(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源からの光を投光レンズによって読取対象に投射する投光系と、前記読取対象からの反射光を受光レンズによって撮像素子の受光面に結像させる受光系と、前記撮像素子からの出力信号を受けて前記読取対象の情報を読み取る信号処理系とを備えた光学情報読み取り装置であって、
前記投光系は、前記受光レンズの光軸に略直交する投光平面において所定方向に長く、この長手方向に略直交する幅方向には短い、帯状の範囲に光を投射するように構成され、 前記投光レンズは、
前記光源から光が入射する入射面が、前記長手方向については円弧状の凹形状をなすとともに、前記幅方向については円弧状の凸形状をなし、かつその曲率が長手方向において一定のトロイダル面とされる一方、
前記入射面に入射した光が前記投光平面に向かって出射する前記投光レンズの出射面は、前記投光平面の長手方向について所定の光量分布が得られるような自由曲面とされるとともに、前記幅方向については直線状とされ、
前記投光レンズは、前記幅方向に見て、その入射面の円弧の中心が前記光源の発光部に含まれるように配置されていることを特徴とする光学情報読み取り装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら前記のような従来例のバーコードリーダは、いずれも複数のLEDを並べて設けており、特に前者の従来例では6個ものLEDを並べていることから、コストアップや消費電力の増大を招くという難がある。しかも、LEDの数が多いほど、投光系が大きくならざるを得ず、このことがバーコードリーダの小型化の障害となっている。
【0008】
この点について後者の従来例では、個々のLEDが発生する光をLEDキャップにより拡散させるとともに、LED自体を電気回路基板に対し斜めにして実装することにより、LEDの数を減らしているものの、それでも4個のLEDが必要である。また、リードタイプのLEDを電気回路基板に対し斜めにして実装しなくてはならず、工数の増大を招いている。
【0009】
かかる諸点に鑑みて本発明の目的は、バーコードリーダのような光学情報読み取り装置の、特に投光系の構成に工夫を凝らし、コストアップや消費電力の増大を抑制しながら、小型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために本発明は、光源からの光を投光レンズによってバーコード等の読取対象に投射する投光系と、前記読取対象からの反射光を受光レンズによって撮像素子の受光面に結像させる受光系と、前記撮像素子からの出力信号を受けて前記読取対象の情報を読み取る信号処理系とを備えた光学情報読み取り装置を対象として、前記投光系は、前記受光レンズの光軸に略直交する投光平面において所定方向に長く、この長手方向に略直交する幅方向には短い、帯状の範囲に光を投射するように構成する。
【0011】
そして、前記投光レンズを、前記光源から光が入射する入射面が前記長手方向については
円弧状の凹形状をなすとともに、前記幅方向については
円弧状の凸形状をな
し、かつその曲率が長手方向において一定のトロイダル面とする。一方、この入射面に入射した光が前記投光平面に向かって出射する前記投光レンズの出射面は、前記投光平面の長手方向について所定の光量分布が得られるような自由曲面
とするとともに、前記幅方向については直線状とする。そして、この投光レンズを、前記幅方向に見て、その入射面の円弧の中心が前記光源の発光部に含まれるように配置する。
【0012】
なお、前記投光レンズの「入射面」というのは、光源から入射した光がレンズの側面などで反射することなく、出射面から出射する範囲を意味
する。
【0013】
かかる構成を備えた光学情報読み取り装置では、まず、投光系において例えばLEDなどの光源から発せられる光が、投光レンズを介してバーコード等の読取対象に向かって帯状に投射される。この際、投光レンズは、読取対象があると想定される投光平面の長手方向に拡がるように光を投射するので、その分、長手方向に並べる光源(LEDなど)の数を減らすことができる。これによりコストアップや消費電力の増大を抑制でき、投光系の小型化も図られる。
【0014】
また、前記投光レンズの入射面は、幅方向には
円弧状の凸形状をなし、光源から投光レンズに入射した光を幅方向には集光する機能を有するので、投光平面における面積当たりの光量を確保し易い。しかも、入射面が長手方向については
円弧状の凹形状をなし
、この円弧の中心が光源の発光部に含まれるように配置されているので、前記のように幅方向には円弧状の凸形状とされた入射面の焦点を光源の発光部に合致させることができ、この光源からの光を効率良く利用することができる。
