【実施例】
【0037】
[1]試験体の作製
[1−1]試験体S1の作製手順
図2の接合構造を模擬した試験体S1を以下のようにして作製した。
図6は試験体S1の組立斜視図である。まず、縦20mm、横20mm、厚さ5mmのセラミックス基体72に直径6.00mm、深さ0.5mmの凹部74を形成した後、凹部内をサンドブラストにより粗化処理を行い、無電解Niメッキを約3μm施した。セラミックス基体72の材料としては、アルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミ(AlN)、イットリア(Y
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)、マグネシア(MgO)を使用した。また、直径5.95mm、高さ6mmの給電部材76と、直径5.8mm、箔厚100μmの接合材78を準備した。なお、凹部74の直径Rと、Rから給電部材76の直径を差し引いたクリアランスCの比率C/Rの値は0.008であった。給電部材76の材料としては、Ti,Mo,CuW,FeNiCo系合金(Kovar(登録商標)),Ni,Cuを用い、Ni以外は下面と側面に電解Niメッキ処理を施してNi層を形成したものを準備した。一方、接合材78としては、AuGe系合金(Au−12wt%Ge、融点356℃)、AuSn系合金(Au−20wt%Sn、融点280℃)、AuSi系合金(Au−3.15wt%Si、融点363℃)、ZnAl系合金(Zn−5wt%Al、融点382℃)、純In(融点156℃)、AgCuTi系活性金属(田中貴金属製、TKC−711、融点790℃)を使用した。これらのセラミックス基体72、給電部材76及び接合材78をアセトン中にて超音波洗浄した。その後、セラミックス基体72の凹部74に接合材78を入れ、その上に給電部材76を設置した後、給電部材76の上面に重り荷重(200g)を掛けた状態で炉内にセットし、表2に示す接合温度及び雰囲気中で接合した。なお、接合温度での保持時間は10分とし、昇降温速度5℃/minで接合した。
【0038】
[1−2]試験体S2の作製手順
図4の接合構造を模擬した試験体S2を以下のようにして作製した。
図7は試験体S2の組立斜視図である。まず、縦20mm、横20mm、厚さ5mmのセラミックス基体82に直径6.00mm、深さ0.5mmの凹部84を形成した後、凹部内をサンドブラストにより粗化処理を行い、無電解Niメッキを約3μm施した。また、直径5.95mm、高さ1mmの給電部材86と、 直径5.95mm、高さ6mmの連結部材89と、直径5.8mm、箔厚100μmの接合材88(2枚)を準備した。なお、凹部84の直径Rと、Rから給電部材86の直径を差し引いたクリアランスCの比率C/Rの値は0.008であった。給電部材86は全面、連結部材89は下面と側面に、電解Niメッキ処理を施してNi層を形成したものを準備した。これらのセラミックス基体82、給電部材86、連結部材89及び接合材88をアセトン中にて超音波洗浄した。その後、セラミックス基体82の凹部84に接合材88を入れ、その上に給電部材86、もう一枚の接合材88、連結部材89をこの順に設置した後、連結部材89の上面に重り荷重(200g)を掛けた状態で炉内にセットし、表3に示す接合温度及び雰囲気中で接合した。なお、接合温度での保持時間は10分とし、昇降温速度5℃/minで接合した。
【0039】
[1−3]試験体S3〜S6の作製手順
図2の接合構造を模擬した試験体S3〜S6を、試験体S1の作製手順に準じて作製した。具体的には、給電部材76の直径をそれぞれ5.90mm,5.75mm,5.50mm,5.20mmとした以外は、試験体S1の作製手順と同様にして試験体S3〜S6を作製した。得られた試験体S3〜S6は、セラミックス基体72の凹部74の直径RとクリアランスCとの比率C/Rの値がそれぞれ0.017,0.042,0.083,0.133であった。なお、セラミックス基体72の材料としてはアルミナ、給電部材76の材料としてはMoを用い、底面及び側面に電解Niメッキ処理を施してNi層を形成したものを準備した。一方、接合材78としては、AuGe系合金、AuSn系合金を使用した。なお、試験体S3〜S6は、給電部材76の直径が異なる以外は試験体S1と同じであるため、図示を省略した。
【0040】
[2]評価
[2−1]接合強度の評価
