(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CaSR活性の障害に関連する生理学的障害または疾患の処置、寛解または予防に使用するための医薬であって、請求項1〜11いずれか1項記載の結晶形態を含む医薬。
薬学的に許容されるビークルまたは添加物と共に、請求項1〜11いずれか1項記載の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態を含む医薬組成物。
副甲状腺癌、副甲状腺腺腫、原発性副甲状腺過形成、心機能不全、腎機能不全または腸機能不全、中枢神経系の疾患、慢性腎不全、慢性腎疾患、糸球体上皮細胞関連疾患、原発性副甲状腺機能亢進症、続発性副甲状腺機能亢進症、三次性副甲状腺機能亢進症、貧血、心血管疾患、線維性骨炎、低回転型骨病変、骨粗鬆症、ステロイド誘発骨粗鬆症、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、骨軟化症および関連骨障害、腎臓移植後の骨減少、消化器の疾患、内分泌性疾患および神経変性疾患、癌、アルツハイマー病、高カルシウム血症または腎性骨症を予防、処置または寛解するための医薬であって、請求項1〜11いずれか1項記載の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態を含む医薬であり、活性なビタミンDステロールまたはビタミンD誘導体と組み合わせてまたはそれを補充して使用してもよい、あるいは、ホスフェート結合剤、エストロゲン、カルシトニンまたはビスホスホネートと組み合わせてまたはそれを補充して使用してもよい、医薬。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
本発明は、以前国際公開第09/065406号に記載された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の新規多形に関する。本化合物は、CaSR活性の障害に関連する多くの障害または疾患の処置に使用され得る。
【0003】
カルシウム模倣薬は、カルシウム感知受容体(CaSR)の小分子アロステリックアクチベーターである[Urena, P.; Frazao, J. M. Calcimimetic agents: Review and perspectives. Kidney International (2003), 63, pp. s91-s96; Soudijn, W. et al. Allosteric modulation of G protein-coupled receptors: perspectives and recent developments. DDT (2004), 9, 752-758]。
【0004】
カルシウム模倣薬は、すでに、副甲状腺機能亢進症(HPT)の処置のために、商業的に有用であることが示されている:カルシウム模倣化合物Cinacalcet(登録商標)[Balfour, J. A. B. et al. Drugs (2005) 65(2), 271-281; Linberg et. al. J. Am. Soc. Nephrol (2005), 16, 800-807, Clinical Therapeutics (2005), 27(11), 1725-1751]は、最近、慢性腎臓疾患の透析患者における続発性HPTの処置、および甲状腺癌を有する患者における原発性HPTの処置のために上市された。従って、ヒトのカルシウム感知受容体(CaSR)アクチベーターの概念の証明は成されており、すでに臨床的関連もよく確立されている。他のカルシウム模倣化合物は、例えば、国際公開第94/018959号、第98/001417号、第05/065050号、第03/099814号、第03/099776号、第00/21910号、第01/34562号、第01/090069号、第97/41090号、米国特許第6,001,884号、国際公開第96/12697号、欧州特許第1203761号、国際公開第95/11221号、第93/04373号、欧州特許第1281702号、国際公開第02/12181号、第04/069793号、米国特許第2004242602号、国際公開第04/106296号および国際公開第05/115975号に記載されている。
【0005】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸は、カルシウム模倣活性を示す有望な新規化合物群の一部である(国際公開第2009/065406号)。
【0006】
医薬製造の一つの重要な局面は、薬学的有効成分(API)の物理学的形態の問題である。異なる物理学的形態がしばしば異なる基本的性質、例えば溶解度、溶解速度、吸湿性、バイオアベイラビリティー、加工性および安定性を示すため、医薬製剤または医薬に用いられる原体またはAPIの物理学的形態、例えば結晶形態は重要である。種々の固体形態、例えば多形または擬多形の存在は、そのため、薬物製品の性質に影響を与え得る。
【0007】
このため、溶媒和物および水和物を含む特定の結晶形態が、他のものより好ましいことがある。さらに、或る形態は、特定の製剤および/または適用に応じて好ましい可能性がある。例えば、薬物の性質、例えば有効成分の溶解速度は、特定の結晶形態、または、特定の比の結晶形態の混合物の適切な選択によって変え得る。
【0008】
APIの結晶形態は、その予測可能な性質により、薬物製剤においてまたは化学的処理中、通常、非結晶形態、例えば非晶形態より好ましい。結晶形態は、とりわけ、化学的安定性(圧力、熱および光)がより大きく、加工し易く、扱いやすいという利点を有する。特に、結晶は、一般的に反応混合物からより容易に単離されるため、結晶形態の供給は、特に工業スケールでの薬物合成で重要な利点である。さらに、特定の溶媒中の化合物の特定の結晶形態の結晶化は、異なる溶媒中の他の形態の結晶化によっては達成されない化合物の好都合な精製をもたらし得ることが知られている(部分的には異なる溶媒中の不純物の溶解度の性質の相違による)。反対に、非晶形態の化合物は、再結晶によって精製できず、しばしば、さらに高価な精製方法、例えば分取クロマトグラフィーなどを必要とする。
【0009】
また、種々の結晶形態は、融点、密度、硬度、磨砕性などが異なっており、結果として、具体的な適用に応じて、特定の多形は、他のものより好ましい。異なる結晶形態は、投与形中に存在する添加物、ビークルおよび他の添加物に応じて、医薬製剤中で異なる安定性を有する。薬物が懸濁液中に在るとき、非晶性化合物または最も安定なものでない多形の不安定性は、特に問題となる。
【0010】
従って、結晶形態は一般的に薬物の非結晶形態より好ましいが、種々の状況、例えばその適用またはそれが用いられるプロセスに応じて、化合物の特定の結晶形態が好ましい。
【0011】
熱力学的により安定な形態は準安定な形態よりも好ましいことがあり、高い溶解速度を有し得る準安定な形態が好ましいことがある。
【0012】
国際公開第2009/065406号は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の合成を記載しているが、該化合物の結晶形態または該形態の製造を開示しない。この明細書は、多形および{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の安定な多形を得る方法に関して記載していない。
【0013】
国際公開第2010/021351号は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸誘導体の合成を記載しているが、当該誘導体の結晶形態を開示していない。
【発明の概要】
【0014】
本発明の概要
本発明は、驚くべきことに、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の安定な結晶多形を提供する。
【0015】
第1の局面において、本発明は、従って、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態に関する。