【0015】
一方で投光レンズの出射面は自由曲面によって構成され、前記のように入射面に入射した光を長手方向に適宜、分配することができる。例えば、出射面の少なくとも一部を長手方向に凸形状とし、他の少なくとも一部を長手方向に凹形状とすることで、この出射面から投光平面に投射する光の長手方向の光量分布を適宜、設定することができる。
【0016】
言い換えると請求項1の発明によれば、投光レンズの入射面の形状によって、光源からの光を帯状の投射光の幅方向には効率良く集光しつつ、長手方向には出射面の自由曲面によって狙いとする光量分布を実現できる。こうして入射面と出射面とに機能を分けたことで、その各面の形状が徒に複雑にならず、設計の容易化が図られる
。
【0018】
ここで、投光平面の長手方向における光量分布として好ましいのは、その両端側において中間部よりも光量が大きくなることである。これは、一般的に受光レンズを通過した光の分布特性として、受光レンズの光軸付近で光量が大きくなり、光軸から離れるに連れて光量が小さくなるからであり、このような受光系の特性を減殺し、撮像素子の受光面においてフラットな光量分布とするためである。
【0019】
そのために前記光源および投光レンズを前記長手方向に並べて2つ配設し、それぞれの投光レンズの出射面には、他方の投光レンズから遠くなる外側に長手方向に凸形状の部分を形成する一方、他方の投光レンズに近くなる内側には長手方向に凹形状の部分を形成する。こうすれば、2つの投光レンズからそれぞれ投光平面に投射される光の量を、その投光平面の長手方向における一側で多くなり、反対側に向かって徐々に少なくなるように設定でき、これら2つの投射光を重ね合わせて前記の好ましい光量分布が得られる。
【0020】
また、前記投光系には、投光レンズの出射面側を覆うように窓部材を配設するとともに、この窓部材と投光レンズとの間に、出射される光の一部を遮る遮光部材を配設してもよい。この遮光部材によって投射光の一部を遮ることによって、投光平面の長手方向における光量分布を変化させることができるので、例えば光源として用いる部品の個体ばらつきなどによる光量分布のばらつきを補償することができる。
【0021】
さらに、前記光源としては表面実装タイプのLEDを用い、このLEDを配設する投光系の電気回路基板は、前記受光レンズの光軸に略直交するように配置するのが好ましい。こうすると、受光レンズの光軸の方向(以下、光学情報読み取り装置の前後方向と呼ぶこともある)について投光系の寸法を小さくすることができ、装置の小型化に有利になる。
【0022】
一方で光学情報読み取り装置の受光系には、受光レンズを通過した反射光の光路を屈折させて前記撮像素子に導くように、ミラーやプリズムなどの光学素子を配設してもよい。こうすれば、投光系だけでなく受光系についても前後方向の寸法を小さくすることが可能になって、装置の小型化に有利になる。
【0023】
また、この場合には、前記撮像素子も表面実装タイプのものとし、この撮像素子を配設する信号処理系の電気回路基板は、前記投光系の電気回路基板と交差するように配置するのが好ましい。こうして2枚の基板を交差させて配設すれば、1枚の大きな基板を用いるのに比べて、搭載スペースを前後または上下いずれかの方向について小さくすることが可能になる。
【0024】
また、前記受光系においてバーコードからの反射光を絞る絞り部は、前記受光レンズの手前、即ち受光レンズへの光路の上流側に配設するのが好ましい。こうすると、受光レンズへの光の入射角度が大きくなり易く、視野角を大きくする上で有利になるとともに、受光レンズからの光の出射角度は小さくし易いので、撮像素子の受光面を小型化できるからである。しかも、受光レンズと撮像素子との間に光学フィルタを配設する場合には、このフィルタへの光の入射角度が小さくなり易く、カットする光の波長を安定的に設定し易いというメリットもある。
【0025】
さらに、装置の小型化を図る上では、前記受光レンズとして倍率の高いものを用い、受光レンズから撮像素子の受光面までの距離を短くすることが好ましいが、こうすると焦点深度が浅くなってしまい、受光レンズへの位置決め精度の要求が高くなる。そこで、受光レンズを光軸の方向に摺動可能に保持する保持部材を設け、この保持部材を介して受光レンズを位置決めする構成とするのが好ましい。
【0026】
