【実施例】
【0027】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
なお、各実施例で使用した供試菌株一覧を以下の表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
実施例1.抗真菌作用物質のスクリーニング
抗真菌作用を示す可能性がある物質について、βラクタム系抗生物質であるCFX共存下における、真菌およびMRSAの増殖に及ぼす影響を調べた。
【0030】
(1)培地の準備
以下に示した基礎培地成分を秤量し、精製水に懸濁後、pHを調整し、121℃で15分間高圧滅菌した。
【0031】
【表4】
【0032】
(2)βラクタム系抗生物質および抗真菌作用スクリーニング物質の添加
高圧滅菌後、50℃に冷却した後、CFX、抗真菌作用スクリーニング物質を以下に示す濃度となるように添加した。その後、培地を20mLずつシャーレに分注して固化した。なお、対照としてCFXのみを添加した培地も同様に作製した。
【0033】
【表5】
【0034】
(3)菌の接種と培養
前培養した菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、10倍連続希釈液を作製し、10
0〜10
-6希釈の菌液を滴下した。
滴下した菌液が培地に吸収された後、35℃で好気培養を行い、45時間後に判定を行った。
【0035】
(4)結果
各物質の添加濃度ごとの真菌およびMRSAに対する作用の結果を、表6〜10に示す。菌の発育が認められたものを+、認められなかったものを−で示している。
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
【表8】
【0039】
【表9】
【0040】
【表10】
【0041】
上記の表に示す様に、すべての抗真菌作用スクリーニング物質で抗真菌作用が認められた。一方、MRSAに対する作用に関しては、イマザリル、 5,7-ジクロロ-8-キノリノール、チアベンダゾールで増殖促進作用が認められた。
【0042】
実施例2.チアベンダゾール濃度範囲の検討
βラクタム系抗生物質であるCFXの濃度を固定して、MRSAに対する増殖促進作用を示すチアベンダゾール添加濃度範囲を調べた。
以下に示す実施例12までのすべてにおいて培地調製、薬剤調製、菌液調製、判定の各操作は実施例1と同様に行った。なお、以下の実施例には、抗真菌作用に関するデータを示さないが、すべての検討において、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)を用いて抗真菌作用があることを確認している。
【0043】
(1)基礎培地成分
実施例1と同様の基礎培地成分に選択剤17mg/Lを添加した。
(2)チアベンダゾールおよびCFXの添加
チアベンダゾールおよびCFXを以下の表11に示す濃度となるように添加した。
【0044】
【表11】
【0045】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表12に示す。
【0046】
【表12】
【0047】
表12に示す様に、MRSAに対して、チアベンダゾール5から5,000mg/Lの濃度範囲まで増殖促進作用が認められた。
【0048】
実施例3.βラクタム系抗生物質濃度範囲の検討
βラクタム系抗生物質としてセファマイシン系のCFXまたはオキサセフェム系のLMOXを使用し、チアベンダゾール共存下で黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌に対する増殖促進作用を示す添加濃度範囲を調べた。
【0049】
(1)基礎培地成分
実施例1と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)チアベンダゾールおよびCFX、LMOXの添加
チアベンダゾール、CFX、LMOXを以下の表13に示す濃度となるように添加した。
【0050】
【表13】
【0051】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表14および15に示す。結果は、対照として作製したチアベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0052】
【表14】
【0053】
【表15】
【0054】
上記の表に示す様に、チアベンダゾール添加なしの培地との比較により示されるチアベンダゾールとの併用効果はCFX、LMOXとも下限1mg/L、上限100mg/Lで認められた。
【0055】
実施例4.MPIPCまたはCZXとチアベンダゾールの併用効果の検討
βラクタム系抗生物質としてペニシリン系のMPIPCまたはセファロスポリン系のCZXを使用し、チアベンダゾール共存下でMRSA、表皮ブドウ球菌に対する増殖促進作用の検討を行った。
【0056】
(1)基礎培地成分
以下に示した基礎培地成分を用い、121℃で15分間高圧滅菌し、50℃に冷却した後に羊血液を添加した。
【0057】
【表16】
【0058】
(2)チアベンダゾールおよびMPIPC、CZXの添加
チアベンダゾール、MPIPC、CZXを以下の表17に示す濃度となるように添加した。
【0059】
【表17】
【0060】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表18および19に示す。結果は、対照として作製したチアベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0061】
【表18】
【0062】
【表19】
【0063】
上記の表に示す様に、チアベンダゾール添加なしの培地との比較により示されるチアベンダゾールとの併用効果がMPIPC、CZXともに認められた。
【0064】
実施例5.スタフィロコッカス属細菌の各菌種に対する作用の検討
MRSA、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・カプラエ、スタフィロコッカス・ヘモリティカス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・スキウリに対する増殖促進作用の有無を調べた。
【0065】
(1)基礎培地成分
実施例1と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)チアベンダゾールおよびCFXの添加
チアベンダゾール、CFXを以下の表20に示す濃度となるように添加した。
【0066】
【表20】
【0067】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表21〜26に示す。結果は、対照として作製したチアベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0068】
【表21】
【0069】
【表22】
【0070】
【表23】
【0071】
【表24】
【0072】
【表25】
【0073】
【表26】
【0074】
上記の表に示す様に、検討したすべての菌種において、チアベンダゾールとβラクタム系抗生物質の併用による増殖促進効果が認められた。
【0075】
実施例6.普通寒天培地を用いた検討
基礎培地として普通寒天培地を用いた場合のMRSAに対する増殖促進作用の有無を調べた。
【0076】
(1)基礎培地の調製
以下に示した普通寒天培地の成分表に従い、基礎培地を調製した。
