(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
355メッシュ/インチのポリエステルメッシュ刷版における感光性乳剤膜にフラット加工して製版されたスクリーン刷版を用いて、400mm/秒のスキージー速度で被印刷体にスクリーン印刷して印刷物を作製したときに、前記刷版の印刷画像設計寸法に対して印刷画像エッジのダレ幅が10μm以内となる印刷物が作製できる高品位・高精細の高速スクリーン印刷用インキ組成物であって、
イソホロン、二塩基酸エステル(DBE)、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、沸点170℃を超えるコールタールナフサ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビニルエーテルモノマー、アミドモノマーから選ばれる1種又は2種以上の沸点が170℃以上の溶媒を溶媒全体の70重量%以上含有し、
重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーを前記インキ組成物全量に対し7重量%以上含有し、
且つ、25℃におけるBH型回転粘度計で粘度が6Pa・s以上、30Pa・s未満、チキソトロピックインデックス(TI値)が2.0〜8.0、
JIS K5701−1:2000に従った25℃における平行板粘度計(スプレッドメーター)による流動性測定法で測定開始1分後の前記インキ組成物の流動半径測定値が14.0〜24.0mmであり、
前記平行板粘度計(スプレッドメーター)による流動性測定法で測定開始1分後の流動半径測定値を「F60」、45秒後の流動半径測定値を「F45」と定義したときに、「F60」−「F45」≦0.8mmであることを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物。
重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーがアクリル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂のいずれか1種又はそれらの組合せであることを特徴とする請求項1に記載の高速スクリーン印刷用インキ組成物。
前記インキ組成物が、少なくとも着色材、体質顔料、フィラーのいずれか1種又はそれらの組合せを含有し、該着色材、体質顔料又はフィラーが前記インキ組成物中に35μm以下の平均粒子径に分散された状態で存在することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の高速スクリーン印刷用インキ組成物。
前記インキ組成物が、被印刷体基材として、アート紙、コート紙、合成紙、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂及びガラスから選ばれるシート状又はフィルム状基材に印刷されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高速スクリーン印刷用インキ組成物。
【背景技術】
【0002】
高速スクリーン印刷機であるシリンダープレス印刷機(以降単に「シリンダープレス機」と記載する。)は、高速印刷が可能であり生産性が良いため、スクリーン印刷の長所である良好な耐久性、厚膜印刷が可能などの特徴を生かしたカラー分解印刷による各種ポスター類の高速量産、ゲーム機や家電製品等の加飾パネルや筐体の高速量産、自動販売機等に組み込むダミー印刷物の高速量産などに広く使用されている。
一方、設備価格が高価なるがゆえにシリンダープレス機を保有しない印刷メーカーにおいては、通常は300mm/秒程度以下のスキージー速度(印刷速度に相当する)でスクリーン印刷している半自動スクリーン印刷機を用いて、その印刷速度であるスキージー速度を350mm/秒程度以上にして前記高速量産などに広く対応させている。
【0003】
以下、高速スクリーン印刷機の代表例であるシリンダープレス機を例にして説明する。シリンダープレス機は高速量産が可能であるため、昨今は、デザインの多様化、高精細化が進む自動車メーター、微細な文字画像等を有する家電製品の表示板、タブレット端末の額縁や筐体の絵柄などのグラフィック加飾印刷物においてもシリンダープレス機を使用してスクリーン印刷物を作製する検討が試みられるようになっている。
【0004】
ここで、シリンダープレス機は通常800〜1500回転/時(1時間当りの印刷回数)で印刷されるためスキージーとスクレーパーの動きが早く(秒速約350mm程度以上)、そのため当該シリンダープレス用スクリーンインキとしてはスクリーン刷版上でのスキージーとスクレーパーの高速運動に追随して刷版上でインキが均一且つ適切な状態で存在できる程度の低粘度特性を有するスクリーン印刷用インキが使用されている。
【0005】
しかしながら、このように単に低粘度特性を有するスクリーンインキを用いて印刷した場合はインキが低粘度であるがゆえに印刷画像にダレや滲みが発生し易く、面積の広いベタパターン(例えば10cm角程度の四角形)と微細パターン(例えば100μm直径程度のドットパターンや100μm線幅の細線パターンなど)とが共存する印刷物においては、当該ベタパターンの視認性は平滑性で良好なもののその画像エッジ部にはダレや滲みが発生するためシャープ性が得られ難く、また、当該微細パターンにおいては画像に滲みや太りが生じて視認性を損なうという問題が発生している。特に、印刷枚数が10枚、20枚、30枚、50枚、100枚と増えていくに従い前記問題の発生が顕著になる。
