(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968917
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】純相の多成分系の製造方法、純相の多成分系をベースとするセラミック材料並びにそれらから形成された成形体及び複合体
(51)【国際特許分類】
C01B 13/36 20060101AFI20160728BHJP
C01G 35/00 20060101ALI20160728BHJP
C04B 35/626 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
C01B13/36
C01G35/00 C
C04B35/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-552226(P2013-552226)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公表番号】特表2014-516333(P2014-516333A)
(43)【公表日】2014年7月10日
(86)【国際出願番号】EP2012051899
(87)【国際公開番号】WO2012104430
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】102011010346.5
(32)【優先日】2011年2月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507239651
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ベック
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュニッター
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ランゲテーペ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ オッターシュテット
【審査官】
佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−025223(JP,A)
【文献】
特開昭63−025265(JP,A)
【文献】
特開2009−242230(JP,A)
【文献】
特開2010−103301(JP,A)
【文献】
特開2010−269983(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0019108(US,A1)
【文献】
特表2007−505025(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0028678(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/14 − 13/36
C01G 25/00 − 47/00
C01G 49/10 − 99/00
C04B 35/626
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化物ベース及び/又は酸化物ベースの均質な多成分系の製造方法であって、該多成分系は、Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V、Sb、Si、Al及びTaの群からの第一高融点金属と、Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V、Sb、Si、Al及びTaの群からの第二高融点金属とを有し、かつ第一高融点金属と第二高融点金属とは異なり、その際に第一高融点金属及び/又は第二高融点金属がフルオロ錯体及び/又はオキシフルオロ錯体として存在し、
その際に第一選択肢において、第一高融点金属が第一フッ化水素酸溶液中に存在し、かつ第二高融点金属が第二フッ化水素酸溶液中に存在し、
かつ第一高融点金属を有する第一フッ化水素酸溶液と、第二高融点金属を有する第二フッ化水素酸溶液とを混合して、溶解した第一高融点金属及び第二高融点金属を有するフッ化水素酸混合溶液が存在する、
又は
第二選択肢において、第一高融点金属と第二高融点金属とが、選択的なフッ化水素酸混合溶液中に溶解されており、
かつ
最後に、該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液を沈殿剤で沈殿させて、固体混合物が懸濁液中に存在し、前記方法が、
該懸濁液に、水性ベース又は有機ベースの塩基性溶液を添加して、第一中間生成物を得る
ことを特徴とする、水酸化物ベース及び/又は酸化物ベースの均質な多成分系の製造方法。
【請求項2】
該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液に、Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V及びTaの群からの溶解した第三の高融点金属を有する第三のフッ化水素酸溶液を、該沈殿前に混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液中に、Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V及びTaの群からの第三の高融点金属を、該沈殿前に溶解させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
Ti、Zr、Sn、Fe、Co、Ni、Ca、Zn、Pd、Cd、Al、Si、P、Ge、As、Se、Sb、Te、Sc、Y、Ybの群からのドーピング元素が、
第一フッ化水素酸溶液中及び/又は第二フッ化水素酸溶液中及び/又は該フッ化水素酸混合溶液中及び/又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液中及び/又は該沈殿剤中に溶解されており、
その際に該ドーピング元素が、該沈殿剤中に溶解されている場合には、該沈殿剤を、該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液に添加して、該ドーピング元素が、少なくとも部分的に酸化物又は水酸化物として該沈殿の際に沈殿析出する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
