特許第5968964号(P5968964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968964抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968964
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20160728BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20160728BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20160728BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20160728BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20160728BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20160728BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20160728BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20160728BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20160728BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160728BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20160728BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20160728BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20160728BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20160728BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B05D3/00 Z
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 303A
   A01N25/00 102
   A01N25/02
   A01N33/12 101
   A01P1/00
   A01P3/00
   C09D5/14
   C09D7/12
   C09D11/00
   C09D201/00
   B01J31/02 M
   B01J35/02 J
   C08J3/20 Z
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-179235(P2014-179235)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-52624(P2016-52624A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】513043178
【氏名又は名称】株式会社都市と生活社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】浦田 千晶
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−132735(JP,A)
【文献】 特開2001−139891(JP,A)
【文献】 特開平05−295127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
C09D 11/00−13/00
C08J 3/00−3/28;99/00
B01F 3/00−3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌及び/または抗ウイルス処理を施す抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法であって、
上記物品の表面に塗布される所定溶液よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記所定溶液よりも比重の小さい有機溶媒へ所定時間に亘って浸漬する浸漬工程と、
上記浸漬工程の後に、上記有機溶媒の一部を除去して上記所定溶液よりも比重の小さい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得る有機溶媒除去工程と、
上記有機溶媒除去工程によって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を上記所定溶液に含有させ、物品にコーティング処理するコーティング処理工程を有することを特徴とする抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項2】
上記有機溶媒除去工程は、上記有機溶媒の一部を除去して上記所定溶液よりも比重の小さいペースト状の抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得ることを特徴とする請求項1に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項3】
上記抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質は、光触媒活性を有する無機化合物の何れかまたは組合わせであることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項4】
上記所定時間は、1日間〜20日間であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項5】
上記有機溶媒除去工程は、濾材を用いて上記有機溶媒の一部を除去することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項6】
上記有機溶媒は、アルコール類の何れか又は上記アルコール類の何れかを含む混合物であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項7】