加えて、光学情報読み取り装置の信号処理系としては、前記撮像素子からのアナログの出力信号を入力して、内蔵するAD変換部によってデジタル化するマイクロプロセッサを備え、こうしてデジタル化された信号をソフトウェア処理によってデコードするように構成してもよい。こうすれば、電気回路基板上の部品として、マイクロプロセッサとは別にADコンバータを設ける必要がないので、基板を小さくすることができ、装置の小型化に有利になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る光学情報読み取り装置は、光源からの光を投光レンズによってバーコード等の読取対象に帯状に投射するようにしたので、LEDなどの光源の数を従来よりも減らし、コストアップや消費電力の増大を抑制できるとともに、投光系の小型化によって装置の小型化が図られる。投光レンズの入射面はトロイダル状として、帯状の投射光の幅方向には好適に集光しながら、投射光の長手方向については、出射面の自由曲面によって好適に光量を分配できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るバーコードリーダ1(光学情報読み取り装置)は、バーコード情報を読み取るためのシステムに組み込まれるものである。なお、以下に説明する実施の形態はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定することを意図しない。
【0030】
図1、2に示すようにバーコードリーダ1のケース2は、一例として樹脂の成型品であるロワケース20とアッパケース21とを組み付けてなる。各図に表れているように、ケース2は前後および上下には短く、左右に長い略直方体状とされていて、
図1に表れているように、ケース2の前面の下半部には、図外の一次元バーコード(読取対象)と対向するように窓部材22が配設されている。
【0031】
この窓部材22は透明な帯状の樹脂板で、波長の短い光をカットする光学的なフィルタとして機能する。窓部材22の長手方向の中央、約1/3くらいの範囲は、バーコードからの反射光Lr(
図3、5など参照)が通過する受光窓22aとされ、その左右両側はそれぞれ、バーコードへの投射光Lfが通過する投光窓22bとされている。また、ケース2の上面には押しボタンスイッチ24や表示灯25が配設されている。
【0032】
図2にはバーコードリーダ1の上下を反対向きにして示すが、前記窓部材22は、遮光部材を兼ねた両面テープ23によって、ケース2の前面に貼り付けられている。この両面テープ23の遮光機能については後述する。なお、バーコードリーダ1の内部の構造を説明する都合上、以下では
図2のように上下を反対向きにして表すことが多いので、この
図2における左側を単に左側と呼び、同じく右側を単に右側と呼ぶ。
【0033】
図2に表れているように、ケース2の右側後方の角部における上寄りの部分は斜めに切り欠かれていて、ここに形成された傾斜面2aを貫通するようにケーブル6が取り付けられている。このケーブル6は、例えばRS232CやUSBなどの通信規格に準拠し、システムのホスト機器との間で双方向に通信可能であるとともに、電力供給も可能なものである。
【0034】
図3および
図4には、受光レンズ41の光軸Xを含む横断面および縦断面でそれぞれバーコードリーダ1を切断し、その内部構造を示している。これらの図に表れているようにケース2の下半部(
図3、4においては上側に位置している)には、投光系3と、受光レンズ41など受光系4の要部とが配設され、一方、ケース2の上半部には
図4にのみ示すが、ラインセンサ40(撮像素子)を含む受光系4の残部や信号処理系5の電気回路のメイン基板50などが配設されている。
【0035】
−投光系−
図5にも示すように投光系3は、例えばLED30(光源)からの光を投光レンズ31,32によって一次元のバーコード(図示せず)に投射するものであり、このバーコードの位置を想定した仮想の投光平面S(
図3を参照)において左右方向に長く、上下に幅の狭い帯状の光Lfを投射するようになっている。投光平面Sは、受光レンズ41から光軸Xの方向に所定距離だけ離れていて、当該光軸Xに略直交する仮想の平面である。
【0036】
バーコードは、例えば印刷やダイレクトマーキングなどによって対象物に表示された白黒の縞模様からなる。この縞模様の並ぶバーコードの長手方向を含むように、前記投射光Lfの投射される範囲は左右方向に所定の長さ(例えば100mmくらい)以上とされ、上下方向には10mmくらいの帯状となっている。そして、このように広い範囲に投射光Lfを拡げるために、以下に説明するように投光レンズ31,32は、左右方向に長い異形のものとされている。
【0037】
本実施形態では受光系4の左右両側に1つずつ、LED30および投光レンズ31,32が配設されており、LED30は表面実装タイプのもので、投光系の電気回路の基板33(
