(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968795
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20160728BHJP
B65B 55/08 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
A61L2/10
B65B55/08 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-2942(P2013-2942)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-133007(P2014-133007A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(72)【発明者】
【氏名】西尾 陽次
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰昌
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−85850(JP,A)
【文献】
特表2000−506822(JP,A)
【文献】
実開昭63−120833(JP,U)
【文献】
特表2008−500303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
B65B 55/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプと;該紫外線ランプを包囲するハウジングと;該ハウジングの下方開口部に設けられ、紫外線透過板と紫外線透過板の保持手段とを有する紫外線透過部と;エアー流検出手段と;を備え、
前記紫外線透過部の保持手段は、一端において前記エアー流検出手段に連通する密閉空間を、紫外線透過板の外周部と協働して形成する密封手段を有し、
前記エアー流検出手段は、密閉空間内の気圧を調整するためのエアー圧調整手段とフローメータとを備えており、
前記紫外線透過板の破損に伴い前記密閉空間の密封状態が解放されたときに生じる密閉空間内のエアーの流れをフローメータにより検出する
ことを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
紫外線透過板の外周部が、紫外線透過板の外周端面又は外周縁部であることを特徴とする請求項1記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
紫外線透過板の保持手段が、ハウジングの側壁下端に固定されているベース板と、該ベース板上に固定されている押さえ板とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
密封手段が、紫外線透過板の外周端面の外方のベース板と押さえ板とを直接密封すると共に、紫外線透過板の外周縁部を介してベース板と押さえ板とを密封する手段であり、密閉空間が紫外線透過板の外周端面の外側に沿って形成されることを特徴とする請求項3記載の紫外線殺菌装置。
【請求項5】
密封手段が、紫外線透過板の外周縁部の所定の間隔の2ヶ所を介してベース板と押さえ板とを密封する手段であり、密閉空間が紫外線透過板の外周縁部の上面側に相当する押さえ板及び/又は下面側に相当するベース板の凹状周溝として形成されることを特徴とする請求項3記載の紫外線殺菌装置。
【請求項6】
密封手段がOリング形状の弾性体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線殺菌装置。
【請求項7】
エアー圧調整手段が、密閉空間から所定圧のエアーを吸引して、該密閉空間を負圧状態に保持するエアー吸引手段であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線殺菌装置。
【請求項8】
紫外線透過板が、石英ガラスであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線(UV)を紫外線透過板を介して食品包装材料等に照射することにより殺菌する紫外線殺菌装置、より詳しくは、前記紫外線透過板の破損を検出することができる紫外線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品業界においては、賞味期限の延長などを目的として、紫外線ランプ装置を用いた殺菌方法が用いられている。かかる紫外線ランプ装置においては、ハウジング内に設けられたランプと外部とを遮断するために、一般に、特定の波長の紫外線(254nm)を透過する石英ガラスが使用されている。他方、産業界全体においては、近年、製造者責任の観点より様々な面で安全性への要求が増加し、ガラスの破損による異物混入の恐れがあるとしてガラス製品の使用さえ許可されないケースもでてきているが、現状では、紫外線ランプ装置の機能を満足すべく石英ガラスの使用が強く求められており、何らかの安全性確保の方策が必要とされている。