【0016】
好ましい局面において、本発明は、グラフ2a、4a、6a、8a、式1および/または表1〜6で記載された1つ以上の特徴または特徴的な線、形状またはパターンを示すか;あるいは、そこで列挙された1つ以上の値、例えば波数(cm
-1)(用いられた方法に応じて±3または±4cm
-1)または2θ度の反射角(±0.1)を有するか;あるいは、当該グラフまたは表に示されたものと実質的に同様であるスペクトル/ディフラクトグラムによって表される結晶多形としての、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸に関し、当該{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶多形は、以後“形態C”または“多形C”と呼ぶ。
【0017】
幾つかの分析方法、例えばX線粉末回折測定によって、形態Cを他の多形から区別することができる。グラフ1は、明らかに類似と相違の両方の領域を示している2つの多形Cおよび多形XのXRPDディフラクトグラム
を重ねて示したものである。
【0018】
本発明の一つの態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、従って、純粋な多形CのXRPDディフラクトグラムであるグラフ2aで本質的に示されるXRPDパターンを有することによって特徴付けられる。
【0019】
他の態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、それぞれ約2θ=
8.8、
9.5、12.3、16.0、
18.3、19.1および/または20.2 (±0.1°)(下線を付したものが主要なものである)の反射ピークの1つ以上を示すXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0020】
また、示差走査熱量測定(DSC)によって、形態Cを他の多形から区別することができる。グラフ3は
、約240℃および約255℃(±2℃)で
発現する
形態Cおよび形態Xの吸熱事象を示す
これら2つの多形のサーモグラム
を重ねて示したものである。
【0021】
一つの態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、従って、約240℃(±2℃)で
発現する吸熱事象を含むグラフ4aで本質的に示された示差走査熱量測定(DSC)曲線を有することによって特徴付けられる。
【0022】
グラフ4aのDSC曲線はまた、形態Cの融点を超えて融解した{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸からの形態Xの結晶化による、約245℃で
の発熱事象を含む。このように形成された形態Xの結晶は、その後、温度をさらに上げたときに融解し、約255℃(±2℃)で
のさらなる吸熱事象によって証明される。グラフ4aは、さらに、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸が、255℃(±2℃)未満の温度で分解に対して安定であることを示すTGAの軌跡を含む。
【0023】
また、
減衰全反射型フーリエ変換赤外(ATR−FTIR)スペクトル測定によって、形態Cを他の多形から区別することができる。グラフ5は、類似と相違の両方の領域を明らかに示している多形Cおよび多形Xの2つのATR−FTIRスペクトル
を重ねて示したものである。
【0024】
本発明の一つの態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、純粋な多形CのATR−FTIRスペクトルであるグラフ6aに本質的に示されるATR−FTIRスペクトルを有することによって特徴付けられる。
【0025】
他の態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、それぞれ約
1636、
1298、1225、
822、811および/または786 (±3cm
-1)(下線を付したものが主要なものである)の減衰全反射ピークを1つ以上示すATR−FTIRスペクトルによって特徴付けられる。
【0026】
また、固体状態核磁気共鳴(SS−NMR)スペクトル測定によって、形態Cを他の多形から区別することができる。グラフ7は、明らかに類似と相違の両方の領域を示している多形Cおよび多形Xの2つの
13C−SS−NMR
を重ねて示したものである。
【0027】
本発明の一つの態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、純粋な多形Cの
13C−SS−NMRスペクトルであるグラフ8aで本質的に示される
13C−SS−NMRスペクトルを有することによって特徴付けられる。
【0028】
他の態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、それぞれδ
13C:173.4、
157.6、
132.6、
117.0、67.8、
48.9、35.6および/または
27.0 (±1 ppm)(下線を付したものが主要なものである)の共鳴ピークを1つ以上示す
13C−SS−NMRスペクトルによって特徴付けられる。
【0029】
本発明の他の態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cおよび形態Xは、実質的に、表1に示されたものと同一である単結晶パラメーターを有することによって特徴付けられる。
表1: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cおよび形態Xの単結晶パラメーター
【表1】
【0030】
本発明を通して、単位胞の大きさ、原子座標などの結晶パラメーターは、具体的な値についての標準的な不確実性を括弧内で示すために、標準的な結晶学的表記で示される。例えば、表1の軸の値である“a = 10.2289(16)”は、aの値が、10.2289±0.0016Å、すなわち10.2273Åから10.2305Åの間であるという95%の確率があることを意味する。
【0031】
表2: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの単結晶構造測定に関する結晶データおよび構造精密化の詳細
【表2】
【0032】
本発明の現在好ましい態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、下記の表3に示す単位胞の起点に対する原子位置の原子、下記の表4に示す結合長、または、下記の表5に示す結合角を含む。
【0033】
表3: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの原子座標、等価等方性変位パラメーター[Å2]および占有率
【表3】
【0034】
表4:{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの結合長[Å]
【表4】
【0035】
表5:{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの結合角[°]
【表5】
【表6】
【0036】
表6:pHの関数としての{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の多形Cおよび多形Xの室温で測定された溶解度の概要
【表7】
1:溶解度を、2つの異なるバッチで2回測定した。
【0037】
本発明の他の現在好ましい態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、式1に示す単結晶X線結晶解析(XRC)によって得られる構造を有する。
【0038】
さらなる局面において、本発明は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の特定の多形Cおよびその製造方法に関する。
【0039】
