特許第5968863号(P5968863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968863
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】電位治療器及び電位治療器用プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/10 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   A61N1/10
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-242125(P2013-242125)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-100474(P2015-100474A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2014年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502247927
【氏名又は名称】コスモヘルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】南雲 陽一
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−189525(JP,A)
【文献】 特開2010−184113(JP,A)
【文献】 特開2009−119011(JP,A)
【文献】 特開2004−089573(JP,A)
【文献】 特開平04−240459(JP,A)
【文献】 特開平04−231073(JP,A)
【文献】 特開昭61−290964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/10
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間ごとに電位出力の電圧レベルを変更して被治療者に電位を印加する電位治療器であって、
前記電圧レベルを変更する際に、電圧レベルに対応するランダムの値を生成し、当該ランダム値に基づく電圧レベルが、変更前電圧レベルに対してプログラムに設定されている若しくはユーザによって設定された閾値以上の差がある場合に、これを変更後電圧レベルとすることを特徴とする電位治療器。
【請求項2】
前記ランダム値に基づく電圧レベルが、プログラムに設定されている若しくはユーザによって設定された上限電圧レベルと下限電圧レベルの間にある場合に、これを変更後電圧レベルとすることを特徴とする請求項1記載の電位治療器。
【請求項3】
所定期間ごとに電圧波形若しくは周波数を変更する請求項1又は請求項2に記載の電位治療器であって、
前記電圧波形若しくは周波数を変更する際に、電圧波形若しくは周波数に対応するランダムの値を生成し、当該ランダム値に基づく電圧波形若しくは周波数が、変更前電圧波形若しくは周波数と相違する場合に、これを変更後電圧波形若しくは周波数とすることを特徴とする電位治療器。
【請求項4】
前記所定期間ごとの変更後電圧レベル又は電圧波形若しくは周波数を、前記電位治療器の電源がオンにされた際に予め算出してテーブルに設定しておき、被治療者への電位印加動作時には前記テーブルに設定されている電圧レベル又は電圧波形若しくは周波数に基づいて動作することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の電位治療器。
【請求項5】
電源部と、制御部と、記憶部と、波形生成部と、昇圧部と、電位出力部と、操作部とを備える電位治療器において、被治療者に印加する電位の電位出力の電圧レベルを所定期間ごとに変更させるための変更後電圧レベルを算出するプログラムであって、
電圧レベルに対応するランダムの値を生成するステップと、当該ランダム値に基づく電圧レベルが、変更前電圧レベルに対して、プログラムに設定されて若しくはユーザによって設定されて前記記憶部に格納されている閾値以上の差があり、且つ、プログラムに設定されている若しくはユーザによって設定された上限電圧レベルと下限電圧レベルの間にあるか否かを判別するステップと、判別結果が肯定である場合に、これを変更後電圧レベルとするステップを、前記制御部に実行させることを特徴とする電位治療器用プログラム。
【請求項6】
前記所定期間ごとの変更後電圧レベルを、前記電位治療器の電源がオンにされた際に自動生成するステップと、当該変更後電圧レベルを連続する各要素間において前記閾値以上の差があるようにテーブルに格納していくことにより電圧テーブルを生成するステップと、当該電圧テーブルを前記記憶部に格納するステップと、を実行させることを特徴とする請求項5記載の電位治療器用プログラム。
