【実施例】
【0087】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって、本発明の範囲が、これら実施例によって制限されないということは、当業者にとって自明である。
【0088】
実施例1:E1遺伝子発現レトロウイルスベクターの製造
1−1.pGemT−E1ベクターの製造
本発明で、アデノウイルスE1遺伝子配列の供給は、野生型アデノウイルスタイプ5(Ad5)のDNAのうち、E1遺伝子部位である560−3509塩基配列をプライマー配列番号1(E1−Fプライマー、表1)と配列番号2(E1−Rプライマー、表1)とを用いてPCR方法で増幅して使った。この際、野生型Ad5 DNAの5’部位に結合するプライマーには、Mlu I制限酵素塩基配列を有し、3’部位に結合するプライマーには、BamH I制限酵素塩基配列を有して、増幅されたPCR生成物は、Mlu I−E1−BamH I塩基配列を有する。増幅したPCR生成物は、配列分析を通じて原本と同じであることを確認した後、以後、製造過程に使った。PCR生成物は、直線型DNAの両端に多重T配列を有するpGemT easyベクター(promega,WI,USA)に結紮して、構造物pGemT−E1を獲得した(
図1)。
【0089】
【表1】
【0090】
1−2.pMTレトロウイルスベクターの製造
レトロウイルスベクターMTは、次のような過程を通じて製造された。マウス白血病ウイルス(Murine Leukemia Virus、MLV)由来のレトロウイルス遺伝情報を有しているプラスミドpMLV(Shinnick TM et al.,1981)からプライマー配列番号3(HHIRプライマー、表1)と配列番号4(5LTR3プライマー、表1)とを用いてレトロウイルスベクターの構造で必要な塩基配列を増幅して使った。増幅した塩基配列は、配列分析を通じて原本と同じであることを確認した後、以後、製造過程に使った。増幅された塩基配列は、MLVの5’長い末端反復配列(Long Terminal Repeats、LTR)部位とパッケージングシグナルを含む5’非暗号化部位とを含む。このように増幅されたHindIII−BamHI切片をpUC18(Invitrogen,CA,USA)ベクターに移して、p5LTRプラスミドベクターを製作した。3’LTRも、pMLVからプライマー配列番号5(3LTR5プライマー、表1)と配列番号6(3LTR3プライマー、表1)とを用いて増幅し、該増幅された塩基配列は、MLVのenv遺伝子の翻訳終結コドン(codon)下位のポリプリン部位を含む3’非翻訳部位と3’LTRとを含む。このようなBamHI−EcoRI切片をp5’LTRに移して、レトロウイルスベクターpMTを作った。pMTの詳しい情報及びその性能は、国際学術誌に出版した(Yu et al.,2000、
図2)。
【0091】
1−3.pMINレトロウイルスベクターの製造
pCBIN(大韓民国特許出願第1997−0048095号)ベクターをBamH IとXho I制限酵素処理して、IRES/Neo
Rカセットを獲得した。該獲得したDNA切片をあらかじめBamH IとXho I制限酵素処理した前記のpMTレトロウイルスベクターと結紮して、pMINレトロウイルスベクター(米国登録特許第US6,451,595号)を製作した。IRES/Neo
Rの5’側にE1遺伝子を挿入する場合、MLVの5’LTR、E1遺伝子、IRES/Neo
Rカセット、及びMLVの3’LTRの順に構成され、これを細胞内に伝達した時に(ウイルスベクター形態で製造して、細胞に伝達して、細胞のゲノムDNA上に挿入される場合も同様に)、レトロウイルス内の唯一のプロモーターである5’LTR内のプロモーターからただ1個のmRNAが転写され、このmRNAからE1タンパク質が作られ、IRESによってNeo
Rタンパク質が他の翻訳開始部位(translation initiation site)によって作られる(
図3)。
【0092】
1−4.pMIN−E1レトロウイルスベクターの製造
pGemT−E1ベクターにSca I制限酵素処理後、得られたDNA切片を再びMlu IとBamH I制限酵素で処理して、DNA切片を獲得した。該獲得したDNA切片は、あらかじめMlu IとBamH I制限酵素処理されたMINレトロウイルスベクターに結紮して、MIN−E1レトロウイルスベクターを製作した。このように製造されたMIN−E1レトロウイルスベクターは、MLV LTRプロモーターの調節下でアデノウイルスE1(ヌクレオチド560−3509部分)とNeo
