(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968922
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】タッチ・センサにおけるノイズ低減
(51)【国際特許分類】
G06F 3/044 20060101AFI20160728BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
G06F3/044 120
G06F3/041 512
G06F3/041 522
【請求項の数】77
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-556610(P2013-556610)
(86)(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公表番号】特表2014-507041(P2014-507041A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】US2011061178
(87)【国際公開番号】WO2012118540
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2014年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/448,502
(32)【優先日】2011年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513012130
【氏名又は名称】パーセプティブ ピクセル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153028
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 忠
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ウエストヒューズ,ジョナサン
【審査官】
塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/016382(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0309628(US,A1)
【文献】
特開平09−128146(JP,A)
【文献】
特開2004−264845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/03
3/041−3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性タッチ・センサにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給する方法であって、
前記容量性タッチ・センサが、第1導体アレイと第2導体アレイとを含み、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が、前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成し、前記方法が、
前記容量性タッチ・センサの入力における周期的ノイズの位相を判定するステップと、
前記周期的ノイズの判定された位相にロックされた位相を有する周期的励起信号を生成するステップと、
前記周期的励起信号を前記第1導体アレイにおいて励起導体に印加するステップと、
前記周期的励起信号が印加されている間、前記第2導体アレイにおける応答導体において応答信号を検出し、前記検出した応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間にける測定容量を示す値を生成するステップと、
閾値にアクセスするステップと、
前記値と前記閾値との間の差に基づいて、前記応答信号が接触に応答するか否か判断するステップと、
前記応答信号が接触に対応するか否かの判断結果を反映する信号を生成するステップと、
を備えている、方法において、
前記閾値が、前記容量性タッチ・センサの較正中に決定され、前記周期的ノイズの前記応答信号に対する影響を反映する一定のオフセットを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、更に、前記閾値を決定するために、前記容量性タッチ・センサを較正するステップを備えている、方法。
【請求項3】
容量性タッチ・センサにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給する方法であって、
前記容量性タッチ・センサが、第1導体アレイと第2導体アレイとを含み、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が、前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成し、前記方法が、
前記容量性タッチ・センサの入力における周期的ノイズの位相を判定するステップと、
前記周期的ノイズの判定された位相にロックされた位相を有する周期的励起信号を生成するステップと、
前記周期的励起信号を前記第1導体アレイにおいて励起導体に印加するステップと、
前記周期的励起信号が印加されている間、前記第2導体アレイにおける応答導体において応答信号を検出し、前記検出した応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間にける測定容量を示す値を生成するステップと、
閾値にアクセスするステップと、
前記値と前記閾値との間の差に基づいて、前記応答信号が接触に応答するか否か判断するステップと、
前記応答信号が接触に対応するか否かの判断結果を反映する信号を生成するステップと、
を備えている、方法において、
前記第2導体アレイにおける応答導体上において応答信号を検出するステップが、センサ・フレームを跨いで状態を維持しない検出器を用いて前記応答信号を検出するステップを含み、
前記周期的励起信号が印加されている間、前記第2導体アレイにおける応答導体において応答信号を検出し、前記検出した応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値を生成するステップが、
前記検出器が、前記応答信号に基づいて検出信号を生成するステップと、
前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値に到達するために、前記検出信号をサンプリングするステップを含み、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値に到達するために、前記検出信号をサンプリングするステップが、センサ・フレームの測定期間中に前記検出信号をサンプリングするステップを含み、前記検出信号のサンプルが、多数のセンサ・フレームの各測定期間中における同じ時点において取り込まれ、前記検出信号のサンプルが各センサ・フレームの間前記周期的励起信号の同じ位相において取り込まれるように、前記多数のセンサ・フレームの各々の前記測定期間が、前記周期的励起信号と同相である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、更に、周波数選択フィルタを用いて前記応答信号からノイズを除去し、次いで前記検出信号を生成するために、前記濾波した応答信号を前記検出器に供給するステップを備えている、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記周波数選択フィルタを用いてノイズを除去するステップが、前記周波数選択フィルタを用いて、前記周期的励起信号の周波数よりも低い周波数を有するノイズを除去するステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記周波数選択フィルタを用いてノイズを除去するステップが、前記周波数選択フィルタを用いて、前記周期的励起信号の周波数よりも高い周波数を有するノイズを除去するステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法において、
前記検出器が、前記応答信号のピークを検出するピーク検出回路を含み、
前記検出信号を生成するステップが、前記ピーク検出回路が前記応答信号のピークを反映する信号を生成するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法において、
前記検出器が、前記応答信号と予期される応答信号との間の相関を計算する相関検出回路を含み、
前記検出信号を生成するステップが、前記相関検出回路が前記応答信号と前記予期される応答信号との間の相関を反映する信号を生成するステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか一項に記載の方法において、
前記周期的励起信号が電圧であり、前記応答信号が電流であり、
前記検出器が、更に、前記応答信号を電流、電圧、ディジタル・コード、または他の量に変換する増幅器を含み、
前記応答信号に基づいて前記検出信号を生成するステップが、
前記増幅器によって、前記応答信号を電流、電圧、ディジタル・コード、または他の量に変換するステップと、
前記検出器が前記電流、前記電圧、前記ディジタル・コードまたは前記他の量を時間の経過と共に検出することによって、前記検出信号を生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記増幅器が、前記応答信号を電圧に変換するように構成されたトランスインピーダンス増幅器であり、前記電圧を前記検出器によって時間の経過と共に検出する、方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法において、前記応答信号が接触に対応するか否か判断するステップが、前記応答信号が、入力メカニズムの前記マトリクスに対する物理的近接に対応し、前記入力メカニズムが、前記マトリクスに対するこのような近接のために、前記励起導体と前記応答導体との間に容量変化を生じさせるか否か判断するステップを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記応答信号が接触に対応するか否か判断するステップが、前記応答信号が、前記励起導体と前記応答導体との間に容量変化が生ずるように、前記マトリクスと直接物理的に接触する入力メカニズムに対応するか否か判断するステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法において、前記周期的ノイズの判定された位相にロックされた位相を有する周期的励起信号を生成するステップが、前記生成した周期的励起信号と前記周期的ノイズとの間における位相差が一定時間に保たれるように、周期的励起信号を生成するステップを含む、方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法において、
前記容量性タッチ・センサが、ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられており、前記ディスプレイ・デバイスから結合されたノイズが、前記ディスプレイ・デバイスのライン・スキャン周波数またはフレーム周波数にわたって周期的であり、
前記周期的ノイズの位相を判定するステップが、
前記ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信するステップと、
前記同期信号に基づいて前記周期的ノイズの位相を判定するステップと、
を含み、
前記周期的励起信号を生成するステップが、前記同期信号を用いて、前記生成した周期的励起信号の位相を、前記周期的ノイズの位相にロックするステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記同期信号が、前記ディスプレイ・デバイスのライン同期信号またはフレーム同期信号である、方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、前記ディスプレイ・デバイスが、液晶ディスプレイ・デバイス、OLEDディスプレイ・デバイス、またはプラズマ・ディスプレイ・デバイスを含む、方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法であって、更に、
前記センサの較正ルーチンの間に前記閾値を決定するステップと、
前記閾値をデータ・ストアに格納するステップと、
を備えており、
前記閾値にアクセスするステップが、前記データ・ストアから前記閾値にアクセスするステップを含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、方法。
【請求項20】
ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられた容量性タッチ・センサを有する容量性タッチ・スクリーン・ディスプレイにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給する方法であって、前記容量性タッチ・センサが、第1導体アレイと第2導体アレイとを含み、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が、前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成し、前記方法が、
前記ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信するステップと、
前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに等しいセンサ・フレーム・レートを有するように前記容量性タッチ・センサを設定するステップと、
前記同期信号に基づいて、前記ディスプレイ・デバイスによって生成される周期的ノイズの位相を判定するステップと、