【0006】
前記問題を解消するためにインキを高粘度にするという方法はあるが、単に高粘度にした高粘度インキをシリンダープレス機でスクリーン印刷すると、スキージーとスクレーパー速度が速いためスクリーン刷版上でインキが十分均一に伸ばされた状態で存在できず印刷画像に欠けや平滑性不足といった欠損が生じるようになる。一方、当該高粘度スクリーンインキをシリンダープレス機ではなく、600回転/時程度(300mm/秒程度以下のスキージー速度)が一般的な印刷速度であるフラットベッドスクリーン印刷機(半
自動スクリーン印刷機)でスクリーン印刷した場合は、印刷画像のシャープ性は改善されるが印刷スピードが遅く短時間での量産性に問題が生じてしまう。
【0007】
かかる状況のなか、苦肉の策として印刷工程数は増えるものの、ベタパターンと微細パターンが混在するデザインの印刷物を高速スクリーン印刷で作製する場合は、ベタパターンが見栄えよく印刷できる程度に適度に低粘度化調整されたインキでベタパターンを印刷する工程によりベタパターンのみを印刷し、その後、微細パターンに大きなダレ、太り、滲み等が生じない程度に適度に高粘度化調整されたインキで微細パターンのみを印刷する工程により微細パターンを印刷するという2工程で行っているのが一般であり、両工程ともその都度適度に粘度調整されたインキを使用することから、常に安定した品質の印刷物を作製することも難しかった。
【0008】
しかし、市場では、例えベタパターンと微細パターが混在するデザインの印刷物の高速スクリーン印刷においても、常に安定した品質の印刷物を1工程の印刷で作製できる流動特性等を有するインキが強く求められており、本発明の重要性はかかる問題を解決に導いたことにある。
【0009】
ここで、先行特許文献1(特開2010−047716号公報)には、高精細なパターンを形成することが可能なスクリーン印刷用導電性インキ組成物及び導電性塗膜について開示されているが、微細パターンとベタパターンが共存する印刷物に対するインキであって、さらに、シリンダープレス機のような高速スクリーン印刷に有用な流動性に関する技術的開示はない。
【0010】
また、先行特許文献2(特開2003−238876号公報)、先行特許文献3(特開2003−294930号公報)、先行特許文献4(特開2012−017411号公報)には、高精細なパターンを形成することが可能なスクリーン印刷用インク組成物に関する流動性技術等が開示されているが、前記先行特許文献1と同様に、微細パターンを精度よくスクリーン印刷する技術は開示されているものの、高速シリンダープレス機のような高速スクリーン印刷機を用いて微細パターンとベタパターンを同時に1工程で良好に印刷する場合のインキ組成物に関する技術的な開示及び示唆はない。
【0011】
また、特許文献5(特開2010―047649号公報)には、導電性スクリーン印刷用組成物、及び、当該組成物のスプレッドメーターによる時間に対する適切な広がりの変化量差に関する技術が開示されているが、高速スクリーン印刷に関連する技術、並びに、高速スクリーン印刷によって微細パターンとベタパターンを同時に1工程で良好に印刷する場合のインキ組成物に関する技術的な開示及び示唆はない。
【0012】
また、特許文献6(特開2009−030065号公報)には、樹脂、溶剤等を含有し、金属光沢や鏡面光沢鏡面に優れ、基材への密着性に優れるスクリーン印刷用インキ組成物が開示されているが、高速スクリーン印刷に関連する技術、並びに、高速スクリーン印刷によって微細パターンとベタパターンを同時に1工程で良好に印刷する場合のインキ組成物に関する技術的な開示及び示唆はない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記のとおり、本発明は、355メッシュ/インチのポリエステルメッシュ刷版における感光性乳剤膜にフラット加工して製版されたスクリーン刷版を用いて、400mm/秒のスキージー速度で被印刷体に高速スクリーン印刷して印刷物を作製したときに、前記刷版の印刷画像設計寸法に対して印刷画像エッジのダレ幅が10μm以内となる印刷物が作製できる高品位・高精細の高速スクリーン印刷用インキ組成物であって、沸点が170℃以上の溶媒を溶媒全体の70重量%以上含有し、重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーを前記インキ組成物全量に対し7重量%以上含有し、且つ、25℃におけるBH型回転粘度計で粘度が6Pa・s以上、30Pa・s未満、チキソトロピックインデックス(TI値)が2.0〜8.0、JIS K5701−1:2000に従った25℃における平行板粘度計(スプレッドメーター)による流動性測定法で測定開始1分後の前記インキ組成物の流動半径測定値が14.0〜24.0mmであることを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物に関するものである。
【0019】
更に、前記インキ組成物の前記平行板粘度計による流動性測定法で測定開始1分後の流動半径測定値を「F60」、45秒後の流動半径測定値を「F45」と定義したときに、「F60」−「F45」≦0.8mmであることを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物に関するものである。
