(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968591
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】整形外科用関節を制御する方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/68 20060101AFI20160728BHJP
A61F 2/62 20060101ALI20160728BHJP
A61F 2/64 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
A61F2/68
A61F2/62
A61F2/64
【請求項の数】24
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-532428(P2010-532428)
(86)(22)【出願日】2008年11月5日
(65)【公表番号】特表2011-502593(P2011-502593A)
(43)【公表日】2011年1月27日
(86)【国際出願番号】DE2008001821
(87)【国際公開番号】WO2009059594
(87)【国際公開日】20090514
【審査請求日】2011年4月6日
【審判番号】不服2014-16158(P2014-16158/J1)
【審判請求日】2014年8月14日
(31)【優先権主張番号】102007053389.8
(32)【優先日】2007年11月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットー・ボック・ヘルスケア・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Otto Bock HealthCare GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】プシュ、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ボイテン、ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ツァーリング、スフェン
【合議体】
【審判長】
高木 彰
【審判官】
平瀬 知明
【審判官】
関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−524483(JP,A)
【文献】
特開平5−212070(JP,A)
【文献】
特表2001−514925(JP,A)
【文献】
特表2003−527926(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/069264(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/024876(WO,A2)
【文献】
特表2002−533161(JP,A)
【文献】
特開2001−218778(JP,A)
【文献】
特開2005−230207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/60-2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢の整形外科用関節を、少なくとも1自由度で、調整可能なアクチュエータによって、制御するための方法であって、このアクチュエータは、或る肢に取り付けるための上方の接続手段と、これらの接続手段から遠位で関節式に設けられた整形外科要素とを有する整形外科用装置を、平面歩行とは異なる歩行状況に適合させるために用いられ、前記方法は、以下の工程を備える。
a)前記整形外科用装置の複数のパラメータを複数のセンサによって検出すること、
b)前記検出されたパラメータを、複数のパラメータおよび/またはパラメータ・プロファイルに基づいて作成されかつコンピュータ・ユニットに保存された複数の基準と比較すること、
c)前記検出されたパラメータおよび/またはパラメータ・プロファイルに基づいて最も適切である基準を選択すること、および
d)運動抵抗、可動域、駆動力および/または運動抵抗、可動域、駆動力のプロファイルを、前記選択された基準に基づいて適合させ、平面歩行とは異なる特殊機能を制御することであって、
前記特殊機能は、着地期および股関節伸展期における伸展制動および/または屈曲制動を、平面歩行のための立脚期制御の制動より上のレベルへ高めることである、平面歩行とは異なる特殊機能を制御すること、及び、
前記特殊機能では、着地期および股関節伸展期における調整された屈曲制動および/または伸展制動を、完全な股関節伸展まで維持すること。
【請求項2】