Rをコーディングする配列とを含む。また、このベクターの構造は、制限酵素マッピングによって正しい構造であることを評価し、さらにPCR分析によって得られた構造物の部分を配列分析によって確認した。ヌクレオチド配列において、何の変化も発見されていない(
図4及び
図5)。
【0093】
1−5.MIN−E1レトロウイルスの生産
E1遺伝子の形質感染のためのレトロウイルスは、プラスミドDNA形質感染法を用いて生産した(Soneoka Y et al.,1995)。形質感染は、Cellphectカルシウムリン酸塩形質感染システム(GE Healthcare BioSciences,NJ,USA)を利用し、製造者のプロトコルによって行った。前日、1×10
6個で播種した293T細胞株にMIN−E1レトロウイルスベクター、gag−pol発現ベクター、及びenv発現ベクターを形質感染させた後、細胞を約48時間培養した。培養完了後、細胞培養液をいずれも収穫して、0.45μmフィルターを利用、濾過した。生産されたMIN−E1レトロウイルスは、使用前まで−80℃に冷凍保管した。
【0094】
1−6.MIN−E1レトロウイルスのエンベロープ(Envelope)選択
対象細胞で効率的な形質感染を誘導するために、各4種の他のエンベロープを有する緑色蛍光タンパク質(GFP)レトロウイルスを生産して比較した。前記記述したプラスミドDNA形質感染法を用いて水泡性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)エンベロープ、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)エンベロープ、猫白血病ウイルス(FeLV)エンベロープ、またはモロニーマウス白血病ウイルス(MLV)エンベロープの4種のエンベロープを有するGFPレトロウイルスを生産して、対象細胞株にMOI1の濃度で形質感染を誘導した。感染効率を高めるために、ポリブレン(8μg/ml)を添加した。3種の対象細胞株で、いずれもVSV−Gエンベロープを有したGFPレトロウイルスの形質感染の効率が最も高いと確認された(
図6)。
【0095】
実施例2:アデノウイルスE1遺伝子発現アデノウイルス生産細胞株の製造
2−1.細胞株及び細胞培養
本発明に使われた細胞株は、総3種であって、ヒト由来のA549気管支癌細胞(CCL−185;ATCC,MD,USA)、ヒト由来のレチノブラスト(Human Embryonic Retinoblast、CRL−2302;ATCC,MD,USA)、ヒト由来のHeLa子宮頸部癌細胞(CCL−2;ATCC,MD,USA)である。この細胞は、いずれも37℃、5%CO
2条件で10%ウシ胎児血清及び抗生物質が補充されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)内で培養した。細胞培養媒質、試薬及び血清は、Gibco社(Gibco BRL life technologies,inc.,MD,USA)で購入し、培養プラスチック類は、いずれもBD Falcon社(BD Falcon,NJ,USA)の製品を購入して使った。
【0096】
2−2.細胞株別組換えアデノウイルス生産能の比較を通じる生産細胞株の選別
3種の候補細胞株のうち、最も優れた組換えアデノウイルス生産能を見せる細胞株を選択するために、3種の細胞株いずれもアデノウイルスE1遺伝子発現細胞株を製造した。MIN−E1レトロウイルス形質感染前日、6ウェル(well)プレートにウェル当たり1×10
5個の細胞をそれぞれ播種した。形質感染当日、MOI1.5の濃度でレトロウイルスを添加し、形質感染の効率を高めるために、ポリブレン(8μg/ml)を添加した。24時間細胞を培養した後、トリプシン処理して、細胞をいずれも回収した。該回収した細胞は、再び100mm培養皿に播種して、G418(1mg/ml)を添加後、14日間培養して、G418耐性細胞株を製造した。このように製造された3種のアデノウイルスE1発現細胞株の組換えアデノウイルス生産能を比較するために、E1欠失アデノウイルスベクター(ヌクレオチド560−3328bp、米国登録特許第US5,731,172号)を感染して、生産能を評価した。感染一日前、前記G418耐性細胞を1×10
