特許第5968832号(P5968832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968832
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】仕掛材保管設備の操業支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20160728BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20160728BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20160728BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   B65G1/137 A
   G06Q50/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-128099(P2013-128099)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-5002(P2015-5002A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】楢崎 博司
(72)【発明者】
【氏名】村上 道明
(72)【発明者】
【氏名】山下 圭一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂行
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−220927(JP,A)
【文献】 特開2010−250521(JP,A)
【文献】 特開2003−058228(JP,A)
【文献】 特開2008−207920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B65G 1/137
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延後の仕掛材を保管場所に一時的に保管すると共に、前記保管場所から前記仕掛材を取り出して切断処理後に下工程に搬送する仕掛材保管設備の操業を支援する操業支援システムであって、
前記操業支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、
前記表示器は、前記保管場所に保管された仕掛材の載置状態を表示すると共に、各仕掛材に対する納期を識別可能に表示するように構成されていることを特徴とする仕掛材保管設備の操業支援システム。
【請求項2】
前記表示器は、前記仕掛材の納期を色分けして表示することを特徴とする請求項1に記載の仕掛材保管設備の操業支援システム。
【請求項3】
前記表示器は、前記保管場所に保管された仕掛材のうち、下工程で同じ作業を行う仕掛材を識別可能に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の仕掛材保管設備の操業支援システム。
【請求項4】
前記表示器は、仕掛材の納期状況を時間経過と共に表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の仕掛材保管設備の操業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延後の圧延材(仕掛材)を一時的に保管する仕掛材保管設備における作業を支援する操業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の受注を一つにまとめたうえで、圧延設備にて圧延された圧延材は、それに含まれる複数の製品に切り分けるために切断設備に送られ、その後製品の仕様に従って下工程である手入れ工程(熱処理工程、検査工程など)に送られる。また、圧延設備から排出された圧延材は、切断設備での切断前に保管場所で一時的に保管される。保管場所に保管された圧延材は次の処理を待つ「仕掛材」であり、この仕掛材のうち、どの仕掛材から切断処理し下工程に送るかは、主に、納期や生産性等を考慮して決定する必要がある。
【0003】
具体的には、仕掛材には下工程(手入れ工程)にて作業を完了すべき納期が定められており、この納期内に処理を完了するように適正に仕掛材を選択して切断し下工程に搬送する。また、下工程において素早く仕掛材が処理できるように、切断処理及び下工程への仕掛材の送り順を決定して全体の生産性、即ち、スループットを向上させるのがよい。
一方、保管場所には、複数の保管場所(載置場所)が設定され、各載置場所に仕掛材が山積状態にされる。
【0004】
