特許第5968699号(P5968699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968699
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ウォータポンプ
(51)【国際特許分類】
   F01P 5/12 20060101AFI20160728BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F01P5/12 Z
   F01P5/12 A
   F04D13/06 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-150590(P2012-150590)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-13010(P2014-13010A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 健作
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−187515(JP,A)
【文献】 特開2005−325823(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0306005(US,A1)
【文献】 特開2002−106462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00 − 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられ、冷却水を循環させるためのウォータポンプであって、
前記冷却水を圧送するためのインペラを有するポンプ部と、
前記インペラに連結された回転軸を回転駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記駆動部は、ポンプ駆動源として機械的駆動手段及び電気的駆動手段を有し、
前記制御部は、前記車両のエンジン回転数及び燃料噴射量に基づいて、前記機械的駆動手段と前記電気的駆動手段とを切り換え
前記電気的駆動手段は、通電したコイルと磁石との間に生じる電磁力により前記回転軸を回転させ、
前記機械的駆動手段は、
前記車両のエンジンの回転に連動して回転するプーリと、
一端側が前記回転軸に固定され、他端側が前記プーリに押しつけられることで前記プーリの回転を前記回転軸に伝達する伝達部と、を有し、
前記制御部は、前記コイルに通電することで電磁力により前記伝達部の前記他端側を前記プーリから離間させると共に、前記コイルの通電により生じる前記電磁力で前記回転軸を回転させることで、前記機械的駆動手段から前記電気的駆動手段に切り換えることを特徴とするウォータポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられ、冷却水を循環させるウォータポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォータポンプに関する技術文献としては、例えば特表2011−518283号公報が知られている。この公報には、機械的駆動手段と電子モータ駆動手段とを備えたクーラントポンプであって、クラッチにより機械的駆動手段と電子モータ駆動手段とを切換可能なものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−518283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特表2011−518283号公報には、ポンプの吐出量制御について十分な説明がなく、吐出量制御性の高いポンプ構成について何ら開示がない。このため、ウォータポンプの吐出量制御について改善の余地が多く存在する。
【0005】
そこで、本発明は、小型で吐出量制御性が高く、車両の燃費向上を図ることができるウォータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、車両に備えられ、冷却水を循環させるためのウォータポンプであって、冷却水を圧送するためのインペラを有するポンプ部と、インペラに連結された回転軸を回転駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、を備え、駆動部は、ポンプ駆動源として機械的駆動手段及び電気的駆動手段を有し、制御部は、車両のエンジン回転数及び燃料噴射量に基づいて、機械的駆動手段と電気的駆動手段とを切り換え、電気的駆動手段は、通電したコイルと磁石との間に生じる電磁力により回転軸を回転させ、機械的駆動手段は、車両のエンジンの回転に連動して回転するプーリと、一端側が回転軸に固定され、他端側がプーリに押しつけられることでプーリの回転を回転軸に伝達する伝達部と、を有し、制御部は、コイルに通電することで電磁力により伝達部の他端側をプーリから離間させると共に、コイルの通電により生じる電磁力で回転軸を回転させることで、機械的駆動手段から電気的駆動手段に切り換えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るウォータポンプによれば、ポンプ駆動源を機械的駆動手段と電気的駆動手段とに切り換え可能なので、従来のエンジンの回転のみをポンプ駆動源とする場合と比べて、電気的駆動手段によりポンプ吐出量を適切に制御してポンプが仕事過剰となることが避けられ、車両の燃費向上を図ることができる。また、このウォータポンプによれば、大きなポンプ吐出量が必要となる時は機械的駆動手段を用いることで、電気的駆動手段のみをポンプ駆動源とする場合と比べて、ポンプ吐出量増大に対応するために電気的駆動手段を大型化させる必要がなく、ポンプの小型化に有利である。従って、このウォータポンプによれば、小型でありながら高い吐出量制御性を実現することができ、車両の燃費向上を図ることができる。
