(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボタン取付具(20)の突起部(22)を、生地(1)及びボタン(10)の孔(15)に貫通させた後、加締めることによりボタン(10)を生地(1)に取り付ける際にボタン(10)を保持させるボタン側ダイ(30、130、230)であって、
待機位置と前記突起部(22)を加締めるボタン取付位置との間を移動する、前記突起部(22)を加締めるためのパンチ体(50、150、250)と、
前記パンチ体(50、150、250)を収容し、前記パンチ体(50、150、250)の移動が伝達部材(60;144a、244a)を介して伝わることによりパンチ体(50、150、250)と同方向に移動可能となる押込み体(41、141、241)と、
前記押込み体(41、141、241)内において、パンチ体(50、150、250)の第1受け部(53、153、253)と押込み体(41、141、241)の第2受け部(43、143、243)との間に配置される弾性体(60、160、260)と、
前記弾性体(60、160、260)が圧縮している状態を維持するために前記押込み体(41、141、241)を係止する係止部(70、144、244)と、
前記係止部(70、144、244)による押込み体(41、141、241)の係止を解除するための係止解除機構(44a;170、270)とを備え、
前記係止解除機構(44a;170、270)による係止解除によって圧縮状態の弾性体(60、160、260)が伸長して、前記押込み体(41、141、241)がボタン取付位置に向かってパンチ体(50、150、250)よりも高速に移動して前記ボタン(10)を介して前記生地(1)を押すボタン側ダイ。
前記押込み体(41、141、241)の前記第2受け部(43、143、243)は、前記パンチ体(50、150、250)の前記第1受け部(53、153、253)よりも、ボタン取付位置側に位置する請求項1のボタン側ダイ。
前記係止部(70)は、前記押込み体(41)の外部に配置された外部係止部材(73)と、押込み体(41)に設けた、該外部係止部材(73)と係合可能な凹部(44)と、該外部係止部材(73)を凹部(44)と係合する側に付勢する外部弾性部材(75)とを含み、該外部係止部材(73)と凹部(44)が係合することにより、押込み体(41)の移動が止まり、前記伝達部材は前記弾性体(60)である請求項1又は2のボタン側ダイ。
前記係止部(144、244)は、前記パンチ体(150、250)に組み込まれた内部係止部材(144a、244a)と、押込み体(141、241)に設けた、該内部係止部材(144a、244a)と係合可能な凹部(147、247)と、該内部係止部材(144a、244a)を凹部(147、247)と係合する側に付勢する内部弾性部材(144b、244b)とを含み、該内部係止部材(144a、244a)と凹部(147、247)が係合することにより、押込み体(141、241)がパンチ体(150、250)に一体的に連結すると共に前記弾性体(160、260)が圧縮状態で保持され、前記伝達部材は該内部係止部材(144a、244a)である請求項1又は2のボタン側ダイ。
前記係止解除機構(44a)は、前記凹部(44)に設けた係合傾斜面(44a)を含み、該係合傾斜面(44a)が凹部(44)内の外部係止部材(73)を凹部(44)外に出すように機能する請求項3のボタン側ダイ。
前記係止解除機構(170、270)は、前記押込み体(141、241)の外部に配置された係止解除部材(173、273)と、前記押込み体(141、241)の外部から前記凹部(147、247)に連通する連通部(146、246)と、前記係止解除部材(173、273)を連通部(146、246)に入る側に付勢する弾性部材(175)とを含み、前記係止解除部材(173、273)が前記連通部(146、246)に入って凹部(147、247)内の内部係止部材(144a、244a)を凹部(147、247)外に出すように機能する請求項4のボタン側ダイ。
前記連通部(146、246)は、前記押込み体(141、241)の側壁を貫通し、押込み体(141、241)の軸線に平行に延びるスリット(146、246)である請求項6のボタン側ダイ。
ボタン取付具(20)の突起部(22)を、生地(1)及びボタン(10)の孔(15)に貫通させた後、加締めることによりボタン(10)を生地(1)に取り付ける際に使用するボタン取付装置(100)であって、
ボタン(10)を保持させるボタン側ダイ(30、130、230)と、
ボタン取付具を保持させる取付具側ダイ(80)と、
前記ボタン側ダイ(30、130、230)を上死点と下死点との間に移動させる駆動機構とを備え、
前記ボタン側ダイ(30、130、230)は、
前記駆動機構により駆動されて、前記上死点に対応する待機位置と前記下死点に対応する、前記突起部(22)を加締めるボタン取付位置との間を移動する、前記突起部(22)を加締めるためのパンチ体(50、150、250)と、
前記パンチ体(50、150、250)を収容し、前記パンチ体(50、150、250)の移動が伝達部材(60;144a、244a)を介して伝わることによりパンチ体(50、150、250)と同方向に移動可能となる押込み体(41、141、241)と、
前記押込み体(41、141、241)内において、パンチ体(50、150、250)の第1受け部(53、153、253)と押込み体(41、141、241)の第2受け部(43、143、243)との間に配置される弾性体(60、160、260)と、
前記弾性体(60、160、260)が圧縮している状態を維持するために前記押込み体(41、141、241)を係止する係止部(70、144、244)と、
前記係止部(70、144、244)による押込み体(41、141、241)の係止を解除するための係止解除機構(44a;170、270)とを備え、
前記係止解除機構(44a;170、270)による係止解除によって圧縮状態の弾性体(60、160、260)が伸長して、前記押込み体(41、141、241)がボタン取付位置に向かってパンチ体(50、150、250)よりも高速に移動して前記ボタン(10)を介して前記生地(1)を押すボタン取付装置。
