(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968650
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/167 20060101AFI20160728BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H02K5/167 A
H02K7/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-55524(P2012-55524)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-192315(P2013-192315A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−077471(JP,U)
【文献】
特開2002−153012(JP,A)
【文献】
特開2009−050149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力側に送りネジが固定または形成される回転軸と、前記回転軸の反出力側の外周面に固定される永久磁石と、前記永久磁石の外周側に配置される駆動用コイルを有するステータと、前記ステータの前記出力側の端面に固定される端板と、前記端板に固定され前記送りネジと前記永久磁石との間で前記回転軸を回転可能に支持するラジアル軸受と、前記ラジアル軸受と前記永久磁石との間で前記回転軸に固定される環状のワッシャと、前記送りネジに係合するナット部材とを備え、
前記ラジアル軸受の前記反出力側には、前記ワッシャに当接可能な環状の当接部が形成され、
前記永久磁石の前記出力側の端面には、前記反出力側に向かって窪む環状の凹部が前記回転軸を囲むように形成されるとともに、前記永久磁石の前記出力側には、前記ワッシャの外周側部分が当接可能なワッシャ当接面が形成され、
前記当接部の最大外径は、前記ワッシャ当接面における前記凹部の最小内径よりも小さくなっていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記当接部の最大外径をd、前記ワッシャの内径をD1、前記ワッシャの外径をD2とすると、
d≦(D1+D2)/2
であることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記当接部は、前記ワッシャの径方向における内周面と外周面との中心位置よりも内周側で前記ワッシャに当接可能となっていることを特徴とする請求項1または2記載のモータ。
【請求項4】
前記当接部の面積は、前記ワッシャの面積の半分以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記ワッシャは、樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記ワッシャは、前記凹部の中に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記凹部は、第1凹部と第2凹部とを備え、
前記第1凹部は、前記第2凹部よりも前記反出力側に形成され、
前記第2凹部は、前記第1凹部よりも前記出力側に形成されるとともに、前記第2凹部に、前記ワッシャが配置され、
前記第2凹部の内径は、前記第1凹部の内径よりも大きくなっており、
前記第1凹部と前記第2凹部との境界に前記ワッシャ当接面が形成されていることを特徴とする請求項6記載のモータ。
【請求項8】
前記第1凹部には、前記回転軸に前記永久磁石を固定するための接着剤が溜まることを特徴とする請求項7記載のモータ。
【請求項9】
前記ラジアル軸受は、前記ラジアル軸受の外周側部分を用いて前記端板にカシメ固定されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のモータ。
【請求項10】
前記当接部の外周側には、前記回転軸の径方向の外側に向かうにしたがって前記出力側へ傾斜する傾斜面が形成され、
