特許第5968695号(P5968695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968695
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】流体圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/028 20060101AFI20160728BHJP
   F15B 3/00 20060101ALI20160728BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20160728BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20160728BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F15B11/028 E
   F15B3/00 F
   F15B11/16 Z
   F15B11/028 D
   F16H61/00
   B60T17/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-143331(P2012-143331)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5914(P2014-5914A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 佳幸
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−100803(JP,A)
【文献】 特開2011−185417(JP,A)
【文献】 特開2000−007292(JP,A)
【文献】 特開2008−232155(JP,A)
【文献】 実開昭61−129901(JP,U)
【文献】 実開昭63−030447(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22,21/14
F15B 3/00
B60T 17/00
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体圧の第1の作動流体により作動する第1の流体圧回路と、
第2の流体圧の第2の作動流体により作動する第2の流体圧回路と、
動力源から供給される動力によって作動し、第1の流体供給部から供給された第1の作動流体を、流体圧を第1の流体圧に変換して吐出する第1の流体圧変換部と、
前記第1の流体圧変換部から吐出された第1の作動流体から受ける流体圧によって作動し、第2の流体供給部から供給された第2の作動流体を、流体圧を第2の流体圧に変換して吐出する第2の流体圧変換部と、
前記第1の流体圧変換部から吐出された第1の流体圧の第1の作動流体を前記第1の流体圧回路に供給する第1の供給路と、
前記第2の流体圧変換部から吐出された第2の流体圧の第2の作動流体を前記第2の流体圧回路に供給する第2の供給路と、
を備え
前記第2の流体圧変換部は、第2の作動流体の流体圧を第1の流体圧よりも低い第2の流体圧に変換することを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項2】
前記第2の流体圧変換部は、面積が互いに異なる受圧面と加圧面を有するピストンがシリンダ内を往復動することにより、第2の作動流体の流体圧を第2の流体圧に変換することを特徴とする請求項1に記載の流体圧制御装置。
【請求項3】
前記第2の供給路は、第2の流体圧を蓄圧可能な蓄圧部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧制御装置。
【請求項4】
前記第2の供給路に設けられた電磁切換弁と、
前記電磁切換弁のオンオフを切り換えるコントローラと、
前記第2の供給路に設けられた圧力センサと、
をさらに備え、
前記蓄圧部は、許容容量に達すると、余剰流体をリリーフ弁からタンクへ排出することができるように構成されており、
前記圧力センサは、前記蓄圧部が許容容量に達して余剰流体をリリーフ弁からタンクへ排出する状態になると、電気信号を前記コントローラに出力するように構成されており、