5個で24ウェルプレートに播種した後、感染当日、GFP発現アデノウイルスベクターをMOI100の濃度で感染した。3日間培養後、細胞をいずれもトリプシン処理して収穫した。該収穫した細胞は、超音波処理(Sonication)後、遠心分離して上澄み液のみを取った。この上澄み液中のアデノウイルス含量を評価するために、一日前、24ウェルプレートに0.6×10
5個で播種したHeLa細胞に、各細胞株から獲得した上澄み液5μlを添加した。2日間培養後、GFP発現を柔細胞分析器で確認した結果、HeLa細胞株で製造したアデノウイルスE1発現細胞株で最も高いウイルス含量が確認されて、組換えアデノウイルス生産能が最も優れていると確認された(
図7)。
【0097】
2−3.アデノウイルスE1遺伝子発現HeLa細胞株クローンの製造
MIN−E1レトロウイルス形質感染前日、6ウェルプレートにウェル当たり1×10
5個のHeLa細胞を播種した。形質感染当日、MOI1.5の濃度でレトロウイルスを添加し、形質感染の効率を高めるために、ポリブレン(8μg/ml)を添加した。48時間細胞を培養した後、トリプシン処理して、細胞をいずれも回収した。該回収した細胞は、再び100mm培養皿に播種して、G418(1mg/ml)を添加、群落を形成するまで培養した。1個の細胞群落がほぼ直径5mmに育つならば、クローニングシリンダー(Millipore,MA,USA)を用いてクローンを選別した。その結果、53個のG418抵抗クローンを獲得した。選別された53個のクローンは、96ウェルプレートで培養し、全部育つならば、24ウェルプレート、6ウェルプレートに次第に拡張培養し、6ウェルプレートで全部育つならば、100mm培養皿で培養して、それぞれの細胞ストックを製造した。
【0098】
2−4.組換えアデノウイルス生産能に優れるクローンの選別
細胞クローンのうち、最も優れたウイルス生産能を見せるクローンを選別するために、冷凍状態の53個の細胞クローンストックをいずれも解凍して、3日間培養した。感染一日前、前記解凍させたクローンの細胞を1×10
5個で24ウェルプレートに播種した後、感染当日、GFP発現アデノウイルスベクターをMOI100の濃度で感染した。3日間培養後、細胞をいずれもトリプシン処理して収穫した。該収穫した細胞は、超音波処理後、遠心分離して上澄み液のみを取った。この上澄み液のうち、アデノウイルス含量を評価するために、一日前、24ウェルプレートに0.6×10
5個で播種したHeLa細胞に、各細胞クローンから獲得した上澄み液5μlを添加した。2日間培養後、GFP発現を柔細胞分析器で確認した結果、16番クローンで最も高いウイルス含量が確認されて、組換えアデノウイルス生産能が最も優れていると結論し、このクローンをH2C16と名付けた(
図8)。
【0099】
実施例3:H2C16クローンの特性分析
3−1.H2C16クローンのPCR分析
レトロウイルスベクターを用いて遺伝子を伝達する場合、遺伝子を含むレトロウイルスベクターが導入細胞のゲノムDNA上に挿入される。H2C16クローンの製造のために使われたレトロウイルスベクターとAd−E1遺伝子とが細胞のゲノムDNA上に正しい構造で挿入されたか否かを確認するために、MIN−E1レトロウイルスベクター特異的なプライマー配列番号7−20(MIN−E1 #1−7プライマー、表1)をデザインして、PCR方法でバンドを増幅し、これを塩基配列分析を通じて構造を評価した。まず、ゲノムDNA抽出キット(Qiagen,CA,USA)を用いてH2C16クローンからゲノムDNAを抽出した。以後、これを鋳型とし、それぞれ特異的なプライマーセットを組み合わせてPCR反応を誘導した。ゲル上で増幅されたバンドのサイズを予想バンドサイズと比較して、一致することを確認し、また、塩基配列分析を通じてMIN−E1レトロウイルスベクターが正しい構造でH2C16ゲノムDNA上に挿入されていることを確認した(
図9)。
【0100】
3−2.H2C16クローンの線形増幅媒介−重合酵素連鎖反応(LAM−PCR)の分析
