(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968873
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】収集容器、収集容器および多相流ポンプからなるシステム、ならびに多相混合物を分離しかつ分配するための方法
(51)【国際特許分類】
E21B 43/00 20060101AFI20160728BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20160728BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20160728BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
E21B43/00 Z
B01D19/00 B
B01D21/02 P
B01D21/02 S
B01D21/24 D
B01D21/24 U
B01D21/24 W
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-508367(P2013-508367)
(86)(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公表番号】特表2013-531190(P2013-531190A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】DE2011000457
(87)【国際公開番号】WO2011137892
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】102010019238.4
(32)【優先日】2010年5月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599005826
【氏名又は名称】アイティーティー・ボーネマン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】イェシュケ、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ロールフィング、ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ブラント、イェンス−ウベ
(72)【発明者】
【氏名】ブレデマイアー、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ライヒバゲ、マルク
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05375618(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第02000688(GB,A)
【文献】
特開平08−071304(JP,A)
【文献】
独国実用新案第8810901(DE,U1)
【文献】
米国特許第05421357(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
B01D 19/00
B01D 21/02
B01D 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素源からの多相混合物のための収集容器であって、該多相混合物を前記収集容器(10,15)に導入するための少なくとも1つの入口(20)と、前記多相混合物をポンピングするために用いられるポンプ(3)に接続させることができる複数の出口コネクタ(30)とを具備し、該出口コネクタ(30)には、内側に向けられておりかつ前記収集容器の底部(11)を介して上に突出している組み込み要素(40)が関連づけられており、該組み込み要素は、第1の上方の開口部(42)および第2の下方の開口部(41)を有し、該下方の開口部(41)の流れ断面は、前記上方の開口部(42)の流れ断面よりも小さく、
前記下方の開口部(42)には、調節可能なスロットルまたは閉鎖手段が関連づけられていることを特徴とする、収集容器。
【請求項2】
前記出口コネクタ(30)は、斜め下方にまたは垂直上方に向けられていることを特徴とする請求項1に記載の収集容器。
【請求項3】
前記収集容器(10,15)は、収集管または収集タンクとして形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の収集容器。
【請求項4】
前記組み込み要素(40)の前記上方の開口部(42)は、垂直に上方に向けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の収集容器。
