%、0.1〜5%、0.1〜4%、0.1〜3%、0.1〜2%、0.5〜5%、0.5〜4%、0.5〜3%または0.5〜2%である。
【0024】
[0021]
いくつかの実施形態において、組成物中の亜鉛の総量は、組成物の重量あたり0.05%〜10%である。他の実施形態において、亜鉛の総量は、組成物の重量あたり少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%または少なくとも1%、最大8%までである。他の実施形態において、組成物中の亜鉛の総量は、組成物の重量あたり5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1未満〜0.05%である。
【0025】
[0022]
特定の実施形態において、組成物は無水である。無水は、5%未満の水重量、場合により水重量4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満〜0%である。
【0026】
[0023]
無水組成物で提供された場合、前駆体、例えば酸化亜鉛および塩酸リジンは有意に反応せず、ZLC、例えば錯体1等のいずれかを形成ない。汗の形態であってよい十分な量の水と接触した場合に、該前駆体は次いで反応し、ZLC、例えば、錯体1等のいずれかを形成する。ZLC、例えば、錯体1等のいずれかは汗腺管に導入された場合に、タンパク質と共に凝集し、ならびに/あるいは水および/または汗により加水分解して、その汗腺管を塞ぐであろう。
【0027】
[0024]
特定の実施形態において、ZLC、例えば、錯体1等のいずれかは8000μS/cm超、場合により9000μS/cm超、10,000μS/cm超または12,000μS/cm超の伝導度を有し得る。
【0028】
[0025]
組成物は、任意の形態の組成物であってよい。特定の実施形態において、組成物は、皮膚に適用するための抗菌剤を含むことが所望される任意の組成物である。そのような組成物の例は、限定するものではないが、パーソナルケア組成物、制汗剤、デオドラント、ボディウォッシュ、シャワージェル、固形石けん、シャンプー、ヘアコンディショナー、化粧品を含む。
【0029】
[0026]
担体は、ZLC、例えば錯体1等のいずれかまたは酸化亜鉛およびアミノ酸水素ハロゲン化物(hydrohalide)以外の組成物中の他の物質のすべてを表す。担体の量は、次いで、ZLC、例えば錯体1等のいずれかまたは酸化亜鉛およびアミノ酸水素ハロゲン化物(hydrohalide)の重量に添加して100%に達するまでの量である。
【0030】
[0027]
制汗性の/デオドラント組成物に関し、担体は、制汗剤/デオドラントに使用される任意の担体であってよい。担体は、スティック、ゲル、回転塗布式またはエアゾールの形態とすることができる。スティック配合物に関して、担体は油および/またはシリコーンおよびゲル化剤を含んでもよい。配合の実施例は米国特許出願第US2011/0076309A1号において見出すことができ、引用により本文中に組み込まれる。
【0031】
[0028]
本発明の組成物の制汗性配合物および/またはデオドラント配合物に含めてよい任意成分は、溶媒;水溶性アルコール、例えばエタノールを含むC2−8アルコール;グリコール、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびそれらの混合物;グリセリド、例えばモノ−、ジ−およびトリグリセリド;中鎖から長鎖有機酸、アルコールおよびエステル;界面活性剤、例えば乳化助剤および分散剤;アミノ酸、例えばグリシン;構造化剤(structurant)、例えばシックナーおよびゲル化剤、例えばポリマー、ケイ酸塩および二酸化ケイ素;皮膚軟化剤;フレグランス;および、着色剤、例えば染料および顔料を含む。必要に応じて、ZLC、例えば錯体1等のいずれかに対して付加的な制汗剤および/またはデオドラント剤を、例えば硫黄沈降剤のような臭気低減剤(odor reducing agent)、例えばグルコン酸銅、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛を含めることができる。
