(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定側部材に張設される膜体と、この膜体の表面に沿って設けられる可撓性板形状の太陽電池と、この太陽電池を上記膜体に取り付ける取付具とを備え、上記膜体に、その面方向に向かって引張力を与えたときの伸び率の値と、上記太陽電池のそれとが互いに相違する太陽電池取付構造において、
上記取付具が、上記膜体の表面に沿って設けられる弾性取付板と、上記膜体と弾性取付板の一端部との間に介設され、その面方向の一端部が上記膜体に接合された取付膜材とを有し、
上記取付膜材の他端部と上記弾性取付板の一端部とを互いに係止する係止部を設けたことを特徴とする太陽電池取付構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記太陽電池取付構造における膜体の面方向に向かって引張力を与えたときの膜体の伸び量(mm/N)は、通常、上記太陽電池のそれよりも大きいものである。
【0006】
このため、上記膜体に対し、例えば、自然現象として風や積雪などから大きい外部荷重が与えられたときには、上記膜体はその面方向に向かって上記太陽電池よりも大きく伸長変形しようとする。すると、この場合には、上記取付具を介し膜体から太陽電池に対し上記膜体の伸長変形に基づく負荷が与えられる。また、この際、この負荷に基づく反力が上記取付具を介し太陽電池から膜体に与えられる。
【0007】
つまり、上記従来の技術によれば、膜体とこの膜体に接合された太陽電池とが互いに無用の負荷を与え合うため、これら負荷により、特に上記膜体よりも伸び率が小さい太陽電池がわが早期に損傷しがちとなって、その太陽電池素子に断線が生じたりエネルギー変換性能が低下したりし、この結果、上記した無用の負荷により、上記膜体や太陽電池に寿命上の問題点を生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、建造物等固定側部材に張設された膜体の表面に取付具により太陽電池を取り付けた場合に、自然現象などに基づき上記膜体と太陽電池とが互いに無用な負荷を与え合うことを防止して、特に太陽電池における太陽電池素子の断線防止やエネルギー変換性能の低下防止を図ることにより、上記膜体や太陽電池の寿命を向上させることである。
【0009】
請求項1の発明は、全図に例示するように、固定側部材2に張設される膜体4と、この膜体4の表面に沿って設けられる可撓性板形状の太陽電池5と、この太陽電池5を上記膜体4に取り付ける取付具6とを備え、上記膜体4に、その面方向に向かって引張力Tを与えたときの伸び率の値と、上記太陽電池5のそれとが互いに相違する太陽電池取付構造において、
上記取付具6が、上記膜体4の表面に沿って設けられ、その面方向の一端部14aがわが上記膜体4に接合され、他端部14bがわが上記太陽電池5に接合される弾性取付板14を有したことを特徴とする太陽電池取付構造である。
そして、図3に例示するように、上記取付具6が、上記膜体4と弾性取付板14の一端部14aとの間に介設される取付膜材21を有し、この取付膜材21の面方向の一端部と上記膜体4とを互いに接合し、上記取付膜材21の他端部と上記弾性取付板14の一端部14aとを互いに係止する係止部26を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項
2の発明は、
図3に例示するように、上記取付具6が、上記太陽電池5と弾性取付板14の他端部14bとの間に介設される取付膜材23を有し、この取付膜材23の面方向の一端部と上記太陽電池5とを互いに接合し、上記取付膜材23の他端部と上記弾性取付板14の他端部14bとを互いに係止する係止部27を設けたことを特徴とする請求項
1に記載の太陽電池取付構造である。
【0011】
請求項
3の発明は、
図3に例示するように、上記係止部26,27の引張弾性率(MPa)を、上記弾性取付板14の上記面方向における中途部の引張弾性率(MPa)の値よりも大きくしたことを特徴とする請求項1もしくは
2に記載の太陽電池取付構造である。
【0012】
請求項
4の発明は、全図に例示するように、上記弾性取付板14の上記面方向における中途部の引張弾性率(MPa)の値を10〜100としたことを特徴とする請求項1から