【0003】
上記のような背景の中、石英ガラス製の紫外線透過板の破損の検出方法としていくつかの方法が提案されているが、いずれも一長一短があり、更なる改良と差別化が求められている。例えば、ハウジング内部を冷却用ガスにより中圧(約0.1Mp)に保持し、圧力の低下を検出することにより、石英ガラスの割れを監視する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、小さな破損(ひび割れ)の検出には限界があり、また、ランプ交換等のメンテナンス作業が必要なハウジング自体を密閉とするため、パッキン類の隙間からリークする場合もあり、どこからリークしているのか発見するのが困難であり、確実に石英ガラスの破損を検出できるというものではなかった。
【0004】
また、石英ガラス端部(紫外線の有効部分以外の部分)に配線を特殊な樹脂にて接着し、その線に通電を行ない、ガラス破損時に断線を検出する方法も提案されているが(特許文献2参照)、高圧殺菌装置においては実績がなく、また、電気線が完全に断裂しないと検出できず、ひび割れ位置や破損程度によっては、石英ガラスの割れを検出できない場合もあり、確実性が低いものであった。また、石英ガラス全面を網羅して配線することは、非常に困難であり、現実的でない。
【0005】
さらに、テフロン(登録商標)系の特殊ポリマーフィルムを石英ガラスの下側に配置し、石英ガラスやUVランプの破損時の異物落下を防止する方法も提案されているが(特許文献3参照)、高圧水銀タイプの紫外線ランプにおいては、高熱に曝されるため寿命が短く、また、紫外線の透過性が石英ガラス単体の場合に比して大きく低下するという問題があった。
【0006】
また、ハウジングの下方開口部に、石英ガラス板などの紫外線透過板を2重に配置して、これらの紫外線透過板の間に密閉空間を形成し、該密閉空間に微圧エアーを導入又は該密閉空間からエアーを吸引して、フローセンサによりエアーの流れを検出することにより、紫外線透過板の破損を検出する方法も提案されているが(特許文献4参照)、照射された紫外線は紫外線透過板を2重に透過しなければならず、減衰率は1重の場合の約2倍になってしまう。紫外線力の強い高圧水銀ランプを採用すればこの問題をクリアできるとも考えられるが、高圧水銀ランプの価格は低圧水銀ランプの約2〜2.5倍と高く、コスト面で不利があった。一方、コストが安価な低圧水銀ランプを用いた場合、かかるランプは紫外線力が相対的に弱いため、そのランプの寿命の末期近くには、所定の殺菌効果を得ることができないという問題があった。さらに、この特許文献4の方法では、紫外線透過板の間の密閉空間のゲージ圧力(正圧又は負圧)を高くし過ぎると、紫外線透過板が破損するおそれがあるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3963480号公報
【特許文献2】特開2001−97319号公報
【特許文献3】特表2005−519816号公報
【特許文献4】特開2012−85850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、石英ガラス等の紫外線透過板による紫外線の減衰を抑えつつ、紫外線透過板の破損をより高い精度で検出することができる紫外線殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、背景技術に記載したような状況下、石英ガラス等の紫外線透過板による紫外線の減衰を抑えつつ、紫外線透過板の破損をより高い精度で検出することができる紫外線殺菌装置を得るべく鋭意検討を行い、石英ガラス等の紫外線透過板ではわずかな割れでもそれが紫外線透過板の端部にまで到達することに着目し、さらに鋭意検討を重ねた結果、特許文献4記載の装置のように、紫外線透過板を2重になるように配置して該紫外線透過板の間に密閉空間を形成するのではなく、1枚の紫外線透過板の外周部に密閉空間を形成することによって、紫外線透過板による紫外線の減衰を抑えつつ、紫外線透過板の破損をより高い精度で検出することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