特許第5968641号(P5968641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968641
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/476 20060101AFI20160728BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   A61F13/476
   A61F13/56 110
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-34146(P2012-34146)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-169284(P2013-169284A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】倉持 美帆子
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−290546(JP,A)
【文献】 特開2009−082484(JP,A)
【文献】 特開2007−143871(JP,A)
【文献】 特開2007−268216(JP,A)
【文献】 特開2008−079837(JP,A)
【文献】 特開2003−339765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 〜 13/84
A61L 15/16 〜 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された本体部分の両側部に夫々、装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むようにして固定されるウイング状フラップが形成され、かつ前記ウイング状フラップの前記不透液性裏面シート側の面にウイングズレ止め粘着剤層が形成された吸収性物品において、
前記ウイング状フラップの一方側に、前端縁側を始点として吸収性物品の長手方向に沿って線状に第1の切込みを形成し、前記ウイング状フラップの他方側に、後端縁側を始点として吸収性物品の長手方向に沿って線状に第2の切込みを形成し、前記両ウイング状フラップを本体側に折り畳んだ状態で前記第1の切込みと前記第2の切込みとを引っ掛け合うように掛止可能とし
前記両ウイング状フラップの一方側において、前記切込みに代えて、吸収性物品の長手方向に沿って線状に複数本のミシン目を形成してあることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記第1の切込みの内方端から吸収性物品の幅方向に引いた仮想線と、前記第2の切込みの内方端から吸収性物品の幅方向に引いた仮想線とで示される前記切込みの重なり代を0〜5mmに設定してある請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の切込みの内方端及び前記第2の切込みの内方端には、これら内方端からの引き裂きを防止するための引裂防止処理を施してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1の切込みの長さと、前記第2の切込みの長さとを夫々異ならせている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1の切込み及び第2の切込みの形成部位を含む領域に、補強シートを内挿するかエンボスを付与することにより、他の領域よりも高い剛性を付与してある請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下着への固定に際し、下着のクロッチ部分に巻き付けるようにして使用されるウイング状フラップを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッドなどの吸収性物品Nとしては、例えば図13に示されるように、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などからなる不透液性裏面シート50と、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シート51との間に綿状パルプなどからなる吸収体52を介在させたものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品Nとしては、装着状態でのズレ止めを図るために、例えば非肌当接面側(外面)に1または複数条の粘着剤層53,53を形成し、かつナプキン本体の長手方向両側部に、外方に延在するウイング状フラップW、Wを一体的に形成するとともに、このウイング状フラップW、Wの不透液性裏面シート50側の面(外面)に粘着剤層54,54を設けるようにしたものが存在する。