また、他の局面において、本発明は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の結晶多形、または、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態を出発物質として用いる、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの製造に関する。
【0040】
本発明は、さらなる局面において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の多形Cを含む医薬組成物、および、その製造方法および使用を目的とする。
【0041】
定義
用語“C
1−C
6直鎖または分枝鎖アルキルアルコール類”は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノールおよび2−ブタノールを含む。
【0042】
グラフ、図および表の簡単な説明
グラフ1は、形態Cと形態XのXRPDパターン
を重ねて示したものである。
グラフ2aは、典型的な形態CのXRPDパターンを示す。
グラフ2bは、典型的な形態XのXRPDパターンを示す。
【0043】
グラフ3は、形態Cと形態XのDSCサーモグラムの比較を示し、該サーモグラムは、2つの多形についてそれぞれ約240℃および約255℃(±2℃)で
発現する吸熱事象を示す。
グラフ4aは、典型的な形態CのDSCおよびTGAサーモグラムを示す。
グラフ4bは、典型的な形態XのDSCおよびTGAサーモグラムを示す。
【0044】
グラフ5は、形態Cと形態XのATR FTIRスペクトル
を重ねて示したものである。
グラフ6aは、純粋な形態CのATR FTIRスペクトルを示す。
グラフ6bは、純粋な形態XのATR FTIRスペクトルを示す。
【0045】
グラフ7は、形態Cと形態Xの固体状態NMRスペクトル
を重ねて示したものである。
グラフ8aは、純粋な形態Cの固体状態NMRスペクトルを示す。
グラフ8bは、純粋な形態Xの固体状態NMRスペクトルを示す。
【0046】
式1は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Cの単結晶立体配置を示す。
式2は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xの単結晶立体配置を示す。
【0047】
表1は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Cおよび結晶形態Xについての単結晶パラメーターを示す。
【0048】
表2は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの単結晶構造測定に関する実験的詳細を提供する。
【0049】
表3は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの単結晶立体配置についての選択された原子座標および等方性熱的パラメーターを提供する。
【0050】
表4および表5は、それぞれ、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの単結晶立体配置についての結合長および結合角を提供する。
【0051】
表6は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Xおよび形態Cの異なるpHでの溶解度を提供する。形態Xの室温での溶解度は、形態Cに比べて高いことが結論づけられる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の詳細な説明
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸は、2.9および9.3のpKa値を有する双性イオン分子である。本化合物の塩は、2つのpKa値の間のpHを有する製剤中で安定でなく、従って、双性イオン形態の安定な結晶形態が探し求められている。{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の多くの準安定形態または溶媒和物が見出されているが、今までのところ、2つの安定な多形(形態Cおよび形態X)のみが同定されている。これらの2つの形態は、互変的に関連している。
【0053】
現在、上に記載した本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、環境温度で熱力学的に安定な多形結晶形態であって、溶媒和されておらず無水であるものを表すと考えられている。製造工程や最終的な薬物製剤において他の結晶形態に変化しないために、熱力学的に安定な結晶形態の薬物製品が一般的に好ましい[Topics in Current Chemistry, Vol. 198, 1998, 164-208]。
【0054】
幾つかの方法が、医薬の固体中の多形を特性決定するのに用いられる(H. G. Brittain (ed.) Polymorphism in Pharmaceutical Solids. Marcel Dekker, Inc., New York, 1999, pp. 227-278)。偏光顕微鏡および熱顕微鏡は有用なツールであることが証明されている。相変化を含むさらなる情報を得るために、およびそれぞれの単離された形態が溶媒和物であるかまたは無水和物であるかを推測するために、熱的分析方法、例えば示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)を用いることができる。これらの熱的な方法は、多形が温度および圧力の範囲に関するその安定性に応じて2つのタイプ、すなわちモノトロープおよびエナンチオトロープに類別されるので、エナンチオトロピックな系とモノトロピックな系を区別するために用いられる。
【0055】
一般的に、その融解熱から、モノトロープとエナンチオトロープを区別することができる。吸熱多形遷移はエナンチオトロープを示し、一方、発熱遷移はモノトロープを示す。
示差走査熱量(DSC)分析以外にも、多形を特性決定し、上で論じた1つの多形と他の多形を区別するための、幾つかの有効な方法が存在する。
【0056】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の多形について、形態Cは、形態Xより低い融点を有するが、それより高い融解エンタルピーを有し、このことは、形態Cが、形態Xに比べて低温でより熱力学的に安定であることを意味する。2つの多形が等しく安定である遷移温度T
tは、この温度での競合的スラリー化が形態Xから形態Cへの変換を起こすために、110℃より高い。両方の形態の融解エンタル
ピーおよび融点の注意深い測定により、遷移温度は、120〜145℃の間であると推定される。
【0057】
結晶化は、化学化合物を精製するおよび化学化合物の望ましい結晶形態を得るための周知の方法である。多形の結晶化は、幾つかの効果に影響されることが知られているが、これらの効果のメカニズムは知られておらず、操作上の要素および多形の結晶化特性の間の定量的関係は明らかにされていない。
【0058】
多形の結晶の結晶化方法は、競合的核形成、結晶成長、および、準安定な形態から安定な形態への変換で構成される。選択的に多形を結晶化するためには、結晶化方法におけるそれぞれの必須工程のメカニズムが、操作条件および鍵となる制御要素と明確な関係にある必要がある [Crystal Growth & Design, 2004, Vol. 4, No.6, 1153-1159]。
【0059】
結晶性{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸は、驚くべきことに、得ることが難しいことが判明した。1つの障害は、高いガラス転移温度(室温よりかなり高い)による非晶形態の相対的な安定性である。従って、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸を速く沈殿させようとすると、しばしば非晶質の生成物が得られる。
【0060】
