特許第5968610号(P5968610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968610
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】マクイベリー含有抗酸化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20160728BHJP
   A61K 36/45 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 36/78 20060101ALI20160728BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20160728BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20160728BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160728BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20160728BHJP
【FI】
   A61K36/185
   A61K36/45
   A61K36/78
   A61P39/06
   A61P17/18
   A61K8/97
   A61Q19/00
   A23L33/105
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-247057(P2011-247057)
(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公開番号】特開2013-107825(P2013-107825A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-232750(P2011-232750)
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398029533
【氏名又は名称】株式会社ファイン
(74)【代理人】
【識別番号】100077470
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 冨二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067116
【弁理士】
【氏名又は名称】立川 登紀雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義晴
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/048479(WO,A1)
【文献】 特表2010−521168(JP,A)
【文献】 Cespedes CL, et al.,Phytochemical profile and the antioxidant activity of Chilean wild black-berry fruits, Aristotelia chilensis (Mol) Stuntz (Elaeocarpaceae),Food Chemistry,2010年,Vol.119, No.3,p.886-895
【文献】 海外短信,食品工業,株式会社光琳,2005年 4月30日,第48巻,第8号,p.16
【文献】 小堀 真珠子,アントシアニンの癌抑制効果 ビルベリーアントシアニンの癌細胞アポトーシス誘導効果,医学のあゆみ,2003年 1月 4日,第204巻,第1号,p.55−59
【文献】 学会報告,FRAGRANCE JOURNAL,2006年 7月,第34巻,第7号,p.69,ブドウ果皮中アントシアニン組成とDPPHラジカル反応性
【文献】 Spranger I, et al.,Chemical characterization and antioxidant activities of oligomeric and polymeric procyanidin fractions from grape seeds,Food Chemistry,2008年,Vol.108, No.2,p.519-532
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 8/00− 8/99
A23L 33/00−33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Science Direct
医中誌WEB
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクイベリーと、クランベリー、ビルベリー又はブドウ種子由来のベリー類を含有することを特徴とするマクイベリー含有抗酸化組成物。
【請求項2】
マクイベリーが、スプレードライ、フリーズドライ、又はジュース加工されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマクイベリー含有抗酸化組成物。
【請求項3】
飲食品として提供される請求項1又は2に記載のマクイベリー含有抗酸化組成物。
【請求項4】
抗酸化活性の促進剤として提供される請求項1又は2に記載のマクイベリー含有抗酸化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマクイベリーとその他抗酸化物質の配合に関するもので、さらに詳しくは、本発明の配合により抗酸化活性の相乗効果が得られるものである。また、本発明の配合による組成物は、食品、化粧品分野において使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
抗酸化活性を有する組成物は、体内の活性酸素を取り去り、老化防止等の所謂アンチエイジング作用を有しており、健康食品や化粧品等の分野に用いられている。
【0003】
マクイベリー(Maqui Berry(学名:Aristotelia chilensis(Mol.) Stuntz))は、南アメリカ原産の果実であり、パタゴニア地方に自生している。マクイベリーには、ビタミン、ミネラルの他、抗酸化物質であるアントシアニンが豊富に含まれていることが知られている。そのアントシアニン含量は、ブルーベリーの3〜4倍とも言われ、さらにインドール、キノリンといったアルカロイドを含むことから、近年、強力な抗酸化剤として注目されつつある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
