(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968664
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】清掃用粘着テープロール
(51)【国際特許分類】
A47L 25/00 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
A47L25/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-85445(P2012-85445)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-212329(P2013-212329A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 和之
(72)【発明者】
【氏名】柿田 富夫
(72)【発明者】
【氏名】川田 勉
(72)【発明者】
【氏名】重光 寛
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−142258(JP,A)
【文献】
特開平08−196504(JP,A)
【文献】
特開2010−136978(JP,A)
【文献】
特開2011−156187(JP,A)
【文献】
特開昭62−122628(JP,A)
【文献】
特開2010−031100(JP,A)
【文献】
特開平09−220191(JP,A)
【文献】
特開2007−000860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/00−13/62
23/00−25/12
B08B 1/00−1/04
5/00−13/00
C09J 7/00−7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回してなる清掃用粘着テープロールにおいて、
上記粘着面には、所定間隔をもって複数設けられたドット状の粘着剤層を有し、上記ドット状の粘着剤層は、長軸と短軸とを有する菱形状または楕円状に形成されており、
上記ドット粘着剤層は、上記長軸側が上記粘着テープの繰り出し方向に沿うように配置されているとともに、上記短軸と上記長軸とのアスペクト比が短軸:長軸=1:1.5〜1:3.7であることを特徴とする清掃用粘着テープロール。
【請求項2】
上記ドット状の粘着剤層は、千鳥状または格子状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用粘着テープロール。
【請求項3】
上記粘着面の幅方向の両端には、粘着性を有さないドライエッジ部が上記粘着テープロールの繰り出し方向に連続して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の清掃用粘着テープロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープの粘着面が表側を向くように巻回される清掃用粘着テープロールに関し、さらに詳しく言えば、被清掃面の上をスムーズに転がすことができる清掃用粘着テープロールに関する。
【背景技術】
【0002】
清掃用の粘着テープロールは、一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回したものからなり、専用のローラ治具に取り付けて、被清掃面の上を転動させることで、ゴミを粘着面で捕捉するものである。
【0003】
ところで、従来の粘着テープロールには、粘着剤を基材テープの全面にわたって塗布したべた塗りタイプや筋状に塗布したスジ塗りタイプが主流であるが、床面への糊残りや、粘着テープロールを巻方向と
を逆方向に転がした際に、粘着テープ端部が床面に張り付く、いわゆるレール引き現象が起こらないようにするため、粘着面の塗工厚さが細かく制御される。
【0004】
さらに最近では、例えば特許文献1に示すように、新しいタイプの粘着剤の塗工方法として、グラビアロールを用いて粘着剤を基材テープに塗布する方法が一部採用されている。これによれば、粘着剤を効率的に基材テープ側に転写することにより、ゴミの捕捉力を落とすこと無く、粘着剤の使用量を抑えることができる。
【0005】
しかしながら、グラビア塗工によって粘着剤層を形成してもなお、上述したレール引き現象を防止することはできない。とりわけ、フローリング床などの平滑面では、よりレール引き現象を起こしやすい。
【0006】
また、特許文献1のようにドット状の粘着部を未粘着のテープ基材の上に点在させた粘着テープロールは絨毯や畳などの上でこ
ろがした場合、粘着面と未粘着面との繰り返しによる脈動によって、表面を叩いてほこりを浮かせる効果(タッピング効果)が生まれて、よりほこりを捕捉することができるが、フローリング床などの平滑面では、脈動がグリップから伝わりユーザーが不快感を覚える場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−29341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、粘着力を落とすことなく、かつ、脈動することなくスムーズに回転し、さらにフローリング床などの平滑面であっても、レール引き現象を起こしにくい清掃用粘着テープロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。すなわち、基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを、その粘着面が表側を向くように巻回してなる清掃用粘着テープロールにおいて、上記粘着面には、所定間隔をもって複数設けられたドット状の粘着剤層を有し、上記ドット状の粘着剤層は、長軸と短軸とを有する菱形状または楕円状に形成されており、
