(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筐体は、前記アウタケースと前記インナケースとの間に前記空隙を形成するように前記アウタケースに対し前記インナケースを位置決めする位置決め部材を更に備えることを特徴とする、請求項1記載の燃料電池モジュール。
前記位置決め部材は、前記インナケースに形成され、前記インナケースの前記周壁部から前記アウタケース側へ延びるフランジ部であることを特徴とする、請求項3記載の燃料電池モジュール。
前記インナケースは、前記周壁部を有する第1のインナケースと、前記第1のインナケース内に収納されて前記セルスタックを収納する第2のインナケースと、を含んで構成され、
前記第2のインナケースは、前記第1のインナケースの前記周壁部との間に、前記セルスタックからのオフガスの燃焼による排ガスを通過させる排ガス流路を形成することを特徴とする、請求項1記載の燃料電池モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1、
図2及び
図3に示されるように、燃料電池モジュール1は、水素含有燃料を用いて改質ガスRGを発生させる改質器2と、改質ガスRG及び酸化剤OXを用いて発電を行うセルスタック3と、水を気化させることによって改質器2へ供給される水蒸気を生成する水気化部4と、改質器2、セルスタック3、及び水気化部4を収納する筐体6と、を備える。
図1、
図2及び
図3では図示されていないが、燃料電池モジュール1の下方には、ポンプ等の補機や制御機器等を収納する筐体が設けられる。なお、
図2及び
図3では、各壁部の板厚が示されているが、
図1ではガスの流れを概念的に示しているため、各壁部の板厚は省略されている。
【0012】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0013】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0014】
改質器2は、供給される水素含有燃料を用いて改質ガスRGを発生させる。改質器2は、改質触媒を用いた改質反応により、水素含有燃料を改質して改質ガスRGを発生させる。改質器2での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。改質器2は、後述する燃焼熱によって加熱され得るようにセルスタック3の上側に配置されている。すなわち、セルスタック3の燃料極側に導入された改質ガスRGのオフガス(未反応改質ガス)は、空気極等の酸化剤極側に導入された空気等の酸化剤のうちの未反応酸素(未反応酸化剤ガス)と共に燃焼させられ、改質器2は、この燃焼熱によって加熱される。改質器2は、改質ガスRGをセルスタック3の燃料極へ供給する。
【0015】
セルスタック3は、規則的に配列し連結されたSOFC(Solid Oxide Fuel Cells)と称される複数のセルを有している。各セルは、固体酸化物である電解質が燃料極と酸化剤極との間に配置されることで構成されている。電解質は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等からなり、高温下で酸化物イオンを伝導する。燃料極は、例えばニッケルとYSZとの混合物からなり、酸化物イオンと改質ガスRG中の水素とを反応させて、電子及び水を発生させる。酸化剤極は、例えばランタンストロンチウムマンガナイトからなり、酸化剤OX中の酸素と電子とを反応させて、酸化物イオンを発生させる。本実施形態では、複数のセルが台座7に立設し、同一方向を向いて一列に整列して連結しているセルスタックを例に説明する。なお、ここでは、複数のセルが台座7に立設し、同一方向を向いて一列に整列して伸延する方向を「セルの積層方向」と称して、以下の説明を行う。セルスタック3は、台座7の上面において、セルの積層方向と直交する方向に向かい合うように二列に配置される。ただし、セルスタック3は一列に配置されてもよい。セルスタック3は、改質器2と同様、オフガスの燃焼熱によって加熱され、発電可能な高温状態に保持される。
【0016】
台座7と改質器2とは、パイプ8で接続されている。改質器2から供給された改質ガスRGは、台座7を介してセルスタック3の各セルに供給される。セルスタック3で反応しなかった改質ガスRG及び酸化剤OXは、セルスタック3の上部の燃焼部9で燃焼する。燃焼部9でのオフガスの燃焼により、改質器2及びセルスタック3が加熱されると共に排ガスEGが発生する。
【0017】