【請求項7】
電圧波形若しくは周波数を所定期間ごとに変更させるための各変更後電圧波形若しくは周波数を算出する請求項5又は請求項6に記載のプログラムであって、
前記電位治療器の電源がオンにされた際に、電圧波形若しくは周波数に対応するランダムの値を生成するステップと、当該ランダム値に基づく電圧波形若しくは周波数が、変更前電圧波形若しくは周波数と相違する場合にこれをテーブルに格納していくことにより波形テーブル若しくは周波数テーブルを生成するステップと、当該波形テーブル若しくは周波数テーブルを前記記憶部に格納するステップと、を実行させることを特徴とする電位治療器用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被治療者に高電位を印加する電位治療器に関するものであり、特に電位出力の構成要素(出力電圧や波形など)を変化させる電位治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
被治療者に対して高電圧を印加することで、肩こり、頭痛、不眠症、慢性便秘等の症状についてこれを改善する効能があることが知られており、被治療者に高電位を印加する電位治療器が利用されている。このような電位治療器に関する従来技術が特許文献1〜3などによって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−189525号公報
【特許文献2】特許第4246674号公報
【特許文献3】特許第4508744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電位治療器では、被治療者は体感があまりない(高電位が印加されているか否かわかり難い)ものではあるが、電位出力の構成要素(出力電圧や周波数、波形など)が一定のまま使用を続けると、“慣れ”により、体感や治療実感などが低下するという問題がある。このような問題に対し、出力電圧や波形が異なる複数の治療プログラムを予め記憶させておき、これをランダムに選択させる等することで慣れを防止する技術が特許文献1によって開示されている。
【0005】
慣れを防止するために必要なことは、時間経過に伴い刺激レベル(≒電位)や出力パターンを変化させることと考えてよいが、刺激レベルについては、ある一定の電圧差以上の変化が必要と考えられる。また波形や周波数を時間経過により変化させることも望まれる。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑み、被治療者の慣れを抑止することが可能な電位治療器又は電位治療器用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の電位治療器は、所定期間ごとに電位出力の構成要素を変更して被治療者に電位を印加する電位治療器であって、前記電位出力の構成要素を変更する際に、変更前構成要素に対して予め定められている若しくはユーザによって設定された閾値以上の差があるような電位出力の構成要素を変更後構成要素とすることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、被治療者に高電位を印加するための電圧の出力の構成要素が、所定期間ごとに変更され、且つ、当該変更時において、閾値以上の差があるように電位出力の構成要素が変更される。なお、「所定期間」とは、一定期間である(即ち一定間隔で電位出力の構成要素が変更される)ものだけではなく、各種の所定条件に従って定められるものであってよい。
【0009】
本発明に係る第2の電位治療器は、第1の電位治療器であって、前記変更される電位出力の構成要素が、電圧波形若しくは周波数若しくは電圧レベルであることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、電圧波形若しくは周波数若しくは電圧レベルが、所定期間ごとに変更され、且つ、当該変更時において、閾値以上の差があるように変更される。
【0011】
本発明に係る第3の電位治療器は、第1又は第2の電位治療器であって、前記電位治療器の電源がオンにされた際に予め前記変更後構成要素を算出してテーブルに設定しておき、被治療者への電位印加動作時には前記テーブルに設定されている電位出力の構成要素に基づいて動作することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、装置の電源オン時に、電位出力の構成要素(所定期間ごとに閾値以上の差が生じるように設定された構成要素)が格納されたテーブルが生成されるため、動作時(被治療者に電位を印加する際)には当該テーブルに基づいて処理すればよく、閾値以上の差を設けるための電位出力の構成要素(変更後構成要素)を動作時に逐一算出する必要がない。なお、ここでの「電源オン」とは、装置の主電源が入れられた場合の他、スタンバイ状態から復帰させる場合等、ユーザが装置を使おうとする際に装置をアクティブ状態にするための各種の操作を含む概念である。