接合強度を評価するために引張試験を実施した。引張試験に使用する試験体S1〜S6を上述した作製手順により作製した。但し、セラミックス基体72,82は、電極を埋設していないものを使用した。また、給電部材76,連結部材89として、上面にM3の雌ネジが形成されたものを使用した。引張試験は、試験体S1〜S6を試験治具で固定し、給電部材76、連結部材89の上面の雌ネジを介して接続し、クロスヘッドスピード:0.5mm/minで給電部材76、連結部材89を引っ張り、破断時の荷重を測定した。その後、各部材底面の面積より、接合強度を算出した。この試験は、200℃で実施した。200℃での試験は、ヒーターにより試験体S1〜S6を加熱し、全体が200℃に達した均熱化後に実施した。引張試験は、最低3体に対して行い、接合体の平均強度を算出した。なお、ここでは、接合部位の使用環境やハンドリング時に負荷される力で耐久性があるように、200℃での破断応力が3.5MPa以上の場合に十分な接合強度を有するとした。
【0041】
[2−2]クラックの評価
セラミックス基体中の誘電層へのクラックの有無を評価するために非破壊試験である蛍光探傷試験を実施した。蛍光探傷試験に使用する試験体S1〜S6を上述した[1]の作製手順により作製した。但し、セラミックス基体72,82は、電極を埋設したものを使用した。具体的には、セラミックス基体72,82の凹部74,84を形成した面とは反対側の面(ウェハー面)から高さ0.3〜0.5mmの位置に電極を埋設した。蛍光探傷試験は、試験体S1〜S6のうち凹部74,84を形成した面とは反対側の面に市販の蛍光探傷液を浸透させた。その後、ブラックライト(紫外線)を照射し、クラックの有無を評価した。
【0042】
[2−3]界面剥離の評価
セラミックス基体の凹部と給電部材の下面の接合部での界面剥離の有無を評価するために蛍光探傷試験を実施した。この蛍光探傷試験は、上述した[2−1]の室温での引張試験と同時に実施した。すなわち、上述した[2−1]の引張試験において、予め、試験体S1〜S6のセラミックス基体72,82と給電部材76,86との接合部分に、給電部材76,86の外周より蛍光探傷液(前出)を塗布し、真空含浸処理により界面部に浸透させ乾燥した。その後、試験体S1〜S6の室温での引張試験を行い、破断時の荷重を測定すると共に、破断後のセラミックス基体72,82の凹部74,84に対し、ブラックライトを照射し、接合界面の剥離状態の評価を行った。ここで、引張試験前に接合界面に剥離が生じていた場合には、給電部材の下面に蛍光探傷液が浸透しているため、ブラックライトを照射したときに界面が明るく光るのに対し、引張試験前に接合界面に剥離が生じていなかった場合には、そのように界面が明るく光らずに暗い状態のままとなる。したがって、ブラックライトを照射したときに界面が光るか否かによって、界面剥離の有無を評価した。尚、評価基準として、給電部材底面での接合部の面積率をもとに、○:100〜70%、△:70〜30%、×:≦30%とした。
【0043】
[2−5]微構造観察、EDS分析
SEM(走査型電子顕微鏡)を用い、サンプルの微構造観察を行った。また、SEM観察時には、接合後の各相の元素分析のためEDSによる点分析を行った。
【0044】
[3]試験体S1に関する実施例及び比較例
[3−1]実施例1〜10,比較例1〜4
ここでは、セラミックス基体72としてAl
2O
3、接合材78としてAuGe系合金を使用し、給電部材76の材料を各種検討した。そのときの接合時の温度や雰囲気を表2に示す。また、各評価結果も併せて表2に示す。
【0045】
実施例1〜4及び比較例1,2では、給電部材76の材料としてTiを使用した。このときの熱膨張係数差D(ppm/K)は3.8である。実施例1〜4に示すように、接合温度が330〜390℃の場合には、200℃における接合強度はいずれも3.5MPa以上でありクラックも発生しなかった。実施例4(接合温度330℃)では、微構造観察において、後述する
図8と同様に、セラミックス基体と給電部材との間には3つの層が観察された。実施例2(接合温度360℃)では、微構造観察において、後述する
図9と同様に、セラミックス基体とAuリッチ相との間にNiGe相が存在していることが分かった。一方、比較例1に示すように、接合温度が310℃の場合には、接合材が上手く溶融せず接合強度を評価できなかった。また、比較例2に示すように、接合温度が410℃の場合には、接合強度が3.5MPa以下であり、不十分だった。この比較例2では、後述する
