特許第5968688号(P5968688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968688
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】減震構造体
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20160728BHJP
   G07F 9/10 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F16F15/04 A
   F16F15/04 D
   G07F9/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-133023(P2012-133023)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-256991(P2013-256991A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224994
【氏名又は名称】特許機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(72)【発明者】
【氏名】岡本 興三
(72)【発明者】
【氏名】寺村 彰
(72)【発明者】
【氏名】矢口 大輔
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−124010(JP,A)
【文献】 実開昭61−004049(JP,U)
【文献】 特開2003−090173(JP,A)
【文献】 特開平09−096340(JP,A)
【文献】 実開昭59−140418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
G07F 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に固定される設備機器に設けられた第一固定具と、
前記床面に設けられ、前記第一固定具が固定される第二固定具と、
を備え、
前記第一固定具と前記第二固定具との間には、入力された振動の振動エネルギーを消費して、前記設備機器に作用する振動負荷を低減させる振動低減部材が設けられ
前記第一固定具は、前記設備機器側に固定された連結部材を備え、
前記第二固定具は、
前記床面に埋設されたインサートナットと、
前記インサートナットに螺着され、前記床面から立設された固定ボルトと、
前記固定ボルトに螺着され、前記連結部材を締結固定する固定ナットと、
を備え、
前記振動低減部材は、前記固定ナットの座面と前記連結部材との間に設けられ、
前記インサートナットは、前記床面上に露出し、径方向外側に張り出すフランジ部を備えるとともに、前記インサートナットの雌ネジ孔の開口縁部と前記フランジ部との角部は、全周にわたって除去されていることを特徴とする減震構造体。
【請求項2】
請求項に記載の減震構造体であって、
前記連結部材は、前記設備機器に取り付けられる機器ボルトと、前記機器ボルトに螺着された機器ナットとによって、前記設備機器に締結固定され、
前記振動低減部材は、前記機器ナットの座面と前記連結部材との間にもさらに設けられていることを特徴とする減震構造体。
【請求項3】
請求項に記載の減震構造体であって、
前記機器ボルトと、前記連結部材のボルト挿通孔との間には、筒状の第二振動低減部材がボルト軸と同軸に配置され、
前記第二振動低減部材は、
内層と、
前記内層を径方向外側から囲繞し、前記連結部材の前記ボルト挿通孔の内周面に摺接するとともに、前記内層よりも高硬度に形成された外層と、
を有していることを特徴とする減震構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、減震構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動販売機や変圧器、空調機、発電設備等の機器(以下、「設備機器」という。)を地震動等の振動から保護しつつ、床スラブ等の床面に固定する構造体が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、床面に粘着部材を介して固定される第1の固定部および第2の固定部と、該第1の固定部と該第2の固定部とに跨って設けられ機器のブラケット金具を締結するブリッジ部を備えた転倒防止金具が記載されている。
【0004】
この転倒防止金具によれば、地震等の揺れが起こった場合、ブラケット金具の透孔の内周面に係合用ボルトのねじ部が当たって係合することにより機器の傾斜が規制され、転倒防止が図られる。また、床面からの振動は転倒防止金具からボルトに伝わるが、ボルトのねじ部は透孔に遊嵌状態でブラケット金具に接触していないので、床面の振動は転倒防止金具を介して機器に伝わらない。したがってこの転倒防止金具は、床面の振動の影響を大きく受けたくない機器に好適とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4860496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の転倒防止金具にあっては、以下の問題がある。
床面に固定された転倒防止金具と設備機器のブラケット金具との間には、地震動等の振動エネルギーを吸収する機構が設けられていない。このため、大規模な地震によって大きな振動振幅で床面が振動した場合には、振動が転倒防止金具からボルトに伝達し、遊嵌状態だったボルトとブラケット金具とが互いに接触した後、設備機器に伝達する。したがって、設備機器を地震動等の振動から保護できないおそれがある。
