特許第5968628号(P5968628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968628
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 69/02 20060101AFI20160728BHJP
   F02M 37/04 20060101ALI20160728BHJP
   F02D 9/10 20060101ALI20160728BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20160728BHJP
   F02M 69/04 20060101ALI20160728BHJP
   F02M 37/06 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F02M69/02 Z
   F02M37/04 A
   F02D9/10 H
   F02M37/00 A
   F02M69/04 A
   F02M37/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-8888(P2012-8888)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-148002(P2013-148002A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友也
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−012649(JP,A)
【文献】 特開平03−117680(JP,A)
【文献】 特開2003−254187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M39/00−69/14
69/28
69/44−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャの往復動により燃料を加圧する筒形状のプランジャ式ポンプ部を有して構成されるポンプ部と、前記プランジャを往復駆動するモータ部を有して構成され前記ポンプ部を駆動する駆動部と、前記ポンプ部へ吸込燃料を導く吸込用接続口体と、前記ポンプ部からのリターン燃料を吐出するリターン用接続口体とを備え、
前記プランジャ式ポンプ部を、内燃機関の吸気管の一部を構成する吸気管部材の外周部に、前記プランジャ式ポンプ部の軸心方向と当該吸気管部材の軸心方向と交差するように支持させ、
前記吸気管部材と交差した前記プランジャ式ポンプ部の一方の端部に、前記駆動部を構成する前記モータ部を設け、
前記交差した前記プランジャ式ポンプ部の他方の端部に、前記吸込用接続口体およびリターン用接続口体を設けた
ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
前記モータ部は、前記プランジャ式ポンプ部の一方の端部から前記吸気管部材の周方向に沿って略L形に配置され、前記モータ部の重心位置を前記吸気管部材に寄せてあることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項3】
前記プランジャ式ポンプ部は、前記吸込用接続口体およびリターン用接続口体の配置される他方の端側に、吐出燃料を所定圧に保つプレッシャレギュレータを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項4】
前記モータ部と前記プランジャ式ポンプ部は、それぞれ前記吸気管部材の外周部に配置してあることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項5】
前記モータ部と前記プランジャ式ポンプ部は、前記吸気管部材の軸心を中心とした円の軌跡上に配置されることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項6】
前記プランジャ式ポンプ部で加圧された燃料を前記吸気管部材内へ噴射するインジェクタを有し、さらに前記プランジャ式ポンプ部および前記モータ部を前記吸気管部材に支持する支持部を有し、
前記インジェクタは、前記吸気管部分と交差する前記プランジャ式ポンプ部の中間部分に配置されて、前記吸気管部分に噴射可能に設置され、
前記支持部は、前記インジェクタとは反対側のプランジャ式ポンプ部と吸気管部材とが交差する部分間を連結する止め部と、前記モータ部の前記プランジャ式ポンプ部を支点とした振れを抑える振れ止め部とを有して構成される
ことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一つに記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項7】
前記プランジャ式ポンプ部は、当該プランジャ式ポンプ部の吸い込みを助けるダイヤフラム式ポンプ部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の内燃機関の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内の燃料を内燃機関へ噴射可能な圧力に加圧する内燃機関の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車では、インジェクタを用いて燃料を噴射する方式が普及されている。この燃料噴射は、ポンプ部と、同ポンプ部を駆動する駆動部とから構成される燃料供給装置を用い、燃料タンク内からの燃料を加圧して、エンジン(内燃機関に相当)へ導く。近時では、燃料噴射位置の近くから燃料の供給が行えるよう、エンジンの吸気管の一部をなす吸気管部材にポンプ部、駆動部を配置する傾向にある。
【0003】
多くの燃料供給装置には、特許文献1に開示されているようなポンプ部を吸気管部材の径方向に沿って起立するように取り付け、この起立したポンプ部の端部にモータ部(駆動部に相当)を組み付け、同ポンプ部の端部に吸込用接続口体(燃料タンクからの燃料を受ける)、リターン燃料接続口体(リターン燃料を吐出する)を設ける構造や、特許文献2に開示されているようなモータ部(駆動部に相当)を、吸気管部材と交差する径方向片側へ張り出るように取り付け、このモータ部の張り出た端部にポンプ部を組み付け、モータ部に吸込用接続口体、リターン燃料接続口体を設ける構造が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平 4− 54974号公報
【特許文献2】特開2005−105987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした燃料供給装置は、モータ部、ソレノイド部など重量の有る駆動部を有するので、吸気管部材から伝わるエンジン振動や走行振動や衝撃を受けやすい。
ところが、特許文献1及び特許文献2に開示された燃料供給装置は、いずれも吸気管部材を中心とした重量バランスに問題があり、吸気管部材から伝わる振動や衝撃に対する耐振性が低い。
【0006】
すなわち、特許文献1の燃料供給装置は、吸気管部材の径方向片側へ、ポンプ部、モータ部、吸込用接続口体およびリターン燃料接続口体が張り出たレイアウトとなる。特に吸気管部材から最も離れた地点には、重量の有るモータ部が配置されるため、重量の偏りを要因に燃料供給装置には、吸気管部材を中心とした回転モーメントが生じやすい。しかも、燃料供給装置を自動二輪車に設置した状態になると、吸込用接続口体およびリターン燃料接続口体には、燃料タンクから延びるホース部材や同ホース部材を止める止め具の重量が加わるため、重量の偏りは大きくなる傾向にあり、回転モーメントが生じやすい。このため、同燃料供給装置は、重量的なバランスに欠け、吸気管部材から伝わる振動(エンジン振動や走行振動など)や衝撃に対し振れやすい。
【0007】
特許文献2の燃料供給装置も、吸気管部材の径方向片側から、重量の有るモータ部、ポンプ部、吸込用接続口体およびリターン燃料接続口体が張り出してレイアウトされるので、特許文献1と同様、燃料供給装置は、重量の偏り(重量的なバランスの悪さなど)から、吸気管部材を中心とした回転モーメントが生じやすく、吸気管部材から伝わる振動や衝撃に対し振れやすい。
そこで、本発明の目的は、簡単な構造で、吸気管部材から伝わる振動や衝撃に対する耐振性の向上が図れる内燃機関の燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために燃料供給装置は、プランジャの往復動により燃料を加圧する筒形状のプランジャ式ポンプ部を有して構成されるポンプ部と、プランジャを往復駆動するモータ部を有して構成されポンプ部を駆動する駆動部と、ポンプ部へ吸込燃料を導く吸込用接続口体と、ポンプ部からのリターン燃料を吐出するリターン用接続口体とを備え、プランジャ式ポンプ部を、内燃機関の吸気管の一部を構成する吸気管部材の外周部に、プランジャ式ポンプ部の軸心方向と吸気管部材の軸心方向と交差するように支持させ、吸気管部材と交差したプランジャ式ポンプ部の一方の端部に駆動部を構成するモータ部を設け、交差したプランジャ式ポンプ部の他方の端部に吸込用接続口体およびリターン用接続口体を設ける構成を採用した。