上記所定溶液が、塗料、インク又はニスの何れかであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項8】
上記コーティング処理工程が、物品の表面へ吹き付けて塗布することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項9】
上記コーティング処理工程が、物品の表面へ印刷により塗布することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項10】
抗菌及び/または抗ウイルス処理を施す抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法であって、
上記物品の原材料よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記物品の原材料よりも比重の小さい有機溶媒へ所定時間に亘って浸漬する浸漬工程と、
上記浸漬工程の後に、上記有機溶媒の一部を除去して上記物品の原材料よりも比重の小さい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得る有機溶媒除去工程と、
上記有機溶媒除去工程によって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記原材料に混ぜ込む混入工程とを有することを特徴とする抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【請求項11】
上記物品の原材料は、樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を物品へ表面処理する方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、環境衛生への関心の高まりにより、ウエットタオルなどの食品関連用品は勿論のこと、身の周りの日用品においても、抗菌作用を有する物質を物品の表面に配したものが市販されている。
【0003】
さらに、インフルエンザを始めとしたウイルス感染症の流行懸念は、マスコミにおいても大きく報道され、人々の関心も高まっている。近年、特定の無機化合物には光触媒活性があり、抗菌作用と併せて抗ウイルス作用を有している物質も発見されており、このような光触媒活性を有する抗菌及び/または抗ウイルス剤を例えば家電製品、衣類、文具等の表面に配したものも市販され注目を集めている。
【0004】
光触媒活性を有する無機化合物とは、紫外線の照射により分解対象である有機化合物に対して酸素分子の吸着または脱着を起こさせ、分解(酸化)を促進する機能を発揮する物質(光触媒)であり、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等が知られており、これらの物質は強い酸化還元作用および超親水作用を示し、これにより少なくとも菌の増殖を抑制する作用があり、さらにウイルスを不活性化する効果を示すものも発見されている。
【0005】
一方、光触媒が抗菌及び/または抗ウイルス剤として作用を発揮するためには、光触媒に紫外線や可視光線が照射される以外に、光触媒が分解対象である細菌やウイルスに接触する必要があり、より高い抗菌及び/または抗ウイルス作用を得るには光触媒と分解対象との接触率を向上させる必要がある。
【0006】
有機系抗菌剤においても、多くの抗菌剤が微生物に対して薬理的に作用するため、直接に微生物へ接触する、あるいは吸収されて始めて抗菌作用を示すとされている。
【0007】
即ち、有機系及び無機系に関わらず、多くの抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する化合物が、より効果的に抗菌及び/または抗ウイルス作用を示すためには、微生物やウイルスと接触しうる、例えば物品の表層に多く上記化合物が配置された状態とすることが望ましい。
【0008】
しかしながら、一般にこれらの抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する化合物は、比重が大きく、例えば、印刷用インキに粉末状の光触媒を混合し、紙材等の基材に印刷を行うと方法においては、印刷インキよりも光触媒の方が比重が大きいため、光触媒が印刷用インキ内で沈殿してしまい、基材表面に光触媒粒子を露出させることができず、期待した抗菌及び/または抗ウイルス作用が得られないという不具合があった。
【0009】
このような課題に対して、粉末状の光触媒をバインダーに混練してセラミックスや金属等の基材上に光触媒層を形成する方法においては、基材の軟化温度よりも低い材料からなるバインダー層を介して光触媒粒子を固定するようにし、特に光触媒層の表層部を構成する光触媒粒子をバインダー層に埋もれないようにすることで、実質的に光触媒粒子の表面が外部に露出した状態となり、光触媒と分解対象との接触率を向上させられることが知られている(特許文献1)。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、光触媒層を形成するために加熱処理を施す必要があるため、紙材や木材等のような耐熱性に乏しい基材には適用できないという不具合があると共に、バインダー層と光触媒層をそれぞれ形成する必要があり工程が煩雑であった。
【0011】
また、金属イオン又は金属化合物で構成された抗菌性金属成分を、ポリマー粒子に化学的に結合して担持させることにより、抗菌剤を均一且つ容易に分散させることができる抗菌性コーティング剤が知られている(特許文献2)。
【0012】
しかしながら、上記の特許文献2記載の発明は、均一に分散させることが出来るが、抗菌剤をコーティング剤表面に偏在させる効果はなかった。
【特許文献1】特許第3309591号公報