前記押込み体(41、141、241)の前記第2受け部(43、143、243)は、前記パンチ体(50、150、250)の前記第1受け部(53、153、253)よりも、ボタン取付位置側に位置する請求項8のボタン取付装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボタン側ダイは、生地抜き時の押込み体の降下速度を生地抜きが確実に行われる程度に高める必要があるが、これに伴い、生地抜き直後の加締め開始時点のパンチ体の降下速度も大きくなる。そのため、加締め時にボタンにかかる負荷が大きくなり、この加締め時の負荷に耐え得るように、従前、ボタンを厚く設計している。この場合、ボタンの材料費が嵩んだり、衣服等においてボタンの出っ張り感、ごろつき感が大きくなり過ぎるといった問題があった。
【0006】
従って、本発明は、生地抜き時の押込み体の速度をパンチ体よりも高速に移動させて生地抜きを行うことができるボタン側ダイ、ボタン取付装置及びボタン取付方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、加締め時にボタンにかかる負荷を軽減し、これによりボタンの薄肉化を図ることができるボタン側ダイ、ボタン取付装置及びボタン取付方法を提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明(第1の本発明)によれば、ボタン取付具の突起部を、生地及びボタンの孔に貫通させた後、加締めることによりボタンを生地に取り付ける際にボタンを保持させるボタン側ダイであって、待機位置と前記突起部を加締めるボタン取付位置との間を移動する、前記突起部を加締めるためのパンチ体と、前記パンチ体を収容し、前記パンチ体の移動が伝達部材を介して伝わることによりパンチ体と同方向に移動可能となる押込み体と、前記押込み体内において、パンチ体の第1受け部と押込み体の第2受け部との間に配置される弾性体と、前記弾性体が圧縮している状態を維持するために前記押込み体を係止する係止部と、前記係止部による押込み体の係止を解除するための係止解除機構とを備え、前記係止解除機構による係止解除によって圧縮状態の弾性体が伸長して、前記押込み体がボタン取付位置に向かってパンチ体よりも高速に移動するボタン側ダイが提供される。
【0008】
本発明に係るボタン側ダイでは、パンチ体が待機位置からボタン取付位置に向かって移動を始めると、パンチ体の移動が伝達部材を介して押込み体に伝わり、押込み体もボタン取付位置に向かって移動する。この際、係止部が、パンチ体の第1受け部と押込み体の第2受け部との間に配置された弾性体の圧縮状態を維持するために押込み体を係止し、その後、係止解除機構が係止部による押込み体の係止を解除し、これをトリガーとして圧縮状態にあった弾性体が伸長する。この弾性体の伸長が押込み体の第2受け部を介して押込み体をボタン取付位置に向かってパンチ体よりも高速に移動させ、これによりボタン取付具の突起部を生地に貫通させる。この生地抜き直後にパンチ体によるボタン取付具の突起部の加締めが行われる。係止部による押込み体の係止、及び弾性体の圧縮は、a)押込み体が待機位置からボタン取付位置へと向かう途中で係止部が押込み体を係止して、移動し続けるパンチ体に対して押込み体を静止させ、これにより、第1及び第2受け部間の弾性体を次第に圧縮する態様と、b)パンチ体及び押込み体が待機位置からボタン取付位置へと移動し始める最初の時点で既に係止部が押込み体を係止しており、この係止により弾性体もパンチ体及び押込み体の移動開始時点で一定の圧縮状態に保持されている態様とに大別される。本発明における伝達部材は、態様a)では弾性体であり、態様b)では係止部で
【0009】
本発明において、生地に取り付けるボタンとしては、例えば樹脂製又は金属製の雄スナップボタン、雌スナップボタン、飾りボタン等を具体的に挙げることができるが、これに限らず、ボタン取付具の突起部をパンチ体が塑性変形させることにより生地に取り付けられるあらゆる種類のボタン類が含まれる。生地としては、例えば、織物、布、不織布、フェルト、皮革、樹脂シート等のシート状の材料を挙げることができる。ボタン取付具としては樹脂製又は金属製のものが使用され得、生地を貫通させる突起部は、軸部、ポスト、ピン等とも称される。本発明における弾性体とは、圧縮状態を解除することにより伸長し得るばね、エラストマー等をいう。
【0010】
本発明において、前記押込み体の前記第2受け部は、前記パンチ体の前記第1受け部よりも、ボタン取付位置側に位置し得る。この場合、前記係止解除機構による係止解除によって圧縮状態から伸長する弾性体は、パンチ体の第1受け部に支持されて押込み体の第2受け部をボタン取付位置側へと押す。これにより、押込み体がボタン取付位置に向かって高速に移動する。
【0011】
第1の本発明の一実施形態において、前記係止部は、前記押込み体の外部に配置された外部係止部材と、押込み体に設けた、該外部係止部材と係合可能な凹部と、該外部係止部材を凹部と係合する側に付勢する外部弾性部材とを含み、該外部係止部材と凹部が係合することにより、押込み体の移動が止まり、前記伝達部材は前記弾性体である。これは、上述した態様a)の構成の一例であり、押込み体が待機位置からボタン取付位置へと向かう途中で、外部係止部材が外部弾性部材により付勢されて押込み体の凹部に係合することにより押込み体を係止する。これにより、移動し続けるパンチ体に対して押込み体が静止し、弾性体はパンチ体の第1受け部と押込み体の第2受け部との間で次第に圧縮される。この実施形態における前記係止解除機構は、前記凹部に設けた係合傾斜面を含み、該係合傾斜面が凹部内の外部係止部材を凹部外に出すように機能し得る。係合傾斜面は、押下げ体がボタン取付位置へ向かって押されることにより、凹部内の外部係止部材に対して凹部外に出る方向の力を及ぼす。凹部から外部係止部材が出る直前において、押下げ体は、圧縮された弾性体を介してパンチ体からボタン取付位置へ向かって押されるか、又は、パンチ体(又はパンチ体を駆動する駆動機構の一部)から直接ボタン取付位置側にへ押される。
【0012】