図10と同様の微構造観察及びEDS分析から、接合材によるNiメッキ層との反応が強すぎると共に熱膨張係数差Dが大きいため、界面剥離する結果であった。
【0046】
こうしたことから、給電部材76がTi、セラミックス基体72がアルミナの場合、つまり熱膨張係数差D(ppm/K)が3.8であり0〜6の範囲内の場合、後述する
図8や
図9の微構造を有する実施例2,4では、セラミックス基体側に、メタライズ層(Ni相を主体とする層)や金属間化合物相(NiGe相)を主体とする層が存在していたため、界面剥離が抑制され、200℃における接合強度の低下を招かなかったと考えられる。
【0047】
実施例5〜7では、給電部材76の材料としてMoを使用した。接合温度が340〜410℃の範囲であれば、200℃における接合強度はいずれも高く、クラックも発生しなかった。実施例6(接合温度330℃)では、微構造観察において、
図8に示すように、セラミックス基体と給電部材との間には3つの層が観察された。EDS分析の結果から、これらの層は、セラミックス基体側から順に、Ni相を主体とする層、NiGe相を主体とする層、Auリッチ相(Au濃度≧95wt%)を主体とする層であることが分かった。実施例5(接合温度360℃)では、微構造観察において、
図9に示すように、セラミックス基体とAuリッチ相との間にNiGe相が存在していることが分かった。具体的には、セラミックス基体側から順に、NiGe相を主体とする層、Auリッチ相を主体とする層が積層された構造となっていた。実施例7(接合温度410℃)では、微構造観察において、
図10に示すように、セラミックス基体とAuリッチ相との間にNiGe相が存在していることが分かった。具体的には、セラミックス基体側にNi相を主体とする層やNiGe相を主体とする層が存在しておらず、Auリッチ相を主体とする層の中にNiGe相が分散している構造となっていた。
【0048】
こうしたことから、給電部材76がMo、セラミックス基体72がアルミナの場合、熱膨張係数差D(ppm/K)が−1.3であり−2.2〜0の範囲内であることから、接合温度が410℃つまり
図10に示す微構造であっても、あまり界面生成物に影響を受けず、界面剥離が抑制され、その結果、安定的に信頼性ある耐熱強度が得られたと考えられる。なお、Dが−2.2〜0の範囲では、界面剥離が抑制されると共に、給電部材76の径方向で接合層を介してセラミックス基体側へ働く圧縮応力が、セラミックス基体を破損させない範囲で適度に負荷されるため、接合材を介して給電部材がセラミックス基体の凹部の側面で焼きばめされた状態となり、接合強度が高まるとも考えられる。
【0049】
実施例8では、給電部材76の材料としてCuWを使用し、実施例9では、給電部材76の材料としてFeNiCo系合金(Kovar(登録商標))を使用し、実施例10では、給電部材76の材料としてWを使用した。いずれも、200℃における接合強度は高く、クラックも発生しなかった。これらも、
図9のような微構造をとり、且つMoと同様、熱膨張係数がアルミナセラミックスに近く、熱膨張係数差Dが−2.2〜0の範囲内であるため、焼きばめ状態となり、界面剥離が抑制されたと考えられる。更に、実施例5,8,9,10は、接合材及び接合温度が同じでD値が異なるものであるが、これらを比較すると、Dが−2.2〜−1.0の範囲内にある実施例5,9,10の方が、その範囲を外れている実施例8に比べて、焼きばめの効果が高くなり、接合強度がより高くなった。
【0050】
比較例3,4では、給電部材76の材料としてNi、Cuを使用した。接合温度が360℃であっても、200℃における接合強度は3.5MPa以下と低かった。特に給電部材にCuを使用した場合では、蛍光探傷試験による界面剥離の評価結果は×で、微構造観察の結果もセラミックス基体と接合材との間に界面剥離に伴う隙間がみられた。これは、給電部材76の材料としてNi,Cuを使用した場合には、熱膨張係数差D(ppm/K)がそれぞれ7.7,12.3であり、6を超えていることから、接合時に給電部材76の径方向での収縮応力が大きく、界面剥離を誘発したものと考えられる。
【0051】
[3−2]実施例11〜21,比較例5〜8
ここでは、セラミックス基体72としてAl
2O
3、接合材78としてAuSn系合金を使用し、給電部材76の材料を各種検討した。そのときの接合時の温度や雰囲気を表2に示す。また、各評価結果も併せて表2に示す。