また、このとき、振動エネルギーによってボルトやブラケット金具、転倒防止金具等に応力が加わり、変形や破損が生じるおそれがある。
【0007】
特に、振動エネルギーが設備機器に入力されると、設備機器にはいわゆるロッキング振動が発生することが知られている。ここで、ロッキング振動とは、床面が変位する軸と直交する方向の軸回りの回転運動をいう。
ロッキング振動が発生すると、設備機器の回転運動の中心軸とは反対側が床面に対して接近および離反するように移動する。これにより、設備機器が下方に沈み込むことで発生する押し込み方向の荷重(以下、「押し込み荷重」という。)および設備機器が上方に浮き上がることで発生する引き抜き方向の荷重(以下、「引き抜き荷重」という。)が発生する。特に、引き抜き荷重により、ボルトやブラケット金具、転倒防止金具等に応力が加わり、変形や破損が生じるおそれがある。
したがって、従来技術では、設備機器を安定に床面に固定して保護することが難しい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、入力された振動エネルギーを効率良く吸収して低減でき、設備機器を安定に床面に固定して保護することができる減震構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の減震構造体は、床面に固定される設備機器に設けられた第一固定具と、前記床面に設けられ、前記第一固定具が固定される第二固定具と、を備え、前記第一固定具と前記第二固定具との間には、入力された振動の振動エネルギーを消費して、前記設備機器に作用する振動負荷を低減させる振動低減部材が設けられ、前記第一固定具は、前記設備機器側に固定された連結部材を備え、前記第二固定具は、前記床面に埋設されたインサートナットと、前記インサートナットに螺着され、前記床面から立設された固定ボルトと、前記固定ボルトに螺着され、前記連結部材を締結固定する固定ナットと、を備え、前記振動低減部材は、前記固定ナットの座面と前記連結部材との間に設けられ、前記インサートナットは、前記床面上に露出し、径方向外側に張り出すフランジ部を備えるとともに、前記インサートナットの雌ネジ孔の開口縁部と前記フランジ部との角部は、全周にわたって除去されていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、地震発生等により振動が発生すると、床面から第二固定具および第一固定具を介して設備機器に振動が伝達しようとするが、第一固定具と第二固定具との間に設けられた振動低減部材がその振動の振動エネルギーを例えば減衰、吸収によって消費する。これにより、振動の総エネルギー量のうち設備機器、第一固定具および第二固定具に作用する振動エネルギー量は、振動低減部材により消費された分だけ低減されるので、設備機器、第一固定具および第二固定具への振動負荷を低減させることができる。つまり、減震させることができる。
その結果、設備機器、第一固定具および第二固定具の変形や破損、設備機器の転倒等の発生を抑制することができ、設備機器を安定に床面に固定して保護することができる。
また、地震発生等により振動が発生すると、第一固定具と第二固定具との間に設けられた振動低減部材がその振動の振動エネルギーを例えば減衰、吸収によって消費する。しかも、振動低減部材は、第一固定具の連結部材と第二固定具の固定ナットの座面との間に設けられているので、設備機器にロッキング振動が発生し、第一固定具と第二固定具との間に引き抜き荷重が発生しても、連結部材と固定ナットの座面との間の振動低減部材が圧縮されて振動エネルギーを消費する。これにより、設備機器、第一固定具および第二固定具へのロッキング振動による振動負荷を特に効果的に低減させることができる。つまり、減震させることができる。
その結果、特に、ロッキング振動に起因する引き抜き荷重による設備機器、第一固定具
および第二固定具の変形や破損、設備機器の転倒等の発生を抑制できるので、設備機器を
安定に床面に固定して保護することができる。
また、インサートナットのフランジ部と床面の表面とが面接触できる。これにより、インサートナット周辺の床面において振動エネルギーによる応力が集中するのを防止できるので、インサートナット周辺の床面およびインサートナット自体の破損を抑制し、インサートナットのがたつきを防止できる。また、インサートナットの雌ネジ孔の開口縁部とフランジ部との角部を全周にわたって除去することにより、振動エネルギーによってインサートナットに螺着された固定ボルトが撓んでも、雌ネジ孔の開口縁部とフランジ部との角部と固定ボルトとが接触することがない。これにより、振動エネルギーによって固定ボルトに応力が集中するのを防止できるので、固定ボルトの変形や破損を抑制できる。したがって、設備機器を安定に床面に固定して保護することができる。
【0013】
また、前記連結部材は、前記設備機器に取り付けられる機器ボルトと、前記機器ボルトに螺着された機器ナットとによって、前記設備機器に締結固定され、前記振動低減部材は、前記機器ナットの座面と前記連結部材との間にもさらに設けられていることを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、振動低減部材は、床面側の固定ナットの座面と連結部材との間に加えて、設備機器側の機器ナットの座面と連結部材との間にも設けられているので、特にロッキング振動に起因する引き抜き荷重による設備機器、第一固定具および第二固定具の変形や破損、設備機器の転倒等の発生を確実に防止できる。
【0015】