前記コントローラは、前記圧力センサから前記電気信号が入力されると、前記電磁切換弁への電気信号が遮断されるように構成されており、
前記電磁切換弁は、前記コントローラからの前記電気信号が遮断されることで、中立位置に復帰するように構成されており、
前記蓄圧部は、前記電磁切換弁が中立位置に復帰することにより、蓄圧作業が停止されることを特徴とする請求項3に記載の流体圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧を用いた数多くの制御装置があり、例えば、自動車には種々の油圧制御装置が用いられており、トランスミッション用、ブレーキ用、パワーステアリング用など用途は様々である(特許文献1、2)。これらの油圧制御装置は、それぞれの使用条件の違いから、用いられる油種や油圧が異なる場合が多い。パワーステアリングの回路圧は、トランスミッションやブレーキの回路圧よりも高く設定されるのが一般的であり、また、各油圧制御装置は、基本的には、互いに独立した油圧回路として形成される。しかしながら、油種が共通する装置同士については、増圧装置を用いてそれぞれの系に異なる圧油を供給することで、オイルタンクとオイルポンプを共通化することが可能である(特許文献3)。
【0003】
図6は、オイルタンクとオイルポンプを共通化した従来例に係る油圧制御装置(流体圧制御装置)の油圧回路図である。図6に示す油圧制御装置100は、低圧側油系(低圧回路)101と高圧側油系(高圧回路)102にそれぞれ圧油を供給するものである。オイルポンプ103は、不図示の駆動源によって駆動され、オイルタンク104からオイルを吸上げる。オイルポンプ103から吐出されるオイルは、低圧回路101に供給されるとともに、増圧装置105の低圧側油圧室にも供給される。増圧装置105は、大小異なる内径を有するシリンダ内をピストンが往復動する構成を有している。シリンダの大径の低圧側油室にオイルポンプ103から油圧が供給され、ピストンがシリンダ内を低圧側から高圧側へ移動する。シリンダの小径の高圧側油室にもオイルタンク104からオイルが供給されており、ピストンの移動により高圧側油室の油圧が高められる。この増圧された高圧側油室の油圧がアキュムレータ106に蓄圧され、適宜、高圧回路102に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−520417号公報
【特許文献2】特表2007−534551号公報
【特許文献3】特開2011−185417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油種が違う回路同士は、作動油同士の混合を確実に避けなければならないため、互いに独立した回路構成を採用されるケースが殆どであり、これまで回路構成の共通化について十分に検討されてこなかった。
【0006】
本発明の目的は、作動流体の種類及び作動圧が互いに異なる流体圧回路における効果的な回路構成の共通化を図ることができる流体圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における流体圧制御装置は、
第1の流体圧の第1の作動流体により作動する第1の流体圧回路と、
第2の流体圧の第2の作動流体により作動する第2の流体圧回路と、
動力源から供給される動力によって作動し、第1の流体供給部から供給された第1の作動流体を、流体圧を第1の流体圧に変換して吐出する第1の流体圧変換部と、
前記第1の流体圧変換部から吐出された第1の作動流体から受ける流体圧によって作動し、第2の流体供給部から供給された第2の作動流体を、流体圧を第2の流体圧に変換して吐出する第2の流体圧変換部と、
前記第1の流体圧変換部から吐出された第1の流体圧の第1の作動流体を前記第1の流体圧回路に供給する第1の供給路と、
前記第2の流体圧変換部から吐出された第2の流体圧の第2の作動流体を前記第2の流体圧回路に供給する第2の供給路と、
を備え
前記第2の流体圧変換部は、第2の作動流体の流体圧を第1の流体圧よりも低い第2の流体圧に変換することを特徴とする流体圧制御装置。
【0008】
本発明によれば、作動するための流体圧が互いに異なる二つの流体圧回路を一つの動力源で動かすことができる。また、二つの作動流体は互いに独立した流体回路でそれぞれ使用される。すなわち、作動流体の種類及び流体圧が互いに異なる二つの流体圧回路の間で回路構成の共通化を図ることができる。
【0009】