【0032】
[0029]
制汗性組成物は、皮膚に適用するための適切な局所制汗性配合物および/またはデオドラント配合物、例証としてスティック、ゲル、クリーム、回転塗布式、軟らかい固体、粉末、液体、エマルジョン、懸濁液、分散またはスプレーに処方することができる。組成物は単相を含んでよく、または、多相系、例えば場合により安定エマルジョンの形において極性相および油相を含む系をであってよい。組成物は液体、半固体または固体であってよい。制汗剤および/またはデオドラント配合物は、例えば、任意の適切な容器、例えば多孔質キャップ、回転塗布式の容器、ビン、オープンエンドの容器などを有するエアゾール缶、チューブまたは容器にて提供されてよい。
【0033】
[0030]
当該組成物は、該組成物を皮膚に適用することによって発汗を減少させる方法に使用することができる。特定の実施形態において、適用は腋窩である。また、当該組成物は、該組成物を細菌に接触させることによって殺菌するために使用することができる。例えば、1つの実施形態において、アミノ酸またはアミノ酸水素ハロゲン化物(hydrohalide)の酸化亜鉛との組合せは、亜鉛イオンの利用可能性を増大させ、亜鉛イオン次いで殺菌および汗を減少させることができる。
【0034】
[0031]
かくして、本発明は(i)制汗的に有効な量の、採用される任意の実施形態の配合物または本文中で具体的に記載された配合物、例えば組成物1等のいずれかを皮膚に適用することを含む発汗を調節する方法;および、(ii)デオドラント的に有効な量の、採用される任意の実施形態の配合物または本文中で具体的に記載された配合物、例えば組成物1等のいずれかを皮膚に適用することを含む、発汗由来の臭気を制御する方法を提供する。
【0035】
[0032]
特に明記しない限り、本明細書において示される組成物構成部分に関するパーセンテージはすべて、組成物または配合物全体の重量100%に基づく重量あたりのパーセンテージである。
【0036】
[0033]
具体的にそうであると特定されない限り、本発明の組成物および配合物に用いられる成分は、好ましくは美容的に許容される成分である。「美容的に許容される」は、ヒトの皮膚への局所適用のための配合物において使用するのに適していることを意味する。美容的に許容される賦形剤は、例えば、本発明の配合物で考えられる量および濃度において外用に適切な賦形剤であり、例えば、米国食品医薬品局により「一般に安全と認められる(Generally Recognized as Safe)」(GRAS)とされる賦形剤を含む。
【0037】
[0034]
本文中で示される組成物および配合物は、当該分野で一般的であるため、それらの成分に関して記載され、かつ特許請求される。当業者に明らかであるように、いくつかの例において、成分は互いに反応することがあり、その結果、最終的な配合物の実際の組成は列記される成分と厳密に一致しないこともある。かくして、本発明は、列記した成分の組合せに関する製品に及ぶと理解されるべきである。
【0038】
実施例1 − 亜鉛リジン錯体ZLCの合成および特性評価
[0035]
ZLC形成についての一般的な反応は以下の通りである:
ZnO+2(リジン・HCl)→[Zn(リジン)Cl]Cl・2HO(ZLC)
モル比2:1のZnO:リジン・HCl懸濁液は、室温で約12時間攪拌することで調製される。該混合物を遠心分離する。上清1mlをNMR管に移す。該NMR管を、次いで、結晶成長のためにエタノールで充填した密閉試験管中に置く。多くの無色の立方晶が一週間後に形成される。ZLC結晶の結晶構造を、単結晶X線回折によって決定する。ZLCは、分子量464.44g/molのC1232ClZnの実験式を有する。この錯体において、Znカチオンは、エカトリアル面において2つのリジン配位子により、そのNH基由来の2個のN原子およびそのカルボキシル基由来のO原子でもって配位されている。それは、アピカル位がCl原子によって占められた歪んだ四角錘ジオメトリーを示す。この構造は正のカチオン部分を生じさせ、それにClアニオンが組合わさってイオン性塩を形成する。
