【文献】
居村岳広「電気自動車への非接触充電の現状と将来」電気学会全国大会講演論文集、2011.03.16発行、2011巻第4号、4.S18(14)〜(17)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給電共振コイルと受電共振コイルとを共振させることによって、前記給電共振コイルから前記受電共振コイルに電力を磁界エネルギーとして送電する無線電力供給システムであって、
前記給電共振コイルのコイル径に対して前記受電共振コイルのコイル径を小さくし、前記給電共振コイルのコイル径と前記受電共振コイルのコイル径との比が、100:7から100:15までの範囲内であることを特徴とする、無線電力供給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、上記に開示された技術によって送電効率の低下を防止することができる。しかしながら、上記開示技術では、共振周波数を変更する制御装置や、2つの共振器間の結合強度を変化させる制御装置や、給電コイルと給電共振コイルとの距離及び受電コイルと受電共振コイルとの距離を調整する制御装置が必要となり、構成が複雑になるうえにコストが増大してしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来のように共振周波数を変更する制御装置や、2つの共振器間の結合強度を変化させる制御装置や、給電コイルと給電共振コイルとの距離及び受電コイルと受電共振コイルとの距離を調整する制御装置を使用せずに、2つの共振器間の磁気結合を安定した状態に維持して、送電効率を安定させた状態で電力を送電可能な空間領域を広げることができる無線電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明の一つは、給電共振コイルと受電共振コイルとを共振させることによって、前記給電共振コイルから前記受電共振コイルに電力を磁界エネルギーとして送電する無線電力供給システムであって、前記給電共振コイルのコイル径に対して前記受電共振コイルのコイル径を小さく
し、前記給電共振コイルのコイル径と前記受電共振コイルのコイル径との比が、100:7から100:15までの範囲内であることを特徴とするものである。
【0010】
上記の構成によれば、給電共振コイルのコイル径に対して受電共振コイルのコイル径を小さくした空間領域においては、送電周波数等を調整しなくても、給電共振コイルと受電共振コイルとの磁気結合を安定した状態で維持することができる。即ち、従来のように、給電共振コイルと受電共振コイルとが同一径の場合には、安定した磁気結合となる距離の範囲が極めて狭かったため、送電周波数等を調整することがよく行われていたが、本発明によれば、従来よりも広い距離において磁気結合の安定が維持されるため、送電周波数等を調整する作業を不要にすることができる。これにより、給電共振コイルから受電共振コイルへ送電する際に、送電効率を安定させた状態で送電可能な空間領域を広げることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記給電共振コイルのコイル径と前記受電共振コイルのコイル径との比が、100:7から100:15までの範囲内であることを特徴とする無線電力供給システムである。
【0012】
上記の構成によれば、給電共振コイルのコイル径と受電共振コイルのコイル径との比を、100:7から100:15までの範囲内で構成することにより、給電共振コイルと受電共振コイルとの磁気結合をより安定した状態で維持することができる。即ち、従来よりも、より広い距離において磁気結合の安定が維持される。これにより、給電共振コイルから受電共振コイルへ送電する際に、送電効率を安定させた状態で送電可能な空間領域をより広げることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、交流の電力を供給する電力供給部と、前記電力供給部に接続され、前記給電共振コイルに対して電磁誘導により前記電力を供給する給電コイルと、前記受電共振コイルから電磁誘導により前記電力が供給される受電コイルと、前記受電コイルに接続された電力受給部とを備えていることを特徴とする無線電力供給システムである。
【0014】
上記の構成によれば、電力供給部から供給された電力を給電コイルから給電共振コイルに送電するに際して、送電磁界共鳴状態を創出することなく電磁誘導を用いることにより電力を送電することができる。また、同様に、受電した電力を受電共振コイルから受電コイルに送電するに際して、送電磁界共鳴状態を創出することなく電磁誘導を用いることにより電力を送電して電力受給部に出力することができる。これにより、給電コイルと給電共振コイルとの間、及び、受電共振コイルと受電コイルとの間で、共振周波数で同調させる必要がなくなるので設計の簡易化が図れる。
【0015】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、給電共振コイルと受電共振コイルとを共振させることによって、給電共振コイルから受電共振コイルに電力を磁界エネルギーとして送電する無線電力供給方法であって、前記給電共振コイルのコイル径に対して前記受電共振コイルのコイル径を小さく
し、前記給電共振コイルのコイル径と前記受電共振コイルのコイル径との比が、100:7から100:15までの範囲内にすることを特徴とするものである。