【0004】
前記吸収性物品Nを下着60に固定するには、図14に示されるように、吸収性物品Nを下着60の局所対応部位にあてがい、側方に突出する前記ウイング状フラップW、Wを下着より外方に突出させ、両ウイング状フラップW、Wを折返し線RL、RLで折返し、下着のクロッチ部分を巻き込むようにしながら下着60の股間部外面に接着した後、下着を身体に装着するようにしている。
【0005】
この種の吸収性物品では、ウイング状フラップの下着(以下、ショーツともいう)への固定性を高めるための手段が種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、透液性トップシートと不透液性バックシートとの間に吸収体が介在され、かつ両側部に側方に突出したウイング状フラップが夫々形成された吸収性物品において、前記ウイング状フラップは少なくとも肌当接面側が不織布とされるとともに、裏面側に折り返した際、それぞれのウイング状フラップの先端部同士が重なりを持つように形成され、かつ前記ウイング状フラップの少なくとも一方側の非肌当接面側に面ファスナーが固定されているとともに、この面ファスナーと接合される他方側ウイング状フラップの不織布に波状加工が施されている吸収性物品が開示されている。
【0006】
下記特許文献2では、液保持性の吸収層及び液不透過性の裏面層を具備する実質的に縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の両側縁部から延出する一対のウイング部とを有する吸収性物品において、前記各ウイング部は、捲縮した捲縮性繊維及び熱融着性繊維を含み伸縮性を有する不織布で形成されており、該不織布には、熱融着部が部分的に形成されており、前記両ウイング部は、前記吸収性物品の装着時に少なくともそれぞれの一部が互いに重合可能に形成されており、一方の該ウイング部の片面に、メカニカルホックのオス部材が配設され、他方の該ウイング部の片面は、前記両ウイング重合時に前記オス部材が直接係合止着可能になされている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−111799号公報
【特許文献2】特開2004−154352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図13に示されるウイング状フラップWは、粘着剤54,54の粘着力によってウイング状フラップWをショーツに対して固定するものである。しかしながら、この生理用ナプキンの場合は、装着中にウイング状フラップWがショーツから剥がれてしまい、それが原因でナプキンがズレを起こし、そこから横漏れが生じることがあった。
【0009】
一方、前記特許文献1,2に係る生理用ナプキンの場合は、メカニカルファスナーと呼ばれる面ファスナーによって機械的にウイング状フラップ同士を結合するため、前記粘着剤タイプのものよりも、装着中にウイング状フラップが剥がれてしまうのを防止することが可能となる。しかしながら、この場合は、面ファスナー部材を別途必要とするため、部材数が多くなるとともに、コスト高となる。また、面ファスナー自体が高い剛性を有するため、股下部分で大きな違和感を感じるようになるなどの問題があった。
【0010】
他方で、前記ウイング状フラップを粘着剤で止めるようにしたナプキンの場合、使用後の廃棄時に本体を畳んだ後、ウイング状フラップを外面に貼着して固定を図るようにしているが、粘着剤が一度使用済みであるため粘着力が低下しており、固定状態が自然に解かれてしまうことがあった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、ウイング状フラップを粘着剤による接着力によってショーツに接着することを基本としながら、ウイング状フラップがショーツから剥がれ難くし、吸収性物品のズレ防止を図ると共に、体液漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【0012】
また同時に、使用後の廃棄時に本体を畳んだ後、ウイング状フラップの粘着剤で固定を図る場合、この固定状態が解かれ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された本体部分の両側部に夫々、装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むようにして固定されるウイング状フラップが形成され、かつ前記ウイング状フラップの前記不透液性裏面シート側の面にウイングズレ止め粘着剤層が形成された吸収性物品において、
