【課題を解決するための手段】
【0004】
  今回、予想外にも、特定のドーパミン・アゴニスト、キナゴリドを特定の投与計画に基づいて投与することにより、子宮内膜症を非常に有効に治療しうることが明らかになった。特定の投与計画により、他の利点(例えば患者のキナゴリドに対する忍容性の向上)も得られうる。
【0005】
  本発明は、子宮内膜症の治療および/または予防のためのキナゴリドを含有する(医薬)組成物を提供し、ここで組成物は、1日当たり15から39マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で10から20日間(例えば治療の1日目から15日目まで)投与し;次いで、1日当たり40から64マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で更に10から20日間(例えば、次の10から20日間、例えば治療の16日目から30日目まで)投与し;その後、1日当たり65から85マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で少なくとも2ヶ月間(例えば更に2から6ヶ月間、例えば次の6ヶ月間、例えば治療の31日目から少なくとも87日目まで)投与するためのものである。1日当たり65から85マイクログラムのキナゴリド(例えば1日当たり75マイクログラムのキナゴリド)に相当する用量の投与を少なくとも2ヶ月間(例えば2から6ヶ月間、例えば3、4、5ヶ月間)継続する。1日当たり65から85マイクログラムのキナゴリド(例えば1日当たり75マイクログラムのキナゴリド)に相当する用量の投与を、症状が持続する間継続してもよい。組成物は子宮内膜症の治療および/または予防のためのものでもあってもよく、ここで組成物は、1日当たり25マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で治療の1日目から15日目まで投与し;次いで、1日当たり50マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で治療の16日目から30日目まで投与し;その後、1日当たり75マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で治療の31日目から少なくとも87日目まで投与するためのものである。
【0006】
  組成物は少なくとも87日間(例えば少なくとも16週間、例えば少なくとも1年間)の総治療期間の投与のためのものであってもよい。組成物は、例えば16から22週間、例えば18から20週間の総治療期間の投与のためのものであってもよい。
【0007】
  更なる観点では、本発明は子宮内膜症の治療および/または予防のためのキナゴリドを含有する(医薬)組成物を提供し、ここで組成物は、1日当たりnマイクログラムのキナゴリドに相当する用量で10から20日間(例えば治療の1日目から15日目まで)投与し;次いで、1日当たり2nマイクログラムのキナゴリドに相当する用量で更に10から20日間(例えば、次の10から20日間、例えば治療の16日目から30日目まで)投与し;その後、1日当たり3nマイクログラムのキナゴリドに相当する用量で少なくとも2ヶ月間(例えば更に2から6ヶ月間、例えば次の6ヶ月間、例えば治療の31日目から少なくとも87日目まで)投与するためのものである。整数nは、例えば15から39の間(例えば16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39)であってもよい。nが25の場合、1日当たり25(n)マイクログラムの用量を10から20日間(例えば15日間)投与し;次いで、1日当たり50(2n)マイクログラムの用量を10から20日間(例えば15日間)投与し;その後、1日当たり75(3n)マイクログラムの用量を少なくとも2ヶ月間投与する。
【0008】
  必要により、組成物は、治療期間中(例えば治療の最初の1から14日間)に上記の用量より15から30マイクログラムを低減する1から10(例えば1から5)日間の段階を少なくとも1段階含む投与のためのものでもよい。その後、組成物は、用量の低減を開始した時点の治療を再開する投与のためのものであってもよい。
【0009】
  「用量設定(dose titration)」という用語は、所望の治療効果を得るために(a)薬物の用量(例えば用量範囲内で)および/または(b)投与頻度(例えば頻度範囲内で)を調整することを意味する。認識されるように、出願人は、子宮内膜症の非常に有効な治療を行い、他の利点(例えばキナゴリドに対する忍容性の向上)が得られうる、キナゴリドの漸増(titrated)(調整)投与を開発した。