【0013】
本発明に係る第1の電位治療器用プログラムは、電源部と、制御部と、記憶部と、波形生成部と、昇圧部と、電位出力部と、操作部とを備える電位治療器において、被治療者に印加する電位の出力の構成要素を所定期間ごとに変更させるための変更後構成要素を算出するプログラムであって、変更前構成要素に対して、予め定められて若しくはユーザによって設定されて前記記憶部に格納されている閾値以上の差がある電位出力の構成要素を算出してこれを変更後構成要素とするステップを、前記制御部に実行させることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、被治療者に高電位を印加するための電圧の出力の構成要素が、所定期間ごとに変更され、且つ、当該変更時において、閾値以上の差があるように電位出力の構成要素が変更される。
【0015】
本発明に係る第2の電位治療器用プログラムは、第1の電位治療器用プログラムであって、前記変更される電位出力の構成要素が電圧レベルであり、前記電位治療器の電源がオンにされた際に、電位出力の構成要素たる電圧値情報を前記制御部によって自動生成するステップと、当該電圧値情報を連続する各構成要素間において前記閾値以上の差があるようにテーブルに格納していくことにより電圧テーブルを生成するステップと、当該電圧テーブルを前記記憶部に格納するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る第3の電位治療器用プログラムは、第1又は第2の電位治療器用プログラムであって、前記変更される電位出力の構成要素が周波数であり、前記電位治療器の電源がオンにされた際に、電位出力の構成要素たる周波数情報を前記制御部によって自動生成するステップと、当該周波数情報を連続する各構成要素間において前記閾値以上の差があるようにテーブルに格納していくことにより周波数テーブルを生成するステップと、当該周波数テーブルを前記記憶部に格納するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る第4の電位治療器用プログラムは、第1乃至第3の何れかの電位治療器用プログラムであって、前記変更される電位出力の構成要素が電圧波形であり、前記電位治療器の電源がオンにされた際に、電位出力の構成要素たる電圧波形情報を前記制御部によって自動生成するステップと、当該電圧波形情報を連続する各構成要素間において前記閾値以上の差があるようにテーブルに格納していくことにより波形テーブルを生成するステップと、当該波形テーブルを前記記憶部に格納するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0018】
上記第2〜第4の電位治療器用プログラムによれば、装置の電源オン時に、電位出力の構成要素たる電圧値情報or周波数情報or電圧波形情報が格納された各テーブルが生成され、これが記憶部に格納される。なお、「電圧値情報」とは電圧値そのものを示すものであってもよく、また、電圧値に対応させた変数等の情報であってもよい(「周波数情報」、「電圧波形情報」についても同様)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電位治療器又は電位治療器用プログラムによれば、被治療者に高電位を印加するための電圧の出力の構成要素が、所定期間ごとに変更され、且つ、当該変更時において、閾値以上の差があるように電位出力の構成要素が変更されるため、被治療者の“慣れ”により、体感や治療実感などが低下することを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電位治療器の外観の概略を示す図
図2】電位治療器の本発明に関する構成を示すブロック図
図3】電位治療器の本発明に関する動作の概略を示すフローチャート
図4】電圧テーブル作成処理の動作の概略を示すフローチャート
図5】周波数テーブル作成処理の動作の概略を示すフローチャート
図6】波形テーブル作成処理の動作の概略を示すフローチャート
図7】各波形(波高比率50:50)を示すグラフ図
図8】各波形(波高比率40:60)を示すグラフ図
図9】各波形(波高比率30:70)を示すグラフ図
図10】各波形(波高比率20:80)を示すグラフ図
図11】各波形(波高比率10:90)を示すグラフ図
図12】各波形(波高比率0:100)を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0022】