前記ウイング状フラップの一方側に、前端縁側を始点として吸収性物品の長手方向に沿って線状に第1の切込みを形成し、前記ウイング状フラップの他方側に、後端縁側を始点として吸収性物品の長手方向に沿って線状に第2の切込みを形成し、前記両ウイング状フラップを本体側に折り畳んだ状態で前記第1の切込みと前記第2の切込みとを引っ掛け合うように掛止可能とし
前記両ウイング状フラップの一方側において、前記切込みに代えて、吸収性物品の長手方向に沿って線状に複数本のミシン目を形成してあることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、ウイング状フラップの一方側に、前端縁側を始点として吸収性物品の長手方向に沿って線状に第1の切込みを形成し、ウイング状フラップの他方側に、後端縁側を始点として吸収性物品の長手方向に沿って線状に第2の切込みを形成するものである。すなわち、両ウイング状フラップ間において、夫々上下逆方向から切込みを形成する。そして、前記両ウイング状フラップを本体側に折り畳んだ状態で前記第1の切込みと前記第2の切込みとを引っ掛け合うように掛止可能とした。
【0015】
吸収性物品の装着時には、両ウイング状フラップを折返し、下着のクロッチ部分を巻き込むようにしながら下着の股間部外面に接着させるとともに、ウイング状フラップの先端同士を前記第1の切込みと前記第2の切込みとを引っ掛け合うように掛止させる。従って、ウイング状フラップがショーツから剥がれ難くなり、吸収性物品の位置ズレを防止することが可能となる。また、吸収性物品の廃棄時も、本体を畳んだ後、ウイング状フラップの粘着剤で固定を図るとともに、ウイング状フラップの先端同士を前記第1の切込みと前記第2の切込みとを引っ掛け合うように掛止させることにより、ウイング状フラップによる固定が解かれにくくなる。
【0016】
また、上記請求項記載の発明では、両ウイング状フラップの一方側において、前記切込みに代えて、吸収性物品の長手方向に沿って線状に複数本のミシン目を形成したものである。すなわち、本発明は、色々なショーツのクロッチ幅に合わせて掛止位置を調整できるようにしたものである。複数の切込みを形成した場合は、切込みによってヒラヒラしてしまうため、切込みに代えて複数のミシン目を形成しておき、使用するミシン目だけを引き裂いて切込みとする。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記第1の切込みの内方端から吸収性物品の幅方向に引いた仮想線と、前記第2の切込みの内方端から吸収性物品の幅方向に引いた仮想線とで示される前記切込みの重なり代を0〜5mmに設定してある請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明においては、前記第1の切込みと第2の切込みの吸収性物品長手方向の重なり代を、0〜5mmに設定するものである。すなわち、ウイング状フラップの先端同士を前記第1の切込みと前記第2の切込みとが引っ掛け合うように相互に掛止させた際、この掛止が解けにくくなるように前記重なり代を0〜5mmの範囲に設定するものである。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記第1の切込みの内方端及び前記第2の切込みの内方端には、これら内方端からの引き裂きを防止するための引裂防止処理を施してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明では、前記切込みの内方端から裂けるのを防止するために引裂防止処理を施したものである。引裂防止処理には、例えばY字処理、円形孔処理、T字処理などを挙げることができる。
【0021】
請求項4に係る本発明として、前記第1の切込みの長さと、前記第2の切込みの長さとを夫々異ならせている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項4記載の発明では、前記第1の切込みの長さと、前記第2の切込みの長さとを夫々異ならせるようにしたものである。この場合は、吸収性物品を縦流れ方式(吸収性物品の長手方向がライン方向となる。)でラインを流す際、切込み長の短い側を下流側に向けて流すことで、切込みから外側部分が生産機械に引っ掛かって千切れるのを極力防止できるようになる。
【0023】
請求項5に係る本発明として、前記第1の切込み及び第2の切込みの形成部位を含む領域に、補強シートを内挿するかエンボスを付与することにより、他の領域よりも高い剛性を付与してある請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項5記載の発明では、前記第1の切込み及び第2の切込みの形成部位を含む領域に、補強シートを内挿するかエンボスを付与することにより、他の領域よりも高い剛性を付与するようにしたものである。これにより、切込み部分が摘み易くなるとともに、切込み同士の掛止が解かれにくくなる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり、ウイング状フラップを粘着剤による接着力によってショーツに接着することを基本としながら、ウイング状フラップがショーツから剥がれ難くし、吸収性物品のズレ防止を図ると共に、体液漏れを防止する。また、使用後の廃棄時に本体を畳んだ後、ウイング状フラップの粘着剤で固定を図る場合、この固定状態が解かれ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2】その裏面図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】ウイング状フラップWの要部拡大平面図である。