さらに、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸は、多くの準安定形態または溶媒和物で結晶化する。多くの場合において、溶媒からの沈殿によって得られる固体物質は溶媒和物となる。
【0061】
形態Cを、形態Cの種晶の存在下で、メタノールまたはエタノールから結晶化することによって、あるいは、有機溶媒中、例えばメタノール、エタノール、トルエンおよびキシレン中の、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態または異なる多形(例えば形態X)の何れかの懸濁液を、高温でまたは還流しながら、長時間撹拌することによって、最も効率的に製造することができる。
【0062】
従って、他の局面において、本発明は、形態Cの種晶の存在下で、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の結晶多形または非晶形態を出発物質として用いる、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの製造に関する。
【0063】
反対に、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Xを、種晶を加えずにブランクの濾過溶液から結晶化することができ、それによって、好ましい形態Cのためのより適当な出発物質が得られ、これは、本発明の一つの態様において、適当な溶媒中、例えばメタノールなどのC
1−C
6直鎖または分枝鎖アルキルアルコール中、適当には高温でまたは還流温度で、形態Xの懸濁液を長時間撹拌することによって、形態Xから形態Cへの固体溶液変換によって得ることができる。
【0064】
具体的な態様において、本発明は、従って、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶多形Xを出発物質として用いる、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの製造方法であって、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Xの懸濁液を、メタノール中で長時間沸騰させることを含む方法に関する。
【0065】
また、他の局面において、本発明は、少なくとも80%、例えば81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の多形純度を有する、単離された本明細書で定義された本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cに関する。
【0066】
また、他の局面において、本発明は、少なくとも80%、例えば81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の結晶化度を有する、単離された本明細書で定義された本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cに関する。
【0067】
また、他の局面において、本発明は、本明細書で定義された本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態を含む、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の擬多形を含む{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態の混合物または組成物、例えば{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cと{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の多形の混合物に関する。
【0068】
本発明の現在好ましい形態Cは、本化合物の投与形の製造および長時間貯蔵を容易にする物理学的性質、
典型的に形態Cとは異なる密度および晶癖を有する{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の固体形態との相互変換に対する安定性を有する。固体投与形、例えば錠剤中のAPIの多型相互変換は、錠剤において割れ目の形成を起こし得る。
【0069】
固体投与形中の多形の間の相互変換は、非常に問題であり、従って、可能な限り避けられるべきであり、それは安定な多形Cを使用することによって達成される。このことは、安定性試験によって証明される;例えば多形C、多形Xおよび2つの多形C+Xの混合物全てが、何らの固体状態変換なく、60℃、60℃/相対湿度75%、および、80℃/相対湿度75%で4週間ストレス安定性試験を通過した。
【0070】
また、他の態様において、本発明は、従って、60℃、60℃/相対湿度75%、および、80℃/相対湿度75%での4週間ストレス安定性試験中に、全く固体状態変換しない、単離された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cに関する。
【0071】
また、他の態様において、本発明は、治療に使用するための、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態C、または、それと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の安定な結晶多形との混合物に関する。
【0072】
具体的な態様において、本発明は、治療に使用するための、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態C、または、それと{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態との混合物、または、本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xとの混合物に関する。
【0073】
また、他の局面において、本発明は、薬学的に許容される添加物またはビークルと共に、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態C、または、それと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の安定な結晶多形との混合物を含む医薬組成物に関する。
【0074】
具体的な態様において、本発明は、薬学的に許容される添加物またはビークルと共に、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態C、または、それと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xとの混合物、または{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態またはその混合物を含む医薬組成物に関する。
【0075】
具体的な態様において、本発明は、CaSR活性の障害に関連する生理学的障害または疾患、例えば副甲状腺機能亢進症の処置、寛解または予防に使用するための、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態C、または、それと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xまたは非晶形態との混合物を提供する。
【0076】
他の具体的な態様において、本発明は、CaSR活性の障害に関連する生理学的障害または疾患、例えば副甲状腺機能亢進症を処置、予防または寛解するための、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態C、または、それと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xとの混合物を提供する。
【0077】