【特許文献2】公開特許第平10−287506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、このような従来の要請に基づくものであって、その目的とするところは、物品の表面に抗菌及び/または抗ウイルス作用を施す方法において、物品の材質に依らず表面処理が可能で、且つ簡便な操作で大きな抗菌及び/または抗ウイルス作用を付与することが出来る表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題達成のため、請求項1記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、抗菌及び/または抗ウイルス処理を施す抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法であって、上記物品の表面に塗布される所定溶液よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記所定溶液よりも比重の小さい有機溶媒へ所定時間に亘って浸漬する浸漬工程と、上記浸漬工程の後に、上記有機溶媒の一部を除去して上記所定溶液よりも比重の小さい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得る有機溶媒除去工程と、上記有機溶媒除去工程によって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を上記所定溶液に含有させ、物品にコーティング処理するコーティング処理工程を有することを特徴とする。
【0015】
本件発明の発明者は、鋭意研究の結果上記所定溶液よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記物品の表面に塗布される上記所定溶液よりも比重の小さい有機溶媒へ所定時間に亘って浸漬することにより、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質の比重が減少することの知見を得たものである。
【0016】
また、上記要領により、所定溶液よりも比重の小さいペースト状の抗菌及び/または抗ウイルス剤を調製することにより、上記抗菌及び/または抗ウイルス剤を所定溶液に含有させた際に、所定溶液中に沈殿せずに所定溶液の表面に出すことが出来る。
【0017】
抗菌とは、細菌の増殖を阻止する概念であり、抗菌性能は例えばJIS L 1902繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果、JIS
Z 2801抗菌加工製品‐抗菌性試験方法・抗菌効果によって評価方法が定められている。
【0018】
抗ウイルスとは、ウイルスの一部を不活性化させる概念である。抗ウイルス性能は例えばJIS L 1902繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果、JIS
Z 2801抗菌加工製品‐抗菌性試験方法・抗菌効果によって定められた評価方法を基本として、抗ウイルス性能が評価できるように変更された種々の方法がとられている。
【0019】
請求項2記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記有機溶媒除去工程は、上記有機溶媒の一部を除去して上記所定溶液よりも比重の小さいペースト状の抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得ることを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質は、光触媒活性を有する無機化合物の何れかまたは組合わせであることを特徴とする。
【0021】
従って、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質の粒子は、長時間に亘り有機溶媒に浸漬されることにより、粒子1つ1つがムラなく有機溶媒に包まれる。
【0022】
請求項4記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記所定時間は、1日間〜20日間であることを特徴とする。
【0023】
請求項5記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記有機溶媒除去工程は、濾材を用いて上記有機溶媒の一部を除去することを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記有機溶媒は、アルコール類の何れか又は上記アルコール類の何れかを含む混合物であることを特徴とする。
【0025】
請求項7記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記所定溶液が、塗料、インク又はニスの何れかであることを特徴とする。
【0026】
塗料とは、物品を保護、あるいは美装するために物品の表面に塗り付ける材料を指し示し、例えばペンキや樹脂液などとも呼ばれる。
【0027】
インクとは、顔料や染料を含んだ液体や流動体を指し示し、文字を書いたり表面に色付けするために用いられており、インキと呼ばれる場合もある。近年では紫外線硬化樹脂にインクを含ませたものも存在し、UV印刷に利用されている。
【0028】
請求項8記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記コーティング処理工程が、物品の表面へ吹き付けて塗布することを特徴とする。
【0029】
物品の表面へ吹付けて抗菌及び/または抗ウイルス剤を塗布する方法には、例えば吹付塗装があり、吹付塗装とは、塗料を霧状にして高圧空気とともに物品へと吹付ける方法である。
【0030】
請求項9記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記コーティング処理工程が、物品の表面へ印刷により塗布することを特徴とする。
【0031】
物品の表面へ印刷により塗布する方法には、印刷業界で用いられる種々の印刷方法を利用すれば良く、例えばオフセット印刷やグラビア印刷などがある。
【0032】
請求項10記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、表面に抗菌及び/または抗ウイルス処理を施す抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法であって、上記物品の原材料よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記物品の原材料よりも比重の小さい有機溶媒へ所定時間に亘って浸漬する浸漬工程と、上記浸漬工程の後に、上記有機溶媒の一部を除去して上記物品の原材料よりも比重の小さい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得る有機溶媒除去工程と、上記有機溶媒除去工程によって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記原材料に混ぜ込む混入工程とを有することを特徴とする。