【0020】
更に、前記沸点が170℃以上の溶媒がDBE(二塩基酸エステル)、イソホロンのいずれか1種又はそれらの組合せであることを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物に関するものである。
【0021】
更に、前記重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーがアクリル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂のいずれか1種又はそれらの組合せであることを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物に関するものである。
【0022】
更に、本発明は、前記インキ組成物が、少なくとも着色材、体質顔料、フィラーのいずれか1種又は複数種又はそれらの組合せを含有し、該着色材、体質顔料及びフィラーが前記インキ組成物中に35μm以下の平均粒子径に分散された状態で存在することを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物に関するものである。
【0023】
更に。本発明は、前記インキ組成物が、被印刷体基材として、アート紙、コート紙、合成紙、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ガラスから選ばれるシート状又はフィルム状基材に印刷されるものであることを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物である。
【0024】
更に、本発明は、前記高速スクリーン印刷用インキ組成物を用いて被印刷体に高速スクリーン印刷されたことを特徴とする印刷物に関するものである。
更に、本発明は、前記印刷物の製造方法であって、前記高速スクリーン印刷用インキ組成物を被印刷体に高速スクリーン印刷することによって印刷物を製造することを特徴とする印刷物の製造方法に関するものである。
【0025】
本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物は、沸点が170℃以上の溶媒を溶媒全体の70重量%以上含有する。沸点170℃以上の溶媒が溶媒全体の70重量%未満の場合には、スクリーン刷版上でのインキの乾燥が早いためスクリーン刷版にインキ乾燥被膜による目詰まりが発生し、微細パターンやベタ画像エッジ部に欠損が生じて高品位で高精細な印刷物を得ることができない。
【0026】
本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物に含有される沸点が170℃以上の溶媒以外の溶媒は特に限定されるものではないが、共沸による沸点が170℃以上の溶媒の蒸発速度を緩和させて前記高速スクリーン印刷インキ組成物のスクリーン版上安定性をより良好にするために、沸点が100℃を下回らない溶媒を用いることが好ましい。
【0027】
本発明における沸点が170℃以上の溶媒としては、イソホロン、二塩基酸エステル(DBE)、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、沸点170℃を超えるコールタールナフサ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(アセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(アセテート)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(アセテート)などの有機溶剤、及び/又は、活性化エネルギー線によって硬化する1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー、ビニルエーテルモノマー、アミドモノマーなどがあげられる。
【0028】
前記沸点が170℃以上の溶媒のなかでも、各種ポリマーやプレポリマーに対して溶解力の大きいイソホロン、二塩基酸エステル(DBE)の1種又はそれらの組合せを用いることが更に好ましい。
【0029】
また、本発明における沸点が100℃を下回らない溶媒の好ましい例としては、キシレン、シクロヘキサノン、沸点160〜170℃のコールタールナフサ、沸点が150〜170℃のミネラルスピリット、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシプロピル−2−アセテート、ダイアセトンアルコールなどがあげられる。
【0030】
本発明において溶媒は沸点が170℃以上のものを溶媒全体量の70重量%以上含有すればよいが、微細パターンのスクリーン印刷性を更に安定なものとするためには、該溶媒の沸点が190℃以上とすることが好ましく、なかでも各種ポリマーやプレポリマーに対して溶解力の大きいイソホロン、二塩基酸エステル(DBE)の1種又はそれらの組合せを用いることが更に好ましい。しかし、沸点が250℃を超える鉱物油や植物油などを溶媒として用いると印刷塗膜の乾燥性が悪くなるため、沸点が250℃を超える溶媒を用いる場合は、溶媒全体量に対して25重量%以内とすることが望ましい。