によると、紫外線透過板は2重ではなく1重にすることができるため、紫外線透過板による紫外線の減衰を抑えることができ、また、紫外線透過板の外周部に密閉空間を形成することにより、紫外線透過板の破損のおそれを回避しながら密閉空間のゲージ圧力をより高く、あるいはより低く保つことができ、その結果、紫外線透過板において何らかの異常により微細なヒビ割れが生じた場合でも密閉空間におけるエアーの流出量又は流入量が多くなって、該密閉空間内のエアーの流れをフローメータにより検出しやすくなり、紫外線透過板の破損をより高い精度で検出し得ることを見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)紫外線ランプと;該紫外線ランプを包囲するハウジングと;該ハウジングの下方開口部に設けられ、紫外線透過板と紫外線透過板の保持手段とを有する紫外線透過部と;エアー流検出手段と;を備え、前記紫外線透過部の保持手段は、一端において前記エアー流検出手段に連通する密閉空間を、紫外線透過板の外周部と協働して形成する密封手段を有し、前記エアー流検出手段は、密閉空間内の気圧を調整するためのエアー圧調整手段とフローメータとを備えており、前記紫外線透過板の破損に伴い前記密閉空間の密封状態が解放されたときに生じる密閉空間内のエアーの流れをフローメータにより検出することを特徴とする紫外線殺菌装置や、
(2)紫外線透過板の外周部が、紫外線透過板の外周端面又は外周縁部であることを特徴とする上記(1)に記載の紫外線殺菌装置や、
(3)紫外線透過板の保持手段が、ハウジングの側壁下端に固定されているベース板と、該ベース板上に固定されている押さえ板とを備えていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の紫外線殺菌装置や、
(4)密封手段が、紫外線透過板の外周端面の外方のベース板と押さえ板とを直接密封すると共に、紫外線透過板の外周縁部を介してベース板と押さえ板とを密封する手段であり、密閉空間が紫外線透過板の外周端面の外側に沿って形成されることを特徴とする上記(3)に記載の紫外線殺菌装置や、
(5)密封手段が、紫外線透過板の外周縁部の所定の間隔の2ヶ所を介してベース板と押さえ板とを密封する手段であり、密閉空間が紫外線透過板の外周縁部の上面側に相当する押さえ板及び/又は下面側に相当するベース板の凹状周溝として形成されることを特徴とする上記(3)に記載の紫外線殺菌装置や、
(6)密封手段がOリング形状の弾性体であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の紫外線殺菌装置や、
(7)エアー圧調整手段が、密閉空間から所定圧のエアーを吸引して、該密閉空間を負圧状態に保持するエアー吸引手段であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の紫外線殺菌装置や、
(8)紫外線透過板が、石英ガラスであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の紫外線殺菌装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、紫外線透過板を2重に配置して該紫外線透過板の間に密閉空間を形成するのではなく、1枚の紫外線透過板の外周部に密閉空間を形成することができるため、紫外線透過板の破損が生じるおそれを回避しながら密閉空間のゲージ圧力をより高く、あるいはより低く保つことができ、その結果、紫外線透過板において何らかの異常により微細なヒビ割れが生じた場合でも密閉空間におけるエアーの流出量又は流入量が多くなって、紫外線透過板の破損をより高い精度で検出することができる。また、本発明によると、紫外線透過板は1重にすることができるため、2重の紫外線透過板で密閉空間を形成する場合と比較して、紫外線ランプが発する紫外線の減衰(照度ロス)を抑制することができ、また、製造コストも抑えることができる。また、本発明の装置の構造自体はそれほど複雑ではないため、本発明は様々な機種に低コストで適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の紫外線殺菌装置の概略縦断面図(正面)である。
【
