【実施例】
【0024】
図1は、本実施例に係る自動車用携帯電子端末保持装置が搭載されたセンターコンソール及びインストルメントパネル付近の断面構成を示す図である。
【0025】
車室前部のインストルメントパネル11の内部には、エアコン装置本体12が設けられている。インストルメントパネル11のうち、車室13に近い側で車幅方向中央にはセンターベンチレータの吹出し口14が配置されている。また、インストルメントパネル11の上面11Aの前部には、デフロスターの吹出し口15が配置されている。
【0026】
エアコン装置本体12と吹出し口14とはベンチレータダクト16で互いに接続されており、エアコン装置本体12からの冷風を吹出し口14から車室13内へ吹出すようになっている。また、エアコン装置本体12と吹出し口15とはデフロスタータダクト17で互いに接続されており、エアコン装置本体12からの温風をフロントウインドウ(図示省略)に向けて吹出すようになっている。
【0027】
車室13内の下部で車幅方向中央にはセンターコンソール18が設置され、このセンターコンソール18の前部側に物品を収納するためのコンソールボックス(収納部)19が設けられている。
【0028】
本実施例では、コンソールボックス19のリッド(蓋体)20が開けられたときに、そのリッド20の裏面側に携帯電子端末21を置くことができるよう構成されている。また、インストルメントパネル11の底面部22には吹出し口23が設けられている。この吹出し口23にはベンチレータダクト16から分岐した分岐ダクト24が接続されており、ベンチレータダクト16内を流れる冷風の一部は分岐ダクト24を介して吹出し口23に送られ、この吹出し口23から吹出す。吹出し口23は、リッド20を開けたときに、そのリッド20の上方に位置する上縁部20A
の上側で対向する位置に配置されており、リッド20の裏面側に置かれた携帯電子端末21に向かって
上から下へ冷風を吹出して、携帯電子端末21を冷却する。
【0029】
図2は、分岐ダクト24の詳細構成を示した斜視図である。分岐ダクト24は、ダクト本体24Aと、ダクト本体24Aの先端側に設けられ平面視で略台形状を成した拡径部24Bとを有している。拡径部24Bは内部が中空を成し、その先端には開口部(図示省略)が形成されている。そして、その開口部に円筒形状を成した冷風吹出し調整体25が回動自在に設けられている。
【0030】
冷風吹出し調整体25の両端には、外周面に滑り止め用のギザギザ形状が施された摘み部25A,25Aが設けられ、これら摘み部25A,25Aの各端面の中心に回動軸25B,25Bがそれぞれ設けられている。回動軸25B,25Bは拡径部24Bの先端側部に形成された支持穴24C,24C(図では一側の支持穴のみ表示されている)にそれぞれ回動自在に支持されている。摘み部25A,25Aは冷風吹出し調整体25に一体的に形成されており、摘み部25A,25Aを手で操作することにより、冷風吹出し調整体25を矢印B1,B2方向に回動させることができる。
【0031】
冷風吹出し調整体25には、その外周壁に、冷風吹出し調整体25の軸方向に沿ってスリット25Cが形成されている。図示してないが、冷風吹出し調整体25には、スリット25Cの反対側の外周壁に同様なスリット又は複数の貫通穴が形成されている。
【0032】
なお、拡径部24Bをインストルメントパネル11の底面部22に取り付けると、冷風吹出し調整体25は吹出し口23に合致し、冷風吹出し調整体25の下部は吹出し口23から車室13側に露出する。これにより、ドライバ等が手で摘み部25A,25Aで操作して冷風吹出し調整体25を矢印B1,B2方向に回動させることで、冷風吹出し調整体25のスリット25Cの向きが変わり、スリット25C(吹出し口23)から冷風を吹き出させたり、その吹き出しを止めたりすることができる。
【0033】
図3はコンソールボックス19のリッド20が閉められた様子を、
図4はコンソールボックス19のリッド20が開けられた様子をそれぞれ示している。なお、
図3及び
図4において、Frは車両前部側を、Rrは車両後部側を、Rsは車両右側を、Lsは車両左側を、Upは車両上方側を、Dwは車両下方側をそれぞれ示している。これらの事項は以降の図面でも同様である。