【0009】
同構成によると、ポンプ部の重量は、吸気管部材を中心に両側に振り分けられる。このポンプ部の一端部に、重量のある駆動部が配置され、反対側となる他端部に、燃料タンクから延びるホース部材と接続される吸込用接続口体、リターン用接続口体が配置される。これにより、自動二輪車など車両に燃料供給装置を設置した状態では、ポンプ部の他端部には、吸込用接続口体およびリターン用接続口体の重量が加わるだけでなく、これら接続口体に接続されるホース部材や同ホース部材を止める止め具などの重量が加わる。このため、各種接続口体の有るポンプ部の他端側と、駆動部の有るポンプ部の一端側とは、重量的にバランスされやすくなり、燃料タンクから延びるホース部材での拘束だけで、駆動部の振れが抑えられ、ポンプ部や駆動部は、吸気管部材からの振動や衝撃に対して振れにくくなる。
【0011】
請求項2の発明は、さらに上記目的に加え、一層、燃料供給装置が振れにくくなるよう、モータ部は、プランジャ式ポンプ部の一方の端部から吸気管部材の周方向に沿って略L形に配置し、モータ部の重心位置を吸気管部材に寄せることとした。
請求項3の発明は、さらに上記目的に加え、同じくプランジャ式ポンプ部は、吸込用接続口体およびリターン用接続口体の配置される他方の端側に、吐出燃料を所定圧に保つプレッシャレギュレータを有する構成とした。
【0012】
請求項4の発明は、さらに上記目的に加え、同じくモータ部とプランジャ式ポンプ部は、それぞれ吸気管部材の外周部に配置させることとした。
請求項5の発明は、さらに上記目的に加え、効果的に燃料供給装置の各部の振れが抑えられるよう、モータ部とプランジャ式ポンプ部は、吸気管部材の軸心を中心とした円の軌跡上に配置されることとした。
【0013】
請求項6の発明は、さらに上記目的に加え、簡単な構造で、振れにくくした燃料供給装置を固定が行えるよう、インジェクタを、吸気管部材と交差するプランジャ式ポンプ部の中間部分に配置して、吸気管部分に噴射可能に設置し、支持部には、インジェクタとは反対側のプランジャ式ポンプ部と吸気管部材とが交差する部分間を連結する止め部と、モータ部のプランジャ式ポンプを支点とした振れを抑える振れ止め部とを有する構成を用いた
【0014】
請求項7の発明は、さらに上記目的に加え、プランジャ式ポンプ部の吸い込み機能を高めるよう、プランジャ式ポンプ部は、同プランジャ式ポンプ部の吸い込みを助けるダイヤフラム式ポンプ部を有する構成とした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、燃料供給装置は、ポンプ部の重量が吸気管部材を中心に両側に振り分けられるだけでなく、自動二輪車など車両に燃料供給装置を設置した状態になると、ポンプ部の他端部には、吸込用接続口体およびリターン用接続口体の重量に加え、これら接続口体に接続されるホース部材や同ホース部材を止める止め具などの重量が加わるから、各種接続口体の有るポンプ部の他端側と、駆動部の有るポンプ部の一端側とが重量的にバランスされやすくなる。これにより、燃料タンクから延びるホース部材での拘束だけでポンプ部や駆動部の振れが抑えられる。つまり、ポンプ部や駆動部は、自動二輪車など車両に設置した状態になると、吸気管部材からの振動や衝撃に対し振れにくくなる。
それ故、燃料供給装置は、ポンプ部、駆動部、吸込用接続口体およびリターン用接続口体をバランスよく配置するという簡単な構造で、吸気管部材から伝わる振動や衝撃に対する耐振性の向上、さらに述べれば自動二輪車など車両に設置した状態における耐振性の向上を図ることができる。
【0016】
しかも、簡単な構造で、重量バランスの確保が難しい、プランジャ式ポンプ部を用いた燃料供給装置における耐振性の向上が図れる。特に筒形状のプランジャ式ポンプ部は、横向きの交差配置により、重心位置が吸気管部材に近づき、ポンプ部自身も、かなり振れ難くなるから、燃料供給装置の全体の耐振性が増す。
【0017】
請求項2の発明によれば、重量の有るモータ部は、吸気管部材の近くに寄せられるため、モータ部の重心位置が吸気管部材に近づく。これにより、プランジャ式ポンプ部に生ずる、吸気管部材を中心とした回転モーメントは抑えられ、一層、燃料供給装置は振れにくくなる。
請求項3の発明によれば、重量の有るプレッシャレギュレータが、吸込用接続口体およびリターン用接続口体の有るプランジャ式ポンプの他端側に配置されることで、一層、反対側(モータ部)と重量的にバランスしやすくなる。これにより、燃料供給装置は、プレッシャレギュレータを活用して、一層、振れにくくできる。
【0018】
請求項4の発明によれば、吸気管部材を中心としたモータ部やプランジャ式ポンプ部に生ずる、回転モーメントは抑えられ、燃料供給装置は、一層、振れ難くなる。