【0010】
  「漸減(back titration)」という用語は、(確立された)用量をより低い有効量まで(例えば初期投与または投与プロトコル(例えば本発明のもの)で確立された治療効果を維持するのに有効な用量まで)低減することを意味する。例えば組成物は、1日当たり65から85マイクログラムのキナゴリドに相当する用量を投与した後、1日当たり15から64マイクログラムのキナゴリドに相当する更なる(例えば保持)用量で投与を少なくとも1日間(例えば少なくとも5日間、例えば少なくとも30日間、例えば少なくとも180日間)投与するためのものであってもよい。出願人は、驚くべきことに、このように一番高い用量のキナゴリドを投与した後に漸減することによって、例えば子宮内膜症の再発(および/または子宮内膜症の症状)を長期にわたって予防しうることを発見した。例えば、漸減を用いて非月経性骨盤痛または月経困難症の予防または管理を行ってもよい。別の例では、組成物の投与は、治療期間中(例えば治療の最初の1から14日間)に、請求項に記載される用量より1日当たり15から30マイクログラムを低減する(例えば請求項に記載される用量の1つまたはそれ以上を低減する)1から10(例えば1から5)日間の段階を少なくとも1段階含んでもよい。その後、組成物は、用量の低減を開始した時点の治療を再開する投与のためのものであってもよい。出願人は、驚くべきことに、このような漸減によって患者の忍容性を向上しうることを発見した。
【0011】
  更なる観点では、本発明は、子宮内膜症の治療および/または予防のための(医薬)組成物への、または同組成物の製造へのキナゴリドの使用を提供し、ここで、キナゴリドは本明細書に定義する方法で投与される。
【0012】
  本発明の更なる観点では、それを必要とする患者において子宮内膜症を治療または予防する方法を提供し、方法は以下を含む:患者にキナゴリドを含有する組成物を1日当たり15から39マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で10から20日間(例えば治療の1日目から15日目まで)投与する(第1の)段階;患者にキナゴリドを含有する組成物を1日当たり40から64マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で10から20日間(例えば次の10から20日間、例えば治療の16日目から30日目まで)投与する(第2の)段階;そして、患者にキナゴリドを含有する組成物を1日当たり65から85マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で少なくとも2ヶ月間(例えば更に2から6ヶ月間、例えば次の6ヶ月間、例えば治療の31日目から少なくとも87日目まで)投与する(第3の)段階。
【0013】
  組成物は子宮内膜症の治療および/または予防のためのものであってもよく、ここで組成物は、1日当たり25マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で治療の1日目から15日目まで投与し;次いで、1日当たり50マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で治療の16日目から30日目まで投与し;その後、1日当たり75マイクログラムのキナゴリドに相当する用量で治療の31日目から少なくとも87日目まで投与するためのものである。
【0014】
  キナゴリドの投与は、1日当たり25マイクログラムの用量で15日間;次いで、1日当たり50マイクログラムの用量で15日間;その後、1日当たり75マイクログラムの用量で少なくとも2ヶ月間行ってもよい。
【0015】
  キナゴリドの投与は、例えば1日1回行ってもよい;または、1日用量を2回またはそれ以上(例えば3、4、5、6、7、98回など)の分割用量に分け、24時間の間の異なる時点で投与してもよい。
【0016】
  キナゴリドは上記のレベルで1日毎に投与するか、または相当する用量を例えば1週に1回、1週間に2回、もしくは2日に1回投与してもよい。
【0017】