前記容量性タッチ・センサの第1センサ・フレーム中に、前記周期的ノイズの前記判定した位相にロックされた位相を有する第1周期的励起信号を生成し、前記第1周期的励起信号を、前記第1導体アレイにおける励起導体に印加するステップと、
前記第1センサ・フレーム中に前記第1励起信号を印加している間、前記第2導体アレイにおける応答導体上において第1応答信号を検出するステップであって、前記応答導体が前記励起導体に容量的に結合されており、前記検出した第1応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第1の値を生成するステップと、
第1閾値にアクセスするステップと、
前記第1の値と前記第1閾値との間の差に基づいて、前記第1応答信号が接触に対応するか否か判断するステップと、
前記第1応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成するステップと、
を備えている、方法において、
前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに等しいセンサ・フレーム・レートを有するように前記容量性タッチ・センサを設定するステップが、前記センサ・フレーム・レートの前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに対する比率がx:yに等しく、xおよびyが整数であり、xが1よりも大きくなるように、前記容量性タッチ・センサを設定し、
更に、
前記第1センサ・フレームの後に現れる前記容量性タッチ・センサの第2センサ・フレーム中に、前記周期的ノイズの前記判定した位相にロックされた位相を有する第2周期的励起信号を生成し、前記第2周期的励起信号を前記励起導体に印加するステップと、
前記第2センサ・フレーム中に前記第2励起信号を印加している間、応答導体上において第2応答信号を検出し、前記検出した第2応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第2の値を生成するステップと、
第2閾値にアクセスするステップであって、前記第2閾値が前記第1閾値とは異なる、ステップと、
前記第2の値と前記第2閾値との間の差に基づいて、前記第2応答信号が接触に対応するか否か判断するステップと、
前記第2応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成するステップと、
を備えている、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、更に、
前記センサの較正ルーチンの間に前記第1閾値および前記第2閾値を決定するステップと、
前記第1閾値および前記第2閾値をデータ・ストアに格納するステップと、
を備えており、
前記第1閾値にアクセスするステップが、前記データ・ストアから前記第1閾値にアクセスするステップを含み、
前記第2閾値にアクセスするステップが、前記データ・ストアから前記第2閾値にアクセスするステップを含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記第1閾値および前記第2閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、前記第1閾値および前記第2閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、方法。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法において、前記検出した第2応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第2の値を生成するステップが、
前記第2応答信号に基づいて第2検出信号を生成するステップと、
前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す前記第2の値に到達するために、前記第2検出信号をサンプリングするステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
請求項20〜24のいずれか一項に記載の方法において、前記同期信号が、前記ディスプレイ・デバイスのライン同期信号またはフレーム同期信号である、方法。
【請求項26】
請求項20〜25のいずれか一項に記載の方法において、前記ディスプレイ・デバイスが、液晶ディスプレイ・デバイス、OLEDディスプレイ・デバイス、またはプラズマ・ディスプレイ・デバイスを含む、方法。
【請求項27】
請求項20〜26のいずれか一項に記載の方法において、前記検出した第1応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第1の値を生成するステップが、
前記第1応答信号に基づいて第1検出信号を生成するステップと、
前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第1の値に到達するために、前記第1検出信号をサンプリングするステップと、
を含む、方法。
【請求項28】
請求項20〜27のいずれか一項に記載の方法であって、更に、
前記センサの較正ルーチンの間に前記第1閾値を決定するステップと、
前記第1閾値をデータ・ストアに格納するステップと、
を備えており、
前記第1閾値にアクセスするステップが、前記データ・ストアから前記第1閾値にアクセスするステップを含む、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記第1閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、前記第1閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、方法。
【請求項31】
ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられた容量性タッチ・センサを有する容量性タッチ・スクリーン・ディスプレイにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給する方法であって、前記容量性タッチ・センサが、第1導体アレイと第2導体アレイとを含み、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が、前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成し、前記方法が、
前記ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信するステップと、
センサ・フレーム・レートの前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに対する比率がx:yに等しく、xおよびyが整数であり、xが1よりも大きくなるように前記容量性タッチ・センサを設定するステップと、
前記同期信号に基づいて、前記ディスプレイ・デバイスによって生成される周期的ノイズの位相を判定するステップと、
x個の閾値をデータ・ストアに格納するステップであって、前記x個の閾値の各々が、x個の連続センサ・フレームのそれぞれの1つの間に接触を判定するために使用可能である、ステップと、
前記x個の連続センサ・フレームの各n番目のセンサ・フレームの間に(nは1からxまでの整数)、
前記周期的ノイズの前記判定した位相にロックされた位相を有する第n周期的励起信号を生成し、前記第n周期的励起信号を、前記第1導体アレイにおける励起導体に印加するステップと、
前記第nセンサ・フレーム中に前記第n励起信号を印加している間、前記第2導体アレイにおける応答導体上において第n応答信号を検出するステップであって、前記応答導体が前記励起導体に容量的に結合されており、前記検出した第n応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第nの値を生成するステップと、
前記データ・ストアから第n閾値にアクセスするステップと、
前記第nの値と前記第n閾値との間の差に基づいて、前記第n応答信号が接触に対応するか否か判断するステップと、
前記第n応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成するステップと、
を備えている、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、前記x個の閾値の内少なくとも2つが、互いに異なる、方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法において、前記x個の閾値の各々が、互いに異なる、方法。
【請求項34】
請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法において、前記検出した第n応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第nの値を生成するステップが、
前記第n応答信号に基づいて第n検出信号を生成するステップと、
前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第nの値に到達するために、前記第n検出信号をサンプリングするステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法であって、更に、前記センサの較正ルーチンの間に、前記x個の閾値を決定するステップを備えている、方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記x個の閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記x個閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、方法。
【請求項38】
請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラム。
【請求項39】
請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラムを記録した記録媒体。
【請求項40】
容量性タッチ・センサにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給するシステムであって、
第1導体アレイと第2導体アレイとを含む容量性タッチ・センサであって、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成する、容量性タッチ・センサと、
回路であって、
前記容量性タッチ・センサの入力における周期的ノイズの位相を判定し、
前記周期的ノイズの判定された位相にロックされた位相を有する周期的励起信号を生成し、
前記周期的励起信号を前記第1導体アレイにおいて励起導体に印加し、
前記周期的励起信号が印加されている間、前記第2導体アレイにおける応答導体において応答信号を検出し、前記検出した応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値を生成し、
閾値にアクセスし、
前記値と前記閾値との間の差に基づいて、前記応答信号が接触に応答するか否か判断し、
前記応答信号が接触に対応するか否かの判断結果を反映する信号を生成するように構成されている、回路と、
を備えている、システムにおいて、
前記閾値が、前記容量性タッチ・センサの較正中に決定され、前記周期的ノイズの前記応答信号に対する影響を反映する一定のオフセットを含む、システム。
【請求項41】
請求項40に記載のシステムにおいて、前記回路が、前記閾値を決定するために、前記容量性タッチ・センサを較正するように構成されているプロセッサを含む、システム。
【請求項42】
容量性タッチ・センサにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給するシステムであって、
第1導体アレイと第2導体アレイとを含む容量性タッチ・センサであって、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成する、容量性タッチ・センサと、
回路であって、
前記容量性タッチ・センサの入力における周期的ノイズの位相を判定し、
前記周期的ノイズの判定された位相にロックされた位相を有する周期的励起信号を生成し、
前記周期的励起信号を前記第1導体アレイにおいて励起導体に印加し、
前記周期的励起信号が印加されている間、前記第2導体アレイにおける応答導体において応答信号を検出し、前記検出した応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値を生成し、
閾値にアクセスし、
前記値と前記閾値との間の差に基づいて、前記応答信号が接触に応答するか否か判断し、
前記応答信号が接触に対応するか否かの判断結果を反映する信号を生成するように構成されている、回路と、
を備えている、システムにおいて、
前記回路が、センサ・フレームを跨いで状態を維持せず、前記応答信号を検出するように構成されている検出器を含み、前記検出器は、前記応答信号に基づいて、検出信号を生成するように構成され、
前記回路が、更に、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値に到達するために、前記検出信号をサンプリングするように構成されているサンプラ回路を含み、前記サンプラ回路が、センサ・フレームの測定期間中に前記検出信号をサンプリングするように構成され、
前記回路が、前記検出した応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値を生成するように構成され、
前記検出信号のサンプルが、多数のセンサ・フレームの各測定期間中における同じ時点において取り込まれ、
前記検出信号のサンプルが各センサ・フレームの間前記周期的励起信号の同じ位相において取り込まれるように、前記多数のセンサ・フレームの各々の前記測定期間が、前記周期的励起信号と同相である、システム。
【請求項43】
