(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の浚渫物移送ユニットが連結された浚渫物移送装置であって、該浚渫物移送ユニットの内部には、両側に支持棒を有する容器と、該容器の支持棒を支えるレールと、該容器の支持棒を移送するための突起を有する無端コンベアと、前記レールに対して直角方向に回転する車輪とを備えた浚渫物移送機構が装填されており、該浚渫物移送機構は、端部に変角可能な結合器具を備えており、該浚渫物移送機構の周囲は、端部が柔軟接合された被覆部材で包囲されていることを特徴とする浚渫物移送装置。
【背景技術】
【0002】
高度経済成長が続いた1960年〜1980年の日本においては、製造業や商業等の産業面における大きな変化やそれに伴う流通機構の変化等の種々の社会変革があった。そして、それら日本の社会環境の大きな変動期に対応するためには大量の電力を必要とするため日本各地で多くのダムが建設されてきた。
我々は、この間建設されてきた数多くのダムによってエネルギー供給の恩恵だけでなく河川の氾濫の制御や工業用水の供給や都会の人々に安定して家庭用水や飲料水を供給するという種々の面においても多くの恩恵を受けてきた。
しかしながら、近年ではダム湖の多くで、台風や大雨等によって流出した土砂や礫が年々堆積しているため、本来のダムとしての機能を大幅に低下させるという問題が発生しており、このダム湖の湖底に堆積している大量の土砂や礫を如何に取り除くか、また、取り除いた土砂や礫を、ダム湖の湖面や狭隘な山間部を経て遠方の平地までどのようにして安全にしかも低コストで移送するかが、現在では大きな問題になっている。
【0003】
もちろん、本出願前においても、このような問題を解決すべく種々の浚渫物の移送装置が知られている。例えば、本出願前においては、土砂移送管の途中に撹拌室を設け、該撹拌室の入口付近から改質材を注入して乱流を生じさせて土砂と改質材を確実に混合させる装置(特許文献1)、管路中の土砂に改質材を添加するとともに、下流側に乱流により土砂と改質材を混合する非動力型混合装置を配した管路内で土砂を圧送する浚渫土砂移送装置(特許文献2)、先端部の内径が縮小する大径管とこの大径管の先端部にホース軸に垂直な壁面で接続された小径管を設けるとともに該垂直な壁面に空気を貫通させるパイプを設けて効率良く浚渫した土砂を移送する土砂輸送用吸引装置(特許文献3)、土砂輸送管の任意位置で超音波探知機を用いて管内の土砂流表面位置を間欠的に検知し、電算機により土砂流の断面積を計算して粉体添加量を制御する土砂を輸送するシステム(特許文献4)等が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から知られている浚渫物を移送する装置は、浚渫物を安定的に移送するためには多数の監視員や操作員が必要であるだけでなく、作業時間制限されるためコスト的にも時間的にも多くの問題点を有していた。それに従来から使用されているものは浚渫物移送装置と呼ばれているものの、その実態は浚渫船上に汲み上げた土砂や礫を浚渫船上からダム湖近くの作業場までの短い距離を移送するに過ぎないものであり、浚渫物を山奥のダム湖から遠くの平地まで移送するものではなく、土砂や礫の浚渫物を湖上や起伏の激しい山間部を経て遠くまで移送する本当の意味の浚渫物移送装置の開発が待たれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明によれば、複数の浚渫物移送ユニットが連結された浚渫物移送装置であって、該浚渫物移送ユニットの内部には、両側に支持棒を有する容器と、該容器の支持棒を支えるレールと、該容器の支持棒を移送するための突起を有する無端コンベアと、前記レールに対して直角方向に回転する車輪とを備えた浚渫物移送機構が装填されており、該浚渫物移送機構は、端部に変角可能な結合器具を備えており、該浚渫物移送機構の周囲は、端部が柔軟接合された被覆部材で包囲されていることを特徴とする浚渫物移送装置を提供する。
本願第2の発明によれば、連結された複数の浚渫物移送機構に設けられたレールは
浚渫物移送装置全体において同一軌道を有しており、レールに支えられた容器がレールに支えられた状態で浚渫物移送機構間を順次移送される上記の浚渫物移送装置を提供する。