図3】他の態様の本発明の紫外線殺菌装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の紫外線殺菌装置としては、紫外線ランプと;該紫外線ランプを包囲するハウジングと;該ハウジングの下方開口部に設けられ、紫外線透過板と紫外線透過板の保持手段とを有する紫外線透過部と;エアー流検出手段と;を備え、前記紫外線透過部の保持手段は、一端において前記エアー流検出手段に連通する密閉空間を、紫外線透過板の外周部と協働して形成する密封手段を有し、前記エアー流検出手段は、密閉空間内の気圧を調整するためのエアー圧調整手段とフローメータとを備えており、前記紫外線透過板の破損に伴い前記密閉空間の密封状態が解放されたときに生じる密閉空間内のエアーの流れをフローメータにより検出する紫外線殺菌装置であれば特に制限されるものではなく、上記紫外線透過板の外周部とは、紫外線透過板の外周縁部と外周端面との総称であり、外周縁部とは、平面視した紫外線透過板の外周端から近傍(通常、外周端から2〜100mmの領域)の紫外線透過板の上面及び/又は下面の領域をいい、外周端面とは、側面視した紫外線透過板の2つの外周端の間の領域(側周面)をいう。
【0014】
上記紫外線ランプとしては、紫外線透過部の紫外線透過度や殺菌対象物の必要紫外線量等を考慮して、適宜公知の紫外線ランプを使用することができる。具体的には、低圧紫外線ランプ、中圧紫外線ランプ、高圧紫外線ランプなど、点灯中のランプ内の蒸気の圧力の高低にかかわらず、いずれの紫外線ランプをも用いることができ、より高い殺菌効果を得たい場合には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高圧紫外線ランプを用いることが好ましいが、本発明の紫外線殺菌装置では、紫外線透過板を1重、すなわち1枚とすることができ、紫外線の減衰率が低いため、低圧紫外線ランプや中圧紫外線ランプでも好適に使用することができる。また、本発明の紫外線殺菌装置に用いる紫外線ランプの形状としては、殺菌対象の殺菌時間をある程度長く確保する観点から、殺菌対象の移動方向を長手方向とする長い直線管状や細長いU字管状とすることが好ましく、またその個数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、紫外線ランプの紫外線をより効率的に殺菌対象に照射する観点から、紫外線ランプの近くに反射板を設けることが好ましい。
【0015】
上記ハウジングとしては、本発明における紫外線ランプを包囲し、下方に紫外線透過部のための開口部を有する限り、形状、材質など特に制限されないが、例えば六面の直方体形状のうち、一面を紫外線透過部用の下方開口部として取り除いた形状を好適に例示することができる。また、上記ハウジングは、上記保持手段と一体化して形成されていてもよい。
【0016】
ハウジングの下方開口部に配置される紫外線透過部は、紫外線透過板と紫外線透過板の保持手段とを備えている。紫外線透過板の形状としては、紫外線ランプの形状に依存するものの特に制限されず、平面視で長方形、正方形、円形、楕円形などの板状や、紫外線を殺菌対象に集中させることができる凸面状を好適に例示することができ、殺菌対象の殺菌時間をある程度長く確保する観点から、前記長い直線管状や長いU字管状の紫外線ランプの形状に合わせて、殺菌対象の移動方向を長手方向とする長方形の板状を好適に例示することができる。紫外線透過板の厚さとしては、紫外線ランプによる殺菌が可能である限り特に制限されないが、紫外線透過板の強度と、該紫外線透過板による紫外線の減衰率とのバランスの点で0.5〜15mmが好ましく、2〜7mmがより好ましい。紫外線透過板の材質としては、紫外線を透過できるものであれば特に制限されないが、石英ガラスの他に特表2005−519816号公報(特許文献3)記載のもの等を例示することができ、紫外線透過度が高い点から、石英ガラスが好ましい。なお、本発明における紫外線透過板は1枚とすることが好ましいが、紫外線の減衰率が高くなりすぎない範囲で2重にしてもよい。2枚目の紫外線透過板の外周部にも密閉空間を設けることができるが、設けなくともよい。
【0017】
上記紫外線透過板の保持手段としては、上記紫外線ランプにより殺菌対象を照射し得るように、紫外線透過板をその外周縁部で保持することができ、かつ、紫外線透過板の外周部と協働して密閉空間を形成する密封手段を有していれば特に制限されず、その三方に紫外線透過板の外周縁部を挟持するための凹状溝が設けられ、他の開放端から紫外線透過板を挟持用凹状溝にスライドさせて挿着しうる一体成形型の保持手段でもよいが、組み立てやメンテナンスのしやすさから紫外線透過板を挟持しうるベース板(下部保持板)と押さえ板(上部保持板)の組み合わせからなる保持手段を好適に例示することができる。
【0018】
