(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969032
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】引出し
(51)【国際特許分類】
A47B 88/00 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
A47B88/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-527427(P2014-527427)
(86)(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公表番号】特表2014-525292(P2014-525292A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】AT2012000164
(87)【国際公開番号】WO2013029066
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】A1234/2011
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリム,マチアス
【審査官】
蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−515118(JP,A)
【文献】
西独国特許出願公開第01809159(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1壁部分(7)と、
第2壁部分(8)と、
該第1壁部分(7)と該第2壁部分(8)を連結させる固定装置(15)を含んだ引出し(4)であって、
該固定装置(15)は、前記壁部分(7、8)同士を拘束するために少なくとも1つの拘束要素(16)を有しており、
該拘束要素(16)は、前記壁部分の一方(8)の開口部(17)内に導入でき、そこで、締め付け固定によって固定可能な2つ以上のバネ弾性を有する舌部(16a)を有しており、
前記拘束要素(16)は略櫛状形態であり、帯体部分(19)の長手方向に間隔が開けられると共に、前記開口部(17)の長手方向(L)に間隔が開けられた複数の前記舌部(16a)は、該帯体部分(19)から横方向に突出しており、少なくとも1つの舌部(16a)を拘束位置から解放可能にする解放装置(24)が提供されており、前記解放装置(24)は人によって作動されるレバー(25)を有しており、該レバー(25)の作動によって、前記舌部(16a)のバネ弾性作用に対して反発する関係にて、前記2つの壁部分(7、8)の締め付け固定が解除されて、該壁部分(7、8)が分離される解放位置にまで、少なくとも1つの舌部が拘束位置から始動して可動であることを特徴とする引出し。
【請求項2】
少なくとも1つの舌部(16a)は、前記開口部(17)の長手方向(L)に対して傾斜して延出する長手方向を有していることを特徴とする請求項1記載の引出し。
【請求項3】
少なくとも1つの舌部(16a)は、鋭利な縁部の形状であって、
該舌部(16a)と前記帯体部分(19)との間で接続位置に対して押し入れる方向に見て、後方にずれて配置されている自由端を有していることを特徴とする請求項1または2記載の引出し。
【請求項4】
少なくとも1つの舌部(16a)は、前記開口部(17)内で自動的に拘束する関係にて保持されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の引出し。
【請求項5】
少なくとも1つの舌部(16a)は、金属製で、前記拘束要素(16)と一体形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の引出し。
【請求項6】
前記開口部(17)は壁部分(8)の前記長手方向(L)に延びる溝の形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の引出し。
【請求項7】
前記固定装置(15)は、前記レバー(25)を前記解放位置にて保持させる保持装置(27)を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の引出し。
【請求項8】
組み立て位置において、前記第1壁部分(7)と前記第2壁部分(8)は、略直線的に延出する引出し壁部分を共同で形成することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の引き出し。
【請求項9】
前記壁部分の一方(7)は、引出し側壁部(6)の掛留装置(12)に解放可能に掛け留めできる少なくとも1つの保持部分(11)を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の引出し。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の少なくとも1つの引出しを含んでいることを特徴とする家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1壁部分と第2壁部分、および第1壁部分と第2壁部分とを連結させる固定装置を含んだ引出しに関する。固定装置は、それら壁部分を相対的に拘束する少なくとも1つの拘束要素を有する。拘束要素は、それら壁部分の一方の開口部内に導入でき、その中で固定、特にクランプ式に固定できる少なくとも1つの、特にバネ弾性である舌部を有する。
【0002】
本発明は、少なくとも1つの以下で説明する引出しを含んだ家具にも関する。
