特許第5968676号(P5968676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968676湿気硬化型組成物、湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シート
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  • 特許5968676-湿気硬化型組成物、湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968676
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】湿気硬化型組成物、湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20160728BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160728BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20160728BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20160728BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 201/08 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 109/02 20060101ALI20160728BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C08L101/08
   C08L101/00
   C08L33/06
   C08L9/02
   C08L23/00
   C09J7/00
   C09J201/08
   C09J11/06
   C09J11/04
   C09J133/02
   C09J133/08
   C09J133/10
   C09J109/02
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 E
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-110617(P2012-110617)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-237749(P2013-237749A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭彦
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246598(JP,A)
【文献】 特開2011−246599(JP,A)
【文献】 特開2011−246600(JP,A)
【文献】 特開2011−246601(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/148916(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/148917(WO,A1)
【文献】 特開2004−156006(JP,A)
【文献】 特表2008−537973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、
カルボキシル基を有しないカルボキシル基不含有ポリマーと、
可塑剤と、
金属酸化物および/または金属炭酸塩と
を含有し、
前記カルボキシル基不含有ポリマーが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムであり、
前記カルボキシル基不含有ポリマーの配合割合が、前記カルボキシル基含有ポリマーと前記カルボキシル基不含有ポリマーとの総量100質量部に対して、5〜50質量部である
ことを特徴とする、湿気硬化型組成物。
【請求項2】
カルボキシル基が、前記カルボキシル基含有ポリマー中に0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項3】
さらに、粘着付与剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の湿気硬化型組成物がシート状に形成されてなることを特徴とする、湿気硬化型シート。
【請求項5】
請求項に記載の湿気硬化型シートからなることを特徴とする、シーリングシート。
【請求項6】
請求項に記載の湿気硬化型シートを湿気硬化することにより得られることを特徴とする、感圧接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型組成物、湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、間隙部分などの充填に用いられるシーリング組成物として、シール対象に応じて、加熱硬化型、湿気硬化型、紫外線硬化型などのシーリング組成物が知られている。
【0003】
これらのうち、湿気硬化型シーリング組成物は、加熱や紫外線照射ができない間隙部分の充填に広く用いられており、例えば、粘稠なペースト状に調製されて、直接シーリング部分に塗布される。また、そのような湿気硬化型シーリング組成物をシート状に成形して、シーリングシートとして用いることも知られている。
【0004】
具体的には、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、可塑剤と、金属酸化物や金属炭酸塩とを含有する湿気硬化型シーリング組成物、さらに、その湿気硬化型シーリング組成物を、ニーダーなどのゴム混合機において無溶剤で混合し、プレス機や押出成形機などによりシート状に成形して得られるシーリング組成物シートが、知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0005】
また、このような湿気硬化型の組成物をシート状に成形した後、さらに、湿気硬化させることにより、感圧接着シートを得ることも、提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−246598号公報
【特許文献2】特開2011−246601号公報
【特許文献3】特開2011−246599号公報