さらなる態様において、本発明は、CaSR活性の障害に関連する生理学的障害または疾患、例えば副甲状腺機能亢進症を予防、処置または寛解するための医薬の製造における、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の好ましい形態C、または、それと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xとの混合物の使用を目的とする。
【0078】
さらに、さらなる態様において、本発明は、薬学的に許容されるビークルまたは添加物と共に、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の好ましい形態C、または、それと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xとの混合物を含む医薬組成物を目的とする。
【0079】
本発明はまた、副甲状腺癌、副甲状腺腺腫、原発性副甲状腺過形成、心機能不全、腎機能不全または腸機能不全、中枢神経系の疾患、慢性腎不全、慢性腎疾患、糸球体上皮細胞関連疾患、原発性副甲状腺機能亢進症、続発性副甲状腺機能亢進症、三次性副甲状腺機能亢進症、貧血、心血管疾患、線維性骨炎、低回転型骨病変、骨粗鬆症、ステロイド誘発骨粗鬆症、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、骨軟化症および関連骨障害、腎臓移植後の骨減少、消化器の疾患、内分泌性疾患および神経変性疾患、癌、アルツハイマー病、高カルシウム血症、または腎性骨症を予防、処置または寛解する方法であって、それを必要とする患者に、所望により活性なビタミンDステロールまたはビタミンD誘導体、例えば1−α−ヒドロキシコレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、25−ヒドロキシコレカルシフェロール、1−α−25−ジヒドロキシコレカルシフェロールと組み合わせてまたはその補助として、あるいは、ホスフェート結合剤、エストロゲン、カルシトニンまたはビスホスホネート(biphosphonate)と組み合わせてまたはその補助として、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態C、またはそれと本明細書で定義された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xとの混合物を有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0080】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の現在好ましい多形は、従って、そのX線粉末(XRPD)ディフラクトグラム(グラフ2a)、その
減衰全反射型フーリエ変換赤外(ATR−FTIR)スペクトル(グラフ6a)、その固体状態NMRスペクトル(SS−NMR)(グラフ8a)、その表1に定義された単結晶パラメーター、および、その単結晶X線結晶解析(XRC)によって得られる結晶構造(式1)によって特徴づけられる結晶形態Cである。
【0081】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の具体的な多形は、そのX線粉末(XRPD)ディフラクトグラム(グラフ2b)、その
減衰全反射型フーリエ変換赤外(ATR−FTIR)スペクトル(グラフ6b)、その示差走査熱量測定 (DSC)曲線(グラフ4b)、その固体状態NMRスペクトル(SS−NMR)(グラフ8b)、その表1に定義された単結晶パラメーター、および、その単結晶X線結晶解析(XRC)によって得られる結晶構造(式2)によって特徴づけられる結晶形態Xである。
【0082】
上で論じたように、本明細書で開示されたものの結晶性組成物は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態(すなわち非結晶形態)から、または、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の他の結晶形態(例えば形態X)から、固体溶液変換によって製造され得る。{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態の製造は、国際公開第2009/065406号(言及することによって本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0083】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Cを形成する具体的な方法は、乾燥溶媒または溶媒混合物に非晶質化合物を溶解し、形態Cの種晶の存在下で結晶化を行うことを含む。好ましい溶媒は、C
1−C
6直鎖または分枝鎖アルキルアルコール類、例えばメタノールおよびエタノールを含む。
【0084】
好ましくは、溶媒を加熱し、非晶質化合物を、ほぼ飽和に等しい量で溶解し、得られた溶液を濾過した後、それを、溶解した化合物の全量がもはや溶媒に溶解できなくなる温度まで冷却することを含む。形態Cの種晶は、望ましい形態Cを沈殿させるために添加される。結晶は、濾過し、所望により真空中で、高温で乾燥させることによって単離される。
【0085】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Cを形成する他の具体的な方法は、乾燥溶媒または溶媒混合物中の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態X、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態または他の結晶形態またはその溶媒和物の懸濁液を、長時間、例えば数時間または数日間加熱し、当初の形態またはその混合物から形態Cへの固体溶液変換を誘発することを含む。幾つかの分析方法、例えば上で論じた方法によって、変換の進行を追跡できる。好ましい溶媒は、C
1−C
6直鎖または分枝アルキルアルコール類、例えばメタノール、または、芳香族性炭化水素類、例えばトルエンまたはキシレンを含む。全ての形態Xが形態Cに変換されたとき、熱い懸濁液を室温まで冷却する。結晶は、濾過し、所望により真空中で、高温で乾燥させることによって単離される。
【0086】
本発明は、従って、別個の態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Cを製造する方法であって、
a. {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態を、好ましくは加熱することによって、ほぼ飽和量に等しい量が溶解するまで、乾燥溶媒または溶媒混合物に溶解し、
b. 得られた熱い溶液を濾過した後、それを、溶解した化合物の全量がもはや溶媒中で溶解できなくなる温度まで冷却し、
c. 望ましい結晶形態を沈殿させるために、形態Cの種晶を添加し、
d. 得られた結晶懸濁液を冷却し、それを濾過し、所望により真空中、高温で、乾燥させることによって、結晶生成物を単離する
ことを含む方法、あるいは、
1. 乾燥溶媒または溶媒混合物中の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xの懸濁液を加熱し、それによって、形態Xから形態Cへの固体溶液変換を開始し、
2. 関連する分析方法、例えばX線粉末回折(XRPD)を用いて、変換が完了するまで固体溶液変換プロセスを追跡し、
3. 得られた結晶懸濁液を冷却し、それを濾過し、所望により真空中、高温で、乾燥させることによって単離する
ことを含む方法の何れかを提供する。
【0087】
具体的な態様において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Cを製造する方法は、C
1−C
6直鎖または分枝鎖アルキルアルコール類、例えばメタノールから選択される溶媒中で行われる。
【0088】
医薬製剤および処置方法