該沈殿剤が、塩基性溶液、塩基性に作用する固体又は塩基性に作用するガスを有し、かつ該沈殿を該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液の6.5〜14のpH値で行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
該塩基性溶液が、第一アルカリ金属水酸化物溶液及び/又は第一アルカリ土類金属水酸化物溶液を含有するか、
又は複数のアルカリ金属水酸化物溶液の第一混合物及び/又は複数のアルカリ土類金属水酸化物溶液の第一混合物を含有するか、又は
1種以上のアルカリ金属水酸化物溶液の第一混合物及び/又は1種以上のアルカリ土類金属水酸化物溶液の第一混合物を含有し、その際に該アルカリ金属水酸化物溶液及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液が、少なくとも1種の溶解した両性元素を有し、
その際に第一アルカリ金属水酸化物溶液が、第一アルカリ金属元素を有し、かつ第一アルカリ土類金属水酸化物溶液が、第一アルカリ土類金属元素を有し、かつ複数のアルカリ金属水酸化物溶液の第一混合物が、複数のアルカリ金属元素を有し、かつ複数のアルカリ土類金属水酸化物溶液の第一混合物が、複数のアルカリ土類金属元素を有し、
その結果、第二中間生成物を有する第一懸濁液が得られ、第二中間生成物が固体分で、第一アルカリ金属元素又は複数のアルカリ金属元素の混合物及び/又は第一アルカリ土類金属元素又はアルカリ土類金属元素の混合物を均一に分布して有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第一アルカリ金属水酸化物溶液及び/又は第一アルカリ土類金属水酸化物溶液が、水性水酸化物及び/又は水酸化物錯体を有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該懸濁液を混合する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
該塩基性溶液の添加を、撹拌しながら行う、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該塩基性溶液の添加を、0℃〜40℃の温度で及び800mbar〜1200mbarの圧力で行う、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
第一中間生成物を100℃〜1000℃の温度で熱処理して、セラミック材料及び副生物が生じる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
該副生物を、水を用いて洗い流す、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該セラミック材料を乾燥及び/又は粉砕して、セラミック成形用の均質なセラミック粉末が存在する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
粒子凝集を制御するための助剤を、該粉砕及び/又は該乾燥の際に添加する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
生じるセラミック粉末を乾燥させる、スラリー化する、ろ別する及び/又は粉砕する、請求項13又は14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化物ベース及び/又は酸化物ベースの均質な多成分系、特に棒状の(staebchenfoermig)モルホロジー(形態とも呼ぶ)を有する均質な多成分系の製造方法に関し、その際に該多成分系は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo、W、Re、Sb、Si、Al及びTaの群からの第一元素と、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo、W、Re、Sb、Si、Al及びTaの群からの第二元素とを有し、その際に第一元素及び/又は第二元素が、特にフルオロ錯体、特にH
2NbF
7、H
2TaF
7、HSbF
6、H
2ZrF
6、H
2SiF
6、H
3AlF
6等として、存在する。更に、本発明は、セラミック材料及び該セラミック材料製の成形体(Formkoerper)並びにそれに対応する複合体(Verbundkoerper)に関する。
【0002】
セラミック混合材料はたいてい、対応する酸化物及び炭酸塩から、これらがボールミル中で強力に粉砕され、混合され、引き続き高温でか焼されることによって、製造される。しかしながら、これらの方法は、不均質混合物の調合を必要とし、該混合物は、該か焼工程により不完全に反応して均質相になるに過ぎない。
【0003】
今日の高性能セラミックは、主成分及びドープ剤が局所的に豊富化していない、できるだけ均一な元素分布を必要とする。
【0004】
ますます多くの用途が、セラミック材料の圧電特性又は対応する強誘電特性を利用している。例えば、測距儀、超音波トランスデューサ、インクジェットノズル、コモンレール−ディーゼルインジェクタは、高性能セラミックから製造される。その際に、今日では、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)及びドーパントをベースとして製造されるセラミックが使用される。
【0005】
そのようなアクチュエータ及び共振器の環境への優しさは、ますます重要になっているので、これらの電気システムにおいて健康及び環境を損なう成分を取り除くことが努力されている。
【0006】
圧電特性を有する代替的な材料系は、ニオブ酸ナトリウムカリウムをベースとしている。この材料系製セラミック部品の圧電特性は、該セラミック製造にとって典型的に重要な粉末特性、例えば粒度又は相応して粒度分布、化学的純度、焼結活性、収縮等に加え、特にその密度、相純度及び/又は化学的均質性及び外部の優先方向へのそのセラミックグレインの全ての強誘電性及び/又は圧電性のドメインのできるだけ完全な配向に依存する。該ドメインのこの完全な配向性は特に、外部電場へのできるだけ多くのグレインの定義された配向により達成される。その際に、該電場は分極を生じさせる。
【0007】
該グレインの電場へのそのような配向は、該ニオブ酸ナトリウムカリウム材料系からのテープ成形(Foliengiessen)及び引き続き所望の(擬)立方相のヘテロエピタキシャル成長又はホモエピタキシャル成長の際に適した小片状及び/又は針状の単結晶を配向させることにより、達成される。