前記アクチュエータとしては、スイッチ、ポンプ、エネルギ貯蔵装置および/または電気モータを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータとしては、関節角度および/または関節角度の変化のプロファイルを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータとしては、軸方向力および/または軸方向力プロファイルを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータとしては、関節トルクおよび/または関節トルクの変化のプロファイルを用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータとしては、垂直方向運動および/または垂直方向運動のプロファイルを用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータとしては、水平方向運動および/または水平方向運動のプロファイルを用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータとしては、前記整形外科用装置の一部分の、空間での傾斜角および/または前記整形外科用装置の一部分の傾斜角の変化のプロファイルを用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのパラメータまたパラメータのプロファイルが、1つの基準に纏められていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載の方法。
【請求項10】
複数の基準が、1つの特殊機能を開始することができることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記特殊機能では、着地期における伸展制動および/または屈曲制動を、最大値へ高めることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
整形外科用の膝関節の場合に、前記特殊機能を、下腿に作用する軸方向力の低下の際に、および膝関節が伸展されているか伸展する際に、開始し、前記特殊機能では、屈曲制動を減少させることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
更に、定められたレベルより下への軸方向力の低下を考慮することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
整形外科用の膝関節の場合に、特殊機能を、下腿が後方に傾斜されている際に、膝関節が伸展された際に、および、膝トルクが、定められたレベルより低い際に、開始し、前記特殊機能では、屈曲制動を減少させることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上方への垂直方向加速度があって、軸方向力が、定められたレベルより低い場合に、前記特殊機能を開始し、この特殊機能では、屈曲制動を減少させることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
後方への水平方向加速度があって、軸方向力が、定められたレベルより低い場合に、前記特殊機能を開始し、この特殊機能では、屈曲制動を減少させることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記制動を、持ち上げ期および/または着地期中に調整することを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記制動を、立脚期中にまたは遊脚期中に調整することを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1に記載の方法。
【請求項19】
前記遠位に設けられた整形外科要素の低トルクの持ち上げを、力センサまたはトルクセンサによって検出することを請求項1ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
低トルクの持ち上げを、前記遠位に設けられた整形外科要素の垂直方向加速度の測定および関節における屈曲の検出によって、検出することを特徴とする請求項1ないし19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記持ち上げ期では、プレストレスされたばね機構により屈曲を支援することを特徴とする請求項1ないし20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記屈曲制動が減少した後に、自由な伸展を、時間制御によって調整することを特徴とする請求項1ないし21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記時間制御を機械式または電子式に行なうことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のパラメータを歩行中に確定することを特徴とする請求項1ないし23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢の整形外科用関節を、屈曲および/または伸展方向に、整形外科用装置を平面歩行とは異なる歩行状況に適合させるための調整可能なアクチュエータによって、制御するための方法に関する。整形外科用装置は、或る肢に取り付けるための上方の接続手段と、これらの接続手段から遠位で関節式に設けられた整形外科要素とを有する。
【背景技術】
【0002】
出願日後に刊行された文献である特許文献1は、上方の接続手段と、人工膝関節に取り付けられている義足足部に接続するための要素とを有する義肢装置を、階段上りに適合させるための、屈曲方向における調整可能な制動によって、受動的な人工膝関節を制御するための方法に関する。この場合、義足足部の低トルクの持ち上げを検出し、続いて、持ち上げ期における屈曲制動を、平面歩行のために適切であるレベルより下まで減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE 10 2006 021 802