山積状態の仕掛材の中で下側に位置する仕掛材(優先仕掛材)を優先的に切断処理場所に搬送する必要がある場合は、クレーン等によって優先仕掛材上に積み上げられた他の仕掛材(普通仕掛材という)を別の載置場所に移すという「配替作業」を行う。そして、配替作業に優先仕掛材をクレーンで取り出して切断処理場所に送り、切断後下工程に送る。また、他に優先仕掛材を取り出す方法として、配替作業を行わずに、優先仕掛材がある載置場所に山積みされている仕掛材の全てを他の載置場所の仕掛材よりも優先的に順次切断処理し、出来るだけ早く優先仕掛材を取り出すという「優先取り出し作業」を行うこともある。
【0005】
配替作業においては、普通仕掛材をどの載置場所に移せば効率的であるか、周りの状況も考慮しなければならないことに加え、配替作業自体の時間も掛かることから、上にある仕掛材を順番に処理していく「優先取り出し作業」に比べて段取りの時間が多くなる。
一方、「優先取り出し作業」では「配替作業」に比べて段取り時間を短くすることができるものの、1つの載置場所(第1載置場所)に集中して搬送作業を行っている場合、新たな仕掛材が、これとは別の載置場所(第2載置場所)に積み上げられ、第2載置場所に先に到着した仕掛材の上に、後から来た仕掛材が上積みされる。つまり、第1載置場所の仕掛材を処理している間に、第2載置場所に新しい仕掛材が積み上げられるため、先に第2載置場所に到着した仕掛材が下側に位置してしまうことがある。
【0006】
このように、複数の載置場所から構成される保管場所から下工程へ仕掛材を搬送するためには、上述したような様々な状況等を考慮する必要があり、圧延設備から保管場所への仕掛材の受け入れや保管場所から下工程への仕掛材の切断処理、搬送は非常に難しく、これらの作業は、仕掛材を搬送する搬送クレーンを操作するオペレータの判断に委ねられているのが実情である。
【0007】
生産現場における複雑な工程を管理する技術として特許文献1〜3に示すものがある。
特許文献1は、工程情報(仕掛、進捗、納期)の表示に関する技術であって、作業者が入力する実績に応じて、現状を更新すると同時に将来の進捗予測を行ないその情報を表示し、生産管理者が、当初の生産計画のどこでどの程度遅れ/進みが発生しているかを容易に把握するものである。
【0008】
特許文献2は、製品の特性や工程能力により、通過する工程パターンにばらつきがある場合、どの工程を通過するかを予測したうえで製造工期を計算し、それを最小にするような生産計画を作成するものである。特許文献3は、製鋼から精製までの全体での負荷を平準化する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平04−347769号公報
【特許文献2】特開2010−271941号公報
【特許文献3】特開2012−146124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
さて、実際の操業では、仕掛材の納期が様々な事情により予め定められた納期よりも早くなる場合がある。このような場合も、上述した「配替作業」を行うか、或いは、「優先取り出し作業」を行う。あるいは、圧延工程の遅延により、同一納期であっても、実質作業時間余裕は減少し、納期が早くなったのと同様の状況にいたる場合もある。
しかしながら、上述したように配替作業や優先搬送作業を行っている間にも、圧延が終了した圧延材が新規に保管場所に到着することになるため、保管場所全体の様々な状況を考慮して、保管作業、配替作業、優先取り出し作業、搬送作業での作業手順を適正に決めなければ、保管場所に納期の余裕の無い仕掛材が増加してしまうことになる。
【0011】
例えば、配替作業による段取り時間の増加によってスループットが低下し、作業がおいつかず、結果、納期に余裕の無い仕掛材が増加し、至急材(予定より納期が短くなってしまった仕掛材)の増加、配替作業等の増加につながり、ますますスループットが低下するという悪循環に陥る可能性がある。また、短納期の優先仕掛材が増加した場合は、前工程(圧延設備など)を止めて「仕掛材の一掃」をする必要があり、この一掃作業は、全体の生産性を大きく低下させることがあった。
【0012】
特許文献1は、保管場所における仕掛材の全体の山積み状況や納期を素早く把握というものではなく仕掛材の優先を判断するための情報を提供するものになっていないため、このような技術を用いても上述した問題を解消することができないのが実情である。また、特許文献2及び3は、生産計画を立案するのみで実際の操業状況を示すものではなく特に納期が変更になった場合など上述した問題を解消することができないのが実情である。
【0013】
