(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、第1の実施形態における半導体装置の断面図である。この半導体装置は、基板10、基板10上に形成された多層配線層、第1インダクタ310、及び第2インダクタ320を有している。多層配線層は、絶縁層及び配線層をこの順にそれぞれt回(t≧3)以上交互に積層したものである。第1インダクタ310は、多層配線層の第n配線層に設けられている。第2インダクタ320は、多層配線層の第m配線層(t≧m≧n+2)に設けられ、第1インダクタ310の上方に位置している。第n配線層と第m配線層の間に位置するいずれの配線層にも、第1インダクタ310の上方に位置するインダクタが設けられていない。第1インダクタ310及び第2インダクタ320は、電気信号を相互に伝達する信号伝達素子300を構成している。電気信号は、例えばデジタル信号であるが、アナログ信号であっても良い。
【0013】
本実施形態において第1インダクタ310及び第2インダクタ320は、いずれも一つの配線層に形成された渦巻き型の配線パターンである。また絶縁層は、複数の層間絶縁膜を積層した構造であってもよいし、一つの層間絶縁膜であってもよい。本実施形態において絶縁層は、2つの層間絶縁膜を積層した構造を有している。
【0014】
本実施形態において、半導体装置は4層の配線510,520,530,540をこの順に積層した構造である。配線510,520,530,540は、ダマシン法により形成されたCu配線であり、それぞれ配線層412,422,432,442に形成された溝に埋め込まれている。最上層の配線540には、パッド(図示せず)が形成されている。なお、配線510,520,530,540の少なくとも一つはAl合金配線であっても良い。
【0015】
基板10と最下層の配線510の間には、コンタクトプラグを形成するための層間絶縁膜410が設けられており、配線510,520の相互間、配線520,530の相互間、及び配線530,540の相互間それぞれには、ビアを形成するための絶縁層420,430,440が設けられている。基板10上には、絶縁層410、配線層412、絶縁層420、配線層422、絶縁層430、配線層432、絶縁層440、及び配線層442がこの順に積層されている。
【0016】
絶縁層及び配線層を構成する各絶縁膜はSiO
2膜であっても良いし、低誘電率膜であってもよい。低誘電率膜は、例えば比誘電率が3.3以下、好ましくは2.9以下の絶縁膜とすることができる。低誘電率膜としては、SiOCの他に、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)、MSQ(メチルシルセスキオキサン)、またはMHSQ(メチル化ハイドロジェンシルセスキオキサン)等のポリハイドロジェンシロキサン、ポリアリールエーテル(PAE)、ジビニルシロキサンービスーベンゾシクロブテン(BCB)、またはSilk(登録商標)等の芳香族含有有機材料、SOG、FOX(flowable oxide)、サイトップ、またはBCB(Bensocyclobutene)等を用いることもできる。また、低誘電率膜としては、これらのポーラス膜を用いることもできる。
【0017】
第1インダクタ310は最下層の配線層412に位置しており、第2インダクタ320は最上層の配線層442に位置している。そして第1インダクタ310と第2インダクタ320の間には、2層の配線層422,432と、3層の絶縁層420,430,440が位置している。
【0018】
基板10は第1導電型(例えばp型)の半導体基板である。そして半導体装置はさらに第1回路100及び第2回路200を有している。第1回路100は、信号伝達素子300を構成する第1インダクタ310及び第2インダクタ320の一方に接続しており、第2回路200は、第1インダクタ310及び第2インダクタ320の他方に接続している。これらの接続は、基板10上の多層配線層400を介して行われる。信号伝達素子300は、例えば第1回路100と第2回路200の間に位置しているが、これに限定されない。例えば、信号伝達素子300は、第1回路100に含まれていても良いし、第2回路200に含まれていても良い。第1回路100及び第2回路200は、入力される電気信号の電位が互いに異なる。
図1の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なることを意味する。
【0019】
第1回路100は第1トランジスタを有している。第1トランジスタには、第1導電型のトランジスタと、第2導電型のトランジスタがある。第1導電型の第1トランジスタ121は第2導電型のウェル120に形成されており、ソース及びドレインとなる2つの第1導電型の不純物領域124及びゲート電極126を有している。第2導電型の第1トランジスタ141は第1導電型のウェル140に形成されており、ソース及びドレインとなる2つの第2導電型の不純物領域144及びゲート電極146を有している。ゲート電極126,146それぞれの下にはゲート絶縁膜が位置している。これら2つのゲート絶縁膜は、厚さが略等しい。
【0020】
ウェル120には第2導電型の不純物領域122が形成されており、ウェル140には第1導電型の不純物領域142が形成されている。不純物領域122には第1導電型の第1トランジスタ121の基準電位(グラウンド電位)を与える配線が接続されており、不純物領域142には第2導電型の第1トランジスタ141の基準電位を与える配線が接続されている。