【請求項5】
前記組み込み要素(40)は、摺動可能および/または回転可能に前記収集容器(10,15)に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の収集容器。
【請求項6】
前記組み込み要素(40)は、インサート、管部分、バッフルまたはディフレクタとして形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の収集容器。
【請求項7】
調整手段(45)は、前記組み込み要素(40)に関連づけられており、該組み込み要素を介して、前記収集容器(10,15)の外側から、前記組み込み要素(40)における前記上方のおよび/または下方の開口部(41,42)の自由な流れ断面を変えることができることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の収集容器。
【請求項8】
前記収集容器(10,15)は、閉じられるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の収集容器。
【請求項9】
閉鎖または計量手段(60,70)は、前記組み込み要素(40)、出口コネクタ(30)および/または出口配管に設けられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の収集容器。
【請求項10】
前記収集容器(10,15)には、気相を液相から分離する複数の分離手段(90)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の収集容器。
【請求項11】
前記1ないし10項のいずれか1項に記載の少なくとも1つの収集容器(10,15)と、該収集容器に接続された複数の多相流ポンプ(3)とからなるシステム。
【請求項12】
入口側には、少なくとも1つの入口多相流ポンプ(3)が設けられており、前記収集容器(15)からは、ライン(5)が前記入口多相流ポンプ(3)の下流側の入口側に通じていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の多相流ポンプ(3)に設けられたセンサおよび調整手段(45)に接続されており、かつ、センサ値に基づいて、少なくとも1つの開口部(41,42)の流れ断面の調整を引き起こす制御手段が設けられていることを特徴とする請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
多相混合物を複数の多相流ポンプ(3)に分離しかつ分配するための方法であって、該方法では、前記多相混合物を、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の前記収集容器(10,15)へ導き、その中で分離手段によって分離し、分離された液相を計量して個々の多相流ポンプ(3)に供給することを特徴とする多相混合物を分離しかつ分配するための方法。
【請求項15】
前記収集容器(10,15)において、前記多相混合物を、流入する多相混合物の流速の減少によって分離することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分離された液相を、送出し方向において、前記収集容器(10,15)の手前に設けられたポンプ(3)に前記ポンプ(3)の入口側で供給することを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記供給された液相および/または気相の量を、センサパラメータによって調整することを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記多相混合物を、任意の或る多相流ポンプの中で分離し、かつ、前記収集容器から計量して、ポンプハウジング内で統合されている他の複数の多相流ポンプへ導くことを特徴とする請求項14ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素源からの多相混合物のための収集容器であって、多相混合物を収集容器に導入するための少なくとも1つの入口を有する収集容器、少なくとも1つの収集容器と、該収集容器に接続された複数の多相流ポンプとからなるシステム、ならびに、多相混合物を複数の多相流ポンプに分離しかつ分配する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多相混合物の、特に炭化水素の搬送の際に、搬送状況が変化する。炭化水素は、通常は、種々の凝縮状態が存在してなる混合物の形で搬送される。固相、例えば砂のほかに、液相および気相が存在する。これらの相は、異なる割合で存在し、多相混合物の組成は、広い範囲で変化する。それ故に、多相混合物のどの組成が、いつおよびどの位長く搬送されるかは予測できない。従って、主な液相成分を伴う搬送の長時間後に、長時間気相成分が搬送されて、部分的に、気相の搬送のみになることが生じる。従って、多相混合物の成分の発生の時点および期間および比率は不明である。このことは、搬送を困難にする。