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、保管場所における仕掛材の情報を提供することによって、効率の良い作業手順を素早く決定することができる仕掛材保管設備の操業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る仕掛材保管設備の操業支援システムは、圧延後の仕掛材を保管場所に一時的に保管すると共に、前記保管場所から前記仕掛材を取り出して切断処理後に下工程に搬送する仕掛材保管設備の操業を支援する操業支援システムであって、前記操業支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、前記表示器は、前記保管場所に保管された仕掛材の載置状態を表示すると共に、各仕掛材に対する納期を識別可能に表示するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記表示器は、前記仕掛材の納期を色分けして表示するとよい。
好ましくは、前記表示器は、前記保管場所に保管された仕掛材のうち、下工程で同じ作業を行う仕掛材を識別可能に表示するとよい。
好ましくは、前記表示器は、仕掛材の納期状況を時間経過と共に表示するとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の仕掛材保管設備の操業支援システムによれば、保管場所における仕掛材の情報を提供することによって、効率の良い作業手順を素早く決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】仕掛材保管設備の操業支援システムの概念図を示したものである。
図2】支援モニタの状況表示画面の一例を示した図である。
図3】支援モニタに表示される検索画面の一例を示した図である。
図4】支援モニタに表示される納期状況画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る仕掛材保管設備の操業支援システムの実施の形態を、図をもとに説明する。
図1は、本実施形態の操業支援システムを示した模式図である。
図1に示す如く、仕掛材保管設備1は、圧延材Wを圧延する圧延設備2の下流側に配備されている。圧延設備2は、例えば、加熱炉に装入された圧延材Wを、粗圧延機及び仕上げ圧延機等によって圧延する。圧延後の圧延材(仕掛材)Wは、冷却床(図示省略)を通過することで冷却され、冷却後の仕掛材Wは、仕掛材保管設備1の保管場所5に載置されることになる。
【0019】
仕掛材保管設備1は、冷却床で冷却後の仕掛材Wを保管すると共に、仕掛材Wを切断して下工程に搬送するもので、仕掛材Wを保管する保管場所5、仕掛材Wを搬送する搬送クレーン3と、仕掛材Wを所定の長さに切断するガス切断装置4とを備えている。
搬送クレーン3は、冷却床の仕掛材Wを取り出して当該仕掛材Wを予め定められた保管場所5に搬送すると共に、保管場所5の仕掛材Wをガス切断装置4へ向けて搬送する。ガス切断装置4は、納品する製品の寸法に応じて仕掛材Wを切断する。保管場所5は、冷却床とガス切断装置4との間の所定位置に設けられ、この保管場所5上を搬送クレーン3が移動する。この保管場所5には、複数の載置場所5A、5B、・・・が設定されている。各載置場所5A、5B、・・・においては、仕掛材Wが下側から上側に向けて順に山積みすることができるようになっている。
【0020】
このような仕掛材保管設備1においては、オペレータが搬送クレーン3を操作することにより、冷却床を通過して冷却された仕掛材Wを搬送クレーン3によって吊り上げ、当該仕掛材Wを保管場所5に移動して、保管場所5内の各載置場所5A、5B、・・・に仕掛材Wを降ろす保管作業を行う。保管作業において、仕掛材Wをどの載置場所5A、5B、・・・に載置するかは、特段の指示の無い場合にはオペレータの判断により行う。一方、保管場所5に保管された仕掛材Wは、仕掛材Wの納期に基づいて保管場所5から取り出してガス切断装置4に送られ切断された後、それぞれの製品仕様に応じて下工程である手入れ工程(研磨、表面手入れ、熱処理、UT検査等)に送られる。
【0021】
本発明では、仕掛材Wの山積み状況や納期等を表示することで、圧延設備2から保管場所5への仕掛材Wの保管作業や仕掛材を下工程に移す搬送作業がスムーズに進むようにしたものである。
以下、本実施形態の仕掛材保管設備の操業支援システムの詳細を述べることにする。また、説明を分かり易くするために、保管場所5における仕掛材の載置場所は4つとして説明を進める。図1及び2において左側から順に、第1載置場所5A、第2載置場所5B、第3載置場所5C、第4載置場所5Dとする。
【0022】
仕掛材保管設備の操業支援システム1は、載置場所5A、5B、5C、5Dに保管された仕掛材Wの山積み状態を表示すると共に、各仕掛材Wの納期を表示する表示器(支援モニタ)10を備えている。
図2に示すように、支援モニタ10は、液晶モニタやCRTモニタで構成されている。この支援モニタ10は、搬送クレーン3を操作する操作室に設置され、オペレータMは常にこの支援モニタ11を視聴可能な状態となっている。また、支援モニタ10は、搬送クレーン3の操作室だけでなく、様々な工程を一括管理するコントロール室にも設置され、工程を管理する管理責任者等も視聴可能な状態となっている。