前記ラジアル軸受は、前記傾斜面の外周側部分を用いて前記端板にカシメ固定されていることを特徴とする請求項9記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸を備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図7に示すように、回転軸101および回転軸101に固定される永久磁石102を有するロータ103と、永久磁石102の外周面に対向する極歯104および極歯104の外周側に配置される駆動用コイル105を有するステータ106とを備えるステッピングモータ100が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ステッピングモータ100では、回転軸101の出力側におけるステータ106の端面に第1のプレート107が固定されており、この第1のプレート107に、第1のラジアル軸受108が取り付けられている。また、回転軸101の反出力側におけるステータ106の端面には、第2のプレート109が固定されており、この第2のプレート109に、第2のラジアル軸受110が取り付けられている。回転軸101は、第1のラジアル軸受108と第2のラジアル軸受110とによって回転可能に支持されている。また、ステッピングモータ100では、第1のラジアル軸受108と永久磁石102との間で回転軸101にワッシャ111が固定されている。ワッシャ111は、永久磁石102の出力側の端面に当接している。
【0004】
また、従来、回転軸およびこの回転軸に固定される永久磁石を有するロータと、永久磁石の外周面に対向する極歯およびこの極歯の外周側に配置される駆動用コイルを有するステータとを備えるステッピングモータとして、回転軸の出力側に送りネジが形成されたステッピングモータが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のステッピングモータでは、回転軸の出力側に形成される送りネジに、係合部材(ナット部材)が係合しており、回転軸が回転すると、送りネジに沿ってナット部材が直線的に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−50149号公報
【特許文献2】特開2009−189191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示すように、ステッピングモータ100の回転軸101の出力側に送りネジ112を固定すれば、特許文献2に記載のステッピングモータと同様に、ステッピングモータ100において、送りネジ112に沿ってナット部材113を直線的に移動させることが可能である。ここで、ナット部材113が回転軸101の反出力側へ移動するように回転軸101が所定の速度で回転しているときに、ナット部材113が第1のプレート107に衝突すると、送りネジ112とナット部材113との食付きが発生することがある。
【0007】
すなわち、回転軸101が所定の速度で回転しているときにナット部材113が第1のプレート107に衝突すると、ナット部材113が第1のプレート107に接触した状態で回転軸101がさらに回転して、
図8に示すように、ロータ103が出力側へ引っ張られるため、送りネジ112とナット部材113のメネジとの接触摩擦、ナット部材113と第1のプレート107との接触摩擦、および、第1のラジアル軸受108の反出力側の端面とワッシャ111との接触摩擦が高くなって、ナット部材113が出力側へ移動するように回転軸101を回転させようとしても、回転軸101が回転せずに、ナット部材113が移動しないといった状況が発生することがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸を備えるモータにおいて、送りネジに係合するナット部材と送りネジとの食付きを抑制することが可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のモータは、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸と、回転軸の反出力側の外周面に固定される永久磁石と、永久磁石の外周側に配置される駆動用コイルを有するステータと、ステータの出力側の端面に固定される端板と、端板に固定され送りネジと永久磁石との間で回転軸を回転可能に支持するラジアル軸受と、ラジアル軸受と永久磁石との間で回転軸に固定される環状のワッシャと、送りネジに係合するナット部材とを備え、ラジアル軸受の反出力側には、ワッシャに当接可能な環状の当接部が形成され、永久磁石の出力側の端面には、反出力側に向かって窪む環状の凹部が回転軸を囲むように形成されるとともに、永久磁石の出力側には、ワッシャの外周側部分が当接可能なワッシャ当接面が形成され、当接部の最大外径は、ワッシャ当接面における凹部の最小内径よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0010】