伝達されたMIN−E1レトロウイルスベクターが、H2C16クローンゲノムDNA上の挿入された位置を確認し、また、何コピーで挿入されたか否かを確認するために、LAM−PCRを行った。まず、H2C16クローンからゲノムDNA抽出キット(Qiagen,CA,USA)を使って、ゲノムDNAを抽出した。該抽出したゲノムDNA10ngを鋳型として、プライマー配列番号21(LTRプライマー、表1)でPCRを行った。PCR反応は、95℃1分、60℃45秒、72℃90秒で50サイクルで進行した後、Taqポリメラーゼを添加して、同じ条件で50サイクルさらに進行した((1)線形増幅過程)。PCR反応後、生成物にDynabeads(R)M−280ストレプトアビジン(DNA kilobase binder kit:Dynal,oslo,Norway)とバインディング溶液(DNA kilobase binder kit:Dynal,oslo,Norway)とを添加した後、常温で12時間以上反応して、DNA−bead結合体形成を誘導した。磁性粒子集中器(DYNAL MPC−9600:Invitrogen,CA,USA)を用いてDNA−bead結合体を分離した((2)磁性捕獲過程)。DNA−bead結合体にヘキサヌクレオチド混合物(Roche Applied science,IN,USA)、デオキシリボヌクレオチド(dNTP)、クレノウポリメラーゼを添加した後、37℃で1時間反応して、二重鎖DNA合成を誘導した((3)ヘキサヌクレオチド−プライマーリング過程)。以後、合成反応物にTsp5091I制限酵素を添加した後、65℃で1時間反応した((4)Tsp5091I切断過程)。リンカーカセット(Linker cassette)、ライゲーションバッファ、アデノシン三リン酸(ATP)、Fast−Link(R)DNAリガーゼ(Fast−link DNA ligase kit:Epicentre Biotechnologies,WI,USA)を添加した後、常温で5分間反応して、切断された部位にリンカーを付着した((5)リンカーライゲーション過程)。0.1N NaOHを添加し、常温で10分間反応して、DNA−bead結合体からDNAを分離した((6)変性過程)。分離したDNA2μlを鋳型として、プライマー配列番号22(LC Iプライマー、表1)と配列番号23(LTR IIプライマー、表1)とを用いて最初(1st)のPCRを行った。PCR反応は、95℃1分、60℃45秒、72℃90秒で30サイクルで進行した。
【0101】
以後、1st PCR生成物1μlを鋳型として、プライマー配列番号24(LC IIプライマー、表1)と配列番号25(LTR IIIプライマー、表1)とを用いて2nd PCRを行った。PCR反応条件は、1st PCRと同様に行った((7)エクスポネンシャルPCR過程)。
【0102】
2nd PCR後、2.5%アガロースゲル上でバンドを確認し、これをキアゲンIIゲル抽出キット(Qiagen,CA,USA)を用いて分離し、pGem−T Easyベクターシステム(Promega,WI,USA)に挿入した後、塩基配列を分析した。H2C16クローンから確認されたあらゆるバンドを分離して、塩基配列分析を行った結果、あらゆるバンドの塩基配列が一致し、染色体1番のBTG2(B−cell translocation gene2)に位置するものであることを確認した。この結果を通じて、E1遺伝子導入のために伝達されたMIN−E1レトロウイルスベクターは、H2C16クローンの1番の染色体上にただ1つのコピーのみ挿入されたことを確認した(
図10)。
【0103】
3−3.H2C16クローンのE1発現の分析
H2C16クローンからE1A、E1B19K、E1B55K発現を確認した。E1Aは、ウェスタンブロットを通じてタンパク質発現を確認し、E1B19K、E1B55Kは、RT−PCRを通じてRNA発現を確認した。まず、E1Aタンパク質発現を確認するために、H2C16クローンとHeLa細胞各1×10
6個をトリプシン処理して収穫した後、PBSで遠心洗浄した。レポーターリシスバッファ(promega,WI,USA)100μlを加えて、常温で5分間放置後、−70℃で5分反応と37℃で5分反応とを3回繰り返した。遠心分離後、上澄み液でタンパク質濃度をブラッドフォード(Bio−rad,CA,USA)法で定量した。50μgのタンパク質を4−12%ビス−トリスゲル(invitrogen,CA,USA)にローディングして、90分間120ボルトで電気泳動した後、ゲル上にメンブレン(GE Healthcare BioSciences,NJ,USA)を載せ、再び20分間12ボルトで電気泳動した。TBS(20mM Tris−Hcl、137mM Nacl、pH7.6)溶液で一回洗浄したメンブレンをブロッキング溶液(TBST;TBS+0.5%tween20に溶かされた5%脱脂乳)に入れ、10μgの1次抗体(マウスアンチ−アデノウイルスタイプ5E1A、BD BioSciences,CA,USA)を添加して、4℃で一日間反応した。メンブレンをTBSTで3回洗浄後、ブロッキング溶液に入れ、1/2000倍希釈された2次抗体(ゴットアンチ−マウスIgG−HRP,Thermo Fisher scientific,IL,USA)を添加して、常温で2時間反応した。再びメンブレンをTBSTで洗浄後、ディベロップ溶液(santacruz,CA,USA)を加えてバンドを確認した。