第1の本発明の別の実施形態において、前記係止部は、前記パンチ体に組み込まれた内部係止部材と、押込み体に設けた、該内部係止部材と係合可能な凹部と、該内部係止部材を凹部と係合する側に付勢する内部弾性部材とを含み、該内部係止部材と凹部が係合することにより、押込み体がパンチ体に一体的に連結すると共に前記弾性体が圧縮状態で保持され、前記伝達部材は該内部係止部材である。これは、上述した態様b)の構成の一例であり、パンチ体及び押込み体が待機位置からボタン取付位置へと移動し始める最初の時点で既に内部係止部が内部弾性部材により付勢されて押込み体の凹部に係合することにより押込み体を係止し、また、この係止により弾性体も移動開始時点で既にパンチ体の第1受け部と押込み体の第2受け部との間で一定の圧縮状態に保持される。この実施形態における前記係止解除機構は、前記押込み体の外部に配置された係止解除部材と、前記押込み体の外部から前記凹部に連通する連通部と、前記係止解除部材を連通部に入る側に付勢する弾性部材とを含み、前記係止解除部材が前記連通部に入って凹部内の内部係止部材を凹部外に出すように機能し得る。この場合、係止解除部材は弾性部材の付勢により連通部を通って凹部内の内部係止部材と係合可能であり、係止解除部材が内部係止部材を内部弾性部材の付勢に抗して凹部外に出すことにより、内部係止部材による押込み体の係止が外れ、圧縮状態の弾性体が伸長する。本発明において、前記連通部は、前記押込み体の側壁を貫通し、押込み体の軸線に平行に延びるスリットであり得る。
【0013】
第2の本発明によれば、ボタン取付具の突起部を、生地及びボタンの孔に貫通させた後、加締めることによりボタンを生地に取り付ける際に使用するボタン取付装置であって、ボタンを保持させるボタン側ダイと、ボタン取付具を保持させる取付側ダイと、前記ボタン側ダイを上死点と下死点との間に移動させる駆動機構とを備え、前記ボタン側ダイは、 前記駆動機構により駆動されて、前記上死点に対応する待機位置と前記下死点に対応する、前記突起部を加締めるボタン取付位置との間を移動する、前記突起部を加締めるためのパンチ体と、前記パンチ体を収容し、前記パンチ体の移動が伝達部材を介して伝わることによりパンチ体と同方向に移動可能となる押込み体と、前記押込み体内において、パンチ体の第1受け部と押込み体の第2受け部との間に配置される弾性体と、前記弾性体が圧縮している状態を維持するために前記押込み体を係止する係止部と、前記係止部による押込み体の係止を解除するための係止解除機構とを備え、前記係止解除機構による係止解除によって圧縮状態の弾性体が伸長して、前記押込み体がボタン取付位置に向かってパンチ体よりも高速に移動し、これにより前記突起部を生地に貫通させるボタン取付装置が提供される。
【0014】
第2の本発明における、ボタンを保持させるボタン側ダイは、上述した第1の本発明に係るボタン側ダイに対応する。第2の本発明では、ボタンをボタン側ダイに、ボタン取付具を取付具側ダイにそれぞれ保持させた後、駆動機構により、ボタン側ダイを上死点(待機位置)から下死点(ボタン取付位置)に向かって移動させる。これにより、第1の本発明と同様に、パンチ体の移動が伝達部材を介して押込み体に伝わり、係止部が押込み体を係止して弾性体の圧縮状態を維持し、その後、係止解除機構が係止部による押込み体の係止を解除し、これにより弾性体が伸長して、押込み体をボタン取付位置に向かってパンチ体よりも高速に移動させて生地抜きが行われる。
【0015】
本発明において、前記押込み体の前記第2受け部は、前記パンチ体の前記第1受け部よりも、ボタン取付位置側に位置し得る。この場合、前記係止解除機構による係止解除によって圧縮状態から伸長する弾性体は、パンチ体の第1受け部に支持されて押込み体の第2受け部をボタン取付位置側へと押す。これにより、押込み体がボタン取付位置に向かって高速に移動する。
【0016】
第3の本発明によれば、ボタンを生地に取り付けるボタン取付方法であって、パンチ体と押込み体とを備えるボタン側ダイにボタンを保持させると共に、突起部を有するボタン取付具を取付具側ダイに保持させる工程と、前記押込み体を、パンチ体よりも高速に移動させて、ボタン取付具の突起部を生地に貫通させる工程と、前記パンチ体により前記突起部を加締める工程とを含むボタン取付方法が提供される。本発明では、押込み体をパンチ体よりも高速に移動させて生地抜きを行い、その直後にパンチ体によるボタン取付具の加締めを行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ボタン取付具の突起部を、生地及びボタンの孔に貫通させた後、加締めることによりボタンを生地に取り付ける際、係止部による押込み体の係止を係止解除機構により解除することにより、圧縮状態の弾性体を伸長させ、押込み体をボタン取付位置に向かってパンチ体よりも高速に移動させて生地抜きを行う。そのため、生地抜きを高速移動する押込み体により確実に行うことができ、また、生地抜き時の押込み体の速度をパンチ体の速度とは独立的に設定することが可能となる。その結果、パンチ体の加締め時の速度を押込み体の生地抜きに要する速度に連動させる必要がない。これにより、生地抜き時に高速となる押込み体とは別に、加締め時のパンチ体の速度を低く設定して、加締め時にかかるボタンの負荷を軽減し、もってボタンの薄肉化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るボタン取付装置の全体概略図である。
【
図2】
図2は、待機位置の上方ダイと下方ダイの断面説明図である。
【
図3】
図3は、外部係止部材が押込み体を係止した時点を示す断面説明図である。
【
図4】
図4は、押込み体の係止後にパンチ体が降下してばねを圧縮している状態を示す断面説明図である。
【
図5】
図5は、外部係止部材による押込み体の係止が解除された時点を示す断面説明図である。
【
図6】
図6は、係止解除後に押込み体が高速降下し、生地を押し下げて、ボタン取付具のポストが生地を突き抜けた状態を示す断面説明図である。
【
図7】
図7は、パンチ先端部がポストを加締めた状態を示す断面説明図である。
【
図11】
図11は、待機位置にある第2実施形態の上方ダイ(ボタン側ダイ)の断面説明図である。
【
図12】
図12は、係止解除部材が押込み体のスリットに入り込み始めた時点を示す断面説明図である。
【
図14】
図14は、係止解除部材が内部係止部材を第2凹部から押し出して、押込み体の係止が解除された時点を示す断面説明図である。
【
図16】
図16は、係止解除後に押込み体が高速降下し、生地を押し下げて、ボタン取付具のポストが生地を突き抜けている状態を示す断面説明図である。
【
図17】
図17は、パンチ先端部がポストを加締めた状態を示す断面説明図である。
【
図18】
図18は、プランジャーが待機位置へと上昇する途中を示す断面説明図である。
【
図19】
図18は、待機位置から降下中の第3実施形態の上方ダイを示す断面説明図である。
【
図20】
図20は、内部係止部材が係止解除部材の上下方向位置に達した時点を示す断面説明図である。