水気化部4は、供給される水を加熱し気化させることによって、改質器2に供給される水蒸気を生成する。水気化部4で生成された水蒸気は、例えば、第1の底壁部18を貫通して水気化部4と改質器2とを接続する配管(不図示)を用いて、改質器2へ供給される。水気化部4における水の加熱は、例えば、改質器2の熱、燃焼部9の熱、あるいは排ガスEGの熱を回収する等、燃料電池モジュール1内で発生した熱を用いてもよい。本実施形態では、水気化部4は、底部の排ガス流路に配置され、排ガスEGの熱を回収する構成となっている。
【0018】
筐体6は、改質器2、セルスタック3、及び水気化部4を収納するための内部空間を有する、直方体状の金属製の箱体である。筐体6は、セルスタック3を収納する収納室11と、収納室11よりも外側に形成され、セルスタック3からのオフガスの燃焼による排ガスEGを通過させる排ガス流路12、酸化剤OXを通過させる酸化剤流路13と、収納室11や排ガス流路12や酸化剤流路13を形成する各壁部と、を備える。なお、以下の説明においては、セルスタック3のセルの積層方向(セルスタック3の長手方向)に沿った方向を筐体6の「長さ方向D1」とし、水平方向においてセルの積層方向と直交する方向を筐体6の「幅方向D2」とし、鉛直方向を筐体6の「上下方向D3」として以下の説明を行う。
【0019】
収納室11は、幅方向D2に互いに対向する第1の側壁部16,17、及び第1の側壁部16,17の各下端部に連結される第1の底壁部18の内側に形成される。収納室11では、台座7が第1の底壁部18に配置される。なお、第1の底壁部18と台座7との間に断熱材が配置されていてもよい。燃焼部9で発生した排ガスEGを通過させるため、収納室11の上端部は開口している。
【0020】
排ガス流路12は、幅方向D2において第1の側壁部16,17の外側にそれぞれ配置される第2の側壁部21,22と、第1の側壁部16,17の上端部よりも上側に配置される第1の上壁部23と、第1の底壁部18よりも下側に配置される第2の底壁部24と、によって形成される。
【0021】
第1の上壁部23は第2の側壁部21,22の上端部に連結され、第2の底壁部24は第2の側壁部21,22の下端部に連結される。第2の側壁部21,22は、第1の側壁部16,17から離間して対向するように配置される。第1の上壁部23は、収納室11の上端部から離間して対向するように配置される。第2の底壁部24は、第1の底壁部18から離間して対向するように配置される。
【0022】
排ガス流路12は、収納室11の上側の開口部と第1の上壁部23との間に形成される排ガス流路12A,12Bと、第2の側壁部21,22と第1の側壁部16,17との間
に形成される排ガス流路12C,12Dと、第2の底壁部24と第1の底壁部18との間に形成される排ガス流路12E,12Fと、を有する。排ガス流路12A,12Bは、燃焼部9からの排ガスEGを排ガス流路12C,12Dへ導く。排ガス流路12C,12Dは、排ガスEGを下方へ通過させ、当該排ガスEGの熱を外側の酸化剤流路13C,13Dを流れる酸化剤OXに供給する。排ガス流路12E,12Fは、排ガスEGを排気管32へ向かって水平方向に通過させ、当該排ガスEGの熱を水気化部4に供給する。
【0023】
酸化剤流路13は、幅方向D2において第2の側壁部21,22の外側にそれぞれ配置される第3の側壁部26,27と、第1の上壁部23よりも上側に配置される第2の上壁部28と、第2の底壁部24よりも下側に配置される第3の底壁部29と、によって形成される。
【0024】
第2の上壁部28は第3の側壁部26,27の上端部に連結され、第3の底壁部29は第3の側壁部26,27の下端部に連結される。第3の側壁部26,27は、第2の側壁部21,22から離間して対向するように配置される。第2の上壁部28は、第1の上壁部23から離間して対向するように配置される。第3の底壁部29は、第2の底壁部24から離間して対向するように配置される。
【0025】
第1の上壁部23には中央部に長さ方向D1へ延びるスリット39が形成されており、当該スリット39には、酸化剤供給部材36が挿入される。酸化剤供給部材36は、セルスタック3に酸化剤OXを供給する。酸化剤供給部材36は、一対のセルスタック3の間の隙間に入り込むように延びており、内部に酸化剤流路13Kを有すると共に、先端部に貫通孔37,38を有している。
【0026】
