特許第5969006号(P5969006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969006
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】摺動部材、及び、摺動部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/14 20060101AFI20160728BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F16C33/14 A
   F16C33/12 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-507829(P2014-507829)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2013058362
(87)【国際公開番号】WO2013146608
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-79808(P2012-79808)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】児玉 勇人
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】冨川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】早川 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中根 崇展
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−039409(JP,A)
【文献】 実公昭62−008418(JP,Y1)
【文献】 特開平11−201166(JP,A)
【文献】 特開平06−264928(JP,A)
【文献】 特開昭62−266217(JP,A)
【文献】 特開2003−137150(JP,A)
【文献】 特開2006−038181(JP,A)
【文献】 特許第4842283(JP,B2)
【文献】 特開2006−038185(JP,A)
【文献】 特許第2865036(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26、33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理によって硬化された円筒状の金属部材であるブシュが、熱処理がされていない円筒状の金属部材であるカラーに圧入固定されている摺動部材であって、該摺動部材はハウジングに圧入されて使用され、
前記ブシュは、板状の裏金の表面において金属粉末が焼結されたバイメタルの焼結合金 が円筒状に形成され、
半径方向の内側から外側に向かって、前記金属粉末が焼結された焼結層、前記裏金、及 び、前記カラーの順に三層で形成され、
前記ブシュは、焼結層の硬度が前記裏金の硬度よりも大きく形成されており、
前記裏金の硬度は、前記カラーの硬度よりも大きく形成されている、
ことを特徴とする摺動部材。
【請求項2】
前記ブシュは、内周面に溝又はインデントが形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
前記カラーは、両端にクリンチ形状を有する板状部材の前記クリンチ形状同士を係合させることにより円筒状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の摺動部材。
【請求項4】
ハウジングに圧入されて使用される摺動部材の製造方法であって、
板状の金属部材である裏金の表面において金属粉末を焼結することにより、バイメタルの焼結合金を形成し、
前記焼結合金を円筒状のブシュとして成形し、
前記ブシュに熱処理を施して硬化させ
前記ブシュを熱処理がされていない円筒状の金属部材であるカラーに圧入し、
半径方向の内側から外側に向かって、前記金属粉末が焼結された焼結層、前記裏金、及 び、前記カラーの順に三層で形成し、
前記ブシュにおける焼結層の硬度を前記裏金の硬度よりも大きく形成し、
前記裏金の硬度を前記カラーの硬度よりも大きく形成する、
ことを特徴とする摺動部材の製造方法。
【請求項5】