【
図23】
図23は、
図20の時点からプランジャーがわずかに降下した時点を示す断面説明図である。
【
図25】
図25は、押下げ部の係止が解除されてばねが伸長した状態を示す断面説明図である。
【
図26】
図26は、クランクの回転角を示すサインカーブであり、第1実施形態におけるプランジャーの降下状態を示す。
【
図27】
図27は、従来のボタン側ダイの駆動機構のクランクの回転角を示すサインカーブである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るボタン取付装置の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明するが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更等がなされ得ることが当業者には理解される。
図1は、本発明に係るボタン取付装置の一実施形態(第1実施形態)を示す全体概略図である。ボタン取付装置100は、ボタンの一例である熱可塑性樹脂製の雄スナップ10(
図2等参照)の生地1(
図3等参照)への取り付け時に雄スナップ10を保持させるボタン側ダイである上方ダイ30と、上方ダイ30の下方に固定的に配置される、熱可塑性樹脂製のボタン取付具(以下単に「取付具」という)20を載置する取付具側ダイである下方ダイ80と、上方ダイ30の主要部である後述するプランジャー(
図2等参照)40を上方の待機位置(
図2参照)と下方のボタン取付位置(
図7及び10参照)との間に昇降させるための駆動機構とを備える。駆動機構は、モータ90と、モータ90によって回転するクランク(図示せず)と、クランクの回転に伴って上下方向に往復運動を行うクランクシャフト91(
図2等参照)とを含む。上方ダイ30のプランジャー40はクランクシャフト91の下端部に連結され、クランクの上死点で待機位置に、下死点でボタン取付位置にそれぞれ来る。本実施形態では、ボタン取付装置100は電動式であるが、これに限らず、作業者がペダルを踏んでプランジャーを待機位置から降下させる足踏式等であってもよい。また、ボタン側ダイが下方に、取付具側ダイが上方に配置される場合もある。雄スナップ10は、円板状の基部11と、図示しない雌スナップと係合するための円筒状の係合突起12とを有する。取付具20は、ほぼ円板状の基部21と、基部21の中央から突出する、突起部の一例であるポスト22とを有する。雄スナップ10の基部11の中央には、雄スナップ10の生地1への取り付け時に、生地1を突き抜けた直後の取付具20のポスト22を通すための孔13が設けられる。
【0020】
図2は、待機位置の上方ダイ30と下方ダイ80の断面説明図である。上方ダイ30は、駆動機構により昇降されるプランジャー40と、プランジャー40を囲む静止円筒体31と、静止円筒体31の外周面の一部から取り付けられた係止部70とを備える。プランジャー40は、略中空円筒ケース状の押込み体41と、押込み体41内に収容され、駆動機構のクランクシャフト91に上端部が連結するパンチ体50と、押込み体41内に収容され、パンチ体50の下方への移動を押込み体41に伝達する、ゴム、熱可塑性エラストマー等からなる円筒状の弾性体であるばね60とを備える。このばね60は、圧縮ばねである。押込み体41は、静止円筒体31の内径にほぼ等しい一定の外径を有する主ハウジング部42と、主ハウジング部42の下端から下方に突出し、主ハウジング部42の外径よりも小さい外径の円筒状の押込み本体45とを含む。なお、主ハウジング部42の軸方向(上下方向)の長さは、押込み本体45の軸方向長さよりもずっと長い(約4〜6倍)。主ハウジング部42は、主ハウジング部42の上下方向中間より若干下方にて内周面から半径方向内側に突出し、ばね60の下端面を受ける環状の下方ばね受け部(第2受け部)43を有する。押込み体41(の主ハウジング部42)の上端部42aは、下方ばね受け部43の内径と等しい内径を有する。上端部42aの厚さ(上下方向長さ)は、下方ばね受け部43の厚さの約2倍である。主ハウジング部42における上端部42aと下方ばね受け部43との上下方向中間でかつ係止部70に対応する周方向位置には、係止部70の後述する係止端部74を受け入れるための窪みもしくは孔である凹部44が形成される。なお、本実施形態にて、前記凹部44は第1凹部として説明する。主ハウジング部42の内径は、上端部42aと、下方ばね受け部43と、主ハウジング部42の下端部42bである、押込み本体45との境界を除き、一定である。
【0021】
押込み体41の押込み本体45は、
図8に拡大して示すように、パンチ体50の後述するパンチ先端部55を通すための、押込み本体45の底壁45aの中心部を上下に貫通する中心孔46を有する。また、押込み本体45は底壁45aの下方に雄スナップ10を仮留めするためのボタン保持部47を有する。ボタン保持部47は、押込み本体45の底壁45aから下方に拡張する環状の拡張部45bに対し別個の環状部材48を連結して、雄スナップ10の係合突起12の外径よりわずかに小さい内径の空間を形成するように構成される。そして、雄スナップ10の係合突起12を上記空間に挿入することにより、雄スナップ10がボタン保持部47に仮留めされる。環状部材48は周方向に複数の部材片に分割されており、これら部材片が環状ばね49によって拡張部45bに固定される。なお、環状部材48の下端が押込み体41及びプランジャー40の下端となる。主ハウジング部42の第1凹部44は、主ハウジング部42の周壁42c内において、半径方向外側へと上方に傾斜する上方の上方傾斜面44aと、半径方向外側へと下方に傾斜する下方の下方傾斜面44bと、図示しない二つの周方向側面とを含む。上方傾斜面44aは、半径方向外側かつ上方へと水平面(上下方向に垂直な面をいう)に対し緩やかに傾斜するのに対し、下方傾斜面44bは半径方向外側かつ下方へと水平面に対し急激に傾斜している。つまり、上方傾斜面44aは、下方傾斜面44bと比較して、水平面を基準にした傾斜の角度が小さく、水平面に対して5°〜30°程度である。
【0022】