請求項5の発明によれば、さらに効果的に燃料供給装置の各部が振れ難くなる。
【0019】
請求項6の発明によれば、振れにくくした燃料供給装置を活用して、インジェクタの設置、プランジャ式ポンプ部と吸気管部分とが交差する部分を連結する止め部やモータ部の振れを抑える振れ止め部を用いるだけの簡単な構造で、燃料供給装置の全体を強固に吸気管部分に固定することができる。
請求項7の発明によれば、プランジャ式ポンプ部の吸い込み機能が高められ、どのような地点に有る燃料タンクからでも、同燃料タンク内の燃料を適正にインジェクタへ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置を、同装置を搭載した自動二輪車と共に示す側面図。
図2】同じく燃料供給装置の外観および内部構造を示す斜視図。
図3】同じく燃料供給装置を吸気管部材から外した状態を示す分解斜視図。
図4図2中のA−A線から見た断面図。
図5図2中のB−B線に沿うプランジャ式ポンプ部、ダイヤフラム式ポンプ部、吸込用接続口体、リターン用接続口体、プレッシャレギュレータおよびモータ部(一部)を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図1ないし図5に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明を適用した燃料供給装置を据え付けた車両、例えば自動二輪車の側面図(概略的)を示している。図1中の矢印Fは自動二輪車のフロント方向を示し、矢印Rは自動二輪車のリア方向を示している。
【0022】
まず、図1に示す自動二輪車を説明すると、同二輪車は前後方向に延びるメインフレーム部材、例えばメインチューブ部材1(一部しか図示しない)を有する。同メインチューブ部材1のフロント側の端部に、フロントフォーク3を介して前輪5が懸架され、同じくリア側の端部に、スイングアーム部材7を介して後輪9が懸架される。
【0023】
メインチューブ部材1には、フロント側から順に燃料タンク11、シート12が据え付けられている。ちなみにメインチューブ部材1を挟んだ片側(右側)には、ブレーキペダルやスロットルグリップなど加減速系統(図示しない)が設けられ、反対側(左側)には、クラッチレバーやシフトペダルなど変速系統(図示しない)が設けられる。
【0024】
メインチューブ部材1から下側に延びたダウンチューブ部材1a、燃料タンク11で囲まれる空間には、内燃機関、例えばピストン13aを往復動可能に収めた単気筒のレシプロ式エンジン13(以下、単にエンジン13という)が据え付けてある。このエンジン13の側部には、順に短管部材15(本願の吸気管部材に相当)、スロットルバルブ装置17が連結され、エンジン13の吸入用ポート(図示しない)とエアクリーナ(図示しない)との間を連通させる吸気管を構成している。
【0025】
短管部材15には、電子制御式のインジェクタ19と共に燃料供給装置21が設置され、短管部材15内へ燃料を噴射可能としている。
図2の斜視図には、この燃料供給装置21の全体および内部の構造(点線部分)が示され、図3の分解斜視図には、同燃料供給装置21を短管部材15から外した状態が示され、図4,5の断面図には、同燃料供給装置21の各部(図2中のA−A線、B−B線に沿う断面)が示されている。
【0026】
図2図5を参照して燃料供給装置21を説明すると、燃料供給装置21は、ポンプ部25と、同ポンプ部25を駆動する駆動部27と、各種接続口体である管状の吸込用接続口体29およびリターン用接続口体31とを有している。ちなみにポンプ部25と駆動部27とは別体である。これらポンプ部25、駆動部27および各接続口体29,31が、短管部材15の外周部に配置されている。
【0027】
ポンプ部25、駆動部27を説明すると、ポンプ部25は、図2および図5に示されるように筒状のポンプ本体33を有している。このポンプ本体33は、軸方向で二つに分割された分割式の構造で構成される。33a,33bは、分割した本体部分と蓋部分とを示す。
ポンプ部25は、このポンプ本体33の軸心方向に沿って各種ポンプ部品を収めたプランジャ式ポンプ部35で構成される。このプランジャ式ポンプ部35は、同プランジャ式ポンプ部35のポンプ部品を挟んだ一端側にダイヤフラム式ポンプ部49を有し、他端側にプレッシャレギュレータ61を有して、短筒形に構成されている(図2,3)。
【0028】