【特許文献2】EP 1 058 524 B1
【発明の概要】
【0004】
従来の技術から始まって、本発明の目的は、特別な歩行状況を考慮しかつ整形外科用装置の適切な挙動を保証することを可能にする、整形外科用関節を制御するための方法を提供することである。
【0005】
本発明によれば、上記目的は、主請求項の複数の特徴を有する方法によって解決される。この方法の好都合な実施の形態および改善は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明では、下肢の人工関節および矯正関節を意味する整形外科用関節を、少なくとも1自由度で制御するための方法は、調整可能なアクチュエータを用いて、例えば、屈曲および/または伸展方向での制動を変化させることによって、異なった歩行状況への適合を行なうことを提案する。整形外科用関節が統合されていてなる整形外科用装置は。この場合、矯正具または義肢、例えば、義足足部のための遠位の接続手段と、或る肢に取り付けるための近位の接続手段とを有する人工膝関節であってもよい。同様に、整形外科用装置が、人工膝関節に取り付けられた義足足部と、下腿断端へ取り付ける接続手段とを有する人工膝関節のみを具備することが提案されている。体外義肢のほかには、前記方法で制御されることができる膝関節矯正具または足関節矯正具もある。整形外科用の膝関節の場合に、接続手段に対し遠位で関節式に設けられた整形外科要素としては、矯正具では、足支持部を有する下腿用副木が、義肢では、義足足部を有する下腿シャフトが見なされる。足関節のための整形外科用装置の場合に、矯正具に関しては、足支持体および取付手段が下腿に設けられ、義肢においては、義足足部に、下腿に取り付けるための手段が備えられるべきである。
【0007】
整形外科用装置には、整形外科用装置のまたは肢の複数のパラメータを検出する複数のセンサが設けられている。これらの検出されたパラメータは、複数のパラメータおよび/またはパラメータプロファイルによって作成された基準と比較される。コンピュータユニットに記憶されているかつ整形外科用装置の所定の移動状態または負荷状態を、所定の歩行状況に割り当てるこれらの基準に基づいて、検出されたパラメータおよび/またはパラメータプロファイルに基づき最も適切と見なされる所定の基準が選択される。基本的には、複数の基準も、検出されたパラメータまたはパラメータプロファイルに基づいて、適切と見なさねばならない、という可能性がある。次に、追加の基準に基づいて選択が行なわれるか、あるいは複数の特殊機能が重ね合わされる。この場合、複数のセンサは、歩行中に、好ましくは平面歩行中に、パラメータを検出する。それ故に、整形外科用装置の使用者が、自然なパターンに対応していない動きを実行する必要なしに、特殊機能を開始する可能性を有する。歩行中に、個々のパラメータの僅かな偏差を検出し、基準に纏められた他のパラメータおよび偏差との相互関係で評価することによって、歩行から特殊機能の開始がなされるように、間近の運動シーケンスを見積もることができることが可能である。立脚中の普通でない運動シーケンスによって、例えば、前足への、度重なる、迅速な負荷によって、あるいは、踵および前足への、不規則な、交互の負荷から生じる波型運動の実施によって、特殊機能を活発化することが、従来の技術から知られている。これに対し、本発明に係わる方法では、歩行の中断なしに、切換を行なうことができる。それ故に、意識的な始動処置を何ら必要としない「直感的」制御が生じる。このことは、特に義肢着用者の場合に、着用快適性を高めかつ安定性を高める。何故ならば、誤操作が減じられ、または除外されるからである。
【0008】
平面歩行とは異なる特殊機能を制御するために、運動抵抗、可動域、駆動力および/または運動抵抗、可動域、駆動力のプロファイルが、選択された基準に従って適合されることが提案されている。特殊機能の制御または特殊機能の開始は、1つの選択された基準または複数の選択された基準によってなされ、例えば、屈曲制動および/または伸展制動の、平面歩行にとって適切であるレベルとは異なるレベルへの適合、ラチェットの解除、駆動装置の調整および/またはストッパの調整を含む。受動的構成要素、例えば、液圧装置、ブレーキまたはストッパの調整の変化によって、整形外科用装置には、追加の運動エネルギが供給されない。それ故に、この関連で、受動的アクチュエータにも言及される。受動的アクチュエータの調整、例えば、スライダの移動による液流横断面(Stroemungsquerschnitt)の減少は、エネルギを必要とする。しかしながら、このエネルギは、義肢または矯正具の運動エネルギの増加という結果にならない。能動的アクチュエータは、運動シーケンスを能動的に支持することができるポンプ、電気的駆動装置等を意味する。アクチュエータとしては、スイッチ、ポンプ、電気モータ、エネルギ蓄積装置、または他の駆動装置を用いることができる。エネルギ蓄積装置としては、例えば、ばね、蓄圧器等がある。これらの装置は、自らの中に蓄積されたエネルギを、制御された方法で、装置に放出する。
【0009】