治療に使用するために、本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、典型的に、医薬組成物の形態である。従って、本発明は、獣医学的(ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌおよびネコなどのほ乳類を含む)およびヒトの医学的使用のための、所望により1種以上の他の治療活性な化合物と共に、薬学的に許容される添加物またはビークルと共に、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cを含む医薬組成物に関する。添加物は、本組成物の他の成分と相溶性であって、レシピエントに有害でないという点で、“許容される”ものでなければならない。
【0089】
好都合には、有効成分は、製剤の重量に対して10〜3000ppm、例えば15〜2800ppm、例えば20〜2500ppm、例えば25〜2400ppmまたは30〜1000ppm含む。
【0090】
本発明の医薬組成物は、経口、非経腸、眼、経皮、関節内、局所、肺、鼻腔、頬側または直腸投与のための、あるいは、腎臓に用いられる化合物の製剤に適切な他の何れかの方法における、およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21
st ed., 2005, Lippincott Williams & Wilkinsに開示されたような許容される方法における、錠剤、丸薬、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、シロップ剤、エマルジョン、アンプル、坐剤または非経腸用溶液または懸濁液などの単位投与形であり得る。本発明の組成物中、有効成分が、組成物の重量に対して10〜3000ppm、例えば15〜2800ppm、例えば20〜2500ppm、例えば25〜2400ppmまたは30〜1000ppmの量で存在し得る。
【0091】
錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、適当には、経口用非毒性薬学的に許容される担体、例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせ得る。さらに、適切な場合は、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、風味剤および着色料を混合物に加え得る。適当な結合剤は、例えば乳糖、ブドウ糖、澱粉、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン グリコール、蝋などを含む。滑沢剤は、例えばオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、例えば澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどを含む。カプセル剤のためのさらなる添加物は、マクロゴールまたは脂質を含む。
【0092】
錠剤などの固体組成物の製造のために、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の均一な混合物を含む固体製剤前(preformulated)組成物を作るために、上に記載したような1種以上の添加物、および、水などの他の薬学的希釈剤と混合される。用語“均一な”は、組成物が容易に錠剤またはカプセル剤などの等しく有効な単位投与形にさらに分割され得るように、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cが、組成物中に均一に分散されることを意味すると理解される。製剤前組成物は、約0.01〜0.1mgの{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cを含む単位投与形にさらに分割され得る。
【0093】
単位投与形において、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、通常患者の状態に応じて、いずれにしても、医療従事者によって為される処方に従って、適切な時間間隔で1日1回以上投与され得る。好都合には、製剤の単位投与形は、0.005mgから0.5mgの間の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cを含む。
【0094】
本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの適当な投与量は、とりわけ、患者の年齢および状態、処置されるべき疾患の重症度、および医師に周知の他の要素に依存する。{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、経口、非経腸または局所の何れかで、異なる投与スケジュールに従って、例えば1日1回または週に1回の間隔で投与され得る。一般的に、1回投与量は、0.0001〜0.001mg/kg体重の範囲である。{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、ボラスとして(すなわち1日投与量全てを一度に投与される)、または1日2回以上の分割投与として投与され得る。
【0095】
処置が他の治療活性な化合物の投与を含むならば、当該化合物の有用な投与量について、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9
th Ed., J.G. Hardman and L.E. Limbird (Eds.), McGraw-Hill 1995を調べることが推奨される。1種以上の他の活性な化合物と本発明の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの投与は、同時であっても連続的であってもよい。
【0096】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの経口または非経腸投与のための液体製剤は、例えば、水溶液、シロップ剤、水性または油性懸濁液および食用油、例えば綿実油、ごま油、ヤシ油または落花生油を伴うエマルジョンである。水性懸濁液に適当な分散剤または懸濁剤は、合成ゴムまたは天然ゴム、例えばトラガカントゴム、アルギネート、アラビアゴム、デキストラン、カルボキシメチルセルロース ナトリウム、ゼラチン、メチルセルロースまたはポリビニルピロリドンを含む。
【0097】
非経腸投与、例えば筋肉内、腹腔内、皮下または静脈内注射または注入のために、本医薬組成物は、好ましくは、適切な薬学的に許容される溶媒に溶解または可溶化された{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cを含む。非経腸投与のために、本発明の組成物は、滅菌処理された水性または非水性溶媒、特に水、等張性食塩水、等張性ブドウ糖溶液、緩衝溶液または治療活性な物質の非経腸投与に慣習的に用いられる他の溶媒を含み得る。例えば、細菌保持フィルターでの濾過、滅菌剤の組成物への添加、組成物の放射線照射または組成物の加熱によって、本組成物を滅菌処理し得る。あるいは、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cを、使用直前に滅菌処理された溶媒に溶解される滅菌処理された固体製剤、例えば凍結乾燥粉末として提供し得る。
【0098】
非経腸投与を意図した組成物は、さらに、慣用の添加物、例えば安定剤、緩衝液または保存料、例えばヒドロキシ安息香酸メチルなどの抗酸化剤などを含み得る。
【0099】
直腸投与用組成物は、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cおよび担体、例えばココアバターを組み込んだ坐剤の形態であっても、浣腸剤の形態であってもよい。
【0100】
関節内投与に適当な組成物は、微結晶形態、例えば水性微結晶性懸濁液の形態である{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの滅菌処理された水性製剤の形態であり得る。また、リポソーム製剤または生分解ポリマー系を、関節内および眼の投与のために有効成分を提供するのに用い得る。