前記焼結合金に溝又はインデントを形成し、該溝又はインデントの形成面を内周面として前記ブシュを円筒状に形成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の摺動部材の製造方法。
【請求項6】
両端にクリンチ形状を有する板状部材に曲げ加工を行い、前記クリンチ形状を係合させることにより、前記カラーを円筒状に形成する、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の摺動部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材、及び、摺動部材の製造方法の技術に関し、より詳細には強度と加工性との双方に優れた摺動部材を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建機や自動車などの各種機械において、ハウジングに挿通された軸を回転可能とするために、すべり軸受などの摺動部材が用いられており、これに関する技術も開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−85363号公報
【特許文献2】特開2007−333185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の技術によれば、板状の裏金の上で金属粉末を焼結させて二層構造の板状材料を成形し、この板状材料を円筒状に成形して摺動部材を構成している。
また、前記特許文献2に記載の技術によれば、円筒状の裏金の内周部に円筒状の焼結材料を圧入して摺動部材を構成している。
【0005】
しかし、前記特許文献1に記載の技術によれば、摺動部材に熱処理を施す際に裏金の硬度も高くなるため、摺動部材をハウジングに圧入する際に摺動部材の裏金部分にかじりが生じることがあった。また、板厚が厚く摺動部材が全体的に硬くなることから、円筒状に成形する時の難度が高くなっていた。
【0006】
一方、前記特許文献2に記載の技術によれば、円筒状の焼結材料やカラーの加工精度を高めることが困難であった。また、焼結材料は脆性が高いため、裏金に圧入する際に割れが生じる可能性があった。加えて、当初より板状部材ではなく円筒状の部材を用いるため、溝やインデントの形成に制限があった。
【0007】
本発明は、上記のような状況を鑑み、ハウジングに圧入する際に摺動部材の裏金部分にかじりが生じにくく、割れにくく、溝やインデント等の成形がしやすい、摺動部材、及び、摺動部材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、熱処理によって硬化された円筒状の金属部材であるブシュが、熱処理がされていない円筒状の金属部材であるカラーに圧入固定されている摺動部材であって、該摺動部材はハウジングに圧入されて使用され、前記ブシュは、板状の裏金の表面において金属粉末が焼結されたバイメタルの焼結合金が円筒状に形成され、半径方向の内側から外側に向かって、前記金属粉末が焼結された焼結層、前記裏金、及び、前記カラーの順に三層で形成され、前記ブシュは、焼結層の硬度が前記裏金の硬度よりも大きく形成されており、前記裏金の硬度は、前記カラーの硬度よりも大きく形成されているものである。
【0010】
請求項2においては、前記ブシュは、内周面に溝又はインデントが形成されているものである。
【0011】
請求項3においては、前記カラーは、両端にクリンチ形状を有する板状部材の前記クリンチ形状同士を係合させることにより円筒状に形成されているものである。
【0012】
請求項4においては、ハウジングに圧入されて使用される摺動部材の製造方法であって、板状の金属部材である裏金の表面において金属粉末を焼結することにより、バイメタルの焼結合金を形成し、前記焼結合金を円筒状のブシュとして成形し、前記ブシュに熱処理を施して硬化させ、前記ブシュを熱処理がされていない円筒状の金属部材であるカラーに圧入し、半径方向の内側から外側に向かって、前記金属粉末が焼結された焼結層、前記裏金、及び、前記カラーの順に三層で形成し、前記ブシュにおける焼結層の硬度を前記裏金の硬度よりも大きく形成し、前記裏金の硬度を前記カラーの硬度よりも大きく形成するものである。
【0013】
請求項5においては、前記焼結合金に溝又はインデントを形成し、該溝又はインデントの形成面を内周面として前記ブシュを円筒状に形成するものである。
【0014】