3のうちいずれか1つに記載の太陽電池取付構造である。
【0013】
請求項
5の発明は、
図1(a)、
図2に例示するように、請求項1に記載の太陽電池取付構造の形成方法であって、
まず、固定側部材2に張設される膜体4に初期引張力Tを付与し、その後、この膜体4に対し上記取付具6により太陽電池5を取り付けることを特徴とする太陽電池取付構造の形成方法である。
【0014】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による効果は、次の如くである。
【0016】
請求項1の発明は、固定側部材に張設される膜体と、この膜体の表面に沿って設けられる可撓性板形状の太陽電池と、この太陽電池を上記膜体に取り付ける取付具とを備え、上記膜体に、その面方向に向かって引張力を与えたときの伸び率の値と、上記太陽電池のそれとが互いに相違する太陽電池取付構造において、
上記取付具が、上記膜体の表面に沿って設けら
れる弾性取付板と、上記膜体と弾性取付板の一端部との間に介設され、その面方向の一端部が上記膜体に接合された取付膜材とを有し、上記取付膜材の他端部と上記弾性取付板の一端部とを互いに係止する係止部を設けている。
【0017】
このため、上記膜体に対し風や積雪などから大きい外部荷重が与えられて、上記膜体がその面方向に向かって上記太陽電池よりも大きく伸長変形しようとするときには、上記膜体の伸長変形に応じて上記弾性取付板が弾性変形する。
【0018】
よって、上記膜体の伸長変形によりこの膜体から太陽電池に負荷が与えられることは上記弾性取付板の弾性変形により防止され、かつ、上記膜体の伸長変形による負荷に基づく反力が上記弾性取付板を介し太陽電池から膜体に与えられることも未然に防止される。つまり、上記発明によれば、膜体とこの膜体に接合された太陽電池とが互いに無用の負荷を与え合うことは、上記弾性取付板の弾性変形により防止される。この結果、特に太陽電池における太陽電池素子に無用な負荷が与えられることによる太陽電池素子の断線やエネルギー変換性能の低下が防止されて、上記膜体と太陽電池との寿命の向上が達成される。
【0019】
また、上記弾性取付板は板形状であるため、これを紐形状などにすることに比べ、この弾性取付板がわと膜体および太陽電池との互いの接合面積を大きくできてその接合強度を大きくでき、上記膜体への太陽電池の取り付けが強固になされる。よって、前記したように外部荷重に基づき膜体が伸長変形してこの膜体から太陽電池に負荷が与えられる場合に、上記膜体から上記太陽電池が剥離するなどの不都合の発生は防止される。この結果、上記膜体と太陽電池との寿命の向上が達成される。
【0020】
しかも、上記取付具による膜体への太陽電池の取り付け作業において、例えば、予め、膜体に上記弾性取付板の一端部がわを接合しておき、その後、上記固定側部材への膜体の張設の前、後のいずれかにおいて、上記弾性取付板の他端部に、太陽電池を取り付けた上記取付膜材の他端部を上記係止部により係止させることができる。よって、上記膜体への太陽電池の取り付け作業の自由度が向上すると共に、上記係止部により上記膜体への太陽電池の取り付け作業が極めて容易にできる。
【0021】
請求項
2の発明は、上記取付具が、上記膜体と弾性取付板の一端部との間に介設される取付膜材を有し、この取付膜材の面方向の一端部と上記膜体とを互いに接合し、上記取付膜材の他端部と上記弾性取付板の一端部とを互いに係止する係止部を設けている。
【0022】
このため、上記取付具による膜体への太陽電池の取り付け作業において、例えば、予め、膜体に上記取付膜材の一端部を接合しておき、その後、上記固定側部材への膜体の張設の前、後のいずれかにおいて、上記取付膜材の他端部に、太陽電池を取り付けた弾性取付板の一端部を上記係止部により係止させることができる。よって、上記膜体への太陽電池の取り付け作業の自由度が向上すると共に、上記係止部により上記膜体への太陽電池の取り付け作業が極めて容易にできる。
【0023】
請求項
3の発明は、上記係止部の引張弾性率(MPa)を、上記弾性取付板の上記面方向における中途部の引張弾性率(MPa)の値よりも大きくしている。
【0024】