【0101】
眼の処置を含む局所投与に適当な組成物は、液体または半液体製剤、例えばリニメント剤、ローション剤、ゲル、適用基剤(applicant)、水中油型または油中水型エマルジョン、例えばクリーム、軟膏またはペースト;または溶液または懸濁液、例えば点眼剤を含む。局所投与のために、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cは、典型的に、組成物の0.01〜20重量%、例えば0.1%〜約10%の量で存在し得るが、また、組成物の約50%までの量で存在し得る。
【0102】
眼の処置用の組成物は、好ましくは、さらにシクロデキストリンを含み得る。
【0103】
鼻腔または頬側に、または、吸入で投与するのに適当な組成物は、粉末、自己推進(self-propelling)およびスプレー製剤、例えばエアゾールおよび噴霧器を含む。このような組成物は、組成物の0.01〜20重量%、例えば2重量%の量で、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cを含み得る。
【0104】
本組成物は、さらに、CaSR活性の障害に関連する生理学的障害または疾患、例えば副甲状腺機能亢進症の処置に好都合に使用される、1種以上の他の有効成分を含み得る。
【0105】
本発明のさらなる態様は、医薬としての{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの使用を包含する。
【0106】
本発明は、下記の非限定的な実施例によって例示される。
【0107】
実験
装置類
X線粉末回折(XRPD):透過ジオメトリーで形成されPIXcel 検出器を備えた慣用の X'pert PRO MPD 回折計 (PANalytical)で、ディフラクトグラムを得た。CuKα放射λ=1.5418Å光源および40kVおよび45mAの発電力で、3〜30°の連続的2θスキャン範囲を用いた。148.92秒のステップ時間で0.0070°/ステップの2θステップサイズを用いた。透過測定について、96ウェルプレート中のウェル上で、サンプルを穏やかに平らにした。x方向についてウェルプレートを前後に動かし、全ての実験を室温で行った。
【0108】
単結晶X線回折(XRC)データを、CCDエリア検出器を有するBruker SMART Apex 回折計を用いて集めた(温度:120(2)K;MoKa放射λ=0.7107Å;データ収集法:ω/2qスキャン)。さらなる詳細は、実施例5で判明する。構造解析に用いられるプログラム:SHELXS97 (Sheldrick, 1990);構造精密化に用いられるプログラム:SHELXL97 (Sheldrick, 1997)。
【0109】
ATR−FTIR分光分析(
減衰全反射型フーリエ変換赤外スペクトル):GoldenGate ATR unit (SPECAC)を備えたFTIR装置であるEquinox 55またはTensor 27 (Bruker)でスペクトルを測定した。3cm
-1のスペクトル分解能を用いた。
【0110】
示差走査熱量測定(DSC):Perkin Elmer DSC8500 systemを用いてDSC試験を行った。約0.5〜3mgのサンプルを測定に用いた。アルミニウムパンを分析に用いて、手で圧力をかけてパンの各部分を押すことによって密封した。温度を−60〜270℃で20℃/分で傾斜させた。窒素をパージガスとして流速20ml/分で用いた。
【0111】
熱重量分析(TGA):Perkin Elmer Pyris 1 TGA 装置を用いてTGA試験を行った。約10〜20mgのサンプルを測定のためにセラミックパンに入れた。サンプル温度を25〜350℃で10℃/分で傾斜させた。窒素をパージガスとして流速40ml/分で用いた。
【0112】
固体状態核磁気共鳴(SS−NMR):
13C−固体状態NMRスペクトルを
Instrument Centre for Solid-State NMR Spectroscopy (University of Aarhus)で得た。
13Cについて75.42MHzで作動する、磁場強度7.04Tを有するVarian Unity-INOVA NMR spectrometerを用いた。スピン周波数5.0kHzを用いる5mmの
自家製CP/MAS TLTプローブを用いた。
13Cスペクトルを、標準交差分極パルスシークエンスを用いて、接触時間1.6ms、緩和遅延時間4秒、検出時間10μ秒、スペクトル幅50kHzを用いて、環境温度で得た。プロトンデカップリングをデカップリング場強度95kHzを用いて行った。5mmのSi
3N
4ローターはサンプル容量110μlを有し、約100mgの物質を含む。スペクトルをゼロフィリング(32K リアルポイント)で、指数関数的増加および10Hzの線の広がりで処理した。TMSの外部サンプルについてスペクトルを参照した。
【0113】
特許請求の範囲のものを含め、分光分析特
性について本明細書で示された誤差範囲は、分光分析の分野の技術者に周知の要素に多少なりと依存し、例えば、サンプル調製、例えば粒子サイズ分布に、または、結晶形態が製剤の一部である場合は製剤の組成に、そして装置の変動および他の要素に依存し得る。
【0114】
±5の誤差範囲
は、±5、±4、±3、±2、±1、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2および±0.1の変化量
を含むが、これらに限定されない;±3の誤差範囲
は、±3、±2、±1、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2および±0.1の変化量
を含むが、これらに限定されない;±1の誤差範囲
は、±0.9、±0.8、±0.7、±0.6、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2および±0.1の変化量
を含むが、これらに限定されない;±0.2の誤差範囲
は、±0.2、±0.15、±0.1、±0.09、±0.08、±0.07、±0.06、±0.05、±0.04、±0.03、±0.02および±0.01の変化量
を含むが、これらに限定されない。
【0115】
特性決定
上に論じたXRPD、XRC、DSC、ATR−FTIRおよびSS−NMRによる特性決定分析に加えて、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cおよび形態Xの溶解度を、pHの関数として、MeOH中で測定した。環境温度で、形態Cと比べて、形態Xの溶解度が高い(表6を参照のこと)と結論づけられる。
【0116】
ストレス安定性試験
多形C、多形Xおよび2つの多形C+Xの混合物全てを、固体状態変換の徴候について、異なる温度および相対湿度条件で試験した。ストレス安定性試験は、3セットの条件:60℃、60℃/相対湿度75%および80℃/相対湿度75%で行い、1週間後、2週間後および4週間後、すなわち7日後、14日後および28日後にサンプルを分析した。
【0117】
50〜100mgの{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸を含む、1個の1.8mlの琥珀色ねじ蓋バイアル(27267-U, Supelco)を、個々の条件セット毎に試験した。60℃で試験するバイアルを、PTFEで裏打ちした黒色ポリプロピレン固体キャップ(27416, Supelco)で密閉し、サーモスタットを付けた加熱キャビネットに入れた。60℃/相対湿度75%および80℃/相対湿度75%で試験するバイアルを、飽和NaCl溶液を含むデシケーター中に、蓋をしないで置いた。続いて、デシケーターを、サーモスタットを付けた加熱キャビネットに入れた。
【0118】
1週間目、2週間目および4週間目に、
1. 外観
2. HPLCアッセイおよび不純物
3. 多形特性決定
についてサンプルを分析した。
試験したサンプル全てについて、60℃、60℃/相対湿度75%および80℃/相対湿度75%で4週間ストレス安定性試験を行い、固体状態変換が全くなかった。
【実施例】
【0119】
製造例