すなわち、プランジャ式ポンプ部35は、図5に示されるように一端部を吸込側とし、他端部を吐出側として、ポンプ本体33の軸心方向に沿って組み込まれた筒形のスリーブ37、同スリーブ37内に往復動可能に収められた筒形のプランジャ39、同プランジャ39の内腔に組み付けられた吸入バルブ41、スリーブ37の吐出側に組み付けられた吐出バルブ43を有して構成される。つまり、プランジャ式ポンプ部35は、プランジャ39が往復動すると、プランジャ39内の燃料(吸込燃料)が吸入バルブ41を通じて、スリーブ端に形成される加圧室45に導かれ、同加熱室45で加圧され、加圧された燃料が吐出バルブ43から吐出される構造となっている。インジェクタ19は、このプランジャ式ポンプ部35のポンプ本体33に組み付く。
【0029】
ちなみにダイヤフラム式ポンプ部49は、図5に示されるようにスリーブ37の吸込側に形成したダイヤフラム室51、同ダイヤフラム室51を塞ぐように設けたダイヤフラム53、同ダイヤフラム53の中央部をプランジャ39端に固定する柱状の固定具55、通路57aを介してダイヤフラム室51と連通する吸込バルブ57を有した構造となっている。つまり、ダイヤフラム式ポンプ部49は、プランジャ39が往復動すると、ダイヤフラム51が振幅し、同振幅がもたらすダイヤフラム室51でのポンプ動作により、吸込バルブ57から燃料を吸い込み、プランジャ39内へ導く。このダイヤフラム式ポンプ部49により、不足するプランジャ式ポンプ部35の吸い込み機能を助ける。またダイヤフラム室51は、通路59aを介して、リターン燃料用の吐出バルブ59とも連通している。
【0030】
またプレッシャレギュレータ61は、図5に示されるように吐出バルブ43の出口側に形成された吐出室63を、リリーフバルブ65付のダイヤフラム67を塞ぎ、同ダイヤフラム67をスプリング部材69で押える構造が用いられている。つまり、ダイヤフラム67の変位により、吐出室63内の吐出燃料を所定圧に保ち、過剰な燃料圧になると、リリーフバルブ65を通じ、スプリング部材69を収めたスプリング室71へ同圧力の燃料を逃がす。そして、吐出室63は、通路19a、後述するポンプ本体33に形成された接続口部33c(インジェクタ19の基部が嵌る部分)を介して、インジェクタ19の入口部と連通していて、所定圧の燃料がインジェクタ19へ供給される構造にしてある。
【0031】
駆動部27には、図2に示されるように例えば筒形のモータケース73内にDCモータ75を収めた筒形状のモータ部27aが用いられる。DCモータ75の出力軸が配置されるモータケース73の端部には、回転運動を往復運動に変換するカム機構77(変換機構)が内蔵されている。ここで、カム機構77は、例えばDCモータ部75の出力軸に偏心カム79を組み付け、この偏心カム79に枠形のカム受け部材81を嵌めて構成され、カム受け部材81で、偏心カム79の偏心回転運動を往復運動に変換する。このカム受け部材81の出力部が、モータケース73の端部、ここではモータ部27aの軸心方向とは直角な側部に配置してある。
【0032】
こうした筒形状のポンプ部25、筒形の駆動部27、各接続口体29,31が、自動二輪車に設置した状態の元で、十分な耐振性が確保されるように組み付けられている。
この耐振性の確保のため、燃料供給装置21の各部のレイアウトには工夫が施されている。
【0033】
この工夫には、図2図4に示されるようにポンプ部25を、短管部材15の軸心方向と交差するように配置し、短管部材15と交差するポンプ部25の一方の端部にモータ部27a(駆動部27)を設け、反対側のポンプ部25の他方の端部に、吸込用接続口体29、リターン用接続口体31を設けるという、レイアウトが用いられている。
【0034】
すなわち、図2図4に示されるようにポンプ部25の中間部(軸方向)は、短管部材15の外周部の上部に、同短管部材15の軸心方向と交差する横向きに配置される。具体的には、筒形のプランジャ式ポンプ部35は、同プランジャ式ポンプ部35の軸心方向と短管部材15の軸心方向とが互いに交差、例えば直交交差する横向きに配置されて、短管部材15に取り付けられる(低重心の配置)。ちなみにプランジャ式ポンプ部35は、短管部材15の外周部に最も接近させてあり、できるだけ低重心に配置させてある。
【0035】
一方、図2図5に示されるようにモータ部27aは、同モータ部27aからプランジャ39へ駆動力が伝わるよう、カム機構75の出力部の有るモータケース73の側部を、プランジャ39の入力部の有るポンプ本体33の端部に接続してある。そして、モータ部27aの全体は、下方方向に沿って配置され、プランジャ式ポンプ部35とは異なる縦向きに配置させている。このレイアウトにより、ポンプ部27aの全体を、吸気管部材25の外周部の周方向に沿う略L形に配置させ、モータ部27aの重心位置を吸気管部材25へ寄せている。ちなみには、モータ部27aは、短管部材15の外周部に最も接近させてある。
