(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記箱体は、前記第一支持部側に配置される第一平板と、前記第二支持部側に配置される第二平板と、前記第一平板と前記第二平板との間に接続されるとともに可撓体を含む側面部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク支持構造。
前記第一支持部又は前記第二支持部の一方は、前記支持ブロックを係止可能に構成され、前記第一支持部又は前記第二支持部の他方は、前記支持ブロックを滑動可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク支持構造。
複数の前記タンクが前記船倉内に隣接して配置されており、一方のタンクの側面に配置された複数の第三支持部と、前記一方のタンクと対峙する他方のタンクの側面に配置された複数の第四支持部と、を備え、前記第三支持部と前記第四支持部との間に前記支持ブロックが配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク支持構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船舶の船体は、波浪等の影響により常に動的に大きく撓んでいる。また、船体が動揺等により傾斜することから、低温タンクを支える支持台の荷重は常に変動することとなる。したがって、船舶に搭載される低温タンクの支持台は、船体の撓みや荷重変動を柔らかく受け止めるとともに、低温タンクの低温を維持するために船体からタンクへの入熱を極力抑制することが重要である。
【0006】
また、低温タンクは、貯蔵する低温液体によって伸縮するが、常温雰囲気である船体を構成する鋼板の線膨張係数は小さいため、タンク支持構造を固定してしまうと温度変化による応力変化により、低温タンクや支持構造が破損してしまう。そのため、タンク支持構造は、タンク側又は船体側で滑ることが要求される。
【0007】
したがって、タンク支持構造には、タンク重量や動揺荷重を支えるための動的圧縮荷重の他に、動的せん断力が作用することとなる。これらの荷重は非常に大きいため、支持台には大きな圧縮強度及びせん断強度が要求される。一方で、同時に船体や低温タンクは、静的又は動的に撓むことから、剛体のタンク支持構造を採用した場合には、特定の箇所に配置されたタンク支持構造に荷重が集中する恐れがある。すなわち、タンク支持構造には、大きな強度が要求されると同時に適度な柔らかさが要求される。このため、従来のタンク支持構造では、例えば、特許文献1に記載されたように、比較的熱抵抗の大きい木材や樹脂を使用して要求を満たしている。
【0008】
また、低温タンクは、外部からの入熱により、貯蔵したLNG等の低温液体が気化しやすいという性質を有している。この気化ガスは、一般にボイルオフガス(BOG)と呼ばれている。BOGは、船舶のタービンの燃料として有効活用することができるものの、気化量が多い場合には、外部に捨ててしまうか、多大なエネルギーを使用して再液化するしかない。このBOGの発生を抑制するために、低温タンクの外周を断熱材で覆うことが一般的に行われているが、低温タンクを支えるタンク支持構造からも多量の熱が低温タンクに入熱してしまう。
【0009】
特許文献2に記載したように、低温タンクの外周全体に真空領域及び不活性ガス領域を形成することにより、タンク支持構造からの入熱を抑制することもできる。しかしながら、かかる発明では、船体の内部に真空容器及び不活性ガス容器を配置したり、真空領域及び不活性ガス領域を保持する機構が必要になったりすることから、構造が複雑であり、製造コストが高額になってしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、製造コストを抑制しつつ、断熱性能及び強度に優れ、かつ、荷重変動による変形に追従することができる、タンク支持構造及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、船体から独立した状態で船倉に収容されるタンクを支えるタンク支持構造において、前記船倉の内面に配置された複数の第一支持部と、該第一支持部と対応する前記タンクの表面に配置された複数の第二支持部と、前記第一支持部と前記第二支持部との間に配置された支持ブロックと、を備え、前記支持ブロックは、前記第一支持部と前記第二支持部との間で伸縮可能に構成されるとともに閉鎖空間を形成する箱体を
有し、前記閉鎖空間は負圧領域である、ことを特徴とするタンク支持構造が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、