前記第2の流体圧変換部は、第2の作動流体の流体圧を第1の流体圧よりも低い第2の流体圧に変換するとよい。
【0010】
これにより、第1の流体圧回路を高流体圧回路、第2の流体圧回路を低流体圧回路とする構成において、動力源の共通化を図ることができる。
【0011】
前記第2の流体圧変換部は、第2の作動流体の流体圧を第1の流体圧よりも高い第2の流体圧に変換するとよい。
【0012】
これにより、第1の流体圧回路を低流体圧回路、第2の流体圧回路を高流体圧回路とする構成において、動力源の共通化を図ることができる。
【0013】
前記第2の流体圧変換部は、面積が互いに異なる受圧面と加圧面を有するピストンがシリンダ内を往復動することにより、第2の作動流体の流体圧を第2の流体圧に変換するとよい。
【0014】
すなわち、第2の流体圧変換部として、ピストンの受圧面と加圧面の面積比とパスカルの定理に基づいて機械的に流体圧を変換(増圧又は減圧)することが可能な従来周知の圧力変換器を用いることができる。
【0015】
ここで、特に、高圧の第1の流体圧を使って低圧の第2の流体圧を供給する構成においては、少ない動力でより多くの第2の流体圧を供給することが可能となる。すなわち、第1の流体圧回路が高流体圧回路、第2の流体圧回路が低流体圧回路であり、第2の流体圧変換部が第2の作動流体の流体圧を減圧によって第2の流体圧に変換する構成においては、圧力変換器における受圧側の流体室への流入量に対し、加圧側の流体室からの流出量が多くなる。したがって、高流体圧回路の少ない仕事で低流体圧回路に十分な動力を提供することができる。
【0016】
前記第2の供給路は、第2の流体圧を蓄圧可能な蓄圧部を備えるとよい。
【0017】
これにより、第1の流体圧回路の作動によって発生する第2の流体圧を必要に応じて利用することが可能となる。
【0018】
ここで、特に、高圧の第1の流体圧を使って低圧の第2の流体圧を供給する構成においては、少ない動力でより多く供給される第2の流体圧を有効利用することが可能となる。
すなわち、第1の流体圧回路が高流体圧回路、第2の流体圧回路が低流体圧回路であり、第2の流体圧変換部が第2の作動流体の流体圧を減圧によって第2の流体圧に変換する構成においては、圧力変換器における受圧側の流体室への流入量に対し、加圧側の流体室からの流出量が多くなる。したがって、低流体圧回路の駆動のために、高流体圧回路を駆動させる回数、つまり、第1の流体圧変換部を駆動させるために動力源から動力の供給を受ける回数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、作動流体の種類及び作動圧が互いに異なる流体圧回路における効果的な回路構成の共通化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1に係る流体圧制御装置の油圧回路図
図2】本発明の実施例1における高圧発生装置及び切換手段の1例を示す図
図3】本発明の実施例1における高圧発生装置及び切換手段の他の例を示す図
図4】本発明の実施例2に係る流体圧制御装置の油圧回路図
図5】本発明の実施例2における低圧発生装置及び切換手段を示す図
図6】従来例に係る流体圧制御装置の油圧回路図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
<実施例1>
(油圧制御装置の概略構成)
図1は、本発明の実施例1に係る油圧制御装置(流体圧制御装置)の油圧回路図である。本実施例に係る油圧制御装置は、概略、第1の流体圧回路としての低圧側油圧被供給回路1Lを含む油圧回路Aと、第2の流体圧回路としての高圧側油圧被供給回路9Hを含む油圧回路Bと、を有している。尚、低圧側油圧被供給回路1Lに他方の回路よりも低圧の流体が供給されると低圧側油圧被供給回路1Lは低流体圧回路として機能し、高圧側油圧被供給回路9Hに他方の回路よりも高圧の流体が供給されると高圧側油圧被供給回路9Hは高流体圧回路として機能する。
【0023】
油圧回路Aと油圧回路Bは、互いに油種及び作動油圧が異なる回路である。例えば、自動車の場合には、トランスミッション、ブレーキ、パワーステアリングなどにおける油圧回路が挙げられる。使用される作動油としては、例えば、ミッションオイル、エンジンオイル、ブレーキフルード、PSF、ATFなどが挙げられ、用途としては、潤滑、洗浄、冷却、動力伝達など様々である。普通乗用車以外では、例えば、トラック、油圧ショベル、フォークリフト、クレーン、ごみ収集車等における種々の油圧装置に適用可能である。なお、本発明を適用可能な油圧制御装置は、これらに限定されない。