【0036】
他方、図2図5に示されるように吸込用接続口体29とリターン用接続口体31は、プランジャ式ポンプ部35(ポンプ部25)のうち、モータ部27aとは反対側の端部(蓋部分33b)の端面に一体に形成され、同端面から前方へ突出している。このうち吸込用接続口体29は、吸込バルブ57に連通させてある。この吸込用接続口体29には、燃料タンク11の下部から延びる燃料供給用ホース部材85(二点鎖線で、一部しか図示せず)が、ホースバンドなどの止め具86(図4に二点鎖線で図示)により接続され、燃料タンク11内の燃料が、吸込用接続口体29、ダイヤフラム式ポンプ部49を通じ、プランジャ式ポンプ部35へ導けるようになっている。
【0037】
また図2図5に示されるようにリターン用接続口体31は、吐出バルブ59に連通させてある。このリターン用接続口体31には、燃料タンク11から延びるリターン用ホース部材87(二点鎖線で、一部しか図示せず)が、ホースバンドなどの止め具88により接続され、吐出バルブ59からの燃料、すなわちプランジャ式ポンプ部35から吸い込まれない余剰の燃料が、リターン用接続口体31から、燃料タンク11へ回収されるようになっている。ちなみに、リリーフバルブ65(プレッシャレギュレータ61)から逃げる燃料も、リターン用接続口体31を通じて回収される。
【0038】
このように構成された燃料供給装置21は、自動二輪車に設置された状態になると(図1、2)、各部のレイアウトだけで、自身が、かなりの耐振性を発揮する。
すなわち、図1および図2に示されるようにプランジャ式ポンプ部35(ポンプ部25)の重量は、同ポンプ部35と交差する短管部材15を中心に左右両側に振り分けられる。自動二輪車に燃料供給装置21が設置された状態では、プランジャ式ポンプ部35(ポンプ部25)の一端側にモータ部27aが配置されるために、重量バランスが悪くなるように見えるが、このプランジャ式ポンプ部35(ポンプ部25)の他端部には、吸込用接続口体29およびリターン用接続口体31の重量が加わる。それだけでなく、これら接続口体29、31に接続されるホース部材85,87(燃料タンク11から下がる)や同ホース部材85,87を止める止め具86,88の重量が加わる。そのため、反対側の、重量の有るモータ部27aが配置された一端側とは、重量的にバランスされやすくなる。これは、短管部材15と交差するプランジャ式ポンプ部35(ポンプ部25)の位置が、重量的なバランスの得やすい地点に定められることにもよる。この重量的なバランスにより、プランジャ式ポンプ部35やモータ部27aの振れは、燃料タンク11から延びるホース部材85,87による拘束だけで抑えられる。
【0039】
つまり、プランジャ式ポンプ部35やモータ部27a(駆動部27)は、自動二輪車に搭載(設置)した状態になると、短管部材15から伝わる振動(エンジン振動や走行振動など)や衝撃に対して振れにくくなる。
それ故、燃料供給装置21は、プランジャ式ポンプ35(ポンプ部25)、モータ部27a(駆動部27)、吸込用接続口体29およびリターン用接続口体31をバランスよく配置させるという簡単な構造で、自動二輪車に搭載した状態下において、短管部材15から伝わる振動や衝撃に対する耐振性を向上させることができる。
【0040】
この耐振性の確保は、重量バランスの確保が難しい、筒形状のプランジャ式ポンプ部35を用い、重量の有るモータ部27aを用いて構成される燃料供給装置21には有効である。しかも、筒形のプランジャ式ポンプ部35は、横向きに配置させることで、重心位置は低くなり、それだけでプランジャ式ポンプ部35の全体が振れ難く(上下方向に対し)なるから、燃料供給装置21全体の耐振性は、一層、高まる。そのうえモータ部27aは、短管部材15の周方向に沿って略L形に配置されることで、モータ部27aの重心位置も短管部材15に近づき、短管部材15を中心とした回転モーメントが抑えられるから、燃料供給装置21は振れにくくなり、一層、耐振性が高まる。
【0041】
特に燃料供給装置21は、吸込用接続口体29、リターン用接続口体31の配置されるプランジャ式ポンプ部35の端側に、プレッシャレギュレータ61が配置されると、プレッシャレギュレータ61の重量もプランジャ式ポンプ部35(ポンプ部25)の他端部に加わるから、一層、反対側(モータ部27a)と重量的にバランスしやすくなる。つまり、燃料供給装置21の全体は、プレッシャレギュレータ61を活用して、一層、振れにくくなり、耐振性が高まる。
【0042】