【0008】
適した小片状又は対応する針状の結晶子は、該セラミック中の該グレイン又はこれらのグレイン中の対応する強誘電性ドメインの配向性のための必要条件である。これらの結晶子は、単結晶の費用のかかる成長によるか又は該セラミック粉末の合成中の目的に合わせた製造により、得ることができる。
【0009】
技術水準において、これらのセラミックは、圧電部品の製造に使用される。特に、これらの部品は、そのメカトロニクスにおいて重要な要素である。特に、高出力かつ低排出のディーゼルエンジンのためには、そのような部品はそれらのディーゼル噴射装置中で使用される。圧電セラミック製のそのような多層体への要求は並外れて高い。
【0010】
それらの切換ストロークはますます大きくなり、かつより迅速に切換が行われなければならず、その際にその機能は該エンジン中の極端な周囲条件の場合でも保証されているべきである。
【0011】
これらの部品の劣悪なリサイクル性及び有毒原材料である鉛は、PZTに類似の又はより良好な技術的性質を有する圧電材料の探求をもたらした。技術的性質は、単位pm/Vで示される圧電係数d
33である。この圧電係数は、印加された場の方向の小信号範囲内でのメタライズされ、かつ分極されたセラミック試料についての電圧1ボルト当たりの線膨脹の程度である。
【0012】
2004年に、自動車製造業者Toyotaは、供給業者Densoと共に、雑誌Nature、タイトル"Lead free piezoceramics", 第432巻(2004), p.84-87に、今日の高性能PZT(Pb(Zr
xTi
1-x)O
3)に匹敵しうる性質を有する圧電セラミックのための組成を発表した。
【0013】
この材料は、Aサイトに本質的にはカリウム及びナトリウムを、Bサイトにニオブ及びタンタルを有する複雑なペロブスカイトAA’BB’O
3からなる。Aサイトには更にLiが、BサイトにはSbがドープ添加されている。更に、該相は、複雑なテンプレート法により小片状に構成されている。これは、特殊なモルフォトロピック配向が存在することを意味し、それにより、約250pm/Vのその圧電係数d
33が、400pm/VのPZTに匹敵しうる値に上昇した。該化合物の製造は、多様な酸化物(Nb
2O
5、Ta
2O
5)及び炭酸塩(K
2CO
3、Na
2CO
3)から行われた。この方法はとりわけ、特許EP 1382588及びDE 102005027928に及び論文"Lead free piezoceramics", Nature 432 (2004) 84-87に記載されている。
【0014】
Toyota及びDensoのMixed-Oxide法における特許を受けたニオブ化合物及びタンタル化合物の不十分な混和性は、Yiping Guoにより論文Mater. Lett. 59 (2005), 241-244に記載されている。
【0015】
純ニオブ酸カリウムもしくはニオブ酸ナトリウムのためには、より古い製造方法が存在し、その際にそれらの粒子は別個の粒子形態を有しない。ロシア語の雑誌Izv. Vysshikh Uchebn. Zavedenii Tsvetn. Met. (Nonferrous Metallurgy), 5 (1963), p.99-107に、Zelikmanは、水酸化カリウムを水酸化ニオブとオートクレーブ中で150℃〜200℃で加圧下に反応させて、可溶性カリウム化合物(K
8Nb
6O
19)が得られ、これは400℃を超えるか焼によるか又は高いKOH濃度で純ニオブ酸カリウムに分解することを記載する。この引用文は、Gmelins Handbuch der anorganischen Chemie, Niob, B4部, 第8版, 1973, p.157も参照される。
【0016】
オートクレーブ及びこの方法のための高温の使用により、高いコストが生じる。
【0017】
鉱物及び精鉱からニオブ及びタンタルを取得する際に、酸化ニオブ及び酸化タンタルを、濃アルカリ液を用いてすすぐ方法が知られている(例えばHydrometallurgy 80, (2005), p.126-131; CN1238536; JP8041559)。
【0018】
類似の方法は、ニオブ酸カリウム及びニオブ酸ナトリウムの水熱合成の際に使用され、該合成の際に酸化ニオブがオートクレーブ中でアルカリ金属水酸化物で溶出される(aufgeschlossen)、(C.H. Lu, Mater. Lett.34 (1998) 172-176)。
【0019】
更なる方法は、酸化ニオブ及び酸化タンタルの加水分解に基づく。これはとりわけ、CIBA社の特許DE 1257125に記載されている。更に前進した論文は、水中油型乳濁液が粒度の制御に使用される"microemulsion mediated synthesis of nanocrystalline (K
xNa
1-x)NBO
3 powders", J. Crystal Growth, 280 (2005) 191-200である。
【0020】
可溶性化合物を得るために、該酸化ニオブ及び酸化タンタルの錯体も使用することができる。その際に、酒石酸塩及びペルオキソ酒石酸塩が、それらのカルボキシル酸の中では優れた役割を果たす。これらの錯体は、引き続き高温で目的化合物(ニオブ酸塩)に分解される。これらの例は、M. Devillers, Inorg. Chem. 44, (2005), p.1554-1562又はB. Malic, J. Eur. Ceram. Soc. 25, (2005), p.2707-2711に見出されうる。
【0021】
圧電部品用材料系としてのニオブ酸ナトリウムカリウム(後でNKNとも呼ぶ)の使用の場合にも、その圧電パラメーターは、粒度、純度、焼結活性、収縮等並びにその均質性に依存する。より高い均質性は、より高いか焼温度により達成される。これは、しかしながらNKNの場合に易揮発性の酸化カリウムの蒸発をまねく。
【0022】
本発明の課題は、技術水準を改良することである。
【0023】
本発明の態様において、前記課題は、水酸化物ベース及び/又は酸化物ベースの均質な多成分系、特に棒状モルホロジー(形態)を有する均質な多成分系の製造方法により解決され、その際に該多成分系は、Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V、Sb、Si、Al及びTaの群からの第一高融点金属と、Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V、Sb、Si、Al及びTaの群からの第二高融点金属とを有し、かつ第一高融点金属と第二高融点金属とは異なり、その際に第一高融点金属及び/又は第二高融点金属が、特にフルオロ錯体及び/又はオキシフルオロ錯体、特にH