図5】生理用ナプキン1の装着状態を外側から見た図である。
図6】(A)〜(C)は切込みの引裂防止処理の例を示したウイング状フラップの展開図である。
図7】ウイング状フラップWの切込み形成要領の他例を示す要部展開図である。
図8】ウイング状フラップWの切込み形成要領の他例を示す要部展開図である。
図9】ウイング状フラップの剛度増大処理領域を示す要部展開図である。
図10】廃棄時の折畳んだ状態でのウイング状フラップによる固定要領を示す図である。
図11】ウイング状フラップの他の形状例を示す裏面図である。
図12】ウイング状フラップの他の形状例を示す裏面図である。
図13】従来の生理用ナプキンNの展開図である。
図14】その装着状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
《生理用ナプキン1の構造例》
本発明に係る生理用ナプキン1は、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記透液性表面シート3とクレープ紙5との間に介在された親水性不織布からなるセカンドシート6と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って形成されたサイド不織布7,7とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、その上下端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。
【0029】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0030】
前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。なお、前記透液性表面シート3の上面側から各種のエンボスを付与し、体液の滞留を促進し吸収効率を高めることにより横漏れを防止するのが望ましい。
【0031】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0032】
前記透液性表面シート3とクレープ紙5との間に介在された親水性不織布からなるセカンドシート6は、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。親水性を付与するには、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えることができる。
【0033】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによりウイング状フラップW、Wが形成されている。このウイング状フラップWについては後で詳述する。
【0034】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにする。
【0035】
図2に示されるように、前記透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の非肌当接面には、下着に対する固定のために適宜の塗布パターンによって複数条の、図示例では3条の本体ズレ止め粘着剤層17、17…が形成されているとともに、これら本体ズレ止め粘着剤層17,17…が図示されない本体用剥離材によって覆われている。また、前記ウイング状フラップW、Wの不透液性裏面シート2側の面には、ウイングズレ止め粘着剤層16が形成されるとともに、これらウイングズレ止め粘着剤層16,16が図示されないウイング用剥離材によって覆われている。前記剥離材は、本体用剥離材と横断方向に配置されたウイング用剥離材とを交差部で接合し、1回の剥離手間で剥離材を撤去できるようにするのが望ましく、前記ウイング状フラップW、Wは、個装状態では透液性表面シート3側に折り畳む、所謂腹折りとしても良いし、不透液性裏面シート2側に折り畳む、所謂背折りとすることでもよい。また、ウイングズレ止め粘着剤層16,16を覆う剥離材として1枚の剥離材ではなく、左右に分離させてもよい。
【0036】