【0033】
請求項11記載の発明における物品の表面処理方法にあっては、上記物品の原材料は、樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1〜9に記載の発明にあっては、例えば、平均比重をニスの比重よりも低下させた抗菌及び/または抗ウイルス剤を、ニスに混ぜて物品の表面に印刷をすることにより、抗菌及び/または抗ウイルス剤は、ニスの中で沈殿せずに表面に出てくるため、このような簡便な操作によって、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記処理を行わずにニスに同量混ぜ合わせた場合と比べて、より大きな抗菌及び/または抗ウイルス作用を物品の表面に付与することが出来る。
【0035】
上記所定時間に亘って浸漬を行うことにより、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質の粒子1つ1つを有機溶媒が包み込むために、ムラなく比重を低下させることが出来る。
有機溶媒の中でも特にアルコール類は分子内に適度な極性を有していることから、様々な物質との親和性があるため広く用いることが出来る。
極性とは、電気双極子モーメントにより、分子内で電気的に偏りを生じていることを示しており、一般に同程度の極性を持つ物質同士は互いに混ざり易いと言われている。アルコールは、分子内に極性を有するOH部と極性を有さない炭化水素部の両者が存在しており適度な極性を有している。
【0036】
従って、有機溶媒が十分に行き届いていなかった一部の粒子が凝集沈殿を生じてしまう等の不具合を回避することができるため、例えば透明なニスに含有させて物品に塗布した場合に、一部の粒子の凝集沈殿形成により、抗菌及び/または抗ウイルス作用を付与した物品の外観が濁ってしまうことを抑制出来る。このためコーティングの透明性を損なわずに、抗菌及び/または抗ウイルス作用を物品の表面に付与することが出来る。
【0037】
有機溶媒を一部除去する有機溶媒除去工程を経てペースト状とすることにより、計量や添加作業等のハンドリングが容易である。また、樹脂に練り込む際には有機溶媒の含有量が多いと高温の成型機内の温度低下を誘発してしまい成型に支障を来たす不具合が生じるため、有機溶媒を極力少なくすることにより、このような不具合を解消することが出来る。
上記有機溶媒除去工程を、濾材を用いて行うことにより、操作が簡便で低コストで除去することが出来る。
【0038】
吹付けや印刷といった塗布方法は、従来からよく用いられている塗布方法であり、このような塗布方法を用いることが出来ることにより、新たな設備等の必要が無く、このようなコストを発生させずにコーティング処理することが出来る。
【0039】
請求項10及び11に記載の発明にあっては、例えば樹脂物品の原材料である樹脂に、上記樹脂よりも比重を小さくしたペースト状の抗菌及び/または抗ウイルス剤を、混ぜ込んで成形することにより、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記処理を行わずにニスに同量混ぜ合わせた場合と比べて、より大きな抗菌及び/または抗ウイルス作用を物品の表面に付与することが出来る。
【0040】
物品の原材料に混ぜ込んで成形することにより、物品の形成と抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質の表面処理が1ステップで行えるため、作業時間や電気などのエネルギー使用量及び物品の中間貯蔵コストを抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係る抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法の第一の実施の形態を示した工程フロー図である。
図2】本発明に係る抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法の第二の実施の形態を示した工程フロー図である。
図3】本発明に係る第一の実施の形態における表面処理方法によって、抗菌及び/または抗ウイルス処理を施すことにより得られた物品を示した概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法及びその物品を実施の形態に基づき、図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
本発明に係る第一の実施の形態における抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法は、抗菌及び/または抗ウイルス処理を施す抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法であって、図1に示すように、所定溶液よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記所定溶液よりも比重の小さい有機溶媒へ所定時間に亘って浸漬する浸漬工程Aを有している。
【0044】
上記抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質は、光触媒活性を有する無機化合物の何れかまたは組合わせである。
【0045】
一般に、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質は、抗菌作用あるいは抗ウイルス作用あるいはその両方の作用を有する物質であれば良く、一般に無機系化合物、有機系化合物、有機金属、天然化合物などに大別されている。
【0046】
例えば、無機系化合物としては、塩素化合物、ヨウ素化合物、過酸化物、ホウ酸、銅系、亜鉛系、チタン系、硫黄系、リン酸系、カルシウム系、シリコフルオリドナトリウム、銀系などの他ゼオライトなどの複合系の化合物が挙げられ、具体例としては、塩化銅(CuCl2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化タングステン(WO)、硫化カドミウム(CdS)、二硫化モリブデン(MoS2)三硫化モリブデン(MoS3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、銀リン酸ジルコニウム、銀・ナトリウム水素リン酸ジルコニウム、金属ゼオライトなどが挙げられ、なかでも二酸化チタン(TiO2)が好ましい。
また、金属酸化物に金属塩化物をドープさせたものなど、種々の組合わせによって得られるものを用いても良い。