本発明のモータでは、永久磁石の出力側の端面に反出力側に向かって窪む環状の凹部が回転軸を囲むように形成され、ラジアル軸受の反出力側に形成される当接部の最大外径は、永久磁石の出力側に形成されるワッシャ当接面における凹部の最小内径よりも小さくなっている。そのため、回転軸の反出力側へ移動するナット部材が端板に衝突して、回転軸が出力側に引っ張られ、ラジアル軸受の当接部とワッシャとが接触したときに、反出力側へワッシャを撓ませることが可能になる。したがって、ナット部材が端板に衝突して回転軸が出力側に引っ張られたときのラジアル軸受の当接部とワッシャとの接触圧を低減させることが可能になる。その結果、本発明では、送りネジとナット部材との食付きを抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、当接部の最大外径をd、ワッシャの内径をD1、ワッシャの外径をD2とすると、d≦(D1+D2)/2であることが好ましい。また、本発明において、当接部は、ワッシャの径方向における内周面と外周面との中心位置よりも内周側でワッシャに当接可能となっていることが好ましい。また、本発明において、当接部の面積は、ワッシャの面積の半分以下であることが好ましい。このように構成すると、当接部とワッシャとの接触面積を低減させることが可能になる。したがって、ナット部材が端板に衝突して回転軸が出力側に引っ張られたときのラジアル軸受の当接部とワッシャとの接触抵抗を低減させて、送りネジとナット部材との食付きを効果的に抑制することが可能になる。
【0012】
本発明において、ワッシャは、たとえば、樹脂で形成されている。ラジアル軸受が、たとえば、焼結含油軸受である場合には、ワッシャが樹脂で形成されていると、当接部とワッシャとの摩擦係数を低減させることが可能になる。したがって、ナット部材が端板に衝突して回転軸が出力側に引っ張られたときのラジアル軸受の当接部とワッシャとの接触抵抗を低減させて、送りネジとナット部材との食付きを効果的に抑制することが可能になる。
【0013】
本発明において、ワッシャは、凹部の中に配置されていることが好ましい。このように構成すると、凹部の外にワッシャが配置されている場合と比較して、回転軸の軸方向において、モータを小型化することが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、凹部は、第1凹部と第2凹部とを備え、第1凹部は、第2凹部よりも反出力側に形成され、第2凹部は、第1凹部よりも出力側に形成されるとともに、第2凹部に、ワッシャが配置され、第2凹部の内径は、第1凹部の内径よりも大きくなっており、第1凹部と第2凹部との境界にワッシャ当接面が形成されている。この場合には、第1凹部に、回転軸に永久磁石を固定するための接着剤が溜まることが好ましい。このように構成すると、凹部の中にワッシャが配置されていても、第1凹部に接着剤を溜めて、回転軸に対する永久磁石の固定強度を高めることが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、ラジアル軸受は、ラジアル軸受の外周側部分を用いて端板にカシメ固定されている。この場合には、たとえば、当接部の外周側には、回転軸の径方向の外側に向かうにしたがって出力側へ傾斜する傾斜面が形成され、ラジアル軸受は、傾斜面の外周側部分を用いて端板にカシメ固定されている。本発明では、ラジアル軸受に形成される当接部の最大外径がワッシャ当接面における凹部の内径よりも小さくなっている。すなわち、本発明では、当接部は、ラジアル軸受の径方向における比較的内側に形成されている。そのため、ラジアル軸受が、その外周側部分を用いて端板にカシメ固定されていても、ラジアル軸受をカシメ固定する際の当接部の変形を容易に防止しながら、ラジアル軸受を端板にカシメ固定することが可能になる。したがって、ラジアル軸受が、その外周側部分を用いて端板にカシメ固定されていても、ラジアル軸受を端板に固定する際のカシメ作業がやりやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸を備えるモータにおいて、送りネジに係合するナット部材と送りネジとの食付きを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるモータの断面図である。
【
図4】
図1のモータにおいて、ナット部材が端板に衝突したときの状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の他の実施の形態にかかるラジアル軸受の構成を説明するための拡大断面図である。
【