【背景技術】
【0003】
上述の一般タイプの引出しは、例えば、本出願人のWO2009/111807A1で解説されており、2つの壁部分は、固定装置の把持要素によって並べて配置された後に相互固定できる。WO2009/111807の
図6から
図8に示す実施例には、壁要素(部分)のガイド通路内に押し入れ可能な押し入れピンを備えた保持装置が提供されている。この構造には比較的に多数の部材が必要であり、加えて、それぞれの状況に応じて相当な力が把持要素の締め付けに要求される。
【0004】
GB1431046AとGB1522598Aはそれぞれ2つの引出し壁部分を接続するための接続装置を解説する。接続装置の弾性掛留具は壁部分の開口部内に導入でき、それぞれの開口部に掛け留めされる。これら掛留具は大きな構造空間を必要とし、加えて、壁部分には対応する開口部が提供されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は本明細書の初頭で説明されている一般的なタイプの引出しを提供することであり、この引出しの2つの壁要素(部分)を拘束する固定装置は単純構造であり、しかも安価で頑丈であり、2つの壁部分を互いに信頼性高く相互固定する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は請求項1の特徴によって達成される。本発明のさらなる有利な形態は従属請求項において記載されている。
【0007】
本発明によれば、拘束要素は略櫛形状であり、帯体部分の長手方向には間隔を開けて2以上の舌部が帯体部分から横方向に突出している。
【0008】
好適にはバネ弾性を有しており、壁部分の開口部に押し入れ可能である舌部は、開口部の側面に当接することで開口部内に物理力固定状態に保持される。この場合、舌部は一方の壁部分に配置され、他方の壁部分に提供された開口部内に押し入れ可能である。この場合、壁部分の開口部は、壁部分の長手方向に延出する溝の形態でよく、舌部は壁部分の1端部で溝内に押し入れ固定することが可能であり、または締め付け固定することが可能である。休止位置では舌部は開口部の縁部を越えて外側に突起でき、開口部に押し入れられると舌部は、好適には舌部のバネ作用力に反発するように開口部内に曲がって入り、開口部の側面に常時当接することによって自己拘束状態で保持される。
【0009】
1実施形態では、少なくとも1つの舌部は長手方向を有しており、その長手方向は開口部の長手方向に対して傾斜して延びている。これで舌部の自由端は一種の留掛部を形成し、開口部内に鉤爪関係で係合することで不都合な引き抜きが防止される。
【0010】
舌部は自由端、好適には鋭利縁部形態の自由端を有することができ、押し入れ方向から見て、舌部と帯体部分との間の接続位置に対して後方に移動して配置されている。このような構造の舌部は挿入方向に押し入れ可能であるが反対方向には引き抜けない。
【0011】
本発明の1形態では解放装置が提供される。解放装置は、少なくとも1つの舌部を拘束位置から解放することができる。
【0012】
本発明の家具は、このような引出しを少なくとも1つ含んでいることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる詳細と利点は、添付図面で示す実施例を利用して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】キャビネット形態の家具の斜視図であり、接続される2つの壁部分は共同で内側延出引出しの前壁部を形成する。
【
図2】内側延出引出しの形態の引出しを示しており、その前壁部は固定されていない。
【
図3】第1壁部分と第2壁部分で形成される分解状態の引出しの前壁部を示す。
【
図5a】第1壁部分の斜視図と、連結される2つの壁部分の斜視図である。
【
図5b】第1壁部分の斜視図と、連結される2つの壁部分の斜視図である。
【
図6a】連結された2つの壁部分を示しており、拘束要素の舌部は壁部分の開口部内に部分的に押し入れられ、別実施例の壁部分は固定装置を有している。
【
図6b】連結された2つの壁部分を示しており、拘束要素の舌部は壁部分の開口部内に部分的に押し入れられ、別実施例の壁部分は固定装置を有している。
【
図7a】第1壁部分の斜視図と、壁部分の拡大詳細図であり、2つの壁部分は解放装置によって分離が可能である。
【
図7b】第1壁部分の斜視図と、壁部分の拡大詳細図であり、2つの壁部分は解放装置によって分離が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、家具枠体2を含んだ家具1の斜視図であり、引出し3、4、5は家具枠体2に対して移動可能に支持されている。中央引出し4は、閉位置では下方引出し5の上方に延出した前方パネルによって隠遮されている内側延出引き出し4の形態である。引出し4は、引出し側壁部6、引出し底部32、および、この実施例では側方の2つの第1壁部分7と、それらの間に配置された第2壁部分8とを含んだ前壁部を有している。
【0016】
図2は、
図1で示す内側延出引出しの形態の引出し4を図示する。それは、引出し側壁部6と、引出し底部32と、後壁部10とを含んでいる。引出し4の前壁部は、以下で説明する固定装置15によって第2壁部分8にそれぞれ接続される2つの側方の第1壁部分7を含む。壁部分7、8は共同で、略直線的に延出する引出し壁部分を、ここでは前壁部の形態である引出し壁部分を形成する。第1壁部分7はそれぞれ少なくとも1つの保持部分11を裏側に有しており、保持部分11は引出し側壁部6の掛留装置12と解放可能に掛け留めできる。