請求項6においては、両端にクリンチ形状を有する板状部材に曲げ加工を行い、前記クリンチ形状を係合させることにより、前記カラーを円筒状に形成するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本発明に係る摺動部材、及び、摺動部材の製造方法によれば、ハウジングに圧入する際に摺動部材の裏金部分にかじりが生じにくく、割れにくく、溝やインデント等の成形を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一実施形態に係る摺動部材の製造方法における各工程を示した図。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ、第一実施形態及び第二実施形態に係る摺動部材の軸心方向断面図。
図3】(a)及び(b)はそれぞれ、別実施例に係るカラーの製造方法を示した図。
図4】第三実施形態に係る摺動部材の製造方法における各工程を示した図。
図5】(a)は第三実施形態に係る摺動部材の軸心方向断面図、(b)は同じく摺動部材に軸を挿通した状態の軸心方向断面図。
図6】(a)は第四実施形態に係る摺動部材の軸心方向断面図、(b)は同じく摺動部材に軸を挿通した状態の軸心方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[軸受40]
まず、第一実施形態に係る摺動部材である軸受40の製造方法について説明する。
本実施形態に係る摺動部材である軸受40は、図示しないハウジングに挿通された軸を回転可能とするために用いられるすべり軸受であり、ハウジングに圧入されて使用されるものである。
【0019】
本実施形態に係る軸受40の製造方法は、図1に示す如く、粉末散布工程(ステップS01)と、焼結・圧延工程(ステップS02)と、ブシュ成形工程(ステップS03)と、熱処理工程(ステップS04)と、圧入工程(ステップS05)と、含油・仕上げ工程(ステップS06)と、を備える。以下、各工程について具体的に説明する。
【0020】
図1に示す粉末散布工程(ステップS01)では、まず、板状の金属部材である裏金15を準備する。この裏金15の材料には例えば鉄系部材などが用いられる。次に、主に鉄粉と銅粉とが略均一に混合された金属粉末を、散布装置を用いて裏金15の表面15aに散布し、散布層11bを形成する。このように、板状の裏金15の表面に略均一に散布層11bを散布して、板状の焼結前部材10bを構成する。
【0021】
次に、図1に示す焼結・圧延工程(ステップS02)では、粉末散布工程(ステップS01)で構成した焼結前部材10bを焼結炉に入れてヒータで加熱し、散布層11bにおける主成分である鉄粉末の融点よりも低い温度(例えば、800〜1300度)の雰囲気で散布層11bを焼結させる。これにより、散布層11bは多孔質の焼結層11となり、焼結前部材10bは裏金15と焼結層11とのバイメタルからなる焼結合金10となる。本実施形態では、焼結工程を複数回繰り返すと同時に、焼結工程の間に焼結合金10をローラで圧延する圧延工程を行うことにより、焼結合金10の板厚を薄く形成している。また、本実施形態では連帯焼結法によって焼結合金10を形成するものであるが、単体焼結法など他の方法で形成する構成とすることも可能である。軸受40の内周面に溝やインデントを形成する場合は、この段階で溝加工又はインデント加工により溝やインデントを形成しておくと良い。
【0022】
次に、図1に示すブシュ成形工程(ステップS03)では、焼結・圧延工程(ステップS02)で形成した焼結合金10を、焼結層11が内側となるようにプレス機等によって巻いて曲げ加工を行い、円筒状のブシュ20を成形する。このブシュ成形工程によって、後に摺動部材である軸受40の内周面となる、ブシュ20の内周面が形成される。
【0023】
次に、図1に示す熱処理工程(ステップS04)では、ブシュ20に対して焼入れ・焼き戻し等の熱処理を行い、ブシュ20のライニング硬化を行う。この処理より、裏金15及び焼結層11それぞれのライニングの硬度が向上し(例えば、裏金15はビッカース硬さ100〜400、焼結層11はビッカース硬さ300〜800)、ブシュ20の強度が向上する。
【0024】
次に、図1に示す圧入工程(ステップS05)では、円筒状の金属部材(例えば鉄系部材)であるカラー30に、熱処理を行ったブシュ20を圧入し、軸受40を形成する。カラー30はブシュ20のような熱処理は行われていないため、その硬度は裏金15よりも小さい(例えば、ビッカース硬さ100〜200)。また、カラー30の内径寸法はブシュ20を圧入できる程度に、ブシュ20の外径寸法と同一若しくは若干小さく形成されている。この圧入工程によって、後に摺動部材である軸受40の外周面となる、カラー30の外周面が形成される。