図8】従来技術にかかるモータの問題点を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(モータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ1の断面図である。
【0020】
本形態のモータ1は、いわゆるPM型のステッピングモータである。このモータ1は、回転軸2と永久磁石3とを有するロータ4と、永久磁石3の径方向の外側に対向配置される極歯5を有するステータ6とを備えている。また、モータ1は、回転軸2を回転可能に支持するラジアル軸受8、9を備えている。なお、以下の説明では、回転軸2の出力側となる
図1等のZ1方向側を「出力側」、回転軸2の反出力側となる
図1等のZ2方向側を「反出力側」とする。また、以下の説明では、回転軸2の軸方向を「軸方向」とする。
【0021】
ロータ4は、上述の回転軸2および永久磁石3に加え、回転軸2の出力側に固定される送りネジ(リードスクリュー)10を備えている。送りネジ10の反出力側には、回転軸2の出力側が挿入される挿入孔が形成されており、この挿入孔に回転軸2の出力側が圧入されることで、回転軸2の出力側に送りネジ10が固定されている。送りネジ10の外周面には、オネジが形成されている。
【0022】
送りネジ10には、筒状に形成されるナット部材11が係合している。ナット部材11の内周面は、円筒面となっており、ナット部材11の内周面には、送りネジ10のオネジに螺合するメネジが形成されている。ナット部材11には、たとえば、カメラのレンズ枠が取付可能となっており、ロータ4が回転すると、送りネジ10に沿って、ナット部材11とともに、レンズ枠が直線的に移動する。
【0023】
永久磁石3は、略円筒状に形成されている。この永久磁石3は、ステータ6の内部に配置される回転軸2の反出力側の外周面に固定されている。永久磁石3の外周面には、N極とS極とが周方向に沿って交互に着磁されている。永久磁石3の反出力側の端面には、出力側に向かって窪む凹部3aが回転軸2を囲むように円環状に形成されている。この凹部3aの中には、ラジアル軸受9の出力側の一部が配置されている。永久磁石3の出力側の端面には、反出力側に向かって窪む凹部3bが回転軸2を囲むように円環状に形成されている。この凹部3bの中には、回転軸2に固定されるワッシャ12が配置されている。凹部3bおよびワッシャ12の詳細な構成については後述する。
【0024】
ステータ6は、軸方向で重なるように配置される第1のステータ部組14と第2のステータ部組15とを備えている。本形態では、第1のステータ部組14が反出力側に配置され、第2のステータ部組15が出力側に配置されている。第1のステータ部組14は、外ステータコア16と、駆動用コイル17が巻回されるボビン18と、ボビン18を外ステータコア16との間に挟む内ステータコア19とを備えている。第2のステータ部組15は、第1のステータ部組14と同様に、外ステータコア16と、駆動用コイル17が巻回されるボビン18と、内ステータコア19とを備えている。
【0025】
ボビン18は、全体として略鍔付きの円筒状に形成されている。ボビン18の外周面には、導線が巻回されており、ボビン18の外周面に導線が略円筒状に巻回されることで駆動用コイル17が形成されている。ボビン18の内周側には、外ステータコア16および内ステータコア19のそれぞれに形成された複数の極歯5が周方向に隣接するように配置されている。極歯5の内周側には、永久磁石3が配置されている。すなわち、駆動用コイル17は、永久磁石3の外周側に配置されている。また、駆動用コイル17の外周側は、外ステータコア16の一部によって覆われている。すなわち、本形態の外ステータコア16の一部は、駆動用コイル17の外周側を覆うケース体としての機能を果たしている。
【0026】
ステータ6の出力側の端面(具体的には、第2のステータ部組15の外ステータコア16の出力側の端面)には、平板状に形成された金属製の端板21が固定されている。端板21には、ラジアル軸受8を固定するための貫通孔が形成されており、この貫通孔にラジアル軸受8が固定されている。ラジアル軸受8は、軸方向における回転軸2の略中心位置を回転可能に支持しており、軸方向において、送りネジ10と永久磁石3との間に配置されている。また、ラジアル軸受8は、焼結含油軸受であり、鍔付きの略円筒状に形成されている。ラジアル軸受8のより具体的な構成については後述する。
【0027】