【特許文献4】特開2011−246600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4に記載される湿気硬化型の組成物は、粘着性および凝集性が高い。そのため、作業性の良いミキシングロールなどによれば、分散性よく混合でき、取り出しが可能である場合にも、生産性の良いニーダーなどのゴム混合機において混合すると、十分な分散性が得られない場合があり、さらには、取り出し難く、作業性が十分に確保できない場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、無溶剤下において十分に混合および分散することができ、装置からの取り出し性に優れ、さらには、種々の厚みのシートを製造できる湿気硬化型組成物、その湿気硬化型組成物をシート状に成形した湿気硬化型シートおよびシーリングシート、さらに、その湿気硬化型シートを湿気硬化させて得られる感圧接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の湿気硬化型組成物は、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、カルボキシル基を有しないカルボキシル基不含有ポリマーと、可塑剤と、金属酸化物および/または金属炭酸塩とを含有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の湿気硬化型組成物では、カルボキシル基が、前記カルボキシル基含有ポリマー中に0.1〜10質量%含有されていることが好適である。
【0011】
また、本発明の湿気硬化型組成物では、前記カルボキシル基含有ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体55〜95質量%と、シアノ基含有ビニル単量体4〜40質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10質量%とを含有する単量体組成物を重合することにより得られることが好適である。
【0012】
また、本発明の湿気硬化型組成物では、前記カルボキシル基不含有ポリマーが、高極性モノマーと、低極性モノマーとの共重合体であることが好適である。
【0013】
また、本発明の湿気硬化型組成物では、前記カルボキシル基不含有ポリマーが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムであることが好適である。
【0014】
また、本発明の湿気硬化型組成物では、前記カルボキシル基不含有ポリマーが、エチレン系熱可塑性樹脂であることが好適である。
【0015】
また、本発明の湿気硬化型組成物は、さらに、粘着付与剤を含有することが好適である。
【0016】
また、本発明の湿気硬化型シートは、上記の湿気硬化型組成物がシート状に形成されてなることを特徴としている。
【0017】
また、本発明のシーリングシートは、上記の湿気硬化型シートからなることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の感圧接着シートは、上記の湿気硬化型シートを湿気硬化することにより得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の湿気硬化型組成物によれば、無溶剤下において十分に混合および分散することができ、装置からの取り出し性に優れ、さらには、種々の厚みのシートを製造できる。
【0020】
また、本発明の湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シートは、容易に製造することができ、また、種々の厚みに調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】止水性能評価の試験方法を説明するための説明図であって、(a)は正面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の湿気硬化型組成物は、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、カルボキシル基を有しないカルボキシル基不含有ポリマーと、可塑剤と、金属酸化物および/または金属炭酸塩とを含有している。
【0023】
カルボキシル基含有ポリマーとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、アクリルポリマーなどをカルボキシル変性したポリマー(ゴムまたは樹脂)が挙げられ、好ましくは、カルボキシル変性されたアクリルポリマーが挙げられる。
【0024】
カルボキシル変性されたアクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体((メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルをいう。以下同じ。)と、カルボキシル基含有ビニル単量体とを含有する単量体組成物を重合することにより得られる。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなど、炭素数2〜12の直鎖または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルなどの炭素数2〜4の直鎖または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0026】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を用いれば、湿気硬化型組成物の硬化前の柔軟性を確保して、間隙部分に対する追従性を向上させることができるとともに、後述する湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シートの保形性を向上させることができる。
【0027】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸、例えば、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0028】
また、単量体組成物には、上記した単量体と共重合可能な単量体を含有してもよく、そのような単量体としては、例えば、反応性官能基含有ビニル単量体、多官能ビニル単量体などが挙げられる。好ましくは、反応性官能基含有ビニル単量体が挙げられる。
【0029】
反応性官能基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニルモノマー、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基含有ビニルモノマー、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニルモノマー、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミドなどのマレイミド系のイミド基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。好ましくは、シアノ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0030】