【0031】
また、本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物は、バインダー樹脂として少なくとも重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーを該インキ組成物全量に対し7重量%以上含有するものである。
【0032】
プレポリマー又はポリマーの重量平均分子量が2000未満の場合は印刷塗膜の被印刷体への接着性や耐久性が弱くなるという欠点が生じ、一方、重量平均分子量が200000を超えると溶媒への溶解性が悪くなり当該インキ組成物の製造に多大なる時間と労力を要することになる。そのため、より好ましい重量平均分子量範囲は4000〜100000程度の範囲である。
【0033】
また、重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーの含有量が該インキ組成物全量に対し7重量%未満であると、印刷塗膜の被印刷体への接着性や耐久性の低下を招いたり、着色剤の分散不良による印刷塗膜へのレベリング不良やピンホールの発生という不具合を発生させたりする。一方、70重量%を超えて含有する場合は、粘度が高くなり過ぎて均一な高速スクリーン印刷が困難になったり、沸点が170℃以上である溶媒の配合比率が減少してスクリーン刷版上でインキが乾燥しやすくなり微細パターンに目詰まりを発生させやすくなったりする。したがって、より好ましい含有量はインキ組成物全量に対して7〜70重量%程度であり、更に好ましい範囲は10〜65重量%であり、最も好ましい範囲は15〜60重量%である。
【0034】
本発明のプレポリマー又はポリマーは、重量平均分子量2000以上であり、含有量が該インキ組成物全量に対し7重量%以上〜該インキ組成物中の溶媒に溶解可能な配合量であれば、特にその種類や配合比に限定はないが、人や生物に対し毒性の強いもの、環境負荷の高いものなど危険有害性の高いものは避けるべきである。
【0035】
前記プレポリマーの例としては、活性化エネルギー線で硬化するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなどがあげられ、前記ポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などの各種変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化
ポリオレフィン樹脂、塩化ゴム、メラミン樹脂、尿素樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース樹脂類、ロジン樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられ、これらを単独使用又は併用することができる。
【0036】
ここで、前記重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーとしては、幅広い種類の被印刷体の接着が良好であり、且つ、適度の柔軟性塗膜を形成し易い、アクリル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか1種又はそれらの組合せであることが特に好ましい。
【0037】
また、本発明のシリンダープレス機に対応する高速スクリーン印刷用インキ組成物は、25℃におけるBH型回転粘度計20回転/分で粘度が6Pa・s以上、30Pa・s未満なる粘度を有するが、更に好ましくは8〜26Pa・sであることが望ましい。粘度が6Pa・s未満だと微細パターンやベタ画像エッジ部に滲みやダレが生じ高品位・高精細な印刷画像を得ることができず、一方、粘度が30Pa・s以上の場合は、シリンダープレス機等での高速印刷ができないわけではないが、スキージーの圧、角度、硬度、エッジのシャープ度合いやスクレーバーの圧等を高度に調整しないと、高速印刷時のスクリーン刷版上でインキが均一にならなかったり、高速印刷時のスクリーン刷版の印刷画像パターンからのインキの抜けが悪くなったりして、ベタ画像にムラが発生したり、微細パターンや画像エッジ部に欠損が発生したりし易くなる。
【0038】
なお、本発明におけるBH型回転粘度計による粘度値は、6〜10Pa・sの粘度範囲は5号又は6号ローターで、10〜50Pa・sの粘度範囲は6号又は7号ローターで、50Pa・s以上の粘度範囲は7号ローターで、ローター回転速度20回転/分で測定開始後1分での測定値である。
【0039】
また、本発明のシリンダープレス機に対応する高速スクリーン印刷用インキ組成物は、チキソトロピックインデックス(TI値)が2.0〜8.0であるが、更に好ましくはTI値が3.0〜7.5であることが望ましい。TI値が2.0未満である場合はインキの流れ性が大きく、例え粘度が規定範囲の上限付近であったとしても印刷後に経時とともに印刷画像にダレが発生して微細パターンや画像エッジ部が太る。また、TI値が8.0を超えると、例え粘度が規定範囲の下限付近であったとしてもスクリーン刷版からのインキの突出量が多くなり過ぎ、微細パターンや画像エッジ部に滲みが発生してシャープな印刷画像が得られなかったり、経時での流れ性が悪くなりすぎて、特にベタ画像上でレベリング不良が発生したりする。
【0040】