2NbF
7、H
2TaF
7、HSbF
6、H
2ZrF
6、H
2SiF
6、H
3AlF
6等として、存在し、その際に第一選択肢において、第一高融点金属が第一フッ化水素酸溶液中に、かつ第二高融点金属が第二フッ化水素酸溶液中に存在し、かつ第一高融点金属を有する第一フッ化水素酸溶液と、第二高融点金属を有する第二フッ化水素酸溶液とが混合されるので、溶解した第一高融点金属及び第二高融点金属を有するフッ化水素酸混合溶液が存在し、又は第二選択肢において、第一高融点金属及び第二高融点金属が選択的なフッ化水素酸混合溶液中に溶解されており、かつ最後に該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液が沈殿剤で沈殿されるので、固体混合物が懸濁液中に存在する。
【0024】
それにより、均質な固体混合物を有する懸濁液を提供することができる。
【0025】
"均質な(homogen)"とは、多成分系が特に、それに対応するX線スペクトルにおいて相分離が認識され得ないか又は僅かな相分離のみが認識されうる場合を呼ぶ。僅かな相分離は、その異種相又は最高純度相の信号が僅かな程度でのみ存在している場合を前提としている。これは、該信号が分析信号のノイズにかき消される(目に見えない)か又は該信号ピークの定量評価の際に数パーセント(<5%)に過ぎない場合に与えられている。
【0026】
"多成分系"は、少なくとも2種の高融点金属を有していてよい。しかしながら、更なる高融点金属及び/又はドーピング元素が、該多成分系により含まれていてよい。
【0027】
"水酸化物ベース及び/又は酸化物ベース"とは、多成分系が、その化合物のアニオン成分が主に、すなわち>85%の割合が、酸化物(O
2-イオン)又は水酸化物(OH
-イオン)として存在する場合を呼ぶことができる。
【0028】
"棒状モルホロジー"(形態)は特に、その長さと幅の比が、3〜10及び特に5以上の値を有する場合に与えられている。
【0029】
"フッ化水素酸溶液(flusssaure Loesungen)"とは、特に、フッ化水素及び/又はそれらのイオンを有する水溶液であると理解される。
【0030】
本発明の実施態様において、該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液に、該高融点金属Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V及びTaの群からの溶解した第三の又は更なる金属を有する第三の又は更なるフッ化水素酸溶液を、該沈殿前に混合することができる。それにより、製造すべきセラミックは、更なる高融点金属を有していてよい。
【0031】
この利点は、同様に、該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液中に、Mo、W、Nb、Re、Zr、Hf、V及びTaの群からの第三の又は更なる高融点金属が、該沈殿前に溶解されることにより達成することができる。
【0032】
製造すべきセラミックに特別な電気的性質を与えるように、Ti、Zr、Sn、Fe、Co、Ni、Ca、Zn、Pd、Cd、Al、Si、P、Ge、As、Se、Sb、Te、Sc、Y、Ybの群からのドーピング元素が、第一フッ化水素酸溶液中及び/又は第二フッ化水素酸溶液中及び/又は該フッ化水素酸混合溶液及び/又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液及び/又は該沈殿剤中及び/又は第一フッ化水素酸ドーピング元素溶液中に溶解されていてよく、その際に、該ドーピング元素が、該ドーピング元素溶液中及び/又は該沈殿剤中に溶解されている場合には、該ドーピング元素溶液及び/又は該沈殿剤が、第一フッ化水素酸溶液、第二フッ化水素酸溶液、該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液に添加されるので、該ドーピング元素は、少なくとも部分的に酸化物又は水酸化物として該沈殿の際に沈殿析出する。
【0033】
"ドーピング元素"は特に、該多成分系に、その特殊な性質を変えるために添加され、かつ10%未満の濃度になり、かつ副成分とも呼ぶことができる、元素の周期表の元素である。
【0034】
"沈殿剤"は、pH値を、環境中で固体が形成されるように変える、全ての物質、液体又は材料であると理解できる。
【0035】
更なる実施態様において、該沈殿剤は、塩基性溶液、塩基性に作用する固体又は塩基性に作用するガスを含有していてよく、かつ該沈殿は、該フッ化水素酸混合溶液又は該選択的なフッ化水素酸混合溶液の6.5〜14のpH値で行うことができる。その際に、該pH値は、最初に該沈殿中におおまかに試験紙を用いて測定することができ、その後でそのpH電極の破壊が予想され得ない場合に、市販のpH値測定用のガラス電極、例えばMettler-Toledoを用いて測定することができる。
【0036】
棒状粒子モルホロジーを有する生成物を得るために、該沈殿は2つの段階で行うことができ、該沈殿剤がまず最初に、単に12〜13.5、好ましくは12〜13、特に好ましくは12〜12.5のpH値まで添加され、次いで、30〜50分間、好ましくは30〜45分間、特に好ましくは30〜40分間、撹拌され、引き続きはじめて、残りの沈殿剤があるpH値(pH 14)まで添加される。
該セラミック粉末の棒状粒子モルホロジーは、これから製造された成形体中で、該粒子の優先配向、ひいては該強誘電性ドメインのより良好な配向を生じさせることができる。これは、その圧電効果を、不規則に形成された粒子を有するセラミック粉末製の成形体に比べて、有意に高めることができる。
【0037】
"塩基性試薬"は特に、水性媒体中でそのpH値を高める化学物質を含む。それらには、溶液(例えばカセイソーダ液、カセイカリ液であるが、しかしこれらに限定されるものではない)、固体(例えば水酸化ナトリウム、酸化カリウム、水酸化リチウムであるが、しかしこれらに限定されるものではない)又はガス(例えばアンモニアであるが、しかしこれに限定されるものではない)が含まれうる。
【0038】