請求項42に記載のシステムであって、更に、周波数選択フィルタを用いて前記応答信号からノイズを除去し、次いで前記検出信号を生成するために、前記濾波した応答信号を前記検出器に供給するように構成されている周波数選択フィルタを備えている、システム。
【請求項44】
請求項43に記載のシステムにおいて、前記周波数選択フィルタが、前記周期的励起信号の周波数よりも低い周波数を有するノイズを除去するように構成されている、システム。
【請求項45】
請求項43に記載のシステムにおいて、前記周波数選択フィルタが、前記周期的励起信号の周波数よりも高い周波数を有するノイズを除去するように構成されている、システム。
【請求項46】
請求項42〜45のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記検出器が、前記応答信号のピークを反映する信号を生成するように構成されているピーク検出回路を備えている、システム。
【請求項47】
請求項42〜46のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記検出器が、前記応答信号と予期される応答信号との間の相関を反映する信号を生成するように構成されている相関検出回路を備えている、システム。
【請求項48】
請求項42〜47のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記周期的励起信号が電圧であり、前記応答信号が電流であり、
前記検出器が、前記応答信号を電流、電圧、ディジタル・コード、または他の量に変換するように構成されている増幅回路を含み、
前記検出器が、前記電流、前記電圧、前記ディジタル・コードまたは前記他の量を時間の経過と共に検出することによって、前記検出信号を生成するように構成されている、システム。
【請求項49】
請求項48に記載のシステムにおいて、前記増幅回路が、前記応答信号を電圧に変換するように構成されたトランスインピーダンス増幅器であり、前記電圧を前記検出器によって時間の経過と共に検出する、システム。
【請求項50】
請求項40〜49のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記回路が、前記応答信号が、入力メカニズムの前記マトリクスに対する物理的近接に対応し、前記入力メカニズムが、前記マトリクスに対するこのような近接のために、前記励起導体と前記応答導体との間に容量変化を生じさせるか否か判断するように構成されている、システム。
【請求項51】
請求項50に記載のシステムにおいて、前記回路が、前記応答信号が、前記励起導体と前記応答導体との間に容量変化が生ずるように、前記マトリクスと直接物理的に接触する入力メカニズムに対応するか否か判断するように構成されている、システム。
【請求項52】
請求項40〜51のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記回路が、前記生成した周期的励起信号と前記周期的ノイズとの間における位相差が一定時間に保たれるように、周期的励起信号を生成するように構成されている、システム。
【請求項53】
請求項40〜52のいずれか一項に記載のシステムであって、更に、ディスプレイ・デバイスを含み、
前記容量性タッチ・センサが、ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられており、前記ディスプレイ・デバイスから結合されたノイズが、前記ディスプレイ・デバイスのライン・スキャン周波数またはフレーム周波数にわたって周期的であり、
前記回路が、
前記ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信し、
前記同期信号に基づいて前記周期的ノイズの位相を判定し、
前記同期信号を用いて、前記生成した周期的励起信号の位相を、前記周期的ノイズの位相にロックするように構成されている、システム。
【請求項54】
請求項53に記載のシステムにおいて、前記同期信号が、前記ディスプレイ・デバイスのライン同期信号またはフレーム同期信号である、システム。
【請求項55】
請求項53又は54に記載のシステムにおいて、前記ディスプレイ・デバイスが、液晶ディスプレイ・デバイス、OLEDディスプレイ・デバイス、またはプラズマ・ディスプレイ・デバイスを含む、システム。
【請求項56】
請求項40〜55のいずれか一項に記載のシステムであって、更に、データ・ストアを備えており、
前記回路が、更に、
前記センサの較正ルーチンの間に前記閾値を決定し、
前記閾値をデータ・ストアに格納する、
ように構成されており、
前記閾値にアクセスすることが、前記データ・ストアから前記閾値にアクセスすることを含む、システム。
【請求項57】
請求項56に記載のシステムにおいて、前記閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、システム。
【請求項58】
請求項56に記載のシステムにおいて、前記閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、システム。
【請求項59】
ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられた容量性タッチ・センサを有する容量性タッチ・スクリーン・ディスプレイにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給するシステムであって、
ディスプレイ・デバイスと、
第1導体アレイと第2導体アレイとを含む容量性タッチ・センサであって、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が、前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成する、容量性タッチ・センサと、
回路であって、
前記ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信し、
前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに等しいセンサ・フレーム・レートを有するように前記容量性タッチ・センサを構成し、
前記同期信号に基づいて、前記ディスプレイ・デバイスによって生成される周期的ノイズの位相を判定し、
前記センサの第1センサ・フレーム中に、前記周期的ノイズの前記判定した位相にロックされた位相を有する第1周期的励起信号を生成し、前記第1周期的励起信号を前記第1導体アレイにおける励起導体に印加し、
前記第1センサ・フレーム中に前記第1励起信号を印加している間、前記第2導体アレイにおける応答導体上において第1応答信号を検出し、前記応答導体が前記励起導体に容量的に結合されており、前記検出した第1応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第1の値を生成し、
第1閾値にアクセスし、
前記第1の値と前記第1閾値との間の差に基づいて、前記第1応答信号が接触に対応するか否か判断し、
前記第1応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成する、
ように構成されている、回路と、
を備えている、システムにおいて、
前記回路が、前記センサ・フレーム・レートの前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに対する比率がx:yに等しく、xおよびyが整数であり、xが1よりも大きくなるように、前記容量性タッチ・センサを設定するように設定し、
前記回路が、更に、
前記第1センサ・フレームの後に現れる前記容量性タッチ・センサの第2センサ・フレーム中に、前記周期的ノイズの前記判定した位相にロックされた位相を有する第2周期的励起信号を生成し、前記第2周期的励起信号を前記励起導体に印加し、
前記第2センサ・フレーム中に前記第2励起信号を印加している間、応答導体上において第2応答信号を検出し、前記検出した第2応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第2の値を生成し、
第2閾値にアクセスし、前記第2閾値が前記第1閾値とは異なり、
前記第2の値と前記第2閾値との間の差に基づいて、前記第2応答信号が接触に対応するか否か判断し、
前記第2応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成する、
ように構成されている、システム。
【請求項60】
請求項59に記載のシステムであって、更に、データ・ストアを備えており、
前記回路が、更に、
前記センサの較正ルーチンの間に前記第1閾値および前記第2閾値を決定し、前記第1閾値および前記第2閾値をデータ・ストアに格納し、前記データ・ストアから前記第1閾値にアクセスし、前記データ・ストアから前記第2閾値にアクセスするように構成されている、システム。
【請求項61】
請求項60に記載のシステムにおいて、前記第1閾値および前記第2閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、システム。
【請求項62】
請求項60に記載のシステムにおいて、前記第1閾値および前記第2閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、システム。
【請求項63】
請求項59〜62のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記回路が、
前記第2応答信号に基づいて第2検出信号を生成し、
前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す前記第2の値に到達するために、前記第2検出信号をサンプリングするように構成されている、システム。
【請求項64】
請求項59〜63のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記同期信号が、前記ディスプレイ・デバイスのライン同期信号またはフレーム同期信号である、システム。
【請求項65】
請求項59〜64のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記ディスプレイ・デバイスが、液晶ディスプレイ・デバイス、OLEDディスプレイ・デバイス、またはプラズマ・ディスプレイ・デバイスを含む、システム。
【請求項66】
請求項59〜65のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記回路が、
前記第1応答信号に基づいて第1検出信号を生成するように構成され、
前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す値に到達するために、前記第1検出信号をサンプリングするように構成されている、
システム。
【請求項67】
請求項59〜66のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記回路が、更に、
前記センサの較正ルーチンの間に前記第1閾値を決定し、
前記第1閾値をデータ・ストアに格納する、
ように構成されており、
前記データ・ストアから前記第1閾値にアクセスする、システム。
【請求項68】
請求項67に記載のシステムにおいて、前記第1閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、システム。
【請求項69】
請求項67に記載のシステムにおいて、前記第1閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、システム。
【請求項70】
ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられた容量性タッチ・センサを有する容量性タッチ・スクリーン・ディスプレイにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給するシステムであって、
ディスプレイ・デバイスと、
データ・ストアと、
第1導体アレイと第2導体アレイとを含む容量性タッチ・センサであって、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が、前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成する、容量性タッチ・センサと、
回路であって、
前記ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信し、
センサ・フレーム・レートの前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに対する比率がx:yに等しく、xおよびyが整数であり、xが1よりも大きくなるように前記容量性タッチ・センサを設定し、
前記同期信号に基づいて、前記ディスプレイ・デバイスによって生成される周期的ノイズの位相を判定し、
x個の閾値をデータ・ストアに格納し、前記x個の閾値の各々が、x個の連続センサ・フレームのそれぞれの1つの間に接触を判定するために使用可能であり、
前記x個の連続センサ・フレームの各n番目のセンサ・フレームの間に(nは1からxまでの整数)、
前記周期的ノイズの前記判定した位相にロックされた位相を有する第n周期的励起信号を生成し、前記第n周期的励起信号を前記第1導体アレイにおける励起導体に印加し、
前記第nセンサ・フレーム中に前記第n励起信号を印加している間、前記第2導体アレイにおける応答導体上において第n応答信号を検出し、前記応答導体が前記励起導体に容量的に結合されており、前記検出した第n応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第nの値を生成し、
前記データ・ストアから第n閾値にアクセスし、
前記第nの値と前記第n閾値との間の差に基づいて、前記第n応答信号が接触に対応するか否か判断し、
前記第n応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成する、
ように構成されている、回路と、
を備えている、システム。
【請求項71】