上記ベース板としては、紫外線ランプが殺菌対象を照射し得るように、紫外線透過板を配置する部分に開口部を有し、その開口縁部で紫外線透過板を押さえ板と協働して保持しうるものを例示することができ、紫外線透過板の厚みより大きい凹状の段差部分に紫外線透過板を載置しうる開口縁部が形成されているものを好適に例示することができる。また、紫外線透過板の落下の危険性を回避する観点から、紫外線透過板の平面視形状と略相似形状であって、紫外線透過板の平面視形状よりも小さい形状の開口部を有しているものをより好適に例示することができる。上記ベース板開口部は、紫外線透過板の外周端から内側へ2〜100mm、好ましくは5〜50mmの位置を開口端とすることができる。例えば、平面視したときに縦30cm横60cmの長方形状の紫外線透過板の外周端から内側へ30mmの位置を開口端とする開口部は、縦24cm横54cmの長方形状となる。
【0019】
上記押さえ板としては、紫外線ランプが殺菌対象を照射し得るように、紫外線透過板を配置する部分に開口部を有し、その開口縁部で紫外線透過板をベース板と協働して保持しうるものであれば特に制限されないが、より優れた密封状態の密閉空間を得る観点から、紫外線透過板の外周縁部をベース板と協働して押圧・保持しうるものを好適に例示することができ、中でも、紫外線透過板の全外周縁部をベース板と協働して押圧・保持しうるものをより好適に例示することができる。上記押さえ板開口部は、紫外線透過板の平面視形状と略相似形状であって、平面視形状よりも小さい形状のものをより好適に例示することができ、中でも、紫外線透過板の外縁から内側へ2〜100mm、好ましくは5〜50mmの位置を開口端とするものが好ましい。
【0020】
上記保持手段に設けられた密封手段としては、ベース板や押さえ板等の対向する面を直接又は紫外線透過板を介して密封することができる、樹脂系接着剤等のシール剤や、保持手段に設けられた凹状周溝と該凹状周溝に嵌入するニトリルゴム、スチロールゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を例示することができるが、組み立てやすさから弾性体を利用した密封手段が好ましく、弾性体の形状としては、Oリング状や板状を挙げることができるが、Oリング状の弾性体(以下、Oリングという)が特に好ましい。Oリングを用いる場合、その径が凹状溝部の深さよりも少し大きいものを用いると、より優れた密封状態を得ることができる。
【0021】
ベース板と押さえ板の組み合わせからなる保持手段における密封形態としては、紫外線透過板の外周端面と協働して密閉空間を紫外線透過板の外周端面に沿ってその外側形成するための、紫外線透過板の外周端面の外方のベース板と押さえ板とを直接密封すると共に、紫外線透過板の外周縁部を介してベース板と押さえ板とを密封する形態(第1密封形態;
図1及び2参照)や、紫外線透過板の外周縁部の上面及び下面と協働して密閉空間を紫外線透過板の外周縁部の上面側に相当する押さえ板及び/又は下面側に相当するベース板の凹状周溝として形成するための、紫外線透過板の外周縁部の上面側及び/又は下面側の所定の間隔の2ヶ所を介してベース板と押さえ板とを密封する形態(第2密封形態)を挙げることができる。
【0022】
上記第2密封形態においては、紫外線透過板の外周縁部の上面側及び下面側の所定の間隔の2ヶ所を介してベース板と押さえ板とを密封し、紫外線透過板の外周縁部の上面側に相当する押さえ板及び下面側に相当するベース板の2ヶ所の密封手段の間に挟まれた上下2つの凹状周溝からなる密閉空間を形成する形態(
図3参照)や、紫外線透過板の外周縁部の上面側又は下面側の所定の間隔の2ヶ所を介してベース板と押さえ板とを密封し、紫外線透過板の外周縁部の上面側に相当する押さえ板又は下面側に相当するベース板の2ヶ所の密封手段の間に挟まれた1つの凹状周溝からなる密閉空間を形成する形態を例示することができるが、この1つの凹状周溝からなる密閉空間を形成する場合、凹状周溝からなる密閉空間を形成しない方のベース板や押さえ板の対向面には、例えば2つのOリングを用いてもよいが、1つの板状ゴムを用いることもできる。
【0023】
上記紫外線透過板の外周端面の外側に沿って形成される密閉空間や、紫外線透過板の外周縁部の上面側に相当する押さえ板及び/又は下面側に相当するベース板の凹状周溝として形成される密閉空間は、紫外線透過板の外周部の全周にわたり形成されていなくてもよいが、紫外線透過板の破損をより高精度で検出する観点から、紫外線透過板の外周部の全周に管状に形成されていることが好ましい。かかる密閉空間の一端は、ポート(開口部)及び配管にてエアー流検出手段に連通されており、かかるポートは、密閉空間からエアーを吸引する場合はバキュームポート、密閉空間にエアーを導入する場合はディスチャージポートと呼ぶことができる。