ここで、本発明における前記TI値とは、25℃におけるBH型回転粘度計2回転/分での粘度値と20回転/分での粘度値の比、即ち、[BH型回転粘度計2回転での粘度値/BH型回転粘度計20回転での粘度値]を表す値である。
【0041】
また、本発明は、前記インキ組成物が、JIS K5701−1:2000に従った25℃における平行板粘度計(スプレッドメーター)による流動性測定法で測定開始1分後の前記インキ組成物の流動半径測定値(以降、フロー値と記す。)が14.0〜24.0mmであることが好ましい。更に好ましくは15.0〜22.0mmである。フロー値が14.0mm未満である場合は、シリンダープレス機による高速印刷時のスクリーン刷版からのインキが突出し難くなる傾向があるため、高速スクリーン印刷時のスキージーの印刷圧力を大きくするなどの工夫が必要になり、一方、フロー値が24.0mmを超える場合はシリンダープレス機による高速印刷であってもスクリーン刷版からのインキ突出量が多くなる傾向があるため、高速スクリーン印刷
時のスキージーの印刷圧力を小さくするなどの工夫が必要になる。
【0042】
更に、前記フロー値は前述の通り平行板粘度計測定開始1分後でのインキが流動した半径値を表す(ここで、これを「F60」と定義する。)が、ここで、平行板粘度計測定開始45秒後の半径値を「F45」と定義した場合、前記インキ組成物が前記のフロー値範囲であって、且つ、「F60」−「F45」≦0.8mmであればシリンダープレス機による高速スクリーン印刷において更に好ましく安定した高品位・高精細印刷画像が得られる。より好ましくは「F60」−「F45」≦0.5mmである。これは印刷時のインキが適度の流れ性を有するとともに印刷後は経時で大きくダレ広がり難くなる流動性特性であるからである。
【0043】
更に詳しく述べるとすると、本発明者らは[0036]に記載したフロー値の要件を満たした上で「F60」−「F45」≦0.8mmであることが、更に安定した良好な高品位・高精細印刷画像が得られることを見出したものである。
ここで、前記先行技術文献([特許文献5]特開2010―047649号公報)では単にスプレッドメーター10秒と90秒のフロー値の差について述べているのみでフロー値の適正な範囲についての開示がない。
【0044】
本発明において本発明者らは、フロー値が本発明規定の下限値14.0mm未満である場合は、例え「F60」−「F45」≦0.8mmであっても、前記インキ組成物の流動性がやや不足ぎみになって印刷画像エッジ部のギザが視認され易くなり、また、フロー値が本発明規定の上限値24.0mmを超えた場合は、例え「F60」−「F45」≦0.8mmであっても、前記インキ組成物の流動性が大きくなりがちで印刷画像エッジ部のダレ幅が大きくなり易いことを発見している。
【0045】
即ち、本発明者らは、フロー値の適正値14.0〜24.0mmを規定した上で「F60」−「F45」≦0.8mmを規定するという組み合わせで、ベタパターンと微細パターンが混在する印刷物を作製する場合において、1工程のスクリーン印刷でより良好な高品位・高精細な品質が得られることを発見したものである。
【0046】
本発明の前記インキ組成物は、少なくとも、355メッシュ/インチのポリエステルメッシュ刷版における感光性乳剤膜にフラット加工して製版されたスクリーン刷版を用いて、400mm/秒のスキージー速度で被印刷体に高速スクリーン印刷して印刷物を作製したときに、前記刷版の印刷画像設計寸法に対して印刷画像エッジのダレ幅が10μm以内となる印刷物が作製できる高品位・高精細の高速スクリーン印刷用インキ組成物である。該印刷画像のエッジのダレ幅が10μmを超える場合、前記刷版の画像設計に対して該印刷画像の太りが目視でも認識できるようになり、該印刷画像がぼやけて視認されるようになるため高品位・高精細な加飾印刷とはいえなくなる。
【0047】
かかる前記高品位・高精細の高速スクリーン印刷用インキ組成物は、前述のとおり、少なくとも沸点が170℃以上の溶媒を溶媒全体の70重量%以上含有し、少なくとも重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーを前記インキ組成物全量に対し7重量%以上含有し、且つ、少なくとも25℃におけるBH型回転粘度計で粘度が6Pa・s以上、30Pa・s未満、少なくともチキソトロピックインデックスが2.0〜8.0、JIS K5701−1:2000に従った25℃における平行板粘度計(スプレッドメーター)による流動性測定法で測定開始1分後の前記インキ組成物の流動半径測定値が14.0〜24.0mmであることによって調整できるものである。
【0048】
加えて、かかる前記高品位・高精細の高速スクリーン印刷用インキ組成物は、前述及び/又は後述の「好ましい要件及び/又は望ましい要件」を採用
することによって、シリンダープレス機等による高速スクリーン印刷物の製造がより容易になったり、印刷物としての高品位・高精細の品質がより向上したりする。
【0049】
ここで、前記刷画像のエッジのダレ幅が「ゼロ」μmである場合は、印刷されたインキのダレが全くなく前記刷版の画像設計の通りに印刷されていることになるが、前記刷版はスクリーンメッシュが編まれた状態で存在しているため、印刷後インキにダレが全くない場合は当該スクリーンメッシュの存在の影響を受けて印刷画像エッジ部では微小な欠けやギザが発生し易い。従って、望ましくは前記加飾印刷画像のダレ幅は2〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmである。