このため、上記弾性取付板には必要な弾性性能が維持される一方、上記した係止部による弾性取付板への取付膜材の他端部の係止が強固になされることから、上記係止部による膜体への太陽電池の取付強度が十分に確保される。よって、前記したように、係止部により膜体への太陽電池の取り付け作業が容易にできるものでありながら、前記したように外部荷重に基づき膜体が伸長変形してこの膜体から太陽電池に負荷が与えられる場合に、上記膜体から上記太陽電池が剥離するなどの不都合の発生は防止される。この結果、これら膜体と太陽電池との寿命の向上が達成される。
【0025】
請求項
4の発明は、上記弾性取付板の引張弾性率(MPa)の値を10〜100としている。
【0026】
ここで、上記弾性取付板の引張弾性率の値を10未満にすると、上記弾性取付板による膜体への太陽電池の取付強度が不十分になりがちである。一方、上記引張弾性率の値が100を越えると、前記した膜体の伸長変形による負荷が太陽電池に与えられようとするときの弾性取付板の弾性変形が不十分になりがちである。
【0027】
そこで、上記したように弾性取付板の引張弾性率の値を10〜100としたのであり、このようにすれば、上記弾性取付板による膜体への太陽電池の取付強度が十分に確保できる。また、上記取付具を一般的な樹脂材にすることに比べ、上記弾性取付板によれば、十分な弾性変形量が得られて、上記膜体と太陽電池とが互いに無用の負荷を与え合うことは上記弾性取付板の弾性変形によって、より確実に防止される。よって、特に太陽電池における太陽電池素子に無用な負荷が与えられることによる太陽電池素子の断線やエネルギー変換性能の低下が防止されて、上記膜体と太陽電池との寿命の向上が、より確実に達成される。
【0028】
請求項
5の発明は、請求項1に記載の太陽電池取付構造の形成方法であって、
まず、固定側部材に張設される膜体に初期引張力を付与し、その後、この膜体に対し上記取付具により太陽電池を取り付けている。
【0029】
このため、膜体に予め初期引張力が付与されて初期変形させられることから、この膜体に、その後、何らかの外部荷重が与えられたときには、上記膜体が初期変形させられている分、上記外部荷重により伸長変形する膜体から上記取付具を介し太陽電池に与えられる負荷は小さく抑制されて、膜体と太陽電池とが互いに無用の負荷を与え合うことは、更に確実に防止される。この結果、特に太陽電池における太陽電池素子に無用な負荷が与えられることによる太陽電池素子の断線やエネルギー変換性能の低下が防止されて、上記膜体と太陽電池との寿命の向上が、更に確実に達成される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の太陽電池取付構造に関し、建造物等固定側部材に張設された膜体の表面に取付具により太陽電池を取り付けた場合に、自然現象などに基づき上記膜体と太陽電池とが互いに無用な負荷を与え合うことを防止して、特に太陽電池における太陽電池素子の断線防止やエネルギー変換性能の低下防止を図ることにより、上記膜体や太陽電池の寿命を向上させるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0032】
即ち、太陽電池取付構造は、固定側部材に張設される膜体と、この膜体の表面に沿って設けられる可撓性板形状の太陽電池と、この太陽電池を上記膜体に取り付ける取付具とを備える。上記膜体に、その面方向に向かって引張力を与えたときの伸び率の値と、上記太陽電池のそれとは互いに相違する。上記取付具は弾性取付板を有し、この弾性取付板は、上記膜体の表面に沿って設けられ、その面方向の一端部がわが上記膜体に接合され、他端部がわが上記太陽電池に接合される。
【0033】
<参考例1>
本発明をより詳細に説明するために、その
参考例1を添付の
図1(a)と
図2とに従って説明する。
【0034】
図1(a)と
図2とにおいて、符号1は膜状太陽光発電装置である。この太陽光発電装置1は、建造物などの固定側部材2に張設される膜体4と、この膜体4の表面(上面)に沿って延びると共にこの表面上に配置される可撓性板形状の複数の太陽電池5と、これら各太陽電池5をそれぞれ上記膜体4に取り付ける取付具6とを備えている。
【0035】