船体から独立した状態で船倉に収容されるタンクを支えるタンク支持構造において、前記船倉の内面に配置された複数の第一支持部と、該第一支持部と対応する前記タンクの表面に配置された複数の第二支持部と、前記第一支持部と前記第二支持部との間に配置された支持ブロックと、を備え、前記支持ブロックは、前記第一支持部と前記第二支持部との間で伸縮可能に構成されるとともに閉鎖空間を形成する箱体を有し、前記閉鎖空間は低熱伝導性ガス雰囲気である、ことを特徴とするタンク支持構造が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、船体から独立した状態で船倉に収容されるタンクを支えるタンク支持構造を有する船舶において、前記タンク支持構造は、前記船倉の内面に配置された複数の第一支持部と、該第一支持部と対応する前記タンクの表面に配置された複数の第二支持部と、前記第一支持部と前記第二支持部との間に配置された支持ブロックと、を備え、前記支持ブロックは、前記第一支持部と前記第二支持部との間で伸縮可能に構成されるとともに閉鎖空間を形成する箱体を有し、前記閉鎖空間は負圧領域である、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、船体から独立した状態で船倉に収容されるタンクを支えるタンク支持構造を有する船舶において、前記タンク支持構造は、前記船倉の内面に配置された複数の第一支持部と、該第一支持部と対応する前記タンクの表面に配置された複数の第二支持部と、前記第一支持部と前記第二支持部との間に配置された支持ブロックと、を備え、前記支持ブロックは、前記第一支持部と前記第二支持部との間で伸縮可能に構成されるとともに閉鎖空間を形成する箱体を有し、前記閉鎖空間は低熱伝導性ガス雰囲気である、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0015】
前記支持ブロックは、前記箱体の内部に収容される多孔質ブロックを有していてもよい。さらに、前記多孔質ブロックは、木製、樹脂製、発泡金属製又は発泡セラミックス製であってもよい。
【0016】
前記箱体は、前記第一支持部側に配置される第一平板と、前記第二支持部側に配置される第二平板と、前記第一平板と前記第二平板との間に接続されるとともに可撓体を含む側面部と、を有していてもよい。
【0017】
また、前記第一支持部又は前記第二支持部の一方は、前記支持ブロックを係止可能に構成され、前記第一支持部又は前記第二支持部の他方は、前記支持ブロックを滑動可能に構成されていてもよい。
【0018】
また、前記第一支持部及び前記第二支持部は、前記支持ブロックを係止可能に構成されていてもよい。
【0019】
また、前記箱体は、前記閉鎖空間内に配置された気体吸着剤を有していてもよい。
【0020】
また、複数の前記タンクが前記船倉内に隣接して配置されており、一方のタンクの側面に配置された複数の第三支持部と、前記一方のタンクと対峙する他方のタンクの側面に配置された複数の第四支持部と、を備え、前記第三支持部と前記第四支持部との間に前記支持ブロックが配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明に係るタンク支持構造及び船舶によれば、閉鎖空間を形成する箱体により支持ブロックを形成したことにより、船体側の第一支持部とタンク側の第二支持部との間にガス断熱層を形成することができ、断熱性能の向上を図ることができる。また、断熱性及び強度に優れた素材(金属、樹脂等)を用いて箱体を形成することにより、製造コストを抑制しつつ、断熱性能及び強度の向上を図ることができる。また、箱体を伸縮可能に構成することにより、船体動揺やタンク重量等に基づく荷重変動による変形に追従することができる。また、タンク支持構造の断熱性能を向上させたことにより、タンクの外周を覆う断熱材の材質を低廉なものに変更したり、厚さを薄くすることによって断熱材の使用量を低減したりすることもできる。
【0022】
また、箱体の内部に多孔質ブロックを配置することにより、断熱性能を保持しつつ支持ブロックの強度をより向上することができる。また、箱体の閉鎖空間を負圧にしたり低熱伝導性ガス雰囲気にしたりすることにより、断熱性能をより向上することができる。また、第一支持部又は第二支持部の何れか一方を滑動可能に構成することにより、タンクに貯蔵する貨物が低温液体の場合であっても、タンクと船体とを相対移動可能に構成することができ、タンクの低温液体による伸縮に容易に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るタンク支持構造及び船舶について、
図1(A)〜
図6(B)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(A)は縦断面図、(B)は