【0024】
上記エアー流検出手段は、密閉空間内の気圧を調整するためのエアー圧調整手段とフローメータとを備えている限り特に制限されず、かかるエアー圧調整手段は、密閉空間に所定圧のエアーを導入、又は該密閉空間から所定圧のエアーを吸引して、該密閉空間を正圧又は負圧に保持することができる。上記のエアー圧調整手段としては、所定圧のエアーを導入して紫外線透過部の密閉空間を正圧状態に保持するエアー供給手段や、エアーを吸引して紫外線透過部の密閉空間を負圧状態に保持するエアー吸引手段(真空吸引手段)を例示することができる。
【0025】
上記フローメータは、エアー圧調整手段と上記密閉空間との間の配管などに設けられており、かかる配管内のエアーの流れを検出することで、紫外線透過板の破損に伴い前記密閉空間の密封状態が解放されたときに生じる密閉空間内のエアーの流れを検出できる。エアー圧調整手段とフローメータの間の配管には、配管を開放又は閉鎖し得る電磁弁を配置することが好ましい。密閉空間を負圧状態に保持する場合は、紫外線透過板の破損片が殺菌対象物側に飛び散ることを抑制することができる点で有利である。また、密閉空間を負圧に保持する場合は、正圧に保持する場合に上記配管にさらに配置することが好ましいレギュレータや圧力スイッチが不要となる点でも好ましい。なお、かかるレギュレータは、密閉空間を正圧に保持する場合に、エアー供給手段から供給される圧力を制御して目的とする圧力とするための装置であり、圧力スイッチは、レギュレータの不具合等による圧力異常を検知してエアー供給を遮断するためのスイッチである。レギュレータを配管に設置する場合は、エアー圧調整手段とフローメータとの間に設置することが好ましく、さらに電磁弁を併用する場合は、レギュレータをエアー圧調整手段と電磁弁との間の設置することが好ましい。圧力スイッチを配管に設置する場合は、エアー圧調整手段とフローメータとの間に設置することが好ましく、さらにレギュレータを併用する場合は、レギュレータとフローメータとの間に設置することが好ましく、また、レギュレータと電磁弁を併用する場合は、エアー圧調整手段、レギュレータ、電磁弁、圧力スイッチ、フローメータの順に設置することが好ましい。なお、エアーとは、空気のみならず、不活性ガス等を含む気体全般を意味する。
【0026】
密閉空間を正圧状態とする場合、密閉空間におけるゲージ圧力(大気圧を0基点とする圧力標記)を、例えば0kPaGより大きく700kPaG以下の範囲内とすることができるが、紫外線透過板の破損をより高い精度で検出する観点や、紫外線透過板が破損したときに正圧による破片の飛び散りの安全面から、10〜100kPaGの範囲内とすることが好ましく、10〜50kPaGの範囲内とすることがより好ましい。一方、密閉空間を負圧状態とする場合、密閉空間のゲージ圧力を、例えば0kPaG未満から−101.3kPaGの範囲内とすることができ、紫外線透過板の破損をより高い精度で検出する観点から、−50〜−100kPaGの範囲内とすることが好ましく、−90〜−100kPaGの範囲内とすることがより好ましい。
【0027】
上記フローメータ(流量計)としては、上記配管内にエアーの流れが生じた場合にかかるエアーの流れを検出することができるものであれば特に制限されるものではないが、微量のエアーの流れを検出できるフローメータであることが好ましく、例えば、最小検出量が0.05〜0.5L/min程度のフローメータを用いることが好ましい。具体的には、例えば、最小検出流量が0.2L/minのフローメータを用いる場合、かかる最小検出流量に設定し、0.2L/min以上のエアーの流れが生じた場合に検知できるようにすることが好ましい。かかる高感度なフローメータとして、フローセンサ(フローセンサ式のフローメータ)を好適に例示することができる。
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の装置を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、第1態様の密封手段を有している本発明の紫外線殺菌装置の概略断面図であり、
図2は
図1中のAの部分の拡大図である。また、
図3は、第2態様の密封手段を有する本発明の紫外線殺菌装置の部分拡大図である。
【0029】
図1及び