純相の目的セラミックを製造するために、該塩基性溶液は、第一アルカリ金属水酸化物溶液及び/又は第一アルカリ土類金属水酸化物溶液又は複数のアルカリ金属水酸化物溶液の第一混合物及び/又は複数のアルカリ土類金属水酸化物溶液の第一混合物又は1種以上のアルカリ金属水酸化物溶液の第一混合物及び/又は1種以上のアルカリ土類金属水酸化物溶液の第一混合物を含有していてよく、その際に該アルカリ金属水酸化物溶液及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液は、少なくとも1種の溶解した両性元素を有し、その際に第一アルカリ金属水酸化物溶液は、第一アルカリ金属元素を、かつ第一アルカリ土類金属水酸化物溶液は、第一アルカリ土類金属元素を、かつ複数のアルカリ金属水酸化物溶液の第一混合物は、複数のアルカリ金属元素を、かつ複数のアルカリ土類金属水酸化物溶液の第一混合物は、複数のアルカリ土類金属元素を、有するので、第一中間生成物を有する第一懸濁液が得られ、第一中間生成物は、固体分で、第一アルカリ金属元素又は複数のアルカリ金属元素の混合物及び/又は第一アルカリ土類金属元素又はアルカリ土類金属元素の混合物を均一に分布して(均質に)有することができる。
【0039】
更なる実施態様において、第一アルカリ金属水酸化物溶液及び/又は第一アルカリ土類金属水酸化物溶液は、水性水酸化物及び/又は水酸化物錯体、特にKOH、LiOH、NaOH、RbOH、Ca(OH)
2及び/又は亜鉛、アルミニウム、アンチモンの群から選択される元素の水酸化物錯体を有していてよい。それにより、費用がかからずかつ取り扱いやすいアルカリ金属水酸化物溶液及びアルカリ土類金属水酸化物溶液を提供することができる。
【0040】
更なる実施態様において、該懸濁液をろ過することができるので、該固体混合物は懸濁残留物として存在する。
【0041】
該懸濁残留物を望ましくない物質から精製するために、該懸濁残留物を洗浄することができる。
【0042】
更なる実施態様において、該懸濁液又は該懸濁残留物を乾燥させることができるので、乾燥された残留物が存在し、その際に該乾燥は特に≦150℃の温度で行われる。それゆえ、該乾燥のためのエネルギーを減少させ、かつ該乾燥のためのコストを低下させることができる。
【0043】
均質な粒子分布を達成するように、該懸濁液又は該懸濁残留物を混合することができる。
【0044】
更なる実施態様において、該懸濁液、該懸濁残留物、該乾燥された残留物、該混合された懸濁残留物及び/又は該混合された懸濁液に、水性ベース及び/又は有機ベースの塩基性溶液を添加することができるので、第一中間生成物が得られる。
【0045】
均一な沈殿を生じさせるために、該塩基性溶液の添加を、撹拌しながら行うことができる。
【0046】
該ドーピング元素をその目的セラミックへ均質に導入するために、該塩基性溶液は、アルカリ金属水酸化物溶液及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液又は複数のアルカリ金属水酸化物溶液の混合物及び/又は複数のアルカリ土類金属水酸化物溶液の混合物を有していてよく、その際に該アルカリ金属水酸化物溶液は、アルカリ金属元素を、かつ該アルカリ土類金属水酸化物溶液は、アルカリ土類金属元素を、かつ複数のアルカリ金属水酸化物溶液の該混合物は、複数のアルカリ金属元素を、かつ複数のアルカリ土類金属水酸化物混合物の該混合物は、複数のアルカリ土類金属元素を、有するので、第二中間生成物が得られ、第二中間生成物は、アルカリ金属元素又は複数のアルカリ金属元素の混合物及び/又はアルカリ土類金属元素又はアルカリ土類金属元素の混合物を均一に分布して有する。
【0047】
更なる実施態様において、該塩基性溶液の添加を、0℃〜40℃の温度で、好ましくは室温で及び800mbar〜1200mbarの圧力、好ましくは常圧で、行うことができる。こうして、該方法は常用の製造条件で、特にオートクレーブなしで、製造することができる。
【0048】
該目的材料又は該最終生成物を得るために、第一中間生成物又は第二中間生成物を、100℃〜1000℃、特に400℃〜700℃の温度で熱処理することができるので、セラミック材料及び副生物が生じる。
【0049】
更なる実施態様において、該副生物を、水を用いて洗い流すことができる。それゆえ、該副生物を、費用をかけずに除去する方法を提供することができる。
【0050】
良好に加工されうるセラミック粉末を製造するために、該セラミック材料を乾燥させる及び/又は粉砕することができるので、セラミック成形用の微細な粒子分布を有するセラミック粉末が存在する。
【0051】
更なる実施態様において、粒子凝集を制御するための助剤を、該粉砕の際に及び/又は該乾燥の際に添加することができる。助剤として、多様な結合剤を使用することができる。
【0052】
"粒子凝集(Partikelagglomeration)"は特に、(個々の)粒子が互いに付着し、こうして複数の個々の粒子からなる凝集された粒子が形成される場合に存在する。
【0053】
生じた材料を更に加工するために、生じた処理生成物を乾燥させる、スラリー化する、ろ別する及び/又は粉砕することができる。
【0054】
本発明の更なる態様において、前記課題は、セラミック材料、特に粉末又はペーストの形態のものにより解決され、その際に該セラミック材料は、前記の方法のうちの1つにより得られる。
【0055】
それゆえ、例えば未焼結体に更に加工することができる材料を提供することができる。
【0056】
本発明の更なる態様において、前記課題は、前記のセラミック材料から製造される成形体により解決することができ、その際に該成形体は特に、一軸加圧成形又はコールドアイソスタチックプレス、場合により引き続き積層及び/又は未焼結接触層のスクリーン印刷を伴うテープ成形、PIM(粉末射出成形)、湿式粉末噴霧法(Nasspulverspritzen)、鋳込成形又は焼結を用いて得られる。
【0057】
それゆえ、該技術分野に使用される成形体を提供することができる。
【0058】
該成形体の更なる形態において、該成形体への金属接点を特に該焼結の際に取り付けることができる。それゆえ、金属接点を有する電子部品を提供することができる。
【0059】
コストを節約するために、該金属接点は、≦25%、好ましくは≦15%、特に好ましくは≦7.5%のPd含量を有するAg−Pd合金を有していてよい。≦25%のPd含量を有するAg−Pd合金は、≦1200℃、好ましくは≦1175℃の温度で使用することができる。Pd≦15%を有するAg−Pd合金は≦1100℃の温度で、Pd≦7.5%を有するAg−Pd合金は≦1000℃、好ましくは≦950℃の温度で使用することができる。
【0060】
更なる実施態様において、該金属接点は、Pdを含まないAg合金を有していてよい。それゆえ、Ag−Pd合金の代替品を提供することができる。