かくして、特殊機能、例えば、交互の階段上りを人工膝関節によって実行し、かつ義肢着用者のために階段上りを容易化することが可能である。しかも、義足が、突然、折れ曲がり、または階段の段で動きが取れなくなる危険性が生じることはない。更に、かくして、特殊機能を、種々の開始位置から呼び出すことができるのは、例えば、階段上りを、歩行の中断なしに、立っている状態から、まず最初に、義足の側で、または、まず最初に反対側で行なうことが意図されるとき、最初の段を上がることが意図されるとき、または最後の段に達するときである。同様に、殊機能を、1つの開始位置から、複数の異なった基準を介して呼び出すことが可能であるのは、複数の基準が、予期される所定の歩行パターンまたは予期される歩行状況を明示するときである。このことによって、全体として、関節の自動制御が可能となる。整形外科用装置の使用者が、意識的に、自然の運動シーケンスとは異なる操作をする必要がない。
【0010】
従って、義肢着用者および/または矯正具着用者が、拡大した機能に慣らす長い期間を必要とすることなく、如何なる状況にも適合される整形外科用装置を与えられることが可能である。本発明は、当該の開始位置および歩行状況が、特定の、著しい負荷または負荷シーケンスあるいはパラメータ・シーケンスを有し、これらが、特殊機能を呼び出し、かつ、自由度の、特に、制動の、例えば屈曲制動および/または伸展制動の、対応の変化を行なうための、そのための基準を形成するために適切であるという状況を利用する。
【0011】
特に、受動関節の制御が、制動の調整によって可能である。同様に、ラチェット、例えば停止用ラチェットが解除またはセットされ、あるいはストッパが調整され、それ故に、可変の屈曲角が実現されることができることが提案されている。更に、整形外科用装置の複数の所定の要素、例えば、足部または膝関節における伸展運動または屈曲運動の支持手段を能動的に調整するために、或る駆動装置を調整することが可能である。
【0012】
1つのまたは複数の特殊機能を起動させるために用いられる基準の1つのパラメータとして、整形外科用装置の構成要素の中で調整される軸方向力または軸方向力プロファイルを、例えば、矯正具の下腿用副木に、または人工膝関節の下腿シャフトに用いることが可能である。この場合、力のプロファイルとして、軸方向力の上昇または低下、軸方向力プロファイルの変化および軸方向力低下の速度を用いる。これらのパラメータを確定するために、整形外科用装置内で軸方向力を検出する複数の力センサを用いる。好ましくは短いサイクルで、繰り返される測定によって、軸方向力プロファイルを検出することができる。
【0013】
更に、特殊機能の選択の際の、考慮されるべきパラメータとして、関節角度、あるいは関節角度の変化のプロファイルを用いることが提案されている。関節角度の変化は、歩行中の、関節軸を中心とした旋回速度または加速度の形態で、検出される。関節角度によって、例えば、整形外科用装置の複数の構成要素の相対位置を確定することができる。このことによって、歩行の所定の時期を検出し、このことから、予期される歩行状況を逆推理し、および/または整形外科用装置への予期される負荷を検出しまたは評価することが可能である。
【0014】
更に、関節の中で作用するトルク、関節トルクの変化、または関節トルクの変化のプロファイルを、パラメータとして用いることができる。何故ならば、如何なる歩行状況にも、所定の時点で、所定のトルク値を割り当てることができるからである。任意の或る段階自体における歩行トルク、または関節トルクの変化のプロファイルによって、整形外科用装置の使用者が歩行状態にいるか否かまたはどの歩行状況にいるのか、および、次の歩行状況を出来る限り最適に支援するために、制動手段のどのような追加の調整を行なわねばならないかを検出することが可能である。
【0015】
更に、提案されているように、整形外科用装置の少なくとも1つの構成要素の垂直方向運動が検出され、特殊機能の開始を確定するためのパラメータとして用いられるのは、このパラメータが、他のパラメータと共に、所定の数値範囲にあり、従って、定められた基準を満たす場合である。対応の複数のセンサによって検出される只の垂直方向運動のほかに、垂直方向運動のプロファイル、すなわち、垂直方向運動の速度または垂直方向加速度も、パラメータとして用いることができる。その目的は、患者がどの開始位置にいて、その歩行状況が予期されるかを検出するためである。
【0016】
驚いたことに、水平方向運動および/または水平方向運動のプロファイルをパラメータとして用いることができることが明らかになった。整形外科用装置を用いて階段を上がるとき、歩行中に、後方に従って歩行方向と逆方向に導かれる下腿が、信頼できる信号を提供することが明らかになった。この場合、膝が歩行方向に明確に足関節の前方にある。
【0017】
同様に、整形外科用装置の制御のために役立つのは、整形外科用装置の一部分の空間における傾斜角、すなわち、構成要素が空間においてどの傾斜を有しているのかを確定することである。このことは、基準変数として空間における方向づけ、例えば、重力方向を有する絶対角度センサによって、あるいは種々の他のセンサからのコンピュータによる検出によって、なされることができる。瞬間傾斜角のほかに、同様に、傾斜角の変化、整形外科用装置の一部分の傾斜角の変化のプロファイルを、パラメータとして用いることが可能である。その目的は、整形外科用装置の制動の際に、いつ特殊機能が開始されるか、およびどの特殊機能が開始されるか、を決定するためである。傾斜角を、複数の加速度センサおよび1つのジャイロスコープによって記録された加速度および角速度の、その計算によって検出することができる。
【0018】
複数のパラメータまたはパラメータプロファイルに、従って2つまたはそれより多いパラメータを、1つの基準に纏めることは好ましい。その目的は、センサデータに基づく開始状態の出来る限り正確な検出、正確な割り当て、およびどの特殊機能が開始されるか否かを決定するためである。