【0050】
ここで、本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物は、少なくとも、355メッシュ/インチのポリエステルメッシュ刷版における感光性乳剤膜にフラット加工して製版されたスクリーン刷版を用いて、400mm/秒のスキージー速度で被印刷体に高速スクリーン印刷して印刷物を作製したときに、前記刷版の印刷画像設計寸法に対して印刷画像エッジのダレ幅が10μm以内となる印刷物が作製できるものであることを必須の要件としているものであり、従い、他のスクリーンメッシュで製版されたスクリーン刷版やカレンダー加工されたスクリーンメッシュで製販された刷版を用いて印刷されたとしても、高速スクリーン印刷用インキ組成物が本発明の必須要件の範疇にあるときは、当該高速スクリーン印刷用インキ組成物は本発明の技術範疇となる。
【0051】
なお、フラット加工とは、前記感光性乳剤膜の平滑性を更に向上させる処理のことをいい、カレンダー加工とは、製版用に編まれたスクリーメッシュの表面の平滑性を更に向上させる処理のことをいい、フラット加工及びカレンダー処理ともに、刷版業界並びにスクリーン印刷業界では常用語である。
【0052】
また、当然のことながら、355メッシュを超える(例えば420メッシュ、508メッシュなど)ポリエステルメッシュや当該メッシュに相当するステンレスメッシュによって製版されたスクリーン刷版を用いた場合は、印刷画像エッジのダレはより少ないものとなり且つ印刷画像エッジ部はよりシャープなものとなることは言うまでもない。
【0053】
一方、本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物が、着色材、体質顔料、フィラーのいずれか1種又は複数種又はそれらの組合せを含有する場合は、該着色材、体質顔料、フィラーが前記インキ組成物中に35μm以下の平均粒子径に分散された状態で存在することが好ましい。分散後に35μmを超える平均粒子径の着色材、体質顔料、フィラーが存在すると、前記355メッシュのスクリーン刷版のメッシュ間隙に目詰りが発生し印刷画像に欠けやピンホールが発生する可能性がある。
【0054】
本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物に着色材、体質顔料、フィラーを分散させる方法は特に限定されるものではないが、例をあげるならば、撹拌羽での撹拌式分散機、ビーズ式分散機、3本ロール式分散機による分散がある。
【0055】
前記着色剤、前記体質顔料、前記フィラーは特に限定されるものではないが、前記着色剤の例としては、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、ビスアゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン系顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン系顔料、カーボンブラック顔料、レーキブラック顔料、ペリレンブラック顔料、アニリンブラック顔料、酸化鉄顔料、チタン顔料、硫化亜鉛顔料、及び、各種有彩色染料などがあげられ、これらの1種又は複数種を組合せて使用することができ、このような着色材はインキ組成物に対し60重量%以下の配合比で使用することが好ましい。更に好ましくは50重量%以下である。
【0056】
前記体質顔料の例としては、(微粒子)シリカ、タルク、炭酸カルシウム
、炭酸マグネシウム、ベントナイト、沈降性硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナなどがあげられ、これらの1種又は複数種を組合せて使用することができ、このような体質顔料はインキ組成物に対し30重量%以下の配合比で使用することが好ましい。
【0057】
前記フィラーの例としては、樹脂ビーズ、メタリック粒子、金属粉、金属酸化物粉、グラファイト、パール顔料、蛍光顔料、ワックス粒子、プロテインパウダーなどがあげられる。また、紫外線吸収材料、抗菌材料、熱吸収材料、屈折率調整材料、滑り性付与材料、滑り性防止材料、蓄光性材料、偏光性材料、反射防止材料、拡散性材料などの機能性材料に類するものであってもよい。これらの1種又は複数種を組合せて使用することができ、このようなフィラーはインキ組成物に対し70重量%以下の配合比で使用することが好ましく、より好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
【0058】
また、前記着色剤、前記体質顔料、前記フィラー等を含有する本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物は、シリンダープレス機を用いて、グラフィック加飾高速スクリーン印刷物に限らず、ディスプレイの視認性を高めるためのブラックマトリックスやストライプ印刷、レジストとして機能させるためのパターン印刷、部材と部材を接触させないためのスペーサー印刷、導光板で均一な輝度を確保するために特定の面積に設計されたドット印刷などの電気・電子部品への印刷に用いた場合も高精細な高速スクリーン印刷物を作製できる。
【0059】