【0052】
実施例11〜13及び比較例5,6では、給電部材76の材料としてTiを使用した。実施例11〜13に示すように、接合温度が290〜330℃の場合には、200℃における接合強度はいずれも3.5MPa以上でありクラックも発生しなかった。一方、比較例5のように、接合温度が280℃の場合には、接合材が上手く溶融せず接合強度を評価できなかった。また、比較例6のように、接合温度が370℃の場合には、接合強度が3.5MPa未満であり、不十分だった。比較例6は、比較例2と同様、微構造観察及びEDS分析から、接合材によるNiメッキ層との反応が強すぎ、給電部材76とセラミックス基体72との熱膨張差があることから界面剥離が生じ易く強度低下に繋がったものと考えられる。
【0053】
実施例14〜17では、給電部材76の材料としてMoを使用した。接合温度が310〜370℃の範囲であれば、200℃における接合強度はいずれも高く、クラックも発生しなかった。実施例18,19では、給電部材76の材料としてCuWを使用し、実施例20では、給電部材76の材料としてFeNiCo系合金(Kovar(登録商標))を使用し、実施例21では、給電部材76の材料としてWを使用した。いずれも、200℃における接合強度は高く、クラックも発生しなかった。Mo,CuW,Kovar及びWは、いずれも熱膨張係数がアルミナセラミックスと近いため、界面剥離が抑制されたと考えられる。
【0054】
比較例7,8では、給電部材76の材料としてNi、Cuを使用した。接合温度が310℃であっても、200℃における接合強度は3.5MPa以下と低かった。特に給電部材にCuを使用した場合では、比較例4と同様に、熱膨張差が大きいことから、接合時に給電部材Cuの径方向での収縮応力が大きく、界面剥離を誘発したものと考えられた。
【0055】
[3−3]実施例22〜29
セラミックス基体72として、実施例22〜25ではAlN,実施例26,27ではY
2O
3、実施例28,29ではSiCを使用した。また、接合材78としてAuGe系合金とAuSn系合金を使用した。更に、給電部材76としては、Mo,CuW,Wのいずれかを使用した。そして、表2に示す接合温度及び雰囲気で接合したところ、表2に示すようにセラミックス基体を変化した場合においても良好な結果が得られることが分かった。
【0056】
[3−4]実施例30〜32
セラミックス基体72として、Al
2O
3、AlN、Y
2O
3を使用した。また、接合材78としてAuSi系合金を使用した。更に、給電部材76としては、Mo,CuWのいずれかを使用した。そして、表2に示す接合温度及び雰囲気で接合したところ、表2に示すようにAuSi系合金においても、他の接合材同様に良好な結果が得られることが分かった。
【0057】
[3−5]比較例9〜12
いずれも、セラミックス基体72としてAl
2O
3を使用した。比較例9では、接合材78として500℃以下に融点を持つZnAl系合金を使用したが、200℃における接合強度は3.5MPa未満であった。ZnAlは濡れ広がりが悪く、接合強度が低くなったと考えられる。比較例10,11では、接合材78としてInを使用したが、Inの融点が約180℃のため、200℃における強度が発現しなかった。比較例12では、接合材78としてセラミックス接合用に汎用的に使用される活性金属ろう(Ag−Cu−Ti材)を使用したが、接合温度が高いため、残留応力が高くなり、クラックが発生した。なお、比較例12では、凹部74にメタライズ層を形成しなかったが、これは活性金属を用いているため、アルミナへの直接接合が可能だからである。以上のことから、残留応力低減によるクラック抑制には、約500℃以下の低温接合が有効であり、尚且つ200℃強度を得るためには本願発明のAu系合金を使用した接合体を用いることが有効であると考えられた。
【0058】
[3−6]実施例33〜37,比較例13
実施例33〜35では、セラミックス基体72としてAl
2O
3、給電部材76としてMo,CuW,Kovarを使用し、実施例36,37では、セラミックス基体72としてMgOを使用し、給電部材76としてNiを使用した。また、接合材78として、実施例33〜35,37ではAuSnを使用し、実施例36ではAuGeを使用した。そして、表2に示す接合温度及び雰囲気で接合したところ、いずれの場合においても良好な結果が得られることが分かった。これはAuGe、AuSnの濡れ広がりが良好であり、熱膨張係数差Dも小さいためと考えられる。また、比較例13では、セラミックス基体72としてMgOを使用し、給電部材76としてWを使用し、接合材78としてAuGeを使用したが、この場合にはD値が小さくなり過ぎたため、先述のようにセラミックス基体72へのクラックが生じ接合不具合となった。