抗酸化効果の相乗的な作用は、例えば下記特許文献1などで知られている通り、いくつかの組み合わせで抗酸化活性が相乗的に促進されることが知られている。一方、抗酸化剤同士の相性が悪いと相殺効果を示す場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3533737号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Phytochem Anal., 17,8−14(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現状の製品としては、新規素材であるためマクイベリー単体を原料として用いるものが多い。そして、今後は様々な成分との混合した製品が開発されると予測される。
【0008】
しかしながら、抗酸化活性は混合された成分の相性により相殺効果、相加効果、相乗効果を示すことが知られている。従って、様々な成分を混合させるためにはマクイベリーと相性の良い成分の選定を行う必要がある。
【0009】
本発明者はかかる問題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、マクイベリーとベリー類を混合することで、抗酸化活性の相乗効果が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
具体的には、マクイベリーに対し、クランベリー、ビルベリー、ブドウ種子エキスを配合することにより、マクイベリー単体よりも強力な抗酸化活性を有することを見出した。
【0011】
即ち、かかる請求項1の発明は、
マクイベリーと、クランベリー、ビルベリー又はブドウ種子由来のベリー類を含有することを特徴とするマクイベリー含有抗酸化組成物である。
【0012】
この発明は、抗酸化作用を持つ組成物であって、マクイベリーとその他特定のベリー類を混合することで効率的な抗酸化作用を付与することができるものである。
ここで、マクイベリーとその他特定のベリー類との混合比率に限定は無く、また、その組み合わせも限定されずに自由である。
【0013】
マクイベリーに対して加えられる特定のベリー類としてはクランベリー、ビルベリー又はブドウ種子由来のベリー類である。
【0014】
請求項の発明は、上記請求項に記載の発明のマクイベリー含有抗酸化組成物であって、マクイベリーが、スプレードライ、フリーズドライ、又はジュース加工されたものであることを特徴とするものである。
【0015】
マクイベリーの形態としては、特に限定されないが、スプレードライ、フリーズドライ、又はジュース加工されたもので十分にその効果を発揮する。
【0016】
請求項の発明は、上記請求項1又は2に記載の発明のマクイベリー含有抗酸化組成物であって、飲食品として提供されるものである。
【0017】
この発明の組成物は、その抗酸化性を利用して、抗酸化機能有する飲食品として利用することができる。
【0018】
請求項の発明は、上記請求項1又は2に記載の発明のマクイベリー含有抗酸化組成物であって、抗酸化活性の促進剤として提供されるものである。
【0019】
この発明の組成物は、その抗酸化性を利用して、抗酸化活性の促進剤として各種用途に利用することもできる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によると、マクイベリーが本来持つ抗酸化性と、他のベリー類が持つ抗酸化性を単に合わせた相加的な効果以上の優れた相乗的な効果が得られ、当該マクイベリーの抗酸化活性を相乗的に促進することができる。
【0021】
そして、抗酸化特性は、アンチエイジング等人体に有用な作用効果があり、効率的な抗酸化作用を有するこの組成物は、食品、化粧品分野等幅広く活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
マクイベリーを、他のベリー類(クランベリー、ビルベリー、ブドウ種子抽出物)とを組み合わせて用いることにより、当該マクイベリーの抗酸化活性を相乗的に促進することができ、これらを飲食品や抗酸化活性の促進剤として、食品、化粧品等に適用することができる。
【実施例1】
【0023】
飲食品加工に用いられている強い抗酸化活性を有する原料数種類と、スプレードライ加工したマクイベリー粉末を混合し、その抗酸化力を評価した。ハトムギエキス、有機ハトムギエキス、アセロラパウダー、イチョウエキスパウダー、ローズヒップ粉末、カシスポリフェノールパウダー、ビルベリーパウダー、クランベリーパウダー、ブドウ種子エキスパウダー、ブドウ果皮抽出物パウダーをそれぞれマクイベリーと混合し、DPPHラジカル消去活性測定により、抗酸化活性の評価を行った。
【0024】
この実施例のDPPHラジカル消去活性測定法は植物色素研究法(植物色素研究会編)に従った。100μlの1mg/mlに調整したマクイベリー溶液もしくは適当な濃度に調整した100μlのそれぞれ抗酸化活性を有する材料に対し、200μlの0.2M MES緩衝液を加えた。そこに予めエタノールに十分(30分以上撹拌)溶解させた200μM DPPH溶液を400μl添加し、十秒間撹拌し、正確に2分後の520nmを測定した(As)。試料溶液の代わりに水を添加した際の吸光度をコントロール(Ac)とした。なお、サンプル自体に濁りがあり、520nmで干渉するため、DPPH溶液の代わりにエタノールを加えたものをブランクとした(Ab)。DPPHラジカル消去率%(S)は、以下の式により算出した。
S=(Ac−(As−Ab))/Ac×100
【0025】
マクイベリーと各原料の混合試料の消去率の予測値(SE)は以下の式で求めた。
E=(SA+SB
【0026】
ここでSAはマクイベリーの消去率、SBは各原料の消去率を示す。従って、この予測値SEと実測値SMとを比較し、混合系の消去率に及ぼす影響を評価した。SM/SE比が1.10以上で有意差ありの場合を相乗効果、0.91〜1.09で相加効果、0.90以下を相殺効果と判定した。
【0027】
(結果)
上記実施例の結果を、表1に示す。表中の表示において++は相乗効果、+は相加効果、−は相殺効果を示す。マクイベリーは表1中全てのサンプルと混合した。
【0028】
【表1】
【実施例2】
【0029】
実施例1にてマクイベリーとの相乗効果が確認されたクランベリー、ブドウ種子抽出物及びビルベリーとの組み合わせを比較した。
【0030】
50μlの1mg/mlに調整したマクイベリー溶液もしくは適当な濃度に調整した50μlのクランベリーパウダー、ブドウ種子抽出物もしくはビルベリーパウダーに対し、200μlの0.2M MES緩衝液を加えた。そこに予めエタノールに十分(30分以上撹拌)溶解させた200μM DPPH溶液を400μl添加し、実施例1と同様に測定および評価した。
【0031】
(結果)
上記実施例の結果を表2に示す。表中の表示において++は相乗効果、+は相加効果、−は相殺効果を示す。マクイベリーは表2中全てのサンプルと混合した。
【0032】
【表2】