図5には仮想線で示す)に実装されている。この基板33は、受光レンズ41の光軸Xの方向(以下、バーコードリーダ1の前後方向と呼ぶこともある)と略直交するように配置されており、このことで投光系3の寸法が前後方向に小さくなっている。
【0038】
それらのLED30からの光が入射する投光レンズ31,32の入射面31a,32aは、LED30を取り囲むトロイダル面とされている。すなわち、
図6には上下方向に見て示すように、投光レンズ31,32の入射面31a,32aは、左右方向についてはLED30を取り囲む円弧状(凹形状)をなすとともに、
図7には左右方向に見て示すように入射面31a,32aは、上下方向については凸形状をなす。
【0039】
図7に表れているように投光レンズ31,32の出射面31b,32bは上下方向には直線状に形成されているので、前記入射面31a,32aの凸形状によって投光レンズ31,32は、LED30の発光部30aに焦点を結ぶ集光レンズとして機能する。このため、発光部30aから上下に拡がりつつ、投光レンズ31,32の入射面31a,32aに入射した光は、幅10mmくらいの平行光線となって投光平面Sに投射される。
【0040】
そして、それらの入射面31a,32aが、
図6を参照して前記したように左右方向には円弧状をなし、その円弧の中心がLED30の発光部30aに含まれるように配置されている。このため、上下方向に凸形状をなす入射面31a,32aの前記集光レンズとしての焦点を、LED30の発光部30aに正確に合致させることができ、ここから発せられる光をより効率良く投光平面Sに向かって投射することができる。
【0041】
具体的に入射面31a,32aは、例えば以下の式(1)によって表される曲線を、LED30の発光部30aを通過する上下方向の軸周りに所定の半径で回転させたものとすればよい。なお、式(1)は、
図7に符号「O」として示す光軸Xと入射面31a,32aとの交点を原点とし、この光軸X方向の座標をxとし、上下のZ軸方向の座標をzとして表している。また、i=1〜n(nは整数)であり、α
i、c、kはいずれも適宜、設定すればよい。
【0043】
一方、投光レンズ31,32の出射面31b,32bは、左右方向については自由曲面とされ、
図6に表れているように左右方向に適宜、光を分配させて、投光平面Sにおいて望ましい光量分布を実現する。以下、
図6を参照して投光レンズ31について説明すると、各投光レンズ31(32)の出射面31b(32b)には、他方の投光レンズ32(31)から遠くなる外側に凸形状の部分が形成される一方、他方の投光レンズ32(31)に近くなる内側には凹形状の部分が形成されている。
【0044】
具体的に出射面31bは、例えば以下の式(2)によって表される自由曲面とすればよい。なお、式(2)は、投光レンズ31について
図6に示すように、出射面31bの内側寄りで最も凹んだ部位を原点「O」とし、ここから外側へ向かって左右のY軸方向の座標をyとするとともに、前記式(1)と同じく光軸X方向の座標をxとして表している。また、i=1〜n(nは整数)であり、α
iは適宜、設定すればよい。
【0046】
このような出射面31b,32bの形状により、投光レンズ31(32)から投光平面Sに投射される光Lfは、出射面31b(32b)の外側の領域においては集光される一方、出射面31b(32b)の内側の領域では拡散されるようになる。この結果、投光レンズ31,32のそれぞれから投射される光Lfの光量分布は、
図8にそれぞれ破線および一点鎖線のグラフで示すように投光平面Sの左右いずれか一側で多くなり、ここから反対側に向かって徐々に少なくなってゆく。
【0047】
そして、投光平面Sにおいては前記2つの投射光Lfが重なることによって、
図8には実線のグラフで示すように、投光平面Sの左右両端側において中間部よりも光量の大きな好ましい分布となる。このような光量分布が好ましい理由は、以下の受光系4の説明において
図10を参照して説明する。
【0048】
なお、本実施形態の投光系3においては、前述したように窓部材22をケース2の前面に貼り付ける両面テープ23が、投光レンズ31,32と窓部材22(窓部)との間に設けられた遮光部材として機能する。すなわち、両面テープ23には、受光窓22aおよび投光窓22bに対応する開口部23a,23bが形成されており、投光窓22bに対応する開口部23bは、左右両側から中央寄りに向かって徐々に上下の開口幅が小さくなっている。
【0049】