また、前記機器ボルトと、前記連結部材のボルト挿通孔との間には、筒状の第二振動低減部材がボルト軸と同軸に配置され、前記第二振動低減部材は、内層と、前記内層を径方向外側から囲繞し、前記連結部材の前記ボルト挿通孔の内周面に摺接するとともに、前記内層よりも高硬度に形成された外層と、を有していることを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、第二振動低減部材は、内層よりも高硬度な外層を有しているので、水平方向の振動により設備機器と床面とが水平方向に相対移動したとき、第二振動低減部材の外層と連結部材のボルト挿通孔の内周面とが摺接する。これにより、第二振動低減部材と連結部材との衝撃力を緩和しつつ、内層によって振動エネルギーを例えば減衰、吸収によって消費するとともに、第二振動低減部材の外層と連結部材のボルト挿通孔の内周面との摩擦によって振動エネルギーを消費できる。したがって、引き抜き方向に加えて水平方向に振動が発生した場合においても、設備機器、第一固定具および第二固定具への振動負荷を低減させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、地震発生等により振動が発生すると、床面から第二固定具および第一固定具を介して設備機器に振動が伝達しようとするが、第一固定具と第二固定具との間に設けられた振動低減部材がその振動の振動エネルギーを例えば減衰、吸収によって消費する。これにより、振動の総エネルギー量のうち設備機器、第一固定具および第二固定具に作用する振動エネルギー量は、振動低減部材により消費された分だけ低減されるので、設備機器、第一固定具および第二固定具への振動負荷を低減させることができる。つまり、減震させることができる。
その結果、設備機器、第一固定具および第二固定具の変形や破損、設備機器の転倒等の発生を抑制することができ、設備機器を安定に床面に固定して保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態の減震構造体の上面概略説明図である。
図2図1のA−A線に沿った断面図である。
図3】第一実施形態の変形例に係る減震構造体の説明図である。
図4】ロッキング振動時における第一変形例に係る減震構造体の説明図である。
図5】第二実施形態の減震構造体の説明図である。
図6】第二振動低減部材の説明図である。
図7】第二実施形態の第一変形例に係る減震構造体の説明図である。
図8】第二実施形態の第二変形例に係る減震構造体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
以下に、図面に基づいて第一実施形態の減震構造体について説明する。
図1は、第一実施形態の減震構造体の上面概略説明図である。
図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。
図1に示すように、本実施形態の減震構造体1は、略直方体形状の設備機器Wをコンクリートの床スラブF(請求項の「床面」に相当。)に固定支持するユニットであって、設備機器Wの四隅近傍に四箇所設けられている。
ここで、設備機器Wは、床スラブFに固定される機器であり、特に限定されるものではないが、例えば自動販売機や変圧器、精密機器、配管、空調機、発電設備および切替遮断器室等が挙げられる。また、床スラブFとは、屋内および屋外を問わず、設備機器Wを設置可能な床面をいう。
図2に示すように、減震構造体1は、設備機器W側に設けられた第一固定具10と、床スラブFに設けられた第二固定具50とにより構成されている。
なお、以下の説明では、床スラブFの鉛直方向上方を上方といい、その逆向きを下方という。また、設備機器Wを間に挟んで減震構造体1が並ぶ方向を第一方向L1といい、第一方向L1および鉛直方向と直交する方向を第二方向L2とする。
【0022】
(第一固定具)
第一固定具10は、設備機器W側に固定された連結部材11と、連結部材11と設備機器Wとの間に配置された減震パッド19とを備えている。
連結部材11は、第二方向L2から見て略L字形状をした板部材であり、例えば鉄やステンレス等の金属により形成されている。連結部材11は、例えば設備機器Wの第一方向L1に面する側面に固定されている。
【0023】
連結部材11は、床スラブFの表面に沿うように形成された床スラブ側連結部12と、設備機器Wの第一方向L1に面する側面に沿うように形成された設備機器側連結部13とを備えている。
床スラブ側連結部12には、固定ボルト挿通孔12aが形成されている。固定ボルト挿通孔12aには、後述する固定ボルト65が挿通される。床スラブ側連結部12は、固定ボルト挿通孔12aに挿通された固定ボルト65に固定ナット67を締結することで、床スラブFに固定される。
設備機器側連結部13には、不図示の貫通孔が二箇所に形成されている。二箇所の貫通孔には、それぞれボルト17が挿通されている。設備機器側連結部13は、貫通孔に挿通されたボルト17を設備機器Wに締結することで、設備機器Wに固定される。
【0024】
連結部材11の設備機器側連結部13と設備機器Wとの間には、シート状の減震パッド19が配置されている。減震パッド19は、弾性と減衰とを合わせ持つ材料、例えば硬度60〜70度で且つtanδが0.5以上となるブチルゴム等の高減衰ゴムや、高減衰性スチレン系エラストマー等の材料によって形成された高減衰部材とされている。連結部材11の設備機器側連結部13と設備機器Wとの間に減震パッド19を配置することで、水平方向の振動エネルギーを減衰および吸収して消費できる。これにより、振動の総エネルギー量のうち設備機器Wおよび第一固定具10の連結部材11に作用する振動エネルギー量は、減震パッド19により消費された分だけ低減されるので、設備機器Wおよび第一固定具10の連結部材11への振動負荷を低減させることができる。
【0025】
(第二固定具)