【0104】
E1B19KとE1B55K RNA発現を確認するために、H2C16クローンとHeLa細胞各1×10
6個をトリプシン処理して収穫した後、PBSで遠心洗浄した。トリゾール(invitrogen,CA,USA)を処理して、細胞からRNAを抽出した。該抽出したRNAを鋳型でcDNA合成した。E1B19K RNA発現を確認するために、プライマー配列番号26(B19−Fプライマー、表1)と配列番号27(B19−Rプライマー、表1)とを用いてPCRを行い、E1B55K RNA発現を確認するために、プライマー配列番号28(B55−Fプライマー、表1)と配列番号29(B55−Rプライマー、表1)とを用いてPCRを行った。以後、ゲル上でPCR増幅産物の有無及びサイズを確認することによって、E1B19KとE1B55K RNA発現を確認した(
図11)。
【0105】
3−4.H2C16クローンの細胞成長率曲線
H2C16クローンとその母細胞であるHeLa細胞とをそれぞれ101日間継代培養し、細胞成長率を比較した結果、大差なくよく成長することを確認した(
図12)。
【0106】
実施例4:H2C16クローンとHEK293細胞との組換えアデノウイルス生産能の比較
4−1.小さな規模の組換えアデノウイルス生産能の確認
H2C16クローンの組換えアデノウイルス生産能を確認するために、T25cm
2フラスコ(IWAKI,Chiba,Japan)を利用した小さな規模の組換えアデノウイルス生産を行った。この際、HEK293細胞でも、同じ方法で組換えアデノウイルスを生産することによって、生産能を比較した。まず、小さな規模の組換えアデノウイルス生産能を確認するために、感染前日、2.5×10
6個のHEK293細胞と1×10
6個のH2C16クローンとをT25cm
2フラスコに播種した。感染当日、培地をいずれも除去した後、アデノウイルス(Ad)−GFP組換えアデノウイルスを500μlの5%ウシ胎児血清含む培地にMOI2、10、及び20でそれぞれのフラスコに添加した後、20分間隔で1時間振って感染を誘導した。以後、5%ウシ胎児血清含む培地を4.5ml添加して3日間培養した。3日後、細胞をいずれも回収して、液体窒素で急速冷凍させた後、37℃で再び完全に解凍する過程を3回繰り返した。前記細胞を4℃、12000rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を収穫して、−80℃で保管した。
【0107】
収穫した上澄み液内に組換えアデノウイルス含量を評価するために、前日、24ウェルプレートに0.6×10
5個で播種したHeLa細胞にHEK293細胞とH2C16クローンから収穫した上澄み液のそれぞれを5μl添加した後、2日間培養した。以後、柔細胞分析器を用いてGFP発現細胞の比率を確認することによって、組換えアデノウイルス含量を確認した。その結果、3種のMOI条件でいずれも優れた生産能が確認され、そのレベルは、HEK293で生産したウイルスと類似した。しかし、H2C16の場合、播種細胞数がHEK293に比べて、2.5倍少ないので、細胞当たりウイルス生産量は、HEK293に比べて、約2.5倍高いと言える(
図13)。
【0108】
4−2.大きな規模の組換えアデノウイルス生産能の確認
H2C16クローンの大きな規模の組換えアデノウイルス生産で生産能を比較するために、感染前日、2.25×10
7個のHEK293細胞と0.9×10
7個のH2C16クローンとをT225cm
2フラスコに播種した。感染当日、培地を5%ウシ胎児血清含む培地に交換した後、Ad−GFP組換えアデノウイルスをMOI15として、それぞれのフラスコに添加した後、3日間培養した。3日後、細胞をいずれも回収して、液体窒素で急速冷凍させた後、37℃で再び完全に解凍する過程を3回繰り返した。前記細胞を4℃、12000rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を収穫して、−80℃で保管した。正確な組換えアデノウイルス力価を測定するために、塩化セシウムを用いてウイルスを精製した。組換えアデノウイルスパーティクルは、UV測定法を用いて測定し、これを通じて、組換えアデノウイルス生産量を見積った。その結果、HEK293細胞で生産した組換えアデノウイルスの量は、1.51×10