パンチ体50は、上端部がクランクシャフト91に連結するパンチ支持部51と、パンチ支持部51の下端部51aに一体的に連結されて下方に突出する鋼製のパンチ本体54とを備える。パンチ支持部51は、主ハウジング部42の内径にほぼ等しい外径の下端部51aと、下端部51aから上方に延びてクランクシャフト91の下端部に連結する軸部52と、軸部52の上下方向中間付近にて外径が拡大し、ばね60の上端面を受ける上方ばね受け部53(第1受け部)とを含む。軸部52は、主ハウジング部42の下方ばね受け部43及び上端部42aの内径にほぼ等しい外径を有する。上方ばね受け部53の外径は下端部51aの外径と同じであり、主ハウジング部42の内径にほぼ等しい。また、上方ばね受け部53の厚さ(上下方向長さ)は、下方ばね受け部43の厚さの約2倍である。パンチ支持体51の下端部51aは、その底面から上方に凹となる空洞51bを有し、この空洞51bにパンチ本体54の基端部54aが受け入れられて連結される。パンチ本体54は、押込み体41の押込み本体45の内部空間にほぼ合致する円柱状のパンチ胴部54bと、パンチ胴部54bの下端から段状に外径が縮小して下方に突出する円柱状のパンチ先端部55と、パンチ胴部54bから上方に延び、上述したようにパンチ支持部51の下端部51aに対し空洞51bから連結される基端部54aとを有する。パンチ先端部55の外径は、押込み体41の押込み本体45の中心孔46の内径とほぼ等しい。パンチ先端部55の底面は、取付具20のポスト22を首尾良く加締めるために上方にわずかに窪んでいる。
【0023】
係止部70は、静止円筒体31の外周面の上下方向中間より上方で半径方向外側に突出するように固定された支持部71と、支持部71に設けた軸部72に対し回動可能に連結される外部係止部材73と、外部係止部材73の自由端側端部である係止端部74が静止円筒体31に設けた開口部32を介してプランジャー40(の押込み体41の主ハウジング部42)の外周面を押すように外部係止部材73を弾性的に押圧する板ばね(外部弾性部材)75とを備える。外部係止部材73は、前記押込み体41の外部(外周面の外側)に配置される。外部係止部材73は、軸部72から下方に延び、板ばね75を受けるばね受け面73bを有する基部73aと、基部73aからプランジャー40側へと略三角形状に拡張し、静止円筒体31の開口部32に入り込む拡張部73cとを有し、拡張部73cのプランジャー40側端に係止端部74が形成される。係止端部74は、第1凹部44の上方傾斜面44aを受け止める、上方傾斜面44aとほぼ同じ傾斜角度の係止端面74aを有する。プランジャー40の外周面における係止端部74が押す位置は、主ハウジング部42の第1凹部44と周方向において同じ位置であり、また、
図2の待機位置では第1凹部44よりも下方にある。詳しくは後述するが、プランジャー40が降下して第1凹部44が係止端部74と同じ上下方向位置になると、係止端部74が板ばね75の付勢により第1凹部44に入り込み、第1凹部44および押込体41の降下を止める(
図3参照)。静止円筒体31の開口部32は、静止円筒体31の上下方向中間より下方に、外部係止部材73の拡張部73cの変位を許容するように形成される。
【0024】
下方ダイ80は、取付具20が上面に載置されるダイ本体81と、ダイ本体81を支持する略円筒状のダイ支持部82とを備える。ダイ本体81は、上方の大径部81aと、大径部81aから下方に延び、ダイ支持部82の空洞82aに受け入れられて固定される小径部81bとを含む。大径部81aの周囲には筒状の生地支持部83と、生地支持部83を上方に付勢する環状のばね84とが配置される。生地支持部83は、ばね84の付勢により、通常、大径部81aの上面より上方に、取付具20のポスト22の上端と同じ程度突き出る。大径部81aの下端部は半径方向外側に若干拡張して、ばね84の下端を受けるばね受け81cとなる。生地支持部83は、生地1から下方に押されると、ばね84の付勢に抗して下方に変位する。
【0025】
待機位置を示す
図2を参照して、符号Aは押込み体41の下端位置、Bはパンチ体50のパンチ胴部54の下端位置、Cはばね60の下端位置、Eはばね60の上端位置をそれぞれ示し、これらの位置A、B、C、Eはプランジャー40の降下に伴って移動する。なお、位置C−E間の間隔はばね60の上下長さに等しい。また、符号Dは静止円筒体31の下端位置を示し、この位置Dはプランジャー40が降下しても移動しない。また、待機位置において、クランクシャフト91の下端面91aと、押込み体41(の主ハウジング部42)の上端部42aの上面との間には、所定の第1クリアランスC1が存在する。同様に、押込み体41の上端部42aの下面とパンチ体50の上方ばね受け部53の上面との間には第2クリアランスC2が、パンチ体50のパンチ支持部51の下端面と押込み体41の主ハウジング部42の下端部42bの上面との間には第3クリアランスC3が、更に、パンチ体50のパンチ本体54のパンチ胴部54bの底面と押込み体41の押込み本体45の底壁45aの上面との間には第4クリアランスC4がそれぞれ存在する。第4クリアランスC4は、第3クリアランスC3よりもわずかに大きく設定される。
【0026】
次に、ボタン取付装置100により雄スナップ10を生地1に取り付ける工程を説明する。雄スナップ10の生地1への取付作業を行うに当たり、雄スナップ10が上方ダイ30のプランジャー40のボタン保持部47に仮留めされ、また、取付具20が下方ダイ80の上面に載置される。更に、下方ダイ80の生地支持部83上に生地1が配置される。なお、雄スナップ10及び取付具20の上方及び下方ダイ30、80へのセットは、それらの供給装置(図示せず)から自動的に行われるが、作業者が手動的に行ってもよい。雄スナップ10及び取付具20のセット後、作業者がボタン取付装置100の作動ボタン(図示せず)を押すことにより、
図2の待機位置からプランジャー40が降下し始める。この初期段階において、クランクシャフト91の降下に伴ってパンチ体50が降下し、このパンチ体50の下方への移動が上方ばね受け部53からばね60を介して下方ばね受け部43に伝わることにより、押込み体41はパンチ体50と一体的に降下する。第1実施形態では、ばね60がパンチ体50の移動を押込み体41に伝える伝達部材である。そして、押込み体41の主ハウジング部42の第1凹部44が係止部70の外部係止部材73の係止端部74に対応する上下方向位置に来ると、
図3に示すように、係止端部74が板ばね75の付勢により第1凹部44に入り込んで押込み体41を係止し(係止時点)、これにより、プランジャー40の押込み体41の降下が止められる。この係止時点までは、A−B間隔及びC−E間隔(ばね60の上下長さ)、及び第1〜第4クリアランスC1、C2、C3、C4は変化しない。係止時点以後、押込み体41は係止端部74により降下が止められるのに対し、パンチ体50は降下し続ける。そのため、係止状態の押込み体41の下方ばね受け部43に対してパンチ体50の上方ばね受け部53がばね60を下方に押し、これにより、