【0025】
次に、図1に示す含油・仕上げ工程(ステップS06)では、含油機を用いて軸受40に高粘度潤滑油からなる油分を含浸させる。含油工程では、高粘度潤滑油を加熱して低粘度化し、この潤滑油内に軸受40を浸漬し、真空雰囲気下で静置する。これにより、軸受40の気孔内の空気が気孔外へ吸い出される一方で、低粘度化した潤滑油が軸受40の気孔内に吸引される。潤滑油を吸引した軸受40を空気中に取り出して室温にまで放冷すると、低粘度化した潤滑油は軸受40の気孔内で再び元の高粘度潤滑油に戻り流動性を失う。これにより、高粘度潤滑油を軸受40の気孔内に留めておくことができる。
【0026】
上記の如く、本実施形態に係る摺動部材である軸受40においては、板状の金属部材である裏金15の表面において金属粉末を焼結して焼結層11が形成されることにより、バイメタルの焼結合金10が形成される。そして、焼結合金10が円筒状のブシュ20として成形され、ブシュ20に熱処理が施された後に、ブシュ20が円筒状の金属部材であるカラー30に圧入されて、軸受40が形成されるのである。即ち、本実施形態に係る軸受40は、図2(a)に示す如く、その内側から外側に向かって、焼結層11、裏金15、カラー30の三層が配置されているのである。このように、それぞれの硬度は上述した硬さの範囲(焼結層11:300〜800Hv、裏金15:100〜400、カラー30:100〜200Hv)のうち、内側から外側に向かうに従って順に小さくなるように構成することがより好ましい。換言すれば、焼結層11の硬度を裏金15の硬度よりも大きく形成し、裏金15の硬度をカラー30の硬度よりも大きく形成することがより好ましい。
【0027】
上記の如く構成することにより、軸受40をハウジングに圧入する際に、軸受40の外周面にかじりを生じにくくすることができる。具体的には、軸受40の外周に配置されるカラー30には熱処理が行われていないため、カラー30の硬度は裏金15等と比較して小さくなる。このため、軸受40をハウジングに圧入する際にハウジングと当接するカラー30の部分でかじりの発生を抑制することが可能となるのである。
【0028】
また、熱処理がされていないカラー30が外周部に配置されることにより、軸受40の全体的な硬さを抑えることができる。これにより、軸受40が局部的に発生する強い当りを減少させることができ、耐焼付き性及び耐摩耗性を向上させて割れを生じにくくすることができる。
【0029】
加えて、厚み(半径方向の厚さ)が大きい軸受40を形成する場合でも、カラー30の半径方向厚さを調整すればよく、焼結合金10の厚さを一定とすることができる。このため、軸受40の厚みが大きい場合でも容易に成形することが可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態によれば、板状の焼結前部材10bから焼結合金10を形成し、この焼結合金10を曲げ加工してブシュ20を成形する構成としているため、焼結材料のみで円筒状部品を成形する必要がなく、容易に加工することができる。加えて、脆性の高い焼結材料のみを裏金に圧入する必要がないため、焼結材料を裏金に圧入する際に割れが生じることがない。
【0031】
また、板状の焼結合金10の段階で溝加工又はインデント加工により溝やインデントを形成しておくことができるため、軸受40の内周面に溝やインデントを容易に形成して、軸受40の内周面における摺動特性を向上させることが可能となる。
【0032】
上記の如く、本実施形態によれば、ハウジングに圧入する際に軸受40の裏金部分であるカラー30にかじりが生じにくく、割れにくく、溝やインデント等の成形がしやすい、軸受40を製造することが可能となるのである。
【0033】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る摺動部材である軸受140について説明する。
なお、本実施形態において説明する軸受140については、その構成及び製造方法については前記第一実施形態と略同様であるため、以下においては第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0034】