上記膜体4は、その表面が太陽光に向かうよう水平もしくは水平面に対し傾斜した方向に延びている。上記膜体4は、その面方向の少なくとも一方向Aに向かって所定値の初期引張力T(N/m)が付与されている。この膜体4は、ケナフ繊維等の天然繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維、もしくはガラス繊維等の無機繊維等により形成される織物である基材と、この基材の表裏の各外面に被覆(コーティング)されるポリ塩化ビニル(PVC)やフッ素樹脂など熱可塑性樹脂材製の外面材(コーティング材)とを備えている。なお、上記膜体4の外面材は、少なくとも熱により溶着する部分の外面がポリ塩化ビニルやフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂であればよく、その他の部分の外面には、汚れ防止のための光触媒層等を設けていてもよいし、もしくは、上記熱可塑性樹脂に光触媒粒子を含有させることにより光触媒層としてもよい。
【0036】
上記各太陽電池5はそれぞれ上記一方向Aに直交する直交方向Bに長く延びる長方形をなし、互いに同形同大とされている。これら各太陽電池5は、上記膜体4の面方向での上記一方向Aと直交方向Bとに碁盤目状となるよう上記膜体4の表面上に配置されている。上記各太陽電池5は、その表面(上面)で太陽光を受光してその光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子9と、この太陽電池素子9を全体的に覆ってこの太陽電池素子9の外面に固着される表面材10と、上記太陽電池素子9の電気エネルギーを集めて外部に出力する端子ボックス11とを備えている。上記表面材10は、フッ素樹脂など熱可塑性樹脂材製の透明なフィルムとされ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)等により形成されている。
【0037】
ここで、上記膜体4に、その面方向の一方向Aおよび直交方向Bに向かってそれぞれ引張力Tを与えたときの伸び量(mm/N)は、上記太陽電池5のそれよりもかなり大きい値であり、両者の値は互いに相違している。
【0038】
上記取付具6は、その全体がゴム材製であって可撓性も有する弾性取付板14を有している。この弾性取付板14は、上記膜体4の外面に沿って、かつ、太陽電池5の外端縁部に沿って設けられ、太陽光発電装置1の平面視(
図2)で、長方形の枠形状をなしている。ここで、樹脂材とゴム材とは、これらを互いに溶着させたり縫着させたりすることは事実上困難である。そこで、上記弾性取付板14の面方向の一端部14aである外端縁部は上記膜体4の外面に樹脂系の接着剤15により接着されて接合され、他端部14bである内端縁部が上記太陽電池5の外端縁部の表面(上面)の表面材10に接着剤15により接着されて接合されている。
【0039】
なお、上記取付具6は、図示のように長方形の枠形状に設けることが好ましいが、長方形の枠形状だけでなく、必要に応じて少なくとも上記太陽電池5の一辺に設けられていれば良く、また、上記一辺の全てに設けていてもよいし、各辺のうち必要な箇所に設けてもよい。
【0040】
また、上記弾性取付板14としては、上記ゴム材製の他に、スパンデックス等の弾性糸を使用した伸縮性を有する布の基布表面に、ポリウレタン樹脂等からなる高伸度の熱可塑性樹脂を被覆し、破断伸度を50〜500%としたものであってもよい。このような弾性取付板にすれば、接着だけでなく溶着することも可能となる。
【0041】
上記構成の太陽光発電装置1における太陽電池取付構造によれば、上記膜体4に対し風や積雪などから大きい外部荷重が与えられて、上記膜体4がその面方向に向かって上記太陽電池5よりも大きく伸長変形しようとするときには、上記膜体4の伸長変形に応じて上記弾性取付板14が弾性変形する。
【0042】
よって、上記膜体4の伸長変形によりこの膜体4から太陽電池5に負荷が与えられることは上記弾性取付板14の弾性変形により防止され、かつ、上記膜体4の伸長変形による負荷に基づく反力が上記弾性取付板14を介し太陽電池5から膜体4に与えられることも未然に防止される。つまり、上記構成によれば、膜体4とこの膜体4に接合された太陽電池5とが互いに無用の負荷を与え合うことは、上記弾性取付板14の弾性変形により防止される。この結果、特に太陽電池における太陽電池素子に無用な負荷が与えられることによる太陽電池素子の断線やエネルギー変換性能の低下が防止されて、上記膜体4と太陽電池5との寿命の向上が達成される。