図1は、本実施形態の電位治療器1を示す図である。電位治療器1は本体部11と、導電電極板が絶縁シートに覆われて形成されたマット12を備える。電位治療器1は、本体部11によって高電圧を発生させてこれをマット12(電界形成部)へと出力し、マット12上に電界を発生させるものであり、被治療者がマット12上で装置を動作させることで、被治療者に高い電位が印加されて、電位治療が実施されることとなる。
【0023】
図2は、電位治療器1の本体部11のうち、本発明に関連する部分を示したブロック図である。本体部11には、マイコン111と、電源部112と、昇圧部113と、操作部114と、電流制限抵抗115と、電位出力部13などが備えられる。なお、ここでは本発明の説明に関連する部分のみを示しているが、本体部11には他の構成(例えば表示部など)も備えられているものである。
【0024】
マイコン111には、装置全体の制御や各種の演算処理などを行う制御部1111、当該制御部1111からの指示に応じて交流波形(マット12へ出力する電圧の波形)を生成する波形生成部1112や、各種のプログラムや設定値、プログラム実行時に発生する一時的な変数等が格納される記憶部1113などが備えられる。電源部112は、商用電源2から得られる電力を装置内の各部に分配する回路であり、マイコン111などへ供給する制御系の電源の他、昇圧部113へも電力を供給する。昇圧部113は、トランス等によって構成され、波形生成部1112から得られる出力波形と電源部112から得られる電源に基づいて、最大で14000V(波高値)の出力電圧を発生させるものである。これによって発生された出力電圧は、漏れ電流を制限するための電流制限抵抗115を介して電位出力部13から出力される(電位出力部13には、ケーブルを介してマット12が接続される)。 なお、操作部114はユーザ(基本的には被治療者)からの入力を得るためのものであり、ユーザによる操作部114の操作に基づいて得られる信号が制御部1111に入力されることにより、これに基づいた各種の動作処理が実行されるものである。
【0025】
本発明に係る電位治療器1は、被治療者の慣れを防止するために、時間経過に伴い刺激レベル(電位)や出力パターン(波形・周波数)を変化させるものであり、且つ、変化量が所定値以上になるようにしているものである。本実施形態では、図7(A)〜(D)に示されるように4つの波形(正弦波(波形1)と、正弦波をベースに高調波を重畳したもの(波形2〜4))があり、これらの電圧波形の切り替えと、それぞれの波形の波高値(電圧レベル)、周波数も変化させるものを例としている。より具体的には、電圧は1000V〜14000Vの間で変化させ(即ち図7の波形の波高値が1000V〜14000Vの間で変化する)、周波数は20〜100Hzの間で変化させており、また、電圧を変化させる際には最低500Vより差があるようにしているものを例としている。本実施形態では、1回の動作(電位治療)が60分で、3秒(所定期間)ごとに電位出力の構成要素(電圧・波形・周波数)を変化させるものを例としており、即ち、1回の動作において、1199回の電位出力の構成要素の変更が行われるものである。
【0026】
次に、図3図6のフローチャートを参照しつつ、本実施形態の電位治療器1の本発明に関する動作の概略を説明する。 なお、以降の説明では処理主体を省略して説明するが、各処理動作では、記憶部1113に格納されているプログラムが制御部1111において実行されることを基本とし、必要な情報を記憶部から読み出し若しくは保存しつつ各種の演算処理が制御部で行われるものである。
【0027】
図3は、本実施形態の電位治療器1の本発明に関する動作の概略を示すフローチャートである。なお、ここでは本発明に関する処理部分のみを説明対象にしているため、電位治療器1において実行されるその他の処理については省略又は簡略している。
【0028】
ユーザ(基本的には被治療者)が装置の電源(操作部114に備えられる電源スイッチ)をオンにすると(S301:Yes)、電圧テーブル作成処理、周波数テーブル作成処理、波形テーブル作成処理が実行される(S302〜S304)。
【0029】
図4は、図3のS302で実行される電圧テーブル作成処理の動作の概略を示すフローチャートである。電圧テーブル作成処理(図4)が実行されるとまずカウントの初期化を行う(S401)。カウントとは、電位出力の構成要素の変更数に応じた数値であり、前述のごとく本実施形態では1回の動作(電位治療)が60分で3秒ごとに電位出力の構成要素を変化させるものであって1200の電位出力の構成要素(必ずしも1200通りの異なる電位出力の構成要素となるものではない)があり、これに対応させて0〜1199のカウントが設定されるものである。なお、カウントの上限値については記憶部1113に格納されている(プログラム中のパラメータとして保持されている)。電圧テーブル作成処理は、1200の電位出力の構成要素(電圧値情報)を生成し、当該生成した情報を電圧テーブルに格納するための処理である。
