【発明が解決しようとする課題】
【0008】
  しかしながら、上記特許文献1記載のナプキンでは、粘着剤塗布部分を長手方向と交差する方向へ連続的に形成することによってウイングの表面側のシートと裏面シートとを接合しているので、ウイング状フラップの全体に亘って形成された粘着剤塗布部分によってウイング状フラップの剛性が高くなり、肌当たりが悪化することが懸念される。
【0009】
  また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、ヒートシール線によるダメージによってウイング部が破断しにくいという効果は得られるものの、使用済みの吸収性物品を下着から剥がす際にウイング状フラップが付け根部分から引き裂かれるという問題については考慮されていない。
【0010】
  ところで、発明者による調査の結果、下着から使用済みの吸収性物品を剥がす際、ウイング状フラップが基端部から吸収性物品の長手方向に沿って引き裂かれるときの引裂線としては次の3つのパターンが典型的であることが明らかとなった。
【0011】
  第1の引裂線として、ウイング状フラップの本体部分と接続する基端部において内側に凸の円弧状曲線のほぼ外側端部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って延びるものがある(
図3及び
図4の12a)。
【0012】
  また、第2の引裂線として、前記第1の引裂線から連続的に形成され、ウイング状フラップ部の裏面シート側に備えられた粘着剤層の内側縁部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って延びるものがある(
図3及び
図4の13a)。
【0013】
  上記第1の引裂線及び第2の引裂線は、吸収性物品の最も幅方向外側に連続的に形成されるもので、比較的高い確率で形成されるものである。またこれとは逆に吸収性物品の最も幅方向内側に形成される第3の引裂線は、ウイング状フラップ前側の基端部に形成される前記円弧状曲線のほぼ内側端部と、ウイング状フラップ後側の基端部に形成される前記円弧状曲線のほぼ内側端部とを結んだ線である(
図3及び
図4の14a)。
【0014】
  以上の結果から、第1の引裂線(第2の引裂線)及び第3の引裂線のいずれに対しても効果的な引き裂き防止手段を講じる必要がある。
【0015】
  そこで本発明の主たる課題は、下着から使用済みの吸収性物品を剥がす際、ウイング状フラップが基端部から吸収性物品の長手方向に沿って引き裂かれるのを防止した吸収性物品を提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0016】
  上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在され、両側部にそれぞれ装着時に基端部の折返し線に沿って折り返すことにより下着のクロッチ部分を巻き込むようにして固定されるウイング状フラップが形成された吸収性物品において、
  前記ウイング状フラップの基端部の外形線が内側に凸の円弧状曲線によって画成され、前記ウイング状フラップの基端部であって吸収性物品の前側寄り位置に少なくとも1つの
圧搾部が形成され、
  前記
圧搾部は、吸収性物品の幅方向外側が、前記円弧状曲線のほぼ外側端部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた第1の仮想線及び前記ウイング状フラップの前記裏面シート側に備えられる粘着剤層の内側縁部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた第2の仮想線をそれぞれ吸収性物品の幅方向に跨ぐとともに、吸収性物品の幅方向内側が、ウイング状フラップ前側の前記円弧状曲線のほぼ内側端部とウイング状フラップ後側の前記円弧状曲線のほぼ内側端部とを結んだ第3の仮想線を吸収性物品の幅方向に跨ぐように形成され
、かつ少なくとも吸収性物品の幅方向外側が吸収性物品の前側に湾曲する形状で形成され、吸収性物品の幅方向外側端部が吸収性物品の後側端部より前側に位置するように形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0017】
  上記請求項1記載の発明では、ウイング状フラップの基端部の外形線が内側に凸の円弧状曲線によって画成され、前記ウイング状フラップの基端部であって吸収性物品の前側寄り位置に少なくとも1つの
圧搾部を形成している。そして、前記
圧搾部は、吸収性物品の幅方向外側が、前記円弧状曲線のほぼ外側端部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた第1の仮想線及びウイング状フラップの裏面シート側に備えられる粘着剤層の内側縁部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた第2の仮想線をそれぞれ吸収性物品の幅方向に跨ぐとともに、吸収性物品の幅方向内側が、ウイング状フラップ前側の前記円弧状曲線のほぼ内側端部とウイング状フラップ後側の前記円弧状曲線のほぼ内側端部とを結んだ第3の仮想線を吸収性物品の幅方向に跨ぐように形成されている。このため、下着から使用済みの吸収性物品を剥がす際、前述の第1の引裂線、第2の引裂線及び第3の引裂線のいずれの引裂線をも跨ぐように
圧搾部が配置されているため、これらの引裂線に沿ってウイング状フラップの基端部が長手方向に沿って引き裂かれるのが防止できる。
【0018】
  上記請求項
1記載の発明では、前記
圧搾部として、少なくとも吸収性物品の幅方向外側を吸収性物品の前側に湾曲する形状で形成し、吸収性物品の幅方向外側端部を吸収性物品の後側端部より前側に位置するように形成しているため、ウイング状フラップ基端部の外形線から形成された引裂線が
圧搾部に到達した後、
圧搾部に沿って吸収性物品の幅方向外側に引裂線が拡大するのが防止できる。
【0019】
  請求項
2に係る本発明として、前記ウイング状フラップは、少なくとも吸収性物品前側の外形線が波状線や曲線又はこれらの組み合わせとしてあり、