【0061】
本発明の更なる態様において、前記課題は、複合体、特に、測距儀、超音波トランスデューサ、インクジェットノズル、コモンレール−ディーゼルインジェクタにおいて使用されるような、圧電素子により解決することができ、その際に該複合体は、前記の成形体を有する。
【0062】
更に、本発明の実施例並びに技術水準は、図に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】技術水準の鉛含有セラミック化合物の製造方法を示す図、
【
図2】技術水準の鉛フリーセラミック化合物の製造方法を示す図、
【
図3】鉛フリーセラミック化合物の本発明による第一製造方法を示す図、
【
図4】鉛フリーセラミック化合物の本発明による選択的な製造方法を示す図、
【
図5】2つの顕微鏡写真、その際にa)は例4からの材料であり、かつb)は例5からの材料である、
【
図6】例1により得られたセラミック材料についてのX線スペクトル、
【
図7】例2により得られたセラミック材料についてのX線スペクトル、
【
図8】例3により得られたセラミック材料についてのX線スペクトル、
【
図9】例により得られたセラミック材料についてのX線スペクトル及び
【
図10】例5により得られたセラミック材料についてのX線スペクトル。
【0064】
鉛含有化合物を製造するための原則的な流れは、
図1に示されている。出発物質として、第一工程101において、例えばPbO、ZrO
2、TiO
2、MgCO
3及び/又はNb
2O
5が存在する。これらの出発物質は、第二工程103において、ボールミル中で粉砕及び混合される。該出発物質の割合は、所望の目的材料に応じて決定される。
【0065】
更なる工程105において、混合された出発物質は、例えば1000℃のような高温でか焼される。か焼された材料は、引き続き、107、再度ボールミル中で粉砕及び混合されるので、最終的に最後に、109、所望のセラミック粉末が存在する。
【0066】
図2には、鉛フリーセラミック化合物の原則的な製造のための技術水準が示されている。鉛フリー化合物の製造のためには、最初に、201、出発物質、例えばNb
2O
5、Ta
2O
5、Na
2CO
3、K
2CO
3、Li
2CO
3及び/又はSb
2O
5が存在する。これらの出発物質は、例えば2個ずつ混合される。例として、ここでは次の混合物を示すことができる:Na
2CO
3及びNb
2O
5、203、Ta
2O
5及びLi
2CO
3、205又はK
2CO
3及びSb
2O
5、207。
【0067】
これらの混合物203、205、207は、次の工程103において混合及び粉砕される。引き続き、105、か焼が、次に107、更なる混合及び粉砕が、行われるので、例えば第一混合物203については、混合物NaNbO
3、213が、第二混合物205については、混合物LiTaO
3、215が、かつ最後の例混合物207として、混合物KSbO
3、217が存在する。
【0068】
新たに製造された混合物213、215、217は、更なる工程230においてボールミル中で粉砕及び混合される。次の工程250において、か焼が行われ、それに続き該ボールミル中での粉砕と、混合との更なる工程270が行われる。この方法によれば、最後に、290、鉛フリーセラミック粉末が存在する。
【0069】
図3には、本発明による製造方法の原則的な調製が示されている。最初に、301、302、HF中に溶解されたフルオロ錯体301及び水性水酸化物及び/又はヒドロキソ錯体302が存在する。
【0070】
HF中に溶解されたフルオロ錯体301は、例えばH
2NbF
7、H
2TaF
7、HSbF
6、H
2ZrF
6、H
2SiF
6及び/又はH
3AlF
6である。HF中に溶解されたこれらのフルオロ錯体301は、第一工程303において混合される。塩基性溶液、例えばNH
3、KOH、LiOH、NaOH、RbOH、Ca(OH)
2及び/又はH
2Zn(OH)
4の添加309により、更なる工程305において混合された溶液が沈殿及び洗浄され、それにより引き続き水酸化物懸濁液307が存在する。
【0071】
最初に存在している水性水酸化物及び/又は水酸化物錯体302は、更なる処理工程304において混合される。水性水酸化物もしくは水酸化物錯体は、特にKOH、LiOH、NaOH、RbOH、Ca(OH)
2及び/又は亜鉛、アルミニウム、アンチモン又はスズの群から選択される元素の水酸化物錯体である。亜鉛錯体は、例えば化学組成H
2Zn(OH)
4の化合物として、存在していてよい。
【0072】
混合された水性水酸化物及び/又は水酸化物錯体304は、更なる工程310において、該水酸化物懸濁液307と、撹拌機中で混合される。引き続き、この混合物310は、ろ過され、320、乾燥及びか焼され、330、引き続きもう一度粉砕及び洗浄され、340、それにより、最後にセラミック粉末350が存在する。
【0073】
図4には、本発明による選択的な製造方法が示されている。フッ化水素中に溶解したフルオロ錯体、例えばH
2NbF
7、H
2TaF
7、HSbF
6、H
2ZrF
6、H
2SiF
6及び/又はH
3AlF
6が、最初に、401、存在する。少なくとも2種の溶解したフルオロ錯体は、更なる工程403において混合される。
【0074】
それと並行して、最初に、402、KOH、LiOH、NaOH、RbOH、Ca(OH)
2のような水性水酸化物及び/又は水酸化物錯体及び/又は亜鉛、アルミニウム、アンチモン又はスズの群から選択される元素の水酸化物錯体が存在する。これらは、更なる工程404において溶解され、かつ少なくとも2種の水酸化物及び/又はヒドロキソ錯体が混合される。
【0075】
混合工程403の後の混合されたフルオロ錯体は、該水性水酸化物又はヒドロキソ錯体の混合物を用いて、工程404の後で、その後の工程410において沈殿される。次に、420、沈殿された生成物が、洗浄及びろ過される。ろ過された生成物は、更なる工程430において乾燥及びか焼され、そのうえで引き続き、440、か焼された生成物が、粉砕及び洗浄される。最後に、450、所望のセラミック粉末が存在する。
【0076】
更に、例示的に、圧電部品用の個々の鉛フリーセラミックの製造方法が示される。
【実施例】
【0077】
例1
第一例において、(K
0.52Na
0.44Li
0.04)(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)O
3を製造する。そのためには、1リットル当たり126.6gのNb