本実施形態に係る摺動部材である軸受140は、円筒状の金属部材であるカラー130が、カラー本体130aに対して銅めっき130bが施されて構成されている。カラー本体130aには例えば鉄系部材が用いられる。銅めっき130bは銅系のめっきで構成される。つまり、本実施形態におけるカラー130の外周面は銅系材料でめっきされており、カラー130の外周面に配置される銅めっき130bが摺動部材である軸受140の外周面として形成されている。即ち、本実施形態に係る軸受140は、図2(b)に示す如く、その内側から外側に向かって、焼結層11、裏金15、カラー本体130a、銅めっき130bの四層が配置されているのである。
【0035】
上記の如く構成することにより、軸受140をハウジングに圧入する際に、軸受140の外周面にかじりをより生じにくくすることができる。具体的には、軸受140の外周に配置されるカラー130において、外周側には熱処理が行われておらず、鉄系部材よりも硬度の小さい銅系部材である銅めっき130bが施されるため、カラー130の外側における硬度は裏金15等と比較してより小さくなる。このため、軸受140をハウジングに圧入する際にハウジングと当接するカラー130の部分(銅めっき130b)でかじりの発生をより抑制することが可能となるのである。
【0036】
尚、本願発明の「円筒状の金属部材であるカラー30」は、パイプ材やソリッド材から切削形成しても、また、板状(帯状)の部材の端部同士を突き合せて(巻いて)形成してもよく、コスト面や設備面で適宜選択可能である。
但し、板状部材から円筒形状を作成した方がより安価にカラーを作成でき好ましい。
その場合は締め代を持たせるために合せ目を閉じた状態で仕上げ加工をする。
さらに、板状部材を巻いてカラーを形成する場合は、合せ目を溶接で結合するのみでなく、クリンチ形状で結合するようにしてもよい。
【0037】
以下、図3を用いて、カラー30を板状部材から形成し、合せ目をクリンチ形状で結合した場合について説明する。具体的には図3(a)に示す如く、両端にクリンチ形状(略円形状の係合凸部17a及び係合凹部17b)を有する板状部材を、図示しない曲げ加工機等によって巻いて曲げ加工を行い、中央部分が半円筒状の曲げ部材17Cを成形する。この際、曲げ部材17Cにおける内周面の曲率半径は、ブシュ20における外周面の曲率半径と略同一か、少し大きくなるように形成する。この荒曲げ工程によって形成される曲げ部材17Cにおける外側の面が、カラー30の外周面、即ち軸受40の外周面となる。
【0038】
次に、図3(b)に示す如く、半円筒形状の固定型である上型52sの側に曲げ部材17Cの中央部分(半円筒状部分)をセットする。そして、同じく半円筒形状の可動型である下型52mを、曲げ部材17Cの端部の側から図3(b)に示す矢印Uの如く近接させるのである。これにより、板状部材である曲げ部材17Cの両側端部を、下型52mの半円筒面に沿わせて変形させることにより、クリンチ形状を係合させる。具体的には、係合凸部17aを係合凹部17bに進入させて係合させることにより、板状部材である曲げ部材17Cの両側端部を接合するのである。このようにして、外側部材であるカラー30を形成する。その後、ブシュ20を円筒状のカラー30に圧入して、軸受40を形成するのである。
【0039】
[軸受40]
次に、第三実施形態に係る摺動部材である軸受40の製造方法について、図4及び図5を用いて説明する。
本実施形態に係る摺動部材である軸受40は、図示しないハウジングに挿通された軸を回転可能とするために用いられるすべり軸受であり、ハウジングに圧入されて使用されるものである。
【0040】
本実施形態に係る軸受40の製造方法は、図4に示す如く、粉末散布工程(ステップS01)と、焼結・圧延工程(ステップS02)と、ブシュ成形工程(ステップS03)と、熱処理工程(ステップS04)と、圧入工程(ステップS05)と、含油・仕上げ工程(ステップS06)と、を備える。以下、各工程について具体的に説明する。
【0041】
図4に示す粉末散布工程(ステップS01)では、まず、板状の金属部材である裏金15を準備する。この裏金15の材料には例えば鉄系部材などが用いられる。次に、主に銅粉と鉄粉とが略均一に混合された金属粉末を、散布装置を用いて裏金15の表面15aに散布し、散布層11bを形成する。このように、板状の裏金15の表面に略均一に散布層11bを散布して、板状の焼結前部材10bを構成する。
【0042】
次に、図4に示す焼結・圧延工程(ステップS02)では、粉末散布工程(ステップS01)で構成した焼結前部材10bを焼結炉に入れてヒータで加熱し、散布層11bにおける金属粉末の融点よりも低い温度(例えば、約800度)の雰囲気で散布層11bを焼結させる。これにより、散布層11bは多孔質の焼結層11となり、焼結前部材10bは裏金15と焼結層11とのバイメタルからなる焼結合金10となる。本実施形態では、焼結工程を複数回繰り返すと同時に、焼結工程の間に焼結合金10をローラで圧延する圧延工程を行うことにより、焼結合金10の板厚を薄く形成している。また、本実施形態では連帯焼結法によって焼結合金10を形成するものであるが、単体焼結法など他の方法で形成する構成とすることも可能である。