  本発明に従ってそれを必要とする患者にキナゴリド(を含有する組成物)を投与することによって、例えば以下のような実質的な臨床的利益がもたらされうることが明らかになった:活動性(active)子宮内膜症病変のパーセンテージの有意な低下;子宮内膜症病変における萎縮性または変性組織の細胞および組織に現れる特徴の有意な消失;および、子宮内膜症病変における血管数の有意な減少。キナゴリドに基づく薬剤には、耐容量が高く、安全であり、十分に実証された臨床記録を有するという利点もある。キナゴリドの使用には、(他の子宮内膜症治療に比較して)排卵を阻害しないという更なる利点もある。
【0018】
  本明細書において「子宮内膜症の治療」という用語は、子宮腔外に存在する子宮内膜組織を減量(または除去)するための治療(例えば子宮内膜症病変の低減または除去);および/または子宮内膜症に伴う1つもしくはそれ以上の症状を低減および/もしくは改善するための治療(例えば月経困難症の症状を改善および/もしくは低減するための治療;性交疼痛の症状を改善および/もしくは低減するための治療;および/または、骨盤痛を改善および/もしくは低減するための治療)を含む。「子宮内膜症の治療」という用語は、子宮腔外に存在する子宮内膜組織の数を低下させる、および/またはそのサイズを低下させる治療(例えば子宮内膜症病変の数および/またはサイズの低下)を含む。「子宮内膜症の治療」という用語は、子宮内膜腺の数を減少させる治療を含む。「子宮内膜症の治療」という用語は、以下の1つまたはそれ以上をもたらす治療を含む:活動性子宮内膜症病変のパーセンテージの有意な低下;子宮内膜症病変における萎縮性または変性組織の細胞および組織に現れる特徴の有意な消失;および、子宮内膜症病変における新生血管数の有意な減少。「子宮内膜症の治療」という用語は、卵巣、子宮盲管(uterine cul-de-sac)、子宮仙骨靱帯、子宮後面、子宮広靱帯、その他の骨盤腹膜、腸、尿路(例えば膀胱および/または尿管を含む)の1つまたはそれ以上に存在する子宮内膜症病変の数および/またはサイズを低減するための治療を含む。「子宮内膜症の治療」という用語は、非月経性疼痛および月経困難症の治療および/または管理、子宮内膜症の再発予防、および非月経性疼痛および月経困難症の再発予防を含む。
【0019】
  米国生殖医学会議(American Society for Reproductive Medicine、ASRM)は、子宮内膜症の種々のステージの分類法を定義しており、これによれば4つのステージ(最も重度はステージIV;最も軽度はステージI)に分けられる(American Society for Reproductive Medicine. Revised American Society for Reproductive Medicine classification of endometriosis:1996. Fertil Steril 1997; 67,817 821)。「子宮内膜症の治療」という用語は、ASRMの分類によって測定される症状の重篤度を低減する治療、例えば子宮内膜症の重篤度をステージIV、III、II、もしくはIからより低いステージまで、または症状が完全に緩和されるまで低減するための治療を含む。
【0020】
  子宮内膜症の治療または予防は子宮内膜腺の減少を伴ってもよい。
【0021】
  子宮内膜症という用語は、例えば腹膜子宮内膜症、卵巣子宮内膜症、および深部子宮内膜症を含む。
【0022】
  子宮内膜症の治療または予防は、子宮内膜症に罹患した被験体における受精能の管理(改善)と関連づけてもよい(含んでもよい)(すなわち、子宮内膜症の治療または予防は、子宮内膜症に罹患した被験体における不妊症の治療と関連するか、または含んでもよい)。
【0023】
  子宮内膜症の治療または予防はヒトまたは動物被験体において行ってもよい。被験体は高プロラクチン血症にも罹患しているか、または罹患傾向にあってもよい。
【0024】
  更なる観点では、本発明は疼痛(例えば子宮内膜症に伴う疼痛)を治療および/または軽減するための、キナゴリドを含有する(医薬)組成物を提供する。組成物は、1日当たり15から300マイクログラムのキナゴリド(例えば1日当たり25から85マイクログラムのキナゴリド)に相当する用量で投与するためのものであってもよい。
【0025】
  更なる観点では、本発明は子宮内膜症に罹患した患者における不妊を治療するための、キナゴリドを含有する(医薬)組成物を提供する。組成物は、1日当たり15から300マイクログラムのキナゴリド(例えば1日当たり25から85マイクログラムのキナゴリド)に相当する用量で投与するためのものであってもよい。
【0026】