図1(A)におけるB−B断面図、(C)は箱体の側面図、を示している。
図2は、
図1(A)に示したタンク支持構造を備えた船舶を示す図であり、(A)は縦断面図、(B)は
図2(A)におけるB−B断面矢視図、を示している。
図3は、
図1(A)に示した支持部の平面図であり、(A)は第一支持部、(B)は第二支持部、を示している。
【0025】
本発明の第一実施形態に係るタンク支持構造は、船舶1の船体から独立した状態で船倉11に収容されるタンク2を支えるタンク支持構造であって、船倉11の内面に配置された複数の第一支持部3と、第一支持部3と対応するタンク2の表面に配置された複数の第二支持部4と、第一支持部3と第二支持部4との間に配置された支持ブロック5と、を備え、支持ブロック5は、第一支持部3と第二支持部4との間で伸縮可能に構成されるとともに閉鎖空間を形成する箱体51と、箱体51の内部に収容されるとともに第一支持部3と第二支持部4との間に配置される多孔質ブロック52と、を有している。
【0026】
船舶1は、例えば、
図2(A)及び(B)に示したように、船体の略中央部にタンク2を収容する船倉11を有している。船倉11の上部には、収容したタンク2を覆うタンクカバー12が配置されている。船体の外殻は、例えば、二重隔壁によって構成されるが、かかる構成に限定されるものではない。本実施形態における船舶1は、船体から独立した状態で船倉11に収容されるタンク2を支えるタンク支持構造を有している。
【0027】
タンク2には、例えば、LPG(液化石油ガス)やLNG(液化天然ガス)等の低温液体が貯蔵される。ここでは、3つのタンク2を収容する場合を図示しているが、タンク2の個数は船舶1の大きさやタンク2の大きさによって任意に設定することができる。
【0028】
また、タンク2は、図示したように、3つのタンク2が船倉11内に隣接して配置されていてもよいが、タンク2同士の間に隔壁を設置し、タンク2毎に収容空間を区切るようにしてもよい。船倉11内に隔壁を設置した場合には、タンク2と隔壁との間にも支持ブロック5を配置することが好ましい。隔壁に支持ブロック5を配置する場合には、船倉11の側面部とタンク2の側面部との間に配置されるタンク支持構造と同様の構成を採用することができる。
【0029】
図2(A)及び(B)に示したように、船倉11の底部表面には船体の長さ方向及び幅方向に複数の支持ブロック5が配置されており、タンク2の上下方向に生じる荷重を支持している。また、船倉11の側面部表面には船体の幅方向及び上下方向に複数の支持ブロック5が配置されており、タンク2の長さ方向及び幅方向の荷重を支持している。なお、
図2(A)及び(B)では、説明の便宜上、第一支持部3及び第二支持部4の図を省略してある。
【0030】
図1(A)に示したように、第一支持部3は、船倉11の底部表面に配置される。第一支持部3は、船倉11の底部表面から上方に突出し上面が平らな台座である。第一支持部3は、船体と別の部品によって構成し、溶接やボルト等で固定するようにしてもよいし、船倉11を構成する鋼板を変形させて形成するようにしてもよい。なお、第一支持部3を船倉11と別部品にする場合には、第一支持部3は、例えば、船倉11の底部を構成する鋼板と同一の素材又は略同一の線膨張係数を有する樹脂によって構成される。
【0031】
また、第一支持部3は、例えば、
図3(A)に示したように、船倉11の底部表面の長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)に格子状に整列配置される。なお、
図3(A)では、説明の便宜上、船倉11の底部表面の一部を二点鎖線で図示している。
【0032】
図1(A)に示したように、第二支持部4は、タンク2の下面表面に配置される。第二支持部4は、タンク2の下面表面から下方に突出し、支持ブロック5を挿入可能な凹部41を有する枠体である。支持ブロック5が立方体や直方体等の六面体である場合には、第二支持部4は、支持ブロック5の外形に適合するように矩形形状の枠体によって構成される。勿論、支持ブロック5が円柱形状である場合には、支持ブロック5は円形状の枠体によって構成される。
【0033】
第二支持部4は、タンク2と別の部品によって構成し、溶接やボルト等で固定するようにしてもよいし、タンク2を構成する金属板(例えば、鋼板、アルミ板等)を変形させて形成するようにしてもよい。なお、第二支持部4をタンク2と別部品にする場合には、タンク2を構成する金属と同一の素材又は略同一の線膨張係数を有する樹脂によって構成される。
【0034】
また、第二支持部4は、例えば、