多官能ビニル単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
単量体組成物は、アクリル酸アルキルエステル単量体を、90〜99.9質量%、好ましくは、92〜99.5質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体、0.1〜55質量%、好ましくは、0.5〜8質量%とを含有している。また、単量体組成物に共重合可能な単量体を含有する場合には、55質量%未満の割合で含有される。
【0032】
また、単量体組成物に、共重合可能な単量体としてシアノ基含有ビニルモノマーを含有させる場合には、単量体組成物は、アクリル酸アルキルエステル単量体を、55〜95質量%、好ましくは、60〜90質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10質量%、好ましくは、0.5〜8質量%と、シアノ基含有ビニル単量体4〜40質量%、好ましくは、8〜35質量%とを含有している。
【0033】
アクリルポリマーの重合方法は、公知の方法でよく、例えば、懸濁重合、塊状重合、乳化重合など、適宜選択することができる。
【0034】
また、アクリルポリマーの重合では、公知の重合開始剤、反応溶媒、連鎖移動剤、乳化剤などを、適宜用いることができる。なお、アクリルポリマーの重合において、反応溶媒を用いた場合には、反応後、蒸留などの方法により反応溶媒を留去する。
【0035】
これらカルボキシル基含有ポリマーには、カルボキシル基が、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは、0.5〜8質量%含有されている。
【0036】
カルボキシル基の含有量が、0.1質量%未満であると、湿気硬化型組成物を十分に硬化させることができない場合がある。このような場合には、感圧接着シートの物性(接着力、保持力など)が低下する場合がある。また、カルボキシル基の含有量が、10質量%を超過すると、カルボキシル基含有ポリマーのガラス転移点(Tg)が過度に高くなり、カルボキシル基含有ポリマーが常温(25℃)で過度に硬くなる場合がある。
【0037】
また、湿気硬化型組成物を感圧接着シート(後述)の製造に用いる場合などには、カルボキシル基含有ポリマーのガラス転移点(Tg)は、例えば、0℃以下、好ましくは、−20℃以下、通常、−60℃以上である。
【0038】
カルボキシル基含有ポリマーのガラス転移点が上記範囲であれば、湿気硬化型組成物を柔軟にすることができ、シール性や粘着性の向上を図ることができる。
【0039】
なお、カルボキシル基含有ポリマーのガラス転移点は、測定周波数を1Hzとして、動的粘弾性測定(昇温速度5℃/min)の損失弾性率G’’のピーク温度から測定することができる。
【0040】
カルボキシル基を有しないカルボキシル基不含有ポリマーとしては、特に制限されないが、例えば、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有するモノマーの重合により得られ、かつ、分子中にカルボキシル基を含有しない樹脂および/またはゴムが挙げられる。
【0041】
エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有するモノマーとしては、特に制限されず、公知のモノマーが挙げられ、好ましくは、高極性モノマーと低極性モノマーとの併用が挙げられる。
【0042】
すなわち、カルボキシル基不含有ポリマーとして、好ましくは、高極性モノマーと低極性モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0043】
カルボキシル基不含有ポリマーが、高極性モノマーと低極性モノマーとの共重合体であれば、優れた上記したカルボキシル基含有ポリマーとの相溶性を確保することができる。
【0044】
高極性モノマーは、低極性モノマーより高い極性を有する共重合性のモノマーであって、例えば、極性官能基(シアノ基(ニトリル基)、ヒドロキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アセテート基、カルボキシル基、アクリロイル基など)や、炭素−ハロゲン結合などを分子中に有するモノマーが挙げられる。
【0045】
このような高極性モノマーとして、具体的には、例えば、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、上記した反応性官能基含有ビニル単量体、例えば、脂肪酸ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど)などが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられる。
【0046】
これら高極性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
低極性モノマーは、高極性モノマーより低い極性を有する共重合性のモノマーであって、例えば、上記した極性官能基や炭素−ハロゲン結合などを分子中に有しないモノマーが挙げられる。
【0048】
このような低極性モノマーとして、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン(2−メチルプロペン)、ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族ビニル単量体(オレフィン類)、例えば、スチレンなどの芳香族ビニル単量体などの炭化水素のみからなるビニル単量体などが挙げられ、好ましくは、脂肪族ビニル単量体が挙げられ、より好ましくは、エチレン、ブタジエンが挙げられる。
【0049】
これら低極性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0050】
そして、カルボキシル基不含有ポリマーは、上記した高極性モノマーと上記した低極性モノマーとを、例えば、懸濁重合、塊状重合、乳化重合など、公知の方法で共重合させることにより、得ることができる。
【0051】
そして、このようにして得られるカルボキシル基不含有ポリマーとして、具体的には、例えば、アクリロニトリル(高極性モノマー)とブタジエン(低極性モノマー)との共重合により得られるアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。
【0052】
カルボキシル基不含有ポリマーとしてアクリロニトリル−ブタジエンゴムを用いれば、優れた粘着性、シール性および混合作業性を確保することができる。
【0053】