本願第3の発明によれば、被覆部材の端部が防水機能を備えた変角可能な柔軟接合である上記の浚渫物移送装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本願第1〜2の発明によれば、複数の浚渫物移送ユニットが連結された浚渫物移送装置であって、該浚渫物移送ユニットの内部には、両側に支持棒を有する容器と、該容器の支持棒を支えるレールと、該容器の支持棒を移送するための突起を有する無端コンベアと、前記レールに対して直角方向に回転する車輪とを備えた浚渫物移送機構が装填されており、該浚渫物移送機構は、端部に変角可能な結合器具を備えており、該浚渫物移送機構の周囲は、端部が柔軟接合された被覆部材で包囲されている浚渫物移送装置を提供することにより、ダムの湖面や起伏の多い陸地を経由して浚渫物を遠くの作業場まで安定して移動することができる。
本願第3の発明によれば、円筒被覆部材の両端部が防水機能を備えた変角可能な柔軟接合にすることにより浚渫物移送装置を湖面に浮揚することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ダム湖から作業場まで浚渫物を移送する態様を示す概要図である。
【
図2】ダム湖における浚渫装置と該浚渫装置で汲み上げた浚渫物を浚渫物移送装置で移送している態様を模式的に示したものである。
【
図4】開閉可能な蓋が設けられた浚渫物移送ユニットの断面図である。
【
図7】浚渫物移送ユニットを変角可能に結合する結合器具の一例である。
【
図8】浚渫物移送ユニット内の浚渫物移送機構が浚渫物を移送している状態を示す斜視図である。
【
図9】無端コンベアに設けられた突起部により容器を移送している浚渫物移送機構の態様を示した模式図である。
【
図10】本願発明の浚渫物移送装置が敷設された状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ダム湖から吸引機で吸い上げた浚渫物コンベアやバックホウ等により汲み上げた浚渫物を作業場まで移送する移送装置は従来から知られていたが、その殆どはダム湖の湖底から汲み上げた浚渫物をダム湖近くの作業場までの短い距離移送するのに適した装置である。本発明の浚渫物移送装置は、このような従来の浚渫物移送装置とは異なりダム湖から浚渫された土砂や礫からなる浚渫物を湖面上や起伏の多い山間部を経て平地の作業場まで安定的に、しかも低コストで移送する浚渫物の移送装置を提供するものである。本発明の浚渫物移送装置は従来から知られている浚渫物移送装置と比較して、長距離の移送が可能であるため浚渫物を処理する作業場を広い領域から選択することができるとともに、本発明の浚渫物移送装置は個々の浚渫物移送ユニットの連結体であるため操作性が良好で設置が容易であり、しかも長期間使用のためのメンテナンスが簡単という優れた特徴を有している。本発明の浚渫物移送装置の詳細について、
図1〜
図10にしたがって説明する。
【0010】
先ず、
図1は本発明の浚渫物移送装置を用いてダム湖から作業場まで浚渫物を移送する態様を示す概要図であり、
図1において蛇行しながらダム湖上や地上部に施設されているのが浚渫物移送装置(1)である。また(3)は浚渫装置であり、(4)はダム湖であり、(6)はダム湖のダム堤防である。また、
図1において、(2)で示されているのは本発明の浚渫物移送装置(1)を形成する個々の浚渫物移送ユニットである。なお、本発明の浚渫物移送装置(1)の長さは該浚渫物移送ユニット(2)が連結された数によって決定されることになる。
また、この浚渫物移送ユニット(2)は浚渫物移送機構と該浚渫物移送機構を被覆するための円筒状の被覆部材から構成されている。また、この浚渫物移送装置(1)は浚渫物移送機構及び被覆部材のそれぞれの端部同士が変角可能に結合されているだけでなく、浚渫物移送機構を被覆する円筒体の端部同士の接合部は内部に水が侵入しないように密閉結合することが必要である。そして、水が侵入しないように密閉結合された円筒状体は大きな浮力を有しているため被覆部材内の浚渫物移送機構の容器に浚渫物が満載された状態であっても浚渫物移送装置(1)をダム湖の水面に浮遊させることができる。
【0011】
図2は浚渫装置(3)を用いて湖底から土砂や礫(5)を浚渫したものを浚渫物移送装置(1)で移送している態様を模式的に示したものであり、
図2における(3)は浚渫装置であり、(2)は浚渫物移送ユニットであり、(1)は浚渫物移送ユニット(2)が多数連結された本発明の浚渫物移送装置である。