図3(B)に示したように、タンク2の下面表面に船体の長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)に格子状に整列配置される。また、各第二支持部4は、タンク2を船倉11に収容した際に、各第一支持部3と対応する位置に形成されている。なお、タンク2が低温タンクである場合には、
図1(A)に示したように、第二支持部4の外周に断熱材21を配置するようにしてもよい。
【0035】
支持ブロック5を構成する箱体51は、例えば、
図1(A)〜(C)に示したように、第一支持部3側に配置される第一平板51aと、第二支持部4側に配置される第二平板51bと、第一平板51aと第二平板51bとの間に接続されるとともに可撓体を含む側面部51cと、を有している。
【0036】
箱体51は、図示したように、略六面体形状を有しており、第一平板51a及び第二平板51bは、正方形や長方形等の矩形形状に形成される。なお、箱体51は円柱形状であってもよく、この場合、第一平板51a及び第二平板51bは円形状に形成される。側面部51cは、例えば、上下方向の中間部に蛇腹(ベローズ)等によって構成される可撓体を有している。このように、側面部51cに可撓体を配置することにより、箱体51は、上下方向に伸縮可能であるだけでなく、船体の長さ方向や幅方向に斜めに歪むことができる。
【0037】
また、箱体51は、第一平板51a、第二平板51b及び側面部51cによって形成される閉鎖空間(空洞)を有している。箱体51の内部を空洞にすることによって、ガス断熱層(具体的には、空気断熱層)を形成することができる。また、この閉鎖空間を負圧領域とすることにより、真空度を高めて断熱性能を向上させることができる。例えば、真空に近い環境で溶接可能な電子ビーム溶接等を用いて箱体51を形成することによって、内部の閉鎖空間の真空度を高めることができる。なお、箱体51を形成した後、貫通孔を介して内部を真空引きしてから、貫通孔を塞ぐようにしてもよい。
【0038】
また、
図1(A)に示したように、箱体51の内部(閉鎖空間)にシリカゲル等の気体吸着剤51dを配置するようにしてもよい。かかる気体吸着剤51dを配置することにより、多孔質ブロック52から経年的に発生するガスを吸着することができ、内部の真空度を長期間に渡って保持することができる。気体吸着剤51dの素材や分量は、支持ブロック5の素材や耐用年数等に応じて任意に設計することができる。
【0039】
また、箱体51の閉鎖空間(空洞)内に空気よりも熱伝導性の低いガス(例えば、代替フロン、二酸化炭素、炭化水素等)を充填して封入することによって、閉鎖空間を低熱伝導性ガス雰囲気にするようにしてもよい。この場合、箱体51の内部(閉鎖空間)を常圧(1気圧)程度の圧力に設定することができ、閉鎖空間を真空引きする場合と比較して、箱体51に必要な強度を低下させることができ、設計条件を緩和することができる。
【0040】
多孔質ブロック52は、例えば、木製の六面体によって形成される。多孔質ブロック52は、箱体51の第一平板51a及び第二平板51bの内面に接触し、タンク2の荷重を支持し得る強度を有していることが好ましい。また、多孔質ブロック52は箱体51に接触し、箱体51は船倉11の第一支持部3及び第二支持部4に接触することから、多孔質ブロック52を介して船体とタンク2との間で伝熱する可能性がある。そこで、多孔質ブロック52は、例えば、熱抵抗の大きい木材によって形成される。なお、木製の多孔質ブロック52は、一枚板によって構成してもよいし、合板によって構成してもよい。
【0041】
また、木材は、一般に多孔質材料に等しい性質を有している。すなわち、本実施形態における多孔質ブロック52は、乾燥木材程度の多孔質性を有していればよい。多孔質材料は、複数の連なった細孔を有しており、内部に空気を溜め込み難い。したがって、箱体51の内部(閉鎖空間)を真空引きした場合に、多孔質ブロック52内に存在する空気も箱体51の外部に排出することができ、多孔質ブロック52の断熱性能をより向上させることができる。なお、多孔質ブロック52は、木製に限定されるものではなく、同様の性質を有する樹脂製であってもよいし、発泡金属製や発泡セラミックス製であってもよい。
【0042】
上述した支持ブロック5は、例えば、
図1(A)に示したように、上部が第二支持部4を構成する枠体の凹部41に係止され、下部が第一支持部3の上面に載置される。したがって、支持ブロック5は、タンク2の伸縮に伴って第一支持部3上を滑って移動することとなる。すなわち、第二支持部4は支持ブロック5を係止可能に構成され、第一支持部3は支持ブロック5を滑動可能に構成されている。
【0043】
ここで、
図4は、第一実施形態に係るタンク支持構造の作用を示す図であり、(A)は圧縮された状態、(B)は一方向に傾斜した状態、(C)は水平方向に歪んだ状態、を示している。上述した支持ブロック5を備えたタンク支持構造では、