アクリロニトリル−ブタジエンゴムのアクリロニトリル含有量は、例えば、18〜50質量%、好ましくは、25〜45質量%である。
【0054】
アクリロニトリル−ブタジエンゴムのアクリロニトリル含有量が上記範囲であれば、優れた粘着性、シール性および混合作業性を確保することができる。
【0055】
また、アクリロニトリル−ブタジエンゴムのムーニー粘度(JIS K 6300−1に準拠)は、例えば、20〜80(ML1+4、at100℃)、好ましくは、30〜70(ML1+4、at100℃)である。
【0056】
アクリロニトリル−ブタジエンゴムのムーニー粘度が上記範囲であれば、優れた粘着性、シール性および混合作業性を確保することができる。
【0057】
また、その他のカルボキシル基不含有ポリマーとしては、例えば、高極性モノマーとエチレン(低極性モノマー)との共重合体であるエチレン系熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0058】
カルボキシル基不含有ポリマーとしてエチレン系熱可塑性樹脂を用いれば、優れた粘着性、シール性および混合作業性を確保することができる。
【0059】
エチレン系熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン・酢酸ビニル共重合体などのオレフィン・脂肪酸ビニルエステル共重合体、例えば、エチレン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・エチル(メタ)アクリレート共重合体(EEA/EMA)、エチレン・プロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・ブチル(メタ)アクリレート共重合体などのオレフィン・(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。なお、これらエチレン系熱可塑性樹脂はブロック共重合体またはランダム共重合体である。
【0060】
エチレン系熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0061】
エチレン系熱可塑性樹脂として、好ましくは、オレフィン・脂肪酸ビニルエステル共重合体としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、オレフィン・(メタ)アクリレート共重合体としてエチレン・エチル(メタ)アクリレート共重合体(EEA/EMA)が挙げられ、さらに好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。
【0062】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、例えば、10〜50質量%、好ましくは、15〜40質量%である。
【0063】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が上記範囲であれば、優れた粘着性、シール性および混合作業性を確保することができる。
【0064】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR、JIS K 6730に準拠)は、例えば、1〜800g/10min、好ましくは、2〜30g/10minである。
【0065】
エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが上記範囲であれば、優れた粘着性、シール性および混合作業性を確保することができる。
【0066】
また、カルボキシル基不含有ポリマーとしては、上記した高極性モノマーと低極性モノマーとの共重合体の他、さらに、例えば、低極性モノマー重合体、高極性モノマー重合体なども用いることができる。そのようなポリマーとして、具体的には、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、アクリルポリマーなどが挙げられる。
【0067】
これらカルボキシル基不含有ポリマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0068】
カルボキシル基不含有ポリマーの配合割合は、カルボキシル基含有ポリマーとカルボキシル基不含有ポリマーの総量(以下、ポリマー総量と称する。)100質量部に対して、例えば、5〜50質量部、好ましくは、10〜40質量部である。
【0069】
可塑剤としては、カルボキシル基含有ポリマーおよびカルボキシル基不含有ポリマーを可塑化できれば特に限定されず、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤などが挙げられる。
【0070】
フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、 ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどのフタル酸エステルが挙げられる。
【0071】
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジぺート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジぺート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルなどのアジピン酸エステルが挙げられる。
【0072】
トリメリット酸系可塑剤としては、例えば、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)などが挙げられる。
【0073】
また、可塑剤としては、例えば、高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなど)、乾性油類や動植物油類(例えば、パラフィン類(パラフィン系オイルなど)、ワックス類、ナフテン類、アロマ類、アスファルト類、アマニ油など)、石油系オイル類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)なども挙げられる。
【0074】
これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。また、可塑剤としては、好ましくは、脂肪酸系可塑剤が挙げられ、さらに好ましくは、アジピン酸エステルが挙げられる。
【0075】
可塑剤は、ポリマー総量100質量部に対して、例えば、10〜300質量部、好ましくは、15〜200質量部の配合割合で配合される。
【0076】
可塑剤の配合割合が、ポリマー総量100質量部に対して、10質量部未満であると、硬化前の湿気硬化型組成物の柔軟性が不十分となり、湿気硬化型組成物の間隙部分の形状に追従させることが困難となる場合がある。また、可塑剤の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、300質量部を超過すると、湿気硬化性組成物を硬化させることが困難な場合がある。