【0019】
同様に、複数の基準、または複数の基準の充足が、特殊機能を開始することができることが提案されている。このことによって、特殊機能、例えば、交互の階段上りが、異なった歩行速度から、位置から、あるいは、まず義足または自然の脚で始められる、という事情が考慮される。従って、まさしく1つの特殊機能が開始されねばならないが、まさしくこのような機能が開始されるように、複数の異なった基準が満たされていることができることが生じる。
【0020】
本発明の実施の形態は、制御方法が、特殊機能において、下肢の着地期および股関節伸展期における伸展制動および/または屈曲制動を、平面歩行のための遊脚期制御の制動より上のレベルへ高めることを提案する。このことによって、股関節のみならず膝関節の、および足関節の、制御された伸展が可能である。
【0021】
障害物を乗り越えるために、持ち上げ期では、まず屈曲制動、つぎに伸展制動を減じることが必要である。その目的は、例えば、ドアの敷居、または床にある物体を乗り越えねばならないので、出来る限り大きな歩みがなされることができるためであり、足部または義足足部を、次に高い段に着地することが意図されていないためである。しかしながら、足部を着地した後には、特殊機能において、着地期における屈曲制動および/または伸展制動を、最大値に高めることが提案されている。このことは、交互の階段上りのみならず、障害物の乗り越えにおいても当て嵌まる。その目的は、膝関節が、伸展の際に、折れ曲がりまたは最終ストッパへの激しい当接に対し防止されているためである。同様に、足部または義足足部の着地の直前には、伸展前に伸展制御が増大され、それ故に、足部または義足足部の位置決めが、患者によって直接制御可能な腰角度によってなされることができる。伸展制動の、最大値への増大は、股関節伸展トルクが不十分な場合には、折れ曲がりを減じるか、回避するという利点を有する。この場合、着地および股関節伸展期における高い制動が、完全な股関節伸展まで維持されることは好ましい。
【0022】
関節内での元来の屈曲制動を、膝角度の変化に従って増大することができることは好ましい。何故ならば、膝角度によって、開始状態に関する多数の情報を検出することができるからである。遊脚期制御の際に平面歩行に適切である膝角度よりも通常は大きい、定められた膝角度が達成されるや否や、伸展制動が増大される。その代わりにまたは補足的に、伸展制動を、下腿シャフトまたは下腿構成要素に作用する軸方向力に従って、増大または減少することができる。膝がほぼ伸展されている際に、軸方向力は、十分に急速に、ほぼ0まで低下するとき、このことは、階段上り過程の開始のためのインジケータである。それ故に、所定の制御を、制御装置の内で行なうことができる。
【0023】
その代わりに、整形外科用膝関節の場合には、特殊機能が、下腿シャフトに作用する軸方向力が、所定のレベルに落下する際に、および膝関節が伸展されるか、伸展している際に、開始され、屈曲制動が減少されることが提案されている。追加のパラメータとして、軸方向力の絶対値を用いることができる。その目的は、基準を定めるためである。軸方向力が、定められたレベルより下に低下するとき、特殊機能が開始される。次に、この機能では、屈曲制動が減少される。
【0024】
補足的に、またはその代わりに、整形外科的膝関節の場合、特殊機能が、下腿が後方に傾斜されており、膝関節が伸展されており、膝トルクが、定められたレベルより下であるとき、開始され、この特殊機能では、屈曲制動が、定められた値より下に減少されることが提案されている。後方に傾斜した下腿があるのは、膝関節が足関節の明らかに前方にあるときである。
【0025】
同様に、上方への垂直方向加速度があるとき、軸方向力が、定められたレベルより下であるとき、屈曲制動および/または伸展制動の変化を引き起こす特殊機能が開始されること、およびこの特殊機能では、屈曲制動が減少されることが提案されている。
【0026】
或る変形例は、後方へ、従って歩行方向と逆方向に水平方向加速度があるとき、および、軸方向力が、定められたレベルより下にあるとき、特殊機能が開始され、この特殊機能では、屈曲制動が減少されることを提案する。
【0027】
屈曲制動および/または伸展制動の調整は、好ましくは持ち上げ期および/または着地期中に、例えば、足部または義足足部が持ち上げ後に再度着地され、次に、軸方向力の増大が検出されるときに、なされる。同様に、膝角度がほぼ一定であるとき、伸展制動および屈曲制動を増加することができる。何故ならば、このことが低い機械抵抗に結びつけられており、従って、比較的に省エネで実行されことが可能だからである。屈曲制動を持ち上げ期に、最小値に減じることができる。それ故に、如何なるシステムでも作用する制動が、摩擦の故に、最早増加されることはない。
【0028】
その代わりに、制動が、立脚期または遊脚期中に調整されることが提案されている。
【0029】
同様に、遠位に設けられた整形外科要素の低トルクの持ち上げを、力センサまたはトルクセンサによって検出することが可能である。制御される整形外科用装置の出来る限り簡単な構造を得るためには、検出が、種々の制動の変化と同様に、機械的になされることができる。遠位の整形外科用磯の低トルクの持ち上げを検出した後に、同様に、屈曲制動を、平面歩行のために適切または最適であるレベルより下にあるレベルに減少させることができる。
【0030】