酸化剤流路13は、第2の上壁部28と第1の上壁部23との間に形成される酸化剤流路13A,13Bと、第3の側壁部26,27と第2の側壁部21,22との間に形成される酸化剤流路13C,13Dと、第3の底壁部29と第2の底壁部24との間に形成される酸化剤流路13G,13Hと、を有する。酸化剤流路13G,13Hは、給気管31からの酸化剤OXを水平方向に広がるように通過させ、酸化剤流路13C,13Dへ導く。酸化剤流路13C,13Dは、酸化剤OXを上方へ通過させ、当該酸化剤OXを内側の排ガス流路12C,12Dを流れる排ガスEGの熱によって加熱する。酸化剤流路13A,13Bは、酸化剤OXを幅方向D2における外側から内側へ向かって通過させ、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kへ流して貫通孔37,38へ導く。
【0027】
第3の底壁部29には、図示されない酸化剤供給部から酸化剤流路13に酸化剤を流入させるための給気管31が設けられている。また、第2の底壁部24には、排ガス流路12からの排ガスを排気する排気管32が設けられている。
【0028】
側壁部16,17,21,22,26,27、上壁部23,28、及び底壁部18,24,29は、長さ方向D1における筐体6の端部6a,6bにまで延びている。筐体6の長さ方向D1の両端部には、それぞれ端壁部33,34が設けられている。第3の側壁部26,27、第2の上壁部28、第3の底壁部29、及び端壁部33,34は、燃料電池モジュール1の外殻を構成し、互いの接続部におけるシール性が確保されており、筐体6内の気密性が確保されている。
【0029】
次に、改質ガスRG、酸化剤OX、及び排ガスEGの流れについて説明する。
【0030】
外部から供給される水素含有燃料及び水気化部4からの水蒸気を用いて改質器2で発生した改質ガスRGは、パイプ8を通過して台座7に流れ込み、台座7からセルスタック3の各セルに供給される。改質ガスRGは、セルスタック3を下方から上方へ向かって流れ、一部はオフガスとして燃焼部9での燃焼に用いられる。酸化剤OXは、外部から給気管31を介して供給され、酸化剤流路13G,13Hにて水平方向に広がり、内側を流れる排ガスEGで加熱されながら酸化剤流路13C,13Dを上方へ向かって通過する。酸化剤OXは、酸化剤流路13A,13Bを通過し、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kを流れて、貫通孔37,38を通過してセルスタック3へ供給され、一部は燃焼部9での燃焼に用いられる。燃焼部9で発生した排ガスEGは、排ガス流路12A,12Bで排ガス流路12C,12Dに導かれ、外側を流れる酸化剤OXに熱を供給しながら排ガス流路12C,12Dを下方へ向かって通過する。排ガスEGは、底部まで達すると排ガス流路12E,12Fへ流れ込み、水気化部4に熱を供給しながら排ガス流路12E,12Fを通過する。排ガス流路12E,12Fを通過した排ガスEGは、排気管32から排気される。
【0031】
図1〜
図5に示すように、本実施形態に係る燃料電池モジュール1は、筐体6のうち、最外部に係る壁部を構成する部材をアウタケース50とし、セルスタック3を収納することで高熱となる部分をインナケース60,70としている。これにより、燃料電池モジュール1は、インナケース60,70をアセンブリ80として組み立て、当該アセンブリ80をアウタケース50に挿入して封止することで構成されている。
【0032】
アウタケース(アウタケース本体部)50は、第3の側壁部26,27、第2の上壁部28、第3の底壁部29、及び端壁部34によって構成されている。アウタケース50のうち、第3の側壁部26,27、第2の上壁部28及び第3の底壁部29は、長さ方向D1(第1の方向)から見て、第1のインナケースを取り囲むアウタ周壁部を構成している。アウタケース50は、長さ方向D1における一方の端部50bが端壁部34で封止されると共に、他方の端部50aに開口部55が形成される(
図4参照)。開口部55は矩形状をなしており、幅方向D2の大きさは第3の側壁部26と第3の側壁部27との間の距離に等しく、上下方向D3の大きさは第2の上壁部28と第3の底壁部29との間の距離に等しい。開口部55の周り、すなわちアウタケース50の端部50aには、外側へ広がるフランジ部51,52,53,54が形成されている。フランジ部51,52,53,54に対し、アウタケース(アウタケース本体部)50と別体とされて蓋体として機能する端壁部33が取り付けられる。これによって、アウタケース50の内部の気密性が確保される。蓋体としての端壁部33は、シール材と共にネジ止めすることによってアウタケース50に取り付けられてもよく、溶接によってアウタケース50に取り付けられてもよい。