【0077】
金属酸化物は、金属酸化物含有成分に含有されており、金属酸化物含有成分は、湿気硬化型組成物に含有される。
【0078】
金属酸化物含有成分に含有される金属酸化物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどの第2族元素(周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版(1989))における第2族元素)の酸化物などが挙げられる。
【0079】
金属酸化物が第2族元素であれば、水と金属酸化物との反応により、金属水酸化物を生成することができ、その金属水酸化物の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基とのイオン結合により、架橋を形成することができる。
【0080】
金属酸化物含有成分は、金属酸化物そのもの(金属酸化物100%含有)であってもよく、金属酸化物が混合される混合物として調製することができる。
【0081】
金属酸化物の混合物としては、例えば、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Feを含有する。)、例えば、高炉セメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Fe、MgOを含有する。)、フライアッシュセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Fe、MgOを含有する。)、シリカセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Feを含有する。)などの混合セメント、例えば、アルミナセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Fe、MgOを含有する。)などの特殊セメントなどが挙げられる。好ましくは、ポルトランドセメントが挙げられる。
【0082】
また、金属酸化物含有成分には、金属酸化物が、例えば、85〜100質量%、好ましくは、90〜99.5質量%含有されており、さらに、第2族元素の酸化物が、例えば、55〜75質量%、好ましくは、60〜70質量%含有されている。
【0083】
金属酸化物含有成分は、カルボキシル基含有ポリマーの種類や、カルボキシル基の含有量に応じて、適宜配合され、具体的には、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、3〜200質量部、好ましくは、10〜180質量部の配合割合で配合される。
【0084】
金属酸化物含有成分の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、3質量部未満であると、湿気硬化型組成物を硬化させることが困難な場合がある。また、金属酸化物含有成分の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、200質量部を超過すると、湿気硬化型組成物の硬化速度が過度に速くなり、湿気硬化型組成物のポットライフが短期化する場合や、硬化前の湿気硬化型組成物の柔軟性が不十分となり、湿気硬化型組成物を間隙の形状に追従させることが困難になる場合がある。
【0085】
また、金属酸化物含有成分は、ポリマー総量100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは、2〜50質量部の配合割合で配合される。
【0086】
金属炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの第2族元素(周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版(1989))における第2族元素)の炭酸塩、例えば、炭酸亜鉛などの第12族元素(周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版(1989))における第12族元素)の炭酸塩、例えば、炭酸第一マンガン、炭酸第一鉄、炭酸第一コバルト、炭酸ニッケル、炭酸第二銅などの遷移金属の炭酸塩などが挙げられる。好ましくは、第2族元素の炭酸塩、より好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0087】
金属炭酸塩が第2族元素の炭酸塩であれば、容易に金属イオンを発生させることができ、金属炭酸塩の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基とのイオン結合により、架橋を形成することができる。
【0088】
金属炭酸塩は、カルボキシル基含有ポリマーの種類や、カルボキシル基の含有量に応じて、適宜配合され、具体的には、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、3〜200質量部、好ましくは、10〜180質量部の配合割合で配合される。
【0089】
金属炭酸塩の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、3質量部未満であると、湿気硬化型組成物を硬化させることが困難な場合がある。また、金属炭酸塩の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、200質量部を超過すると、湿気硬化型組成物の硬化速度が過度に速くなり、湿気硬化型組成物のポットライフが短期化する場合や、硬化前の湿気硬化型組成物の柔軟性が不十分となり、湿気硬化型組成物を間隙の形状に追従させることが困難になる場合がある。
【0090】
また、金属炭酸塩は、ポリマー総量100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは、5〜50質量部の配合割合で配合される。
【0091】
これら金属酸化物(金属酸化物含有成分)および金属炭酸塩は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
金属酸化物が含有される湿気硬化型組成物は、湿気硬化性に優れるので、硬化後により高い架橋性を必要とするシーリング用途において好適に用いられ、具体的には、後述するシーリングシートの製造などに好適に用いられる。
【0093】
一方、金属炭酸塩が含有される湿気硬化型組成物は、低い架橋性を必要とする接着剤用途において好適に用いられ、具体的には、後述する感圧接着シートの製造などに好適に用いられる。
【0094】
また、本発明の湿気硬化型組成物には、必要により、粘着付与剤および充填剤を配合することもできる。