第二固定具50は、床スラブFに埋設されたインサートナット51と、インサートナット51に螺着された棒状の固定ボルト65と、固定ボルト65に螺着された固定ナット67と、インサートナット51と連結部材11との間に配置される平滑シート61と、固定ナット67と連結部材11との間に配置される振動低減部材63と、を備えている。
【0026】
(インサートナット)
インサートナット51は、略円筒状の本体部51aを有した金属部材であり、インサートナット51の中心軸に沿って形成された雌ネジ孔53と、インサートナット51の本体部51aの下方に設けられたスリーブ54と、インサートナット51の本体部51aの上方に設けられたフランジ部55と、を備えている。
雌ネジ孔53は、インサートナット51の本体部51aを中心軸に沿って貫通するように形成されており、固定ボルト65が螺着可能に形成されている。
【0027】
スリーブ54は、本体部51aの径方向外側に拡開可能に形成されている。インサートナット51の下方には、スリーブ54の拡開角度に対応したテーパ面を有する略円錐台形状のプラグ56(図2における二点鎖線参照)が配置されている。インサートナット51は、床スラブFに形成された挿入孔に挿入した後、ハンマー等で打ち込むことにより、スリーブ54がプラグ56の傾斜面に沿って拡開するとともに、床スラブFを形成するコンクリートに食い込むように構成されている。これにより、インサートナット51は、床スラブFに強固に埋設される。
【0028】
フランジ部55は、床スラブFの表面上に露出しており、インサートナット51の径方向外側に向かって張り出すように形成されている。フランジ部55は、インサートナット51の軸方向から見て、外形が略円形状に形成されている。
フランジ部55には、上下方向に貫通する貫通孔55aが形成されている。貫通孔55aには、例えば不図示のアンカーが挿通されて床スラブFに打ち込まれている。これにより、フランジ部55は、床スラブFに対して強固に固定されて、床スラブFの表面と面接触できる。したがって、インサートナット51周辺の床スラブFにおいて、振動エネルギーによる応力が集中するのを防止できるので、インサートナット51周辺の床スラブFおよびインサートナット51の破損を抑制し、インサートナット51のがたつきを防止できる。
【0029】
フランジ部55と雌ネジ孔53との角部は、全周にわたって除去されている。より詳細には、雌ネジ孔53の中心軸を含む側面断面を形成したとき、フランジ部55と雌ネジ孔53とが曲線Rによって接続されるように、フランジ部55と雌ネジ孔53との角部が除去されている。
曲線Rは、固定ボルト65が、地震動等の振動エネルギーにより撓んで径方向に曲げ変形したときの変形曲線に沿うように形成されている。このように、フランジ部55と雌ネジ孔53との角部を除去することにより、振動エネルギーによってインサートナット51に螺着された固定ボルト65が撓んでも、雌ネジ孔53の開口縁部とフランジ部55との角部と固定ボルト65とが接触することがない。したがって、振動エネルギーにより固定ボルト65に応力が集中するのを防止できるので、固定ボルト65の変形や破損を抑制できる。
【0030】
固定ボルト65は、長手方向の中央よりも下側がインサートナット51に螺着されている。これにより、固定ボルト65は、上端部65aが床スラブFの表面から突出した状態で立設される。このとき、固定ボルト65のボルト軸Oは、インサートナット51の中心軸と同軸に配置される。
固定ボルト65には、平滑シート61、連結部材11および振動低減部材63の順に挿通されたあと、固定ナット67が螺着される。これにより、設備機器Wは、第一固定具10および第二固定具50を介して床スラブFに固定される。
【0031】
インサートナット51のフランジ部55と連結部材11の床スラブ側連結部12との間には、平板状の平滑シート61が配置されている。平滑シート61は、例えば外形がインサートナット51のフランジ部55と同様に略円形状に形成されている。平滑シート61は、例えば硬度60〜70程度で且つ摩擦係数μ=0.4程度の材料により形成されている。
平滑シート61を形成する材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン (Polytetrafluoroethylene、PTFE)等のフッ素系樹脂材料が好適である。平滑シート61は、水平方向の振動エネルギーが入力されたときに、インサートナット51のフランジ部55と連結部材11の床スラブ側連結部12との間で、適度に滑るように構成されている。これにより、インサートナット51と連結部材11とが相対移動し、床スラブFから設備機器Wへの振動の伝達を抑制するとともに、摩擦により振動エネルギーを消費する。したがって、水平方向の振動による設備機器Wへの振動負荷を低減させることができる。
【0032】
(振動低減部材)
固定ナット67の座面67aと連結部材11の床スラブ側連結部12との間には、振動低減部材63が配置されている。振動低減部材63は、外径が例えば固定ナット67の座面67aと略同一に形成された略円盤状の部材である。振動低減部材63は、ボルト軸Oと同軸に配置されている。
振動低減部材63は、弾性と減衰とを合わせ持つ材料、例えば硬度30〜40度で且つtanδが0.5以上となるブチルゴム等の損失係数の大きな高減衰ゴムや、高減衰性スチレン系エラストマー等の材料によって形成された高減衰部材とされている。
固定ナット67の座面67aと連結部材11の床スラブ側連結部12との間に振動低減部材63を配置することで、上下方向の振動エネルギーを減衰および吸収して消費できる。これにより、振動の総エネルギー量のうち設備機器Wおよび第一固定具10の連結部材11に作用する振動エネルギー量は、振動低減部材63により消費された分だけ低減されるので、設備機器W、第一固定具10および第二固定具50への振動負荷を低減させることができる。