屈曲制御を減少させることによって、屈曲抵抗を低下させることにより、次の段への義足足部または足部の着地を可能にする関節角度を得ることが可能である。股関節屈曲の場合、および義足足部の、または遠位に設けられた整形外科要素の低トルクの持ち上げの場合に得ることができる膝角度は、股関節を前方に運ぶ際に、または重力による対応の伸展の際に、段の縁部を乗り越え、または障害物を越えおよび義足足部または遠位に設けられた整形外科要素を越えて位置決めし、または障害物の後方に着地するためには十分である。この場合、質量分布を、以下のように、すなわち、質量の中心が出来る限り遠位にあって、それ故に、整形外科用装置の全重量の増加なしに、膝の屈曲の望ましい効果が、義足足部の、または、遠位に設けられた整形外科要素の低トルクの持ち上げの際に得られるように、構成されていることは好都合である。
【0031】
低トルクの持ち上げの検出は、遠位に設けられた整形外科要素の水平方向加速度の測定によって、および関節内の屈曲の検出によってなされることができる。
【0032】
基本的には、同様に、持ち上げ期における屈曲支援のみが、予備緊張されたばね機構によってなされることが提案されている。膝屈曲のほかに、足部の足底屈もなされることができる。それ故に、足先が着地される。
【0033】
屈曲制動の減少がなされた後に、自由な伸展が、時間制御によって調整することができる。それ故に、システム固有の抵抗のみが、伸展方向に作用可能である。時間制御は機械的または電気的になされることができる。パラメータを、歩行中に検出することは好ましい。その目的は、運動シーケンスの中断なしに、複数のアクチュエータによって変化を可能にすることができるためである。
【0034】
伸展方向または屈曲方向における制御のほかに、同様に提案されていることは、他の自由度で、例えば、正中外側の方向で、あるいは伸展方向、屈曲方向および正中外側の方向の混合形態でなされる。このような制御は、例えば、股関節または足関節では好都合である。他の、回転のまたは直進の自由度は、制御によって影響を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】受動的な人工膝関節による交互の階段上りの概略シーケンスを示す。
【
図2】受動的な人工膝関節による交互の階段上りの他の概略シーケンスを示す。
【
図3】受動的な人工膝関節による交互の階段上りの更に他の概略シーケンスを示す。
【
図4】受動的な人工膝関節による交互の階段上りの更に他の概略シーケンスを示す。
【
図5】受動的な人工膝関節による交互の階段上りの更に他の概略シーケンスを示す。
【
図6】受動的な人工膝関節による交互の階段上りの更に他の概略シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳述する。
図1には、人工膝関節2を装着した義肢着用者1が示されている。人工膝関節は、上方の取付手段によって、大腿断端に取り付けられている。義足20は、健康な、反対側の脚4と共に、階段の段の手前で立っている。
【0037】
次の段に達するためには、義足足部6を、段の角を越えて運ばねばならない。矢印7によって略示された能動的な股関節の屈曲が、矢印8によって示されている受動的な膝の屈曲を支援する。膝の屈曲は、義足足部6のみならず接続要素3の質量の慣性に基づき、人工膝関節2から義足足部6へと引き起こされる。この目的のために、最小限の屈曲制動が必要である。その目的は、股関節の屈曲後に、義足足部6が、前方へ揺動しないためであり、義足足部を蹴上げへまたは階段の段5の下方へ動かさないためである。
図2に示されている持ち上げ期では、目標は、義足足部6を出来る限り垂直方向に上方に運ぶことであって、このことは、場合によっては、後方への僅かな運動によって開始される。この場合、持ち上げが、結合要素3と大腿との間の屈曲角αによって、または、義足足部6の屈曲なしの、結合要素3における軸方向力の減少によって、検出される。同様に、階段上りモードを、かくして、股関節の屈曲と関連して、義足足部6の水平後方運動による、屈曲制動の、通常の遊脚期制御より下の値への、好ましくは、最小値への低下を検出することが可能である。
【0038】
階段の角を乗り越え、かつ、
図2に示される持ち上げ期を終了した後に、階段の段上での義足足部6の確かな位置決めが必要である。この目的のために、義足足部6を前方へ動かさねばならない。このことは、重力に基づく伸展によってなされることができる。この目的のために、伸展制動を減じることができるのは、このことが、持ち上げ期で既になさなかった場合である。伸展前に屈曲方向および伸展方向において十分に制動された人工膝関節2は、腰角度を変えることによって、義肢着用者1による義足足部6の位置決めを可能にする。降下期および股関節伸展期では、屈曲および伸展を強く制動することは好ましい。その目的は、股関節伸展トルクが不十分な場合に、着地の制御だけでなく、自発的な後退を阻止するためである。伸展は、制動されたままである。その目的は、股関節および膝の伸展際に、速度を制御することができるためである。このことは、
図3に示されている。
【0039】
図4では、着地期が終了されている。義肢着用者1は、股関節伸展トルクによって、膝の伸展を開始することができる。膝の伸展を、健康な足部の伸展によって支援することができる。
【0040】
図5では、股関節トルクを加えることによる、増大する、膝の伸展が示されている。増大する、膝の伸展は、有効なレバーを短縮し、股関節伸展により膝の伸展を容易化する。
【0041】