【0033】
第1のインナケース60は、第2の側壁部21,22、第1の上壁部23、第2の底壁部24によって構成されている。これらの壁部は、長さ方向D1から見て、第2のインナケース70及びセルスタック3を取り囲む第1のインナ周壁部を構成している。また、第1のインナケース60は、長さ方向D1の両方の端部60a,60bにおいて開口している。第1のインナケース60の端部60aには、外側へ向かって広がるフランジ部61,62,63,64が形成される。第1のインナケース60の端部60bには、外側へ向かって広がるフランジ部66,67,68,69が形成される。これらのフランジ部61〜64,66〜69は、アウタケース50とインナケース(第1のインナケース60)との間に空隙を形成するように、アウタケース50に対しインナケース(第1のインナケース60)を位置決めする位置決め部材として機能する。
【0034】
第2のインナケース70は、第1の側壁部16,17、第1の底壁部18によって構成されている。これらの壁部は、長さ方向D1から見て、セルスタック3を取り囲む第2のインナ周壁部を構成している。また、第2のインナケース70は、上方に開口すると共に、長さ方向D1の両方の端部70a,70bにおいて開口している。第2のインナケース70の端部70aには、外側へ向かって広がるフランジ部71,72,74が形成される。第2のインナケース70の端部70bには、外側へ向かって広がるフランジ部76,77,79が形成される。
【0035】
第1のインナケース60、第2のインナケース70、酸化剤供給部材36、改質器2、セルスタック3、水気化部4、台座7、パイプ8は、アウタケース50とは別体のアセンブリ80として組み立てられる。第1のインナケース60と第2のインナケース70とは、互いに接触する部分(例えば後述のフランジ部など)で溶接することによって固定される。これによって、各部品の位置精度(例えば、セルスタック3のセルと酸化剤供給部材36の貫通孔37,38との位置精度)が保たれた状態を維持することができる。
【0036】
第1のインナケース60は、長さ方向D1から見て、アウタケース50の開口部55に取り囲まれるように配置される。第1のインナケース60はアセンブリ80の中で最も外側に配置される部品であるが、当該第1インナケース60がアウタケース50の開口部55に取り囲まれるような大きさ・位置関係であるため、アセンブリ80の全体を、開口部55を介してアウタケース50の中に収納することができる。また、第1のインナケース60の第2の側壁部21,22、第1の上壁部23、第2の底壁部24と、アウタケース50の第3の側壁部26,27、第2の上壁部28、第3の底壁部29との間に隙間(空隙)が形成されることで酸化剤流路13が形成される。
【0037】
第2のインナケース70は、長さ方向D1から見て、第1のインナケース60に取り囲まれるように配置される。また、第2のインナケース70の第1の側壁部16,17、第1の底壁部18と、第1のインナケース60の第2の側壁部21,22、第1の上壁部23、第2の底壁部24との間に隙間(空隙)が形成されることで排ガス流路12が形成される。
【0038】
酸化剤流路13及び排ガス流路12は、インナケース60,70のフランジ部によって、ケース同士の間に隙間を設けることによって形成される。これによって、特別な位置調整をすることなく、第1のインナケース60に第2のインナケース70を組み付けるだけの作業であっても、フランジ部によって適切な大きさの隙間を確保することが可能となり、容易に排ガス流路12を形成することができる。また、特別な位置調整をすることなく、アウタケース50に第1のインナケース60を組み付けるだけの作業であっても、フランジ部によって適切な大きさの隙間を確保することが可能となり、容易に酸化剤流路13を形成することができる。
【0039】
具体的には、第2の側壁部21から外側へ延びるフランジ部61,66は、第3の側壁部26まで延びている。第2の側壁部22から外側へ延びるフランジ部62,67は、第3の側壁部27まで延びている。第1の上壁部23から上側へ延びるフランジ部63,68は、第2の上壁部28まで延びている。第2の底壁部24から下側へ延びるフランジ部64,69は、第3の底壁部29まで延びている。これによって、フランジ部61,62,63,64,66,67,68,69は、第1インナケース60とアウタケース50との間に隙間を設け、酸化剤流路13を形成する。なお、フランジ部61,62,63,64,66,67,68,69の先端部は、アウタケース50の各壁部及び蓋体である端壁部33と直接接触していてもよく、アウタケース50及び蓋体である端壁部33との間に断熱材やシール材が介在してもよい。