請求項70に記載のシステムにおいて、前記x個の閾値の内少なくとも2つが、互いに異なる、システム。
【請求項72】
請求項70に記載のシステムにおいて、前記x個の閾値の各々が、互いに異なる、システム。
【請求項73】
請求項70〜72のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記回路が、
前記第n応答信号に基づいて第n検出信号を生成し、
前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第nの値に到達するために、前記第n検出信号をサンプリングする、
ように構成されている、システム。
【請求項74】
請求項70〜73のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記回路が、更に、前記センサの較正ルーチンの間に、前記x個の閾値を決定するように構成されている、システム。
【請求項75】
請求項74に記載のシステムにおいて、前記x個の閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサを製造するときに実行する、システム。
【請求項76】
請求項74に記載のシステムにおいて、前記x個閾値を決定する前記較正ルーチンを、前記センサの寿命の間1回だけ実行する、システム。
【請求項77】
ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられた容量性タッチ・センサを有する容量性タッチ・スクリーン・ディスプレイにおいて明瞭な信号(cleaned signal)を供給するシステムであって、
ディスプレイ・デバイスと、
データ・ストアと、
第1導体アレイと第2導体アレイとを含む容量性タッチ・センサであって、前記第1導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第2導体アレイにおける導体が互いに平行に並べられており、前記第1導体アレイにおける導体が、前記第2導体アレイにおける導体に対して垂直に位置付けられてマトリクスを形成する、容量性タッチ・センサと、
前記ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信する受信回路と、
センサ・フレーム・レートの前記ディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに対する比率がx:yに等しく、xおよびyが整数であり、xが1よりも大きくなるように前記容量性タッチ・センサを設定する手段と、
前記同期信号に基づいて、前記ディスプレイ・デバイスによって生成される周期的ノイズの位相を判定する手段と、
回路であって、
x個の閾値をデータ・ストアに格納し、前記x個の閾値の各々が、x個の連続センサ・フレームのそれぞれの1つの間に接触を判定するために使用可能であり、
前記x個の連続センサ・フレームの各n番目のセンサ・フレームの間に(nは1からxまでの整数)、
前記周期的ノイズの前記判定した位相にロックされた位相を有する第n周期的励起信号を生成し、前記第n周期的励起信号を前記第1導体アレイにおける励起導体に印加し、
前記第nセンサ・フレーム中に前記第n励起信号を印加している間、前記第2導体アレイにおける応答導体上において第n応答信号を検出し、前記応答導体が前記励起導体に容量的に結合されており、前記検出した第n応答信号に基づいて、前記励起導体と前記応答導体との間における測定容量を示す第nの値を生成し、
前記データ・ストアから第n閾値にアクセスし、
前記第nの値と前記第n閾値との間の差に基づいて、前記第n応答信号が接触に対応するか否か判断し、
前記第n応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成する、
ように構成されている、回路と、
を備えている、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願に対する相互引用
本願は、2011年3月2日に出願された米国仮特許出願第61/448,502号の優先権を主張する。この出願をここで引用したことにより、その内容全体があらゆる目的に対して本願にも含まれるものとする。
技術分野
本開示は、タッチ・センサにおいてノイズを低減する技法に関する。
【0002】
接触感応システムは、表面上における1つ以上の接触点を検出してこれに応答する。接触感応システムは、タッチ・スクリーンの形態で電子デバイス内部に組み込むことができ、これによって、スクリーンに接触する1つ以上の入力を用いて、ユーザが物体を見ることおよび操作することを可能にする。
【発明の概要】
【0003】
本明細書は、総じて、タッチ・センサにおけるノイズ低減または除去(rejection)に関する技術について記載する。
【0004】
全般的に、本明細書において記載する主題の態様は、その一部がセンサを伴う方法において実現することができる。この態様の他の実施態様には、その方法の動作を実行するように構成された、対応するシステム、装置、およびコンピュータ・プログラムが含まれる。コンピュータ・プログラムは、コンピュータ記憶デバイス上にエンコードされる。
【0005】
全般的に、本明細書において記載する主題の他の態様は、容量性タッチ・センサにおいて清浄信号(cleaned signal)を供給することに関する動作を含む方法において実現することができる。容量性タッチ・センサは、第1導体アレイと、第2導体アレイとを含む。第1アレイにおける導体は、実質的に互いに並行に並べられており、第2アレイにおける導体は、実質的に平行に並べられている。第1アレイにおける導体は、第2アレイにおける導体に対して実質的に垂直に位置付けられて、マトリクスを形成する。容量性タッチ・センサの入力における周期的ノイズの位相を判定し、この判定した周期的ノイズの位相にロックされた位相を有する周期的励起信号を生成する。この周期的励起信号は、第1アレイにおいて励起された導体に印加される。励起信号が印加されている間、第2アレイにおける応答導体上において応答信号を検出し、この検出した応答信号に基づいて、励起導体と応答導体との間において測定した容量を示す値を生成する。閾値にアクセスし、応答信号が接触に応答するか否か、前述の値と閾値との間の差に基づいて判定を行い、応答信号が接触に対応するか否かの判定結果を反映する信号を生成する。
【0006】
これらおよびその他の実施態様は、各々、任意に以下の特徴の内1つ以上を含むことができる。応答信号が接触に対応するか否か判断するステップは、応答信号が、入力メカニズムのマトリクスに対する物理的近接に対応し、入力メカニズムが、そのマトリクスに対するこのような近接のために、励起導体と応答導体との間に容量変化を生じさせるか否か判断するステップを含むことができる。応答信号が接触に対応するか否か判断するステップは、応答信号が、励起導体と応答導体との間に容量変化が生ずるように、マトリクスと直接物理的に接触する入力メカニズムに対応するか否か判断するステップを含むことができる。
【0007】
周期的ノイズの判定された位相にロックされた位相を有する周期的励起信号を生成するステップは、生成した周期的励起信号と周期的ノイズとの間における位相差が一定時間に保たれるように、周期的励起信号を生成するステップを含むことができる。
【0008】
閾値は、容量性タッチ・センサの較正中に決定することができ、周期的ノイズの応答信号に対する影響を反映する一定のオフセットを含むことができる。閾値を決定するために、タッチ・センサを較正することができる。
【0009】
第2アレイにおける応答導体上において応答信号を検出するステップは、決定論的であり、センサ・フレームを跨いで状態を維持しない検出器を用いて応答信号を検出するステップを含むことができる。検出した応答信号に基づいて、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す値を生成するステップは、検出器が、応答信号に基づいて、検出信号を生成するステップと、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す値に到達するために、検出信号をサンプリングするステップとを含むことができる。周波数選択フィルタを用いて応答信号からノイズを除去することができ、次いで検出信号を生成するために、濾波した応答信号を検出器に供給する。周波数選択フィルタを用いてノイズを除去するステップは、周波数選択フィルタを用いて、周期的励起信号の周波数よりも低い周波数を有するノイズを除去するステップ、および/または周波数選択フィルタを用いて、周期的励起信号の周波数よりも高い周波数を有するノイズを除去するステップを含んでもよい。
【0010】
検出器は、応答信号のピークを検出するピーク検出回路を含むことができ、検出信号を生成するステップは、ピーク検出回路が応答信号のピークを反映する信号を生成するステップを含むことができる。
【0011】
検出器は、応答信号と予期される応答信号との間の相関を計算する相関検出回路を含むことができ、検出信号を生成するステップは、相関検出回路が応答信号と予期される応答信号との間の相関を反映する信号を生成するステップを含むことができる。
【0012】
励起信号は電圧とすることができ、応答信号は電流とすることができる。検出器は、更に、電流応答信号を電流、電圧、ディジタル・コード、または他の量に変換する増幅器を含むことができる。応答信号に基づいて検出信号を生成するステップは、増幅器によって、電流応答信号を電流、電圧、ディジタル・コード、または他の量に変換するステップと、検出器が電流、電圧、ディジタル・コードまたは他の量を時間の経過と共に検出することによって、検出信号を生成するステップとを含むことができる。増幅器は、電流応答信号を電圧に変換するように構成されたトランスインピーダンス増幅器とすることができ、変換された電圧は、検出器によって時間の経過と共に検出される。
【0013】
励起導体と応答導体との間における測定容量を示す値に到達するために、検出信号をサンプリングするステップは、センサ・フレームの測定期間中に検出信号をサンプリングするステップを含むことができる。検出信号のサンプルは、多数のセンサ・フレームの各測定期間中における同じ時点において取り込まれ、検出信号のサンプルが各センサ・フレームの間周期的励起信号の同じ位相において取り込まれるように、多数のセンサ・フレームの各々の測定期間は、周期的励起信号と同相であることができる。
【0014】
タッチ・センサは、ディスプレイ・デバイスに対して位置付けることができ、ディスプレイ・デバイスから結合されたノイズは、ディスプレイ・デバイスのライン・スキャン周波数またはフレーム周波数にわたって周期的であることができる。周期的ノイズの位相を判定するステップは、ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信するステップと、同期信号に基づいて周期的ノイズの位相を判定するステップとを含むことができる。周期的励起信号を生成するステップは、同期信号を用いて、生成した周期的励起信号の位相を、周期的ノイズの位相にロックするステップを含むことができる。同期信号は、ディスプレイ・デバイスのライン同期信号またはフレーム同期信号とすることができる。ディスプレイ・デバイスは、液晶ディスプレイ・デバイス、OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ・デバイス、またはプラズマ・ディスプレイ・デバイスとすることができる。
【0015】
閾値は、センサの較正ルーチンの間に決定することができ、そしてデータ・ストアに格納することができる。このデータ・ストアから閾値にアクセスすることができる。閾値を決定する較正ルーチンは、センサを製造するとき、および/またはセンサの寿命の間1回だけ実行することができる。
【0016】
全般的に、本明細書において記載する主題の他の態様は、ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられた容量性タッチ・センサを有する容量性タッチ・スクリーン・ディスプレイにおいて明瞭な信号を供給する方法において実現することができる。容量性タッチ・センサは、第1導体アレイと第2導体アレイとを含む。第1アレイにおける導体は、実質的に互いに平行に並べられており、第2アレイにおける導体は、実質的に互いに平行に並べられている。第1アレイにおける導体は、第2アレイにおける導体に対して実質的に垂直に位置付けられてマトリクスを形成する。ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信する。タッチ・センサは、合理的な多数のディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに等しいセンサ・フレーム・レートを有するように構成され、ディスプレイ・デバイスによって生成される周期的ノイズの位相を、同期信号に基づいて判定する。第1センサの第1センサ・フレーム中に、周期的ノイズの判定した位相にロックされた位相を有する第1周期的励起信号を生成し、第1周期的励起信号を第1アレイにおける励起導体に印加する。第1センサ・フレーム中に第1励起信号を印加している間、第2アレイにおける応答導体上において第1応答信号を検出する。応答導体が励起導体に容量的に結合されており、検出した第1応答信号に基づいて、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す第1の値を生成する。第1閾値にアクセスし、第1の値と第1閾値との間の差に基づいて、第1応答信号が接触に対応するか否か判断する。第1応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成する。
【0017】