図6では、人工膝関節2を備えた脚の完全な伸展が示されている。反対側の脚4が、導かれて義足20の傍を通り、次の段に置かれる。それ故に、交互の階段上りは、受動的な人工膝関節によって可能である。
【0042】
従って、制御は、義足足部6の持ち上げ中に、屈曲抵抗が調整され、この屈曲抵抗が、次の段での義足足部6の踏み入れを可能にする膝角度αを可能にするように、調整されている。ばね機構による屈曲の支援が、義足足部を持ち上げかつ段の高さを越えることを容易化する。
【0043】
階段上りのモードが、低トルクの持ち上げの検出によって起動された後に、万が一、何らの活動がなされないときは、自由な伸展が調整され、この自由な伸展の調整は、時間に依存してなされる。時限素子は、機械式にも行なうことができる。低トルクの持ち上げの検出を、質量の慣性によって行なうことができるのは、健康な脚をまず着地させ、義肢を有する脚が、階段の第2の段をはじめて乗り越えることが意図されるときである。義足足部の圧力軽減がまずなされ、次に、人工膝関節における屈曲がなされるとき、階段上りが調整される。持ち上げ期の後の、従って、股関節の伸展期の間の、伸展方向および屈曲方向における制動は、人工膝関節の完全な伸展が達成されまたは検出されるまで、維持される。
【0044】
図7には、方法の略図が示されている。義肢または矯正具に設けられた複数のセンサによって検出される開始位置Aから始まって、センサデータが、メモリ・ユニットに記憶され、かつ種々の基準Kに纏められた、事前設定された数値または数値範囲と比較される。複数のセンサから送られる複数の信号状態または信号プロファイルが、基準Kを描くことは好ましい。
【0045】
例えば、所定の軸方向力が、膝角度および垂直運動との関連で測定されるとき、これらのセンサのかような値の際に、基準が生じることが可能である。それ故に、障害物の乗り越えの特殊機能Sが調整される。このことは、伸展制動および屈曲制動の適切な調節をもたらす。同様に、軸方向力の急速な低下の際に、膝が伸展されておりまたは伸展するときに、ならびに軸方向力が或るレベルより下であるとき、障害物の乗り越えの特殊機能Sに関する基準Kを、満たすことが可能である。それ故に、適切な制動調整を行なわねばならない。複数の検出された基準Kは、それぞれに必要な活動を、例えば、屈曲制動および/または伸展制動の減増、ラチェットの解除、駆動装置の調整、またはストッパの調整または取消を引き起こす。
【0046】
障害物の乗り越えを、例えば、所定のレベルより下への軸方向力の低下および膝の伸展の場合でも、検出することができる。同様に、或る基準が、空間、膝角度および低い膝トルクにおける、下腿のまたは下腿用添え木の所定の傾斜を、実現することによって、与えられていることが可能である。伸展した膝の場合のおよび軸方向力の比較的低いレベルの場合の、上方への軸方向加速度が、同様に、特殊機能、例えば、障害物の乗り越え、または交互の階段上りのための基準であってもよい。
【0047】
更に、開始位置Aから始まる複数の信号状態およびプロファイルを、種々の基準と比較することが可能である。複数の基準K同士のおよび1つの基準Kの中での複数の信号状態の比較は、増大した安全性を提供する。信号状態またはプロファイルの数が、1つの基準Kの中で増大するほどに、整形外科用装置または患者のその時々の状態が、一層正確に検出され、同様に、これにより、歩行状況が一層正確に記述される。1つの基準Kのために意図されたパラメータ内でのこの情報および信号状態またはプロファイルに基づいて、整形外科用装置の制動特性および運動シーケンスを適切に変化することができる。
【0048】
複数の基準Kは、同一の特殊機能を引き起こすことが可能である。このことによって、運動状態の正確な検出に関するより十分な安全性が可能となる。このことは必要である。何故ならば、複数の特殊機能S、例えば、障害物の乗り越えまたは交互の階段の上り下りが、このような機能の運動シーケンスに関して、平面歩行の運動シーケンスとは著しく異なっているが、平面歩行からこの特別な機能Sを検出することが困難だからである。以前では、特に目立った運動を実行して、或る特殊機能S、例えば、前足による繰り返される揺れ動きを調整したことによって間に合わせをしたが、本願の方法によって、制動挙動を、その時々の歩行状態に自動的に適合させることができる。
【0049】
平面歩行は、通常は、足部の持ち上げ後に前方へ動かされるべき脚を縮めることを必要とする。脚が縮められないときは、腰の持ち上げまたは分回し運動によって、最低地上高が十分に発生されることが可能である。生理学的に、脚は、膝の屈曲によっても縮められる。膝および下腿の代用をする義足では、下腿の質量比ならびに歩行の際の時間的なおよび運動的な周辺条件は、下腿が、極端に後方に揺り動かされ、従って、義足が、適時に伸展されず、従って負荷されないことをもたらす。従って、複数の患者は、非常に緩慢に歩き、あるいは、義肢は、下腿の揺動態様を著しく制動する適切な遊脚期制御手段を有する。高性能の屈曲制動装置は、異なった歩行速度を用い、義肢使用者がつまずかないが、脚が次の負荷期のために適時に再度伸展されているほどの、脚の自由を常に提供する。使用者が速く歩けば歩くほど、制動が一層強く作用する。
【0050】