図4に示すようにばね60が軸方向(上下方向)に次第に圧縮され、C−E間隔が縮小する。同時に第1、第3及び第4クリアランスC1、C3、C4も狭まるのに対し、第2クリアランスC2は拡大する。また、押込み体41の下方ばね受け部43とパンチ体50のパンチ支持部51の下端部51aの上端との間に第5クリアランスC5が生じる。
【0027】
押込み体41が係止状態にある間、パンチ体50は降下し続け、第1クリアランスC1が無くなると、クランクシャフト91の下端面91aが押込み体41の上端部42aの上面に接触し、クランクシャフト91が押込み体41を直接押し下げるようになる。これにより、押込み体41の第1凹部44の上方傾斜面44aが外部係止部材73の係止端部74の係止端面74aを下方に押す。そのため、
図5に示すように、係止端部74が板ばね75の付勢に抗して半径方向外側に押しのけられ、第1凹部44から外れ、これにより、係止端部74による押込み体41の係止が解除される。なお、押込み体41の係止解除すなわち係止端部74の第1凹部44からの排出は、上述した態様以外に、パンチ体51が最大に圧縮したばね60を介して押込み体41を下方に押す力を利用しても実行可能である。従って、第1実施形態における係止解除機構は、第1凹部44の上方傾斜面44aと、ばね60の所定の圧縮時に上方傾斜面44aすなわち押込み体41を所定の力で下方に押すように設計されたクランクシャフト91又はパンチ体50とを含む。外部係止端部74の係止上方傾斜面74aも第1凹部44からの外部係止端部74の排出を助長する。係止解除時点では、
図8に拡大して示すように、押込み体41のボタン保持部47に保持された雄スナップ10の上下方向位置は生地1に接するか接しない位置にある。そして、係止端部74による係止の解除がトリガーとなって、圧縮状態にあったばね60が瞬時に復元して下方に伸長する。このばね60の伸長を下方ばね受け部43が受けることにより、押込み体41が一挙に降下して(高速降下)、押込み体41の押込み本体45が雄スナップ10を介して生地1を押し下げる。これにより、
図6及び
図9に示すように、下方ダイ80上の取付具20のポスト22が生地1を上方に突き抜ける(生地抜き)。このポスト20は、雄スナップ10の孔13を通って、押込み本体45の中心孔46に入り込む。生地抜き完了時点で、生地1は雄スナップ10の基部11と取付具20の基部21との間に挟まれる。また、生地支持部83は生地1によりばね84の付勢に抗して押し下げられる。係止解除後に高速に降下する押込み体41は、雄スナップ10、生地1及び取付具20を介して下方ダイ80にぎりぎり突き当たる程度の上下方向位置で停止するように設定される。押込み体41の高速降下中もパンチ体50はクランクシャフト91と共に降下しているが、移動速度は押込み体41の方が格段に大きい。そのため、
図5の係止解除時点から
図6の生地抜き時点まで、A−B間隔、C−E間隔、第1、第3及び第4クリアランスC1、C3、C4は拡大し、第2及び第5クリアランスC2、C5は縮小する。また、
図8の生地抜き直前(係止解除直後)時点と
図9の生地抜き完了時点とを比較すると、位置Bは生地抜き完了時点で多少低くなる。
【0028】
図6の生地抜き完了時点で押込み体41の降下は停止するが、パンチ体50はその後も降下し続け、これにより、パンチ体50のパンチ先端部55が押込み体41の押込み本体45の中心孔46を通って降下し、
図7及び10に示すように、取付具20のポスト22を潰すようにして加締める。これにより雄スナップ10が生地1に固定される。A−B間隔は、
図9の生地抜き完了時点から
図10の加締め完了時点へと狭まる。
図9及び10の加締め完了時点で、駆動機構のクランク(図示せず)は下死点に達し、そのためパンチ体50は
図9及び10のボタン取付位置で停止し、これより下方には移動しない。これで雄スナップ10の取付作業が完了し、プランジャー40は次いで上方の待機位置(上死点)に戻される。
図26は、プランジャー40が上死点(待機位置)から下死点(ボタン取付位置)へと移動する際の、駆動機構のクランク(クランクシャフト91)のサインカーブを描く回転角であり、サインカーブの接線がプランジャー40(押込み体41及びパンチ体50)の降下速度である。プランジャー40は、上死点から次第に速度が上がり、ほぼ一定の速度で降下した後、下死点付近で次第に速度が下がる。点Oは生地抜き時点である。この時点Oで押込み体41が瞬時に降下して停止して生地1を押さえ続ける(実線参照)のに対し、パンチ体50は生地抜き時点O以後もサインカーブに従って降下し続ける(破線参照)。
【0029】
図11〜18は、本発明に係るボタン取付装置の上方ダイの別の実施形態(第2実施形態)を示す。
図11は、待機位置の上方ダイ130と下方ダイ80の断面説明図である。なお、雄スナップ10、取付具20及び下方ダイ80は第1実施形態と同じものであるため、同じ参照番号を付して説明を省略する。上方ダイ130は、駆動機構により昇降されるプランジャー140と、プランジャー140を囲む静止円筒体131と、静止円筒体131の下方部分に組み込まれた係止解除部170とを備える。係止解除部170は、詳しくは後述するが、プランジャー140の直径方向両側に配置される、ねじりばね(弾性部材)175によりプランジャー140側に付勢される一対の係止解除部材173を含む。外部係止部材173は、前記押込み体141の外部(外周面の外側)に配置される。プランジャー140は、略中空円筒ケース状の押込み体141と、押込み体141内に収容され、駆動機構のクランクシャフトの下端部に上端部が連結するパンチ体150と、押込み体141内に収容される円筒状のばね(弾性体)160と、パンチ体150に組み込まれた、押込み体141を係止するための係止部144とを備える。係止部144は、詳しくは後述するが、ばね(内部弾性部材)144b(
図13等参照)により互いに離れる方向に付勢される一対の半環状の内部係止部材144aを含む。押込み体141は、静止円筒体131の内径にほぼ等しい一定の外径を有する主ハウジング部142と、主ハウジング部142の下端から下方に突出する押込み本体145とを含む。押込み本体145は、第1実施形態の押込み体41の押込み本体45と実質的に同じ構成であり、中心孔146及びボタン保持部147を有する。主ハウジング部142は、主ハウジング部142の上下方向中間より若干下方にて内周面142a(