ステータ6の反出力側の端面(具体的には、第1のステータ部組14の外ステータコア16の出力側の端面)には、端板21よりも薄い平板状に形成されたカバー部材22が固定されている。カバー部材22は、可撓性を有する金属板によって形成されている。カバー部材22には、ラジアル軸受9が固定されている。ラジアル軸受9は、焼結含油軸受であり、鍔付きの略円筒状に形成されている。このラジアル軸受9は、回転軸2の反出力側の端部を支持している。また、回転軸2の反出力側端は、カバー部材22に当接可能となっており、回転軸2は、軸方向において、カバー部材22によって支持されている。
【0028】
(ワッシャ、凹部およびラジアル軸受の構成)
図2は、
図1のE部の拡大図である。
図3は、
図1に示すワッシャ12の平面図である。
図4は、
図1のモータ1において、ナット部材11が端板21に衝突したときの状態を示す断面図である。
図5は、
図4のF部の拡大図である。
【0029】
ワッシャ12は、円環状に形成されるとともに薄い平板状に形成されている。また、ワッシャ12は、可撓性を有する材料で形成されている。本形態のワッシャ12は、可撓性を有する樹脂で形成されている。具体的には、ワッシャ12は、グラファイト入りのナイロンによって形成されている。ワッシャ12は、その内周面が回転軸2に圧入されることで、回転軸2に固定されており、ワッシャ12の内径D1は、回転軸2の外径と略等しくなっている。また、ワッシャ12は、永久磁石3に形成される後述のワッシャ当接面3gに当接した状態で回転軸2に固定されている。このワッシャ12は、軸方向において、ラジアル軸受8と永久磁石3との間に配置されており、ラジアル軸受8と永久磁石3との接触を防止する機能を果たしている。
【0030】
永久磁石3の凹部3bは、回転軸2に永久磁石3を固定するための接着剤が溜まる第1凹部3cと、ワッシャ12が配置される第2凹部3dとから構成されている。第2凹部3dは、第1凹部3cよりも出力側に配置されており、凹部3bの出力側部分を構成している。第1凹部3cの内径は、反出力側に向かうにしたがって小さくなっている。すなわち、第1凹部3cの側面3eは、出力側に向かうにしたがって径方向の外側へ広がるように傾斜する傾斜面となっている。第2凹部3dの内径も、反出力側に向かうにしたがって小さくなっている。すなわち、第2凹部3dの側面3fも、出力側に向かうにしたがって径方向の外側へ広がるように傾斜する傾斜面となっている。
【0031】
第2凹部3dの内径は、第1凹部3cの内径よりも大きくなっている。具体的には、第2凹部3dの反出力側端の内径(すなわち、第2凹部3dの最小内径)D3は、第1凹部3cの出力側端の内径(すなわち、第1凹部3cの最大内径)D4よりも大きくなっている。また、ワッシャ12の外径D2は、内径D3よりも小さく、かつ、内径D4よりも大きくなっている。第1凹部3cと第2凹部3dとの境界に形成される軸方向に垂直な平面は、ワッシャ12の外周側部分の反出力側の面が当接するワッシャ当接面3gとなっている。すなわち、永久磁石3の出力側には、ワッシャ12の外周側部分が当接するワッシャ当接面3gが形成されている。
【0032】
軸方向における第1凹部3cの幅(深さ)は、第2凹部3dの幅(深さ)よりも広く(深く)なっている。たとえば、軸方向における第1凹部3cの幅は、第2凹部3dの幅の3倍程度となっている。また、軸方向における第2凹部3dの幅は、ワッシャ12の厚みよりも広くなっている。
【0033】
ラジアル軸受8は、鍔部8aと筒部8bとを有する鍔付きの略円筒状に形成されている。このラジアル軸受8は、端板21の出力側の側面に鍔部8aが当接するように端板21に固定されている。また、ラジアル軸受8は、筒部8bの反出力側部分が端板21の反出力側の側面よりも突出するように端板21に固定されており、筒部8bの反出力側部分は、ステータ6の内部に配置されている。本形態では、筒部8bの反出力側の外周側部分を用いて、ラジアル軸受8が端板21にカシメ固定されており、筒部8bの反出力側の外周側部分には、筒部8bの円周方向において所定のピッチで複数のカシメ固定部が形成されている。
【0034】
ラジアル軸受8の出力端側の内周面には、反出力側に向かうにしたがってその内径がしだいに小さくなる傾斜面8cが形成されている。ラジアル軸受8の反出力端側の内周面には、出力側に向かうにしたがってその内径がしだいに小さくなる傾斜面8dが形成されている。軸方向に対する傾斜面8dの傾斜角度θ1は、軸方向に対する傾斜面8cの傾斜角度θ2よりも小さくなっている。また、傾斜面8dの最大内径d1は、傾斜面8cの最大内径d2よりも小さくなっている。
【0035】