さらに、設備機器Wにロッキング振動が発生した場合であっても、設備機器Wが上方に浮き上がる際に、振動低減部材63が軸方向に圧縮されて振動エネルギーを減衰および吸収して消費できる。したがって、特にロッキング振動により発生する引き抜き荷重を抑制できるので、設備機器W、第一固定具10および第二固定具50の変形や破損等の発生を確実に抑制し、設備機器Wの転倒を確実に防止できる。
【0033】
(第一実施形態の効果)
本実施形態によれば、地震発生等により振動が発生すると、床スラブFから第二固定具50および第一固定具10を介して設備機器Wに振動が伝達しようとするが、第一固定具10の連結部材11と第二固定具50の固定ナット67の座面67aとの間に設けられた振動低減部材63がその振動の振動エネルギーを例えば減衰、吸収によって消費する。これにより、振動の総エネルギー量のうち設備機器W、第一固定具10および第二固定具50に作用する振動エネルギー量は、振動低減部材63により消費された分だけ低減されるので、設備機器W、第一固定具10および第二固定具50への振動負荷を低減させることができる。つまり、減震させることができる。
その結果、設備機器W、第一固定具10および第二固定具50の変形や破損等の発生を抑制することができ、設備機器Wを安定に床スラブFに固定して保護することができる。
【0034】
しかも、振動低減部材63は、第一固定具10の連結部材11と第二固定具50の固定ナット67の座面67aとの間に設けられているので、設備機器Wにロッキング振動が発生し、第一固定具10と第二固定具50との間に引き抜き荷重が発生しても、連結部材11と固定ナット67の座面67aとの間の振動低減部材63が圧縮されて振動エネルギーを消費する。これにより、設備機器W、第一固定具10および第二固定具50へのロッキング振動による振動負荷を特に効果的に低減させることができる。つまり、減震させることができる。
その結果、特に、ロッキング振動に起因する引き抜き荷重による設備機器W、第一固定具10および第二固定具50の変形や破損等の発生を抑制し、設備機器Wの転倒を防止できるので、設備機器Wを安定に床スラブFに固定して保護することができる。
【0035】
(第一実施形態の変形例)
図3は、第一実施形態の第一変形例に係る減震構造体1の説明図である。
第一実施形態の減震構造体1は、設備機器W側に設けられた第一固定具10と、床スラブFに設けられた第二固定具50と、により構成されていた(図2参照)。これに対して第一実施形態の第一変形例に係る減震構造体1は、設備機器W側に設けられた第一固定具10と、床スラブFに設けられた第二固定具50と、第二固定具50を覆うカバー部材75とにより構成されている点で、第一実施形態の減震構造体1とは異なっている。なお、実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0036】
(第二固定具)
図3に示すように、インサートナット51には、棒状の固定ボルト65が螺着されている。本変形例の固定ボルト65は、第一実施形態の固定ボルト65(図2参照)よりも若干長く形成されている。固定ボルト65は、全長のうち1/3程度がインサートナット51に螺着されている。これにより、固定ボルト65は、全長のうち2/3程度が床スラブFの表面から突出した状態で立設される。
【0037】
(振動低減部材)
固定ナット67の座面67aと連結部材11の床スラブ側連結部12との間には、振動低減部材163が配置されている。振動低減部材163は、外径が例えば固定ナット67の座面67aと略同一に形成された円筒状の部材である。振動低減部材163は、ボルト軸Oと同軸に配置されている。
振動低減部材163の軸方向の厚さは、例えば固定ナット67の二倍程度の厚さを有しており、第一実施形態の振動低減部材63(図2参照)よりも十分厚く形成されている。これにより、ロッキング振動により引き抜き荷重が発生した場合に、軸方向に十分に収縮可能となっている。
なお、振動低減部材163と連結部材11の床スラブ側連結部12との間にワッシャー68を配置してもよい。これにより、ロッキング振動により引き抜き荷重が発生した場合に、振動低減部材163の軸方向の下方端面の全体に引き抜き荷重が加わるので、応力が集中するなどして振動低減部材163が破損するのを防止できる。
【0038】
振動低減部材163は、弾性と減衰とを合わせ持つ材料、例えば硬度60〜70度で且つtanδが0.5以上となるブチルゴム等の高減衰ゴムや高減衰性スチレン系エラストマー等の材料によって形成された高減衰部材とされている。固定ナット67の座面67aと連結部材11の床スラブ側連結部12との間に振動低減部材163を配置することで、上下方向の振動エネルギーを減衰および吸収して消費できる。これにより、振動の総エネルギー量のうち設備機器Wおよび第一固定具10の連結部材11に作用する振動エネルギー量は、振動低減部材163により消費された分だけ低減されるので、設備機器W、第一固定具10および第二固定具50への振動負荷を低減させることができる。
【0039】
(カバー部材)
本変形例の減震構造体1は、カバー部材75を備えている。カバー部材75は、主に固定ナット67、振動低減部材163およびワッシャー68を覆っている。
カバー部材75は、例えば、ポリエチレン(polyethylene:PE)やポリプロピレン(polypropylene:PP)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)等の耐候性を有する樹脂により形成されている。
カバー部材75は、有底筒状に形成されており、底部76が上側に配置され、開口77が下側に配置され、筒部78がボルト軸Oと同軸に配置される。