【0047】
金属ゼオライトとは、アルミノ圭酸塩鉱物であるゼオライトの吸着性を利用して、例えば銀や亜鉛や銅といった金属をイオン状態のまま安定に担持したものである。このように金属や金属化合物を安定に担持して用いることは広く用いられている手法であり、本発明においても利用し得る。
【0048】
有機系化合物は、さらに脂肪族系と芳香族系に分類され、脂肪族系としては例えば、有機スズ化合物、シクロペンタン誘導体、ハロゲン誘導体、一価アルコール、二価アルコール誘導体、飽和アルデヒド、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、不飽和エーテル、ラクトン、第4アンモニウム塩、第2級アミン、アミノ酸誘導体、スルホン酸誘導体、ヒドロキサム酸誘導体、シアヌール酸誘導体、シアン酸誘導体、スルホン誘導体、チオカルバミド誘導体、グアニジン誘導体、ヒダントイン、ジチオール、アルシン誘導体、リン酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。
【0049】
具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、ブロノポール、3−ヨード−2−プロパギブルカーバメイト、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−S−トリアジン、アミノグリコシドST−7、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、塩化セチルピリジウム、10,10−オキシビスフェノキシアルシンなどが挙げられる。
【0050】
ブロノポールのCAS登録番号は、52−51−7であり、化学名称は、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールである。3−ヨード−2−プロパギブルカーバメイトのCAS登録番号は、55406−53−6である。
2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンのCAS登録番号は、26530−20−1である。
【0051】
ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジンのCAS登録番号は、4719−04−4であり、化学名称は、1,3,5−トリアジン−1,3,5(2H,4H,6H)−トリス(エタノール)である。ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−S−トリアジンのCAS登録番号は、7779−27−3であり、化学名称は、1,3,5−トリエチルヘキサヒドロ−S−トリアジンである。
【0052】
アミノグリコシドST−7のCAS登録番号は、3947−65−7であり、化学名称は、(2R,3S,4R,5R,6R)−5−アミノ−2−(アミノメチル)−6−[[(1R,2R,3S,4R,6S)−4,6−ジアミノ−2,3−ジヒドロキシシクロヘキシル]オキシ]テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4−ジオールである。2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジンのCAS登録番号は、13108−52−6であり、化学名称は、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メシルピリジンである。
【0053】
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールのCAS登録番号は、52−51−7である。1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンのCAS登録番号は、35691−65−7であり、化学名称は、2−ブロモ−2−(ブロモメチル)グルタロニトリルである。塩化セチルピリジウムのCAS登録番号は、123−03−5であり、化学名称は、1−セチルピリジニウム・クロリドである。
【0054】
芳香族系としては例えば、カーボネート類、第4アンモニウム塩、モノアミン誘導体、ジアミン誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、アニリド誘導体、ニトリル誘導体、イミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、イソチアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、グアニジン誘導体、ピリジン誘導体、ピラゾロピリミジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、単環炭化水素誘導体、ハロゲノベンゼン誘導体、スルホン誘導体、ベンゼンスルホン酸誘導体、ベンゼンカルボン酸誘導体、メルカプトカルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸誘導体、一価フェノール誘導体、二価フェノール誘導体、フェノールエーテル誘導体、フェノールエステル誘導体、ハロゲノフェノール誘導体、フェニル誘導体、ビフェニル、一価ナフトール、ナフタリン誘導体、ピロール誘導体、キノン誘導体、キノリン誘導体、イソキノリン誘導体、有機リン酸エステル誘導体などが挙げられる。
【0055】
具体例としては、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、p−クロロ−m−クレゾール、2,4,4‘−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、トリクロロカルバニリド、チアベンダゾール、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、ジヨードメチル−p−トリスルフォン、テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリル、ジクロフルアニド、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N’−ジメチル−N’−(ジクロロフルオロメチルチオ)−N‘−フェニルスルファミドなどが挙げられる。
【0056】