【0023】
詳しくは、支援モニタ10は、保管場所5に保管した仕掛材の山積み状況を表示する状況表示画面Q1を表示するようになっている。状況表示画面Q1の下側には、各保管場所を、文字、数字、記号等により表示する保管場所表示部11が示されている。
状況表示画面Q1の保管場所表示部11には、左側から順に、「第1載置場所5A」を示す「5A」、「第2載置場所5B」を示す「5B」、「第3載置場所5C」を示す「5C」、「第4載置場所5D」を示す「5D」が示されている。
【0024】
状況表示画面Q1において、保管場所表示部11の上側には、各載置場所に保管された仕掛材Wを図形(棒グラフ)等によって表示する仕掛材状況表示部12が示されている。仕掛材状況表示部12は、第1載置場所5Aの仕掛材Wを表示する第1エリア12aと、第2載置場所5Bの仕掛材Wを表示する第2エリア12bと、第3載置場所5Cの仕掛材Wを表示する第3エリア12bと、第4載置場所5Dの仕掛材Wを表示する第4エリア12dとに分けられている。
【0025】
詳しくは、第1エリア12aには、第1載置場所5Aに積み上げられた7枚の仕掛材Wを模した図形が積み上げられた順番に表示され、第2エリア12bには、第2載置場所5Bに積み上げられた10枚の仕掛材Wを示す図形が積み上げられた順番に表示され、第3エリア12cには、第3載置場所5Cに積み上げられた3枚の仕掛材Wを示す図形が積み上げられた順番に表示され、第4エリア12dには、第4載置場所5Dに積み上げられた2枚の仕掛材Wを示す図形が積み上げられた順番に表示されている。即ち、状況表示画面Q1には、各載置場所5A〜5Dに保管された仕掛材Wの山積み状態の分布が表示されている。
【0026】
さて、支援モニタ10は、状況表示画面Q1において、各仕掛材Wの納期を表示している。詳しくは、仕掛材状況表示部12において、仕掛材Wを示す各図形には納期の余裕度(作業を完了するまでの余裕)に応じて所定の色が着色がなされている。仕掛材Wの納期は、下工程(熱処理工程、検査工程など)の管理を行うコンピュータに存在し、その納期情報は、支援モニタ10を制御するコンピュータに瞬時に転送されることとなっている。
【0027】
納期が最も短い仕掛材Wを示す図形13a(緊急を要する仕掛材Wを示す図形13a)は、例えば「赤色」になっており、納期が遅れている仕掛材Wを示す図形13bは、例えば「ピンク色」になっており、納期に変化の無い仕掛材Wを示す図形13c(予定通りの仕掛材Wを示す図形13c)は、例えば「灰色」になっている。また、規格外れ等で納品することができない仕掛材W(死材)を示す図形13dは、例えば「黒色」になっている。なお、図形の着色について、緊急性が高いものは「暖色系」、緊急度の低いものは「寒色系」にするのが望ましいが、着色は上述したものに限定されない。
【0028】
このように、保管場所5に積まれている仕掛材を、工程納期(作業完了すべき日までの余裕)に応じて色分け表示することにより、納期余裕に応じた仕掛材の分布を容易に把握することができる。つまり、支援モニタ10に表示した状況表示画面Q1を見ることにより、納期遅れの余裕度に応じた仕掛材の分布が一目瞭然でわかり(どのような仕掛材がどこの載置場所に詰まれているかを容易に目視確認できる)、どの載置場所に存在する仕掛材(山)を優先的に処理すべきかの判断を簡単にすることができる。
【0029】
支援モニタ10は、保管場所5に保管された仕掛材Wのうち、下工程で同じ作業を行う仕掛材Wを表示する。詳しくは、図3に示す如く、支援モニタ10は、保管場所5に保管された複数の仕掛材Wのうち、諸条件の一致する仕掛材Wを検索する検索画面Q2を表示するようになっている。
検索画面Q2には、仕掛材Wの厚みの範囲、仕掛材Wの幅、仕掛材Wの長さ、下工程における作業内容(仕掛コード)のそれぞれを入力する入力ウインドウが表示されており、各入力ウインドウに任意の条件を入力して、「絞り込み」をクリックすると、この条件に合致する仕掛材が仕掛材状況表示部12(状況表示画面Q1)に表示されるようになっている。なお、検索画面Q2において、仕掛コードは、下工程で行われる作業内容を示すものである。
【0030】
検索画面Q2にて同じ条件、例えば、作業内容が同じである仕掛材を検索した場合、図2に示すように、仕掛材状況表示部12には、表示した複数の仕掛材Wのうち、作業内容が同じである仕掛材を、他の仕掛材と区別して表示する。例えば、作業内容が同じ仕掛材Wを太枠14で示す。これにより、作業内容が同じ仕掛材Wがどの場所にあるかを簡単に把握することができる。つまり、作業内容や同時の処理(取り合わせ)が可能な寸法などの条件を指定し、それに合致した仕掛材を状況表示画面Q1に強調表示することができ、処理対象がどの保管場所5のどの位置にあるかを容易に目視確認することができる。