【0016】
上記の方法によれば、給電共振コイルのコイル径に対して受電共振コイルのコイル径を小さくした空間領域においては、送電周波数等を調整しなくても、給電共振コイルと受電共振コイルとの磁気結合を安定した状態で維持することができる。即ち、従来のように、給電共振コイルと受電共振コイルとが同一径の場合には、安定した磁気結合となる距離の範囲が極めて狭かったため、送電周波数等を調整することがよく行われていたが、本発明によれば、従来よりも広い距離において磁気結合の安定が維持されるため、送電周波数等を調整する作業を不要にすることができる。これにより、給電共振コイルから受電共振コイルへ送電する際に、送電効率を安定させた状態で送電可能な空間領域を広げることができる。
【発明の効果】
【0017】
従来のように共振周波数を変更する制御装置や、2つの共振器間の結合強度を変化させる制御装置や、給電コイルと給電共振コイルとの距離及び受電コイルと受電共振コイルとの距離を調整する制御装置を使用せずに、2つの共振器間の磁気結合を安定した状態に維持して、送電効率の低下を防止することができる無線電力供給システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、以下に本発明に係る無線電力供給システム及び無線電力供給方法の概要を
図1に基づいて説明する。
【0020】
本発明に係る無線電力供給システム101は、給電共振コイル105と受電共振コイル108とを共振させることによって、給電共振コイル105から受電共振コイル108に電力を磁界エネルギーとして送電するにあたって、給電共振コイル105のコイル径Dに対して受電共振コイル108のコイル径Eを小さくしたことを特徴とするものである。
【0021】
ここで、給電共振コイル105及び受電共振コイル108とは、例えば、コイルを使用した共振器であり、スパイラル型やソレノイド型やループ型などのコイルが挙げられる。共振とは、給電共振コイル105及び受電共振コイル108が共振周波数において同調することをいう(例えば、交流電源106から、給電共振コイル105及び受電共振コイル108が有する共振周波数と同一の周波数の電力が出力されることにより実現される)。なお、コイル径とは、コイルの径方向における長さをいう。
【0022】
これにより、給電共振コイル105と受電共振コイル108との間においては、送電周波数等の調整をしなくても、給電共振コイル105と受電共振コイル108との間の磁気結合を安定した状態で維持することができる。即ち、従来のように、給電共振コイル105及び受電共振コイル108が同一径の場合には、安定した磁気結合となる距離の範囲が極めて狭かったため、送電周波数等を調整することがよく行われていたが、本構成によれば、従来よりも広い距離において磁気結合の安定が維持されるため、送電周波数等を調整する作業を不要にすることができる。これにより、給電共振コイル105から受電共振コイル108へ送電する際に、送電効率を安定させた状態で送電可能な空間領域を広げることができ、ひいては、任意の場所に持ち運ばれるバッテリ等を備えた電力受給部109への給電のように、無線電力供給システムの用途を広げることができる。
【0023】
(実施例)
次に、上記で説明した無線電力供給システム101を簡易な構成で実現した無線電力供給システム1について説明する。
【0024】
(無線電力供給システム1の構成)
図2に示した無線電力供給システム1は、送電装置10と受電装置12とを含むシステムであり、送電装置10から受電装置12に電力を磁界エネルギーとして送電する。送電装置10は、
図2に示すように、その内部に給電コイル4と、給電共振コイル5とを有する。そして、給電コイル4には交流電源の代わりにネットワークアナライザ20(アジレント・テクノロジー株式会社製)の出力端子21を接続する。また、受電装置12は、その内部に受電コイル7と、受電共振コイル8とを有する。そして、受電コイル7には、電力受給部の代わりにネットワークアナライザ20の入力端子22を接続している。
【0025】
ネットワークアナライザ20は、任意の周波数で交流電力を出力端子21から給電コイル4に出力可能としている。また、ネットワークアナライザ20は、受電コイル7から入力端子22に入力された電力を測定可能としている。更に、ネットワークアナライザ20は、詳細は後述するが、
図3に示す挿入損失『S21』や、
図4に示す結合係数や、送電効率を測定可能としている。
【0026】
給電コイル4は、ネットワークアナライザ20から得られた電力を電磁誘導によって給電共振コイル5に供給する役割を果たす。この給電コイル4は、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を1回巻にして、本実施例及び比較例に合わせた給電コイル径に設定している。ここで、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離をAとして、本実施例及び比較例では、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離Aを所定の値に固定している。
【0027】