図15参照)から半径方向内側に突出し、ばね160の下端面を受ける環状の下方ばね受け部(第2受け部)143を有する。主ハウジング部142における上方約1/3部分には、上述した一対の係止解除部材173をそれぞれ通すための、上下方向に沿うスリット(連通部)146が設けられる。スリット146は主ハウジング部142の周壁を半径方向に貫通し、また、主ハウジング部142の周壁の上端まで達する。スリット146の下端は、半径方向外側へと下方に傾斜する傾斜面146aとなっている。更に、主ハウジング部142の内周面142aにおける各スリット146の下端に上方に隣接する部分には、上述した一対の内部係止部材144aと嵌合可能な凹部147が周方向全域にわたって形成される。なお、本実施形態にて、前記凹部147は第2凹部として説明する。
【0030】
パンチ体150は、上端部がクランクシャフトに連結するパンチ支持部151と、パンチ支持部151の下端部151aに連結されるパンチ本体154とを備える。パンチ本体154は、第1実施形態のパンチ本体54と実質的に同じ形態であり、パンチ先端部155を有する。パンチ支持部151は、主ハウジング部142の内径にほぼ等しい外径の下端部151aと、下端部151aと外径が等しく、クランクシャフトの下端部に連結する上端部151bと、下端部151aと上端部151bとを連結する軸部152とを含む。軸部152は、主ハウジング部142の下方ばね受け部143の内径にほぼ等しい外径を有する。パンチ支持部151の上端部151bの底面は、ばね160の上端面を受ける上方ばね受け部(第1受け部)153として機能する。パンチ支持部151の上方ばね受け部153の直ぐ上には、内部係止部材144a及びばね144bを収容する環状空間156が形成される。上方ばね受け部153の厚さ(上下方向長さ)は下方ばね受け部143と同じである。環状空間156の厚さは上方ばね受け部153の厚さの2倍以上であり、環状空間156の内径はばね160の内径と同じである。
【0031】
係止解除部170は、静止円筒体131の下方に連結される断面L字状でかつ環状の枠体171を含む。枠体171は、静止円筒体131下に係止解除部材173及びねじりばね175を収容する環状空間を形成する。枠体171は周壁171aと底壁171bとを有し、環状空間内の周壁171aと底壁171bとの交差部付近にねじりばね175の中心部175cを支持するばね支持部172が設けられる。ねじりばね175の一端部175aは係止解除部材173に連結され、他端部175bが枠体171の周壁171aの内側面に受けられる。これにより、係止解除部材173は、ねじりばね175の中心部175cを中心にプランジャー140に近付く方向(
図11の紙面に基づき、左方の係止解除部材173は時計回り方向、右方の係止解除部材173は反時計回り方向)に回動するように付勢される。係止解除部材173の回動半径、すなわち、ねじりばね175の中心部175cの中心(回動中心)から係止解除部材173の自由端までの長さは、左右両側のねじりばね175の中心部175cの中心間を結ぶ直径方向(以下「係止直径方向」という)における、回動中心とプランジャー140の押込み体141の外周面との間の距離より短く、回動中心とプランジャー140の押込み体141の内周面(スリット146の半径方向内側端)との間の距離に等しい(
図14参照)。そのため、
図11の待機位置において、係止解除部材173は、プランジャー140の外周面に対し斜めに接した状態となる。そして、詳しくは後述するが、プランジャー140が降下してスリット146が係止解除部材173に対応する位置まで下がると、係止解除部材173はスリット146に入り込む。係止解除部材173の付勢方向への回動は、枠体171の底壁171bにより、係止解除部材173が倒れてその長手がプランジャー140の軸線に対し垂直になる水平位置で制限される。
【0032】
図12のF−F断面である
図13を参照して、係止部144は、一対の半環状の内部係止部材144aと、これら内部係止部材144aの両端部間にそれぞれ配置され、内部係止部材144aを係止直径方向において互いに離れる方向(プランジャー140の半径方向外側)に付勢する二つのばね144bとから構成される。内部係止部材144aの曲率は、パンチ体150の上端部151bの曲率と同じであり、詳しく後述するが、係止解除部材173が二つの内部係止部材144aをばね144bの付勢に抗して互いに近付く方向に押し込んだ状態で、二つの内部係止部材144aの外周は、パンチ体150の上端部151bの外周にほぼ等しい円となる(
図15参照)。
【0033】
次に、上方ダイ130を使用して雄スナップ10を生地1に取り付ける工程を説明する。
図11の待機位置において、係止部144の各内部係止部材144aは、ばね144bの付勢により、内部係止部材144aの一部がパンチ体150の上端部151bの外周面よりも半径方向外側に突出して、押込み体141の第2凹部147に嵌合している。これにより、パンチ体150の降下が内部係止部材144aを介して押込み体141を一体的に降下させる状態にある。第2実施形態では、内部係止部材144aがパンチ体50の移動を押込み体41に伝える伝達部材である。また、待機位置において、ばね160はパンチ体150の上方ばね受け部153と押込み体141の下方ばね受け部143との間で圧縮された状態にあり、このばね160の圧縮状態が内部係止部材144aを介する押込み体141とパンチ体150の連結によって維持されている。この待機位置から駆動機構が作動すると、パンチ体150が降下し、これに伴って内部係止部材144aを介して押込み体141も降下する。そして、押込み体141のスリット146の下端部が係止解除部材173に対応する上下方向位置に来ると、
図12に示すように、係止解除部材173がスリット146に入り込み始める。
図13は
図12のF−F線断面図である。スリット146に入った係止解除部材173は、押込み体141の更なる降下に伴い、水平に向かって倒れながら、内部係止部材144aをばね144bの付勢に抗して半径方向内側に徐々に押し込む。そして、
図14に示すように係止解除部材173が水平状態となると、
図14のG−G線断面図である
図15に示すように、内部係止部材144aが第2凹部147から完全に外れ、これにより、押込み体141のパンチ体150に対する連結が解除される。これがトリガーとなり、圧縮状態にあったばね160が軸方向下方に伸長し、下方ばね受け部143を介して押込み体141を一挙に降下させる(高速降下)。これにより、