【0024】
油圧回路Aは、タンク4(第1の流体供給部)に貯蔵された油(第1の作動流体)で作動する。油圧回路Aでは、エンジンや電動モータなどの駆動機構2(動力源)によって油圧ポンプ3(第1の流体圧変換部)を駆動し、油圧ポンプ3がタンク4から油を吸い上げて下流側へ吐出する。なお、駆動機構2としては、車両における他の機構の動力源も兼ねたものでもよいし、油圧制御装置の専用の動力源であってもよい。油圧ポンプ3から吐出される油は、一部が管路5(第1の供給路)を介して低圧側油圧被供給回路1Lに流入する。低圧側油圧被供給回路1Lに供給されない余剰油は、管路5から分岐した管路6、ポ
ンプ逃し弁7、管路8を介して、タンク4に排出(回収)される。なお、ポンプ逃し弁7は、回路に必要な圧力を確保するために、所定の圧力に設定されている。
【0025】
油圧回路Aと油圧回路Bとの間には、高圧発生装置10M(第2の流体圧変換部)が設けられている。油圧回路Aと高圧発生装置10Mとの間には、管路5から分岐した信号管路11、13が切換弁12を介して接続されている。切換弁12は、その中立位置において、管路11と管路13を遮断し、管路13を管路14と導通させ、高圧発生装置10Mの低圧側油室をタンク4と導通させる。後述する切換手段により切換弁12が切り換わると、管路11と管路13が導通すると同時に、管路13と管路14が遮断される。
【0026】
油圧回路Bは、タンク4に貯蔵された油とは油種が異なるタンク15(第2の流体供給部)に貯蔵された油(第2の作動流体)で作動する。タンク15の油は、管路16、17、逆止弁18を介して高圧発生装置10Mに取り込まれ、後述する作動原理によってタンク圧から油圧回路Aの作動油圧よりも高い油圧に変換され、第2の供給路としての逆止弁19、管路20、21を介してアキュムレータ22(蓄圧部)に蓄圧される。アキュムレータ22と高圧側油圧被供給回路9Hとの間には、電磁切換弁23が設けられている。電磁切換弁23は、いわゆるノーマルクローズ型の2ポート2位置型電磁切換弁であり、後述するコントローラ24から電気信号を受け取ることにより切り換わる。電離切換弁23が切り換わることにより、アキュムレータ22に蓄圧された圧油は、逆止弁を介して高圧側油圧被供給回路9Hに供給される。なお、高圧発生装置10Mによって油圧が変換された作動油のうち、アキュムレータ22に蓄圧されない余剰油は、管路20から分岐する管路26、リリーフ弁27、管路28を介してタンク15に排出(回収)される。
【0027】
(高圧発生装置)
図2は、本実施例における高圧発生装置10M及び切換手段の1例を示す図である。高圧発生装置10Mは、シリンダ内を往復動するピストンの受圧面と加圧面の面積比とパスカルの定理に基づいて機械的に流体圧を変換する従来周知の圧力変換器である。なお、高圧発生装置の「高圧」とは、油圧回路Bの作動油圧を油圧回路Aの作動油圧よりも高い油圧に変換することを意味する。
【0028】
高圧発生装置10Mは、ケース10M−1(シリンダ)内にピストン10M−2が内封されており、ピストン10M−2がケース10M−1内を往復動する。ケース10M−1は、小径部と大径部を有しており、ピストン10M−2は、ケース10M−1の小径部の内周壁と摺動する小径部と、ケース10M−1の大径部の内周壁と摺動する大径部と、を有している。ピストン10M−2の大径部の外周部には、環状の装着溝が設けられており、該装着溝に取り付けられたシール部材29が、大径部外周の隙間を介しての低圧部から高圧部への油の浸入等を防止する役目を果たしている。
【0029】
ピストン10M−2がケース10M−1の低圧側の端部10M−1aに押接された状態において、ピストン10M−2の大径部側の端面10M−2a(受圧面)に加わる負荷圧がスプリング10M−4の付勢力に勝ると、ピストン10M−2がスプリング10M−4の付勢力に抗して高圧側に動き出し、ピストン10M−2の小径部側の端面10M−2a(加圧面)がケース10M−1のストッパ部10M−1bに当たるまで、図の左方に移動する。
【0030】