【0095】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジンエステル類、テルペン系樹脂(例えば、テルペン−芳香族系液状樹脂、ポリテルペン樹脂など)、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂(例えば、C5/C9系石油樹脂など)、フェノール樹脂などが挙げられる。好ましくは、クマロン樹脂が挙げられる。
【0096】
粘着付与剤は、ポリマー総量100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは、10〜150質量部の配合割合で配合される。
【0097】
湿気硬化型組成物に粘着付与剤が配合されていれば、シール対象に対する湿気硬化型組成物の密着性を向上させることができる。
【0098】
充填剤としては、例えば、中空ビーズなどの中空充填剤、例えば、加熱発泡ビーズなどの発泡性充填剤、例えば、タルクなど、上記した金属酸化物含有成分や金属炭酸塩以外の無機充填剤などが挙げられる。好ましくは、中空充填剤、発泡性充填剤が挙げられる。
【0099】
充填剤は、ポリマー総量100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは、10〜100質量部の配合割合で配合される。
【0100】
充填剤が中空充填剤や発泡性充填剤であれば、湿気硬化型組成物の見掛け密度を低下させることができ、湿気硬化型組成物を軽量化することができる。
【0101】
また、本発明の湿気硬化型組成物には、必要により、顔料、老化防止剤、難燃剤などの公知の添加剤を、適宜配合することができる。
【0102】
本発明の湿気硬化型組成物を調製するには、カルボキシル基含有ポリマー、カルボキシル基不含有ポリマー、可塑剤、金属酸化物(金属酸化物含有成分)および/または金属炭酸塩、必要により、粘着付与剤および添加剤を上記した配合割合で配合し、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などを用いて混合(混練)する。
【0103】
なお、湿気硬化型組成物は、例えば、無溶剤、つまり、酢酸エチル、トルエンなどの溶剤を用いることなく、調製する。
【0104】
湿気硬化型組成物を無溶剤で調製すれば、湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シートを所望の形状(例えば、比較的厚いシート状)に容易に成形することができるとともに、環境負荷を低減することができる。
【0105】
また、混練温度は、例えば、50〜160℃である。
【0106】
また、上記の混練は、上記した各成分または混練物が、湿気と接触しないように、例えば、乾燥気体中で実施する。
【0107】
これにより、湿気硬化型組成物が、粘稠なペースト状(パテ状)に調製される。
【0108】
得られた湿気硬化型組成物のゲル分率(トルエン不溶分)は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0109】
なお、ゲル分率とは、トルエンに24時間浸漬したときの、浸漬前の質量に対する、トルエン不溶分の乾燥質量の百分率である。
【0110】
また、得られた湿気硬化型組成物の、伸び率100%における引張り強度(JIS K 6767に準ずる)は、例えば、30N以下、好ましくは、20N以下である。
【0111】
また、得られた湿気硬化型組成物は、その硬化前の硬さが、JIS K 7312に規定されるタイプC硬さ試験において、タイプCデュロメータの加圧面を密着させてから10秒後に測定したときに、例えば、5〜50、好ましくは、5〜30である。
【0112】
湿気硬化型組成物の硬化前の硬さは、可塑剤の配合量や、金属酸化物(金属酸化物含有成分)および/または金属炭酸塩の配合量を調製することにより、調製することができ、上記した硬さが5未満であると、湿気硬化型組成物が、タレや流れにより、硬化する前に間隙から流出する場合があり、50を超過すると、湿気硬化型組成物の柔軟性が不十分となり、湿気硬化型組成物を間隙部分の形状に追従させることが困難となる場合がある。
【0113】
そして、湿気硬化型組成物は、間隙部分などに充填され、その後、周囲の湿気を吸収することにより、硬化する。
【0114】
詳しくは、湿気硬化型組成物が金属酸化物(金属酸化物含有成分)を含有する場合において、湿気硬化型組成物が周囲の湿気を吸収すると、水と金属酸化物との反応により金属水酸化物が生成され、その後、金属水酸化物の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との間でイオン結合が形成されることにより、湿気硬化型組成物が湿気硬化する。
【0115】
また、湿気硬化型組成物が金属炭酸塩を含有する場合において、湿気硬化型組成物が周囲の湿気を吸収すると、金属炭酸塩の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との間でイオン結合が形成されることにより、湿気硬化型組成物が湿気硬化する。
【0116】
硬化後の湿気硬化型組成物のゲル分率(トルエン不溶分)は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上である。
【0117】
また、硬化後の湿気硬化型組成物の、伸び率100%における引張り強度(JIS K 6767に準ずる)は、例えば、1N以上、好ましくは、5N以上、通常、30N以下である。
【0118】
この湿気硬化型組成物によれば、粘度調整によらずとも、硬化前においては、柔軟性を確保して、間隙部分に対する追従性を向上させることができ、また、硬化後には、タレや流れを防止して間隙部分に空隙が生じることを抑制して、間隙部分を均一に充填することができる。
【0119】
湿気硬化型組成物は、ヘラなどを用いて、直接間隙に充填してもよく、また、予めシート状に形成して湿気硬化型シートとし、その湿気硬化型シートをシーリングシートとして用いて、間隙に充填することができる。
【0120】
湿気硬化型シートを形成するには、例えば、公知のプレス機、押出成形機、カレンダーロールなどの成形機などを用いて、湿気硬化型組成物を圧延し、所定厚みのシートとする。また、不織布などの基材の両面に湿気硬化型組成物を塗布して、湿気硬化型シートとすることもできる。
【0121】
この点、例えば、上記した湿気硬化型組成物を溶剤に溶解させ、得られた溶液を離型紙上にキャストした後、溶剤を蒸発させることによって、湿気硬化型シートを成形することも検討される。
【0122】
しかしながら、このような方法では、溶液中に金属酸化物や金属炭酸塩などを均一に分散させることが困難であり、また、溶剤の蒸発時には、比重の大きい金属酸化物や金属炭酸塩などが沈降する場合がある。また、このような溶液を用いると、シートを厚くすることが困難であり、さらには、このようなシートの製造では、作業環境の観点から、溶剤の使用の低減が求められる場合がある。