受電コイル7は、給電共振コイル5から受電共振コイル8に磁界エネルギーとして送電された電力を電磁誘導によってネットワークアナライザ20の入力端子22に出力する役割を果たす。この受電コイル7は、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を1回巻にして、本実施例及び比較例に合わせた受電コイル径に設定している。ここで、受電共振コイル8と受電コイル7との間の距離をBとして、本実施例及び比較例では、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bを所定の値に固定している。
【0028】
給電共振コイル5及び受電共振コイル8は、それぞれLC共振回路であり、磁界共鳴状態を創出する役割を果たす。なお、本実施形態では、LC共振回路のコンデンサ成分については素子によって実現しているが、コイルの両端を開放し、浮遊容量によって実現してもよい。このLC共振回路では、インダクタンスをL、コンデンサ容量をCとすると、(式1)によって定まるfが共振周波数となる。
f=1/(2π√(LC))・・・(式1)
【0029】
また、給電共振コイル5は、本実施例及び比較例に合わせた給電共振コイル径に設定しており、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を給電共振コイル径に合わせて複数回巻いている。また、受電共振コイル8は、本実施例及び比較例に合わせた受電共振コイル径に設定しており、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を受電共振コイル径に合わせて複数回巻いている。そして、
図2に示すように、給電共振コイル径をコイル径Dとし、受電共振コイル径をコイル径Eとする。また、給電共振コイル5及び受電共振コイル8は、(式1)によって定まる共振周波数fを同一とする必要があるため、共振周波数を15.3MHzとしている。
【0030】
上記のように、給電共振コイル5の共振周波数と受電共振コイル8の共振周波数とを同一値とした場合、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間に磁界共鳴状態を創出することができる。給電共振コイル5が共振した状態で磁界共鳴状態が創出されると、給電共振コイル5から受電共振コイル8に電力を磁界エネルギーとして送電することができる。
【0031】
また、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の距離をCとしている。そして、この距離Cを本実施例及び比較例に合わせて変化させる。
【0032】
(測定方法)
次に、ネットワークアナライザ20を使用して、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の距離Cを変化させた場合の結合係数kを、給電共振コイル5のコイル径100mmφに固定したうえで受電共振コイル8のコイル径Eを13mmφ、25mmφ、55mmφ、100mmφに変えてそれぞれ測定する。ここで、結合係数kとは、給電共振コイル5と受電共振コイル8の結合の強さを表す指標である。
【0033】
まず、上記結合係数kを測定するにあたって、例えば、受電共振コイル8のコイル径Eを100mmφにして、距離Cを0から160mmに変化させながら、挿入損失『S21』を測定する。同様に、受電共振コイル8のコイル径を13mmφ、25mmφ、55mmφに変えて挿入損失『S21』を測定する。この際、
図3のグラフに示すように、横軸を出力端子21から出力される周波数とし、縦軸を挿入損失『S21』として測定する。
【0034】
なお、給電コイル4と給電共振コイル5との結合が強いと、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の結合状態に影響を与えてしまい正確な測定ができないため、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離Aは、給電共振コイル5が十分に励振でき、給電共振コイル5の磁界を生成させ、かつ、給電コイル4と給電共振コイル5とができるだけ結合しない距離に保持する必要がある。また、同様の理由で受電共振コイル8と受電コイル7との間の距離Bも、受電共振コイル8が十分に励振でき、受電共振コイル8の磁界を生成させ、かつ、受電共振コイル8と受電コイル7とができるだけ結合しない距離に保持する必要がある。
【0035】
ここで、挿入損失『S21』とは、出力端子21から信号を入力したときの入力端子22を通過する信号を表しており、デシベル表示され、数値が大きいほど送電効率が高いことを表す。また、送電効率とは、出力端子21から給電共振コイル5に供給される電力に対する入力端子22に出力される電力の比率のことをいう。即ち、挿入損失『S21』が高いほど、送電効率が高くなることを意味する。
【0036】
このように測定された挿入損失『S21』の測定波形は低周波側と高周波側とにピークが分離する。分離したピークのうち、高周波側の周波数をf
e、低周波側の周波数をf
mとして表す。そうすると、結合係数kは、(式2)によって求められる。
k=(f
e2−f
m2)/(f
e2+f
m2)・・・(式2)
【0037】
そして、距離Cを変化させた場合の結合係数kを、受電共振コイル8のコイル径を13mmφ、25mmφ、55mmφ、100mmφに変えて測定した結果を
図4にプロットする。
【0038】