塩化ベンザルコニウムのCAS登録番号は8001−54−5である。グルコン酸クロルヘキシジンのCAS登録番号は、18472−51−0であり、化学名称は、クロルヘキシジン・2(D−グルコン酸)である。4−イソプロピル−3−メチルフェノールのCAS登録番号は、3228−02−2であり、別名4−イソプロピル−m−クレゾールと称されることもある。
【0057】
パラクロロメタキシレノールのCAS登録番号は、88−04−0であり、化学名称は、4−クロロー3,5−ジメチルフェノールである。p−クロロ−m−クレゾールのCAS登録番号は、59−50−7であり、化学名称は、4−クロロ−m−クレゾールである。2,4,4‘−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルのCAS登録番号は、3380−34−5である。
【0058】
トリクロロカルバニリドのCAS登録番号は、101−20−2であり、化学名称は、3,4,4‘−トリクロロカルバニリドである。チアベンダゾールのCAS登録番号は、148−79−8であり、化学名称は、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾールである。2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルのCAS登録番号は、10605−21−7であり、化学名称は、2−(メトキシカルボニルアミノ)−1H−ベンゾイミダゾールである。
【0059】
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのCAS登録番号は、2634−33−5であり、化学名称は、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オンである。5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンのCAS登録番号は、26172−55−4である。ジヨードメチル−p−トリスルフォンのCAS登録番号は、20018−09−1であり、化学名称は、ジヨードメチル(4−メチルフェニル)スルホンである。
【0060】
テトラクロロイソフタロニトリルのCAS登録番号は、1897−45−6であり、別名2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ベンゼンジカルボニトリルと称されることもある。5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリルのCAS登録番号は、1897−50−3である。ジクロフルアニドのCAS登録番号は、1085−98−9であり、化学名称は、N−(ジクロロフルオロメチルチオ)−N−(ジメチルアミノスルホニル)アニリンである。
【0061】
N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミドのCAS登録番号は、719−96−0である。N,N’−ジメチル−N’−(ジクロロフルオロメチルチオ)−N‘−フェニルスルファミドのCAS登録番号は、1085−98−9であり、化学名称は、N−(ジクロロフルオロメチルチオ)−N−(ジメチルアミノスルホニル)アニリンである。
【0062】
有機金属としては例えば、ソディウムオマジン、ジンクオマジン、オキシン銅などが挙げられる。ジンクオマジンは別名ピリチオンと称されることもある。
天然化合物としては例えば、キトサン、ヒノキチオール、孟宗竹、クレオソート油、ワサオールなどが挙げられる。
上記の種々の抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質は、必要に応じて他の物質を含有させて用いても良い。
【0063】
上記所定溶液としては例えば、塗料、インク又はニスの他、UV樹脂液などが挙げられる。
上記塗料としては例えば、ボイル油、油ワニス、フェノール樹脂ワニスメジウムインキなどの透明なものや、油性調合ペイント、合成樹脂調合ペイント、油性エナメルなどの有色のものがあり、また、溶剤型や水性などに分類されており、性状もエマルションタイプのものなどがあり、適宜選択され得る。
上記インクとしては例えば、顔料インク、印刷用インク、染料インクなどが挙げられ、紫外線硬化インクのような特殊なインクもあり、適宜選択され得る。
上記ニスとしては例えば、OPニス、UVニスなどの種類があり、さらに油性、水性などに分類されており、適宜選択され得る。
【0064】
上記有機溶媒とは、常温常圧で液体の有機化合物であり、例えば、鎖状炭化水素化合物、環状炭化水素化合物、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族化合物、複素環化合物等の何れか又はこれらの組合わせからなる混合物が挙げられる。上記のなかでもアルコール類が好ましく、特に浸漬した際の含浸速度や表面処理後の抗菌および/または抗ウイルス作用の観点から無水エタノールが好ましい。
【0065】
鎖状炭化水素化合物としては例えば、塩化メチレン、クロロホルム、n−ヘキサンなどが挙げられる。環状炭化水素化合物としては例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。アルコール類としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、無水エタノールなどが挙げられる。ケトン類としては例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。エーテル類としては例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテルなどが挙げられる。エステル類としては例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、サリチル酸メチルなどが挙げられる。芳香族化合物としては例えば、ベンゼン、トルエン、フェノール、キシレン、クレゾールなどが挙げられる。複素環化合物としては例えば、テトラヒドロフラン、オキサゾール、キノリンなどが挙げられる。
【0066】
上記所定時間は、特に限定されないが、1日間〜20日間が好ましい。
上記浸漬とは、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質が、有機溶媒の中にひたされることである。
【0067】