【0077】
【表27】
【0078】
(2)チアベンダゾールおよびCFXの添加
チアベンダゾールを80mg/L、CFXを5mg/Lとなるように添加した。
【0079】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表28に示す。結果は、対照として作製したチアベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0080】
【表28】
【0081】
表28に示す様に、普通寒天培地を基礎培地とした場合も、MRSAに対する増殖促進作用が認められた。
【0082】
実施例7.培養時間短縮の検討
培養時間を16、18、20時間として、チアベンダゾールおよびCFXの添加によるMRSAに対する増殖促進作用を調べた。
【0083】
(1)基礎培地成分
実施例1と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)チアベンダゾールおよびCFXの添加
チアベンダゾールおよびCFXを以下の表29に示す濃度となるように添加した。
【0084】
【表29】
【0085】
(3)結果
16、18、20時間後の判定結果を以下の表30に示す。
【0086】
【表30】
【0087】
表30に示す様に、チアベンダゾール2,000mg/Lまでは16時間培養後の判定においても増殖促進作用が認められた。この結果から、本発明の薬剤を添加した培地は、少量の菌数の検出がより短時間で可能となることが示唆された。
【0088】
実施例8.CFXとアルベンダゾールの併用効果の検討
ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてアルベンダゾールを使用し、CFXの共存下でMRSAに対する増殖促進作用の検討を行った。
【0089】
(1)基礎培地成分
実施例1と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)アルベンダゾールおよびCFXの添加
アルベンダゾール(ABZ)を80mg/L、CFXを5mg/Lとなるように添加した。
【0090】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表31に示す。結果は、対照として作製したアルベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0091】
【表31】
【0092】
表31に示す様に、ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてアルベンダゾールを使用した場合も、CFXとの併用によるMRSAに対する増殖促進作用が認められた。
【0093】
実施例9.CFXとフェンベンダゾールの併用効果の検討
ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてフェンベンダゾールを使用し、CFXの共存下でMRSAに対する増殖促進作用の検討を行った。
【0094】
(1)基礎培地成分
実施例1と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)フェンベンダゾールおよびCFXの添加
フェンベンダゾール(FBZ)を80mg/L、CFXを5mg/Lとなるように添加した。
【0095】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表32に示す。結果は、対照として作製したフェンベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0096】
【表32】
【0097】
表32に示す様に、ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてフェンベンダゾールを使用した場合も、CFXとの併用によるMRSAに対する増殖促進作用が認められた。
【0098】
実施例10.ストレプトコッカス属細菌の各菌種に対する作用の検討
チアベンダゾールとβラクタム系抗生物質の併用による化膿レンサ球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、肺炎球菌に対する増殖促進作用の有無を調べた。
【0099】
(1)基礎培地成分
実施例4と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)チアベンダゾールおよびCFX、LMOXの添加
チアベンダゾール、CFX、LMOXを以下の表33に示す濃度となるように添加した。
【0100】
【表33】
【0101】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表34〜36に示す。結果は、対照として作製したチアベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0102】
【表34】
【0103】
【表35】
【0104】
【表36】
【0105】
上記の表に示す様に、検討したすべての菌種において、チアベンダゾールとβラクタム系抗生物質の併用による増殖促進効果が認められた。
【0106】
実施例11.CFXとアルベンダゾールの併用効果の検討
ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてアルベンダゾールを使用し、CFXの共存下でストレプトコッカス・アガラクティエに対する増殖促進作用の検討を行った。
【0107】
(1)基礎培地成分
実施例4と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)アルベンダゾールおよびCFXの添加
アルベンダゾールを80mg/L、CFXを3mg/Lとなるように添加した。
【0108】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表37に示す。結果は、対照として作製したアルベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0109】
【表37】
【0110】
表37に示す様に、ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてアルベンダゾールを使用した場合も、CFXとの併用によるストレプトコッカス・アガラクティエに対する増殖促進作用が認められた。
【0111】
実施例12.CFXとフェンベンダゾールの併用効果の検討
ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてフェンベンダゾールを使用し、CFXの共存下でストレプトコッカス・アガラクティエに対する増殖促進作用の検討を行った。
【0112】
(1)基礎培地成分
実施例4と同様の基礎培地成分を用いた。
(2)フェンベンダゾールおよびCFXの添加
フェンベンダゾールを80mg/L、CFXを3mg/Lとなるように添加した。
【0113】
(3)結果
24、45時間後の判定結果を以下の表38に示す。結果は、対照として作製したフェンベンダゾール添加なしの培地との比較により示している。
【0114】
【表38】
【0115】
表38に示す様に、ベンゾイミダゾール系抗菌物質としてフェンベンダゾールを使用した場合も、CFXとの併用によるストレプトコッカス・アガラクティエに対する増殖促進作用が認められた。