図4の測定結果を見ると、給電共振コイル5のコイル径Dのサイズに対して、受電共振コイル8のコイル径Eのサイズを小さくしていくと、距離Cに対する結合係数kの上下変動が小さくなり安定していくことがわかる。
【0039】
また、給電共振コイル5のコイル径Dと受電共振コイル8とコイル径Eとの比を変えて、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の距離Cの変化に伴う送電効率の変化を測定した。なお、給電共振コイル5の中心軸と受電共振コイル8の中心軸とは一致させて測定する。また、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離A、及び、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bは各実施例及び比較例に合わせて固定されているものとする。また、ネットワークアナライザ20から送電される送電周波数は、給電共振コイル5及び受電共振コイル8の共振周波数を含むものである。そして、送電効率は、給電共振コイル5及び受電共振コイル8の共振周波数と同じ15.3MHzにおいて、出力端子21から給電共振コイル5に供給される電力を入力端子22に出力される電力の比率を計測したものである。即ち、送電効率は、送電周波数を15.3MHzとして、給電共振コイル5及び受電共振コイル8を共振させて、共振する給電共振コイル5から受電共振コイル8に電力を送電した場合の電力の損失割合を計る目安となる。
【0040】
(比較例1)
比較例1に係る無線電力供給システムでは、給電コイル4の給電コイル径を100mmφに設定し、給電共振コイル5はコイル径Dが100mmφになるように線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を3回巻にし、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離Aを17mmに設定する。また、受電コイル7の受電コイル径を100mmφに設定し、受電共振コイル8はコイル径Eが100mmφになるように線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を3回巻にし、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bを17mmに設定する。そして、上記設定により、比較例1に係る無線電力供給システムにおいて、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の距離Cの変化に伴う送電効率の変化を測定した(コイル径D:コイル径E=100:100)。すると、
図5のグラフのように、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間が近い場所では(送電効率が最大となる距離C=Pより左側)、送電効率が低くなっている。これは、距離Cが0の地点から送電効率が最大となる距離Pの間での送電効率が低い値から高い値に変化しているため、送電効率が安定していないことを意味している。
【0041】
(実施例1)
次に、実施例1に係る無線電力供給システムでは、給電コイル4の給電コイル径を100mmφに設定し、給電共振コイル5はコイル径Dが100mmφになるように線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を3回巻にし、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離Aを10mmに設定する。また、受電コイル7の受電コイル径を13mmφに設定し、受電共振コイル8はコイル径Eが13mmφになるように線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を13回巻にし、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bを1mmに設定する。そして、上記設定により、実施例1に係る無線電力供給システムにおいて、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の距離Cの変化に伴う送電効率の変化を測定した(コイル径D:コイル径E=100:13)。すると、
図6のグラフが示すように、距離Cが0の地点から距離Pの間での送電効率が滑らかに下降していることから比較例1に比べて送電効率がより安定していることがわかる。これは、距離Cが0の地点から距離Pの間では、所定の電力を送電するに際して、特許文献1や特許文献3に挙げたように、送電周波数の可変制御や給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離A、及び、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bの可変制御を必要とせずに、一定の効率で電力を送電することができることを意味している。
【0042】
(実施例2)