【0021】
第2回路200は第2トランジスタを有している。第2トランジスタにも、第1導電型のトランジスタと、第2導電型のトランジスタがある。第1導電型の第2トランジスタ221は第2導電型のウェル220に形成されており、ソース及びドレインとなる2つの第1導電型の不純物領域224及びゲート電極226を有している。第2導電型の第2トランジスタ241は第1導電型のウェル240に形成されており、ソース及びドレインとなる2つの第2導電型の不純物領域244及びゲート電極246を有している。ゲート電極226,246それぞれの下にはゲート絶縁膜が位置している。本図に示す例において、これら2つのゲート絶縁膜は、第1回路が有する第1トランジスタのゲート絶縁膜に対して厚い。ただし、第1トランジスタと第2トランジスタは、ゲート絶縁膜の厚さが同じであっても良い。
【0022】
ウェル220には第2導電型の不純物領域222が形成されており、ウェル240には第1導電型の不純物領域242が形成されている。不純物領域222には第1導電型の第2トランジスタ221の基準電位を与える配線が接続されており、不純物領域242には第2導電型の第2トランジスタ241の基準電位を与える配線が接続されている。
【0023】
次に、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。まず基板10の第1領域(
図1の第1回路100が形成される領域)に第1トランジスタを形成し、基板10の第2領域(
図1の第2回路200が形成される領域)に第2トランジスタを形成する。次いで、第1トランジスタ上及び第2トランジスタ上に、多層配線層400を形成する。多層配線層400を形成するとき、基板10の第3領域(
図1の信号伝達素子300が形成される領域)の上方に、第1インダクタ310及び第2インダクタ320が形成される。
図1に示す例において、第2インダクタ320は、最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤ(図示せず)を介して、第2回路200に接続することができる。
図1の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なることを意味する。
【0024】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。2つのインダクタを介して電気エネルギーや電気信号を伝達する場合、2つのインダクタを互いに近づけたほうが高い伝達効率を得られる。このため、通常は、2つのインダクタを可能な限り近づけるように伝達素子を設計する。この設計思想に基づいて第1インダクタ310及び第2インダクタ320の配置が設計された場合、第2インダクタ320は、第1インダクタ310の一つ上の配線層に配置される。
【0025】
これに対して本実施形態では、第1インダクタ310は第n配線層に位置しており、第2インダクタ320は第m配線層(m≧n+2)に位置している。そして、第n配線層と第m配線層の間に位置するいずれの配線層にも、第1インダクタ310の上方に位置するインダクタが設けられていない。すなわち第2インダクタ320は、第1インダクタ310の一つ上の配線層ではなく、2つ以上離れた配線層に形成されている。このため、第1インダクタ310と第2インダクタ320の間に位置する絶縁膜(絶縁層)の数が、上記した通常の設計思想に基づいた場合と比較して増大し、第1インダクタ310と第2インダクタ320の間の絶縁耐圧が高くなる。この効果は、本実施形態のように、第1インダクタ310を第1層目の配線層に位置させ、第2インダクタ320を最上層の配線層に位置させた場合に、特に顕著になる。
【0026】
また、各配線層の配線パターンを変更するのみで、第1インダクタ310及び第2インダクタ320を形成することができる。このため、半導体装置の製造設備及びプロセス条件を変更することが抑制でき、既存の半導体装置の製造設備の既存の製造条件を活用することができる。
【0027】
また一つの基板10の上に、第1回路100、第2回路200、及び信号伝達素子300を同一工程で形成している。このため、半導体装置の製造コストが低くなり、かつ半導体装置が小型になる。
【0028】
図2は、第2の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この半導体装置は、第2インダクタ320が最上層の配線層442より下の配線層432に位置している点を除いて、第1の実施形態と同様である。
図2に示す例において、第2インダクタ320は最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤを介して、第2回路200に接続することができる。
図2の構成においても、
図1の構成と同様に、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なることを意味する。
【0029】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1インダクタ310と第2インダクタ320が近づくため、信号伝達効率が向上し、信号伝達素子300において信号伝達に必要な電力が小さくなる。