加えて、燃料供給装置21は、プランジャ式ポンプ部35、モータ部27aが、それぞれ短管部材15の外周部と最も接近した地点に配置されていると、短管部材15を中心としたプランジャ式ポンプ部35やモータ部27aに生ずる回転モーメントは抑えられるから、燃料供給装置21は、一層、振れ難くなり、耐振性が高まる。特に図4に示されるようにプランジャ式ポンプ部35、モータ部27aを、短管部材15の軸心を中心とした、短管部材15の外周部に最も接近させた円の軌跡上に配置すると、短管部材15を中心とした燃料供給装置21の各部の振れが効果的に抑えられ、耐振性が効果的に高められる。
【0043】
しかも、燃料供給装置21は、ダイヤフラム式ポンプ部37を設けると、不足するプランジャ式ポンプ部35の吸い込み機能が高められるから、燃料供給装置21は、燃料供給装置21よりも、かなり高い位置に燃料タンクが有るという自動二輪車に限らず、図1に示されるような燃料供給装置21が、燃料タンク11の下部と略同じ高さに有る場合でも燃料の供給が確実に行え、燃料タンク11の搭載位置に関わらず、燃料タンク11内の燃料を適正にインジェクタ19へ供給することができる。つまり、高い耐振性、高い艤装性をもつ燃料供給装置21が提供できる。
【0044】
そのうえ、こうした振れに難くいレイアウトの燃料供給装置21だと、同燃料供給装置21の固定は、プランジャ式ポンプ部35に組み付くインジェクタ19を活用して、支持部91で、単純にプランジャ式ポンプ部35、モータ部27aを短管部材15に止めるだけの簡単な構造ですむ。
【0045】
すなわち、図2図4に示されるようにインジェクタ19は、吸気管部分15と交差するプランジャ式ポンプ部35の中間部分(交差部分)、すなわちプランジャ式ポンプ部35の一端部側と他端部側とが重量的に略バランスする中間部分に配置され、先端の噴射部19aを吸気管部分15に連通接続させることによって、斜めの向きに取り付けてある。このインジェクタ19の取り付けのため、ポンプ本体33の中間部分(軸心方向)には、インジェクタ19の基部が挿脱可能に嵌る接続口体33c(図2,3に一部だけ図示)が設けられ、短管部材15の壁部には、インジェクタ19の噴射部19aが挿脱可能に嵌る先端支え部15a(図2,3に一部だけ図示)が設けてある。
【0046】
図2図4に示されるように支持部91は、インジェクタ19とは反対側のプランジャ式ポンプ部35と短管部材15とが交差する部分間を連結する止め部93と、プランジャ式ポンプ部35の軸心を支点としたモータ部27aの振れを抑える振れ止め部97とから構成されている。具体的には、止め部93は、例えばポンプ本体33の中間部分の外周部に板状のブラケット部95を突設し、短管部材15の外周部に台状の取付座98を設け、ボルト部材99の螺挿により、ブラケット部95を取付座98に締結する構造が用いられる。
【0047】
また図3に示されるように振れ止め部97には、例えば短管部材15と隣り合うモータ部27aの側部に、並行にピン部101を設け、短管部材15の外周部に、同ピン部101を受けるピン受け座103を設け、プランジャ式ポンプ部35の取り付けに伴いピン部101が、ピン受け座103に形成されたピン穴103aにピン部101を挿入されるようにした構造が用いられる。
【0048】
ちなみに、ブラケット部95、取付座98のねじ穴98a、ピン部101およびピン穴103aの向きは、いずれもインジェクタ19の組込方向(斜めの向き)と同じ斜め方向に定めてある。
これにより、燃料供給装置21の全体は、インジェクタ19の設置による「プランジャ式ポンプ部35の水平方向の動きの拘束」、ボルト止めよる「プランジャ式ポンプ部35の上下方向の動きの拘束(抜け止め)」、ピン部101による「プランジャ式ポンプ部27aを支点としたモータ部27aの振れ(前後方向)の抑え」という固定個所を最小数量に抑えた簡単な構造で強固に固定できる。
【0049】
なお、本発明は一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば一実施形態では、スロットルバルブ装置とは別体な短管部材(吸気管の一部を構成する吸気管部材)に燃料供給装置を設ける例を挙げたが、これに限らず、例えばスロットルバルブ装置のバルブボディ(吸気管の一部を構成する吸気管部材)に燃料供給装置を設けてもよく、このようにしても一実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0050】
15 短管部材(吸気管部材)
19 インジェクタ
21 燃料供給装置
27a モータ部(駆動部)
29 吸込用接続口体
31 リターン用接続口体
35 プランジャ式ポンプ部(ポンプ部)
37 ダイヤフラム式ポンプ部
61 プレッシャレギュレータ
93 止め部
97 振れ止め部
図1
図2
図3
図4
図5