これらおよびその他の実施態様は、各々、任意に以下の特徴の内1つ以上を含むことができる。合理的な多数のディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに等しいセンサ・フレーム・レートを有するようにタッチ・センサを構成するステップは、センサ・フレーム・レートのディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに対する比率がx:yに等しくなるように、タッチ・センサを構成するステップを含み、xおよびyが整数であり、xが1よりも大きい。第1センサ・フレームの後に現れるタッチ・センサの第2センサ・フレーム中に、周期的ノイズの判定した位相にロックされた位相を有する第2周期的励起信号を生成し、第2周期的励起信号を励起導体に印加する。第2センサ・フレーム中に第2励起信号を印加している間、応答導体上において第2応答信号を検出し、検出した第2応答信号に基づいて、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す第2の値を生成する。第1閾値とは異なる第2閾値にアクセスする。第2の値と第2閾値との間の差に基づいて、第2応答信号が接触に対応するか否か判断し、第2応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成する。
【0018】
第1閾値および第2閾値は、センサの較正ルーチンの間に決定することができ、第1閾値および第2閾値をデータ・ストアに格納することができる。第1閾値にアクセスするステップは、データ・ストアから第1閾値にアクセスするステップを含むことができ、第2閾値にアクセスするステップは、データ・ストアから第2閾値にアクセスするステップを含むことができる。第1閾値および第2閾値を決定する較正ルーチンは、センサを製造するとき、および/またはセンサの寿命の間1回だけ実行することができる。
【0019】
検出した第2応答信号に基づいて、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す第2の値を生成するステップは、第2応答信号に基づいて第2検出信号を生成するステップと、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す第2の値に到達するために、第2検出信号をサンプリングするステップとを含むことができる。
【0020】
全般的に、本明細書において記載する主題の他の態様は、ディスプレイ・デバイスに対して位置付けられた容量性タッチ・センサを有する容量性タッチ・スクリーン・ディスプレイにおいて明瞭な信号を供給する方法において実現することができる。容量性タッチ・センサは、第1導体アレイと第2導体アレイとを含む。第1アレイにおける導体は、実質的に互いに平行に並べられており、第2アレイにおける導体は、実質的に互いに平行に並べられている。第1アレイにおける導体は、第2アレイにおける導体に対して実質的に垂直に位置付けられてマトリクスを形成する。ディスプレイ・デバイスから同期信号を受信し、センサ・フレーム・レートのディスプレイ・デバイスのフレーム・レートに対する比率がx:yに等しくなるようにタッチ・センサを構成する。xおよびyが整数であり、xは1よりも大きい。同期信号に基づいて、ディスプレイ・デバイスによって生成される周期的ノイズの位相を判定する。x個の閾値をデータ・ストアに格納する。x個の閾値の各々が、x個の連続センサ・フレームのそれぞれの1つの間に接触を判定するために使用可能である。x個の連続センサ・フレームの各n番目のセンサ・フレームの間に(nは1からxまでの整数)、周期的ノイズの判定した位相にロックされた位相を有する第n周期的励起信号を生成し、第n周期的励起信号を、第1アレイにおける励起導体に印加する。第nセンサ・フレーム中に第n励起信号を印加している間、第2アレイにおける応答導体上において第n応答信号を検出する。応答導体は、励起導体に容量的に結合されている。検出した第n応答信号に基づいて、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す第nの値を生成する。データ・ストアから第n閾値にアクセスする。第nの値と第n閾値との間の差に基づいて、第n応答信号が接触に対応するか否か判断し、第n応答信号が接触に応答するか否かの判断結果を反映する信号を生成する。
【0021】
これらおよびその他の実施態様は、各々、任意に以下の特徴の内1つ以上を含むことができる。x個の閾値の内少なくとも2つは、互いに異なることができる。x個の閾値の各々は、互いに異なることができる。
【0022】
検出した第n応答信号に基づいて、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す第nの値を生成するステップは、第n応答信号に基づいて第n検出信号を生成するステップと、励起導体と応答導体との間における測定容量を示す第nの値に到達するために、第n検出信号をサンプリングするステップとを含むことができる。
【0023】
センサの較正ルーチンの間に、x個の閾値を決定することができる。x個の閾値を決定する較正ルーチンは、センサを製造するとき、および/またはセンサの寿命の間1回だけ実行することができる。
【0024】
本明細書において記載する主題の1つ以上の実施態様の詳細について、添付図面および以下の説明において明記する。主題のその他の特徴および態様は、この説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、ノイズ低減能力を向上させたタッチ・センサ・システムの図である。
【
図4】
図4は、ノイズがないときのピーク検出回路の入力電圧および対応する出力電圧を示すグラフである。
【
図5】
図5は、一定振幅の狭帯域ノイズがあるときにおける、ピーク検出回路の入力電圧および対応する出力電圧を示すグラフである。
【
図6】
図6は、一定振幅の狭帯域ノイズがあるときにおける、ピーク検出回路の入力電圧および対応する出力電圧を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ノイズの発生源がディスプレイ・デバイスである場合にノイズ低減能力を向上させたタッチ・センサ・システムの図である。
【
図8】
図8は、周期的でインパルス状のノイズがあるときにおける、ピーク検出回路の入力電圧および対応する出力電圧を示すグラフである。
【
図9】
図9は、液晶ディスプレイ(LCD)のフレーム・レートに対するセンサのフレーム・レートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
種々の図面において、同様の参照番号および命名は、同様の要素を示す。
【0027】
タッチ・センサは、二次元格子またはマトリクス状に並べられた導通行および導通列を含むことがある。行導体および列導体の具体的な外形(geometry)は、これらを実現するために用いられる導電体によって様々に変化することがあり得る。例えば、行および列を菱形パターンに並べることや、導電体として酸化インディウム錫を用いる場合もあり、あるいはタッチ・センサがディスプレイの前面に置かれるときでも目立たない程に十分薄い金属ワイヤ(例えば、銅または銀のワイヤ)を用いて、行および列を形成する場合もある。タッチ・センサの中には、マトリクスにおける特定の位置にある行からその位置の列までの容量を測定することによって、指(または、例えば、スタイラスのような他の入力メカニズム)がその位置に「接触している」か否か判断するものがある。注記すべきは、入力メカニズムは、マトリクスに「接触する」ためのマトリクスとの物理的接触とすることができるが、その必要はないということである。むしろ、入力メカニズムはマトリクス上のある位置において容量変化を引き起こすような、マトリクスへの物理的近接だけでよい。したがって、以下の開示において「接触」に言及するときは、直接物理的な接触を必要とするのではなく、もっと一般的に、入力メカニズムによってマトリクス上のある位置において容量変化が引き起こされるように、入力メカニズムがマトリクスに関与する(例えば、マトリクスに直接物理的に接触するまたは物理的に近接することによって)ことが求められることとする。次いで、容量変化を測定して、接触の存在を判定することができる。
【0028】
容量測定は、時間可変電圧を列に印加し、その結果行に容量的に結合される電流を測定することによって行うことができる。この電流は行から列までの容量に比例することができる。接触の結果、接触された位置において容量の増加または減少を引き起こすことができるので、測定された容量を基準値(baseline value)(例えば、閾値の例)と比較することによって、マトリクスにおける特定の位置が接触されているか否か判断することが可能になる。したがって、測定された容量が基準値よりも所定量だけずれている場合、タッチ・センサは、特定の位置が接触されていると結論付ける。逆に、測定された容量が基準値から所定量だけずれていない場合、タッチ・センサは、特定の位置が接触されていないと結論付ける。接触を示す所定量のずれは、センサの外形およびその他の詳細によって異なる。通例、タッチ・センサ・コントローラ内部にあるソフトウェアまたは電子部品が、マトリクスの各位置における基準容量(例えば、行−列交点における)の表を維持することができ、その基準に対する容量の増減を計算することができる。
【0029】
実施態様の中には、タッチ・センサが、時間可変励起電圧をマトリクス内の各列に順次印加し、行電流を測定することによって、列毎にタッチ・センサ・マトリクスの各行−列交点における容量を測定するものもある。時間可変励起電圧をマトリクスにおける特定の列(即ち、検査列)に印加すると、マトリクスにおける他の列全てを一定電圧に保持することができ、マトリクスにおける行も全て一定電圧に保持することができる。特定の列を検査しているときに行よび他の列を一定の電圧に維持することによって、検査対象列と行との各交点における容量の測定値は、他のいずれの容量にも依存しないことが可能である。このように、マトリクスにおいて各行が検査対象列と交差する位置における容量を測定することができる。対応する行電流を測定しつつマトリクスにおける残りの列の各々を順次検査することによって、ビットマップ画像を生成することができ、マトリクス内の特定の位置における容量変化は、その特定の位置における接触を示す。この状況は、実際には各行をトランスインピーダンス増幅器、またはその入力電圧を一定に保持する他の回路に各行を接続しつつその入力への電流を測定することによって得ることができる。トランスインピーダンス増幅器の場合、回路の出力は電圧にすることができるが、他の回路の場合、その出力は電流、ディジタル・コード、または他の量となることもある。
【0030】
タッチ・センサの接触を精度高く検出し接触の位置を判定する能力は、ノイズによって妨げられる。即ち、ノイズのために何らかの電流が常時全ての行に流れ込んでいる可能性がある。「ノイズ」という用語は、本明細書では、その特性が完全に確率的であるか否か、あるいは信号が何らかの周期的構造または他の構造を有するか否かには関係なく、あらゆる望ましくない信号を指すこととする。後者の信号は、別個に「干渉」と呼ばれることもあるが、本明細書ではこの区別は行わない。
【0031】
ノイズ電流の励起電圧から生ずる電流に対する比率が、タッチ・センサの信号対ノイズ比を決定することができる。したがって、タッチ・センサの性能は、容量測定値の信号対ノイズ比によって抑えられる可能性がある。ノイズの振幅が、接触によって生ずる容量変化の振幅を超えると、本システムは誤った接触行為を報告する虞れがあり、または実際の接触行為を無視する虞れがある。接触の位置(x、y)がマトリクスのピッチよりも高い空間分解能で補間によって計算される範囲では、測定された容量のノイズが、計算された位置のノイズになる。
【0032】
以下で更に詳しく説明するが、タッチ・センサ・システムは、周期的ノイズの位相を検出または言い換えると判定して、この判定した周期的ノイズの位相にロックされた位相を有する時間可変励起電圧を印加するように、センサの電圧ドライバを変更することによって、センサ性能に対する周期的ノイズの悪影響を低減することができる。時間可変励起電圧の位相を、検出したノイズの位相にロックすることによって、周期的ノイズの影響(effect)を固定のオフセットに変換することができ、次いで後続の較正ステップにおいてこのオフセットを容量測定値から減算して、容量測定値に対する周期的ノイズの影響を補償する。
【0033】
図1は、ノイズ低減能力を向上させたタッチ・センサ・システムの図である。タッチ・センサ・システム100は、1組の行および列を含むセンサ・マトリクス105を含む。更に、システム100は、センサ・マトリクス105の列毎に列電圧ドライバ110も含む。電圧ドライバ110は、その対応する列に、その列が現在検査されているか否かに基づいて、固定電圧を印加すること、および励起電圧を印加することの間で切り替えるように構成されている。また、システム100は、センサ・マトリクス105の行毎にトランスインピーダンス増幅器115および検出器120も含む。注記すべきは、一方の軸を行と呼び、他方を列と呼ぶのは、任意に選択できることであり、タッチ・センサ・システム100において基礎的な変更を行うことなく、逆にしてもよいということである。
【0034】
トランスインピーダンス増幅器115は、行電流を電圧に変換し、この電流を検出器120が検出することができる。検出器120は、トランスインピーダンス増幅器115から受ける電圧を時間の経過と共に検出し、この電圧を信号に変換するように構成されている。この信号は、続いて、サンプラ125によってサンプリングされ、行と検査対象の列との間の容量を示す数値を出力する(render)ことができる。他の実施態様では、トランスインピーダンス増幅器115は検出器120の一部として含まれる。実施態様の中には、トランスインピーダンス増幅器115を電流入力増幅器と置き換えるものもあり、各電流入力増幅器は、行電流を測定している間その入力電圧を一定に保持し、電圧の代わりに、電流、ディジタル・コード、またはその他の量を出力する。出力された他の量は、次に、時間の経過と共に検出器120によって検出され、サンプラ125によってサンプリングされて、先に記した容量を示す数値を出力することができる。行信号の変換、検出、およびサンプリングのうち1つ以上の前または後のある時点において、信号をアナログ信号からディジタル信号に変換することができる。例えば、システム100は、サンプラ125の一部として、または各検出器120の一部として、アナログ/ディジタル変換器(ADC)を含むこともできる。