本実施の形態に係る抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法は、上記浸漬工程Aの後に、上記有機溶媒の一部を除去して上記所定溶液よりも比重の小さい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得る有機溶媒除去工程Bとを有している。
【0068】
上記有機溶媒除去工程Bは、濾材を用いて上記有機溶媒の一部を除去して、上記所定溶液よりも比重の小さいペースト状の抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得る。
【0069】
上記有機溶媒除去工程Bは例えば、遠心分離や濾材による濾過、減圧等の方法により有機溶媒を除去することが選択されうるが、濾材による濾過は最も簡便に有機溶媒の一部を除去することが出来るため好適である。
【0070】
上記濾材には例えば、濾紙、濾布、多孔質体などが挙げられる。濾布としては例えば、織物や不織布などが挙げられるが、特に限定されない。
【0071】
本実施の形態に係る抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法は、上記有機溶媒除去工程Bによって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を上記所定溶液に含有させ、物品にコーティング処理するコーティング処理工程Cを有している。
【0072】
上記コーティング処理工程Cは、物品の表面へ吹き付けて塗布する方法あるいは物品の表面へ印刷により塗布する方法により行われる。
上記物品の表面へ吹き付けて塗布する方法としては、例えば、吹付け塗装が挙げられる。上記物品の表面へ印刷により塗布する方法としては、例えば、グラビア印刷やオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの種々の印刷手法が用いられる。
【0073】
上記物品としては、特に限定されず、金属物品、樹脂の成形品、紙や布など所定の面や形状を有するものであれば良く、建材、皮製品、繊維、印刷物、不織布などが挙げられ、具体例としては、キャッシュカード、ドア、床、壁、手摺、スイッチ、家具、便座、浴室、カーペット、マット、手袋、カーテン、シーツ、マスク、タオル、モップ、マットレス、枕、ガーゼ、包帯、カテーテル、内視鏡、気管内チューブ、手術衣、白衣、患者着衣、ガウン、エプロン、スリッパ、ゴーグル、食器、カルテ、リモコン、フィルターなどが挙げられる。
【0074】
以上の方法により、本発明に係る第一の実施の形態における表面に抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法により、抗菌処理を施した物品を得ることが出来る。
【0075】
本発明に係る第二の実施の形態における抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法は、抗菌及び/または抗ウイルス処理を施す抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法であって、上記物品の原材料よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記物品の原材料よりも比重の小さい有機溶媒へ所定時間に亘って浸漬する浸漬工程Aを有している。上記物品の原材料は、樹脂である。
【0076】
上記樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、および熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0077】
上記浸漬工程Aの後に、上記有機溶媒の一部を除去して上記物品の原材料よりも比重の小さい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を得る有機溶媒除去工程Bを有している。
【0078】
そして、本実施の形態にあっては、前記第一の実施の形態とは異なり、上記有機溶媒除去工程Bによって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を、上記原材料に混ぜ込む混入工程Dを有している。
【0079】
上記混入工程Dは、例えば、上記有機溶媒除去工程Bによって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質と顔料や添加剤および樹脂を、タンブラーへ導入し、樹脂に均一に付着させた後、押出成形機により、樹脂が溶融する温度で混練した後にペレット化することにより、マスターバッチを得る工程であり、上記マスターバッチを成形機に供給して所定の形状に成形することが出来る。
【0080】
あるいは成形機に供給する際に、上記有機溶媒除去工程Bによって得られた抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質を供給するホッパー及び定量フィーダーと、上記原材料を供給するホッパー及び定量フィーダーと、その他顔料や添加剤を供給するホッパー及び定量フィーダーとを用意し、其々のホッパーから一定の割合で成形機へと供給されるように設定し、成形機において、所定の形状に成形する方法などもある。顔料や添加剤は、特に限定はなく、樹脂工業界で利用されているものを用いれば良い。
【0081】
成形機は、例えば、射出成形機、押出成形機、圧縮成形機、圧空成型機、真空成形機、カレンダーロール機、FRP成形機、ブロー成形機など種々の成形機を適宜選択し得る。また、上記成形機例のものを組合わせて利用しても良い。
成形条件は、成形方法および原材料として用いる樹脂や用途により異なるが、例えば樹脂がポリプロピレンで、押出成形機による成形であれば、200〜260℃程度である。
【0082】
上記において、記載のない箇所については、本発明に係る第一の実施の形態における抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法に準ずる。
【0083】
以上の方法により、本発明に係る第二の実施の形態における表面に抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法により、抗菌処理を施した物品を得ることが出来る。
上記第二の実施の形態においては、原材料が樹脂である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ゴムであっても良い。
【0084】