【0030】
S401(カウントを0にする処理)に続くS402では、擬似乱数関数を用いて整数値を生成する(本実施形態では0〜32767の数値(15ビット整数))。続いて、当該整数値を「2点間電圧の最大カウント数」で割った余りを求める処理を行う(S403)。
【0031】
本実施形態における「2点間電圧の最大カウント数」とは1000v〜電圧高設定まで100v単位でカウントしていく場合のカウント数である。また、次のS404で出てくる「最小カウント数」とは1000v〜電圧小設定まで100V単位でカウントしていく場合のカウント数である。前述のごとく、本実施形態では電圧は1000V〜14000Vの間で変化させるものであるが、モードとして例えば3000V〜10000Vの範囲の電圧を印加するモードや、7000V〜14000Vの範囲、1000V〜14000Vの範囲の電圧をそれぞれ印加するモードがあり、最小電圧や最高電圧(即ち電圧範囲)を個別に設定することもできる。 ここではそれぞれのモードでの最小電圧を「電圧小設定」と呼び、最大電圧を「電圧高設定」と呼んでいる。例えば、「電圧設定」時に電圧高設定が10100V、電圧小設定が4400V、であった場合、「2点間電圧の最大カウント数」は(10100‐1000V)/100+1=92となり、「最小カウント数」は(4400−1000V)/100+1=35となるものである。
【0032】
S403に続くS404では、S403で取得した余りが、「最小カウント数」以上か否かを判別し、最小カウント数以上の場合にはS405へと移行し、そうでない場合はS402へと戻って乱数を取得しなおす。これは、「電圧小設定」未満の電圧を排除するための処理となる。S402で乱数を発生させ、S403ではこれの「2点間電圧の最大カウント数」による剰余を求めているため、上記の例(電圧高設定が10100V)で言えば0〜91の値となる。これは即ち、1000V〜10100V(100V刻み)に対応する値(電圧値情報)であるが、このうちの「電圧小設定(4400V)」未満に該当するものを排除しているものである(設定された電圧範囲内に入らない場合は再計算をしている)。なお、S402〜S404の処理は、電圧設定範囲に対応する数値(上記の例で言えば34〜91)を取得するためのものであり、他の計算方法で当該数値を算出させる処理であってよい。
【0033】
S405では、S403で取得した余りが、前回値より±5を超えて大きい(又は小さい)か否か(即ち、前回から600V以上差があるか否か)を判別する。なお、「前回値」はS407で設定される値であり、上記の例で言えば、34〜91の値(4400V〜 10100Vに対応)が設定されることとなる(S402〜S409のループ処理の1回目の処理では「前回値」がまだないためS405はスキップしてS406へ)。判別の結果、前回値より±5を超えて大きい(又は小さい)場合(即ち、前回から600V以上差がある場合)には、S406へ移行し、そうでない場合(前回から600V以上の差がない場合)にはS402へと戻って再計算を行う。
【0034】
S406・S407では、S403で取得した余値をカウントに対応付けて電圧テーブルに格納し、余値を前回値として保存する処理を行い、続くS408ではカウントをインクリメントする。なお、電圧テーブルに格納する情報は、余値(電圧値情報)をそのまま格納するものであっても良いが、電圧値に変換して格納するものであっても良い(上記例で言えば、例えば余値が48であった場合には5800V)。
【0035】
S409では、カウントの上限値(本実施形態では1199)まで電圧テーブルに余値(電圧値情報)を格納する処理が実行されたか否かを判別し、上限値まで処理が終了していなければ、S402へと戻って上述のループ処理を実行し、終了した場合にはS410へ移行して完成した電圧テーブルを記憶部1113に格納して電圧テーブル作成処理を終了する。
【0036】
以上の説明から明らかなように、電圧テーブル作成処理によって、所定期間(上記例では3秒)ごとに対応する電圧値情報が生成されるものであり、且つ、「前回値」(変更前構成要素に該当)に対して閾値(上記例では600V)以上の差を設けた電圧値情報が変更後構成要素としてテーブルに格納されるものである。
【0037】
図5は、図3のS303で実行される周波数テーブル作成処理の動作の概略を示すフローチャートである。周波数テーブル作成処理は、電圧テーブル作成処理と基本的には同様のものであり、1200の電位出力の構成要素(周波数情報)を生成し、当該生成した情報を周波数テーブルに格納するための処理である。
【0038】
周波数テーブル作成処理(図5)が実行されるとまずカウントの初期化を行い、擬似乱数関数を用いて整数値を生成する(S501〜S502)。これは電圧テーブル作成処理(図4:S401〜S402)と同様のものである。