  更なる観点では、本発明は生殖器癌(例えば子宮内膜症に関係する(例えば子宮内膜症に起因する)生殖器癌)の治療および/または予防のための、キナゴリドを含有する(医薬)組成物を提供する。生殖器癌は1つまたはそれ以上の生殖器官(例えば卵巣(単数または複数)、卵管、子宮内膜、子宮頸部、または膣の1つまたはそれ以上)の癌であってもよい。組成物は、1日当たり15から300マイクログラムのキナゴリド(例えば1日当たり25から85マイクログラムのキナゴリド)に相当する用量で投与してもよい。
【0027】
  更なる観点では、本発明は、それを必要とする患者において疼痛(例えば子宮内膜症に伴う疼痛)を治療もしくは軽減するための方法、および/または子宮内膜症に罹患した患者における不妊を治療するための方法、および/または生殖器癌(例えば子宮内膜症に関係する(例えば子宮内膜症に起因する)生殖器癌)を治療するための方法を提供し、方法はキナゴリドを含有する組成物を患者に投与する段階を含む。組成物は、1日当たり15から300マイクログラムのキナゴリド(例えば1日当たり25から85マイクログラムのキナゴリド)に相当する用量で投与してもよい。
【0028】
  キナゴリドは(3R,4aR,10aS)-3-(ジエチルスルファモイルアミノ)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-3,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[g]キノリンである。キナゴリドは、医薬的に許容される調製品として投与する。(キナゴリドを含有する)組成物を本発明に従って医薬的に許容される組成物として投与してもよく、それら組成物は必要により医薬的に許容される塩、緩衝剤、保存剤、および賦形剤を含有してもよい。活性成分としてキナゴリドを含有する組成物(例えば医薬組成物/医薬品)は当該分野で公知であり、市販されている。例えばキナゴリドはNORPROLACの登録商標で販売されている。本発明によれば、それらの市販の医薬品および組成物を使用して、定義される方法/投与プロトコルによって子宮内膜症の治療を行う。
【0029】
  選択される投与様式は、治療すべき症状の急性度および重篤度に依存する。許容できない副作用を伴わずに所望の治療効果が得られる任意の投与様式が本発明の実施に関係する。それらの投与様式には、経口、直腸、局所、経皮、舌下、筋肉内、非経口、静脈内、腔内、膣内、および手術の際に使用される粘着性マトリクスが含まれる。キナゴリドの膣投与は、好ましくは例えば膣座薬もしくは錠剤によって、または膣リングによって行う。本発明に従って使用するための組成物の種々の製剤法が以下に報告されている:Handbook of Pharmaceutical Excipients(第3版)、American Pharmaceutical Association(米国)およびPharmaceutical Press(英国)(2000)、および、Pharmaceutics‐The Science of Dosage Form Design、Churchill Livingston(1988)。
【0030】
  好ましい態様では、投与は経口である。経口投与に好適な組成物にはカプセル、カシェ剤、錠剤、シロップ、エリキシル剤、またはトローチ剤(lozenge)がある。
【0031】
  ある態様では、キナゴリドのみを子宮内膜症の治療法として使用する。すなわち、他の内科的または外科的治療を行わずに(例えばダナゾールを使用せずに)キナゴリドを用いてもよい。
【0032】
  キナゴリドの投与を他の内科的または外科的治療と併用してもよい。キナゴリドの投与を他の子宮内膜症の内科的もしくは外科的治療、および/または鎮痛剤、および/または避妊と併用してもよい(例えば、NSAIDおよび/またはホルモン療法(ダナゾール、OC、酢酸メドロキシプロゲステロン、他のプロゲスチン、GnRHアゴニストおよびアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤)との併用)。更なる態様では、外科的治療または内科的治療はキナゴリドでの治療前、治療中、または治療後に行ってもよい。
【0033】
  出願人は、キナゴリドの投与を、治療的に有益な作用を示し、副作用のリスクが低い状態で長期間にわたって行うことができることを発見した。キナゴリドは疼痛(または他の症状)が持続する期間にわたって投与してもよい。患者は妊娠していてもよい。
【0034】
  ここで、本発明について実施例および添付の図面を参照にしながら例証する。