通常、ブラックマトリックスやストライプ印刷には隠蔽性の高い黒インキが、レジスト印刷やスペーサー印刷には白インキ、黒インキ、有彩色インキ、透明インキ、拡散性インキ、及び/又はそれらの混合インキが、導光板ドット印刷にはシリカや各種ビーズなどの光拡散性機能を有するフィラーを含有するインキが用いられることが多い。
【0060】
本発明の前記インキ組成物が含むフィラーは導電性を有するフィラーであってもよい。係る導電性フィラーとしては、金粉、銀粉、銅粉、鉄粉、インジウム粉、タングステン粉、及び/又は、それらの酸化物や錯体、更には、グラファイト、カーボンブラックなどが挙げられる。そして、当該導電性フィラーを含む印刷インキ組成物は、導電性フィラーの種類及び配合量を選択することにより、印刷塗膜の目的に応じた電気抵抗値とすることができ、例えば、体積抵抗値10
−2Ω/cm以下、10
−2Ω/cm〜10Ω/cm、10Ω/cm〜10
6Ω/cmなどの範囲が適宜選択される。また、前記導電性フィラーは、それらを単独で用いても複数種を組合せて用いてもよい。
【0061】
係る導電性フィラーは、印刷物において安定した抵抗値性能を確保するためには、前記インキ組成物中に10μm以下の平均粒子径に分散された状態で存在することが望ましい。また、その配合量は、目的に応じた電気抵抗値を得るために、前記インキ組成物中に70重量%以下の配合量範囲で目的性能に好適な量を配合することが望ましい。
【0062】
導電性フィラーを用いた導電性高速スクリーン印刷用インキ組成物においては、バインダー樹脂として重量平均分子量3000〜30000程度のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ニトロセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ウレタンアクリレートプレポリマー、ポリエステルアクリレートプレポリマー、エポキシアクリレートプレポリマーなど、及びそれらの組み合わせからなる樹脂やプレポリマー等を該導電性高速スクリーン印刷用インキ組成物全量に対して7〜40重量%程度で用いることが好ましい。また、溶媒としては、前記沸点が170℃以上の溶媒を溶媒全量の70重量%以上の量で用いることができ、更に、前記導電性フィラーは、上述のとおり、目的とする導電性能に応じて導電性高速スクリーン印刷用インキ組成物全量に対して70重量%以下の量で用いる
ことが好ましく、更に必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、分散剤などの添加剤を加えることもできる。
【0063】
また、該導電性高速スクリーン印刷用インキ組成物によって形成された塗膜において、体積抵抗値が10
−2Ω/cm程度より低い抵抗値が求められる場合は、金粉、銀粉、銅粉、鉄粉、インジウム粉、タングステン粉、及び/又はそれらの酸化物や錯体を導電性フィラーに用いることが好ましく、10
−2Ω/cm〜10Ω/cm程度の体積抵抗値が求められる場合にはグラファイト、カーボンブラック、又は、それらの組み合わせを導電性フィラーに用いることが好ましく、10Ω/cmを超える体積抵抗値が求められる場合にはカーボンブラックを導電性フィラーに主に用いることが好ましい。
【0064】
更に、本発明は、前記高速スクリーン印刷用インキ組成物を用いて被印刷体に高速スクリーン印刷されたことを特徴とする印刷物を提供する。
更に、本発明は、前記の高速スクリーン印刷用インキ組成物を被印刷体に高速スクリーン印刷することによって印刷物を製造することを特徴とする印刷物の製造方法を提供する。
【0065】
ここで、本発明が提供する印刷物及び印刷物の製造方法において、使用される被印刷体としては、アート紙、コート紙、各種合成紙、ポリエステル(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニル、ガラスなど、各種板状基材、シート状基材、フィルム状基材等があげられる。
なかでも、例として、本発明の高速スクリーン印刷用インキ組成物を用いれば、カラス基材やPET基材を使用した、パネル額縁部等のベタパターンとブラックマトリックス等の微細パターンが混在するディスプレイ関連印刷物、紙類基材やPP基材を使用したマークやロゴ等のベタパターンとカラー分解網点ドット等の微細パターンが混在する宣伝広告用印刷物、PC基材やアクリル基材やPET基材を使用した表示部等のベタパターンとヘアライン加飾等の微細パターンが混在する家電銘板類用印刷物などの作製において、1回の印刷工程で高品位・高精細な印刷物を作製できるという顕著な効果がある。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例と比較例を[表1]に示した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例及び比較例の高速スクリーン印刷用インキ組成物について、表1記載の材料を同表記載の配合比(重量%)でプロペラ回転式撹拌機を用いて均一に撹拌混合した後に3本ロールミル分散機を2パスして製造し、それぞれのインキ組成物について前述の方法で粘度、TI値、フロー値(F60)、F60−F45値を測定した。
【0069】
次に、実施例及び比較例の高速スクリーン印刷用インキ組成物を、355メッシュ/インチのポリエステルメッシュ刷版における感光性乳剤膜にフラット加工して製版されたスクリーン刷版で表1記載の被印刷体に400mm/秒のスキージー速度で高速スクリーン印刷した。このときの高速スクリーン印刷条件は、「硬度80度スキージー、スキージー印圧1.5mm押し込み、スキージー角度75度、スクレーパー圧1.5mm押し込み」とした。