【0043】
また、上記弾性取付板14はシート状等の板形状であるため、これを紐形状などにすることに比べ、この弾性取付板14がわと膜体4および太陽電池5との互いの接合面積を大きくできてその接合強度を大きくでき、上記膜体4への太陽電池5の取り付けが強固になされる。よって、前記したように外部荷重に基づき膜体4が伸長変形してこの膜体4から太陽電池5に負荷が与えられる場合に、上記膜体4から上記太陽電池5が剥離するなどの不都合の発生は防止される。この結果、上記膜体4と太陽電池5との寿命の向上が達成される。
【0044】
上記弾性取付板14の引張弾性率E(MPa)の値は10〜100とされている。
【0045】
ここで、上記弾性取付板14の引張弾性率Eの値を10未満にすると、上記弾性取付板14による膜体4への太陽電池5の取付強度が不十分になりがちである。一方、上記引張弾性率Eの値が100を越えると、前記した膜体4の伸長変形による負荷が太陽電池5に与えられようとするときの弾性取付板14の弾性変形が不十分になりがちである。
【0046】
そこで、上記したように弾性取付板14の引張弾性率Eの値を10〜100としたのであり、このようにすれば、上記弾性取付板14による膜体4への太陽電池5の取付強度が十分に確保できる。また、上記取付具6を一般的な樹脂材(例えば、E=2×103〜5×104(MPa))にすることに比べ、上記弾性取付板14によれば、十分な弾性変形量が得られて、上記膜体4と太陽電池5とが互いに無用の負荷を与え合うことは上記弾性取付板14の弾性変形によって、より確実に防止される。よって、特に太陽電池における太陽電池素子に無用な負荷が与えられることによる太陽電池素子の断線やエネルギー変換性能の低下が防止されて、上記膜体4と太陽電池5との寿命の向上が、より確実に達成される。
【0047】
なお、上記弾性取付板14の引張弾性率Eの値は20〜50であることが、より好ましい。
【0048】
上記太陽光発電装置1のうち、特に、膜体4に太陽電池5を取り付けている太陽電池取付構造の形成方法として、まず、上記固定側部材2に張設される膜体4に初期引張力Tを付与し、その後、この膜体4に対し上記取付具6により太陽電池5を取り付ける、というものである。
【0049】
上記形成方法によれば、膜体4に予め初期引張力Tが付与されて初期変形させられることから、この膜体4に、その後、何らかの外部荷重が与えられたときには、上記膜体4が初期変形させられている分、上記外部荷重により伸長変形する膜体4から上記取付具6を介し太陽電池5に与えられる負荷は小さく抑制されて膜体4と太陽電池5とが互いに無用の負荷を与え合うことは、更に確実に防止される。この結果、特に太陽電池における太陽電池素子に無用な負荷が与えられることによる太陽電池素子の断線やエネルギー変換性能の低下が防止されて、上記膜体4と太陽電池5との寿命の向上が、更に確実に達成される。
【0050】
なお、
図2中二点鎖線で示すように、上記弾性取付板14は、上記太陽電池5の外端縁部に沿ってほぼ等ピッチで配置される複数枚の取付板片で構成してもよい。また、上記太陽電池5は正方形や円形であってもよい。また、上記膜体4において、弾性取付板14の一端部14aを接着剤15により接着させる部分は、コロナ放電やプラズマ放電などによって、接着し易いような粗面など改質面としてもよい。
【0051】
以下の
図1(b)〜(d)、
図3(a)(b)は、
参考例2〜
4並びに実施例1及び2を示している。これら各実施例は、前記
参考例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【0052】
<参考例2>
本発明をより詳細に説明するために、その
参考例2を添付の
図1(b)に従って説明する。
【0053】
図において、上記弾性取付板14の面方向の他端部14bは、上記太陽電池5の外端縁部の裏面(下面)の表面材10に接着剤15により接着されている。
【0054】