【0043】
次に、図4に示すブシュ成形工程(ステップS03)では、焼結・圧延工程(ステップS02)で形成した焼結合金10を、焼結層11が内側となるようにプレス機等によって巻いて曲げ加工を行い、円筒状のブシュ20を成形する。この際、一個の軸受40について二個ずつブシュ20を成形する。このブシュ成形工程によって、後に摺動部材である軸受40の内周面となる、ブシュ20の内周面が形成される。
【0044】
次に、図4に示す熱処理工程(ステップS04)では、ブシュ20に対して浸炭焼入れ・焼き戻し等の熱処理を行い、ブシュ20の表面改質を行う。この処理より、裏金15及び焼結層11それぞれの表面硬度が向上し(例えば、裏金15はビッカース硬さ150〜400、焼結層11はビッカース硬さ300〜800)、ブシュ20の強度が向上する。なお、この表面改質処理は浸炭処理法に限られず、この他に例えば、窒化、浸硫窒化処理法など、他の表面硬度を向上させる処理でも差し支えない。
【0045】
次に、図4に示す圧入工程(ステップS05)では、円筒状の金属部材(例えば鉄系部材)であるカラー30に、熱処理を行った二個のブシュ20・20をそれぞれ両側から(図4においては上下方向から)圧入し、軸受40を形成する。この圧入工程によって、後に摺動部材である軸受40の外周面となる、カラー30の外周面が形成される。この際、図5(a)に示す如く、ブシュ20・20は、カラー30の内周面においてブシュ20・20の相互間に隙間が形成されるように圧入され、ブシュ20・20の相互間に形成される前記隙間が、潤滑油用の溝40aとして構成される。つまり、ブシュ20・20の間で形成される隙間の幅が溝40aの幅Dとなるのである。これにより、図5(b)に示す如く、軸受40の内周面に軸Aを挿通した際には、溝40aはその内部に潤滑油が通るように機能するのである。
【0046】
なお、カラー30はブシュ20のような熱処理は行われていないため、その表面硬度は裏金15よりも小さい(例えば、ビッカース硬さ50〜200)。また、カラー30の内径寸法はブシュ20を圧入できる程度に、ブシュ20の外径寸法と同一若しくは若干小さく形成されている。
【0047】
次に、図4に示す含油・仕上げ工程(ステップS06)では、含油機を用いて軸受40に高粘度潤滑油からなる油分を含浸させる。含油工程では、高濃度潤滑油を加熱して液状化させて低粘度化し、この潤滑油内に軸受40を浸漬し、真空雰囲気下で静置する。これにより、軸受40の気孔内の空気が気孔外へ吸い出される一方で、液状化した潤滑油が軸受40の気孔内に吸引される。潤滑油を吸引した軸受40を空気中に取り出して室温にまで放冷すると、液状化した潤滑油は軸受40の気孔内で再び元の高粘度潤滑油に戻り流動性を失う。これにより、高粘度潤滑油を軸受40の気孔内に留めておくことができる。
【0048】
上記の如く、本実施形態に係る摺動部材である軸受40においては図5(a)及び(b)に示す如く、円筒状部材である複数(本実施形態においては二個)のブシュ20・20を円筒状部材であるカラー30に圧入して、カラー30の内周面においてブシュ20・20の相互間に形成される隙間を、潤滑油用の溝40aとして構成している。
【0049】
上記の如く構成することにより、ブシュ20・20をカラー30に圧入するだけで潤滑油用の溝40aを形成することができるため、別途溝加工やインデント加工を施す必要がない。つまり、軸受40の内周面に溝やインデントを容易に形成して、軸受40の内周面における摺動特性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、ブシュ20・20の間で形成される隙間を溝40aとして構成することにより、溝40aの幅Dを容易に調整することができる。具体的には、ブシュ20・20をカラー30に圧入する際に、カラー30の軸心方向に圧入する長さを変更することにより、ブシュ20・20の間に形成される隙間の幅を変更して、溝40aの幅Dを調整することが可能となる。又は、ブシュ20・20の長さを変更することにより、ブシュ20・20の間に形成される隙間の幅を変更して、溝40aの幅Dを調整することが可能となるのである。
【0051】