ケース10M−1の大径部と小径部との間の段差部と、ピストン10M−2の大径部と小径部との間の段差部との間には、環状のドレン室10M−7が形成されている。より詳しくは、ドレン室10M−7は、ケース10M−1の大径部内壁の一部と、ケース10M−1の大径部と小径部との間の段差面と、ピストン10M−2の大径部の小径部側端面と、ピストン10M−2の小径部の外周面の一部と、により形成されている。ドレン室10
M−7は、管路30を介してタンク15に接続されている。
【0031】
ここで、
S1:ピストン10M−2の大径部の断面積(端面10M−2aの面積)
S2:ピストン10M−2の小径部の断面積(端面10M−2bの面積)
F1:ピストン10M−2がケース10M−1の端部10M−1aに押圧されているときのスプリング10M−4の付勢力
P1x:ピストン10M−2がケース10M−1の端部10M−1aに押圧されているときのピストン端面10M−2aへの負荷圧
P2x:ピストン10M−2がケース10M−1の端部10M−1aに押圧されているときのピストン端面10M−2bへの負荷圧
F2:ピストン10M−2がケース10M−1のストッパ部10M−1bに押圧されているときのスプリング10M−4の付勢力
P1y:ピストン10M−2がケース10M−1のストッパ部10M−1bに押圧されているときのピストン端面10M−2aへの負荷圧
P2y:ピストン10M−2がケース10M−1のストッパ部10M−1bに押圧されているときのピストン端面10M−2bへの負荷圧
とすると、下記2式が成り立つ。
P2x・S2+F1≧P1x・S1 … (式1)
P2y・S2+F2≦P1y・S1 … (式2)
【0032】
(高圧発生装置の切換手段)
スイッチSWを入れると、コントローラ24から電磁切換弁12に電気信号が入力され(ON状態)、電磁切換弁12が切り換わり、管路11と管路13が接続される。これにより、油圧回路Aの油圧ポンプ3からの圧油Pp(≧P1y)が高圧発生装置10Mのピストン端面10M−2aに負荷される。式2より、ピストン10M−2は、ケース10M−1のストッパ部10M−1bに当たるまで図の左方に移動する。これにより、小径部油室10M−3内の油は逆止弁19、管路20を通ってアキュムレータ22に押し込められる。ここで、S1をS2に比べ十分に大きな値にすることでパスカルの定理により、アキュムレータ22への押し込み圧力は十分に高い圧力とすることが可能である。
【0033】
予めコントローラ24に組み込まれている演算回路により、電磁切換弁12への電気信号が遮断されると、電磁弁のソレノイドが消磁状態となってスプリング付勢力により中立位置に復帰する。電磁切換弁12が中立位置に復帰すると、前述のとおり、管路13と管路14が導通し、ピストン端部10M−2aへの負荷圧がタンク圧となる。式1より、ピストン10M−2は、スプリング10M−4の付勢力によって、ケース10M−1内の端部10M−1aに当たるまで図の右方に移動する。これにより、小径部油室10M−3内にタンク15から管路16、17、逆止弁18を通って油が吸引される。
【0034】
再び予めコントローラ24に組み込まれている演算回路により、電磁切換弁12への電気信号が入力されると電磁切換弁12が切り換わり、上述のとおり、油圧が変換された油が再びアキュムレータ22に押し込められる。
【0035】
以上のように、電磁切換弁12のON/OFFが繰り返されることにより、所謂、高圧発生装置によるアキュムレータへの蓄圧作業が行われる。なお、上記アキュムレータ22への蓄圧が連続して行われることによりアキュムレータ22内の圧油が許容容量に達し、余剰油がリリーフ弁27からタンク15へ排出されるような状態となると、管路20上に設置されている圧力センサ32からの電気信号がコントローラ24に入力される。この場合、予めコントローラ24に組み込まれている演算回路により電磁切換弁12への電気信号が遮断され、電磁切換弁12が中立位置に復帰し、管路12、13が遮断され、上記蓄
圧作業が停止される。
【0036】
図3は、高圧発生装置10M及び切換手段の他の例を示す図である。図2に示す高圧発生装置と異なり、図3に示す高圧発生装置10Mは、ピストン10M−2の小径部油室10M−3がドレン室として機能し、管路30を介してタンク15に接続されている。また、段差部における油室10M−7が逆止弁19、管路20に接続しているとともに、逆止弁18、管路17に接続している。したがって、図2に示す高圧発生装置と異なり、式1、式2におけるS2が、ピストン段差端面10M−2cの面積となる。その他の構成については、基本的に図2に示す高圧発生装置と同じであり、説明を省略する。