【0003】
炭化水素源の開発の際の投資コストは極めて高い。この場合、複数の搬送ポンプが設けられていることが必要であるのは、ポンプの必要なサイズがないため、あるいは、ポンプの、需要に合うサイズが技術的にまたは経済的に適切でないため、例えば、搬送される容量が、ポンプのサイズにより技術的に適切に搬送することができない場合である。
【0004】
新しい搬送分野は、数年後にやっと、最大限の生産を開発する。それ故に、搬送のはじめに、ポンプの比較的小さなサイズで十分であるという問題がある。しかしながら、このことが、更なる操業の間に、諸問題をもたらすかもしれないのは、始めに適切なサイズがもはや十分でない場合である。従って、所望の冗長性および故障安全性のほかに、吐出し量の可変性を使用することができるためには、互いに並設されている複数のポンプユニットを作動させる可能性がある。物流的な見地では、ポンプの1つのサイズを定め、かつ吐出し量への種々の要求を、異なる数の平行な多相流ポンプによって、あるいは、個々の多相流ポンプの、吐出し量への適切な調整によって満たすことは適切であるかも知れない。
【0005】
多相流ポンプの冗長な配置は、故障のリスクを、特に、完全故障のリスクを減じる。可変速の多相流ポンプの使用は、通常の場合には、適切な設計において、減速回転を伴う、摩耗の少ない動作を可能にし、これに対し、任意の或るポンプの故障の際には、1つの残りの集合体または複数の残りの集合体は、高い動作速度によって、吐出し流量の停止を著しく補うことができる。
【0006】
炭化水素を搬送する際の多相混合物は、上述のように、凝集体の種々の状態にある物質、例えば、必要な場合には砂を混ぜた水、ガス混合物、原油、天然ガスまたは石油随伴ガスからなる。これらの物質は、互いに異なる比重を有する。多相混合物を複数の多相流ポンプに分配することが意図されるとき、均等な分配の問題が生じる。何故ならば、液体のような重い物質が、好ましくは、下方に設けられた出口に落下し、かつ、好ましくは、側方に設けられた複数の出口の傍を流れ過ぎるからである。従って、主に気体成分で負荷されたポンプによって温度の高い負荷を回避するために、分岐の際に、搬送成分の均等な分配が保証されねばならないという問題がある。
【0007】
生成物の流れの入口での均等な分配を達成するための可能性は、分配箇所の、水平方向の、厳密に対称的な配置にある。このことは、高い所要面積、高重量、およびこれらに伴う高いコストという欠点を有する。更に、常に、2
Xの数のポンプがなければならない。その目的は、均等な分配を達成するためである。1つのポンプの、種々のポンプタイプの装置の故障の際に、個々のポンプのスイッチオフまたは他の故障の際に、個々の多相流ポンプの過負荷をもたらすことになる不均等な分配が生じる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の課題は、気相の長い搬送の際でも温度負荷を減じるために、多相流ポンプに十分な液量をできる限り均等かつ長時間供給することを保証することである。
【0009】
本発明によれば、この課題は、主請求項の特徴を有する収集容器と、独立請求項の特徴を有するシステムと、独立の方法の請求項の特徴を有する方法とによって、解決される。本発明の有利な実施の形態および改善は、従属請求項、記述および図面に示されている。
【0010】
炭化水素源からの多相混合物のための本発明に係わる収集容器であって、多相混合物を収集容器に導入するための少なくとも1つの入口と、多相混合物をポンピングするために用いられるポンプに接続させることができる複数の出口コネクタとを具備する収集容器は、出口コネクタには、内側に向けられておりかつ収集容器の底部を介して上に突出している組み込み要素が関連づけられており、該組み込み要素は、第1の上方の開口部および第2の下方の開口部を有し、下方の開口部の流れ断面は、上方の開口部の流れ断面よりも小さい。収集容器にある組み込み要素によって、比重に関する特に原油および天然ガスの液相および気相の異なる特性が、計量作用および生成物の所望の分配が達成されるように、使用される。気相は、比較的スムーズに上方の開口部の中を流れることができるが、他方、収集容器の底部に沈殿する液相は集められ、かつ、比較的小さな下方の開口部を通って、ゆっくりとしか、多相混合物を運び出すポンプへ導かれない。1つの共通の入口または複数の入口が、多相混合物が収集容器に流入するように、設けられている。多相混合物は、例えば、直接、穿孔から収集容器に流入することがある。