底部76の中央には、上下方向に貫通する貫通孔76aが設けられている。貫通孔76aの直径は、固定ボルト65の直径よりも大きく形成されている。貫通孔76aには、固定ボルト65の上端部65aが挿通されており、底部76から上方に突出している。
【0040】
筒部78の内周面78aの直径は、上下方向で固定ナット67に対応した位置において、固定ナット67の外径よりも小さく形成されている。これにより、固定ナット67、振動低減部材163およびワッシャー68を覆うようにカバー部材75を配置したとき、固定ナット67に筒部78が外嵌されてカバー部材75が固定されるようになっている。
開口77の縁部には、筒部78の全周にわたって径方向外側に張り出す鍔部77aが形成されている。鍔部77aには、不図示の爪部が設けられている。また、連結部材11の床スラブ側連結部12には、鍔部77aの爪部に対応した位置に、不図示の係合孔が設けられている。鍔部77aは、例えばスナップフィットにより連結部材11の床スラブ側連結部12に固定されている。
【0041】
(カバー部材の作用)
図4は、カバー部材75の作用の説明図である。
図4に示すように、設備機器Wにロッキング振動が発生し、設備機器Wが上方に浮き上がると、設備機器Wに取り付けられた連結部材11の床スラブ側連結部12も上方に浮き上がり、振動低減部材163が軸方向に圧縮される。
このとき、連結部材11の床スラブ側連結部12に固定されたカバー部材75も、連結部材11とともに上方に浮き上がる。このため、固定ナット67に対するカバー部材75の筒部78の外嵌状態が解除され、カバー部材75の筒部78の内周面78aは、固定ナット67により径方向外側に押圧される。さらに、底部76の貫通孔76aの内周面は、固定ボルト65の上端部65aにより径方向外側に押圧される。これにより、カバー部材75が変形もしくは破損するようになっている。
【0042】
(第一実施形態の変形例の効果)
本変形例によれば、振動低減部材163が軸方向に厚く形成されているので、特にロッキング振動により引き抜き荷重が発生した場合に、振動低減部材163がボルト軸O方向に十分に収縮できる。したがって、本変形例の振動低減部材163は、振動エネルギーを減衰および吸収して大幅に消費できる。
さらに、本変形例の減震構造体1は、カバー部材75を備え、ロッキング振動により設備機器Wおよび連結部材11が上方に浮き上がったときに、カバー部材75の筒部78の内周面78aが固定ナット67により径方向外側に押圧され、底部76の貫通孔76aの内周面が固定ボルト65の上端部65aにより径方向外側に押圧される。これにより、カバー部材75が変形もしくは破損して、振動エネルギーを減衰および吸収できる。したがって、特にロッキング振動に起因する引き抜き荷重による設備機器W、第一固定具10および第二固定具50の変形や破損等の発生を抑制し、設備機器Wの転倒を防止できるので、設備機器Wを安定に床スラブFに固定して保護することができる。
【0043】
(第二実施形態)
図5は、第二実施形態の減震構造体1の説明図である。なお、図5では、設備機器Wを二点鎖線で図示している。
第一実施形態の減震構造体1は、略L字形状をした連結部材11を備えていた(図2参照)。これに対して、第二実施形態の減震構造体1は、図5に示すように、連結部材211の形状がことなる点および第二振動低減部材263を備えている点で、第一実施形態の減震構造体1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
設備機器Wは、機器ボルト35を備えている。機器ボルト35は、設備機器Wの下面から立設されており、設備機器Wの内部に設けられたナット31に螺着されて設備機器Wに固定されている。
【0044】
(連結部材)
連結部材211は、第二方向L2から見て、下方に開口を有する略U字形状をした板部材であり、例えば鉄やステンレス等の金属により形成されている。
連結部材211は、水平に形成された土台部212と、土台部212の第一方向L1の両側から下方に立設された一対の脚壁部213a,213bとを備えている。
土台部212には、固定ボルト挿通孔212aおよび機器ボルト挿通孔212b(請求項の「ボルト挿通孔」に相当。)が形成されている。
固定ボルト挿通孔212aは、床スラブFから立設された固定ボルト65に対応した位置に形成されている。固定ボルト挿通孔212aの直径は、固定ボルト65が挿通可能なように、固定ボルト65の直径よりも若干大きく形成されている。
【0045】
機器ボルト挿通孔212bは、機器ボルト35に対応した位置に形成されている。機器ボルト挿通孔212bの直径は、機器ボルト35の直径よりも大きく形成され、機器ボルト35に螺着される機器ナット37の座面37aの直径よりも小さく形成されている。設備機器Wを土台部212に載置したとき、機器ボルト挿通孔212bに機器ボルト35が挿通され、土台部212の下面から機器ボルト35の下端部35aが突出した状態で配置される。
【0046】
一対の脚壁部213a,213bは、上下方向に所定の高さを有しており、土台部212に固定される設備機器Wを支持している。一対の脚壁部213a,213bの高さは、床スラブFの表面から立設された固定ボルト65の突出量よりも低くなるように形成され、かつ土台部212から下方に突出した機器ボルト65の突出量よりも高くなるように形成されている。これにより、固定ボルト挿通孔212aに固定ボルト65が挿通されて、土台部212の上面から固定ボルト65の上端部65aが突出するとともに、機器ボルト65が床スラブFと干渉することなく設備機器Wを設置できる。
【0047】
機器ボルト35には、後述する第二振動低減部材263、連結部材211、振動低減部材63の順に挿通されたあと、機器ナット37が螺着される。これにより、連結部材211が設備機器Wに固定されて、第一固定具10が設備機器Wに設けられる。また、機器ナット37の座面37aと連結部材211の土台部212との間には、振動低減部材63が配置される。