次に、実施例2に係る無線電力供給システムでは、給電コイル4の給電コイル径を320mmφに設定し、給電共振コイル5はコイル径Dが320mmφになるように線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を2回巻にし、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離Aを110mmに設定する。また、受電コイル7の受電コイル径を25mmφに設定し、受電共振コイル8はコイル径Eが25mmφになるように線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を11回巻にし、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bを1mmに設定する。そして、上記設定により、実施例2に係る無線電力供給システムにおいて、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の距離Cの変化に伴う送電効率の変化を測定した(コイル径D:コイル径E=100:7.8)。すると、
図7のグラフが示すように、距離Cが0の地点から距離Pの間での送電効率が滑らかに下降していることから比較例1に比べて送電効率がより安定していることがわかる。これは、距離Cが0の地点から距離Pの間では、所定の電力を送電するに際して、特許文献1や特許文献3に挙げたように、送電周波数の可変制御や給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離A、及び、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bの可変制御を必要とせずに、一定の効率で電力を送電することができることを意味している。
【0043】
上記比較例と実施例を比較・参照すると、給電共振コイル5のコイル径Dに対して、受電共振コイル8のコイル径Eを小さくすることで、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間が近い場所での距離Cの変化に伴う送電効率の低下を防止していることがわかる。即ち、実施例に係る無線電力供給システム1では、比較例に比べて、広い範囲で磁気結合が安定化することにより送電効率が安定することがわかる。これは、例えば、受電共振コイル8に接続されたバッテリに充電する際に、送電効率を安定させた状態で送電可能な空間領域を広げることができることを意味している。
【0044】
これにより、給電共振コイル5のコイル径Dに対して受電共振コイル8のコイル径Eを小さくすることで、交流電源から出力する周波数や、給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離をA、及び、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bを調整しなくても、給電共振コイル5及び受電共振コイル8の間の磁気結合が安定した状態を維持することができる。即ち、従来のように、給電共振コイル5及び受電共振コイル8が同一径の場合には、安定した磁気結合となる距離の範囲が極めて狭かったため、交流電源から出力する周波数や、距離A及び距離Bを調整することがよく行われていたが、本発明によれば、従来よりも広い距離において磁気結合の安定が維持されるため、周波数や距離A及び距離Bを調整する作業を不要にすることができ、ひいては、任意の場所に持ち運ばれるバッテリ等の家電機器への給電のように、無線電力供給システムの用途を広げることができる。
【0045】
また、上記実施例を参照すると、給電共振コイル5のコイル径Dと受電共振コイル8のコイル径Eとの比が、100:7から100:15までの範囲内にある場合には、給電共振コイル5と受電共振コイル8との間の距離Cの変化に伴う送電効率の低下をより効果的に防止していることがわかる。即ち、距離Cが0の地点から距離Pの間での送電効率が滑らかに下降していることから比較例1に比べて送電効率がより安定していることがわかる。これは、距離Cが0の地点から距離Pの間では、所定の電力を送電するに際して、特許文献1や特許文献3に挙げたように、送電周波数の可変制御や給電コイル4と給電共振コイル5との間の距離A、及び、受電コイル7と受電共振コイル8との間の距離Bの可変制御を必要とせずに、一定の効率で電力を送電することができることを意味している。これは、例えば、受電共振コイル8に接続されたバッテリに充電する際に、送電効率をより安定させた状態で送電可能な空間領域をより広げることができることを意味している。
【0046】
このように上記実施例に示した無線電力供給システム1の測定結果の存在により本発明が十分に実現できることがわかる。
【0047】
(実施形態1)
具体例として、上記実施例で説明した本発明に係る無線電力供給システムを実施形態1に係る無線電力供給システム201にあてはめて説明する。
【0048】
(無線電力供給システム201の構成)
図8は、実施形態1に係る無線電力供給システム201の説明図である。
図8に示した無線電力供給システム201は、オフィス220の壁に掛けられた送電装置210と、机221に置かれた携帯電話212などの受電装置から構成される。送電装置210は、交流電源206と、交流電源206に接続された給電コイル204と、給電共振コイル205から構成されている。また、携帯電話212などの受電装置は、電力受給部209と、電力受給部209に接続された受電コイル207と、受電共振コイル208から構成されている。
【0049】