図16に示すように、押込み体141の押込み本体145が保持しているボタン10を介して生地1を下方に押し込み、下方ダイ80上の取付具20のポスト22を生地1を上方に貫通させ(生地抜き)、押込み体141は停止する。なお、ばね160の伸長により、
図16のC−E間隔は、
図11、12、14のC−E間隔よりも拡大している。押込み体141の高速降下中、パンチ体150も比較的低速で降下し続けており、生地抜き後、
図17に示すように、パンチ体150のパンチ先端部155が押込み本体145の中心孔146から降下して、取付具20のポスト22を加締める。パンチ体150はボタン取付位置まで降下しながら伸長したばね160を徐々に圧縮する。そして、
図17のボタン取付位置において、パンチ体150側の内部係止部材144aが押込み体141の第2凹部147に再度対応して入り込み、これにより、パンチ体150と押込み体141が再連結すると共にばね160が圧縮状態で保持される。パンチ体150は
図17のボタン取付位置で下死点に達する。その後、プランジャー140は待機位置へと戻される。このプランジャー140の上昇中、
図18に示すように、押込み体141の第2凹部147に嵌合している内部係止部材144aが水平状態の係止解除部材173を持ち上げるようにして乗り越える。
【0034】
図19〜25は、本発明に係るボタン取付装置の上方ダイの更に別の実施形態(第3実施形態)を示す。第3実施形態の上方ダイ230は、第2実施形態の上方ダイ130とは係止部及び係止解除部の構成が異なり、これら以外の点はほぼ同様であるため、第2実施形態において100番台であった符号を200番台にして詳しい説明を省略する。上方ダイ230の係止解除部270は、プランジャー240の直径方向両側に配置された一対の係止解除部材273を含む。外部係止部材273は、前記押込み体241の外部(外周面の外側)に配置される。各係止解除部材273は、静止円筒体231の下方に連結された枠体271内の底壁271b上において弾性部材としてのばね(図示せず)により、プランジャー240の半径方向内側に向かって付勢される。係止解除部材273のプランジャー240側(半径方向内側)の矩形の端面273a(
図22参照)には、半径方向外側に窪む窪み274が形成される。窪み274は、幅(
図22の紙面に基づく左右間隔)が比較的広い上部274aと、上部274aに比べ幅が狭い下部274bと、上部274aと下部274bとを連結する、下方へと幅が漸次縮小する中間部274cとを含む。プランジャー240は、押込み体241と、パンチ体250と、押込み体141の下方ばね受け部(第2受け部)243とパンチ体150の上方ばね受け部253との間に配置されるばね(弾性体)260と、パンチ体250に組み込まれた、押込み体241を係止するための係止部244とを備える。係止部244は、
図20のH−H断面図である
図21に示すように、パンチ支持部151に形成された環状空間255内に収容される、一対の半環状の内部係止部材244aと、これら内部係止部材244aの両端部間にそれぞれ配置され、内部係止部材244aを係止直径方向に直交する方向(
図24の紙面に基づく上下方向)において互いに離れる方向に付勢する二つのばね(弾性部材)244bとから構成される。内部係止部材244aの曲率は、パンチ体250の上端部251bの曲率と同じである。各内部係止部材244aは、各係止解除部材273の窪み274に入り込ませるための、係止直径方向において各係止解除部材273側へと突出する突片244cを両端部にそれぞれ有する。待機位置において、係止部244の各内部係止部材244aは、ばね244bの付勢により、内部係止部材244aの一部がパンチ体250の外周面よりも半径方向外側に突出して、押込み体241の主ハウジング部242の内周面242aに設けられた凹部247に嵌合している。なお、本実施形態にて、凹部247は第2凹部として説明する。この内部係止部材244aと第2凹部247の嵌合を介して押込み体241とパンチ体250が連結されると共に、上方ばね受け部253と下方ばね受け部243との間でばね260が圧縮された状態で保たれる。
図19は、プランジャー240が待機位置から降下し始め、押込み体241のスリット(連通部)246の下端部が係止解除部材273に対応する上下方向位置に来た状態である。この時点で係止解除部材273が押込み体241のスリット246に入り込む。更にプランジャー240が降下すると、
図20に示すように、内部係止部材244aが係止解除部材273の上下方向位置に達する。この時、
図21及びそのI−I断面図である
図22に示すように、内部係止部材244aの突片244cが係止解除部材273の窪み274の上部274aに受け入れられる。ここからプランジャー240が更に降下すると、内部係止部材244aの突片244cが係止解除部材273の窪み274の上部274aから中間部274cに移り、この中間部274cを下りながら、一つの中間部274cに受け入れられている二つの突片244c間の間隔が次第に狭まって行く。これにより、二つの内部係止部材244aの間隔がばね244bの付勢に抗して次第に縮小する。そして、突片244cが窪み274の中間傾斜部274cから下部274bに移ると、
図23及びそのJ−J断面図である
図24に示すように、対面する二つの突片244c間の間隔が最小となって、二つの内部係止部材244aの間隔も最小となる。これにより、内部係止部材244aが押込み体241の第2凹部247から外れる。これにより、押込み体241のパンチ体250に対する連結が解除され、
図25に示すように、圧縮状態にあったばね260が軸方向下方に伸長して、押込み体241を一挙に降下させる(高速降下)。これにより、第2実施形態と同様に生地抜きが行われ、次いで加締め作業が行われる。なお、ばね260の伸長により、
図25のC−E間隔は、
図19、20、23のC−E間隔よりも拡大している。
【0035】
以上のように、本発明では、生地抜きは高速で行われ、加締めは比較的低速で行われるため、生地抜きを確実に実行しつつ、加締め時にボタンにかかる負荷を低減することが可能となる。そのため、例えば樹脂製のボタンを従来品に比べ薄肉化し得る。なお、以上の実施形態では、ボタンの例として雄スナップを挙げたが、これに限らず、雌スナップ、飾りボタン等、他のボタン類でも本発明が適用可能である。また、金属製であってもよい。