ラジアル軸受8の反出力側には、ワッシャ12に当接可能な当接部としての当接面8eが形成されている。当接面8eは、軸方向に垂直な平面状に形成されるとともに、傾斜面8dを囲む円環状に形成されている。また、当接面8eは、傾斜面8dの反出力側端に繋がるように形成されており、回転軸2の径方向において、回転軸2の外周面と当接面8eの間には隙間が形成されている。当接面8eの外周側には、径方向の外側に向かうにしたがって出力側へ傾斜する傾斜面8fが当接面8eの径方向外側端に繋がるように形成されている。本形態では、当接面8eによってラジアル軸受8の反出力側の端面が構成されている。当接面8eに対する傾斜面8fの傾斜角度θ3は、45°よりも小さくなっている。
【0036】
上述のように、筒部8bの反出力側の外周側部分を用いて、ラジアル軸受8が端板21にカシメ固定されている。すなわち、本形態では、当接面8eの外周側に形成される傾斜面8fの外周端部分を用いて、ラジアル軸受8が端板21にカシメ固定されている。そのため、本形態では、ラジアル軸受8をカシメ固定する際の当接面8eの変形を容易に防止しながら、ラジアル軸受8を端板21にカシメ固定することが可能になる。
【0037】
当接面8eの最大外径dは、第1凹部3cの出力側端の内径D4よりも小さくなっている。すなわち、最大外径dは、ワッシャ当接面3gにおける凹部3bの最小内径D4よりも小さくなっている。また、本形態では、d≦(D1+D2)/2となっている。すなわち、本形態では、ワッシャ12の径方向における内周面と外周面との中心位置C(円環状の中心位置C、
図3参照)よりも内周側で、当接面8eは、ワッシャ12に当接可能となっている。また、当接面8eの面積は、ワッシャ12の出力側の面の面積の半分以下となっている。なお、本形態では、当接面8eの最大外径dと傾斜面8cの最大内径d2とが略等しくなっている。
【0038】
図1、
図2に示すように、モータ1の通常使用時においては、ワッシャ12の出力側の側面と当接面8eとの間には隙間が形成されているか、または、ワッシャ12の出力側の側面と当接面8eとは軽く接触している。ここで、ナット部材11が反出力側へ移動するように回転軸2が所定の速度で回転しているときに、ナット部材11が端板21に衝突すると、ナット部材11が端板21に接触した状態で回転軸2がさらに回転して、
図4に示すように、回転軸2が出力側へ引っ張られる。回転軸2が出力側へ引っ張られると、ワッシャ12の出力側の側面とラジアル軸受8の当接面8eとが所定の接触圧で接触する。本形態では、当接面8eの最大外径dが、ワッシャ当接面3gにおける凹部3bの最小内径D4よりも小さくなっているため、また、ワッシャ12がグラファイト入りのナイロンによって形成されているため、ワッシャ12の出力側の側面と当接面8eとが所定の接触圧で接触すると、
図5に示すように、ワッシャ12の径方向内側部分が反出力側に向かって撓む。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ラジアル軸受8の当接面8eの最大外径dは、永久磁石3のワッシャ当接面3gにおける凹部3bの最小内径D4よりも小さくなっている。そのため、ナット部材11が反出力側へ移動するように回転軸2が所定の速度で回転しているときにナット部材11が端板21に衝突して、回転軸2が出力側に引っ張られ、当接面8eとワッシャ12の出力側の側面とが接触すると、上述のように、ワッシャ12の径方向内側部分が反出力側に向かって撓む。したがって、ナット部材11が端板21に衝突して回転軸2が出力側に引っ張られたときに、送りネジ10のオネジとナット部材11のメネジとの接触圧、および、ナット部材11と端板21との接触圧が高くなったとしても、ラジアル軸受8の当接面8eとワッシャ12との接触圧を低減させることが可能になる。その結果、本形態では、送りネジ10とナット部材11との食付きを抑制することが可能になる。
【0040】
特に本形態では、ワッシャ12の径方向における内周面と外周面との中心位置Cよりも内周側で、当接面8eがワッシャ12に当接可能となっており、また、当接面8eの面積がワッシャ12の出力側の面の面積の半分以下となっているため、当接面8eとワッシャ12との接触面積を低減させることが可能になる。また、本形態では、ワッシャ12が樹脂で形成されているため、焼結含油軸受であるラジアル軸受8の当接面8eとワッシャ12との摩擦係数を低減させることが可能になる。したがって、本形態では、ナット部材11が端板21に衝突して回転軸2が出力側に引っ張られたときの当接面8eとワッシャ12との接触抵抗を低減させて、送りネジ10とナット部材11との食付きを効果的に抑制することが可能になる。
【0041】