上記ドット粘着剤層は、上記長軸側が上記粘着テープの繰り出し方向に沿うように配置されている
とともに、上記短軸と上記長軸とのアスペクト比が短軸:長軸=1:1.5〜1:3.7であることを特徴としている。
【0010】
より好ましい態様として、上記ドット状の粘着剤層は、千鳥状または格子状に配置されていることを特徴としている。
【0011】
より好ましい態様として、上記粘着面の幅方向の両端には、粘着性を有さないドライエッジ部が上記粘着テープロールの繰り出し方向に連続して設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、
長軸と短軸を有する菱形状もしくは楕円状のドット状に粘着剤層を、
そのアスペクト比を短軸:長軸=1:1.5〜1:3.7とし、長軸側を粘着テープの繰り出し方向に沿うように配置することで、繰り出し方向側の粘着力の変化を小さくすることにより、ゴミの捕捉力
を落とすことなく、フローリング床などの平滑面であってもレール引き現象を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着テープロールの斜視図。
【
図4】本発明の粘着テープの(a)流れ方向の粘着力
【
図5】粘着剤層を(a)楕円状および(b)長円状に形成した状態の模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、この清掃用粘着テープロール1は、テープ基材21の一方の面にゴミ取り面としての
粘着剤層22が形成された粘着
面を有する粘着テープ2を、円筒状の巻芯3に沿って巻回したものからなる。粘着
面の幅方向(
図2では左右方向)の両端には、粘着性を有さない未粘着部(ドライエッジ部23,23)が設けられている。
【0017】
粘着テープ2には、切断用の切れ目(図示しない)が設けられている。切れ目は、ほぼ1周長毎に設けられており、切れ目に沿って粘着テープ2を切断して切り離すことで、未使用の粘着面
を表面に露出させることができる。
【0018】
この例において、巻芯3はボール紙などの紙製巻芯が用いられているが、これ以外の巻芯が用いられてもよいし、さらには巻芯3を持たない、いわゆるコアレス構造であってもよく、本発明
において巻芯3の構成は任意的事項である。
【0019】
テープ基材21は、例えば紙製の帯状テープであって、その裏面(粘着
面とは反対の面)には、巻回した際に下層の粘着
面に対する剥離処理としての目止め処理が施されている。なお、本発明において、目止め処理の具体的な構成は、任意的事項である。
【0020】
図3を併せて参照して、粘着
面には、例えばSIS(スチレン−イソプレン−スチレン)系などの粘着剤からなる粘着剤層
22が設けられている。粘着剤層
22は、その各々が菱形状に形成され、粘着性を有さない未粘着部24を挟んで所定の配列パターンで多数設けられている。
【0021】
粘着剤層
22は、長軸方向の長さがa、短軸方向の長さがbの菱形形状であって、長軸方向が粘着テープ2の繰り出し方向(図
3の矢
印方向)に沿うように配置されている。この例において、粘着剤層
22は菱形状であるが、粘着テープ2の繰り出し方向に沿うように長軸側が配置される形状であればよく、楕円形状などであってもよい。
【0022】
すなわち、本発明の楕円状とは、
図5(a)に示すように、粘着テープ2の繰り出し方向に沿うように配置された楕円形状の粘着剤層
22をいうが、これ以外に、
図5(b)に示すように、長円形状の粘着剤
22を繰り出し方向に沿って配置したものも含まれる。
【0023】
この例において、粘着剤層
22は、長軸方向の長さaが5.2mm、短軸方向の長さbが3.0mm、アスペクト比(短軸b:長軸a)で1:1.73となるように形成されているが、好ましくはアスペクト比が1:1.5〜1:3.7(さらに好ましくは1:1.7〜1:2)となるように形成されていることが好ましい。
【0024】
すなわち、アスペクト比が1:1.5未満の場合は、縦横形状比が大きく変わらず、流れ方向の粘着力の変化と、幅方向の粘着力の変化に大きな違いがないため、従来とさほど変わらない性状となる。逆に、アスペクト比が1:3.7よりも大きくなりすぎると、グラビアロールを用いた粘着剤塗工では、粘着剤の転写率(投錨性)を確保できず、その結果、床面に糊残りなどが生じるおそれがあるため好ましくない。また、この例において、未粘着部24の間隔cは1.0mmの等幅である。
【0025】
この例において、粘着剤層
22は、未粘着部24がほぼ等幅の直線上となる千鳥状に配置されているが、これ以外に一般的な格子状に配置されていてもよい。さらには、幾何学的な配置パターンであってもよく、粘着剤層
22の長軸側が粘着テープ2の繰り出し方向に沿うように配置されていれば、その配置パターンは仕様に応じて任意に変更可能である。
【0026】
次に、本発明の具体的な実施形態として、まず、上記実施形態の粘着テープ2をステンレス板に貼り付けたのち、引張速度300mm/secで、粘着テープ2の繰り出し方向と、幅方向とにそれぞれ3回ずつピーリング試験を行い、その粘着力の変化について調べた。その結果を以下の表1に示す。
【0028】
これによれば、
図4(a)の粘着力の測定結果に示すように、粘着テープ2の繰り出し方向に沿って粘着テープロール1を転がすと、長軸側が粘着テープ2の繰り出し方向(転がり方向)に沿うように配置
することにより、繰り出し方向に沿って隣接する粘着剤層
22と未粘着部24
との粘着力の変化量を小さくすることができ
るため、粘着力は落とさずに、脈動のみを抑えることができる。
【0029】
逆に、
図4(b)に示すように、粘着テープ2の幅方向の粘着力の変化量は大きくなり、脈動も併せて大きくなるが、幅方向に粘着テープロール1を転がすことはないため、特に問題が無い。
【符号の説明】
【0030】
1 粘着テープロール
2 粘着テープ
21 テープ基材
22 粘着剤層
23,24 未粘着部
3 巻芯