【0009】
また、このウォータポンプによれば、エンジンが高回転数かつ高負荷の場合は機械的駆動機構を用い、それ以外の場合は電気的駆動手段を用いるなどにより、小型でありながら高い吐出量制御性を実現して、車両の燃費向上を図ることができる。
【0011】
更に、このウォータポンプによれば、コイルに通電するだけで機械的駆動手段から電気的駆動手段への切り換えを実現することができ、駆動部の構成を簡素化できると共にポンプ制御を容易にすることができる。しかも、このウォータポンプでは、何らかの故障によりコイルへの通電が不能となった場合であっても、コイルに引き付けられていた伝達部の他端が復帰してプーリに押しつけられることで機械的駆動手段へ切り換えられ、エンジン回転によりウォータポンプを駆動させることができる。従って、このウォータポンプによれば、コイルへの通電異常など電気系統に異常があった場合であっても、自動的に機械的駆動機構に切り替わってウォータポンプを駆動するので、冷却水の循環が停止してエンジン故障を招く事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型で吐出量制御性が高く、車両の燃費向上を図ることができるウォータポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るウォータポンプの一実施形態を示す断面図である。
図2】電気的駆動機構への切り換えを説明するための断面図である。
図3】従来のウォータポンプの吐出量制御を説明するためのグラフである。
図4】エンジンが低負荷状態又は中負荷状態の場合におけるウォータポンプの吐出量制御を説明するためのグラフである。
図5】エンジンが高負荷状態の場合におけるウォータポンプの吐出量制御を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示すウォータポンプ1は、例えばトラックなどの車両に備えられ、ディーゼルエンジン用の冷却水を循環させるためのポンプである。ウォータポンプ1は、ディーゼルエンジン全体を制御するエンジン制御部Eによって制御されている。なお、ウォータポンプ1は、ディーゼルエンジンの他、ガソリンエンジンその他の内燃機関に対して備えてもよい。
【0016】
ウォータポンプ1は、冷却水を圧送するためのインペラ4を有するポンプ部2と、インペラ4に連結されたシャフト(回転軸)5を回転駆動する駆動部3と、を有している。図1にシャフト5の中心軸Cを示す。
【0017】
ポンプ部2は、複数のベーン4aを備えるインペラ4と、冷却水の流路を形成するポンプハウジング6と、から構成されている。ポンプハウジング6内には、インペラ4の他、シャフト5を回転自在に支持する円筒状のシャフトベアリング7と、シャフト5回りを封止するための環状のシール部材8が設けられている。
【0018】
駆動部3は、ポンプ駆動源として、シャフト5を機械的に回転駆動するための機械的駆動機構(機械的駆動手段)10と、シャフト5を電気的に回転駆動するための電気的駆動機構(電気的駆動手段)11と、を有している。
【0019】
機械的駆動機構10は、図示しないエンジンの回転(クランクシャフトの回転)に連動して回転するプーリ12と、プーリ12の回転をシャフト5に伝達するための複数の伝達部13と、を備える機構である。
【0020】
プーリ12は、その外周に掛けられたエンジンベルト14を通じて車両のエンジンの回転が伝達されることにより回転する。プーリ12の中央には、シャフト5を回転自在に支持する環状のボールベアリング15が設けられている。また、プーリ12の内側には、伝達部13と接触する摩擦パッド16が配置されている。
【0021】
伝達部13は、例えばシャフト5を中心として所定角度ごとに複数設けられた長尺の部材であり、一端側がシャフト5に固定されると共に他端側がプーリ12に当接することでプーリ12の回転をシャフト5に伝達する。伝達部13は、シャフト固定部17、板バネ18、アーマチュア19を有している。
【0022】
シャフト固定部17は、板バネ18の一端側をシャフト5に固定する部位である。シャフト固定部17は、シャフト5に対して固定されており、ネジ17aによって板バネ18を挟み込むことで、板バネ18の一端側を固定している。
【0023】
板バネ18は、シャフト5の径方向に延在する長尺の板バネである。板バネ18は、その他端に固定されたアーマチュア19をプーリ12に向かって付勢している。
【0024】