12ウイルスパーティクル/mlであり、H2C16クローンの場合、1.18×10
12ウイルスパーティクル/mlであり、これを細胞当たり生産量に換算すれば、H2C16がHEK293よりも1.95倍ほど生産能に優れることが確認された(
図14)。感染可能ウイルスパーティクルのレベルを50%組織培養感染容量(Tissue culture infection dose、TCID50)法で分析した結果、2つのウイルスいずれもratio:13レベルでウイルス品質は、同一であることを確認した。
【0109】
実施例5.H2C16クローンとGH329細胞との組換えアデノウイルス生産能の比較
HeLa細胞を根幹として開発されたGH329細胞は、野生型アデノウイルスタイプ5DNAのうち、511−3924bp部位を含み、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターで調節されるプラスミドが形質注入されたアデノウイルス生産細胞株である。H2C16クローンとGH329細胞とのアデノウイルス生産能を比較するために、T25cm
2フラスコ(IWAKI)を利用した小さな規模で組換えアデノウイルス生産を行った。感染前日、1×10
6個のH2C16クローンとGH329細胞とをT25cm
2フラスコに播種した。感染当日、培地をいずれも除去した後、Ad−GFP組換えアデノウイルスを500μlの5%ウシ胎児血清含む培地にMOI0.5、1、5にして、それぞれのフラスコに添加した後、20分間隔で1時間振って感染を誘導した。以後、5%ウシ胎児血清含む培地を4.5ml添加して、3日間培養した。3日後、細胞をいずれも回収して、液体窒素で急速冷凍させた後、37℃で再び完全に解凍する過程を3回繰り返した。前記細胞を4℃、12000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を収穫して、−80℃で保管した。収穫した上澄み液内に含まれた組換えアデノウイルス含量を評価するために、前日、24ウェルプレートに0.6×10
5個で播種したHeLa細胞にH2C16クローンとGH329細胞とから収穫した上澄み液のそれぞれを1μl添加した後、2日間培養した。以後、柔細胞分析器を用いてGFP発現細胞の比率を確認することによって、組換えアデノウイルス含量を確認した。その結果、3種のMOI条件でいずれもGH329細胞に比べて、H2C16細胞の優れた生産能が確認され、特に、最も低い0.5MOIでGH392細胞に比べて、約2.7倍高い生産能が確認された(
図15)。
【0110】
実施例6.H2C16クローンのRCA(Replicataion Competent Adenovirus)生成有無の確認
6−1.未精製アデノウイルスを利用したRCA生成の確認
H2C16クローンで複製不能アデノウイルスを生産時に、RCA生成可能性を評価した。感染前日、4.5×10
6個のH2C16クローンをT75cm
2フラスコ(falcon)に播種し、対照群として9×10
6個のHEK293細胞をT75cm
2フラスコ(corning)に播種した。感染当日、培地をいずれも除去した後、複製不能組換えアデノウイルスを5%ウシ胎児血清含む培地にMOI10でそれぞれのフラスコに添加し、3日間培養した。3日後、細胞をいずれも回収して、超音波処理器で10分間30秒作動、1分止めを繰り返し、超音波処理し、4℃、12000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を収穫して、−80℃で保管した。一方、H2C16クローンとHEK293細胞とを前記と同様にT75cm
2フラスコに播種して準備した後、前記凍らせた各細胞から収穫した上澄み液を解凍して、それぞれの細胞に感染した。前記のアデノウイルス生産過程をRCAが確認されるまで繰り返した。収穫した上澄み液内の組換えアデノウイルスのうち、RCAの存否は、重合酵素連鎖反応で評価した。前日、24ウェルプレートに3×10
5個で播種したHeLa細胞に、H2C16クローンとHEK293細胞とから収穫した上澄み液のそれぞれを50μl添加した後、2日間培養した。以後、HeLa細胞でゲノムDNAを分離し、アデノウイルスタイプ5DNAのうち、E1遺伝子内部である560−800bp塩基配列を増幅するプライマー配列番号30(RCA−Fプライマー、表1)と配列番号31(RCA−Rプライマー、表1)とを用いてPCR方法で増幅産物の有無を確認した。その結果、H2C16クローンで数回反復生産されたウイルスでは、RCAが確認されていないが、HEK293細胞で数回反復生産されたウイルスのうちには、RCAが存在することを確認した(