【0034】
リッド20の車幅方向両側には回動軸20B,20B(
図6も参照)が設けられ、リッド20は回動軸20B,20Bを中心に回動自在にコンソールボックス19の開口部19Aに取り付けられている。回動軸20B,20Bは、リッド20を開けた状態でリッド20の下縁部20Cから約1/3上方の位置に設けられている。
【0035】
リッド20の裏面には、板厚の薄い銅製の金属板26が貼り付けられている。金属板26は、縦金属部26Aと、縦金属部26Aの下端部に設けられた横金属部26Bとからなり、全体が逆T字型(リッド20を開けた状態で逆T字型)を成している。なお、金属板26は、銅製の金属板26以外にも熱伝導効率の高い材料であればよい。また、リッド20の裏面には、前記金属板26以外の箇所に滑り止めシート27が貼り付けられている。滑り止めシート27は表面がざらざらしており、その表面上に携帯電子端末21を置くと、携帯電子端末21の裏面と滑り止めシート27との間に大きな摩擦力が生じる。なお、縦金属部26Aと横金属部26Bの短手方向の幅は、少なくとも携帯電子端末21の短手方向の幅より短くなっており、携帯電子端末21をリッド20の裏面に配置したときに、携帯電子端末21の裏面が縦金属部26Aと横金属部26Bと滑り止めシート27の両方に当接するように設定されている。
【0036】
図5は、リッド20を開けた状態で、コンソールボックス19の開口部19A付近を下から見上げたときの斜視図である。
図5に示すように、インストルメントパネル11の底面部22には吹出し口23が設けられている。吹出し口23は長穴形状で、その長辺が車幅方向に沿うよう配置されている。また、吹出し口23は、リッド20を開けたときに上方に位置する上縁部20Aに対向配置され、上縁部20Aに向かって冷風を吹き出す。
【0037】
図6は、開けられたリッド20の裏面に携帯電子端末21を置いたときの様子を示す斜視図である。
図6に示すように、リッド20の裏面のうち、その下縁部20Cには
、携帯電子端末21を下から支持するためのフランジ部28が裏面から突出するように設けられ、このフランジ部28の中央部には車幅方向に長い切り欠き28Aが形成されている。切り欠き28Aの車幅方向に沿った長さは、携帯電子端末21の底部に接続される端末側コネクタ29の横幅よりも僅かに大きくなっている。これにより、携帯電子端末21を縦方向に且つリッド20の裏面中央に置いたときに、端末側コネクタ29を切り欠き28Aに嵌合させることができる。
【0038】
切り欠き28Aの両側(フランジ部28のうち、切り欠き28Aが形成された部分の近傍)には、爪部30,30がそれぞれ設けられている。これら爪部30,30は、各々の尖端30A,30Aが互いに向き合うよう配置され、携帯電子端末21の端末側コネクタ29が切り欠き28Aに嵌合されたときに、尖端30A,30Aが端末側コネクタ29の底部に係合して携帯電子端末21を保持する。
【0039】
また、リッド20の裏面のうち、車幅方向の沿った左右両側端には裏面から突出したフランジ部31,31がそれぞれ設けられている。リッド20の裏面の上縁部20Aにはフランジ部は設けられていない。なお、回動軸20B,20Bはフランジ部31,31にそれぞれ設けられている。
【0040】
端末側コネクタ29には、
図9及び
図10に示すように、ケーブル32が接続されている。すなわち、ケーブル32には、一側に端末側コネクタ29が設けられ、他側に車体側コネクタ33が接続されている。そして、コンソールボックス19の内部には、
図4に示すように、後部側の端子接続部19Bに、車体側コネクタ33が接続されるコネクタ受け部34が設けられている。また、端子接続部19Bにはコネクタ受け部35も設けられている。コネクタ受け部34は、携帯電子端末21に電気を充電するためのものであり、コネクタ受け部35はけ携帯電子端末21とデータをやり取りするためのもの(USB端子)である。さらに、端子接続部19Bには、RGBピンジャック36〜38及びAUXピンジャック39が各々設けられている。
【0041】
次に、本実施例における自動車用携帯電子端末保持装置の作用について説明する。
【0042】
携帯電子端末21を使用しないときは、