そして、そのように開口幅の小さくなる開口部23bにおいて投射光Lfの一部が遮られ、投光平面Sにおける光量分布が変化するようになっている。よって、開口部23bの形状を変更することで、光量分布の微妙な調整が可能になり、例えばLED30の個体ばらつきなどによって光量分布にばらつきがあっても、投光レンズ31,32の出射面31b,32bの形状を変更することなく、比較的容易に光量分布のばらつきを補償することができる。
【0050】
−受光系−
前記
図3〜6の他に
図9にも示すように、本実施形態のバーコードリーダ1の受光系4は、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子を一次元に配列したラインセンサ40を備えており、バーコードからの反射光Lrを受光レンズ41によって集光して、ラインセンサ40の受光面40aにバーコードの像を結像させる。こうして受光面40aに結像したバーコードの像の明暗に対応して、ラインセンサ40から電気信号が出力される。
【0051】
このように受光レンズ41を通過する光の分布は一般的に、その光軸X付近で光量が大きくなり、光軸Xから離れるに連れて光量が小さくなるという特性がある(
図10に破線のグラフで示す)。そこで、このような受光量の特性を減殺し、ラインセンサ40の受光面40aにおいてフラットな光量分布を実現するために、本実施形態では上述したように、投光平面Sにおける投射光Lfの光量分布を、左右両端側において中間部よりも光量が大きくなるようにしている(
図10に実線のグラフで示す)。
【0052】
すなわち、
図10に実線のグラフで示すような望ましい光量分布と、同じく破線のグラフで示すような受光量の特性とが合わさることで、同図に仮想線のグラフで示すように、ラインセンサ40によって受光される反射光Lrの光量の分布は、バーコードの長手方向全体に均一度の高いフラットなものとなるのである。これにより、バーコード情報の読み取り精度が向上する。
【0053】
また、本実施形態では、受光レンズ41の後方(光路の下流側)にミラー42が配設されていて、受光レンズ41を通過した光が反射し、その光路が上方(
図4、8などの下方)に向かって約90度、屈折するようになっている。このように反射された光を受けるラインセンサ40は表面実装タイプのものとされ、その受光面40aが下方(
図4、8などの上方)を向くようにして、メイン基板50に実装されている。
【0054】
そして、前記ラインセンサ40とミラー42との間に、IRカットフィルタ43が配設されている。IRカットフィルタ43は主に赤外光をカットする光学的なフィルタであり、前述した窓部材22と共働して、反射光Lrから不要な波長の光(ノイズ)を除去することができる。これによりバーコード情報の読み取り精度が向上する。
【0055】
一方、受光レンズ41の手前(光路の上流側)にはバーコードからの反射光Lrを絞る絞り部44aが設けられている。本実施形態では、
図3、4に表れているように絞り部44aを、受光レンズ41の保持部材(レンズホルダ44)に形成しているが、このように受光レンズ41の手前に絞り部44aを設けることで、
図6に表れているように受光レンズ41への反射光Lrの入射角度を大きくし易いというメリットがある。
【0056】
すなわち、
図11(a)に示すように、仮に受光レンズ41の後方に絞り部44aを設けた場合は、
図11(b)に示すように受光レンズ41の手前に設けた場合と比較して、反射光Lrの入射角度θ1が小さくなり易く、反対に出射角度θ2は大きくなり易い。このため、広角の視野を実現しようとすれば、受光系4を大型化せざるを得ない。また、受光面40aも大きくなってしまい、ラインセンサ40の大型化を招くおそれがある。
【0057】
これに対し本実施形態のように絞り部44aを受光レンズ41の手前に設けた場合は、
図11(b)に示すように反射光Lrの入射角度θ1が大きくなり易いので、広角の視野を実現し易い。一方で受光レンズ41からの光の出射角度θ2は小さくなり易いので、ラインセンサ40までの距離が大きくなっても、その受光面40aはあまり大きくしなくてもよく、ラインセンサ40を小型化し易い。しかも、受光レンズ41からIRカットフィルタ43への光の入射角度が小さくなることによって、カットする光の波長を正確に設定し易いというメリットもある。
【0058】
その上さらに本実施形態では、前記の絞り部44aが形成されているレンズホルダ44によって、受光レンズ41を前後方向(光軸Xの方向)に位置調整可能に保持している。すなわち、ロワケース20において窓部材22(受光窓22a)と受光レンズ41との間には、概略矩形状の防塵空間が設けられており、この防塵空間を区画する左右の壁面にレンズホルダ44の左右の側面がそれぞれ摺接している。
【0059】