前記剥離材としては、ズレ止め粘着剤層16,17に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布し離型処理した紙またはプラスチックシートを用いることができる。
【0037】
前記ズレ止め粘着剤層16,17を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0038】
《ウイング状フラップW》
本生理用ナプキン1では、前記ウイング状フラップWは、外形線の少なくとも一部が波状線や曲線又はこれらの組み合わせとした凹凸曲線で形成してあり、このウイング状フラップWの不透液性裏面シート2側の面には図2に示されるように、ウイングズレ止め粘着剤層16が形成されている。
【0039】
前記ウイング状フラップWは、詳細には図4に示されるように、本体部分から外方に延びる前側外形線10と、本体部分から外方に延びる後側外形線11と、前記前側外形線10と後側外形線11とを繋ぐ先端側外形線12とからなる外形状を成す。そして、これらの外形線のうち少なくとも一部が波状線や曲線又はこれらの組み合わせとしてある。好ましくは、前記前側外形線10又は後側外形線11の少なくとも一方が波状線や曲線又はこれらの組み合わせとしてある。
【0040】
また、本生理用ナプキン1では、前記ウイング状フラップWの形状を、生理用ナプキン1の幅方向線と前記前側外形線10との成す角度θよりも前記生理用ナプキン1の幅方向線と前記後側外形線11との成す角度βの方が大きく設定され、前記ウイング状フラップWの重心13がウイング状フラップWの付け根と本体部分との接合線15の中央点14よりもΔSだけ前側に偏倚させるようにしている。前記前側外形線10、後側外形線11及び先端側外形線12は、波状線や曲線又はこれらの組み合わせである必要はなく、一部が直線であってもよい。前側外形線10、後側外形線11が波状線や曲線又はこれらの組み合わせの場合、角度θ、βは、これらの波状又は曲線外形線の中心線が成す勾配を取ればよい。
【0041】
前記生理用ナプキン1の幅方向線と前記前側外形線10との成す角度θは、0〜15°程度とし、前記生理用ナプキン1の幅方向線と前記後側外形線11との成す角度βは35〜40°程度とするのが望ましく、この場合、前記生理用ナプキン1の幅方向線と前記前側外形線10との成す角度θと、前記生理用ナプキン1の幅方向線と前記後側外形線11との成す角度βとの角度差は30°以上とするのが望ましい。この角度差が30°以上であると、十分な偏心距離ΔSを確保でき、ウイング状フラップWを折り返す際に、後述のように、手を前側に動かす動作を伴いながら手でウイング状フラップを折り返しても、きっちりと正規の状態で装着できるようになる。
【0042】
一方、前記ウイング状フラップWの突出長Lは、35mm以上、好ましくは40〜50mmとし、ショーツ30のクロッチ部分でウイングWの先端同士がある程度の幅で重なるようにしている。なお、ウイング状フラップWの基端部のナプキン長手方向の長さは、ショーツのクロッチ内に納まるように80mm以内とするのがよい。
【0043】
本生理用ナプキン1においては、図1に示されるように、前記ウイング状フラップWの一方側に、前端縁側Wfを始点としてナプキン1の長手方向に沿って線状に第1の切込み8を形成し、前記ウイング状フラップWの他方側に、後端縁側Wbを始点としてナプキン1の長手方向に沿って線状に第2の切込み9を形成し、前記両ウイング状フラップW、Wを本体側に折り畳んだ状態で前記第1の切込み8と前記第2の切込み9とを引っ掛け合うように掛止可能としてある。
【0044】
従って、図5に示されるように、ナプキン1の装着時には、両ウイング状フラップW、Wを折返し、下着20のクロッチ部分を巻き込むようにしながら下着の股間部外面に接着させるとともに、ウイング状フラップW、Wの先端同士を前記第1の切込み8と前記第2の切込み9とが引っ掛け合うように掛止させる。その結果、ウイング状フラップW、Wがショーツ20から剥がれ難くなり、ナプキン1の位置ズレを防止することが可能となる。また、ナプキン1の廃棄時も、図10に示されるように、本体を畳んだ後、ウイング状フラップW、Wの粘着剤で固定を図るとともに、ウイング状フラップW、Wの先端同士を前記第1の切込み8と前記第2の切込み9とを引っ掛け合うように掛止させることにより、ウイング状フラップW、Wによる固定が解かれにくくなる。
【0045】
前記第1の切込み8と第2の切込み9の形成位置は、ウイング状フラップWの先端から内方側に5mm以上の距離aを確保し、摘み易くするのが望ましく、その長さ寸法は、切込み8,9から先の部分がちぎり取られないようにするため、切込み形成位置におけるウイング状フラップWのナプキン長手方向寸法bに対して2/3以下の寸法で形成するのが望ましい。また、図示例のようにウイング状フラップWの外形線が凹凸曲線で形成されている場合は、ちぎれ防止のために、凹部の底に掛からないように切り込み8,9を形成するのが望ましい。