図3に示すように、コンソールボックス19のリッド20は閉められている。携帯電子端末21を使用するときは、
図4に示すように、リッド20を開けて、リッド20の裏面が車両後部側の斜め上方を向くようにリッド20を傾斜させた状態にする。なお、図示してないが、コンソールボックス19には、リッド20の傾斜角を所定範囲に維持できる機構が設けられている。
【0043】
リッド20を傾斜させた状態に維持したら、リッド20の裏面に携帯電子端末21を置いて保持する。このとき、携帯電子端末21を
図7のように縦方向に保持する場合は、携帯電子端末21の裏面中央部が金属板26の縦金属部26A(
図4参照)に、裏面左右両側部が滑り止めシート27にそれぞれ接するように、携帯電子端末21をリッド20の裏面に置く。また、携帯電子端末21を
図8のように横方向に保持する場合は、携帯電子端末21の裏面中央部及び裏面右側部が金属板26の横金属部26B(
図4参照)に、裏面左側部が滑り止めシート27にそれぞれ接するように、携帯電子端末21をリッド20の裏面に置く。
【0044】
図7のように携帯電子端末21を縦方向に置くと、携帯電子端末21の裏面左右両側部と滑り止めシート27との間に摩擦力が生じ、携帯電子端末21がずり落ちるのが防止され、また、携帯電子端末21の裏面中央部が金属板26の縦金属部26Aに接触することで、使用中に携帯電子端末21に発生した熱が金属板26(主に、横金属部26B)を介して外部へ放熱される。
【0045】
また、
図8のように携帯電子端末21を横方向に置くと、携帯電子端末21の裏面左側部と滑り止めシート27との間に摩擦力が生じ、携帯電子端末21がずり落ちるのが防止され、また、携帯電子端末21の裏面中央部及び裏面右側部が金属板26の横金属部26Bに接触することで、使用中に携帯電子端末21に発生した熱が金属板26(主に、縦金属部26A)を介して外部へ放熱される。
【0046】
さらに、携帯電子端末21を横方向に置いた場合も縦方向に置いた場合も、ドライバ等が冷風吹出し調整体25の摘み部25A,25Aを手で操作することで、リッド20の裏面側に冷風が流れ、携帯電子端末21を冷却することができる。
【0047】
上記説明では、携帯電子端末21を単独で使用する場合であったが、携帯電子端末21に充電したり、携帯電子端末21と車両側の機器との間でデータのやり取りをしたりする場合もあり、以下、この点について説明する。
【0048】
図9は、携帯電子端末21を縦方向に置いて単独で使用している場合であり、
図7と同様であるが、
図7に比べて視点を変えて見たときの斜視図である。
図10は、携帯電子端末21を縦方向に置いて携帯電子端末21に充電している場合の斜視図である。
【0049】
携帯電子端末21に充電する場合は、
図10に示すように、一側に端末側コネクタ29が他側に車体側コネクタ33を有するケーブル32を用意し、端末側コネクタ29を携帯電子端末21の下部のコネクタ受け部(図示省略)に、車体側コネクタ33をコンソールボックス19内の端子接続部19B上のコネクタ受け部34にそれぞれ接続する。この場合、端末側コネクタ29はその底部が爪部30,30の尖端30A,30Aに係合するので、端末側コネクタ29が爪部30で支持され、携帯電子端末21がずれ落ちるのをより確実に防ぐことができる。
【0050】
携帯電子端末21と車両側の機器との間でデータのやり取りをしたりする場合は、ケーブル32の他端側に設けられた車体側コネクタ33をコネクタ受け部35に接続する。この場合、データのやり取りをする他のケーブルを用いてもよい。
【0051】
なお、携帯電子端末21を単独で使用する場合、
図9に示すように、ケーブル32は、端末側コネクタ29及び車体側コネクタ33と共に、コンソールボックス19内に設けられたケーブル収納用凹部40に収められる。また、ケーブル収納用凹部40には、ケーブル32の他に、RGBピンジャック36〜38に差し込まれるケーブルや、AUXピンジャック39に差し込まれるケーブルも収めることができる。
【0052】
次に、携帯電子端末21に充電したり、携帯電子端末21と車両側の機器との間でデータのやり取りをしたりする場合で、携帯電子端末21を
図8のように横方向きに置いたときについて説明する。
【0053】
携帯電子端末21を