しかしながら、階段の上りのためには、膝を、平面歩行のためよりも著しく大きく曲げねばならない。その目的は、乗り越えられるべき階段の段の角で引っかかることを回避するためである。より小さな障害物を一歩で乗り越えるためにも、減じられた屈曲制動を用いることができる。このために必要な低い屈曲制動は、しかし、上記の理由から、平面歩行のためには適切ではない。これからの歩みのための、その時々に必要な屈曲制動を検出するために、複数のセンサデータを、1つの基準の中で纏め、対応のパラメータを満たす際に、特殊機能を引き起こすことができる。空間における下腿の傾動が評価されるとき、義肢または矯正具が無負荷の際におよび膝が曲げられていない際には、階段上りのための低い屈曲抵抗を働かせることができる。義足への圧力が、膝の伸展の際に、軽減されるとき、負荷の低下の速度によって、義肢への圧力の完全な軽減前にも、階段上りのための低い屈曲抵抗を働かせることができる。このことによって、使用者は、屈曲を開始するためのより多い時間を有する。例えば、軸方向力の低下が、凸凹の地面を走る車両の中に立っている際に、検出されるとき、屈曲制動が余りに早くに解除されることを阻止するために、軸方向力の絶対値を、基準のための追加のパラメータとして用いることができる。
【0051】
同様に、大腿および下腿の角度プロファイルの評価によって、階段上りと平面歩行との区別を検出するが可能である。大腿が僅かに後方に曲げられるとき、屈曲制動の低下を予期せねばならない。
【0052】
足関節の制御のためには、つま先または前足領域が後方へ動いて、階段の段または障害物を乗り越えることを検出することは、好都合である。踵の着地の際には、階段の上りを容易化するために、背屈が許容されないほうがよい。これに対応して、背屈に対する抵抗が、着地後に増大される。これに対し、階段の下りの場合には、着地の際に、強い底屈が望ましい。義足足部または足部保持具の完全な着地を可能にするためには、背屈を許容するほうがよい。しかしながら、このことは、制御された着地を保証するために、益々、抵抗をもってなされる。
【0053】
基本的には、関節装置、特に膝関節における伸展抵抗も、患者を能動的制御および行動へ手引きするために、必要である。階段の下りを可能にする整形外科用膝関節は、従来の技術から知られている。屈曲方向における高い制動によって、整形外科用装置の使用者は、膝関節を制御された方法で曲げ、かくして、階段の次の段に達することができる。高い屈曲制動は、均等な動きを引き起こし、従って、反対側への圧力を軽減する。階段の上りの場合には、健康な膝関節での動きは、膝伸展トルクによって支援される。このトルクは、筋肉によって提供される。複数のアクチュエータによって膝の伸展を可能にする膝関節を有する整形外科用装置が知られている。必要なエネルギおよび生じる力に基づき、比較的重くて、外部エネルギに依存する膝関節が必要である。
【0054】
下肢の矯正具または義肢では、多くの場合に、階段の上りの際に膝を伸展するために、腰から、十分に高い伸展トルクを発生させることが可能である。しかし、膝が伸展し始めるや否や、膝は、身体の重心に対し後方へ移動する。それ故に、膝伸展トルクが増大する。この作用は、自己倍力式である。増大する有効なレバーアームの故に、硬くかつ不快な最終ストッパをもって、制御されない伸展がなされる。整形外科用装置の、階段の上りに適合された挙動を、外部エネルギの供給なしに保証するためには、階段の次の段への着地後の、調整可能なアクチュエータによる制御において、伸展制動の著しい増大がなされることが提案されている。この制動は、膝関節に作用する伸展トルクに逆らい、ほぼ一定の良好に制御可能な伸展が可能となるように、選択されることは好ましい。このことは、一定の制動によっても保証することができる。同様に、伸展につれて増大する制動作用を備えることが可能である。その目的は、身体の重心への膝関節の伸展が増大するにつれて、膝関節が、拡大するアクティブなレバーアームの力を受けるという、作用を相殺するためである。
【0055】
曲げられた膝関節による次の段への着地を、整形外科用装置に取り付けられた複数のセンサによっても、または、着地の際に機械的に作動可能なアクチュエータ、例えば、整形外科用装置上の軸方向力の故に関節の中で移動可能なピストンによっても随意に、実行することができる。伸展制動は、この場合、平面歩行のためのレベルを著しく上回るレベルに増大される。
【0056】
図8には、本発明の変形例が示されている。この変形例では、開始位置A1から始まって、複数の基準Kを介して、特殊機能S1を呼び出すことができる。整形外科用装置に複数のパラメータが検出されるとき、異なったパラメータは、異なった基準に纏められることが可能である。このことによって、2つの異なった基準が、特殊機能Sの開始をもたらすことが可能である。
【0057】
本発明の変形例が、
図9に示されている。この図には、異なった開始位置A1,A2から、異なった基準Kを介して、まさしく1つの特殊機能S1を呼び出すことができることが示されている。
【0058】
最後に、
図10に示されているように、1つの開始位置A1から、異なった基準Kおよびパラメータ・プロファイルを介して、種々の特殊機能S1,S2,S3への切換をすることができる。例えば、各々のパラメータの、例えば、軸方向力、膝角度およびトルクの、同一の瞬時値が、開始位置A1にあることが生じることがある。しかしながら、これらのパラメータのプロファイルによって、異なった歩行状況を予測することができ、従って、対応の特殊機能S1,S2,S3を開始することができるのは、駆動装置のスイッチをオンまたはオフにし、エネルギ貯蔵装置を動かし、制動装置を変更し、あるいは、ブレーキを動かすことによってである。同様に、ストッパを調整し、ラチェットを解除することができる。
【符号の説明】
【0059】
A パラメータ
K 基準
S 特殊機能