図4(A)に示したように、タンク2を船倉11内に収容した場合及びタンク2内に貨物を貯蔵した場合の荷重を支持ブロック5によって保持することができる。このとき、支持ブロック5は、通常、圧縮された状態にある。
【0044】
また、波浪等により船体が動揺したり、タンク2内の貨物がスロッシングを起こしたりした場合には、
図4(B)に示したように、タンク2が一方向に傾斜したり、
図4(C)に示したように、タンク2が一方向にスライドしたりすることが予想される。また、タンク2に低温液体を貯蔵した場合には、
図4(C)に示したように、タンク2が伸縮して船体に対して相対的に一方向にスライドすることとなる。これらの現象が生じた場合であっても、上述した支持ブロック5を使用することにより、タンク2の姿勢に応じて支持ブロックが変形し、タンク支持構造に生じる動的圧縮荷重や動的せん断力に耐え得ることができる。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造について、
図5(A)〜
図6(B)を参照しつつ説明する。ここで、
図5は、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、(D)は第五実施形態、(E)は第六実施形態、(F)は第七実施形態、を示している。
図6は、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(A)は第八実施形態、(B)は第九三実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るタンク支持構造と同一の部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0046】
図5(A)に示した第二実施形態に係るタンク支持構造は、第一支持部3を第一実施形態における第二支持部4と同じ構成に形成し、第二支持部4を第一実施形態における第一支持部3と同じ構成に形成したものである。したがって、本実施形態では、第一支持部3が凹部31を有する枠体を構成し、第二支持部4が台座を構成している。すなわち、本実施形態では、第一支持部3が支持ブロック5を係止可能に構成され、第二支持部4が支持ブロック5を滑動可能に構成されている。
【0047】
図5(B)に示した第三実施形態に係るタンク支持構造は、多孔質ブロック52を箱体51に係止させたものである。例えば、第一平板51a及び第二平板51bの内面に多孔質ブロック52を嵌合可能な凹部51eを形成することによって、多孔質ブロック52を箱体51に係止させることができる。かかる構成により、箱体51に対する多孔質ブロック52の位置決めを行うことができ、箱体51内における多孔質ブロック52の位置ズレを抑制することができる。なお、多孔質ブロック52の係止方法は、上述した方法に限定されるものではなく、例えば、第一平板51a及び第二平板51bの外側からボルトやピンを挿通して多孔質ブロック52を係止する方法であってもよいし、第一平板51a及び第二平板51bの内面と多孔質ブロック52との接触面を接着する方法であってもよい。
【0048】
図5(C)に示した第四実施形態に係るタンク支持構造は、第一実施形態における多孔質ブロック52を省略したものである。すなわち、本実施形態における支持ブロック5は、箱体51のみによって形成されている。この場合、タンク支持構造に生じる動的圧縮荷重や動的せん断力を箱体51のみで支持する必要があることから、第二実施形態における箱体51は、上述した第一実施形態における箱体51よりも高強度に形成することが好ましい。
【0049】
図5(D)に示した第五実施形態に係るタンク支持構造は、箱体51を構成する側面部51cを、外殻を構成する樹脂層51fと、樹脂層51fの内側に配置される金属層51gと、により形成したものである。金属材は、樹脂材と比較してシール性に優れる一方で断熱性に劣り、樹脂材は、金属材と比較して断熱性に優れる一方でシール性に劣る(樹脂材は気体透過性を有する)という性質を有している。そこで、相対的に断熱性の高い樹脂層51fによって箱体51としての強度を保持し、相対的に断熱性の低い金属層51gの厚さを極力薄くすることによって、断熱性、強度及びシール性に優れた箱体51を形成することができる。なお、金属層51gは、樹脂層51fに対して蒸着や接着等の種々の方法によって接合することができる。
【0050】
図5(E)に示した第六実施形態に係るタンク支持構造は、第一支持部3を船倉11の側面部表面に配置し、第二支持部4をタンク2の側面部表面に配置したものである。この場合、箱体51内における多孔質ブロック52の位置決めを行うために、第一平板51a及び第二平板51bの外側からボルトやピン等の固定具51hを挿通して多孔質ブロック52を係止することが好ましい。かかる固定具51hを使用することにより、第一平板51aと第二平板51bとの間隔が大きく広がった場合であっても多孔質ブロック52の脱落を抑制することができる。なお、多孔質ブロック52は、