固定ボルト65には、連結部材211、振動低減部材63の順に挿通されたあと、固定ナット67が螺着される。これにより、固定ナット67の座面67aと連結部材211の土台部212との間には、振動低減部材63が配置される。そして、設備機器Wは、第一固定具10および第二固定具50を介して床スラブFに固定される。
【0048】
(第二振動低減部材)
機器ボルト35と、連結部材211の機器ボルト挿通孔212bとの間には、略円筒状の第二振動低減部材263がボルト軸Oと同軸に配置されている。
第二振動低減部材263の内径は、機器ボルト35の直径よりも大きく形成されている。これにより、第二振動低減部材263は、機器ボルト35に挿通可能となっている。また、第二振動低減部材263の外径は、機器ボルト挿通孔212bの直径よりも小さく形成されている。これにより、第二振動低減部材263は、土台部212の機器ボルト挿通孔212b内に配置可能となっている。
第二振動低減部材263は、連結部材211の土台部212の厚さよりも厚く形成されている。第二振動低減部材263は、機器ボルト35に機器ナット37が螺着されることにより、設備機器の内部のナット31と振動低減部材63とに挟持されて保持される。
【0049】
図6は、第二振動低減部材263の説明図であり、第二振動低減部材263の中心軸を含む側面断面図である。
図6に示すように、第二振動低減部材263は、径方向に所定の幅を有する内層263aと、内層263aを径方向外側から囲繞する外層263bとを有している。
内層263aは、径方向に例えば5mm程度の幅を有する部材であり、弾性と減衰とを合わせ持つ材料、例えば硬度30〜40度で且つtanδが0.5以上となるブチルゴム等の高減衰ゴムや、高減衰性スチレン系エラストマー等の材料によって形成されている。
外層263bは、径方向に例えば1〜2mm程度の幅を有する部材であり、例えば硬度70度以上で硬く且つ摩擦係数μ=0.4程度の材料により形成されている。外層263bを形成する材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン (Polytetrafluoroethylene、PTFE)等のフッ素系樹脂材料が好適である。
【0050】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態によれば、振動低減部材63は、床スラブF側の固定ナット67の座面67aと連結部材211の土台部212との間に加えて、設備機器W側の機器ナット37の座面37aと連結部材211の土台部212との間にも設けられているので、特にロッキング振動に起因する引き抜き荷重による設備機器W、第一固定具10および第二固定具50の変形や破損等の発生を確実に抑制し、設備機器Wの転倒を確実に防止できる。
【0051】
また、第二振動低減部材263は、内層263aよりも高硬度な外層263bを有しているので、水平方向の振動により設備機器Wと床スラブFとが水平方向に相対移動したとき、第二振動低減部材263の外層263bと連結部材211の機器ボルト挿通孔212bの内周面とが摺接する。これにより、第二振動低減部材263と連結部材211との衝撃力を緩和できるとともに、第二振動低減部材263の外層263bと連結部材211の機器ボルト挿通孔212bの内周面との摩擦によって振動エネルギーを消費できる。したがって、引き抜き方向に加えて水平方向に振動が発生した場合においても、設備機器W、第一固定具10および第二固定具50への振動負荷を低減させることができる。
【0052】
(第二実施形態の各変形例)
図7は、第二実施形態の第一変形例に係る減震構造体1の説明図である。
図8は、第二実施形態の第二変形例に係る減震構造体1の説明図である。なお、図7および図8では、設備機器Wを二点鎖線で図示している。
第二実施形態の減震構造体1は、下方に開口を有する略U字形状をした連結部材211を備えていた(図5参照)。これに対して、第二実施形態の各変形例の減震構造体1は、図7および図8に示すように、連結部材311,411の形状が第二実施形態の減震構造体1の連結部材211とは異なっている。なお、第二実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0053】
(第二実施形態の第一変形例)
図7に示すように、第二実施形態の第一変形例に係る連結部材311は、第二方向L2から見て、略クランク形状に形成されている。
連結部材311は、床スラブFの表面に沿うように形成された床スラブ側連結部312と、設備機器Wの下面に沿うように形成された設備機器側連結部313と、床スラブ側連結部312と設備機器側連結部313とを接続する接続部314とを備えている。
床スラブ側連結部312には、固定ボルト65に対応した位置に固定ボルト挿通孔312aが形成されている。
設備機器側連結部313には、機器ボルト35に対応した位置に機器ボルト挿通孔313a(請求項の「ボルト挿通孔」に相当。)が形成されている。
接続部314の高さは、設備機器Wの下面から立設された機器ボルト35の突出量よりも高くなるように形成される。これにより、機器ボルト35の下端部35aが床スラブFに干渉することなく、床スラブFに設備機器Wを固定できる。
連結部材311を略クランク形状に形成することにより、振動エネルギーの入力に対応して、連結部材311が容易に弾性変形できる。
【0054】
なお、設備機器Wの内部に設けられたナット31と第二振動低減部材263との間に、平滑シート61を設けてもよい。これにより、平滑シート61は、水平方向の振動エネルギーが入力されたときに、ナット31と設備機器Wとの間で適度に滑ることができる。したがって、ナット31と設備機器Wとが相対移動し、床スラブFから設備機器Wへの振動の伝達を抑制できるとともに、摩擦により振動エネルギーを消費できる。