【0035】
更に、システム100はコントローラ130を含む。コントローラ130は、システム100の動作、およびこのシステムの動作中に当該コントローラによってアクセスされるデータ・ストア132の動作を制御するように構成されている。具体的には、コントローラ130は、電圧ドライバ110と通信し、センサ・マトリクス105の列の順次検査を調整するように構成されており、更にサンプラ125からの測定容量を表す検出数値を受け取るように構成されている。コントローラ130は、サンプラ125から受け取った数値に基づいて較正ルーチンを実行し、基準値を決定し、接触を検出するために今後アクセスできるように、この基準値をデータ・ストア132に格納することができる。これについては、以下で更に詳しく説明する。この較正ルーチンは、センサ構造における機械的ばらつき、電子コンポーネント・パラメータのばらつき、およびその他の固定オフセット(static offset)の発生源を補償するために用いることができる。以下で更に詳しく説明するが、較正ルーチンは周期的ノイズの影響を低減するためにも用いることができる。
【0036】
更に、コントローラ130は、サンプラ125から受け取った数値を、マトリクス105の行および列の交点毎に格納されている対応基準容量数値と比較することによって、センサ・マトリクス105上における接触の位置を判定するように構成されている。例えば、列「a」を検査しているときに行「b」に対する数値を受け取った場合、コントローラ130は、この数値を、マトリクス105上の(a、b)位置について既に格納されている基準数値と比較することができる。先に注記したように、この数値が所定量だけ基準数値からずれている場合、コントローラ130は、マトリクス105上の(a、b)位置またはその付近に接触が存在すると結論付けることができる。センサ・マトリクス105の各列の順次検査、対応する行電流の検出、検出した行電流の数値への変換、および数値の基準数値との比較によって、システム100は、コントローラ130の制御の下で、センサ・マトリクス105のビットマップ画像を生成することができる。このビットマップ画像上では、センサ・マトリクス105上における各接触点の位置が特定される。
【0037】
しかしながら、周期的ノイズ発生源135は、センサ・マトリクス105に結合することによって、そしてこれによって行内にノイズ電流を生成することによって、システム100の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。ノイズ電流によって、誤った接触行為の発生、実在した接触行為の無視、および/または位置補間を用いた場合に正しくない接触位置判定が生ずる可能性がある。
【0038】
注記すべきは、ノイズ電流は、多くの異なる種類のノイズ源から生ずる可能性があることである。例えば、システム100の主電力(power mains)によって設定された電圧勾配のために、50Hzまたは60Hzの大電流が流れ込む可能性がある。しかしながら、これらの大電流の周波数は、電圧ドライバ110の典型的な励起周波数からは十分に分離されており(通例100kHz程度であると考えられる)、したがって、周波数選択フィルタの使用によってかなり容易に除去することができる。加えてまたは代わりに、例えば、ラジオおよびテレビジョン放送のために、高周波電流が流れる可能性もある。しかしながら、これらの電流の周波数は、通例約1MHz以上であり、したがってこれも周波数選択フィルタの使用によって容易に除去することができる。
【0039】
したがって、最も重大な干渉は、電圧ドライバ110の励起周波数と周波数が近いノイズ信号を生成するノイズ源から生ずると考えられる。これらのノイズ信号は、通例その程度の切り替え周波数で動作するスイッチモード電源によって生成されるノイズ、および高電圧出力を有する電源(例えば、蛍光灯の電源)によって生成される大振幅ノイズを含む場合がある。
【0040】
センサ・マトリクス105を液晶ディスプレイ(LCD)または他のディスプレイ・デバイスに近接して使用するとき、ディスプレイ・デバイスが最大のノイズ源になる可能性がある。特に、ディスプレイ・デバイスが、透過性接着材を用いてセンサ・マトリクス105に光学的に接合されており、空気ギャップによって離間されていないときに言える。この光学的に透明な接着材は、最も狭い実用的な空気ギャップよりも薄い場合もあり、したがってセンサ・マトリクス105をディスプレイ・デバイスに近づくように移動させるに連れて、ノイズが増大する可能性がある。また、空気の誘電体係数と比較して接着材の誘電係数の方が高いことによって、ノイズが増大する可能性もある。即ち、接着材の相対誘電係数は通例3および4の間であると考えられ、一方空気の相対誘電係数は自由空間のそれ、即ち、1に非常に近い。ノイズは容量的に結合されるので、そのノイズ電流の振幅は、それが結合される際に介在する絶縁体の誘電係数に大まかに比例し、その絶縁体の厚さの逆数に大まかに比例する。
【0041】
ディスプレイ・デバイスから結合されるノイズは、多数の成分から成ることもある。これらの成分の一部は、ディスプレイ・デバイス上に表示される画像に依存するものもあるが、他の成分はそうではない場合もある。ノイズは、約100kHzであるビデオのライン・スキャン周波数において強い成分を有し、したがってシステム100の励起周波数に非常に近い可能性がある。このライン・スキャン周波数周囲のノイズは、以上で注記した理由のため、最も重要な成分であると考えられる。このライン・スキャン周波数周囲のノイズは、時間が経ってもその振幅および周波数が一定に近く、表示される画像には依存しないと考えられる。このライン・スキャン・ノイズは、例えば、LCD、プラズマ、およびOLEDディスプレイで発生する可能性がある。
【0042】
検出器120は、そのアーキテクチャに依存して、ノイズに対して異なる耐性(immunity)を有することがある。理想的には、検出器120は、点毎に(pointwise)受け取った信号を期待信号(expected signal)と乗算し、全励起期間にわたるその量の積分を計算する回路であるとよい。これは、受け取った信号の期待信号に対する相関を計算することと等価であり、ノイズが一定の特性を有するとき(例えば、ノイズが加法ホワイト・ガウス・ノイズとして最良に特徴付けられるとき)に最適な検出器となる。しかしながら、実際には、ノイズは、この種の検出器では最適に除去される特性を有さないのが通例であり、したがって、この相関動作を実行する検出器120は、実際には最適ではない場合もある。しかしながら、米国特許出願第12/838,422号に記載されているように、この相関動作を実行する検出器120を用いるときに、電圧ドライバ110によって送信される励起波形を、実際に予期される一定のタイプのノイズを最大限除去する特性を有するように選択すればよい。この特許出願をここで引用したことにより、あらゆる目的に対してその内容が本願にも含まれるものとする。しかしながら、相関動作は複雑であり、したがって正確に実行するには費用がかかると考えられる。とは言え、スイッチド・キャパシタまたはその他の回路を用いて相関動作を近似することによって、コストを抑えた検出器も可能である。
【0043】
更にコストを抑えた検出器が望まれる場合、検出器120は、代わりに、例えば
図2に示すようなピーク検出回路220のような、広帯域検出器にするとよい。ピーク検出回路220は、前述の相関動作を実行する検出回路よりもコストが低く、複雑さも少ないが、ノイズに対する耐性(resistant)も低い。回路220を低インピーダンス電圧源で駆動し、その出力を高インピーダンス回路に接続すると仮定するとよい。ピーク検出回路220の入力は、例えば、トランスインピーダンス増幅器115によって駆動される電圧入力Vinとすることができる。
【0044】
ピーク検出回路220は、その入力電圧Vinの最大値を記録し(ダイオードD1の両端間の電圧降下を差し引く)、Voutにおけるその電圧を無期限に保持する。この回路をリセットするには、例えば、スイッチSWを用いてVoutを短期間接地に接続することによって、キャパシタC1を短絡させればよい。明示的に回路をリセットする必要性が望ましくない場合、スイッチSWを、接地に至る抵抗器と置き換えることもできる。そして、測定したピーク電圧は、時定数R×Cで、時間の経過につれて指数的に減衰すると考えられる。
【0045】
ピーク検出回路220には多くの変更が存在してもよい。例えば、ダイオードD1と直列に抵抗器を付けると、ダイオードD1が導通しているときに、瞬時にではなく、ある時定数でキャパシタCを充電させることができる。これによって、高速過渡ノイズに対する回路の応答を低減することができる。同様に、ピーク検出回路220を、他の信号処理回路、例えば、ロー・パス・フィルタが追従してもよい。これは、入力信号の多数のサイクルにわたって測定ピーク電圧を平均化し、ノイズを低減する効果を得ることができる。
【0046】
一次までは(to a first order)、ピーク検出回路220は周波数選択性を有さなくてもよい。即ち、所与の振幅の正弦波入力電圧Vinに対して同じ出力電圧Voutを、この正弦波の周波数に関係なく、供給すればよい。ある種の影響、例えば、ピーク検出器を明示的にリセットしないときのRC減衰のために、または成分が理想的でないことのために、何らかの周波数選択性(frequency selectivity)が必要になる場合がある。しかし、一般に、ピーク検出回路220の周波数応答は非常に広く、少なくとも1オクターブまたは2オクターブを包含することもある。したがって、周波数がVin励起信号の周波数から非常に明確に分離されているという場合を除いて(unless)、ピーク検出回路220は周波数に基づいてノイズを除去する明確な手段を設けなくてもよい。ピーク検出回路220は、その前段にフィルタを追加することによって、周波数選択型にすることができるが、こうすると回路の複雑さやコストが著しく増大する可能性があり、典型的なアナログ・フィルタ技法でも、十分に広帯域であることができる。
【0047】
図3は、スイッチSWが第1抵抗器R1と置き換えられており、更に第2抵抗器R2と第2キャパシタC2によって形成された一次ロー・パス・フィルタを含むことを除いて、ピーク検出回路220と同一であるピーク検出回路320の一例を示す。
図4から
図6および
図8を参照して以下で詳しく説明するが、ピーク検出回路320は、励起信号Vinの位相を周期的ノイズ源135によって生成されるノイズの位相とロックすることによって、一層ノイズに対する耐性を高めることができる。このように励起信号Vinの位相をロックすることによって、周期的ノイズ源135からのノイズを単純な電圧オフセットに変えることができ、これによって、以前に記した較正ステップの間にその電圧オフセットを単に補償することによって、除去することができる。
【0048】
図4から
図6および
図8は、この技法が、ピーク検出回路320を採用したシステム100とどのように機能するかを示すが、この技法は、更に一般的に、検出器120が決定論的(deterministic)であり、センサ・フレームに跨がって状態を保持しないのであれば、いずれのタイプの検出器120を採用するシステム100でも採用することができる。即ち、この技法は、更に一般的に、同じ入力に対して同じ出力を生成する検出器120であればいずれのタイプを採用するシステム100でも採用することができ、したがって、ピーク検出器だけでなく、他の広帯域検出器(例えば、測定期間にわたって信号の二乗または絶対値を積分する「エネルギ検出器」)、または狭帯域検出器(例えば、先に記載した相関に基づく検出器)とでも用いることができる。
【0049】
図4は、ノイズがなく、入力電圧Vinが一定の10V振幅を有し、100kHzで10サイクルから成るバーストであるときにおける、ピーク検出回路320について入力電圧Vinおよび対応する出力電圧Voutを表すグラフ400を示す。以前に注記したように、入力電圧Vinは、トランスインピーダンス増幅器115によって出力された電圧とするとよく、センサ・マトリクス105からトランスインピーダンス増幅器115によって受け取られた生の電流の瞬時値に比例する。注記すべきは、
図4(および
図5から
図7)は正弦波形である入力電圧Vinを表すが、実際には同じ周期を有する他の波形(例えば、方形波)も用いてもよいということである。
【0050】
グラフ400に示すように、ノイズがない場合、ピーク検出回路320は、入力電圧Vinに比例する電圧Vout、したがって受け取った生の電流の振幅に比例する電圧Voutを出力することができる。グラフ400に表されている挙動を呈するピーク検出回路310には、スイッチSWではなく、接地に至る抵抗器が設けられ、したがって明示的にリセットされない。更に、ピーク検出回路320は、一次ロー・パス・フィルタを含む。このロー・パス特性は、入力振幅の階段状変化に応答して、Voutに緩やかな指数的増加を生じさせる。
【0051】
典型的な用途では、ピーク検出回路320の出力を、測定周期Pの終端に近い時点(即ち、時間可変励起電圧が電圧ドライバ110によって印加される時間期間の終端に近い時点)で、サンプラ125によって1回サンプリングするとよい。この1つのサンプルは、ADCの使用によってディジタル数値に変換され、次いで、測定した容量のビットマップにおける対応する(行、列)位置に対する測定容量値として示すように、このディジタル数値をコントローラ130によって格納することができる。
図4に示す例では、電圧出力Voutがサンプリングされる時点は、太い矢印で示されている。1つのセンサ・フレームにおいて、この測定はセンサ・マトリクス105における行−列交点毎に行われる。つまり、センサ・マトリクス105における所与の行−列交点について、この測定を各センサ・フレームで繰り返す。
【0052】