また、本実施形態に係る摺動部材である軸受40においては、円筒状部材である二個のブシュ20・20を円筒状部材であるカラー30の両側から圧入して、カラー30の内周面においてブシュ20・20の相互間に形成する隙間を、潤滑油用の溝40aとして構成している。
【0052】
上記の如く構成することにより、それぞれのブシュ20・20をカラー30に圧入する際に、カラー30の一方の側から二個のブシュ20・20を圧入する場合と比較して労力をかけずにすみ、簡易な構成で潤滑油用の溝40aを形成することができる。つまり、軸受40の内周面に溝やインデントを容易に形成して、軸受40の内周面における摺動特性を向上させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る摺動部材である軸受40においては、図5(a)に示す如く、その内側から外側に向かって、焼結層11、裏金15、カラー30の三層が配置されている。そして、それぞれの表面硬度は内側から外側に向かうに従って小さくなるように構成されている。
【0054】
上記の如く構成することにより、軸受40をハウジングに圧入する際に、軸受40の外周面にかじりを生じにくくすることができる。具体的には、軸受40の外周に配置されるカラー30には熱処理が行われていないため、カラー30の表面硬度は裏金15等と比較して小さくなる。このため、軸受40をハウジングに圧入する際にハウジングと当接するカラー30の部分でかじりの発生を抑制することが可能となるのである。
【0055】
また、熱処理がされていないカラー30が外周部に配置されることにより、軸受40の全体的な硬さを抑えることができる。これにより、軸受40が局部的に発生する強い当りを減少させることができ、耐焼付き性及び耐摩耗性を向上させて割れを生じにくくすることができる。
【0056】
加えて、厚み(半径方向の厚さ)が大きい軸受40を形成する場合でも、カラー30の半径方向厚さを調整すればよく、焼結合金10の厚さを一定とすることができる。このため、軸受40の厚みが大きい場合でも容易に成形することが可能となる。
なお、本実施形態では、二個のブシュ20・20をカラー30に圧入しているが、例えば三個のブッシュ20・20・20をカラー30に圧入して、各ブッシュ20・20・20間に溝40aとして用いる隙間を形成する等、三個以上のブッシュ20・20・・・をカラー30に圧入するように構成することもできる。
【0057】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態に係る摺動部材である軸受140について、図6を用いて説明する。
なお、本実施形態において説明する軸受140については、その構成及び製造方法については前記第三実施形態と略同様であるため、以下においては第三実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0058】
本実施形態に係る摺動部材である軸受140においては、板状の金属部材である裏金15の表面において金属粉末を焼結することにより形成されたバイメタルの焼結合金を曲げ加工してブシュ120を成形している。この際、板状の焼結合金10の段階で溝加工により図6(a)に示す如く溝140bが形成されている。これにより、図6(b)に示す如く、軸受140の内周面に軸Aを挿通した際には、溝40aとは別に、溝140b・140bの内部に潤滑油が通るように機能するのである。
【0059】
本実施形態に係る構成は、ブシュ120・120の相互間で形成される溝40aだけでは溝の本数が足りない場合などでも潤滑油用の溝140bを別途形成することができるため、軸受140の軸心方向長さが比較的長い場合などに特に有用である。
【0060】
このように、本実施形態によれば、板状の焼結合金の段階で溝加工又はインデント加工により溝やインデントを形成しておくことにより、軸受140の内周面に溝やインデントを形成して、軸受140の内周面における摺動特性をより向上させているのである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る摺動部材、及び、摺動部材の製造方法によれば、ハウジングに圧入する際に摺動部材の裏金部分にかじりが生じにくく、割れにくく、溝やインデント等の成形を容易にすることが可能となることから、特に強度と加工性との双方に優れた摺動部材を製造するに際して、産業上有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6