上記構成によれば、弾性取付板14の他端部14bと太陽電池5の外端縁部との接着面積を大きくして、これらの接着強度を大きくしても、上記弾性取付板14の他端部14bが太陽電池5の表面(上面)を覆うことは防止される。よって、上記弾性取付板14による膜体4への太陽電池5の取付強度を大きくできるものでありながら、上記太陽電池5のエネルギー変換性能は良好なままに維持される。
【0055】
<参考例3>
本発明をより詳細に説明するために、その
参考例3を添付の
図1(c)に従って説明する。
【0056】
図において、上記取付具6は、上記膜体4と弾性取付板14の一端部14aとの間に介設される取付膜材21を有している。この取付膜材21は、太陽光発電装置1の平面視で、上記弾性取付板14と同様に長方形の枠形状とされている。この取付膜材21の面方向(長手方向各部の幅方向)の一端部である外端縁部と上記膜体4とが互いに溶着Wにより接合される。一方、上記取付膜材21の他端部である内端縁部の外面が改質面とされ、この外面と上記弾性取付板14の一端部14aとが互いに接着剤15により接着されている。なお、上記した取付膜材21の一端部と膜体4との接合は、上記溶着Wに代えて接着や縫合によるものであってもよい。また、上記取付膜材21の他端部の外面以外の外面の、全部もしくは一部を前記のような改質面にしてもよい。
【0057】
上記取付膜材21は、上記膜体4につき説明したものと同様のものが適用可能である。この場合、これら膜体4と取付膜材21とは互いに同構成、同材質であることが好ましい。
【0058】
ここで、上記取付膜材21は、これを所望の大きさや所望の形状に加工したり、切断したりすることが容易にできるものであるため、当該太陽光発電装置1における太陽電池取付構造に、上記のような取付膜材21を用いたことにより、膜体4への太陽電池5の取り付け作業が容易にできると共に、太陽電池5の取り替え作業も容易にできる。
【0059】
また、上記弾性取付板14は、通常、ゴム材製であるため、この弾性取付板14と上記膜体4や太陽電池5とを溶着や縫着により互いに接合することは事実上困難である。そこで、上記したように、取付膜材21の他端部の外面を改質面としてこの外面と上記弾性取付板14の一端部14aとを互いに接着したのであり、これにより、上記弾性取付板14の一端部14aと取付膜材21の他端部とを強固に接着することができる。よって、上記膜体4への太陽電池5の取り付けが強固になされて、これら膜体4と太陽電池5との寿命の向上が、より確実に達成される。
【0060】
ところで、固定側部材2に張設される膜体4に対し、上記弾性取付板14を接着させる接着作業は、熟練を要して煩雑な作業である。
【0061】
そこで、上記構成のように取付膜材21を設けたのであり、これによれば、上記取付具6により膜体4に太陽電池5を取り付ける取り付け作業をする場合には、例えば、まず、工場等の作業性の良いところで、弾性取付板14と、太陽電池5および取付膜材21とを接着剤15により接着してこれらの組み合わせ体5,14,21を形成し、次に、持ち運び可能な溶着機の熱風や熱板を用い、もしくは縫着機を用いて、上記組み合わせ体5,14,21を固定側部材2に張設された膜体4や張設前の膜体4の表面に対し溶着Wや縫着により接合することができる。
【0062】
よって、接着作業に係る上記組み合わせ体5,14,21の形成が作業性の良いところで容易にでき、しかも、上記した溶着Wや縫着の作業は、持ち運び可能な溶着機や縫着機を用いることにより、接着作業に比べ多くの熟練を要せず比較的容易にできることから、その分、上記膜体4への太陽電池5の取り付け作業が容易にできる。
【0063】
<参考例4>
本発明をより詳細に説明するために、その
参考例4を添付の
図1(d)に従って説明する。
【0064】
図において、前記
参考例3に加え、上記取付具6は、上記太陽電池5と弾性取付板14の他端部14bとの間に介設され、上記太陽電池5の表面材と同材質の樹脂フィルム製の他の取付膜材23を有している。この他の取付膜材23は、太陽光発電装置1の平面視で、上記弾性取付板14と同様の長方形の枠形状とされている。この他の取付膜材23の面方向(長手方向各部の幅方向)の一端部である内端縁部と上記太陽電池5とが互いに溶着Wにより接合される。一方、上記他の取付膜材23の他端部である外端縁部の外面が改質面とされ、この外面と上記弾性取付板14の他端部14bとが互いに接着剤15により接着されている。なお、上記した他の取付膜材23の一端部と太陽電池5との互いの接合は、上記溶着Wに代えて接着によるものであってもよい。また、上記他の取付膜材23の他端部の外面以外の外面の、全部もしくは一部を前記のような改質面にしてもよい。