  前記円弧状曲線のほぼ外側端部から吸収性物品の長手方向に沿って引いた前記第1の仮想線は、内側に凸の前記円弧状曲線から外側に凸の曲線に切り替わる点を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた仮想線である請求項
1記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
  上記請求項
2記載の発明では、ウイング状フラップの少なくとも吸収性物品前側の外形線を波状線や曲線又はこれらの組み合わせからなるものによって画成した場合において、前述の「円弧状曲線のほぼ外側端部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた第1の仮想線」とは、内側に凸の前記円弧状曲線から外側に凸の曲線に切り替わる点を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた仮想線を指すことを規定している。この円弧状曲線から外側に凸の曲線に切り替わる点は、本体部分の前側端部を摘んで吸収性物品の後方に向けて引っ張った際、ウイング状フラップの基端側から円弧状曲線に沿うめくれがそれ以上外側に拡大しにくく応力が集中しやすい点であって、吸収性物品の長手方向への引裂線(第1の引裂線)が発生しやすい点である。
【0021】
  請求項
3に係る本発明として、前記ウイング状フラップは、前記円弧状曲線より外側の外形線がほぼ直線的に形成され、
  前記円弧状曲線のほぼ外側端部から吸収性物品の長手方向に沿って引いた前記第1の仮想線が、前記円弧状曲線からほぼ直線に切り替わる点を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた仮想線である請求項
1記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
  上記請求項
3記載の発明では、ウイング状フラップの円弧状曲線より外側の外形線をほぼ直線的に形成した場合において、前述の「円弧状曲線のほぼ外側端部を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた第1の仮想線」とは、円弧状曲線からほぼ直線に切り替わる点を通るように吸収性物品の長手方向に沿って引いた仮想線を指すことを規定している。この円弧状曲線からほぼ直線に切り替わる点は、上記と同様にウイング状フラップの基端側から円弧状曲線に沿うめくれがそれ以上外側に拡大しにくく応力が集中しやすい点であって、第1の引裂線が発生しやすい点のことである。
【0023】
  請求項
4に係る本発明として、前記
圧搾部は、吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数設けられ、吸収性物品の後側に設けられる
圧搾部ほど漸次吸収性物品の幅方向外側に広い領域に形成されている請求項1〜
3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
  上記請求項
4記載の発明では、
圧搾部を吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数段で設け、吸収性物品の後側に設けた
圧搾部ほど漸次吸収性物品の幅方向外側に広い領域に形成することによって、第1段目の
圧搾部で引裂線の拡大が防げなかった場合でも、2段目以後の
圧搾部を漸次幅広の領域に形成することによって、引裂線が拡大するのを確実に防止している。
【0025】
  請求項
5に係る本発明として、前記
圧搾部は、吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数設けられ、吸収性物品の後側に設けられる
圧搾部ほど漸次
圧搾部幅が太く形成されている請求項1〜
4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
  上記請求項
5記載の発明では、
圧搾部を吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数段で設け、吸収性物品の後側に設けた
圧搾部ほど漸次
圧搾部幅を太く形成することによって、第1段目の
圧搾部で引裂線の拡大が防げなかった場合でも、2段目以後の
圧搾部幅を漸次太くすることによって、引裂線が拡大するのを確実に防止している。
【0027】
  請求項
6に係る本発明として、前記
圧搾部は、吸収性物品のほぼ幅方向に沿って
圧搾部と
非圧搾部とが交互に形成された間欠パターンとされるとともに、吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数設けられ、隣接する
圧搾部の前記
非圧搾部同士が吸収性物品の長手方向に重ならないように形成されている請求項1〜
5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0028】
  上記請求項
6記載の発明では、
圧搾部が硬くなりすぎて肌当たりを悪化させないように、
圧搾部を吸収性物品のほぼ幅方向に沿って
圧搾部と
非圧搾部とが交互に形成された間欠パターンとしている。この場合、
圧搾部を吸収性物品の長手方向に間隔を空けて複数段で設ける際、前記
非圧搾部が引裂線の基点となるのを防止するため、隣接する
圧搾部の前記
非圧搾部同士が吸収性物品の長手方向に重ならないように形成している。
【0029】
  請求項
7に係る本発明として、前記
圧搾部のうち吸収性物品の最も前側に設けられる
圧搾部は、吸収性物品の外形線に接するように設けられている請求項1〜
6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0030】
  上記請求項
7記載の発明では、吸収性物品の最も前側に設けられる
圧搾部を吸収性物品の外形線に接するように設けることによって、引裂線の基点をできにくくし、より引き裂き防止効果を高めている。