アーマチュア19は、板バネ18の他端側に設けられ、板バネ18の付勢によりアーマチュア19の摩擦パッド16に押しつけられる部位である。アーマチュア19は、摩擦パッド16との間に生じる摩擦力によりプーリ12の回転をシャフト5に伝達する。摩擦パッド16は、適切な摩擦力を生じさせるため、樹脂その他の適切な素材から形成されている。アーマチュア19は、金属製のボルト・ナット20によって板バネ18の他端側に固定されている。なお、アーマチュア19には、摩擦パッド16との間の摩擦力を増加させるため表面に凹凸などを形成してもよく、表面に摩擦力の高い材料からなる層を形成してもよい。
【0025】
電気的駆動機構11は、通電したコイル21と磁石22との間に生じる電磁力より、シャフト5を回転駆動させる機構である。電気的駆動機構11は、ポンプハウジング6に固定されたコイル21と、シャフト5に固定された環状の磁石22と、を有している。コイル21及び磁石22は耐久性向上のため樹脂モールドされている。
【0026】
環状の磁石22は、シャフト5を中心としてシャフト5側面に沿って設けられており、コイル21は環状の磁石22を囲むように設けられている。コイル21及び磁石22は、シャフト5の径方向で対向しており、コイル21が固定子、磁石22が可動子として機能する。また、コイル21は、上述した機械的駆動機構10の伝達部13の他端側(板バネ18の他端側)とシャフト5の中心軸Cの延在方向で対向するように配置されている。
【0027】
コイル21への通電は、エンジン制御部Eによって制御されている。なお、コイル21への通電時には、故障検知のため、微弱電流をコイル21側から戻す制御としている。
【0028】
以上の構成を有するウォータポンプ1では、コイル21の通電の有無により、ポンプ駆動源を機械的駆動機構10又は電気的駆動機構11に切り換えることができる。すなわち、このウォータポンプ1では、図1に示されるように、コイル21が通電されない場合、板バネ18の付勢により伝達部13のアーマチュア19がプーリ12の摩擦パッド16に押しつけられる。これにより、車両のエンジンと連動して回転するプーリ12の回転が伝達部13を通じて機械的に伝達され、機械的駆動機構10によるシャフト5の回転駆動が行われる。
【0029】
一方、このウォータポンプ1では、図2に示されるように、コイル21が通電されると、伝達部13のアーマチュア19が電磁的にコイル21へ引き付けられることで、伝達部13がプーリ12から離間し、プーリ12の回転がシャフト5に伝達されなくなる。同時に、コイル21の通電により、コイル21と磁石22との間に電磁力が生じ、電気的駆動機構11によるシャフト5の回転駆動が行われる。なお、アーマチュア19は、コイル21の通電により十分な力でコイル21に引き付けられるよう適切な材料及び構成を有している。
【0030】
その後、コイル21への通電を停止すると、電磁力が消滅して電気的駆動機構11によるシャフト5の回転駆動が停止すると共に、伝達部13において板バネ18の復元力によりアーマチュア19がプーリ12の摩擦パッド16に押しつけられ、再びプーリ12の回転が伝達されて機械的駆動機構10によるシャフト5の回転駆動が行われる。すなわち、伝達部13は、ポンプ駆動源を切り換えるクラッチ機構として機能する。
【0031】
次に、本実施形態に係るウォータポンプ1におけるポンプ駆動源の切り換え制御について説明する。本実施形態に係るウォータポンプ1では、エンジン制御部Eにより機械的駆動機構10と電気的駆動機構11との切り換えが行われる。
【0032】
ここで、図3は、従来のウォータポンプの吐出量制御を説明するためのグラフである。図3では、エンジン回転のみをポンプ駆動源とするウォータポンプのポンプ吐出量Vを太線で示す。図3に示されるように、エンジン回転のみをポンプ駆動源とするウォータポンプでは、そのポンプ吐出量Vはエンジン回転数に比例して増加する。
【0033】
一方で、エンジンの負荷状態によりウォータポンプ1に求められる冷却水の必要吐出量は異なる。図3において、エンジンの全負荷状態(最大の負荷状態)の必要吐出量を丸のプロット、エンジンの中負荷状態(最大の半分の負荷状態)の必要吐出量を三角のプロット、エンジンの低負荷状態(最大の四分の一の負荷状態)の必要吐出量を四角のプロットとして示す。図3に示すように、従来のウォータポンプでは、太線で示すポンプ吐出量Vと各プロットの差分が余分な仕事となり、車両の燃費悪化を招いていた。
【0034】
これに対して、本実施形態に係るウォータポンプ1のエンジン制御部Eは、エンジン状態に応じて必要吐出量を演算し、必要吐出量が電気的駆動機構11の限界吐出量Peを超えない場合、電気的駆動機構11をポンプ駆動源として利用する。
【0035】
具体的には、エンジン制御部Eは、まず、エンジンの燃料噴射量やEGR[Exhaust Gas Recirculation]ガス流量に基づいて、エンジン負荷状態を認識する。その後、エンジン制御部Eは、車両のエンジン回転数及びエンジン負荷状態に基づいて、ウォータポンプ1に求められる冷却水の必要吐出量を演算する。エンジン制御部Eは、演算した必要吐出量が電気的駆動機構11の限界吐出量Peを超えない場合、電気的駆動機構11をポンプ駆動源として吐出量制御を行う。
【0036】
なお、電気的駆動機構11の限界吐出量Peは、必ずしも仕様上の性能限界に合わせる必要はなく、長寿命化のため性能限界より低い吐出量を限界吐出量Peとして設定してもよい。また、必要吐出量を必ずしも演算する必要はなく、エンジン回転数などに基づきマップ制御により求めてもよい。また、エンジン回転数及びエンジン負荷状態の組み合わせから、必要吐出量が限界吐出量Peを超えるか否かを直接的に判定してもよい。