【0037】
(本実施例の優れた点)
本実施例によれば、作動するための油圧が互いに異なる二つの油圧回路を一つの動力源で動かすことができる。また、二つの作動油は互いに独立した油圧回路でそれぞれ使用される。すなわち、油種及び油圧が互いに異なる二つの油圧回路の間で回路構成の共通化を図ることができる。
【0038】
<実施例2>
図4は、本発明の実施例2に係る油圧制御装置(流体圧制御装置)の油圧回路図である。以下では、実施例1と異なる点についてのみ説明する。ここで説明しない構成については、基本的に実施例1と同様であり、実施例1と同じ符号を付して説明は省略する。
【0039】
(油圧制御装置の概略構成)
本実施例に係る油圧制御装置は、概略、第1の流体圧回路としての高圧側油圧被供給回路(以下、高流体圧回路)1Hを含む油圧回路Cと、第2の流体圧回路としての低圧側油圧被供給回路(以下、低流体圧回路)9Lを含む油圧回路Dと、を有している。また、油圧回路Cと油圧回路Dとの間に第2の流体圧変換部としての低圧発生装置10Rが設けられている。
【0040】
(低圧発生装置)
図5は、本発明の実施例2における低圧発生装置及び切換手段を示す図である。低圧発生装置10Rは、シリンダ内を往復動するピストンの受圧面と加圧面の面積比とパスカルの定理に基づいて機械的に流体圧を変換する従来周知の圧力変換器である。なお、低圧発生装置の「低圧」とは、油圧回路Dの作動油圧を油圧回路Cの作動油圧よりも低い油圧に変換することを意味する。
【0041】
低圧発生装置10Rは、ケース10R−1(シリンダ)内にピストン10R−2が内封されており、ピストン10R−2がケース10R−1内を往復動する。ケース10R−1は、小径部と大径部を有しており、ピストン10R−2は、ケース10R−1の小径部の内周壁と摺動する小径部と、ケース10R−1の大径部の内周壁と摺動する大径部と、を有している。ピストン10R−2の小径部の外周部には、環状の装着溝が設けられており、該装着溝に取り付けられたシール部材29が、小径部外周の隙間を介しての高圧部から低圧部への油の浸入等を防止する役目を果たしている。
【0042】
ピストン端面10R−2aへの負荷圧が低い状態では、ピストン10R−2はスプリング10R−4の付勢力により、ピストン10R−2がケース10R−1内の端部10R−1a部に押接されている。ピストン端面10R−2a(受圧面)に負荷圧がかかり、ピストン10R−2がスプリング10R−4の付勢力に抗してピストン端面10R−2b(加圧面)がケース10R−1のストッパ部10R−1bに当たるまで、図の左方に移動する。
【0043】
ケース10R−1の大径部と小径部との間の段差部と、ピストン10R−2の大径部と小径部との間の段差部との間には、ドレン室10R−7が形成されている。ドレン室10R−7は、管路30を介してタンク15に接続されている。
【0044】
ここで、
S1:ピストン10R−2の小径部の断面積(端面10R−2aの面積)
S2:ピストン10R−2の大径部の断面積(端面10R−2bの面積)
F1:ピストン10R−2がケース10R−1の端部10R−1aに押圧されているときのスプリング10R−4の付勢力
P1x:ピストン10R−2がケース10R−1の端部10R−1aに押圧されているときのピストン端面10R−2aへの負荷圧
P2x:ピストン10R−2がケース10R−1の端部10R−1aに押圧されているときのピストン端面10R−2bへの負荷圧
F2:ピストン10R−2がケース10R−1のストッパ部10R−1bに押圧されているときのスプリング10R−4の付勢力
P1y:ピストン10R−2がケース10R−1のストッパ部10R−1bに押圧されているときのピストン端面10R−2aへの負荷圧
P2y:ピストン10M−2がケース10R−1のストッパ部10R−1bに押圧されているときのピストン端面10R−2bへの負荷圧
とすると、実施例1の図2に図示した高圧発生装置と同様、式1、式2の2式が成り立つ。
【0045】
(低圧発生装置の切換手段)