【0017】
図3は、少々改変された壁部分7、8を図示する。この実施例では、2つの第1壁部分7は、高さ方向で離れており、引出し側壁部6の別々の掛留装置12(
図1)にそれぞれ解放可能に掛け留めできる2つの保持部分11を含む。壁部分7にはそれぞれプレート状壁部分14を受領する挿入ポケット13が提供されており、プレート状壁部分14は、ガラス製、木製、金属製、プラスチック製またはセラミック製の飾インサートの形態でよい。壁部分7にはそれぞれ垂直方向で間隔を有した固定装置15が配置されている。これは、それぞれ第2壁部分8の開口部17の端部で挿入可能で、そこに締め付け式に固定できる、好適にはバネ弾性の舌部16a(
図5b)を有する。上側にて第2壁部分8は、プレート状壁要素14が下方長手縁部で収まることができる、好適にはU形状の溝18を有する。
【0018】
図4は、相互連結された状態の壁部分7と8を示す。プレート状壁要素14は両者間に受領されている。壁部分7、8の改善された固定のため、それぞれの固定装置15には拘束要素16を提供できる。拘束要素16は、壁部分8の長手方向に間隔が開けられた2以上の舌部16a(
図5b)を含み、取り付け状態の舌部16aはそれぞれ開口部17(
図2)の側面に、好適には自身の弾性によって当接する。
【0019】
図5aは第1壁部分7の斜視図である。そこに配置され、プレート状壁要素14の端部領域を受領するように設計されている挿入ポケット13が提供されている。2つの保持部分11は引出し側壁部6に対して壁部分7を固定するように作用する。壁部分7の高さ方向に間隔を有する2つの固定装置15は2つの壁部分7、8の間に傾斜抵抗性接続を提供することができる。固定装置15はそれぞれ2以上の舌部16aを備えた拘束要素16を有する。
【0020】
図5bは、第1壁部分7の一部と、第2壁部分8の端部領域を拡大斜視図で示す。第2壁部分8の開口部17は延出方向(L)を有しており、舌部16aの長手方向は開口部17の延出方向(L)に対して傾斜している。拘束要素16は略櫛状であり、帯体部分17と、帯体部分19の長手方向に間隔を開け、帯体部分10から横方向に突出する複数の舌部16aとを有している。舌部16aはそれぞれ自由端、好適には鋭利縁部形態の自由端を有しており、それらは舌部16aの挿入方向である後方に向けられている。舌部16aは金属製であり、好適には拘束要素16と一体的に形成されている。図示の実施例では、壁部分8の開口部17は壁部分8の延出方向(L)に延出する溝の形態である。組み立てられると、舌部16aは開口部17内に押し入れられ、開口部17の側面20に当接する。
【0021】
図6aは、第1壁部分7と第2壁部分8の一部を示しており、固定装置15の舌部16aは、第2壁部分8の下方開口部17内に部分的に押し入れられる。舌部16aの鋭利縁自由端は、下方陥没部(開口部)17の側面20に常時接している。第2壁部分8の上方陥没部17は溝形状であり、1つの押し入れ突起部21のみを上方開口部17内に挿入させるのに十分な大きさのものである。
【0022】
図6bは、垂直に間隔を開けた固定装置15を備えた第1壁部分7の一部領域を図示する。ここで特に重要なことは、舌部16aを拘束位置から解放させる解放装置24が提供されていることである。解放装置24は人によって駆動されるレバー25を含み、レバー25の駆動によって、舌部16aは拘束位置から、好適には舌部16aのバネ弾性作用に対抗する方向に、2つの壁部分7、8の締め付け固定が移動し、壁部分7、8が互いに分離できる解放位置にまで動ける。レバー25は、軸23の周囲を旋回でき、さらなる目的である、舌部16aの先端22のみが少々横方向に突出するよう舌部16aを抱擁するように取り付けられる。これで人に怪我させたり、物体に損傷を与えるリスクが大きく低減される。レバー25は、例えば、ドライバで軸23の周囲を舌部16aの弾性力に対抗して旋回することができ、舌部16aの先端22は押し戻され、開口部17の側面20には当接しないようになり、壁部分7、8は互いから分離できる。2つの壁部分7、8を分離する際に人が舌部16aの弾性作用力に対抗して物理力を連続的に提供する必要がないように、レバー25を解放位置に保持する保持装置27が提供される。図示するように、保持装置27は、拘束要素16に提供され、解放位置ではレバー25の対応する窓部31(
図7b)に解放可能に掛け留める突出部30(
図7b)を有することができる。レバー25の適切な作動で、突出部30は窓部31から再び脱係合し、舌部16aは弾性的に拘束位置にまで自動的に戻ることができる。
【0023】
図7aは、第1壁部分7の下側からの斜視図であり、レバー25はドライバ28によって軸23の周囲で、舌部16aの弾性作用力に対抗して解放位置にまで可動であり、舌部16aは開口部17内に拘束されなくなる。
図7bは
図7aで示す丸で囲まれた領域の拡大図である。レバー25はドライバ28の受領手段29を有しており、レバー25は、軸23の周囲で舌部16aの弾性作用に対抗してドライバ28の回転運動により旋回し、舌部16aの先端22が、拘束要素16の突出部30がレバー25の対応する窓部31に掛け留めされ、先端22を側面20から離れた解放位置で保持するまで押し戻される。突出部30はドライバ28の逆方向回転運動によって窓部31から再び脱係合でき、舌部16aは弾性的に拘束位置にまで自動的に戻る。
【0024】
本発明は説明した実施例に限定されず、「請求の範囲」に記載されたスコープ内の全ての変形および技術的均等物にも及ぶ。例えば、上、下、横、等々の位置的表現は本明細書に関するものであり、図示の実施例の全体的姿勢が変更されれば、適宜変更されるべきものである。