【0039】
続くS503では、S502で得た整数値を「周波数の取り得る値数」で割った余りを求める処理を行う。前述のごとく本実施形態では周波数を20〜100Hzの範囲で変化させる(1Hz単位)ものとしており、ここでいう「周波数の取り得る値数」は81となる。なお、S502〜S503の処理は、周波数範囲に対応する数値(上記の例で言えば0〜80)を取得するためのものであり、他の計算方法で当該数値を算出させる処理であってよい。
【0040】
S503に続くS504では、S503で取得した余りが、「前回値」と同じか否かを判別する。「前回値」はS506で設定される値であり、上記の例で言えば、0〜80(20〜100Hzに対応)となる値が設定されることとなる(S502〜S508のループ処理の1回目の処理では「前回値」がまだないためS504はスキップしてS505へ)。判別の結果、前回値と違う場合(即ち、前回と周波数が異なる場合)には、S505へ移行し、前回と同じ場合にはS502へと戻って再計算を行う。
【0041】
S505・S506では、S503で取得した余値をカウントに対応付けて周波数テーブルに格納し、余値を前回値として保存する処理を行い、続くS507ではカウントをインクリメントする。なお、周波数テーブルに格納する情報は、余値(周波数情報)をそのまま格納するものであっても良いが、周波数に変換して格納するものであっても良い(上記例で言えば、例えば余値が23であった場合には43Hz)。
【0042】
S508では、カウントの上限値(本実施形態では1199)まで周波数テーブルに余値(周波数情報)を格納する処理が実行されたか否かを判別し、上限値まで処理が終了していなければ、S502へと戻って上述のループ処理を実行し、終了した場合にはS509へ移行して完成した周波数テーブルを記憶部1113に格納して周波数テーブル作成処理を終了する。
【0043】
以上の説明から明らかなように、周波数テーブル作成処理によって、所定期間(上記例では3秒)ごとに対応する周波数情報が生成されるものであり、且つ、連続する各所定期間において同じ周波数が使われることがないように周波数情報が生成され、これが周波数テーブルに格納されるものである。なお、ここでは「連続する各所定期間において同じ周波数が使われない」ものを例として説明したが、一定の閾値以上の差があるようにする処理(図4のS405と同様の処理を行う)としてもよい(上記例では1Hzの閾値にしているとも言える)。
【0044】
図6は、図3のS304で実行される波形テーブル作成処理の動作の概略を示すフローチャートである。波形テーブル作成処理も、1200の電位出力の構成要素(電圧波形情報)を生成し、当該生成した情報を波形テーブルに格納するための処理である。S603における「波形の取り得る値数」という点のみが周波数テーブル作成処理と相違するのみであとは同様の処理概念であるため、「波形の取り得る値数」についてのみ説明し、その他は説明を省略する。
【0045】
本実施形態における「波形の取り得る値数」とは、波形の種類の数であり、前述のごとく、本実施形態では図7(A)〜(D)に示される4つの波形である(即ち、「波形の取り得る値数」は4となる)。従って、波形テーブル作成処理によって、波形を示す値(電圧波形情報)がカウントに対応付けられて波形テーブルに格納されるものであり、連続する各所定期間において同じ波形が使われることがないように情報が格納されるものである。なお、ここでは予め波形が4種類設定されており、これの何れかを選択するものを例として示したが、波形自体を自動生成させるような処理としても良い(例えば、基本式を設定しておいて、これに対する係数などのパラメータを自動生成した乱数で定めるなど)。この際に、一定の閾値以上の差があるようにする処理(図4のS405と同様の概念の処理)を行うようにしてもよい。例えば、上記自動生成する係数などのパラメータについて一定以上の差があるようにしたり、生成された波形に対して一定の計算(例えば、微分や積分など)を行い、これによって得られた値について一定以上の差があるようにする等してもよい。
【0046】
図3に戻って説明を続ける。
【0047】
上記説明したS302〜S304の処理(図4図6の処理)により、電源オン後に電圧テーブル、周波数テーブル、波形テーブルが自動生成されて記憶部1113に格納される。
【0048】
S302〜S304に続くS305では操作部114に対するユーザからの操作を待つ。操作部114への操作が電源オフであった場合には(S305:Yes → S306:Yes)、S301へと戻って上記の処理を繰り返す(S301で次の電源オンを待つ)。
【0049】