図8のように横方向に置くとき、リッド20の下縁部20Cに形成されたフランジ部28と、携帯電子端末21の左側部(携帯電子端末21を表側から見たときの左側部)との間に隙間が生じるようにする。そして、一側に端末側コネクタ29が設けられたケーブル32を、前記隙間を通し、さらに切り欠き28Aを介して他側の車体側コネクタ33をコネクタ受け部34又は35に接続する。このようにすれば、ドライバ等から見てケーブル32が視界に入りにくくなり、携帯電子端末21に対する視認性が向上する。
【0054】
本実施例によれば、携帯電子端末21がインストルメントパネル11の上面11Aではなく、コンソールボックス19のリッド20の裏面に置かれるので、携帯電子端末21が太陽光で熱せられることはなく、熱による携帯電子端末21の故障を防ぐことができる。しかも、携帯電子端末21は使用時に自ら熱を発しているが、インストルメントパネル11の底面部22に形成された吹出し口23から冷風を吹出すことにより、携帯電子端末21を冷却することができ、携帯電子端末21に熱が蓄積されるのを確実に防ぐことができる。
【0055】
また、コンソールボックス19のリッド20を開けて、そのリッド20の裏面に携帯電子端末21を置くだけで、携帯電子端末21を使用することができるとともに、使用を止めるときはリッド20の裏面から携帯電子端末21を取り外すだけでよく、携帯電子端末21の着脱が極めて容易となる。
【0056】
また、本実施例においては、コンソールボックス19が、センターコンソール18の前部で且つインストルメントパネル11の底面部22の下方の低い位置に設置されて、ドライバ等のヘッドインパクトの位置から離れているので、緊急時の安全性にはまったく影響がない。
【0057】
また、本実施例によれば、携帯電子端末21を使用していないときは、コンソールボックス19のリッド20を閉めておくことにより、コンソールボックス19の内部に埃やゴミ等が侵入するのを防ぐことができる。
【0058】
さらに、本実施例によれば、リッド20両側の回動軸20B,20Bが下縁部20Cから約1/3上方の位置に設けられているので、携帯電子端末21をリッド20の裏面に置いたときに、携帯電子端末21の重心が回動軸20B,20Bよりも上側に位置し、このため、リッド20全体は回動軸20B,20Bを中心に僅かに回動して傾斜角が増大して、携帯電子端末を確実に保持することができる。
【0059】
なお、本実施例では、リッド20の裏面に、逆T字型の金属板26と滑り止めシート27とを貼り付けた構成であったが、金属板26は設けずに、リッド20の裏面全部に滑り止めシート27だけを貼り付けた構成でもよい。
【0060】
また、本実施例では、
図6に示したように、爪部30,30の尖端30A,30Aが略水平方向(リッド20の裏面に対して垂直方向)となるように構成したが、尖端30A,30Aが略上下方向(リッド20の裏面に沿って平行な方向)となるよう構成してもよい。この場合、爪部30,30が端末側コネクタ29の底部に係合しないので、端末側コネクタ29が下方へずれることが心配されるが、爪部30,30は互いに接近する方向に弾性力を有しており、携帯電子端末21をリッド20の裏面に置く際に、端末側コネクタ29は爪部30,30の尖端30A,30Aを押し広げて所定位置にセットされ、端末側コネクタ29は爪部30,30によって挟持されることになる。その結果、携帯電子端末21をリッド20の裏面上に確実に保持することができる。携帯電子端末21をリッド20の裏面から取り外す際は、携帯電子端末21を端末側コネクタ29と共に上方へ持ち上げれば、容易に取り外すことができる。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0062】
例えば、リッド20の裏面に置いた携帯電子端末21をバンド等で固定するようにしてもよい。このようにすれば、携帯電子端末21がずり落ちるのをより一層確実に防ぐことができる。
【0063】
また、リッド20の裏面に携帯電子端末21が置かれたことを検知して、冷風吹出し調整体25が自動的に回動するように構成してもよい。このように構成すれば、冷風吹出し調整体25の摘み部25A,25Aをいちいち手で操作しなくて済む。