また、本形態では、当接面8eの最大外径dがワッシャ当接面3gにおける凹部3bの最小内径D4よりも小さくなっており、当接面8eは、ラジアル軸受8の径方向において、その内側に形成されている。そのため、上述のように、ラジアル軸受8をカシメ固定する際の当接面8eの変形を容易に防止しながら、ラジアル軸受8を端板21にカシメ固定することが可能になる。したがって、本形態では、筒部8bの反出力側の外周側部分を用いて、ラジアル軸受8が端板21にカシメ固定されていても、ラジアル軸受8を端板21に固定する際のカシメ作業がやりやすくなる。
【0042】
本形態では、ワッシャ12は、永久磁石3の凹部3bの中に配置されている。そのため、本形態では、凹部3bの外にワッシャ12が配置されている場合と比較して、軸方向において、モータ1を小型化することが可能になる。また、本形態では、回転軸2に永久磁石3を固定するための接着剤が溜まる第1凹部3cと、ワッシャ12が配置される第2凹部3dとによって凹部3bが形成されているため、凹部3bの中にワッシャ12が配置されていても、第1凹部3cに接着剤を溜めて、回転軸2に対する永久磁石3の固定強度を高めることが可能になる。
【0043】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0044】
上述した形態では、ラジアル軸受8の反出力側に、ワッシャ12に当接可能な当接部として、平面状の当接面8eが形成されている。この他にもたとえば、ラジアル軸受8の反出力側に、ワッシャ12に当接可能な当接部として、
図6に示すように、反出力側に向かって膨らむ凸曲面状の当接部8gが形成されても良い。また、上述した形態では、当接面8eは、傾斜面8dを囲む円環状に形成されているが、ラジアル軸受8の周方向において所定の間隔で傾斜面8dを囲むように配置される円弧状の複数の平面によって、円環状の当接部が構成されても良い。
【0045】
上述した形態では、ワッシャ12の径方向における内周面と外周面との中心位置Cよりも内周側で、ラジアル軸受8の当接面8eがワッシャ12に当接可能となっている。この他にもたとえば、ワッシャ12の径方向における内周面と外周面との中心位置Cよりも外周側で、当接面8eがワッシャ12に当接可能となっていても良い。また、ワッシャ12の径方向における内周面と外周面との中心位置Cよりも内周側および外周側の両方で当接面8eがワッシャ12に当接可能となっていても良い。この場合には、ワッシャ12の径方向における内周面と外周面との中心位置Cにおいて、当接面8eがワッシャ12に当接可能となっていても良いし、当接面8eがワッシャ12に当接しないようになっていても良い。
【0046】
上述した形態では、回転軸2と別体で形成された送りネジ10が回転軸2の出力側に固定されている。この他にもたとえば、回転軸2の出力側の外周面に形成されるオネジによって送りネジ10が構成されても良い。すなわち、回転軸2と送りネジ10とが一体であっても良い。また、上述した形態では、端板21は、ステータ6の出力側の端面に直接、固定されているが、端板21は、所定の部材を介して、ステータ6の出力側の端面に固定されても良い。
【0047】
上述した形態では、ワッシャ12は、永久磁石3の凹部3bの中に配置されている。この他にもたとえば、ワッシャ12は、凹部3bの外に配置されても良い。この場合には、永久磁石3の出力側の端面が、ワッシャ12の外周側部分が当接するワッシャ当接面となる。また、この場合には、たとえば、凹部3bは、第1凹部3cによって構成される。また、上述した形態では、ワッシャ12は、可撓性を有する樹脂で形成されているが、ワッシャ12は、可撓性を有する金属で形成されても良い。
【0048】
上述した形態では、ロータ4は、1個の永久磁石3を備えているが、ロータ4が備える永久磁石3の数は、2個以上でも良い。また、上述した形態では、ステータ6は、第1のステータ部組14と第2のステータ部組15とによって構成されているが、ステータ6は、1個のステータ部組によって構成されても良いし、3個以上のステータ部組によって構成されても良い。また、上述した形態では、モータ1は、ステッピングモータであるが、本発明の構成が適用されるモータは、ステッピングモータ以外のモータであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ
2 回転軸
3 永久磁石
3b 凹部
3c 第1凹部
3d 第2凹部
3g ワッシャ当接面
6 ステータ
8 ラジアル軸受
8e 当接面(当接部)
8f 傾斜面
8g 当接部
10 送りネジ
11 ナット部材
12 ワッシャ
17 駆動用コイル
21 端板
C ワッシャの径方向における内周面と外周面との中心位置
d 当接部の最大外径
D1 ワッシャの内径
D2 ワッシャの外径
D4 ワッシャ当接面における凹部の最小内径
Z1 出力側
Z2 反出力側