また、(4)はダム湖であり、(5)はダム湖の湖底に堆積している土砂や礫である。なお、ダム湖の湖底に堆積している土砂や礫(5)はダム湖の水面に対して均等に堆積しているのではなく、
図2に示されているように傾斜している。また(6)はダム湖を形成するために川の流れを堰き止めるダム堤防である。
【0012】
図3は浚渫物移送ユニット(2)の断面を示したものであり、本発明の主要な特徴の一つである浚渫物移送機構(7)の脚部には被覆部材(10)の円周方向に回転可能な車輪(8)が設けられている。本発明では、この浚渫物移送機構(7)の脚部に被覆部材(10)の円周方向に回転可能な車輪(8)を設けることにより、湖面に浮かぶ浚渫物移送装置(1)がたとえ風雨によって揺れ動いて大きく傾斜する場合でも被覆部材(10)内部の浚渫物移送機構(7)の傾きを是正して常に正常な姿勢を保持することが可能となる。(11)は浚渫物移送機構(7)を駆動するモータである。また(9)は浚渫物を装填するための容器であり、上側の容器(9)は浚渫装置から投入された浚渫物が積載された容器を示しており、下側は浚渫物を作業場まで移送して放出した後の空になった容器(9)を示している。なお、この浚渫物移送機構(7)による浚渫物の具体的な移送手段については
図8及び
図9で説明する。
【0013】
図4は開閉可能な蓋(12)が設けられた浚渫物移送ユニット(2)の断面図である。この
図4に記載のものは
図3と同じく浚渫物移送ユニット(2)の断面図であるが、
図4が
図3と相違する点は浚渫物移送機構(7)を被覆する被覆部材(10)の上側に開閉自在の蓋(12)が設けられている点である。
被覆部材(10)に開閉自在の蓋(12)を設けると、浚渫物移送機構(7)が故障した場合に蓋(12)を開けて内部に入って修理をすることができる。開閉自在の蓋(12)を設ける位置は、被覆部材(10)の断面が円形状ならば水平方向の最大径の部分より上側であれば水が侵入することがない。
なお、
図3や
図4では浚渫物移送機構(7)の被覆部材(10)として断面が円形状のものだけを例示したが、被覆部材(10)の断面は必ずしも円形状である必要はない、と言うのも被覆部材(10)は浚渫物移送ユニット(2)が風雨で大きく揺れた場合に浚渫物移送機構(7)に設けられた車輪(8)がスムーズに回転するために下側は断面を円形状にすることが必要であるが被覆部材(10)の上側の断面は必ずしも円形状に限定されるものではない。
【0014】
図5は浚渫物移送ユニット(2)の側面図であり、本発明の浚渫物移送装置(1)はこのような浚渫物移送ユニット(2)が連結されたものである。この浚渫物移送ユニット(2)の側面図には記載されてないが、浚渫物移送機構(7)の両端部には
図7に示されているような結合器具(16)で変角可能に結合されている。また、被覆部材(10)の端部も
図10に示されているような変角可能な接続管(18)(19)を用いて連結して本発明の特徴である長尺体の浚渫物移送装置(1)を形成するものである。この被覆部材(10)の内部には浚渫物移送機構(7)が装填されており該浚渫物移送機構(7)には揺れに対応するための車輪(8)が設けられている。そして、浚渫物移送機構(7)の上段には浚渫物が積載された容器(9)が矢印方向に移動している。また、浚渫物移送機構(7)の下段には浚渫物を作業場まで移送した後の空の容器(9)が矢印方向に移動している。なお、浚渫物が積載されている上段の容器(9)及び下段の空の容器(9)は浚渫物移送機構(7)の両側に設けられているレール(13)で支えられながら無端コンベア(14)に設けられている突起で押されて移動する。なお、浚渫物移送機構(7)の両側に設けられているレール(13)の間隔は浚渫物移送機構(7)の端部同士が嵌合できるように、レール(13)の一方の端部と他方の端部の間隔は異なっている。この浚渫物移送機構(7)の両側に設けられているレール(13)の間隔が異なっていることは
図6及び
図8にも図示されている。
【0015】
図6は浚渫物移送ユニット(2)の平面図であり、小石が入っているような模様の容器(9)は
図5の上段の浚渫物が入っている容器を示しており白地の容器(9)は
図5の下段の浚渫物の入っていない空の容器を示している。
浚渫物が入っている容器(9)及び浚渫物の入っていない空の容器(9)は共に浚渫物移送機構(7)の両側に設けられているレール(13)に支持されてモータ(11)で駆動されているチェーン等の無端コンベア(14)に設けられた突起に押されて移動するが、その詳細は