収集容器では、重力による、気相と液相の分離がなされる。液相は、収集容器の底部に沈殿し、気相は、収集容器内の液相の上方で分配される。上方の大きな開口部を通って、気相は、スムーズに個々のポンプに導かれる。該ポンプの入口側は、収集容器に接続されている。同様に、液相は、上方の開口部を通ってスムーズに流れる。但し、収集容器内の液面が、上方の開口部に達するために十分に高い場合に限る。上方の開口部の下方には、液相および必要な場合には固形成分で満たされている溜めが形成されている。溜めの排出は、組み込み要素に形成された第2の下方の開口部を通ってなされる。該開口部は、好ましくは、収集容器の底部のレベルに、または収集容器の底部の直ぐ上方に設けられている。液相は、かように、収集容器から、下方の開口部を通って流出し、出口コネクタに接続されている各々のポンプに達する。このことによって、長期間に亘って、すなわち、液相の溜めが排出されるまで、液相が、収集容器から、出口コネクタを通って、各々のポンプに均等に導き出されることが、保証される。最小限必要な液量を長期間に亘って使用することにより、気相のみを入口管を通って搬送する間にも、出口コネクタに接続されたポンプの熱安定性を達成することが保証される。ポンプに供給された液相によって、気相におけるポンプ内に生じる圧縮熱の、主な搬出がなされる。更に、例えばスクリュースピンドルポンプとして形成されたポンプにおいて、複数のスクリュースピンドルの間に存在する、軸受の潤滑およびギャップの密閉が達成される。このことによって、温度安定性、これらのスクリュースピンドルの、搬送された生成物の押し戻しに対する気密性およびポンプの耐久性が高められる。
【0011】
1つの出口コネクタまたは複数のコネクタが、斜め下方にまたは垂直上方に向けられていることが意図されていることは好ましい。従って、出口コネクタを通っての液相の搬出が容易にされる。更に、出口コネクタの際にまたは出口コネクタの中に、組み込み要素の設置が意図されている。それ故に、かようにして、各々の出口コネクタへの、従ってまた各々の出口通路への、およびこれらに接続されたポンプへの、組み込み要素に形成された下方の開口部の簡単な関連づけが実現される。
【0012】
収集容器が収集管または収集タンクとして形成されていることは好ましい。収集容器の、代替の実施の形態は可能である。
【0013】
組み込み要素の上方の開口部が、垂直に上方に向けられているように、組み込み要素を設けることによって、液相のみが開口部の液位の上方で、上方の大きな開口部を通って流れることが実質的に保証される。
【0014】
下方の開口部を通る液流の変化をもたらすことができるためには、下方の開口部に、調節可能なスロットル手段または閉鎖手段が関連づけられていてもよい。スロットル手段または閉鎖手段を介して、流れ断面を減少し、または開口部を閉じることができる。基本的には、所定の出口を遮断するために、または所望の方法で流れ挙動に影響を及ぼすために、上方の開口部が、スロットル手段または閉鎖手段を有することも可能である。
【0015】
組み込み要素は、種々の要求への適合を実現するために、摺動可能および/または回転可能に収集容器に取り付けられていることができる。組み込み要素の摺動可能な取り付けは、液面のレベル低下またはレベル上昇をもたらすことができる。同様なことは、収集容器における組み込み要素の回転可能な実施の形態に当てはまる。組み込み要素の斜めの配置では、回転によって、例えば、レベルまたは下方の開口部の横断面を変化させることができる。同様なことが、収集容器内における組み込み要素の摺動可能な配置に当てはまる。
【0016】
組み込み要素は、インサート、例えば、バスケットのような、調節可能なインサートとして、あるいは、中空断面部材、バッフルまたはディフレクタとして形成されていてもよい。その目的は、収集容器内での液体溜めの形成および、収集容器の底部の近傍で組み込み要素内に形成された開口部を通っての制御された排出を達成するためである。
【0017】
組み込み要素には、複数の調整手段が関連づけられていることができる。該調整手段を介して、収集容器の外側から、組み込み要素における上方のおよび/または下方の開口部の自由な流れ断面を変えることができる。この調整手段によって、搬送手段の動作中にパラメータを変えることが可能である。その目的は、例えば、個々のポンプをオフにすることができるためであり、ポンプに、従来よりも多い量の液相を供給するためであり、あるいは他のポンプに供給された液相の量を減少させるためである。
【0018】
好ましくは、収集容器は、搬送を支援するための内圧を使用するために、閉じられるように形成されている。プレッシャリリーフバルブは、最大圧力を上回る際に容器構造の故障を回避するために、設けられていることができる。
【0019】