【0040】
第1の側壁部16から外側へ延びるフランジ部71,76は、第2の側壁部21まで延びている。第1の側壁部17から外側へ延びるフランジ部72,77は、第2の側壁部22まで延びている。第1の底壁部18から下側へ延びるフランジ部74,79は、第2の底壁部24まで延びている。これによって、フランジ部71,72,74,76,77,79は、第2のインナケース70と第1のインナケース60との間に隙間を設け、排ガス流路12を形成する。フランジ部71,72,74,76,77,79の先端部は、第1のインナケース60の各壁部と直接接触し溶接によって固定することが好ましい。なお、第1のインナケース60との間に断熱材やシール材が介在してもよい。
【0041】
アウタケース50と第1のインナケース60とは、溶接やネジ止めなどによって直接固定されておらず、別体となっている。すなわち、アウタケース50とアセンブリ80とは、溶接やネジ止めなどによって直接固定されておらず、別体となっている。例えば、第1のインナケース60のフランジ部61,62,63,64,66,67,68,69の先端部とアウタケース50の各壁部との間には溶接が施されていない。また、インナケース60,70の端部は、アウタケース50の端壁部34と溶接やネジ止めなどで固定されていない。アセンブリ80は、当該アセンブリ80をアウタケース50に挿入した後、蓋体である端壁部33で封止することで、アセンブリ80を長さ方向D1に向かって押圧することで、アウタケース50内で支持される。これにより、アウタケース50と直接固定されず別体とされたアセンブリ80は、アウタケース50内でがたつくことなく、支持される。このとき、アセンブリ80の端部(インナケース60,70の端部60b,70b)とアウタケース50の端壁部34との間にシール材や断熱材を挟むと共に、アセンブリ80の端部(インナケース60,70の端部60a,70a)と蓋体である端壁部33との間にシール材や断熱材を挟むことで、押圧力を発生させ易くしてもよい。なお、ここにシール材を用いる場合、最外壁を構成する部分であるアウタケース50と蓋体の端壁部33との間で必要とされる程のシール性は要求されないため、よりコストの低いシール材を適用してもよい。
【0042】
アウタケース50及びインナケース60,70は、折り曲げ加工によって形成されることが好ましい。すなわち、一枚の板を所定の形状にカットし、折り曲げると共に折り目以外の部分を溶接することによってアウタケース50及びインナケース60,70を形成する。アウタケース50及びインナケース60,70は、少なくとも各壁部(フランジ部を除く部分)を一枚の板を折り曲げ加工することによって形成されることが好ましい。また、アウタケース50及びインナケース60,70を、フランジ部も含めて(ただし、折り曲げ加工によって必然的に形成される隙間を埋めるような加工を施してもよい。詳細については後述)一枚の板を折り曲げ加工することによって形成してもよい。あるいは、各壁部をそれぞれの大きさにカットし、各壁部を組み立てて溶接してもよい。あるいは、一部を折り曲げ加工として一部を溶接としてもよい(例えば、アウタケース50の場合、周壁部を折り曲げ加工で形成し、端壁部34を溶接で取り付ける)。
【0043】
アウタケース50のフランジ部51,52,53,54、第1のインナケース60のフランジ部61,62,63,64,66,67,68,69、第2のインナケース70のフランジ部71,72,74,76,77,79は、各ケースの周壁部を構成している板の端部を折り曲げ加工することによって形成してもよく、溶接を用いて形成してもよく、折り曲げ加工及び溶接を組み合わせて形成してもよい。例えば、各ケースの周壁部を構成している板の端部を折り曲げ加工した場合、角部(例えばフランジ部51とフランジ部53の間)に隙間ができるため、当該隙間に角部材CPを溶接することで埋めることができる(
図4及び
図5参照)。なお、角部材を溶接せず、角部に出来た隙間をシール材などを用いて気密性を確保してもよい。あるいは、アウタケース50の開口部55を取り囲むような矩形枠状の部材(あるいは、各辺で別部材としてもよい)を溶接して取り付けることによってフランジ部を形成してもよい。
【0044】