本発明に係る第一の実施の形態における抗菌及び/または抗ウイルス処理を施す抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法、及び表面に抗菌及び/または抗ウイルス処理を施すことにより得られた物品について図3の模式図を用いて説明する。
【0085】
所定溶液13(例えば、塗料)よりも比重の大きい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質12を、上記塗料13よりも比重の小さい有機溶媒(図示せず)へ所定時間に亘って浸漬させることにより、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質12は、有機溶媒(図示せず)により包み込まれて塗料13よりも比重を小さくすることが出来る。
【0086】
上記有機溶媒(図示せず)の一部を除去して得られる上記塗料13よりも比重の小さい抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質12を上記塗料13に含有させることにより、抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質12は塗料13内で沈殿せずに塗料表面15に現出することとなる。
【0087】
これを物品10にコーティング処理することにより、物品10の表面11において抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質12は、塗料13よりも比重が小さいために塗料表面15に現出する。抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質12が塗料表面15に現出した状態で、塗料13が経時的に硬化して、表面に抗菌及び/または抗ウイルス処理を施すことにより得られた物品14が得られる。
【0088】
本発明に係る表面処理方法の有効性を確認するために、本発明者は、以下のように試験を行った。
【0089】
(比較例1)
厚さ0.09[mm]のポリエチレンフィルムを50[mm]×50[mm]の大きさに裁断したものを比較例1とした。
(実施例1)
塩化ベンザルコニウムを160[g]秤取り、これを予め容器に秤取った無水エタノール160[g]中へ7日間にわたって浸漬させる。7日後、上記容器の内容物を濾紙によりペースト状となるまで自然濾過してペースト状の抗菌剤を得る。次に上記ペースト状の抗菌剤を、ニスに対して3[w/w%]の割合となるように加えて抗菌剤入りニスを得る。
厚さ0.2[mm]の紙片を50[mm]×50[mm]の大きさに裁断した試料片を用意し、上記試料片の表面へ印刷機によりインクを印刷し、さらに上記インクの表面に抗菌剤入り透明ニスを、塗布厚が450[μm]となるように印刷により塗布したものを実施例1とした。
【0090】
塩化ベンザルコニウムはラサ工業株式会社製、無水エタノールは大日精化工業株式会社製、ニスは都インキ株式会社製OPニスを用いた。塩化ベンザルコニウムの比重は0.99、OPニスの比重は0.84、無水アルコールの比重は0.80である。
【0091】
(試験要領)
試験要領は、JIS
Z 2801「抗菌加工製品‐抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2プラスチック製品などの試験方法により、検体の抗菌性試験を行った。また、比較例1の試料片を用いて、接種直後の試験片1個当たりの生菌数を確認している。試験に用いたものを以下に示す。
【0092】
〈被覆フィルム〉
ポリエチレンフィルム 大きさ40[mm]×40[mm]、厚み0.09[mm]
〈菌液の接種量〉
大腸菌 0.4[ml]
黄色ぶどう球菌 0.4[ml]
〈菌液の生菌数〉
大腸菌 6.4×10/ml
黄色ぶどう球菌 8.9×10/ml
【0093】
以上のように行った試験の結果を表1および表2に示す。表1は大腸菌を用いて、各試料片について試験を行った結果であり、表2は黄色ぶどう球菌を用いて各試料片について試験を行った結果である。
表中の検出せずとは、試験片1個当たりの生菌数が10未満であったことを示している。平均値算出の際には便宜上10としている。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の大腸菌を用いた試験結果において、接種直後の試験片1個当たりの生菌数の平均値は1.9×10であったが、同じ比較例1の試験片を35℃,24時間後に計数した際には、2.8×10とほぼ同等の生菌数であった。しかしながら、本発明の表面処理を施した実施例1においては、35℃,24時間後に計数した際には、検出せず(10未満)となっており、ペースト状の抗菌剤を、ニスに対して3[w/w%]の割合で加えたことにより、顕著な抗菌作用が現れていることがわかる。
【0096】
【表2】
【0097】
表2の黄色ぶどう球菌を用いた試験結果において、接種直後の試験片1個当たりの生菌数の平均値は2.8×10であったが、同じ比較例1の試験片を35℃,24時間後に計数した際には、3.3×10とほぼ同等の生菌数であった。しかしながら、本発明の表面処理を施した実施例1においては、35℃,24時間後に計数した際には、70となっており、大腸菌の場合と同様に、顕著な抗菌作用が現れていることがわかる。
【0098】
表1および表2の結果から、抗菌活性値を算出したところ、大腸菌については、>6.3、黄色ぶどう球菌については、3.6である。
一般に、JIS
Z 2801「抗菌加工製品‐抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠して試験を行い、抗菌活性値が2.0以上であれば抗菌効果があると認められることより、上記表1および表2の結果はこれを満足する値である。
【0099】
抗菌活性値は、log(比較例1の24時間後の生菌数の平均値/実施例1の24時間後の生菌数の平均値)を解くことにより算出した。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る抗菌及び/または抗ウイルス剤による物品の表面処理方法は、紙や樹脂など様々な物品に適用することができ、表面処理を施した物品を販売して提供することが出来るため、産業上利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0101】
10 物品
11 表面
12 抗菌及び/または抗ウイルス作用を有する物質
13 所定溶液(塗料)
14 表面に抗菌及び/または抗ウイルス処理を施すことにより得られた物品
15 所定溶液表面(塗料表面)
図1
図2
図3