【0030】
図3は、第3の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この半導体装置は、基板10に第1回路100及び信号伝達素子300が形成されており、基板20に第2回路200が形成されている点を除いて、第1の実施形態と同様の構成である。本図に示す例において、第1インダクタ310は基板10上の多層配線層400を介して第1回路100に接続されており、第2インダクタ320は、基板20の最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤ(図示せず)を介して、第2回路200に接続される。
図3の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、例えば電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なる場合、電気信号の基準電位(0を示す電位)が互いに異なる場合、及びこれらの組み合わせの場合がある。
【0031】
なお、本図に示す例において基板10上の配線層数と基板20上の配線層数は同じであるが、互いに異なっていてもよい。また、本図に示す例において、基板10上の各層及び配線と基板20上の各層及び配線は、対応する層及び配線の厚さが互いに同じであるが、
図4の変形例に示すように、これら層及び配線の厚さが互いに異なっていても良い。なお
図4に示す例では、基板20上の各層及び配線が厚くなっているが、基板10上の各層及び配線が厚くなっていてもよい。
【0032】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1回路100と第2回路200が互いに異なる基板10,20に形成されているため、第1回路100の第1トランジスタの基準電位と第2回路200の第2トランジスタの基準電位が大きく異なっていても(例えば差が100V以上)、これらの基準電位が短絡することを防止できる。また、第1インダクタ310は第2回路200ではなく第1回路100に接続しているため、第1インダクタ310と基板10の間の電位差が大きくなる可能性は低い。従って、第1インダクタ310を最下層の配線層に配置しても、第1インダクタ310と基板10の間で絶縁破壊が生じることを抑制できる。
【0033】
また、複雑な工程を用いなくても、第1トランジスタのゲート絶縁膜と第2トランジスタのゲート絶縁膜の厚さを大きく異ならせることができる。
【0034】
図5は、第4の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この半導体装置は、基板10がSOI(Silicon On Insulator)基板である点、並びに基板10において、第1回路100が形成されている第1領域、第2回路200が形成されている第2領域、及び信号伝達素子300が形成されている第3領域それぞれの間に埋込絶縁層18が形成されており、埋込絶縁層18によってこれらが相互に絶縁されている点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0035】
基板10は、ベース基板(例えばシリコン基板)12上に絶縁層14及びシリコン層16をこの順に積層した構造である。第1回路100の第1トランジスタ及び第2回路200の第2トランジスタは、シリコン層16に形成されている。埋込絶縁層18はシリコン層16に埋め込まれており、底部が絶縁層14に接している。
図5に示す例において、第2インダクタ320は、最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤ(図示せず)を介して、第2回路200に接続することができる。
図5の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、例えば電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なる場合、電気信号の基準電位(0を示す電位)が互いに異なる場合、及びこれらの組み合わせの場合がある。
【0036】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、基板10において、第1回路100が形成されている第1領域と第2回路200が形成されている第2領域とが相互に絶縁されているため、第1回路100の第1トランジスタの基準電位と第2回路200の第2トランジスタの基準電位が大きく異なっていても(例えば差が100V以上)、これら基準電位が短絡することを抑制できる。
【0037】
図6は、第5の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この半導体装置は、基板10のうち第1回路100が形成された第1領域と信号伝達素子300が形成された第2領域との間に埋込絶縁層18が設けられておらず、第1領域と第2領域が電気的に繋がっている点を除いて第4の実施形態にかかる半導体装置と同様の構成である。また第1インダクタ310は第1回路100に接続されている。
図6に示す例において、第2インダクタ320は、最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤ(図示せず)を介して、第2回路200に接続することができる。