【0059】
[3−7]実機模擬サンプル
上述した試験体S1の結果を踏まえて、
図2を模擬した構造、すなわちセラミックス基体に電極が埋設された実機模擬サンプルを用いて接合体を作製し評価を行った。セラミックス基体中に電極14、14aとしてのMoを埋設した以外は、実施例5、実施例17、実施例30と同じ条件にて接合した結果、電極埋設しなかった場合と同等の200℃強度が得られ、クラックも発生しなかった。また、上記接合体サンプルに対し通電試験を行ったところ、十分な導電性が得られることがわかった。
【0060】
[4]試験体S2に関する実施例
実施例38〜45では、試験体S2を用いて評価試験を行った。セラミックス基体82の材料として、実施例38〜42,45ではAl
2O
3を使用し、実施例43ではAlNを使用し、実施例44ではY
2O
3を使用した。また、給電部材86はMo,CuW,FeNiCo系合金(Kovar)のいずれかを使用し、連結部材89はすべてCuを使用した。接合材88は、AuGe系合金、AuSn系合金、又はAuSi系合金を用いた。そして、表3に示す接合温度及び雰囲気で接合した。そうしたところ、表3に示すようにいずれも良好な結果が得られた。これより、比較例4,8のようにセラミックス基体に直接給電部材のCuを接合した場合には界面剥離のため200℃強度が低かったが、上記の構造にすることで、熱膨張係数差の緩和に繋がり、尚且つ一回だけの同時接合にて一体化が可能なことが分かった。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
なお、試験体S2は、セラミックス基体82と給電部材86、給電部材86と連結部材89をそれぞれ接合材88により同時に接合したが、予め給電部材86と連結部材89とを溶接やろう付けにより接合しておき、その後、セラミックス基体82と連結部材89に連結された給電部材86とを接合材88により接合してもよい。例えば、予めMo製の給電部材86とCu製の連結部材89とをAgCu系合金を用いて溶接することでCu/Mo複合給電部材を作製後、その下面と側面に電解Niメッキを施し、アルミナからなるセラミックス基体82の凹部84にAuGe系合金からなる接合材88を用いて360℃、N
2雰囲気中で接合したところ、200℃における接合強度は11.3MPaとなり、クラックの発生もみられず、特性良好であった。
【0064】
[5]試験体S3〜S6に関する実施例
比率C/Rが異なる試験体S3〜S6について各種検討した。実施例46では、試験体S3(C/R=0.017)、実施例47,49では、試験体S4(C/R=0.042)、実施例48では、試験体S5(C/R=0.083)、実施例50では、試験体S6(C/R=0.133)を用いた。また、セラミックス基体72としてAl
2O
3、接合材78としてAuGe系合金又はAuSn系合金、給電部材76としてMoを使用した。実施例46〜50の接合温度や雰囲気を表4に示す。また、各評価結果も併せて表4に示す。実施例46〜48、50の強度を評価した結果、C/Rが小さくなるに従い強度が徐々に増加した。また、実施例5はC/Rが0.008であり、実施例46〜48と比べてC/Rが一層小さいことから、更に高強度となった。また、接合材78にAuSn合金を用いた実施例49と実施例17とを比べると、実施例49では12.4MPaの強度を得たが、実施例17ではC/Rが0.008と実施例49よりも小さいため、更に高強度となった。実施例46〜50では、先述のようにDが−2.2〜−1.0の範囲内であるため、給電部材76の径方向で接合層を介してセラミックス基体側へ働く圧縮応力が強まり、その結果接合強度が高まったと考えられる。なお、これらの実施例では、C/R≦0.15であり、200℃強度が3.5MPaを満足したが、実施例50のようにC/Rの値が大きいとハンドリング時において給電部材をセラミックス基体穴の中心に上手く配置することが難しく、結果として強度バラツキが生じやすい。このため、より高強度且つバラツキの少ない信頼性の高い接合体を得るためにはC/R≦0.09を満たすことが好ましい。
【0065】
【表4】