スイッチSWを入れると、コントローラ24から電磁切換弁12に電気信号が入力され(ON状態)、電磁切換弁12が切り換わり、管路11と管路13が接続される。これにより、油圧回路Cの油圧ポンプ3からの圧油Pp(≧P1y)が低圧発生装置10Rのピストン端面10R−2aに負荷される。式2より、ピストン10R−2は、ケース10R−1のストッパ部10R−1bに当たるまで図の左方に移動する。これにより、大径部油室10R−3内の油は逆止弁19、管路20を通ってアキュムレータ22に押し込められる。ここで、S1をS2に比べ十分に小さい値にすることでパスカルの定理により、アキュムレータ22への押し込み圧力は十分に低い圧力とすることが可能である。
【0046】
予めコントローラ24に組み込まれている演算回路により、電磁切換弁12への電気信号が遮断されると、電磁弁のソレノイドが消磁状態となってスプリング付勢力により中立位置に復帰する。電磁切換弁12が中立位置に復帰すると、前述のとおり、管路13と管路14が導通し、ピストン端部10R−2aへの負荷圧がタンク圧となる。式1より、ピストン10R−2は、スプリング10R−4の付勢力によって、ケース10R−1内の端部10R−1aに当たるまで図の右方に移動する。これにより、大径部の油室10R−8内にタンク15から管路16、17、逆止弁18を通って油が吸引される。
【0047】
再び予めコントローラ24に組み込まれている演算回路により、電磁切換弁12への電気信号が入力されると電磁切換弁12が切り換わり、上述のとおり、油圧が変換された油が再びアキュムレータ22に押し込められる。
【0048】
以上のように、電磁切換弁12のON/OFFが繰り返されることにより、所謂、低圧発生装置によるアキュムレータへの蓄圧作業が行われる。なお、上記アキュムレータ22への蓄圧が連続して行われることによりアキュムレータ22内の圧油が許容容量に達し、余剰油がリリーフ弁27からタンク15へ排出されるような状態になると、管路20上に設置されている圧力センサ32からの電気信号がコントローラ24に入力される。この場合、予めコントローラ24に組み込まれている演算回路により電磁切換弁12への電気信
号が遮断され、電磁切換弁12が中立位置に復帰し、管路12、13が遮断され、上記蓄圧作業が停止される。
【0049】
(本実施例の優れた点)
本実施例によれば、実施例1と同様、油種及び油圧が互いに異なる二つの油圧回路の間で回路構成の共通化を図ることができる。すなわち、それぞれ油種の異なる油が使用されている一方の高圧油圧回路の油圧ポンプからの油圧を油圧源とする低圧発生装置を利用し、アキュムレータに蓄圧された圧油を投入させるようにすることで、他方の低圧油圧回路に油が混入されることなく、従来技術のように他方の低圧油圧回路における油圧ポンプを廃止することができる。したがって、油圧源を必要最小限にすることができ、省エネや省スペース化、低コスト化を図ることができる。
【0050】
また、高圧の油圧を使って低圧の油圧を供給する構成においては、少ない動力でより多くの低圧の油圧を供給することが可能となる。すなわち、低圧発生装置における受圧側の流体室への作動流体の流入量に対し、加圧側の流体室からの流出量が多くなる。したがって、高流体圧回路の少ない仕事で低流体圧回路に十分な動力を提供することができる。
【0051】
また、アキュムレータを設けることで、少ない動力でより多く供給される低圧の油圧の有効利用を図ることができる。したがって、低流体圧回路の駆動のために、高流体圧回路を駆動させる回数、つまり、低圧発生装置を駆動させるために油圧ポンプを駆動させる回数を減らすことができ、更なる省エネを図ることができる。
【0052】
<その他>
上記各実施例では、作動流体として、油種の異なる油を例に挙げて説明したが、油以外の液体(流体)を用いる流体圧制御装置においても本発明が適用できることは言うまでもない。また、圧力変換器の構成も、上記実施例のようなピストン、シリンダによる構成に限定されるものではない。
【0053】
また、上記各実施例では、第2の流体圧回路(油圧回路B、D)における作動流体の流体圧は、タンク圧から作動油圧への変換となるため、第2の流体圧変換部(高圧発生装置10M、低圧発生装置10R)による第2の作動流体の流体圧の変換は、いずれの実施例でも「増圧」となる。
【符号の説明】
【0054】
1L 低流体圧回路(第1の流体圧回路)
2 駆動機構(動力源)
3 油圧ポンプ(第1の流体圧変換部)
4 タンク(第1の流体供給部)
9H 高流体圧回路(第2の流体圧回路)
10M 高圧発生装置(第2の流体圧変換部)
15 タンク(第2の流体供給部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6