【0123】
一方、上記したようにニーダーなどの混合機において混合し、プレス機や押出成形機などによりシート状に成形すれば、無溶剤で金属酸化物や金属炭酸塩などを均一に分散させることができ、また、金属酸化物や金属炭酸塩などが均一に分散された湿気硬化型シートを、所望の厚みで成形することができる。
【0124】
湿気硬化型シートの厚みは、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.5〜5mmである。
【0125】
なお、湿気硬化型組成物や湿気硬化型シートは、水や湿気と接触しないように、使用するまで密封される。
【0126】
このような湿気硬化型シートは、ポリエチレン板に対する粘着力が、例えば、5〜35N/15mm、好ましくは、10〜30N/15mmである。
【0127】
なお、ポリエチレン板に対する粘着力は、実施例において詳述するように、例えば、まず、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)と湿気硬化型シートとの積層シート(サンプル)を作製し、次いで、そのサンプルを15mm巾に切断して、その湿気硬化型シート面をポリエチレン板に貼り合わせ、さらに、2Kgローラーにて1往復して、サンプルとポリエチレン板とを圧着させ、30分放置した後、引っ張り試験機(速度300mm/分、角度90°)にて剥離に要する力を測定することにより、求めることができる。
【0128】
また、上記の湿気硬化型シートを湿気硬化させることにより、感圧接着シートを得ることができる。
【0129】
湿気硬化型シートを湿気硬化させるには、湿気硬化型シートを加湿させる。詳しくは、湿気硬化型シートを、常湿雰囲気下、具体的には、例えば、常温、常湿雰囲気下で、例えば、1時間〜30日間、好ましくは、10時間〜7日間、放置する。なお、常温および常湿とは、JIS Z8703に記載され、具体的には、5〜35℃、および、45〜85RH%である。
【0130】
また、湿気硬化型シートは、例えば、高湿雰囲気下、具体的には、例えば、40〜95℃の温度で、85RH%を超過し、98RH%以下の高湿雰囲気下で、例えば、1分間〜100時間、好ましくは、10分間〜24時間放置することにより、加湿させることもできる。
【0131】
上記した湿気硬化型シートの加湿は、例えば、湿気硬化型シートを恒温高湿器などに投入することにより実施する。
【0132】
上記した加湿によって、湿気硬化型シートが周囲の湿気を吸収して、湿気硬化する。
【0133】
詳しくは、湿気硬化型シートが金属酸化物(金属酸化物含有成分)を含有する場合において、湿気硬化型シートが周囲の湿気を吸収すると、水と金属酸化物との反応により金属水酸化物が生成され、その後、金属水酸化物の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との間でイオン結合が形成されることにより、湿気硬化型シートが湿気硬化する。
【0134】
また、湿気硬化型シートが金属炭酸塩を含有する場合において、湿気硬化型シートが周囲の湿気を吸収すると、金属炭酸塩の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との間でイオン結合が形成されることにより、湿気硬化型シートが湿気硬化する。
【0135】
このような湿気硬化型シートの湿気硬化によって、本発明の感圧接着シートを得る。
【0136】
得られた感圧接着シート(湿気硬化後の湿気硬化型シート)は、表面にタック性(粘着性)を有している。
【0137】
このような感圧接着シートは、ポリエチレン板に対する粘着力が、例えば、5〜30N/15mm、好ましくは、10〜25N/15mmである。
【0138】
なお、ポリエチレン板に対する粘着力は、実施例において詳述するように、例えば、まず、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)と感圧接着シートとの積層シート(サンプル)を作製し、次いで、そのサンプルを15mm巾に切断して、その感圧接着シート面を、ポリエチレン板に貼り合わせ、さらに、2Kgローラーにて1往復して、サンプルとポリエチレン板とを圧着させ、30分放置した後、引っ張り試験機(速度300mm/分、角度90°)にて剥離に要する力を測定することにより、求めることができる。
【0139】
また、感圧接着シートのゲル分率(トルエン不溶分)は、例えば、2質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、通常、99質量%以下である。
【0140】
ゲル分率が上記した範囲に満たない場合には、湿気硬化型シートの湿気硬化が不十分であり、感圧接着シートの接着性が低下する場合がある。
【0141】
また、感圧接着シート(湿気硬化後の湿気硬化型シート)の厚みは、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.5〜5mmである。
【0142】
その後、感圧接着シートを接着対象に貼着し、感圧接着シートを介して複数の接着対象(例えば、感圧接着シートが貼着された接着対象、および、感圧接着シートが貼着されていない接着対象)を接着することができる。
【0143】
そして、本発明の感圧接着シートは、所定形状、具体的には、所望の厚み(具体的には、厚手)のフィルム状に、簡易に成形することができる。
【0144】
また、本発明の感圧接着シートは、その成形後から使用時までの保存が容易であり、接着対象に対して優れた接着力および高温における優れた保持力を発現することができる。
【0145】
以上述べたように、本発明の湿気硬化型組成物によれば、無溶剤下において十分に混合および分散することができ、装置からの取り出し性に優れ、さらには、種々の厚みのシートを製造できる。
【0146】
また、本発明の湿気硬化型シート、シーリングシートおよび感圧接着シートは、容易に製造することができ、また、種々の厚みに調整することができる。
【実施例】
【0147】
以下に、実施例、および、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0148】
実施例1
アクリル酸ブチル85質量部、アクリル酸2質量部、アクリロニトリル15質量部からなる単量体組成物を重合して、カルボキシル変性されたアクリルポリマーA(カルボキシル基含有ポリマー、カルボキシル基含有量1.2質量%、固形分100%)を得た。得られたアクリルポリマーAのガラス転移点を、測定周波数を1Hzとして、動的粘弾性測定(昇温速度5℃/min)の損失弾性率G’’のピーク温度から測定したところ、−39℃であった。
【0149】