図2に本発明の紫外線殺菌装置(タイプI)を示す。このタイプの紫外線殺菌装置は、U字管式(1灯式)の紫外線ランプ3と;反射板4と;紫外線ランプ3を包囲するハウジング2と;ハウジング2の下方開口部に設けられ、平面視長方形の石英ガラス5(紫外線透過板)と、ベース板1及び該ベース板1にネジで固着される押さえ板6を備えた石英ガラス5の保持手段とを有する紫外線透過部と;バキュームポンプ(エアー吸引手段)と電磁弁とフローメータとを備えたエアー流検出手段と;を備え、上記ベース板1は、石英ガラス5を載置するための凹状段差と、略中央部に石英ガラス5よりも小さい相似長方形の開口を有し、凹状段差の水平面上に石英ガラス5を載置したときに、紫外線透過板の外周端面と凹状段差の水平面と凹状段差の垂直面と押さえ板6下面の4面で構成される管状密閉空間、すなわち、紫外線透過板の外周端面と協働して紫外線透過板の外周端面の外側に沿って構成され、一端においてエアー流検出手段に連通する管状密閉空間が形成されることになる。また、かかる密閉空間の密封性を高めるために、押さえ板6とベース板1との間にOリング7、押さえ板6と紫外線透過板との間にOリング8、ベース板1と紫外線透過板との間にOリング9がそれぞれ挟持されている。かかる管状密閉空間は、一端において前記エアー流検出手段にバキュームポート10を経由して連通しており、石英ガラス5の破損に伴い上記管状密閉空間の密封状態が解放されたときに生じる管状密閉空間内のエアーの流れをフローメータにより検出することができる。
【0030】
かかる紫外線殺菌装置において、ベース板1の開口部は、石英ガラス5の外縁から内側へ9.5mmの位置を開口端とし、押さえ板6の開口部は、石英ガラス5の外周端から内側へ7mmの位置を開口端としている。また、Oリング7の凹状周溝は、石英ガラス5の外周端から3mm程度離間して設けられているが、2.5〜50mm程度離間して設けることもできる。Oリング9の凹状周溝は、石英ガラス5の外周端から2mm程度離間して設けられているが、0.5〜45mm程度離間して設けることもできる。
【0031】
本発明の紫外線殺菌装置(タイプI)による容器の殺菌は、例えば以下のように行われる。ゲーブルトップ型の包装容器Cがその上部を開放した状態で、紫外線ランプ3の下方をその長手方向に搬送されている間に、紫外線ランプ3(例えば低圧水銀灯)から照射された紫外線は、大型の反射板4によって高い照度を維持し、包装容器Cの底部まで確実に照射して殺菌できるようになっている。
【0032】
上記紫外線殺菌装置において、電磁弁を開放すると管状密閉空間11内のエアーがバキュームポート10及び配管を経由してバキュームポンプに吸引され、密閉空間11内は所定の負圧状態に保持される。管状密閉空間11の密閉状態が保持されている間は、配管内にエアーの流れはないが、石英ガラス5の一部が破損した場合には、管状密閉空間11にエアーが流入すると共に配管内にエアーの流れが生じ、フローメータがこのエアーの流れを検知する。かかる本発明の装置によれば、石英ガラス5がOリングに挟まれた自由度のある状態、すなわち、紫外線透過板が押さえ板及びベース板に直接接触していない状態で保持されているため、微細なヒビ割れなどの破損であっても石英ガラス5に変形が生じ石英ガラス5の端部にまでヒビが到達し、管状密閉空間内にエアーが流入し、かかるエアーの流れが配管内のエアーの流れを生じさせ、これをフローメータが検出し、それによって、石英ガラス5の破損をより高い精度で検出することができる。
【0033】
図3に本発明の紫外線殺菌装置(タイプII)の部分拡大図を示す。ベース板1及び押さえ板6は、それぞれ略中央部に石英ガラス5よりも小さい相似長方形の開口部を有し、ベース板1及び押さえ板6の開口縁部、すなわち、紫外線透過板の外周縁部の下面側に相当するベース板及び上面側に相当する押さえ板に、それぞれOリング7,13の凹状周溝とOリング9,8の凹状周溝が密閉空間11を挟んで設けられている。
【0034】
かかる紫外線殺菌装置において、ベース板1の開口部は、石英ガラス5の外縁から内側へ19.5mmの位置を開口端とし、押さえ板6の開口部は、石英ガラス5の外周端から内側へ17mmの位置を開口端としている。また、Oリング7,13の凹状周溝は、石英ガラス5の外周端から2mm程度離間して設けられており、Oリング9,8の凹状周溝は、石英ガラス5の外周端から12mm程度離間して設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の紫外線殺菌装置は、例えば、食品包装容器等を殺菌するために用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ベース板
2 ハウジング
3 紫外線ランプ
4 反射板
5 石英ガラス
6 押さえ板
7 Oリング
8 Oリング
9 Oリング
10 バキュームポート
11 管状密閉空間
12 紫外線殺菌装置
13 Oリング(第4環状弾性体)
C 包装容器