2O
5入りのフッ化水素酸(40%)中H
2NbF
7溶液3.160lと、1リットル当たり149.84gのTa
2O
5入りのフッ化水素酸(40%)中H
2TaF
7溶液0.516lとを2lテフロンビーカー中で混合し、20.4gのSb
2O
5を添加し、2日間撹拌する。
【0078】
その固体のろ過後に、その混合水酸化物を、アンモニア溶液(25%)を用いて、pH=9まで沈殿させる。その際に、pH=6までリトマス紙を、引き続きガラス電極を、そのpH値の測定に使用した。その懸濁液をろ過し、その残留物をアンモニア水(3%)5lで、その後水2lで、洗浄する。
【0079】
その酸化物の組成を調べるために、得られた生成物を分析した。そのためには、一部を磁製皿中で105℃で18時間乾燥させ、1000℃でか焼した。該分析は、該懸濁液中で化合物(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5に相当する。
【0080】
そのセラミック材料の製造のために、30分の期間にわたってゆっくりと添加しながら、49.35gのKOH、41.4gのNaOH、3.26gのLiOH・H
2Oを脱イオンH
2O(VE)100ml中に溶解させ、別個に539.19gの(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5をはかり入れる。粘稠な(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5懸濁液を、ミキサー(Mulinette)を用いて5分間分散させる。室温への冷却後に、前記のアルカリ溶液を少しずつ(10個の個々の配量で1時間かけて)添加し、1時間撹拌する。該懸濁液をろ過し、該残留物を60℃で17時間乾燥させ、次いでスラリー化し、次いでろ別し、60℃で乾燥させ、引き続き粉砕し、600℃で2時間か焼し、引き続きスラリー化し、かつろ別し、もう一度乾燥させ、120℃で粉砕する。それから生じたセラミック材料の分析は、分析の確かさの範囲内で(K
0.55Na
0.43Li
0.02)(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.03)O
3で、所望の化合物に相当する。
【0081】
このセラミック材料を、例えば焼結タブレットに、更に加工することができる。そのためには、該セラミック粉末を、ASTM B 822に従いMastersizer(Malvern、レーザー回折)で測定される<5μm未満の平均粒度まで粉砕し、アイソスタチックプレスを用いて、直径1cm及び高さ約2mmのタブレットにプレスする。該タブレットを980℃で2時間焼結させる。理論密度の約97%の焼結密度を有するプレス体(Presslinge)が得られる。
【0082】
例1により得られたセラミック材料のX線スペクトルは、
図6に見出される。
【0083】
例2
第二例において、(K
0.52Na
0.44Zn
0.04)(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)O
3を製造する。そのためには、1リットル当たり126.6gのNb
2O
5入りのフッ化水素酸(40%)中H
2NbF
7溶液3.160lと、1リットル当たり149.84gのTa
2O
5入りのフッ化水素酸(40%)中H
2TaF
7溶液0.516lとを2lテフロンビーカー中で混合し、20.4gのSb
2O
5を添加し、2日間撹拌する。その固体のろ過後に、その混合水酸化物を、アンモニア溶液(25%)を用いてpH=9まで沈殿させる。その際に、pH=6までリトマス紙を、引き続きガラス電極を、そのpH値の測定に使用した。その懸濁液をろ過し、その残留物をアンモニア水5lで、その後水2lで、洗浄する。
【0084】
該酸化物の組成を調べるために、得られた生成物を分析した。そのためには、一部を磁製皿中で105℃で18時間乾燥させ、1000℃でか焼した。該分析は、該懸濁液中で化合物(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5に相当する。
【0085】
そのセラミック材料の製造のために、慎重に、30分の期間にわたってゆっくりと添加しながら、49.35gのKOH、41.4gのNaOH、5.46gのZnCl
2を脱イオンH
2O(VE)100ml中に溶解させ、別個に208.92gの(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5粉末をはかり入れ、H
2O 100ml中でスラリー化する。粘稠な(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5懸濁液を、振盪器(Mulinette)を用いて30分間分散させる。室温への冷却後に、前記のアルカリ溶液を少しずつ(10個の個々の配量で1時間かけて)添加し、5時間撹拌する。該懸濁液をろ過し、該残留物を60℃で17時間乾燥させ、次いでスラリー化し、次いでろ別し、60℃で17時間乾燥させ、引き続き粉砕し、600℃で2時間か焼し、次いでスラリー化し、引き続きろ別し、120℃で乾燥させ、かつ粉砕する。それから生じたセラミック材料の分析は、測定の確かさの範囲内で(K
0.47Na
0.43Zn
0.02)(Nb
0.85Ta
0.09Sb
0.04)O
3で、所望の化合物に相当する。
【0086】
例2により得られたセラミック材料のX線スペクトルは、
図7に見出される。
【0087】
例3
第三例において、(K
0.52Na
0.44Cu
0.04)(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)O
3を製造する。そのためには、1リットル当たり126.6gのNb
2O
5入りのフッ化水素酸(40%)中H
2NbF
7溶液3.160lと、1リットル当たり149.84gのTa
2O
5入りのフッ化水素酸(40%)中H
2TaF
7溶液0.516lとを2lテフロンビーカー中で混合し、20.4gのSb
2O
5を添加し、2日間撹拌する。
【0088】
その固体のろ過後に、その混合水酸化物を、アンモニア溶液(25%)を用いてpH=9まで沈殿させる。その際に、pH=6までリトマス紙を、引き続きガラス電極を、そのpH値の測定に使用した。その懸濁液をろ過し、その残留物をアンモニア水5lで、その後水2lで、洗浄する。
【0089】