アウタケース50とインナケース60,70とは、異なる材料であることが好ましい。すなわち、アウタケース50は、セルスタック3での燃焼により高温になるインナケース60,70とは溶接やネジ止めなどによって直接固定されておらず、別体とされているため、アウタケース50として高い耐熱性が要求されない安価な材料を用いることができる。例えば、アウタケース50として、SUS304、SUS316を好適に用いることができる。インナケース60,70として、SUS310S、NCA1を好適に用いることができる。ただし、同じ材料を用いてもよい。
【0045】
次に、本実施形態に係る燃料電池モジュール1の作用・効果について説明する。
【0046】
まず、比較のために従来の燃料電池モジュール100の構成を
図6及び
図7(a)を参照して説明する。燃料電池モジュール100の筐体106は、ベース110に対して、各流路を形成する各壁部を溶接によって固定してゆくことによって構成される。ベース110は、底壁部18,24,29と、第2の側壁部21,22の下端部分21a,22aと、第3の側壁部26,27の下端部分26a,27aと、によって構成されている。また、酸化剤と排ガスを通すための貫通孔も所定の位置に有している。このようなベース110の上面に、側壁部16,17,21,22,26,27、上壁部23を組み付けて溶接して一体化する。最外部の上面、及び長さ方向D1の両端面には開口部が形成され、当該三箇所の開口部を蓋体として機能する第3の上壁部28、端壁部33,34で封止する。
【0047】
従来の燃料電池モジュール100のような構造では、異種材料溶接による溶接割れ等の不具合を回避するため、溶接で一体化された壁部は全て、最も温度が高くなる最内部の温度条件に合わせた金属材料を採用する必要性が生じる。すなわち、本来は最内部よりも低温下で用いられる最外側の壁部(ここでは、第3の側壁部26,27、第3の底壁部29)に対しても、過剰品質な材料を使用する必要があった。また、このように最内部から最外部にわたって溶接で一体化された構造では、検査を容易に行うことができず、また、何れかの部分で気密不良が判明してもリーク箇所の特定や修理が困難であるという問題があった。また、筐体106全体としての気密性が要求されるために、開口部を蓋体(ここでは、第2の上壁部28、端壁部33,34)で封止する部分には、高価なシール材を使用する必要がある。従来の燃料電池モジュール100の筐体106は、開口部が三面もあるため、高価なシールを要する部分が多数存在し、コストが高くなるという問題があった。また、蓋体を除く全ての壁部をベース110に対して溶接して一体化する構造であるため、溶接による歪が蓄積され、後工程となる最外部の壁部(ここでは第3の側壁部26,27)の溶接においては、製作精度を維持することが困難であるという問題があった。
【0048】
本実施形態に係る燃料電池モジュール1では、筐体6が、アウタケース50と、当該アウタケース50との間で隙間を形成するような第1のインナケース60を備えており、アウタケース50が一方の端部50aに開口部55を有すると共に、第1のインナケース60は当該開口部55に囲まれるようになっている。これによって、高温となる内部構造(セルスタック3など)を含む第1のインナケース60を、長さ方向D1からアウタケース50内へ開口部55を介して挿入する構成とすることができる。すなわち、最外部を構成する各壁部をアウタケース50として単体で構成する一方で、セルスタック3を含んで高温となる内側構造をアウタケース50とは別体としてアセンブリ80を構成し、当該アセンブリ80をアウタケース50に挿入するだけでよい(
図7(b)参照)。これによって、筐体6のうち、高温条件となるアセンブリ80側の部材(インナケース60,70など)と、より低温条件となるアウタケース50とで、異種材料を適用することが可能となる。これにより、アウタケース50の材料として、低温条件に合わせた材料を適用することができ、コストの低減を図ることができる。また、当該構成によれば、最外部を構成するアウタケース50のみで気密性を確認すればよく、検査を容易に行うことが可能となる。また、気密不良が発生した場合であっても、アウタケース50の内部は中空であるため、容易に修理を行うことができる。また、最外部を構成するアウタケース50の開口部55を一箇所のみとすることができるため、高価なシール材を用いる部分を減少させることができる。以上によって、コストを抑えると共に気密性を容易に確保することができる。また、アウタケース50と、アセンブリ80を構成する他の部材とで、それぞれ製作精度の管理、修正を行うことが可能となる。
【0049】