よって、レンズホルダ44をロワケース20に組み込んだ後に前後に摺動させることで、受光レンズ41の微妙な位置決めが可能になる。こうして位置決めした後にレンズホルダ44を、接着剤などによってロワケース20に固定すればよい。このように受光レンズ41の微妙な位置決めを行うことによって、受光系4の小型化を図るために倍率の高い受光レンズ41を採用した場合に、その焦点深度が浅くなり、高い位置決め精度が要求されることにも対応可能となる。
【0060】
−信号処理系−
バーコードリーダ1は、前記の如く受光面40aに結像したバーコードの像(縞模様の明暗)に応じて、ラインセンサ40から出力される電気信号を受け、バーコード情報を読み取る信号処理系5を備えている。一例を
図12に模式的に示すように信号処理系5は、増幅回路51、AD変換部52、制御部53、メモリ54、および通信インタフェース55を備えており、ラインセンサ40からの出力信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理する。
【0061】
本実施形態では、メイン基板50上に実装されているマイクロプロセッサPによって、前記のAD変換部52および制御部53が構成されており、ラインセンサ40からの出力信号(アナログ信号)は、増幅回路51によって増幅された後にマイクロプロセッサPに入力されて、内蔵のAD変換部52によってデジタル信号に変換される。そして、制御部53においてソフトウェア処理によって2値化やデコード処理が行われる。
【0062】
制御部53は、主にCPU、システムバス、入出力インタフェース等からなり、バーコードリーダ1全体を制御する機能を有する。すなわち、制御部53は、メモリ54に格納されている所定のプログラムを実行することにより、LED30の駆動回路に制御指令を送り、所定のタイミングでLED30を発光させるとともに、これに同期して増幅回路51にラインセンサ40の出力信号を受け入れ、前記のような処理を行う。
【0063】
また、本実施形態では制御部53は、マイクロプロセッサP内蔵のAD変換部52を複数チャンネル使用し、例えば2つのチャンネルを並行して動作させることにより、デジタル信号への変換速度を向上させている。一例として
図13には4チャンネルの場合について示すと、AD変換部52の各チャンネルに送る動作要求(矢印で示す)のタイミングをずらして、各チャンネルを並行動作させることにより、変換速度が4倍になる。
【0064】
なお、制御部53には、例えば押しボタンスイッチ24や表示灯25なども接続されており、動作中に表示灯25を点灯させるといった制御も行うことができる。また、制御部53は通信インタフェース55とケーブル6とを介して、バーコードリーダ1の上位システム、例えば図外のホスト機器などと双方向に通信可能に接続されている。
【0065】
そして、本実施形態では前記のような信号処理系5を構成するマイクロプロセッサPなどがメイン基板50に搭載されており、投光系3の基板33には前述したようにLED30およびその駆動回路の部品が搭載されている。この投光系3の基板33とメイン基板50とはケース2内において略直交するように配置されて、互いに接続されており、プリント配線同士が渡りハンダ(コネクタでもよい)で接続されている。
【0066】
こうして2枚の基板33,50を互いに交差させて配設することで、1枚の大きな基板を用いるのに比べて、ケース2内に確保すべき搭載スペースを前後または上下いずれかの方向について小さくすることができる。本実施形態では、投光系3の基板33を縦向きに搭載することによって、ケース2の前後方向への小型化が図られている。
【0067】
以上、説明したように本実施の形態に係るバーコードリーダ1においては、まず、投光系3においてLED30からの光を、投光レンズ31,32によって左右方向に拡げて、一次元のバーコードに帯状に投射するようにしている。このため、投光系3の基板33上に実装するLED30の数は2つで済み、コストアップや消費電力の増大を抑制できるとともに、投光系3の小型化にも有利になる。しかも、その基板33は縦向きに配置することによって、投光系3をバーコードリーダ1の前後方向に小型化できる。
【0068】
また、投光レンズ31,32の入射面31a,32aはトロイダル面として、その左右方向の円弧形状の中心がLED30の発光部30aに含まれるように配置している。このことで、上下方向には凸形状をなす入射面31a,32aの焦点をLED30の発光部30aに合わせて、このLED30からの光を効率良く利用し、バーコードに向かって投射することができる。
【0069】