図4に示すように、何らかのリップルが出力電圧Vout内に現れる場合もある。このリップルのために、時間可変励起信号Vinに関してランダムな位相で出力電圧Voutをサンプリングすると、時間可変誤差(即ち、ノイズ)がセンサ・フレーム毎に混入する可能性がある。言い方を変えると、グラフ400に示すように、時間可変励起信号Vinが印加されている測定期間Pの間にVoutの値が変化する。したがって、サンプラ125がセンサ・フレーム毎に測定期間Pにおけるランダムな時点でサンプルを取り込むと、Voutのサンプルの値もセンサ・フレーム毎にランダムに変化し、これによってランダム・ノイズが混入する。しかしながら、同じシステム100が列励起信号を生成し、結果的に得られる生の電流を測定するので、システム100は出力電圧Voutのサンプリングと時間可変励起信号Vinとの間における位相関係を一定に維持することができる。このように、システム100は、サンプラ125が時間可変励起信号Vinに対して同じ時点において出力信号Voutをサンプリングすることをセンサ・フレーム毎に確認する(ensure)ことができる。したがって、出力電圧Voutの中に現れるリップルによって混入する誤差は、時間の経過と共に一定となり、したがって、較正ステップの間に決定される基準値から減算すること、またはその中に組み込むことができる。既に述べたように、このような較正ステップは、センサ構造における機械的ばらつき、電子コンポーネントのパラメータのばらつき、およびその他の固定オフセット発生源を補償するために、既に必要であった場合もある。システム100は、データ・ストア132に、センサ・マトリクス105における行−列交点毎に、別個の基準容量(または容量を示す他の規準値)を格納することができる。
【0053】
図5は、1Vで120kHzの一定振幅狭帯域ノイズが現れたとき、そして入力電圧Vinがそれ以外では
図4に示したものと同じであるときのピーク検出回路320の入力電圧Vinおよび対応する出力電圧Voutを表すグラフ500を示す。グラフ500に示すように、一定振幅の狭帯域ノイズがあると、ピーク検出器320の出力電圧Voutは、時間の経過と共に変動することが観察される可能性がある。これは、ノイズおよび励起信号の位相が互いに対してドリフトし、これらの信号が加算的および減算的に干渉するからである。
【0054】
出力電圧Voutは、2つの信号間(即ち、励起信号と狭帯域ノイズ信号との間)のうなり周波数において変化する可能性がある。この変化は望ましくないかもしれないが、ピーク検出回路320が常に出力電圧Voutを同じ時点にサンプリングし、そのタイミングが励起信号に対して取られているのであれば、必ずしも問題にしなくてもよい。
図4に関して先に説明したように、時間可変励起信号Vinに対して同じ時点でサンプルを取り込むようにサンプラ125を構成すると、連続するセンサ・フレームにわたって励起信号Vinが一定のままであるときには、出力電圧Voutにおけるリップルを、較正の間に基準値に組み込まれる固定オフセットとして、除去することができる。しかしながら、励起信号Vinがノイズの存在のためにセンサ・フレーム毎に変化する場合、このオフセットも時間と共に変化し、サンプリングが各センサ・フレームにおいて時間可変励起信号Vinに対して同じ時点で行われるにも拘わらず、再度望ましくないノイズが生ずる。
【0055】
例示するために、ピーク検出回路320が、1つのセンサ・フレームの間センサ・マトリクス105の1つの特定の行−列交点に対して、
図5のグラフ500に示す出力電圧Voutを生成すると仮定する。サンプラ125は、グラフ500において矢印で示すように、約9ボルトに対応するサンプルを、測定期間Pの終端において取り込む。システム100の電圧ドライバ110によって印加される励起電圧は、
図5に示す狭帯域ノイズ信号から完全に切り離されているので、励起電圧とノイズ信号との間の位相差はセンサ・フレーム毎にランダムに変化する可能性がある。例えば、
図6に表すグラフ600に示すように、後続のセンサ・フレームは新たな位相差、このグラフでは、励起電圧とノイズ信号との間における180°の位相差を呈する可能性がある。この新たな位相差の結果、グラフ500に示したような時間可変励起電圧Vinに対して同じ時点でサンプルを取り込むにも拘わらず、サンプラ125は、グラフ600に示すように、約8ボルトの新たな値に対応するサンプルを、測定期間Pの終端において取り込む可能性がある。したがって、サンプリング時点における電圧が、励起信号に対するノイズの位相差のために、2つの場合で異なる可能性がある。このために、測定した容量にノイズが生ずる可能性がある。
【0056】
一般に、ノイズの位相はランダムになる。何故なら、コントローラ130とは異なる周波数または時間基準(例えば、クリスタルまたはRC発振器)に依存するからである。したがって、測定された信号は、時間と共に変化することが観察され、測定された電流振幅、したがって容量にノイズが混入する。
【0057】
これを回避するために、電圧ドライバ110によって生成される励起波形を、予期される1つまたは複数のノイズ源に位相ロックすることができる。例えば、周期的ノイズの発生源135が、水平同期(即ち、HSYNCまたはライン同期)出力を有するディスプレイ・デバイス(例えば、LCD)である場合、この出力をコントローラ130に接続し、印加される励起電圧の位相とディスプレイ・デバイスの水平同期出力の位相との間の時間差を一定に保持するように励起電圧を印加することを、コントローラ130が電圧ドライバ110に命令することを可能にするとよい。印加される励起電圧とノイズ信号との間の位相差を一定時間に保つことによって、測定が行われる毎にノイズの影響は同一になる。したがって、ノイズの影響は一定のオフセットとなり、他の一定オフセットを除去するために既に存在すると思われる較正ルーチンが、このノイズの影響を除去することができる。
【0058】
較正ルーチンは、指または他の物体がディスプレイに接触することや近接することなく、各行から各列への容量を測定することができる。これらの測定値は、通常動作の間に行われた容量測定(即ち、指または他の接触の存在および位置を判定するために行われる)と同じようにノイズによる影響を受けるので、本システムは、多数のフレームにわたって指が接触することなく、これらの容量を測定し、これらの多数のフレームで平均を取って時間可変ノイズの影響を低減することができる。これらの測定した容量から基準値(例えば、行−列交点毎の)を決定し、後にコントローラ130によってアクセスするためにデータ・ストア132に格納することができる。注記すべきは、励起波形を1つまたは複数の予期した周期的ノイズの発生源に対してロックしたという事実のために、1つまたは複数の周期的ノイズの発生源の影響は、決定された基準値における一定のオフセットに変換される(reduce)ことである。
【0059】
類似設計のセンサを多数製造する実施態様の中には、較正ルーチンを1回だけ行い、同じ基準値をその設計のセンサ全てに用いる場合がある。他の実施態様では、個々のセンサ毎に較正ルーチンを1回繰り返す場合もある。個々のセンサ毎に較正ルーチンを1回繰り返すことによって、各センサにおける製造上の固定のばらつき(例えば、積層プロセスにおける位置ずれによる行および列間における平面内変位(in-plane displacement)を補償することが可能になると考えられる。
【0060】
実施態様の中には、較正ルーチンがセンサの寿命の間に1回しか行われない場合もある。即ち、1回の較正ルーチンを実施して、センサの基準値を決定し(通例、センサが最初に製造されるとき)、そしてこのセンサの寿命の間通常動作中にセンサが後にアクセスするために、決定した基準値を格納する。
【0061】
他の実施形態では、センサの通常動作の間ときどき較正ルーチンを繰り返すこともでき、次いで以後の較正ルーチンの間に行われた測定に基づいて、格納した基準値を周期的に更新することができる。センサの通常動作の間較正ルーチンを周期的に繰り返すことによって、製造上の固定のばらつき、および時間と共に変化する影響(例えば、電子コンポーネントの温度係数および経年変化による測定誤差)の双方を補償することが可能になると考えられる。
【0062】
注記すべきは、センサの通常動作の間較正ルーチンをときどき繰り返す場合、較正測定を行っている間接触がないことを確認する(ensure)のが困難になる場合もあることである。しかしながら、発見的方法を用いると、ユーザがタッチ・センサに接触しているか否か判断することができ(例えば、ノイズによって予期される測定容量変化よりも大きな測定容量変化を探すことによって)、次いで、ユーザがセンサに接触していないとシステムが結論付けたときにだけ、基準容量測定を行えばよい。加えて、または代わりに、基準容量測定は、ユーザがセンサに接触しているか否かに関係なく行ってもよく、その後に、存在する可能性があるあらゆる接触の効果に合わせて、測定した基準容量を訂正すればよい。例えば、本システムは、長期間に対する基準容量よりも大きな測定容量を有する地点(例えば、行−列交点)をマトリクスにおいて探すことができる。接触が容量減少を起こすシステムでは、このような地点は正しくない基準に対応する可能性が高い。何故なら、典型的な動作において観察される実際の効果は、このような容量増加に対応しないからである。このようにマトリクスにおいて1つ以上の地点について正しくない基準を検出した後、本システムは、次に、検出した正しくない基準値に対応するマトリクス内の地点に対して、例えば、較正測定を選択的に繰り返して、新たな基準値を決定することができる。
【0063】
図7は、周期的ノイズの発生源がディスプレイ・デバイス735であるタッチ・センサ・システム100の実施態様700の図である。このディスプレイ・デバイスは、例えば、LCDまたはOLED、あるいはプラズマ・ディスプレイでもよい。
図6では、容量センサ・コントローラ130は、ディスプレイ・デバイス735から明示的な同期信号を受け取ることが示されていた。このような信号が入手可能な場合、これは好ましいと考えられるが、入手可能でない場合、コントローラ130は、代わりに、検出器120を用いて、入って来るノイズの位相を測定し、この入って来るノイズの検出した位相に対して固定した位相を有する励起電圧を印加するように、電圧ドライバ110に命令することができる。
【0064】
ノイズの位相に対する励起電圧の位相の選択は、一般に、対応する位相差が実質的に一定時間である限り、任意であってよい。しかしながら、ある種のノイズでは、一部の位相が他の位相よりも好ましい場合がある。例えば、ノイズが性質上周期的であるがインパルス状でない場合、ノイズ周波数に近い励起周波数を意図的に選択し、望まれる励起信号のピーク近くでインパルスが発生しないようにこれらの位相を合わせる(align)ことが好ましい場合もある。すると、ピーク検出器の出力は、その振幅が時間と共に変化しても、ほぼ完全にノイズに対して不感応になることができる。
【0065】
図8は、ノイズが性質上周期的でしかもインパルス状であり、ノイズの影響を最小限に抑えるように励起電圧の周波数および位相差を選択したときにおいて、ピーク検出回路320について入力電圧Vinおよび対応する出力電圧Voutを表すグラフ800を示す。グラフ800に示すように、信号Vinの負の極値付近でのみ、結果的に得られる信号Vinに影響を及ぼすノイズが観察され、ピーク検出回路320は正の極値に応答する。したがって、測定はこのノイズに対して不感応になることができる。
【0066】
したがって、励起信号がノイズに位相ロックされると、直接帯域内である(即ち、周波数が非常に近い)ノイズであっても、一定のオフセットしか付与しないことができる。一定のオフセットは、通常のやり方で較正することができる。各センサ・フレーム中において同一に発生するような周期性を有するノイズ発生源であればいずれも、そのノイズの他の特性には関係なく、これらの技法によって除去することができる。
【0067】
ノイズに対する励起信号の位相は任意であってよいので、励起信号とノイズ信号との間の位相差が一定時間のままである限り、測定毎に位相関係を再確立する必要はない。例えば、LCDの1つのフレームにわたってノイズが正確に周期的である場合、LCDの垂直同期(VSYNC、フレーム同期)信号を用いて、LCDのフレームに対して同じ位相でタッチ・センサの測定シーケンスを常に開始するには十分である。タッチ・センサのフレーム中に、例えば、ライン同期ノイズに対して異なる位相で、異なる測定が行われる場合もあるが、ライン同期ノイズと励起信号との間の位相差が各センサ・フレームの間同一である限り、それでもなおノイズを除去することができる。
【0068】
このような場合、タッチ・センサは、LCDのフレーム・レートに等しいフレーム・レート、またはその何らかの整数約数で動作することができる。LCDよりも高いフレーム・レートでタッチ・センサを動作させることが必要な場合、多数の基準値を維持すればよい(その一定オフセットを減算する目的のため)。
【0069】
図9は、LCD(または、更に一般的には、ディスプレイ・デバイス)のフレーム・レートの2倍に等しいセンサのフレーム・レートを表す
図900を示す。例えば、LCDは60Hzで動作することができ、タッチ・センサは120Hzで動作することができる。すると、タッチ・センサ・フレームの半分(即ち、フレーム0a、1a、2a等)は、LCDフレーム(即ち、LCDフレーム0、1、2等)と同時に始まる。つまり、これらのセンサ・フレームは、ノイズが一定のオフセットのみを生ずるように、LCDに位相ロックされている。センサ・フレームの他の半分(即ち、0b、1b、2b等)は、LCDフレームの半分から開始することができ、空き空間を埋めることができる。これらのセンサ・フレームも位相ロックされ、ノイズはこの場合も一定のオフセットとして現れるだけである。最初の組のセンサ・フレーム(即ち、フレーム0a、1a、2a等)に用いられた一定のオフセットは、しかしながら、2番目の組のセンサ・フレーム(即ち、フレーム0b、1b、2b等)に用いられた一定のオフセットとは異なる場合があり、したがって、システム100は、センサ・フレーム毎に正しい一定のオフセットが確実に減算されるように、各組のセンサ・フレームに1つずつ、2つの別個の基準を維持する(即ち、それぞれ、オフセット(a)を組み込む1つの基準、およびオフセット(b)を組み込む1つの基準)。この技法は、LCDフレーム・レートのいずれの整数倍数に等しいセンサ・フレーム・レートにも、その整数倍数に等しい個数の異なる一定のオフセット(したがって、対応する個数の異なる規準線)を維持することによって、拡張することができる。ある区間にわたって周期的である信号はその区間のいずれの整数倍数にわたっても周期的であることを観察することによって、この技法は、LCDフレーム・レートのあらゆる合理的な倍数にも拡張することができる。