収集容器に後置されている個々のポンプを停止するために、組み込み要素、出口コネクタおよび/または出口配管に、停止手段が設けられていることができる。このことによって、これらのポンプを問題なくメンテナンスすることができる。同様に、個々の供給ポンプを停止させることによって、吐き出し力を所望の送出し量に適合させることが可能である。
【0020】
収集容器には、気相を液相から分離する複数の分離手段が設けられていることができる。これらの分離手段は、転向手段、ラビリンス、セパレータまたは流れの障害物であってもよい。同様に、分離手段を流れ断面の拡大によって形成することができる。その目的は、重力による分離を容易にするためである。収集容器には、好ましくは、1秒につき最大0.5mの流速が達成される。多相混合物のこの流速を維持するための対応の手段、例えば、スロットル等が設けられていてもよい。流速を収集容器の入口側に制限することによって、最大速度を調節することができる。この流速を維持することができるために、収集容器を、これに対応した寸法にすることができる。
【0021】
出口コネクタからポンプ、特に多相流ポンプに通じる送出しラインは、パイプライン内で分離を回避するために、1秒につき少なくとも3mの比較的大きな流速が生じるような寸法である。
【0022】
1つの収集容器、および該収集容器に接続された複数の多相流ポンプとからなる、本発明に係わるシステムは、収集容器に接続された多相流ポンプの標準化された寸法を用いての、大きな送出し流の場合に、並列運転を可能にし、かつ送出し量における可変性を可能にする。性能の限界まで運転されない冗長なポンプによって、システム全体の可用性の最大を達成することができる。何故ならば、並列接続された任意の或るポンプの故障の際には、該故障が、他のポンプによって受け入れることができるからである。
【0023】
出口側に設けられた並列接続されたポンプによる直接的な搬送のほかに、収集容器の入口側には、少なくとも1つの入口多相流ポンプが設けられており、少なくとも1つの接続ブランチによって、収集容器から入口多相流ポンプの入口側へラインが敷設されている。その目的は、入口ポンプ側での液相の再循環を可能にするためである。このことによって、入口多相流ポンプの熱安定性を向上させることができる。
【0024】
複数の多相流ポンプに設けられたセンサおよび調整手段に接続されており、かつ、センサ値に基づいて、下方の開口部の流れ断面を引き起こす制御手段が設けられていることができる。例えば、高すぎる温度が、個々の多相流ポンプに定められるときは、下方の開口部の流れ断面の拡大によって、増大された液体成分を、搬送される多相混合物に供給することができる。その目的は、多相流ポンプ内で生じる熱エネルギをポンプシステムから排出するためである。その代わりにまたは同時に、ガス成分の減少がなされる。その目的は、新たに生じる圧縮熱の量を減少させるためである。
【0025】
多相混合物を複数の多相流ポンプに分離しかつ分配するための方法は、多相混合物を収集容器へ導き、かつ、分離手段によって分離し、分配された液相を計量して個々の多相流ポンプに供給することを意図する。この場合、収集容器は、別個の収集容器として形成されていてもよい。該収集容器へは、多相混合物が、1つの源から導入される。その代わりに、多相混合物が、1つのポンプによって、別個の収集容器に導入され、続いて、他のポンプによって排出される。最後に、収集容器が多相流ポンプの一部として形成されており、そこから、他のポンプから計量分離された液相が、他のポンプに供給される。このことによって可能であるのは、並列に設けられたポンプの交差接続によって液相の最小供給を保証することであって、このことがなされるのは、1つのまたは複数のポンプ内で、十分に液相が収集されており、該液相が、制御されて、少ない液体成分を搬送する他のポンプに導かれるときである。搬送される液体成分を、センサによって決定することができる。それ故に、例えば、温度、ガス量または液量、圧力等を検出するセンサデータに基づいて、分離された液相の、ポンプの圧力側から、要求されるポンプの吸引側への供給が、制御される。
【0026】
多相混合物は、収集容器において、多相混合物を、流入する多相混合物の流速の減少によって、分離することができるのは、流れ断面を拡大することによってである。このことによって、液相と気相の重力に基づく分配がなされる。
【0027】
再循環が生じるように、分離された液相を、収集容器の送出し方向手前に設けられた、入口側のポンプに供給することができる。供給された液相の量は、夫々、センサパラメータに従って、例えば、搬送された液相に基づいて、あるいは、温度値に基づいて、調整することができる。