【0055】
(第二実施形態の第二変形例)
図8に示すように、第二実施形態の第二変形例に係る連結部材411は、第二方向L2から見て、第一方向L1における設備機器Wの内側に開口を有する略U字形状に形成されている。
連結部材411は、床スラブFの表面に沿うように形成された床スラブ側連結部412と、設備機器Wの下面に沿うように形成された設備機器側連結部413と、床スラブ側連結部412と設備機器側連結部413とを接続する接続部414とを備えている。
床スラブ側連結部412には、固定ボルト65に対応した位置に固定ボルト挿通孔412aが形成されている。
設備機器側連結部413には、機器ボルト35に対応した位置に機器ボルト挿通孔413a(請求項の「ボルト挿通孔」に相当。)が形成されている。
【0056】
接続部414の高さは、床スラブFの表面から立設された固定ボルト65の突出量と、設備機器側連結部413の下面から突出した機器ボルト35の突出量とを合計した値よりも高くなるように形成されている。これにより、固定ボルト65の上端部65aと機器ボルト35の下端部35aとが互いに干渉することなく、床スラブFに設備機器Wを固定できる。
連結部材411を略U字形状に形成することにより、振動エネルギーの入力に対応して、連結部材411が容易に弾性変形できる。
【0057】
(第二実施形態の各変形例の効果)
第二実施形態の各変形例によれば、連結部材311,411は、振動エネルギーの入力に対応して容易に弾性変形できる。したがって、他の実施形態と同様に、振動低減部材63により、主に上下方向の振動エネルギーを減衰および吸収によって消費し、第二振動低減部材263および平滑シート61により主に水平方向の振動エネルギーを摩擦によって消費するとともに、連結部材311,411の弾性変形により上下方向および水平方向の振動エネルギーを消費できる。これにより、入力された振動エネルギーをさらに効率良く吸収して低減できるので、設備機器Wを安定に床スラブFに固定して保護することができる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
例えば、各実施形態を適宜組み合わせ、各実施形態における振動低減部材63,163および第二振動低減部材263を具備する減震構造体1としても構わない。また、4個の減震構造体1を利用して設備機器Wを床スラブFに支持したが、設備機器Wの種類、用途等に応じて減震構造体1の個数や配置を適宜変更して構わない。
【0060】
連結部材11,211,311,411の形状は、各実施形態および各変形例の形状に限定されない。
また、固定ボルト65および機器ボルト35は棒状の頭部のないボルトとされ、固定ナット67および機器ナット37を螺着することにより設備機器Wを床スラブFに固定していた。これに対して、例えば頭部を有する固定ボルトおよび機器ボルトを螺着し、固定ナット67および機器ナット37を使用せずに設備機器Wを床スラブFに固定してもよい。
【0061】
第一実施形態では、連結部材11と設備機器Wとの間に減震パッド19を設けていたが、減震パッド19を設けなくてもよい。ただし、減震パッド19を設けることにより、水平方向の振動エネルギーを減衰および吸収して消費でき、設備機器Wおよび第一固定具10の連結部材11への振動負荷を低減させることができる点で、第一実施形態に優位性がある。
【0062】
第一実施形態では、インサートナット51と連結部材11との間に平滑シート61を設けていたが、平滑シート61を設けなくてもよい。ただし、平滑シート61を設けることにより、水平方向の振動エネルギーが入力されたときに、適度に滑ることで床スラブFから設備機器Wへの振動の伝達を抑制するとともに、摩擦により振動エネルギーを消費して設備機器W、第一固定具10および第二固定具50への振動負荷を低減させることができる点で、第一実施形態に優位性がある。
【0063】
第二実施形態および第二実施形態の各変形例の減震構造体1では、機器ボルト35と機器ボルト挿通孔212b,313a,413aとの間に第二振動低減部材263が配置されていたが、これに加えて固定ボルト65と固定ボルト挿通孔212a,312a,412aとの間にも第二振動低減部材263が配置されていてもよい。
また、第一実施形態の減震構造体1では、第二振動低減部材263が配置されていなかったが、固定ボルト65と固定ボルト挿通孔12aとの間に第二振動低減部材263が配置されていてもよい。
【0064】
第一実施形態の変形例では、カバー部材75の底部76の中央に貫通孔76aが設けられていたが、貫通孔76aを設けなくてもよい。ただし、底部76の貫通孔76aの内周面が固定ボルト65の上端部65aにより径方向外側に押圧されて、カバー部材75が変形もしくは破損する構成としているので、振動エネルギーを良好に減衰および吸収できる点で、第一実施形態の変形例に優位性がある。
【符号の説明】
【0065】
1・・・減震構造体
10・・・第一固定具
11,211,311,411・・・連結部材
35・・・機器ボルト
37・・・機器ナット
37a・・・機器ナットの座面
50・・・第二固定具
51・・・インサートナット
53・・・雌ネジ孔
55・・・フランジ部
63・・・振動低減部材
65・・・固定ボルト
67・・・固定ナット
67a・・・固定ナットの座面
212b,313a,413a・・・機器ボルト挿通孔(ボルト挿通孔)
263・・・第二振動低減部材
263a・・・内層
263b・・・外層
F・・・床スラブ(床面)
O・・・ボルト軸
W・・・設備機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8