【0065】
上記他の取付膜材23は、上記膜体4につき説明したものと同様のものが適用可能である。この場合、これら膜体4と他の取付膜材23とは互いに同構成、同材質であることが好ましい。
【0066】
ここで、上記他の取付膜材23は、これを所望の大きさや所望の形状に加工したり、切断したりすることが容易にできるものであるため、当該太陽光発電装置1における太陽電池取付構造に、上記のような他の取付膜材23を用いたことにより、膜体4への太陽電池5の取り付け作業が容易にできると共に、太陽電池5の取り替え作業も容易にできる。
【0067】
また、上記弾性取付板14は、通常、ゴム材製であるため、そのままの状態で、この弾性取付板14と上記他の取付膜材23とを溶着することは、材質上、困難である。そこで、この溶着に代えて、縫着することが考えられるが、この場合には糸を通す穿孔のために雨水が浸入し易くなったり強度低下が生じ易くなったりするおそれがある。このため、上記弾性取付板と上記取付膜材とを溶着や縫着により互いに接合することは事実上困難である。
【0068】
そこで、前記したように、取付膜材23の他端部の外面を改質面としてこの外面と上記弾性取付板14の他端部14bとを互いに接着したのであり、これにより、上記弾性取付板14の他端部14bと他の取付膜材23の他端部とを強固に接着することができ、上記膜体4への太陽電池5の取り付けが強固になされる。よって、前記したように外部荷重に基づき膜体4が伸長変形してこの膜体4から太陽電池5に負荷が与えられる場合に、上記膜体4から上記太陽電池5が剥離するなどの不都合の発生は防止される。この結果、これら膜体4と太陽電池5との寿命の向上が、より確実に達成される。
【0069】
ところで、前記したように、固定側部材2に張設される膜体4に対し、上記弾性取付板14を接着させる接着作業は、熟練を要して煩雑な作業である。
【0070】
そこで、上記構成のように他の取付膜材23を設けたのであり、これによれば、上記取付具6により膜体4に太陽電池5を取り付ける取り付け作業をする場合には、例えば、まず、工場等の作業性の良いところで、弾性取付板14と、取付膜材21および他の取付膜材23とを接着剤15により接着し、かつ、上記他の取付膜材23と太陽電池5とを互いに溶着Wや接着により接合して他の組み合わせ体5,14,21,23を形成し、次に、前記した持ち運び可能な溶着機や縫着機を用いて、上記他の組み合わせ体5,14,21,23を固定側部材2に張設された膜体4や張設前の膜体4の表面に対し溶着Wや縫着により接合することができる。
【0071】
よって、接着作業に係る上記他の組み合わせ体5,14,21,23の形成が作業性の良いところで容易にでき、しかも、上記した溶着Wや縫着の作業は、持ち運び可能な溶着機や縫着機を用いることにより、接着作業に比べ多くの熟練を要せず比較的容易にできることから、その分、上記膜体4への太陽電池5の取り付け作業が容易にできる。
【実施例1】
【0072】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例
1を添付の
図3(a)に従って説明する。
【0073】
図において、前記
参考例4を参照して、上記弾性取付板14の一端部14aが断面C字形状の係止部26とされている。そして、ロープや棒状ゴム等の可撓性長尺材25により厚さが大きくされた上記取付膜材21の他端部が上記係止部26に係止されている。また、上記弾性取付板14の他端部14bが断面C字形状の係止部27とされている。そして、上記と同様の長尺材25により厚さが大きくされた他の取付膜材23の他端部とが上記係止部27に係止されている。
【0074】
ここで、上記弾性取付板14の一端部14aに形成された一方の係止部26は、その長手方向の端部から上記取付膜材21の他端部を嵌入させて係止可能にさせるようになっている。また、上記弾性取付板14の他端部14bに形成された他方の係止部27は、その長手方向の端部から上記他の取付膜材23の他端部を嵌入させて係止可能にさせるようになっている。