【0070】
なお、このスクリーン刷版は印刷画像設計が、100μmφドットパターン、印刷方向に平行である100μm縦細線パターン、印刷方向に垂直である100μmの横細線パターン、印刷方向に垂直で間隙が150μmであるヌキ細線パターン並びに1辺が100mmである正方形のベタパターンが共存して設けられているものである。
【0071】
実施例及び比較例の高速スクリーン印刷用インキ組成物が印刷されたときの画像エッジのダレ幅の測定は、スクリーン刷版において印刷方向に垂直で間隙が150μmであるヌキ細線パターンが印刷された印刷塗膜画像部分を測長機能搭載デジタル顕微鏡200倍で観察して、印刷されたヌキ細線の間隙を測定した後、刷版設計値150μmとの差を算出する。例えば、印刷されたヌキ細線の間隙が140μmであった場合は、刷版設計値150μmとの差は10μmとなるが、ヌキ細線では画像エッジが両方に存在するため、片側の画像エッジのダレ幅は5μmとなり、これを「画像エッジのダレ幅」とした。
【0072】
印刷画像の高品位・高精細さの評価は、目視及びデジタル顕微鏡200倍観察で下記のように判定した。なお、50枚目に印刷された印刷物について当該評価を実施した。
[100μmφドットの印刷画像の高品位・高精細さ]の評価
◎:100個の当該ドットの形状に欠け等の欠損が全くなかった。
〇:100個中1〜5個の当該ドットに微細な欠け、滲み、形状歪みがあった。
△:100個中6〜30個の当該ドットに欠け、滲み、形状歪みがあった。
×:100個中31個以上の当該ドットに何らかの異常があった。
【0073】
[100μm横細線の印刷画像の高品位・高精細さ]の評価
◎:ダレ、歪み、滲み、欠け等の欠損が全くない。
〇:10μm程度の太り、細りはあるが滲み、欠け等の欠損はなかった。
△:11μm以上の太り、細りが発生した。
×:細線の欠けが発生した。
[1辺が100mmである正方形ベタパターンの印刷画像の高品位・高精細さ]の評価
◎:レベリング性良く平滑な印刷画像であった。
〇:レベリング性はやや劣ったが実用上の許容範囲であった。
△:レベリング性は実用上の許容範囲であったが、印刷ムラが発生した。
×:レベリング性が悪く実用上許容できないものであり、印刷ムラも発生した。
【0074】
なお、実施例4のインキ組成物を用いて200μmライン幅のブラックマトリックス(格子)を半自動スクリーン印刷機で印刷し、また実施例6のインキ組成物を用いて150μmライン幅のブラックストライプラインをシリンダープレス機で高速スクリーン印刷したところ、いずれも滲みや欠け等の欠損がなくラインの片側ダレ幅7〜8μmである高精細なスクリーン印刷物が得られた。
また、実施例5のインキ組成物を用いて100μmライン幅を含むレジストパターンをシリンダープレス機で印刷したところ、滲みや欠け等の欠損がなくパターンエッジのダレ幅6μmである高精細な高速スクリーン印刷物が得られた。
【0075】
また、実施例7のインキ組成物を用いて80μm角面積、膜厚25μmのスペーサーパターンをシリンダープレス機で印刷したところ、滲みや欠け等の欠損がなくパターンエッジのダレ幅10μmである高精細な高速スクリーン印刷物が得られた。
また、実施例2のインキ組成物を用いて、300μmφのドットパターンを含む導光板ドット群を印刷したところ、滲みや欠け等の欠損がなくパターンエッジのダレ幅3μmである高精細な高速スクリーン印刷物が得られた。
また、実施例8、実施例9のインキ組成物で作製された塗膜の体積抵抗値測定結果は、それぞれ1.0×10
−1Ω/cm、9.0×10
−1Ω/cmであり、導電性塗膜として予定したとおりの性能が得られることを確認できた。
フィック加飾のみならず、電気・電子部品への高速スクリーン印刷においても、その印刷物のデザインの多様化、印刷画像の高精細化が進み、微細パターンと面積の広いベタパターンが共存する印刷物の簡易的且つ低コスト且つ高速での生産の要求が増している。また、ベタパターンにおいては画像エッジ部のシャープ性を向上させるとともにレベリング性も良好とすることで、微細パターンとベタパターンが共存する印刷画像の視認性の更なる高品位・高精細化が求められている。
【解決手段】355メッシュ/インチのポリエステルメッシュ刷版における感光性乳剤膜にフラット加工して製版されたスクリーン刷版を用いて、400mm/秒のスキージー速度で被印刷体に高速スクリーン印刷して印刷物を作製したときに、前記刷版の印刷画像設計寸法に対して印刷画像エッジのダレ幅が10μm以内となる印刷物が作製できる高品位・高精細の高速スクリーン印刷用インキ組成物であって、沸点が170℃以上の溶媒を溶媒全体の70重量%以上含有し、重量平均分子量2000以上のプレポリマー又はポリマーを前記インキ組成物全量に対し7重量%以上含有し、且つ、25℃におけるBH型回転粘度計で粘度が6Pa・s以上、30Pa・s未満、チキソトロピックインデックス(TI値)が2.0〜8.0、JIS K5701−1:2000に従った25℃における平行板粘度計(スプレッドメーター)による流動性測定法で測定開始1分後の前記インキ組成物の流動半径測定値が14.0〜24.0mmであることを特徴とする高速スクリーン印刷用インキ組成物。