【0046】
更に、前記切込み8,9とウイングズレ止め粘着剤層16との離間距離cは、前記距離a以上、すなわち5mm以上確保するのが望ましい。ウイング状フラップW、W同士を掛止させた際に、切込み8,9から先のウイング状フラップW部分がズレ止め粘着剤16に接着しないようにするとともに、切込み8,9から先が折り返った時に接着しないようするためである。
【0047】
前記第1の切込み8と第2の切込み9との相対的関係は、図1に示されるように、前記第1の切込み8の内方端からナプキン1の幅方向に引いた仮想線と、前記第2の切込み9の内方端からナプキン1の幅方向に引いた仮想線とで示される重なり代Kは、0〜5mm、好ましくは3〜5mmに設定するのが望ましい。この重なり代Kが大き過ぎると、ウイング状フラップW、Wの掛止が解け易くなる。また、重ね代Kを取らないと(K=0)、一方又は両方のウイング状フラップWが若干傾いて折り畳まれた場合、前記ウイング状フラップW、Wの掛止部にシワが発生し易くなる。
【0048】
前記第1の切込み8の内方端及び前記第2の切込み9の内方端には、これら内方端からの引き裂きを防止するための引裂防止処理を施すようにするのが望ましい。前記引裂防止処理としては、例えば図6(A)に示されるように、内方端をY字状に分岐させるY字処理、図6(B)に示されるように、内方端に円形孔を形成する円形孔処理、図6(C)に示されるように、内方端をT字状に分岐させるT字処理などが挙げられる。
【0049】
前記切込み8,9は、図7に示されるように、前記第1の切込み8の長さL2と、前記第2の切込み9の長さL1と夫々異ならせるようにしてもよい。この場合は、ナプキン1を縦流れ方式(ナプキン1の長手方向がライン方向となる。)でラインを流す際、切込み長の短い側、図示例では第2の切込み9を下流側に向けて流すことで、切込み9から外側部分が生産機械に引っ掛かって千切れるのを極力防止できるようになる。
【0050】
前記両ウイング状フラップW、Wの一方側において、前記切込み8,9に代えて、ナプキン1の長手方向に沿って線状に複数本のミシン目を形成するようにしてもよい。例えば、図8に示されるように、第1の切込み8に代えて、複数本のミシン目8a〜8cを形成するようにする。複数本の切込みを形成した場合は、ウイング状フラップWのの先端がばらけたようにヒラヒラしてしまうため、使用するミシン目だけを引き裂いて切込みとする。これによって、色々なショーツのクロッチ幅に合わせて掛止位置を調整できるようになる。
【0051】
一方で、図9に示されるように、前記切込み8,9を含む範囲18には、補強シートを内挿するかエンボスを付与することにより、他の領域よりも高い剛性を付与するようにするのが望ましい。前記補強シートとしては、例えば紙や不織布などを挙げることができる。前記エンボス処理の場合、ナプキン1の外周に全周エンボスを設けている場合は、特に前記切込み8,9を含む範囲に対して他の全周エンボスよりもエンボス密度を上げるようにして周辺よりもコシを出すようにする。これらの処理により、切込み部分が摘み易くなるとともに、切込み同士の掛止が解かれにくくなる。剛性を上げる方法としては他に、サイド不織布7として使用する不織布として、坪量の高い不織布、具体的には30〜100g/m2、好ましくは50〜100g/m2程度のものを使用するようにしてもよい。
【0052】
〔その他の形態例〕
(1)前記不透液性裏面シート2に対して、デザインや色を設ける場合は、前記切込み8,9を境に、デザインや色を変化させるようにしてもよい。デザインや色を変えることで、切込み位置が分かりやすくなる。
(2)ウイング状フラップW、Wの外形状は任意であるが、装着時に本体側に折返し、ウイング状フラップW、Wの先端同士を前記第1の切込み8と前記第2の切込み9とを引っ掛け合うように掛止させた際に出来上がる形状がデザイン性に優れていると見栄えが向上する。例えば、図11の例はウイング状フラップW、Wの先端同士を掛止させた際に、ハート形の形状ができるようにしたものであり、図12の例は、ウイング状フラップW、Wの先端同士を掛止させた際に、花びら状の模様ができるようにしたものである。
(3)上記形態例では、ウイング状フラップの外形線が波状線や曲線で形成されたものを例示したが、例えば図13に示されるような一般的な台形状のウイング状フラップW、Wに対しても全く同様に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート、7…サイド不織布、8…第1の切込み、8a〜8c…ミシン目、9…第2の切込み、16…ウイングズレ止め粘着剤層、17…本体ズレ止め粘着剤層、10…前側外形線、11…後側外形線、12…先端側外形線、W…ウイング状フラップ
図1
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