【0031】
さらに、支援モニタ10は、仕掛材Wの納期状況を表示する。
詳しくは、図4に示すように、支援モニタ10は、納期の遅れの状況(遅れ枚数比率)を表示する納期状況画面Q3を表示する。納期状況画面Q3には、例えば、1日の作業を8時間毎に区切った時間軸(横軸)と、保管場所5に保管した全仕掛材Wに対する遅れ枚数比率(納期遅れの枚数/全仕掛材の枚数)を示す縦軸とを有する傾向グラフが表示される。各作業毎(8時間毎)に納期遅れの割合が表示される。
【0032】
これにより、納期状況の1つである納期遅れの状況を把握することができ、オペレータによる作業が適正であるかどうかを判断することができる。例えば、日々あるいはオペレータ交代時間ごとで、納期余裕の少ない仕掛材がどう変化したか、どれくらいの量を処理したか、どれくらいのものが流入したかを把握することができ、操業において、納期遅れの仕掛材の枚数を所定量以下に抑えることができる。保管場所への新規の仕掛材の流入と下工程への仕掛材の搬送量(処理量)のバランスを崩れないようにすることができる。
【0033】
また、たとえば、納期遅れの材が複数山に分散しており、なおかつ、遅れ枚数比率が低減しない、ないし増加している場合は、あえて配替をしてでも納期遅れの仕掛材を処理する必要があると判断できる場合がある。このような場合にも、仕掛材の山積み状態を容易に確認できるので、どの程度の配替作業が必要かを容易に見積もることが可能であり、要員確保など適切な作業計画立案が可能になる。
【0034】
以上述べた如く、本発明の仕掛材保管設備の操業支援システム1によれば、オペレータは、支援モニタ10の状況表示画面Q1に表示された保管場所5の仕掛材Wの山積状態と、仕掛材Wの納期とを見ながら、即ち、保管場所5に保管した全ての仕掛材Wの納期と仕掛材Wの分布を見ながら搬送クレーン3を操作することができる。そのため、どのように搬送クレーン3を動かして仕掛材Wの搬送作業を行えば最適であるかを素早く導くことができる。特に、ユーザの要望や物流状況によって納期が急に変更した場合であっても、最も適した方法で仕掛材Wを下工程に送ることができる。
【0035】
仕掛材の納期が短納期になった場合など、至急材や段取り時間、増大などにより処理能力不足の兆候を支援モニタ10を見ることによって把握することができ、この場合には、前工程(圧延工程)を含めた全体生産計画調整を行うことが可能となる。納期状況画面Q3によって納期状況の傾向を把握することができ、処理能力の状態を評価することができる。
【0036】
なお、本発明の仕掛材保管設備の操業支援システムにおいて、オペレータに示す情報は、上記したものに限定されず、様々な情報を表示するようにしてもよい。
例えば、仕掛材保管設備の操業支援システム1において、載置場所5A〜5D毎に納期状況を数値化し、数値化した指標をガイダンスとして支援モニタ10に表示するようにしてもよい。
【0037】
例えば、式(1)に示した余裕指標W1を載置場所5A〜5D毎に計算し、計算した余裕指標W1を表示するようにしてもよいし、式(2)に示すように、枚数指標W2を保管場所毎に計算し、計算した枚数指標W2を表示するようにしてもよい。
【0038】
【数1】
【0039】
余裕指標W1では、各載置場所について、余裕日数が少ないほど指標値が大きくなる(遅れの場合は負の数になり、αよりも大きくなる)。ただし、α日以上の余裕があるものはカウントされない。例えば、納期遅れの大きなものがあれば、W1は大きな値になる。それに対し、枚数指標W2では納期余裕程度は考慮されず、仕掛材の枚数のみを考慮している。通常、処理能力に余裕がある場合は、枚数指標W2の大きな山を順次処理すればよいが、余裕指標W1が所定値より大きくなった保管場所がある場合は、下側に納期が短い仕掛材がある載置場所を優先的に処理する必要がある。
【0040】
このように、余裕指標W1、枚数指標W2を各載置場所について計算し、その推移を見ることで、どの載置場所から処理するかの目安とすることができる。これにより、仕掛の過剰な増加による生産停止などを未然に防止することができる。また、仕掛材において納期分布の遅れが所定範囲内であれば「山優先」(優先搬送作業)を優先とし、納期遅れが増加している場合は「板優先」(配替作業)を優先することができる。
【0041】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0042】
1 仕掛材保管設備
2 圧延設備
3 搬送クレーン
4 ガス切断装置
5 保管場所
5A 第1載置場所
5B 第2載置場所
5C 第3載置場所
5D 第4載置場所
10 表示器(支援モニタ)
11 保管場所表示部
12 仕掛材状況表示部
12a 第1エリア
12b 第2エリア
12c 第3エリア
12d 第4エリア
13 図形
図1
図2
図3
図4