【0075】
また、上記弾性取付板14の一端部14aと他端部14bとの各係止部26,27の引張弾性率E(MPa)の値は、弾性取付板14の前記面方向の中途部のそれよりも大きくされている。これにより、上記弾性取付板14の一端部14aと他端部14bとの各係止部26,27が高硬度にされる一方、上記弾性取付板14の中途部の弾性変形量が大きくなることとされている。
【0076】
特に、上記弾性取付板14の一端部14aおよび、または他端部14bの各係止部26,27の引張弾性率Eの値を上記弾性取付板14の中途部のそれよりも大きくする場合において、このように各引張弾性率Eの値が互いに相違する上記各係止部26,27と弾性取付板14の中途部とは、上記弾性取付板14の押し出し型などの形成型により一体的に容易に形成できる。よって上記取付具6による膜体4への太陽電池5の取り付け作業が容易にできると共に、上記取付膜材21,23の他端部を、上記弾性取付板14に対し強固に係止することが可能となる。
【0077】
なお、上記係止部26,27は、いずれか一方のみが設けられるようにしてもよい。
【0078】
上記構成によれば、上記取付具6による膜体4への太陽電池5の取り付け作業において、例えば、予め、膜体4に上記取付膜材21の一端部を接合しておき、その後、上記固定側部材2への膜体4の張設の前、後のいずれかにおいて、上記取付膜材21の他端部に、太陽電池5を取り付けた弾性取付板14の一端部14aを上記一方の係止部26により係止させることができる。よって、上記膜体4への太陽電池5の取り付け作業の自由度が向上すると共に、上記一方の係止部26により上記膜体4への太陽電池5の取り付け作業が極めて容易にできる。
【0079】
また、上記取付具6による膜体4への太陽電池5の取り付け作業において、例えば、予め、膜体4に上記取付膜材21の一端部を接合すると共に、この取付膜材21の他端部に弾性取付板14の一端部14aを上記一方の係止部26により係止させておき、その後、上記固定側部材2への膜体4の張設の前、後のいずれかにおいて、上記弾性取付板14の他端部14bに、太陽電池5を取り付けた上記他の取付膜材23の他端部を上記他方の係止部27により係止させることができる。よって、上記膜体4への太陽電池5の取り付け作業の自由度が向上すると共に、上記他方の係止部27により上記膜体4への太陽電池5の取り付け作業が極めて容易にできる。
【0080】
また、前記したように、上記係止部26,27の引張弾性率(MPa)を、上記弾性取付板の上記面方向における中途部の引張弾性率(MPa)の値よりも大きくしている。
【0081】
このため、上記弾性取付板14には必要な弾性性能が維持される一方、上記した係止部26,27による弾性取付板14への取付膜材21,23の他端部の係止が強固になされることから、上記係止部26,27による膜体4への太陽電池5の取付強度が十分に確保される。よって、前記したように、係止部26,27により膜体4への太陽電池5の取り付け作業が容易にできるものでありながら、前記したように外部荷重に基づき膜体4が伸長変形してこの膜体4から太陽電池5に負荷が与えられる場合に、上記膜体4から上記太陽電池5が剥離するなどの不都合の発生は防止される。この結果、これら膜体4と太陽電池5との寿命の向上が達成される。
【実施例2】
【0082】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例
2を添付の
図3(b)に従って説明する。
【0083】
図において、前記実施例
1を参照して、上記弾性取付板14の一端部14aと他端部14bとにはそれぞれ断面C字形状の係止部26,27が接着され、これら各係止部26,27は上記太陽電池5の外端縁部に沿って長く延びている。これら各係止部26,27は樹脂製とされるが金属製であってもよい。
【0084】
ここで、上記弾性取付板14の一端部14aに接着された一方の係止部26は、その長手方向の端部から上記取付膜材21の他端部を嵌入させて係止可能にさせるようになっている。また、上記弾性取付板14の他端部14bに接着された他方の係止部27は、その長手方向の端部から上記他の取付膜材23の他端部を嵌入させて係止可能にさせるようになっている。