一方、操作が電源オフでない場合には(S305:Yes → S306:No)、当該操作に対応した処理を実行して(S307)、これが終わったらS305へと戻って、ユーザからの次の操作を待つ。ユーザの操作が、本発明に関する電位治療の実施指示であった場合には、上記予め設定された各テーブルの条件に従って、電圧を印加する処理が実行されることとなる。即ち、上述のごとく、本実施形態では、60分コースで、3秒ごとに電位出力の構成要素(電圧・波形・周波数)を変更させるものであり、記憶部1113に格納されている各テーブルに設定されている値を読み出し、これによって得られる波形、電圧、周波数となる電圧波形が電位出力部13から出力されるように、制御部1111が各部を制御するものである。なお、本実施形態の電位治療器では、波高値比率(交流波形における正負の波高値の比率)の設定も出来るものであり、図8図12に示されるように、波高値比率の設定に応じた波形が生成される。例えば、波高値比率が40:60に設定されている場合には図8(A)〜(D)、波高値比率が10:90に設定されている場合には図11(A)〜(D)の波形がそれぞれ波形1〜4の波形として使用されるものである。
【0050】
以上のごとく、本実施形態の電位治療器では、所定期間(上記例では3秒)ごとに電位出力の構成要素が変更されるように、且つ、変更時に閾値以上の差が生じるようにして、テーブルに電位出力の構成要素を格納しておき、電位治療動作時には、当該テーブルの条件に従って電圧波形が生成されるものである。従って、被治療者に高電位を印加するための電圧の出力の構成要素が、所定期間ごとに閾値以上の差があるように変更されるため、被治療者の“慣れ”により、体感や治療実感などが低下してしまうことを抑止することができる。 また、本実施形態では電源オン時に初期設定として各テーブルを自動生成しておき、電位治療動作時には当該テーブルの情報を読み出すだけであるので、電位治療動作時のマイコンの負荷を低減させることができるものである。
【0051】
なお、本実施形態では、各テーブルの生成処理について、ソフトウェア的に実行されるものを例として説明したが、その処理機能の一部又は全部が専用回路(ハード)によって構成されるものであってもよい。また、図3において、電圧テーブル作成処理→周波数テーブル作成処理→波形テーブル作成処理の順番で処理されるものを例としているが、これらの順番は任意で構わないし、一部又は全部が同時に実行(並列処理)されるものであってもよい。 また、上記例として説明した各条件値(電圧範囲、周波数範囲、波形種類、電位治療動作時間、所定期間など)は、一例であってこれに限定するものではない。
【0052】
本実施形態では、電圧、周波数、波形について所定期間ごとに変更させるものを例としているが、これらの一部のみ又は他の電位出力の構成要素を変更させるものであっても構わない。他の電位出力の構成要素としては例えば、図8図12に示したような波高値比率についても、自動的に所定期間ごとに変更させるようにしてもよい。 また、本実施形態では閾値が予め設定されているものを例としているが、これをユーザに設定させるものとしてもよい。加えて、本実施形態では所定期間が一定のもの(3秒)を例としているが、所定期間は、一定期間である(即ち一定間隔で電位出力の構成要素が変更される)ものだけではなく、各種の諸条件に従って定められるものであってよい(例えば所定の数式で毎回計算を行いこれによって算出される値を「所定期間」としたり、乱数によって得られる値を「所定期間」とするなど)。
【0053】
本実施形態では、3000V〜10000Vの範囲の電圧を印加するモードや、7000V〜14000Vの範囲、1000V〜14000Vの範囲の電圧をそれぞれ印加するモードがあり、最小電圧や最高電圧(即ち電圧範囲)を個別に設定することもできるという説明をし、実際に各テーブルの自動生成をする処理については1つの電圧範囲設定分しか生成しないような説明としているが、各電圧範囲設定に対応する各テーブルを全て電源オン時に自動生成するようにしてもよい。また、本実施形態では、各テーブルを電源オン時に自動生成して記憶部に格納するものとして説明しているが、電位治療動作時に随時「電位出力の構成要素」を前回値から閾値以上異なるように算出させるものであってもよく、逆に予め装置に設定しておく(電源オン時に自動生成するのではなく、装置製造時又は事後的な装置更新(ソフトのアップデート等)時に各テーブルを設定する)ものであってもよい。ただし、本実施形態のものの方が、電位治療動作時に随時算出するものに対してはマイコンの負荷が小さくなる点で、予め装置に設定しておくもの(=予め設定した分しかバリエーションがない)に対してはランダム性がより高いため被治療者の慣れをより抑止できる点で、それぞれ優れている。
【符号の説明】
【0054】
1 電位治療器
13 電位出力部
112 電源部
113 昇圧部
114 操作部
1111 制御部
1112 波形生成部
1113 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12