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図11】閉鎖および計量手段を有する断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、平行に配置された複数の多相流ポンプ3を有する、多相混合物のためのコンベヤシステムが示されている。多相流ポンプの各々は、基盤上に設けられている。多相流ポンプ3は、入口2および出口7を有する。出口7からは、ラインが収集容器15に延びており、該収集容器からは、通常はスクリュースピンドルポンプとして形成されている多相流ポンプ3によって、収集される混合物が収集され、かつ、出口17を通って排出される。多相流ポンプ3の入口側2は、収集容器10の出口通路30に接続されている。この収集容器10は、入口20を有する。該入口を通って、多相混合物、通常は、水、砂、天然ガスおよび随伴ガスの混合物が導かれる。入口20は、穿孔に直接通じていてもよい。必要な場合には、ポンプ手段が、入口20に前置されていてもよい。今ある固有圧力による多相混合物の送り込みが、万一不要であるとき、バイパス16が設けられている。該バイパスは、入口20を、出口収集容器15に直に接続する。
【0031】
収集容器10には複数の組み込み要素が設けられている。該組み込み要素は、各々の出口コネクタ30に関連づけられており、該出口コネクタによって、個々のポンプ3に対する計量された液体供給量が保証される。入口ヘッダとも呼ばれる収集容器10は、供給源から由来する多相混合物を集め、かつ、該多相混合物を、個々の多相流ポンプ3に均等に分配する。入口収集容器10は、図示した実施の形態では、実質的に水平方向に整列されており、かつ、管として形成されている。それ故に、多相混合物の個々の成分の、重力による分離が生じる。重いほうの成分、従って、固体および液相は、収集容器10の底部に集められ、他方、軽いほうの成分は、液相および固相の上方に集められる。
【0032】
図2には、収集容器10が詳細図で示されている。収集容器10は、入口20および複数の出口コネクタ30を有する管状体として、設けられている。前者は、図示した実施の形態では90°の短管として形成されており、後者は、多相流ポンプに通じている。収集容器10は、実質的にモジュール式に構成されており、管状体を有する。管状体の端部には、ねじ込みフランジが設けられている。複数のねじ込みフランジの間の管状体には、出口コネクタ30が設けられている。該出口コネクタの反対側に、アクセスフランジ31が設けられている。アクセスフランジを介して、例えば、インサートが出口コネクタ30に挿入され、かつ整列されることができる。入口コネクタを有する入口20を、溶着するか、または同様に螺着することができる。入口20は、ねじ込みフランジを有するT型パイプとして設けられていてもよい。それ故に、入口を、収集本体10の2つの管部分の間に螺入することができる。ねじ込み組立て法によって、ほぼ任意に多くの出口コネクタ30を、互いに平行に接続することができる。それ故に、相応に多数のポンプを、収集容器10に接続することができる。同様に、種々の箇所に、2つの管部分の間に容易に螺入される入口20を設けることが可能である。
【0033】
多相混合物の流動挙動は、矢印によって示されている。上の矢印は、多相混合物が入口20を通って入ることを示し、出口コネクタに関連づけられている下の矢印は、分割された各々の多相混合物が、出口コネクタ30を通って排出されることを示す。図示した実施の形態では、出口コネクタ30は、斜め下方に向けられており、かつ、収集容器10の最下点に通じている。それ故に、収集容器10の中で沈殿しているすべての液相を、出口コネクタ30を通って容易に運び出すことができる。
【0034】
収集容器10の実施の形態の変形例が、
図3に示されている。90°の入口コネクタを有する入口20は、90°回転されて示されている。矢印によって示すように、多相混合物は、入口20を通って収集容器10に達する。入口20には、渦に影響を与えるための手段が設けられていてもよい。その目的は、多相混合物をできる限り均等に分配するためである。
【0035】
管セグメントを並列したものとして形成されている収集容器10内では、出口コネクタ30に関連付けられている複数の組み込み要素40が設けられている。管状のインサート40が、出口コネクタ30に挿入されている。このインサートは、収集容器10に回転自在に設けられており、かつ、下方の開口部42および複数の上方の開口部42を有する。後者の開口部は、夫々、収集容器の底部11の液位の上方で延びている。アクセスフランジ31を介して、インサートの回転を行なうことができる。インサート40は、収集容器10内に交換可能に設けられている。それ故に、他のインサートとの交換によって形状を変化させることができる。
【0036】