図6の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、例えば電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なる場合、電気信号の基準電位(0を示す電位)が互いに異なる場合、及びこれらの組み合わせの場合がある。
【0038】
本実施形態においても、基板10において第1領域及び第3領域は第2領域と絶縁されている。このため、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1領域と第3領域は電気的に繋がっているが、第1インダクタ310は第2回路200ではなく第1回路100に接続しているため、第1インダクタ310と基板10の間の電位差が大きくなる可能性は低い。従って、第1インダクタ310を最下層の配線層412に配置しても、第1インダクタ310と基板10の間で絶縁破壊が生じることを抑制できる。
【0039】
図7は、第6の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この半導体装置は、第1インダクタ310の下方に位置する基板10に複数の埋込絶縁層18が互いに離間して設けられている点を除いて、第4の実施形態と同様である。
図7に示す例において、第2インダクタ320は、最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤ(図示せず)を介して、第2回路200に接続することができる。
図7の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、例えば電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なる場合、電気信号の基準電位(0を示す電位)が互いに異なる場合、及びこれらの組み合わせの場合がある。
【0040】
本実施形態によっても第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1インダクタ310の下方に位置する基板10には、複数の埋込絶縁層18が互いに離間して設けられている。このため、第1インダクタ310および第2インダクタ320が形成する磁束によって基板10に渦電流が生じることを抑制でき、信号伝達素子300のQ値を小さくすることができる。
【0041】
図8は、第7の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この半導体装置は、第1インダクタ310の下方に位置する基板10において、絶縁層14と接している埋込絶縁層18の代わりに絶縁層14と分離されている埋込絶縁層19を用いている点を除いて、第6の実施形態と同様である。埋込絶縁層19はSTI(Shallow Trench Isolation)構造を有しており、第1回路100の第1トランジスタ及び第2回路200の第2トランジスタの素子分離膜と同一工程で形成することができる。
図8に示す例において、第2インダクタ320は、最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤ(図示せず)を介して、第2回路200に接続することができる。
図8の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、例えば電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なる場合、電気信号の基準電位(0を示す電位)が互いに異なる場合、及びこれらの組み合わせの場合がある。
【0042】
本実施形態によっても第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、埋込絶縁層19の代わりにLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)酸化膜を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0043】
図9は、第8の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。本実施形態にかかる半導体装置は、第1インダクタ310の下方に位置する基板10に、第7の実施形態に示した埋込絶縁層19が形成されている点を除いて、第1の実施形態と同様の構成である。
図9に示す例において、第2インダクタ320は、最上層の配線層442に形成されたパッド(図示せず)及びボンディングワイヤ(図示せず)を介して、第2回路200に接続することができる。
図9の構成において、「入力される電気信号の電位が互いに異なる」とは、電気信号の振幅(0を示す電位と1を示す電位の差)が互いに異なることを意味する。
【0044】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、基板10に渦電流が生じることを抑制でき、信号伝達素子300のQ値を小さくすることができる。なお、埋込絶縁層19の代わりにLOCOS酸化膜を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。