【0039】
[0036]
純粋なZLC粉末の研究所スケールアップ合成: 2モルのリジンHClを、室温で攪拌しながら1000mlのDI水中に溶かし、1モルの固体ZnOを撹拌しながらゆっくり該リジンHCl溶液に加え、RTで一晩(約12時間)攪拌を継続する。懸濁液溶液を、15分間高速で遠心分離する。その上清をEtOH中へゆっくり注ぐ。沈殿物がすぐに形成される。1gの粉末を得るために、約5〜8mlのEtOHが必要である。該粉末を含むEtOH溶媒を濾過し、オフホワイト粉末を得る。該粉末を50℃のオーブンに置いて乾燥させ、収率88%の生成物を得る。PXRDは、ZLC粉末の純度をZLC結晶と比較して確認する(図1)。この実施例において、ZLCは、逆溶剤としてエタノールを使用することで結晶化する。任意の逆溶剤を使用することができる。場合により、溶液は噴霧乾燥される。
【0040】
実施例2: 発汗減少の機序
[0037]
加水分解反応: 185mg/mlのZLC溶液を調製し、数倍に希釈して、濁度試験のために37℃で5時間以上エージングした。溶液を希釈するにつれて、白色の沈殿物が形成する。該溶液の濁度は比濁計を用いて測定され、その結果はネフェロメ濁度単位(NTU)にて得られる。表1はエージングの前後のpHおよび濁度の比較を示し、それは希釈に伴う、及びエージングに伴う濁度における増加を示す:
【表1】
【0041】
[0038]
8倍、16倍および32倍希釈溶液中で形成された沈殿物を遠心分離により収集して、PXRDによって結晶質ZnOと特定される。その上清から、単結晶が成長し、X線回折によりリジン一塩酸塩二水和物であると示される(リジン・HCl・2HO)。これらのデータは、ZLC錯体が希釈に際して解離し、それに伴って酸化亜鉛が沈着することを示す。
【0042】
[0039]
このZLC加水分解反応の機序は、以下のように表すことができる:
[Zn(リジン)Cl]Cl・2HO+HO→ZnO+リジン・HCl・2H
【0043】
[0040]
腕の下用の製品において、ZnOとリジンHClの混合物は、汗の存在下で、ZLCを形成し、それが汗腺管に入ってZnOの栓子を形成する。
【0044】
[0041]
凝集:
ZLCが汗の放出を妨げる他の機序は、タンパク質の存在下でZLCの凝集を伴う。ウシ血清アルブミン(BSA)を本試験でタンパク質として使用する。表2に記載されるように、種々のpHの対照溶液(DI水)および3つの1%BSA水溶液を調製する。
【表2】
【0045】
ZLCとBSAとの間の相互作用を調べるために、および、ZLCが収斂剤特性を有するかどうか、即ち、ZLCが沈殿物を形成し、かくして、制汗剤として機能できるかどうかを決定するために、ZLC粉末を上記サンプルに加える。該溶液の濁度およびpHは、該混合物を37℃のオーブンに置いた5時間後に測定し、その結果を表3に示す。
【表3】
【0046】
[0042]
かくして、汗腺管(pH=5〜7)において、ZLCは不溶性のZnOに加水分解して、汗腺管を物理的に遮断するであろう。加えて、ZLCはまた、汗中のタンパク質、例えばBSAを凝集させ、かくして、汗腺管において「栓子」の形成を促進する能力を有する。
【0047】
[0043]
本明細書を通じて用いられるように、範囲はその範囲内にある各数値およびすべての数値を表す短縮形として用いられる。該範囲内にある値はいずれも、該範囲の上限下限として選択され得る。加えて、本明細書中で引用されるすべての参考文献は、引用によりその完全な内容でここに含まれる。本開示の定義と引用の定義とに齟齬がある場合、本開示により調整される。
【0048】
[0044]
そうではないと特定されない限り、ここで及び本明細書中の他の箇所に示されるパーセンテージおよび量はすべて、重量パーセントを意味すると理解されるべきである。所定の量は、物質の有効重量(active weight)に基づく。
図1