図8に示す。なお、浚渫物移送機構(7)の両端に設けられている(16)は浚渫物移送ユニット(2)内の浚渫物移送機構(7)を連結する結合器具であり、この結合器具(16)で浚渫物移送機構(7)を連結することにより長尺の浚渫物移送装置(1)を形成する。また、被覆部材(10)の端部同士も
図10で示されているような変角接合が可能なコルゲート接合管(18)や先ラッパ状の拡大管と端経が小さい管とを組み合わせた係合接合管(19)等で変角可能に接続する。
【0016】
図7は浚渫物移送ユニット(2)を変角可能に結合する結合器具(16)であり、結合部が水平方向及び垂直方向に回転することが可能な構造になっている。具体的には浚渫物移送機構(7)と浚渫物移送機構(7)の端部同士を結合するための結合器具(16)を示したものであり、この結合器具(16)を用いることにより浚渫物移送ユニット(2)の接合部が変角可能に結合されることになる。と言うのも浚渫物移送機構(7)と浚渫物移送機構(7)の連結部はダム湖上や狭隘な山間部における天候や地形によって発生する変形を吸収する必要があるためである。なお、
図7では典型的な結合器具(16)である(イ)(ロ)を例示したが、この結合器具(16)は任意な変角が可能であればどのようなものであってよい。ただ、本発明の浚渫物移送機構(7)は大きいため、使用する結合器具(16)は頑丈な構造であることが必要である。
【0017】
図8は被覆部材(10)内の浚渫物移送機構(7)が浚渫物を移送している態様を示した斜視図であり、この
図8は本発明の重要な構成要件である浚渫物が積載されている上段の容器(9)と浚渫物が空の下段の容器(9)が浚渫物移送機構(7)の両側に設けられたレール(13)に支えられながら無端コンベア(14)の突起(15)によって移動する状態が示されている。
また、この
図8の(16)は、
図7の(16)−(イ)の結合器具を示している。
なお、
図8では内部の機構を説明するために被覆部材(10)が除かれた図面が描かれているが、被覆部材(10)の端部は、
図10の(18)に示されている様なコルゲート接合管や、(19)で示されているようなラッパ状の拡大管に先端が細くなった管が挿入された係合接合管の接続端部が、丁度結合器具(16)が設けられている位置とほぼ同じ位置の外側に設けられており変角を可能にしている。
【0018】
図9は無端コンベア(14)に設けられた突起(15)で押されながら容器(9)を移送している浚渫物移送機構(7)の態様を示した模式図である。
この装置の具体的な作動態様としては、浚渫物移送機構(7)の両側に設けられたレール(13)で容器(9)の両側に設けられた支持棒(17)を支持した状態でチェーン等の無端コンベア(14)に設けられた突起(15)で矢印方向に移送する構造の片側だけを拡大して模式的に示したものである。本発明の浚渫物移送装置(1)は個々の浚渫物移送ユニット(2)の内部に設けられた浚渫物移送機構(7)で浚渫物が積載された容器(9)をこの様な方式で移送しているため制御を容易に行うことが可能となる。
また支持棒(17)はレールの上を回転して移動するために、浚渫物移送機構(7)の浚渫物移送の為のエネルギーは従来の方式に比べて極めて小さく、経済的な長期間の浚渫を実現できる。なお、支持棒(17)の表面に被覆部材を設けて、支持棒(17)を押しながら該被覆部材を回転させるようにしても良い。
【0019】
図10は本願発明の浚渫物移送装置(1)が敷設された状態の模式図であり、多数の浚渫物移送ユニット(2)が連結された長い浚渫物移送装置(1)が実際にダム湖や陸地を経由しながら作業場までを敷設されている態様を模式的に示したものである。なお、この
図10において、(18)及び(19)で示されているものは浚渫物移送機構(7)と浚渫物移送機構(7)が変角可能に設けられた結合位置と同じ位置に設けられた被覆部材(10)と被覆部材(10)の結合部位であり、接合は当然変角可能に設けられている。管と管を変角可能に設ける手段としては特に限定されているわけではないが、例えば、コルゲート接合管(18)で接合することやラッパ状の拡大管と先端経が小さい管とを組み合わせた係合接合管(19)であっても良い。本発明はこのような浚渫物移送装置(1)を用いることにより理論的には数キロの長さまで浚渫物を移送することが可能であるが、実際問題としては数百メートルの距離まで移送することが効果的である。