該酸化物の組成を調べるために、得られた生成物を分析した。そのためには、一部を磁製皿中で105℃で18時間乾燥させ、1000℃でか焼した。該酸化物の元素分析は、該懸濁液中で化合物(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5に相当する。
【0090】
そのセラミック材料の製造のために、慎重に、30分の期間にわたってゆっくりと添加しながら、49.35gのKOH、41.4gのNaOH、4.42gのCu
2CO
3(OH)
2を脱イオンH
2O(VE)100ml中に溶解させ、別個に208.92gの(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5をはかり入れる。粘稠な(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)(OH)
5懸濁液を30分間分散させる。室温への冷却後に、前記のアルカリ溶液を少しずつ(10個の個々の配量で1時間かけて)添加し、5時間撹拌する。該懸濁液をろ過し、該残留物を60℃で17時間乾燥させ、次いではじめて連続して幾分濃いHNO
3 500mlで、次いで水1l及びアンモニア水500mlで、スラリー化し、次いでろ別し、60℃で17時間乾燥させ、引き続き粉砕し、600℃で2時間か焼し、引き続きスラリー化し、ろ別し、もう一度乾燥させ、120℃で粉砕する。それから生じたセラミック材料の分析は、分析精度の範囲内で(K
0.51Na
0.40Cu
0.01)(Nb
0.85Ta
0.09Sb
0.04)O
3で、所望の化合物に相当する。
【0091】
例1〜3の場合に、それらのか焼温度を明らかに低下させることができ、かつ易揮発性の酸化カリウムの蒸発を制限するか又は減少させることがわかった。か焼温度として、特に、400℃〜900℃の温度及び好ましくは500℃〜700℃の温度が使用可能である。
【0092】
例3により得られたセラミック材料のX線スペクトルは、
図8に見出される。
【0093】
例4
第四例において、規則的な粒子を有する(K
0.52Na
0.44Li
0.04)(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)O
3を製造する。そのためには、448.8gのKOH、414.0gのNaOH、16.3gのLiOH・H
2Oを脱イオンH
2O(VE)1600ml中に溶解させる。次いで、フッ化水素酸中H
2TaF
7溶液(c=142g/l)311.2mlと、フッ化水素酸中H
2NbF
7(c=113g/l)2033.9mlとをテフロンビーカー中で混合し、21.02gのKSb(OH)
6を添加する。室温への該フッ化水素酸溶液の冷却後に、該アルカリ溶液を一滴ずつ120分かけて添加する。
【0094】
終了時に、濁った混合物は12.3のpH値を有し、その際にこれを更になお3時間撹拌する。該懸濁液をろ過し、該残留物をNH
3 3%(アンモニア水)10lで及び脱イオン水10lで洗浄する。引き続き、該懸濁液を60℃で17時間乾燥させ、引き続き粉砕する。該固体を600℃で2時間か焼し、引き続きNH
3 3%(アンモニア水)10リットルで及び脱イオン水10リットルで洗浄し、160℃で17時間乾燥させ、粉砕する。
【0095】
それから生じたセラミック材料の分析は、(K
0.46Na
0.42Li
0.05)(Nb
0.82Ta
0.11Sb
0.04)O
3に相当する。該化合物は、
図5a)から読み取れるように、顕微鏡下で(光学顕微鏡、10×)、ごく小部分が棒状の針を、かつ大部分が極めて微細な粒子を、示している。
【0096】
例4により得られたセラミック材料のX線スペクトルは、
図9に見出される。
【0097】
例5
第五例において、棒状粒子を有する(K
0.16Na
0.80Li
0.04)(Nb
0.86Ta
0.10Sb
0.04)O
3を製造する。そのためには、慎重に、224.4gのKOH、207.0gのNaOH、8.15gのLiOH・H
2Oを脱イオンH
2O(VE)800ml中に溶解させる。次いで、フッ化水素酸中H
2TaF
7溶液(c=150g/l)147.3mlと、フッ化水素酸中H
2NbF
7(c=116g/l)960.5mlとをテフロンビーカー中で混合し、10.51gのKSb(OH)
6を添加する。室温への該フッ化水素酸溶液の冷却後に、該アルカリ溶液を一滴ずつ105分かけて12.5のpH値まで添加する。この瞬間に棒状相の形成が、
図5b)からの顕微鏡写真から読み取ることができるように、始まる。
【0098】
該懸濁液を30分間撹拌した後に、残りのアルカリ液を滴加する。終了時に、濁った混合物は、14のpH値を有し、その際にこれを更になお4時間撹拌する。該懸濁液をろ過し、該残留物をNH
3 3%(アンモニア水)5lで及び脱イオン水5リットルで洗浄する。引き続き、該懸濁液を60℃で17時間乾燥させ、引き続き粉砕する。該固体を600℃で2時間か焼し、引き続きNH
3 3%(アンモニア水)5リットルで及び脱イオン水5リットルで洗浄し、160℃で17時間乾燥させ、粉砕する。
【0099】
それから生じたセラミック材料の分析は、(K
0.16Na
0.79Li
0.01)(Nb
0.88Ta
0.10Sb
0.03)O
3に相当する。該化合物は、SEM写真の
図5b)から読み取ることができるように、顕微鏡下で(光学顕微鏡、10×)、棒状の針を示している。
【0100】
例5により得られたセラミック材料のX線スペクトルは、
図10に見出される。
【0101】
例1〜5からのセラミック材料は、
図6〜10のX線スペクトルから読み取ることができるように、均質に構成されている。
【符号の説明】
【0102】
101 出発物質、 103 粉砕及び混合、 105 か焼、 107 粉砕及び混合、 109 セラミック粉末、 201 出発物質、 203 第一混合物、 205 第二混合物、 207 混合物、 213 混合物、 215 混合物、 217 混合物、 230 粉砕及び混合、 250 か焼、 270 粉砕及び混合、 290 鉛フリーセラミック粉末、 301 HF中に溶解したフルオロ錯体、 302 水性水酸化物及び/又は水酸化物錯体、 303 混合、 304 混合、 305 沈殿及び洗浄、 307 水酸化物懸濁液、 309 添加、 310 混合、 320 ろ過、 330 乾燥及びか焼、 340 粉砕及び洗浄、 350 セラミック粉末、 401 フッ化水素中に溶解したフルオロ錯体、 402 水性水酸化物及び/又は水酸化物錯体、 403 混合、 404 溶解及び混合、 410 沈殿、 420 洗浄及びろ過、 430 乾燥及びか焼、 440 粉砕及び洗浄、 450 セラミック粉末