実施例1: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態の製造
工程1: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸エチルエステル
【化1】
[4−((1R)−3−オキソ−シクロペンチル)−フェノキシ]−酢酸エチルエステル(国際公開第2009/065406号を参照のこと)(40.0g, 153mmol)および(R)−(+)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミン(28.7g, 168mmol)を、アセトニトリル(1.4L)および濃酢酸(87.2ml)に懸濁した。透明な橙色の溶液を室温で1時間撹拌した後、NaBH(OAc)
3(51.7g, 244mmol)を少しずつ30分かけて加えた。24時間後、HPLCにより、12%の出発物質が残っていることが示され、さらにNaBH(OAc)
3を加えたが、未だ幾らかの出発物質が残っていた。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機相をMgSO
4で乾燥させ、真空中で濃縮し、明褐色の油状物を得た。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ヘキサン、酢酸エチル、イソプロパノールおよびトリエチルアミンの混合物(79:19:1.5:0.5)で精製し、望ましいジアステレオアイソマーを得た。収量:5.9g。HPLC純度>96%。
HPLC条件:流速=0.8;カラム:Ascentis (R) Express C18;溶出液:50% 0.025M 酢酸, 50% アセトニトリル pH=5.5。
【0120】
工程2: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸
【化2】
{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸エチルエステル(0.214g, 0.51mmol)を、メタノール(2.35ml)および水(0.78ml)の混合物に加えた。乳白色の混合物に、2N LiOH水溶液(2.05ml, 4.1mmol)を加えた。室温で約10分間撹拌した後、反応混合物が透明な明黄色の溶液に変化した。溶液を室温で一夜撹拌した。20時間後、溶液を真空で僅かに濃縮し、さらに5mlの水を添加した。激しく撹拌しながら4N HCl(2.4ml)を添加することによって、生成物を沈殿させた。2N LiOH水溶液でpHを5に調節した。沈殿物を濾過によって集め、粗製の非晶質の{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]フェノキシ}−酢酸を得る。収量:0.19g(95%)。
【0121】
実施例2:{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの結晶化
工程1: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の非晶形態から{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の結晶形態Xへの変換
40mgの非晶質化合物(上記の実施例1)を、マイクロ波オーブン用反応バイアルに入れ、全ての物質が溶解するまで、ヒートガンで加熱しながら、1mlのMeOHをゆっくりと加えた。熱い溶液を0.45μmシリンジフィルターで濾過し(使用前にフィルターを50℃に加熱した)、5℃に置いて、結晶形態Xをゆっくりと形成させた。
【0122】
工程2: {4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Xから{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cへの変換:
50mgの多形Xを、コンデンサーおよびマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコ中で、3mlのMeOHに懸濁した。懸濁液を、反応過程で一定間隔で採取したサンプルのXRPD分析により見て、全ての形態Xが形態Cに変換されるまで還流した。
【0123】
実施例3: 種晶を用いた{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態Cの別の製造
メタノール(6ml)を、振盪しながら、70℃まで加熱した。{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態CおよびXの混合物を、溶液が飽和になるまで加えた。種晶(形態C)を加え、{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態CおよびXの混合物(総量0.5g)を得た。反応混合物を一夜振盪し、濾過し、メタノールで洗浄し、結晶形態Cを得た。
【0124】
実施例4:競合的スラリー化実験
純粋な形態C、純粋な形態Xおよび形態Cと形態Xの混合物(1:1)の懸濁液を、MeOH中で調製し(濃度 30mg/ml)、3つの異なる温度、すなわち5℃、室温および還流温度(65℃)で14日間撹拌した。
【0125】
5℃および室温の懸濁液を、蓋を有し小さいマグネチックスターラーバーを備えた4mlのバイアル中で調製した。懸濁液を約500rpmで2週間撹拌した。高温で調製した懸濁液は、マグネチックスターラーバーおよび還流コンデンサーを備えた10mlのエルレンマイヤーフラスコ中で調製した。
【0126】
0日目、1日目、7日目および14日目に懸濁液のサンプルを採取し、XRPDによって調べた。
【0127】
競合的スラリー化実験により、形態Cが3つ全ての温度で安定であり(すなわち形態Xに変換されない)、一方、形態Xおよび形態X+Cの混合物の両方が、3つ全ての温度で純粋な形態Cに変換されることが最終的に示された。
【0128】
また、競合的スラリー化実験を、トルエンおよびキシレンなどの溶媒中で行ったが、これらの溶媒中では、おそらく溶解度が低いために、変換速度は非常に遅い。
【0129】
実施例5:{4−[(1R,3S)−3−((R)−1−ナフタレン−1−イル−エチルアミノ)−シクロペンチル]−フェノキシ}−酢酸の形態CのXRC単結晶構造
遅延蒸発条件下の希釈エタノール溶液からの結晶化によって得られた代表的な結晶を調べ、0.9Åデータセットを、120Kで、Bruker Smart 回折計で集めた。結晶構造解析をして、精密化をSHELXTL-97 systemを用いて行った。Sheldrick, G.M., 1990 and 1997を参照のこと。
【0130】
固定化された理論的な位置の水素原子を含む。最小二乗法精密化の最終サイクルで計算されたシフトは、全てその対応する標準偏差の0.1未満であった。最終R指数は6.43%であった。最終の差フーリエにより、電子密度の欠けまたは置き間違えがないことが示された。
【0131】
結晶の詳細を上記の表1に提供する。単結晶構造に関する実験的詳細を表2に提供する。選択された原子座標、等価等方性変位パラメーターおよび占有率を表3に提供する。結合長および結合角を表4および表5に提供する。
【0132】
実施例6:溶解度測定
25℃で、0.1N HCl(pH 1.0)中およびpH 2.0、4.0、6.0および8.0のソレンセンリン酸緩衝液中、pHの関数として、形態Cおよび形態Xの水への溶解度を測定した。それぞれのpH値について、2つの独立した測定を行った。形態Cまたは形態Xをシンチレーションバイアルに秤量し(pH 1について11, pH 2〜8について4mg)、4mlの0.1N HClまたは緩衝液を加えた。バイアルを25℃で24時間振盪した。24時間後、バイアルが溶解しない物質を未だ含むことをチェックした。懸濁液を0.45μmフィルターで濾過し、約0.5mlの濾液で飽和させた。得られた濾液を希釈し、標準曲線に対するHPLCによって分析した。結果を表6に示す。それからは、室温で、形態Cと比較して、形態Xの溶解度が高いと結論づけられる。