次いで、アクリルポリマーA、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(アクリロニトリル含有量:33.5質量%、ムーニー粘度(JIS K 6300−1に準拠):46(ML1+4、at100℃))、アジピン酸エステル(可塑剤、ポリサイザーP−103、DIC製)、クマロン樹脂(粘着付与剤、クマロンV−120、日塗化学製)、白色ポルトランドセメント(金属酸化物含有成分、CaO66質量%、SiO24質量%、Al4質量%、Fe0.2質量%)およびタルク(充填剤)を、表1に示す配合割合で配合し、ミキシングロールを用いて表1に示す温度および時間で混合することにより、湿気硬化型組成物を得た。
【0150】
また、ミキシングロールに代えて、ニーダー混練機を用いて表1に示す温度および時間で混合した以外は上記と同様にして、湿気硬化型組成物を得た。
【0151】
また、このように得られた湿気硬化型組成物をプレス機により圧延し、厚み1mmの湿気硬化型シート(シーリングシート)を得た。
【0152】
参考例2
アクリルポリマーA、エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:28質量%、MFR(JIS K 6730に準拠):15g/10min)、アジピン酸エステル(可塑剤、ポリサイザーP−103、DIC製)、クマロン樹脂(粘着付与剤、クマロンV−120、日塗化学製)、炭酸カルシウム(金属炭酸塩)およびタルク(充填剤)を、表1に示す配合割合で配合し、ミキシングロールを用いて、表1に示す温度および時間で混合することにより、湿気硬化型組成物を得た。
【0153】
また、ミキシングロールに代えて、ニーダー混練機を用いて表1に示す温度および時間で混合した以外は上記と同様にして、湿気硬化型組成物を得た。
【0154】
また、このように得られた湿気硬化型組成物をプレス機により圧延し、厚み1mmの湿気硬化型シートを得た。
【0155】
比較例1
アクリロニトリル−ブタジエンゴムを配合せずに、アクリルポリマーA、アジピン酸エステル(可塑剤、ポリサイザーP−103、DIC製)、クマロン樹脂(粘着付与剤、クマロンV−120、日塗化学製)、白色ポルトランドセメント(金属酸化物含有成分、CaO66質量%、SiO24質量%、Al4質量%、Fe0.2質量%)およびタルク(充填剤)を、表1に示す配合割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化型組成物および湿気硬化型シート(シーリングシート)を得た。
【0156】
比較例2
エチレン・酢酸ビニル共重合体を配合せずに、アクリルポリマーA、アジピン酸エステル(可塑剤、ポリサイザーP−103、DIC製)、クマロン樹脂(粘着付与剤、クマロンV−120、日塗化学製)、炭酸カルシウム(金属炭酸塩)およびタルク(充填剤)を、表1に示す配合割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化型組成物および湿気硬化型シートを得た。
【0157】
評価方法
1.混合作業性
各実施例、参考例および各比較例において、湿気硬化型組成物をミキシングロールまたはニーダー混練機で混合する際の混合作業性(組成物の分散性、ニーダー混練機からの取り出し性)を評価した。その結果を表1に示す。
2.ゲル分率(トルエン不溶分)の測定
各実施例、参考例および各比較例で得られた湿気硬化型組成物を用いて、硬化前、および、硬化後(温度50℃、湿度90RH%で24時間硬化後)のトルエン不溶分を測定した。
【0158】
硬化前または硬化後の湿気硬化型組成物を秤量し、これをトルエンに浸漬48時間膨潤溶解させた。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶分を、乾燥後、秤量した。そして、硬化前または硬化後の湿気硬化型組成物の質量に対する、トルエン不溶分の乾燥質量の百分率を算出した。結果を表1に示す。
3.粘着力
(実施例1および比較例1)
まず、実施例1および比較例1において得られた湿気硬化型シートの片面を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちし、15mm巾に裁断して、粘着力測定サンプルとした。
【0159】
次いで、得られたサンプルの湿気硬化型シート面を、ポリエチレン板に貼りあわせ、2Kgローラーにて1往復し、サンプルとポリエチレン板とを圧着させ、30分放置した。
【0160】
その後、サンプルとポリエチレン板との間の粘着力を、引っ張り試験機により、速度300mm/分、角度90°にて測定した。
【0161】
その結果を、表1に示す。
参考例2および比較例2)
まず、参考例2および比較例2において得られた湿気硬化型シートの片面を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちし、15mm巾に裁断して、粘着力測定サンプルとした。
【0162】
次いで、得られたサンプルを、温度50℃、湿度90RH%で24時間湿気硬化させ、感圧接着シートとした。
【0163】
次いで、得られたサンプルの感圧接着シート面を、ポリエチレン板に貼りあわせ、2Kgローラーにて1往復し、サンプルとポリエチレン板とを圧着させ、30分放置した。
【0164】
その後、サンプルとポリエチレン板との間の粘着力を、引っ張り試験機により、速度300mm/分、角度90°にて測定した。
【0165】
その結果を、表1に示す。
4.止水性
実施例1および比較例1において得られた湿気硬化型シートを、図1(a)に示すような略U字状に打ち抜いて、図1(b)に示すように、2枚のアクリル板の間に挟み込んだ後、2Kgローラーにて1往復して圧着させた。次いで、温度50℃、湿度90RH%の恒温高湿槽に24時間入れた後、常温(25℃)に戻した。
【0166】
その後、湿気硬化型シートの略U字状の開放側を上向きに設置した状態で、その開放側から湿気硬化型シート内に水頭高さ(鉛直方向における浸水距離)が100mmとなるように水を注入し、24時間静置した後の湿気硬化型シートからの水の漏れを目視することにより、止水の可否を判断した。その結果を表1に示す。
【0167】
【表1】

(考察)
カルボキシル基不含有ポリマーを配合しなかった比較例1および比較例2の湿気硬化型組成物は、ミキシングロールによる分散性は良好である一方、ニーダー混練機による分散性は十分ではなく、また、取り出し性にも劣っていた。
【0168】
これに対して、カルボキシル基不含有ポリマーを配合した実施例1および実施例2の湿気硬化型組成物は、ミキシングロールによる分散性は良好であり、さらに、ニーダー混練機による分散性および取り出し性も良好であった。
【0169】
さらに、粘着性、止水性についても、カルボキシル基不含有ポリマーを配合しなかった比較例1および比較例2よりも優れた性能を示した。
図1