また、インナケース60,70は、外側へ延びるフランジ部を有している。各フランジ部で第1のインナケース60とアウタケース50との間の隙間、及び第2のインナケース70と第1のインナケース60との間の隙間を確保することによって、アセンブリ80を組み立てる作業、及びアウタケース50にアセンブリ80を挿入する作業によって、同時に隙間の大きさの調整も行うことができる。
【0050】
また、第1のインナケース60とアウタケース50との間の隙間によって、酸化剤を通過させる酸化剤流路13が形成され、第2のインナケース70と第1のインナケース60との間の隙間によって、排ガス流路12が形成される。これによって高温な排ガスが流れる排ガス流路12を第1のインナケース60よりも内側に配置することができる。アウタケース50が接触する流路には、排ガスよりも低温な酸化剤を流すことができる。
【0051】
また、本実施形態に係る燃料電池モジュールでは、アウタケース50とインナケース60,70とは、異なる材料で形成され、アウタケース50の材料として、低温条件に合わせた材料を適用することにより、コストの低減を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る燃料電池モジュールでは、アウタケース50、第1のインナケース60、第2のインナケース70は、一枚の板を折り曲げ加工することによって形成されるので、容易に各ケースを形成することができると共に、溶接箇所を低減することによって気密性を確保し、組み立て精度を向上することができる。
【0053】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。最外部を構成するアウタケースが開口部を有し、当該開口部にインナケースを挿入する構成であればよく、アセンブリ内の構成や各壁部や流路などの構成は適宜変更してもよい。
また、インナケース60,70のフランジ部の構成は上述の実施形態に示されているものに限定されず、適宜変更してもよい。また、フランジ部によってケース同士の隙間を形成しなくともよい。例えばケース同士の間にスペーサを挟むことによって隙間を形成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、
図4に示されるように、アウタケース本体部50は、側壁部26,27、上壁部28、底壁部29及び端壁部34によって構成し、端壁部34と対向する端面を開口部55として、アッセンブリ80(インナケース60,70を含む)の挿入後、アウタケース本体部50と別体とされて蓋体として機能する端壁部33で閉止する構成としている。しかし、これに限らず、次のような構成としてもよい。
例えば、
図8に示されるように、アウタケース本体部50は、側壁部27、上壁部28、底壁部29及び端壁部33,34によって構成し、側壁部27と対向する側面を開口部55として、アッセンブリ80(インナケース60,70を含む)の挿入後、アウタケース本体部50と別体とされて蓋体として機能する側壁部26で閉止する構成とする。
或いは、
図9に示されるように、アウタケース本体部50は、側壁部26,27、底壁部29及び端壁部33,34によって構成し、底壁部29と対向する上面を開口部55として、アッセンブリ80(インナケース60,70を含む)の挿入後、アウタケース本体部50と別体とされて蓋体として機能する上壁部28で閉止する構成とする。
ただし、開口部55を比較的小さくして、シール材の減少や封止作業の効率化を図るという観点からは、
図4に示される構成が望ましい。すなわち、アウタケース本体部50の開口部55は、インナケース(第1のインナケース60)の周壁部と相対しないアウタケース50の両端面のうちいずれか一方の端面に形成され、アウタケース50内へのインナーケース(第1のインナケース60)の挿入方向で見て、アウタケース50とインナケース(第1のインナケース60)との間に空隙が形成される構成とするとよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、水素含有燃料として、例えば炭化水素系燃料を用い、改質器2により、水素リッチな改質ガスに改質して、セルスタック3の燃料極に供給する構成としたが、水素含有燃料として、純水素を用いることも可能である。この場合には、改質器2を省略し、筐体6外の水素タンクなどからセルスタック3の燃料極に水素含有燃料を直接供給することができる。
【0056】
以上からわかるように、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。