図3には、第1の出口コネクタ30の左脇にバッフルの形状の他の組み込み要素40が設けられている。バッフルは、管部分の2つのねじ込みフランジの間に固定されている。ここでも、下方の開口部41が設けられている。該開口部は、上方の開口部42よりも小さい流れ断面を有する。バッフルを、2つの管部分の間の種々の位置に組み込むことができる。その目的は、バッフルと入口20との間に溜まった液体のレベルを調整することができるためである。
【0037】
図3には、バッフルの左脇に、他の出口コネクタ30が設けられている。該出口コネクタは、回転可能なインサート40を有し、該インサートは、同様に、下方の開口部41と、該下方の開口部41よりも大きな直径を有する複数の上方の開口部42とを具備する。インサート40は、外部から、出口コネクタ30を介して回転させることができる。それ故に、開口部41,42の位置の、および必要な場合には直径断面の調整を達成することができる。
【0038】
入口20の右脇には、他のバッフルが、上方の開口部42と、出口コネクタ30に通じる下方の開口部41とを有する組み込み要素として示されている。
図3に示す収集容器10の実施の形態によって、溜めた液体を収集容器10内に貯蔵することが可能である。溜めた液体は、最大限、上方の開口部42の高さまで達している。このことによって、下方の開口部41と、収集容器10の容積との寸法に応じて、比較的長い時間に亘って、少量の液体のみが出口コネクタ30を通って排出されることが保証される。それ故に、出口コネクタ30に接続しているポンプ、特に、スクリュースピンドル多相流ポンプには、常に、送出し流における最小の液体成分が与えられる。この最小の液体成分は、スクリュースピンドルポンプの複数の送出し要素の間の、構造上制約されたギャップを密閉する。この密閉は、ポンプがガスを送り出すことができるためには、必要である。このガスは、そうでない場合には、ギャップを通ってスムーズに逆流するだろう。更に、最小の液流は、ガスの送出しの際に発生された圧縮熱をポンプから排出するための冷媒として使用される。
【0039】
図4には、本発明の変形例が示されている。垂直に向いた仕切り板50は、収集容器10内に設けられている。渦に影響を及ぼすための手段21は、入口20に設けられてもよい。垂直の仕切り板50は、入口20を通って入る多相流を最初に分配するために使用される。かようにして、長手方向延在の左右に多相流の最初の分配が行なわれる。収集容器10の左端には、仕切り板50の両側に出口コネクタ30が設けられている。各々の出口コネクタはポンプに通じている。仕切り板50の内部には、バランス窓(Ausgleichsfenster)52が設けられている。その目的は、越流を可能にするためである。バランス窓52は、仕切り板の下方領域に設けられている。その目的は、主に液相を、収集容器の2つのチャンバの間で交換するためである。
図4の右側の断面図では、組み込み要素40として、斜めに各チャンバに突入している複数のコネクタが設けられており、該コネクタは、収集容器の底部11に関連づけられている自らの下端に、小さな孔41を有し、該孔を通って、最小の液流が各々のポンプに供給されることが分かる。上方の開口部42は、コネクタの直径によって形成される。
【0040】
本発明の他の変形例が、
図5に示されている。入口20の両側の組み込み要素40は、垂直方向上方に向いた上方の開口部42と、収集容器の底部11の領域に設けられた下方の開口部41とを有する。第1の出口コネクタ30の両脇に、バッフル40が設けられている。該バッフルは、同様に、上方の開口部42および下方の開口部41を有する。右側のバッフル40の右脇には、他の出口コネクタ30が設けられており、該出口コネクタは他のポンプに通じている。従って、バッフル40は、右側に設けられた出口コネクタ30に関連づけられており、液相の計量された量のみが、下方の開口部41を通って、右側の出口コネクタ30に達することを引き起こす。
【0041】
図6は、複数の出口コネクタ30が設けられていてなる本発明の他の変形例を示す。出口コネクタ30は、上向きに形成されており、かつ、収集容器10に回転自在に取り付けられている。回転することができることにより、高さの調整を、コネクタ30の外側に取り付けられたねじ山45に基づいて実現することができる。高さの調整は、二重矢印で示されている。左側の出口コネクタ30は、組み込み要素として90°の角度を有し、入口側は、下方の小さな開口部41と、上方の大きな開口部42とを有するプレートによって閉じられている。このような実施の形態によっても、収集容器10内に溜めが形成される。組み込み要素40が下方に移動されるに連れて、収集容器の底部11に沈殿している液相を一層多く排出することができる。
【0042】
右側の出口コネクタ30は、同様に、ねじ山45を介して、収集容器10に高さ調整可能に取り付けられている。収集容器側の端部には、U字形の接続部が形成されており、該接続部の下面には、小さな孔41が設けられている。該孔は、収集容器の底部11の方向に向けられている。この孔よりも大きい開口部42は、U字形の管の、開いた、上向きの横断面によって形成される。