【0070】
具体的には、システムのセンサ・フレーム・レートがLCDフレーム・レートの合理的な倍数に設定されると、センサ・フレーム・レートのLCDフレーム・レートに対する比率は、x:yで表すことができる。ここで、xおよびyは整数である。xおよびyには共通する整数約数がないと仮定すると、システムが格納する基準の数は、整数xに等しくなる。即ち、システムがマトリクスにおける所与の点について格納する基準値の数は、整数xに等しい。例えば、センサ・フレーム・レートのLCDフレーム・レート(または、更に一般的には、ディスプレイ・デバイスのフレーム・レート)に対する比率が1:4である場合、マトリクスにおける所与の点毎に、1つの基準値だけがタッチ・センサによって格納され、各センサ・フレームの間その点における接触を判定するために用いられる。対照的に、センサ・フレーム・レートのLCDフレーム・レートに対する比率が3:7である場合、マトリクスにおける所与の点毎に3つの基準がタッチ・センサによって格納され、それぞれのセンサ・フレームの間にその点における接触を判定するために、多数の異なる(例えば、連続する)センサ・フレームの間に用いられる。
【0071】
注記すべきは、システムによって格納される基準の数は、xおよびyが共通の整数約数を有する場合であっても、整数に等しいとよいということである。しかしながら、このようなシステムは、基準の一部が重複するので、一般に最適ではない。例えば、センサ・フレーム・レートのLCDフレーム・レートに対する比率が2:8である場合、マトリクスにおける所与の点毎に2つの基準値がタッチ・センサによって格納され、タッチ・センサは2つの基準値を用いて正しく動作することができる。しかしながら、2つの基準値は互いに全く同じであり、したがって、これらを別個に格納しアクセスすることは、実際のシステムでは不要であろう。
【0072】
実施態様の中には、前述のように、タッチ・センサのマトリクスにおける点毎に基準値を決定し格納する場合もある。他の実施態様では、前述のように、マトリクスにおける点毎ではなく、マトリクスにおける点の部分集合毎に、基準値を決定し格納する場合もある。
【0073】
以上で説明した主題および動作の実施態様の一部は、ディジタル電子回路、あるいは本明細書において開示した構造およびそれらの構造的同等物を含むコンピュータ・ソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアで、あるいはそれらの1つ以上の組み合わせで実現することができる。本明細書において記載した主題の実施態様は、1つ以上のコンピュータ・プログラムとして実現することができる。即ち、データ処理装置によって実行するために、またはその動作を制御するために、コンピュータ記憶媒体上にエンコードされたコンピュータ・プログラム命令の1つ以上のモジュールとして実現することができる。あるいはまたは加えて、プログラム命令は、人工的に生成した伝搬信号、例えば、機械生成電気信号、光信号、または電磁信号上にエンコードすることができる。この信号は、情報をエンコードし、適した受信装置に送信してデータ処理装置によって実行するために生成される。データ処理装置は、センサを含むことができ、センサの一部であってもよく、センサを備えたシステムの一部であってもよく、システムおよび/またはセンサの内部に統合してもよく、受信機の一部、送信機の一部、コンポーネントの一部、および/またはセンサまたは受信機および/または送信機に付随するロジックの一部であってもよく、あるいはこれらのいずれの組み合わせであってもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能記憶デバイス、コンピュータ読み取り可能記憶基板、ランダムまたはシリアル・アクセス・メモリ・アレイまたはデバイス、あるいはこれらの1つ以上の組み合わせとすることができ、あるいはその中に含むことができる。更に、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成した伝搬信号にエンコードされているコンピュータ・プログラム命令の発信元または宛先になることができる。また、コンピュータ記憶媒体は、1つ以上の別個の物理的コンポーネントまたは媒体(例えば、多数のCD、ディスク、または他の記憶デバイス)とすることができ、またはその中に含むことができる。
【0074】
本明細書において記載した動作は、1つ以上のコンピュータ読み取り可能記憶デバイス上に格納されていれるデータ、または他のソースから受信したデータに対してデータ処理装置が実行する動作として実現することができる。
【0075】
「データ処理装置」として、種々の装置、デバイス、およびデータ処理機械を用いてもよく、一例として、プログラマブル・プロセッサ、コンピュータ、チップ上のシステム、または以上の内多数のもの、あるいは組み合わせが含まれる。この装置は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)またはASIC(特定用途集積回路)を含むことができる。また、この装置は、ハードウェアに加えて、対象のコンピュータ・プログラムに合わせて実行環境を作成するコードも含むことができ、例えば、プロセッサ・ファームウェア、プロトコル・スタック、データベース管理システム、オペレーティング・システム、プラットフォーム相互実行時間環境(cross-platform runtime environment)、仮想機械、あるいはこれらの1つ以上の組み合わせを構成するコードを含むことができる。この装置および実行環境は、ウェブ・サービス、分散型計算および格子計算インフラストラクチャのような、種々の異なる計算モデル・インフラストラクチャを実現することができる。
【0076】
コンピュータ・プログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェア・アプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られている)は、いずれの形式のプログラミング言語でも書くことができ、コンパイル型言語またはインタプリタ型言語、宣言型言語または手続き型言語を含み、スタンド・アロン・プログラムとしてまたはモジュールとして、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、または計算環境における使用に適したその他のユニットを含む、あらゆる形態で展開することができる。コンピュータ・プログラムは、ファイル・システムにおけるファイルに対応するとよいが、そうである必要はない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語文書に格納される1つ以上のスクリプト)、対象のプログラム専用の1つのファイル、あるいは多数の調整したファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータ・プログラムは、1つのコンピュータまたは多数のコンピュータ上で実行するように展開することができる。多数のコンピュータは、1つの場所に配置されるか、多数の場所に跨がって分散され、通信ネットワークによって相互接続される。
【0077】
本明細書において記載したプロセスおよび論理フローは、1つ以上のプログラマブル・プロセッサによって実行することができる。1つ以上のプログラマブル・プロセッサは、入力データに対して動作し出力を生成することによって、1つ以上のコンピュータ・プログラムを実行して動作(action)を行う。また、これらのプロセスおよび論理フローは、特殊目的論理回路、例えば、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)またはASIC(特定用途集積回路)によって実行することもでき、装置は 特殊目的論理回路として実現することができる。
【0078】
コンピュータ・プログラムの実行に適したプロセッサは、一例として、汎用および特殊目的マイクロプロセッサ、ならびにあらゆる種類のディジタル・コンピュータのいずれか1つ以上のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは命令およびデータをリード・オンリ・メモリまたはランダム・アクセス・メモリ、あるいは双方から受け取る。コンピュータの必須要素は、命令にしたがって動作を実行するプロセッサ、ならびに命令およびデータを格納する1つ以上のメモリ・デバイスである。一般に、コンピュータは、データを格納する1つ以上の大容量記憶デバイスも含むか、あるいはこれらからデータを受信するまたはこれらにデータを送信する、あるいは双方を行うように動作的に結合されている。大容量記憶デバイスは、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクである。しかしながら、コンピュータはこのようなデバイスを有する必要はない。更に、コンピュータは、他のデバイス、例えば、移動体電話機、パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、移動体オーディオまたはビデオ・プレーヤ、ゲーム・コンソール、あるいは携帯用記憶デバイス(例えば、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)フラッシュ・ドライブ)、およびその他多数のデバイスに埋め込むこともできる。コンピュータ・プログラム命令およびデータを格納するのに適したデバイスは、一例として、半導体メモリ・デバイス、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュ・メモリ・デバイス、磁気ディスク、例えば、内部ハード・ディスクまたはリムーバブル・ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD−ROMおよびDVD−ROMディスクを含む、あらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体、およびメモリ・デバイスを含む。プロセッサおよびメモリは、特殊目的論理回路によって補足すること、またはこの中に組み込むことができる。
【0079】
ユーザとの対話処理に備えるために、本明細書において記載した主題の実施態様は、情報をユーザに表示するディスプレイ・デバイス、例えば、CRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタ、ならびにキーボードおよびポインティング・デバイス、例えば、マウスまたはトラックボールを有するコンピュータ上で実現することができる。マウスまたはトラックボールによって、ユーザは入力をコンピュータに供給することができる。他の種類のデバイスも、ユーザとの対話処理に備えるために用いることができる。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、あらゆる形態の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバックとすることができる。そしてユーザからの入力は、音響、音声、または触覚入力を含む、いずれの形態でも受け取ることができる。例えば、人の指がタッチ・スクリーンと相互作用を行い、ある量のスクリーン面積(real estate)に影響を及ぼすことができる。加えて、コンピュータは、ユーザが使用するデバイスに文書を送り、そしてこのデバイスから文書を受け取ることによって、例えば、ウェブ・ブラウザから受けた要求に応答してウェブ・ページをユーザのクライアント・デバイス上のウェブ・ブラウザに送ることによって、 ユーザと対話処理することができる。
【0080】
本明細書は多くの具体的な実施態様の詳細を含むが、これらはいずれの発明の範囲についても、または特許請求できることについても限定として解釈してはならず、逆に特定の発明の特定の実施態様に特定的な特徴の記述として解釈すべきである。本明細書において別個の実施態様のコンテキストで記載されたある種の特徴を、1つの実施態様に組み合わせて実現することもできる。逆に、1つの実施態様のコンテキストで記載された種々の特徴を、多数の実施態様に別々にまたはいずれかの適したサブコンビネーションで実現することもできる。更に、以上では、特徴はある種の組み合わせにおいて動作するように記載され、最初はそのように特許請求されるとしても、特許請求するコンビネーションからの1つ以上の特徴は、場合によっては、そのコンビネーションから削除することができ、特許請求したコンビネーションを、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形(variation)に宛てるのでもよい。
【0081】
同様に、図面において動作は特定の順序で示されているが、これは、望ましい結果を得るためには、このような動作を図示した特定の順序または連続順序(sequential order)で実行しなければならないと理解したり、または図示した全ての動作を実行しなければならないと理解してはならない。ある種の状況では、マルチタスキングおよび並列処理が有利なこともある。更に、以上に記載した実施態様における種々のシステム・コンポーネントの分離は、このような分離が全ての実施態様において必要であると理解してはならず、記載したプログラム・コンポーネントおよびシステムは、一般に、纏めて1つのソフトウェア生産物に統合すること、または多数のソフトウェア生産物にパッケージングすることができることは言うまでもない。
【0082】
以上のように、本主題の特定的な実施態様について記載した。他の実施態様も以下の請求項の範囲内に該当する。場合によっては、請求項において列挙される動作は、異なる順序で実行することもでき、それでもなお望ましい結果を得ることができる。加えて、添付図面に図示したプロセスは、望ましい結果を得るためには、必ずしも示された特定の順序、または連続順序を必要とするのではない。ある種の実施態様では、マルチタスキングおよび並列処理が有用なこともある。