【0037】
図4は、エンジンが低負荷状態又は中負荷状態の場合におけるウォータポンプ1の吐出量制御を説明するためのグラフである。図4に示す状況では、エンジンが低負荷状態又は中負荷状態であり、必要吐出量(四角や三角のプロット)が電気的駆動機構11の限界吐出量Peを超えていない。このため、エンジン制御部Eは、電気的駆動機構11による吐出量制御を行う。
【0038】
この場合、エンジン制御部Eは、コイル21への供給電力を制御することにより、シャフト5の回転すなわちポンプ吐出量を適切に制御することができる。すなわち、電気的駆動機構11による吐出量制御では、低負荷状態の必要吐出量(四角のプロット)に応じた吐出量V1の制御を実現することができる。同様に、中負荷状態の必要吐出量(三角のプロット)に応じた吐出量V2の制御を実現することができる。これにより、ウォータポンプ1が必要吐出量を超えて余分な仕事を行うことを避けることができる。
【0039】
一方、エンジン制御部Eは、必要吐出量が電気的駆動機構11の限界吐出量Peを超える場合、ポンプ駆動源を電気的駆動機構11から機械的駆動機構10に切り換える。
【0040】
図5は、エンジンが高負荷状態の場合におけるウォータポンプ1の吐出量制御を説明するためのグラフである。図5に示す状況では、エンジンが高負荷状態であり、エンジン回転数が高くなると、必要吐出量が電気的駆動機構11の限界吐出量Peを超えてしまう。この場合であっても、エンジン回転数が低く、必要吐出量が電気的駆動機構11の限界吐出量Peを超えない場合には、電気的駆動機構11による吐出量制御が行われる。
【0041】
その後、エンジン回転数が高くなり必要吐出量が電気的駆動機構11の限界吐出量Peを超えると、エンジン制御部Eは、コイル21への通電を停止することで、ポンプ駆動源を電気的駆動機構11から機械的駆動機構10に切り換える。これにより、ウォータポンプ1は、必要吐出量が大きい場合において、エンジンの回転を利用した機械的駆動機構10により十分な吐出量V3を確保することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態に係るウォータポンプ1によれば、ポンプ駆動源を機械的駆動機構10と電気的駆動機構11とに切り換え可能なので、従来のエンジンの回転のみをポンプ駆動源とする場合と比べて、電気的駆動機構11による適切な吐出量制御によってウォータポンプ1が仕事過剰となることが避けられ、車両の燃費向上を図ることができる。このことは、外気温の低い冷間時においてポンプが過剰に冷却水を循環させることを防止するので、エンジンの暖機促進に有利である。
【0043】
また、このウォータポンプ1によれば、大きなポンプ吐出量が必要となる時は機械的駆動機構10を用いることで、電気的駆動機構11のみをポンプ駆動源とする場合と比べて、ポンプ吐出量増大に対応するために電気的駆動機構11を大型化させる必要がなく、ポンプの小型化に有利である。従って、このウォータポンプによれば、小型でありながら高い吐出量制御性を実現することができ、車両の燃費向上を図ることができる。また、ポンプの小型化(軽量化、部品点数削減)自体も車両の燃費向上に寄与する。
【0044】
更に、このウォータポンプによれば、コイル21に通電するだけで機械的駆動機構10から電気的駆動機構11への切り換えを実現することができ、駆動部3の構成を簡素化できると共にポンプ制御を容易にすることができる。しかも、このウォータポンプでは、何らかの故障によりコイル21への通電が不能となった場合であっても、伝達部13において板バネ18の復元力によりアーマチュア19がプーリ12の摩擦パッド16に押しつけられ、再びプーリ12の回転が伝達されて機械的駆動機構10によるシャフト5の回転駆動が行われる。従って、このウォータポンプ1によれば、コイル21への通電異常など電気系統に異常があった場合であっても、自動的に機械的駆動機構10に切り替わってウォータポンプ1を駆動するので、冷却水の循環が停止することでエンジンが故障する事態を避けることができる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、機械的駆動機構と電気的駆動機構との切り換えは、上述した機構によるものに限られない。例えば、切り換え用の機構として、電子制御粘性クラッチを採用してもよい。電子制御粘性クラッチを採用した場合には、機械的駆動時であってもシャフトの回転を抑制して、余分なポンプ仕事を避けることができ、燃費改善に有利である。また、キャビテーションの発生やシール部の摩耗を抑制することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1…ウォータポンプ 2…ポンプ部 3…駆動部 4…インペラ 4a…ベーン 5…シャフト(回転軸) 6…ポンプハウジング 7…シャフトベアリング 8…シール部材 10…機械的駆動機構(機械的駆動手段) 11…電気的駆動機構(電気的駆動手段) 12…プーリ 13…伝達部 14…エンジンベルト 15…ボールベアリング 16…摩擦パッド 17…シャフト固定部 17a…ネジ 18…板バネ 19…アーマチュア 20…ボルト・ナット 21…コイル 22…磁石 C…中心軸 E…エンジン制御部 Pe…限界吐出量 V0−V3…ポンプ吐出量
図1
図2
図3
図4
図5