【0043】
図7には、本発明の他の変形例が示されている。渦に影響を及ぼすための手段を有する入口20の後に、カラム90が設けられている。該カラムは、液相と気相の分離を促進する。ここでは筒形に形成されている収集容器10は、底部11に、例えば1つの出口コネクタ30を有する。該出口コネクタには、曲管の形態をとる組み込み要素40が接続されている。上方の開口部42は、水平方向に向けられており、ここでは、収集容器10の外壁に向いている。当然ながら、上方の開口部42の他の方向づけも可能である。下方の開口部41は、収集容器の底部11の領域で、組み込み要素40に設けられている。
【0044】
図8には、斜めに配置された出口コネクタ30およびバスケット状の組み込み要素40が示されている。複数の上方の開口部は、スリット状の長孔として形成されており、1つの下方の開口部は、管状の収集容器10の底部の領域に設けられている。調整手段45を介して、外部から、回転がなされる。その目的は、下方の開口部41の方向を変えることができるようにするためである。
【0045】
図9には、垂直に下向きの出口コネクタ30を有する本発明の変形例が示されている。組み込み要素40は、垂直上方に向けられた上方の開口部42と、管状の収集容器10の底部に設けられた下方の開口部41とを有する。組み込み要素40は、ここでも回転自在に構成されている。その目的は、位置に応じて下方の開口部41の断面の変化を達成するためである。図示した位置では、開口部41は完全に開かれている。90°回転する際に、必要な場合には閉鎖まで、流れ断面の最大の減少がなされる。
【0046】
図10は、本発明の他の変形例の概略図を示す。該変形例では、組み込み要素40には、下方の開口部41において、調節可能なスロットル62または調節可能なバルブが関連づけられている。同様なことが、上方の開口部42に当てはまる。調節可能なバルブまたは計量および閉鎖手段62,72が略示されているのみである。計量および閉鎖手段62,72は、
図10では、よく見えるようにとの理由からのみ、収集容器10の外側には、ラインで示されている。実際には、組み込み要素40には、開口部41,42が、計量または閉鎖手段62,72と共に設けられている。それ故に、ラインはないが、運ばれる生成物は、収集容器10から、開口部41,42を介して、組み込み要素40に入り、かつ、出口コネクタ30を通って、運び出される。
【0047】
図11には、計量および閉鎖手段60,70の構造的な実施の形態が示されており、該計量および閉鎖手段は、開口部42,41に関連づけられている。計量および閉鎖手段60,70は、外部から操作可能であり、計量および閉鎖手段60,70の位置に応じて、各々の開口部41,42を部分的にまたは完全に閉鎖することができる。その目的は、例えば、搬送される生成物を、出口コネクタ30を通って運び出すことを阻止するためである。このことによって、後置されたポンプのメンテナンスを容易にする。
【0048】
図12は、2つの収集容器10,15の間に並列に設けられた複数の多相流ポンプ3を配列したものを略示する。第1の収集容器10は、入口20を有し、都合4つの出口コネクタ30を備える。複数の開口部を有する組み込み要素は、図示されていないが、収集容器10に、実際に設けられている。出口コネクタ30には、バルブ6が接続されている。出口コネクタ30に接続されているラインを通って、該バルブを介して流れを変えることができる。ラインを完全に閉じる可能性がある。バルブ6の後には、多相流ポンプ3が設けられている。該多相流ポンプを介して、多相混合物が、収集容器10からポンピングされる。ポンプ3からは、他のバルブが設けられていてなるラインが、第2の収集容器15に通じている。該収集容器を出口収集容器とも呼ぶことができる。出口収集容器15も、1つまたは複数の組み込み要素を有することができる。組み込み要素は、上述のように、上方のおよび下方の開口部を有する。出口収集容器15から、バルブ8を備えた戻りライン5が、各々のポンプ3の入口側に通じている。このことは、分離された液体を、収集容器15から各々の多相流ポンプ3の入口側へ循環させる。かようにして、最低限必要な液体成分が、通常はスクリュースピンドルポンプ3のために供給される。それ故に、ガス量が高くても、および気相のみを長期間搬送する場合でも、十分な圧力を形成するだけでなく、圧縮熱を運び出すこともできる。出口収集容器15からは、出口コネクタ30が伝送または再処理手段に通じる。
【符号の説明】
【0049】
3 ポンプ
20 入口
11 収集容器の底部
30 出口コネクタ
40 組み込み要素
41 上方の開口部
42 下方の開口部