一方、投光レンズ31,32の出射面31b,32bは、上下方向には直線状としつつ左右方向には凹凸のある自由曲面によって構成し、前記のように入射面31a,32aに入射した光を左右方向に適宜、分配することができる。そして、投光平面Sにおいて左右両端側で中間部よりも光量の大きな分布として、光軸付近で光量の大きくなる受光系4の特性を減殺し、ラインセンサ40の受光面40aにおいてフラットな光量分布を実現できる。
【0070】
言い換えると本実施の形態では、投光レンズ31,32の入射面31a,32aの形状によって、LED30からの光を上下方向に効率良く集光しながら、左右方向には出射面31b,32bの自由曲面によって適宜、光量を分配することができる。こうして入射面31a,32aと出射面31b,32bとに機能を振り分けることで、その各面の形状が徒に複雑にならず、設計の容易化も図られる。
【0071】
また、本実施の形態では、受光レンズ41として倍率の高いものを用いることで、ラインセンサ40までの距離を短くするとともに、受光レンズ41を通過した光をミラー42で反射させてラインセンサ40に導くようにして、受光系4についても前後方向に小型化している。しかも、受光レンズ41の手前に絞り部44aを設けているので、広い視野角を確保しながらラインセンサ40を小型化でき、このことも受光系4の小型化に有利になる。
【0072】
さらに、本実施の形態では、前記したようにLED30を実装する投光系3の基板33をメイン基板50とは別に設けるとともに、このメイン基板50上に小型化されたラインセンサ40と、AD変換部52やメモリ54を内蔵したマイクロプロセッサPとを実装することによって、メイン基板50をかなり小型化できる。そして、そのように小型化したメイン基板50を投光系3の基板33と略直交するように配置することで、必要な搭載スペースを前後方向にかなり小さくすることができる。
【0073】
つまり、本実施の形態のバーコードリーダ1は、投光系3、受光系4および信号処理系5それぞれの構成に工夫を凝らすとともに、それらを構成する部品の配置などにも工夫をして、一次元のバーコードを読み取る広角の視野を実現しながら、この視野内の光量分布を均一化してバーコードの高い読み取り性能を確保しつつ、バーコードリーダ1を特に前後方向について従来よりもかなり小さくすることができる。
【0074】
この結果として、
図1、2を参照して上述したようにバーコードリーダ1のケース2は左右に長い略直方体状となって、その前後方向の寸法と上下方向の寸法とが概ね同じになっている。このことで、バーコードリーダ1をシステムに組み込む際の設置の自由度が高くなる。
【0075】
−他の実施形態−
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば前記実施の形態においては光源として表面実装タイプのLED30を2つ用いており、それぞれの発する光を投光レンズ31,32によって投射するようにしているが、これに限らず、光源はリードタイプのLEDであってもよいし、光源や投光レンズ31,32は2つに限らず、例えば1つであってもよい。
【0077】
さらに、前記実施の形態においては投光窓22bや受光窓22aの形成された窓部材22を、両面テープ23によってケース2に貼り付けており、この両面テープ23を遮光部材として兼用しているが、これにも限定されず、例えば、両面テープ23とは別に遮光部材を配設してもよいし、遮光部材を配設しなくてもよい。
【0078】
また、前記実施の形態の受光系4においては、受光レンズ41からの光の光路を屈折させるミラー42を配設しているが、これに代えてプリズムを用いることもできる。また、受光レンズ41を保持するレンズホルダ44を設けているが、これは設けなくてもよいし、レンズホルダ44に絞り部44aを設ける必要もない。絞り部44aを受光レンズ41の手前ではなく、その後方に設けてもよい。
【0079】
また、前記実施の形態の信号処理系5においては、ラインセンサ40から出力されるアナログ信号をマイクロプロセッサPに内蔵のAD変換部52によってデジタル信号に変換しているが、これに限らず、AD変換部52をマイクロプロセッサPとは別の部品によって構成することもできる。
【0080】
さらにまた、前記実施の形態では、投光系3のLED30などを実装する基板33をメイン基板50とは別にして、2つの基板33,50を互いに略直交するように、即ち約90度の角度で交差するように配置しているが、これにも限定されず、2つの基板33,50は、例えば60度、75度など90度以外の角度で交差させてもよいし、交差させずに、前後または上下に並べて配置してもよい。或いは、投光系3の基板33をメイン基板50と一体にしてもよい。