給電コイル204は、交流電源206から得られた電力を電磁誘導によって給電共振コイル205に供給する役割を果たす。ここで、給電コイル204と給電共振コイル205との間の距離をAとする。そして、給電コイル204及び給電共振コイル205は、給電コイル204と給電共振コイル205との間の距離Aを固定したうえで同一の平面基板202に配置されている。
【0050】
このように、給電コイル204を介し、電磁誘導によって給電共振コイル205に電力を送電させることにより、給電共振コイル205と他の回路との電気的な接続が不要となり、給電共振コイル205を任意に、かつ、高精度に設計することができるようになる。
【0051】
受電コイル207は、給電共振コイル205から受電共振コイル208に磁界エネルギーとして送電された電力を電磁誘導によって電力受給部209に出力する役割を果たす。ここで、受電共振コイル208と受電コイル207との間の距離をBとする。そして、受電共振コイル208及び受電コイル207は、受電共振コイル208と受電コイル207との間の距離Bを固定したうえで同一の平面基板203に配置されている。
【0052】
そして、磁界共鳴状態下で受電共振コイル208に送電された電力は、受電共振コイル208から受電コイル207に電磁誘導によってエネルギーが移動する。受電コイル207は、電力受給部209に電気的に接続されており、電磁誘導によって受電コイル207に移動したエネルギーは電力として電力受給部209に出力される。
【0053】
このように受電コイル207を介し、電磁誘導によって受電共振コイル208から電力受給部209に電力を送電することで、受電共振コイル208と他の回路との電気的な接続が不要となり、受電共振コイル208を任意に、かつ、高精度に設計することができるようになる。
【0054】
給電共振コイル205及び受電共振コイル208は、それぞれLC共振回路であり、磁界共鳴状態を創出する役割を果たす。なお、本実施形態では、LC共振回路のコンデンサ成分については素子によって実現しているが、コイルの両端を開放し、浮遊容量によって実現してもよい。このLC共振回路では、インダクタンスをL、コンデンサ容量をCとすると、(式1)によって定まるfが共振周波数となる。
【0055】
また、給電共振コイル205及び受電共振コイル208は、(式1)によって定まる共振周波数fを同一としている。
【0056】
また、給電共振コイル205及び受電共振コイル208は、絶縁被膜付の銅線材によって形成されている。そして、実施例同様に、給電共振コイル205のコイル径Dと受電共振コイル208のコイル径Eとの比が、100:13となるように設計されている。
【0057】
上記のように、給電共振コイル205の共振周波数と受電共振コイル208の共振周波数とを同一値とした場合、給電共振コイル205と受電共振コイル208との間に磁界共鳴状態を創出することができる。給電共振コイル205が共振した状態で磁界共鳴状態が創出されると、給電共振コイル205から受電共振コイル208に電力を磁界エネルギーとして送電することができる。
【0058】
また、給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の距離をCとして、
図8に示すように、送電装置210の給電共振コイル205と携帯電話212の受電共振コイル208との間の距離Cが、Xとなるように配置している。また、距離Cは、給電共振コイル205のコイル面と受電共振コイル208のコイル面同士が直交しないように対向配置した場合のコイル面同士の間の直線距離のことをいう。
【0059】
交流電源206は、給電共振コイル205及び受電共振コイル208の共振周波数と同一の周波数で交流電力を出力する。
【0060】
電力受給部209は、受電コイル207に接続された整流回路と、整流回路に接続された充電制御装置と、充電制御装置に接続されたバッテリを備えている。電力受給部209は、受電コイル207から送電された電力を整流回路及び充電制御装置を介してバッテリに蓄電する役割を果たす。なお、バッテリとしては、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池やその他の二次電池が挙げられる。また、充電制御装置は、バッテリの充電に必要な有効電力が入力された場合に充電するように制御する役割を果たす。故に、有効電力よりも少ない電力が入力された場合にはバッテリには充電されないように構成されている。なお、本実施形態では、交流電源206から給電コイル204に供給される電力に対する受電コイル207から電力受給部209に出力される電力の比率(送電効率)が45%以上であればバッテリの充電に必要な有効電力が入力されるものとする(
図8の実線250参照)。
【0061】
(動作)
このように構成された無線電力供給システム201では、交流電源206から供給される電力が、給電コイル204と給電共振コイル205との間の電磁誘導、給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の磁界共鳴状態を利用した送電、受電共振コイル208と受電コイル207との間の電磁誘導を経て、送電装置210の給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の距離CがXとなるように配置された携帯電話212の電力受給部209が備えるバッテリに供給される。
【0062】