図5(B)に示した第三実施形態のように、凹部51eによって係止するようにしてもよい。
【0051】
図5(F)に示した第七実施形態に係るタンク支持構造は、複数のタンク2が船倉11内に隣接して配置されており、一方のタンク2の側面に配置された第三支持部6と、一方のタンク2と対峙する他方のタンク2′の側面に配置された第四支持部7と、を備え、第三支持部6と第四支持部7との間に支持ブロック5を配置したものである。本実施形態に係るタンク支持構造は、例えば、
図2(A)及び(B)に示したタンク2間に配置され、図示したように、支持ブロック5は、船体の幅方向及び上下方向に複数配置される。なお、
図2(A)及び(B)では、説明の便宜上、第三支持部6及び第四支持部7の図を省略してある。
【0052】
本実施形態における第三支持部6は、第一実施形態における第一支持部3に相当し、本実施形態における第四支持部7は、第一実施形態における第二支持部4に相当する。したがって、第三支持部6は支持ブロック5を滑動可能に支持する台座を構成し、第四支持部7は支持ブロック5を係止可能な凹部71を有する枠体を構成している。また、本実施形態における多孔質ブロック52は、例えば、上述した第六実施形態と同様に、固定具51hによって第一平板51a及び第二平板51bに係止される。
【0053】
図6(A)に示した第八実施形態に係るタンク支持構造は、支持ブロック5を第一支持部3及び第二支持部4の両方に係止させたものである。上述した第一実施形態〜第七実施形態では、タンク2が低温タンクである場合を想定しているが、タンク2と船倉11との相対移動が小さい場合やタンク2が低温タンク以外である場合のように、支持ブロック5を支持部上で滑動させる必要がないこともある。かかる場合には、図示したように、支持ブロック5を第一支持部3及び第二支持部4の両方に係止させるようにしてもよい。なお、本実施形態においても、箱体51は伸縮可能に構成された側面部51cを有し、多孔質ブロック52は適度な柔軟性を有していることから、
図4(A)〜(C)に示した状態に変形し得る。
【0054】
図6(B)に示した第九実施形態に係るタンク支持構造は、
図5(F)に示した第七実施形態に示したタンク支持構造において、支持ブロック5を第三支持部6及び第四支持部7の両方に係止させたものである。それ以外の構成については、上述した第七実施形態及び第八実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0055】
上述した
図5(A)〜
図6(B)に示した第二実施形態〜第九実施形態において、第一実施形態と同様に、箱体51の内部(閉鎖空間)の真空度を高めて負圧領域にしてもよいし、気体吸着剤を配置してもよいし、箱体51の内部(閉鎖空間)を低熱伝導性ガス雰囲気にしてもよい。
【0056】
上述した本実施形態に係るタンク支持構造及び船舶によれば、閉鎖空間を形成する箱体51により支持ブロック5を形成したことにより、船体側の第一支持部3とタンク2側の第二支持部4との間にガス断熱層を形成することができ、断熱性能の向上を図ることができる。また、断熱性及び強度に優れた素材(金属、樹脂等)を用いて箱体51を形成することにより、製造コストを抑制しつつ、断熱性能及び強度の向上を図ることができる。
【0057】
また、箱体51を伸縮可能に構成することにより、船体動揺やタンク重量等に基づく荷重変動による変形に追従することができる。また、タンク支持構造の断熱性能を向上させたことにより、タンク2の外周を覆う断熱材21の材質を低廉なものに変更したり、厚さを薄くすることによって断熱材21の使用量を低減したりすることもできる。
【0058】
また、箱体51の内部に多孔質ブロック52を配置することにより、断熱性能を保持しつつ支持ブロック5の強度をより向上することができる。また、箱体51の閉鎖空間を負圧にしたり低熱伝導性ガス雰囲気にしたりすることにより、断熱性能をより向上することができる。また、第一支持部3又は第二支持部4の何れか一方を滑動可能に構成することにより、タンク2に貯蔵する貨物が低温液体の場合であっても、タンク2と船体とを相対移動可能に構成することができ、タンク2の低温液体による伸縮に容易に対応することができる。
【0059】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、低温タンク以外のタンクにも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。