このように携帯電話212のバッテリに充電がなされるのは、送電装置210の給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の距離Cが0からXまでの空間領域Fにおいては、給電共振コイル205のコイル径Dと受電共振コイル208のコイル径Eとの比が100:13の関係を満たすことで、給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の磁気結合を安定した状態に維持することができ、送電効率を45%以上とすることができるからである。即ち、空間領域Fでは、給電共振コイル205から受電共振コイル208へ送電する際に、送電効率を45%以上に安定させた状態に維持することができる。
【0063】
なお、
図8では、比較のため給電共振コイル205のコイル径Dと受電共振コイル208のコイル径Eとの比が、100:100となるように設計された場合(コイル径Dとコイル径Eが同一径の場合)の距離Cに対する送電効率を点線260で示している。この場合、有効電力以上で送電される空間領域Gは、空間領域Fに比べて狭くなっている。即ち、受電共振コイル208のコイル径Eを給電共振コイル205のコイル径Dよりも小さくした方が、給電共振コイル205から受電共振コイル208へ送電する際に、送電効率を安定させた状態で送電可能な給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の空間領域Fをより広げることができる。
【0064】
一方、空間領域F以外の領域において携帯電話212のバッテリに充電がなされないのは、送電効率が45%未満となりバッテリの充電に必要な有効電力を確保できないことによる。
【0065】
(無線電力供給方法)
これを、無線電力供給方法として説明すると、まず、送電装置210がオフィス220の壁に固定されているとして、送電装置210の給電共振コイル205のコイル径Dと受電共振コイル208のコイル径Eとの比が100:13の関係を満たした携帯電話212を空間領域F内に入るように机221の上に置く。すると、交流電源206から供給される電力が、給電コイル204と給電共振コイル205との間の電磁誘導、給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の磁界共鳴状態を利用した送電、受電共振コイル208と受電コイル207との間の電磁誘導を経て、電力受給部209が備えるバッテリの充電に必要な有効電力としてバッテリに供給される。
【0066】
上記の構成によれば、送電装置210の給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の距離Cが0からXまでの空間領域Fにおいては、給電共振コイル205のコイル径Dと受電共振コイル208のコイル径Eとの比が100:13の関係を満たことで、給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の磁気結合を安定した状態に維持することができ、送電効率をバッテリの充電に必要な有効電力を確保できる45%以上とすることができる。即ち、従来のように、送電装置210の給電共振コイル205と受電共振コイル208が同一径の場合には、安定した磁気結合となる空間領域が極めて狭かったため、送電周波数や給電コイル204と給電共振コイル205との間の距離を調整することがよく行われていたが、上記構成によれば、従来よりも広い空間領域において磁気結合の安定が維持されるため、送電周波数や給電コイル204と給電共振コイル205との間の距離を調整する装置・作業を不要にすることができる。これにより、給電共振コイル205から受電共振コイル208へ送電する際に、送電効率を安定させた状態で送電可能な給電共振コイル205と受電共振コイル208との間の空間領域Fを広げることができ、ひいては、任意の場所に持ち運ばれる携帯電話212等のバッテリへの給電のように、無線電力供給システムの用途を広げることができる。
【0067】
また、交流電源206から供給された電力を給電コイル204から給電共振コイル205に送電するに際して、送電磁界共鳴状態を創出することなく電磁誘導を用いることにより電力を送電することができる。また、同様に、受電した電力を受電共振コイル208から受電コイル207に送電するに際して、送電磁界共鳴状態を創出することなく電磁誘導を用いることにより電力を送電して電力受給部209に出力することができる。これにより、給電コイル204と給電共振コイル205との間、及び、受電共振コイル208と受電コイル207との間で、共振周波数で同調させる必要がなくなるので設計の簡易化が図れる。
【0068】
また、給電コイル204及び給電共振コイル205は、給電コイル204と給電共振コイル205との間の距離Aを固定したうえで同一の平面基板202に配置されている。同様に、受電共振コイル208及び受電コイル207も、受電共振コイル208と受電コイル207との間の距離Bを固定したうえで同一の平面基板203に配置されている。このため、給電コイル204と給電共振コイル205、及び、受電共振コイル208と受電コイル207とを分離する必要がなく一体形成することができる。これにより、無線電力供給システム201製作時の部品数を削減することができる。
【0069】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。