図16A)。
【0111】
6−2.精製アデノウイルスを利用したRCA生成の確認
H2C16クローンで複製不能アデノウイルスを生産時に、RCA生成可能性を評価した。感染前日、1.35×10
7個のH2C16クローンをT225cm
2フラスコ(corning)に播種し、対照群として2.7×10
7個のHEK293細胞をT225cm
2フラスコ(corning)に播種した。感染当日、培地をいずれも除去した後、複製不能組換えアデノウイルスを5%ウシ胎児血清含む培地にMOI20でそれぞれのフラスコに添加し、3日間培養した。3日後、細胞をいずれも回収して、超音波処理器で10分間30秒作動、1分止めを繰り返し、超音波処理し、4℃、12000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を収穫して、−80℃で保管した。一方、H2C16クローンとHEK293細胞とを前記と同様にT225cm
2フラスコに播種して準備した後、前記凍らせた各細胞から収穫した上澄み液を解凍して、それぞれの細胞に感染した。残りの上澄み液は、塩化セシウム(CsCl)方法を用いて精製して濃縮した。前記の精製アデノウイルス生産過程をRCAが確認されるまで繰り返した。精製した組換えアデノウイルスのうち、RCAの存否は、重合酵素連鎖反応で評価した。前日、T25cm
2フラスコ(iwaki)に1×10
6個で播種したHeLa細胞に、H2C16クローンとHEK293細胞とから収穫した精製ウイルスのそれぞれを細胞当たり1000個のウイルスパーティクル(viral particle)を添加した後、14日間培養した。以後、HeLa細胞でゲノムDNAを分離し、アデノウイルスタイプ5DNAのうち、E1遺伝子内部である560−800bp塩基配列を増幅するプライマー配列番号30(RCA−Fプライマー、表1)と配列番号31(RCA−Rプライマー、表1)とを用いてPCR方法で増幅産物の有無を確認した。その結果、H2C16クローンで数回反復生産されたウイルスでは、RCAが確認されていないが、HEK293細胞で数回反復生産されたウイルスのうちには、RCAが存在することを確認した(
図16B)。
【0112】
実施例7.H2C16クローンとHeLa細胞での目的タンパク質(3E8抗体)の生産能の比較
7−1.pMT−重鎖(Heavy chain)及びpMT−軽鎖(Light chain)レトロウイルスの製造
H2C16クローンとこれの母細胞であるHeLa細胞での目的タンパク質の生産能を比較するために、3E8抗体を利用した。生産能の比較実験に先立って、3E8抗体を発現するレトロウイルスを製造した。3E8抗体は、TAG−72抗原に対するヒト化抗体であって、米国公開特許US2008/0279847に記載されている。3E8抗体の重鎖と軽鎖遺伝子配列は、pdCMV−dhfr−3E8ベクターから下記の表2のプライマーを用いてPCR方法で増幅して使った。この際、pdCMV−dhfr−3E8ベクターの重鎖と軽鎖との5‘部位に結合するそれぞれのプライマーは、BamH I制限酵素塩基配列を含み、3’部位に結合するそれぞれのプライマーは、Xho I制限酵素塩基配列を含むので、増幅されたPCR生成物は、BamH I−重鎖−Xho IまたはBamH I−軽鎖−Xho I塩基配列を有する。獲得したそれぞれのDNAは、あらかじめBamH IとXho I制限酵素が処理されたMTレトロウイルスベクターに結紮して、MT−重鎖とMT−軽鎖レトロウイルスベクターを製作した。
【0113】
重鎖と軽鎖遺伝子の形質感染のためのレトロウイルスは、プラスミドDNA形質感染法を用いて生産した(Soneoka Y et al.,1995)。形質感染は、Cellphectカルシウムリン酸塩形質感染システム(GE Healthcare Biosciences,NJ,USA)を利用し、製造者のプロトコルによって行った。前日、1× 10
6個で播種した293T細胞株にMT−重鎖またはMT−軽鎖レトロウイルスベクター、gag−pol発現ベクター、及びVSV−G env発現ベクターを形質感染させた後、細胞を約48時間培養した。該培養完了後、細胞培養液をいずれも収穫して、0.45μmフィルターを用いて濾過した。生産されたMT−重鎖またはMT−軽鎖レトロウイルスは、使用前まで−80℃に冷凍保管した。
【0114】
【表2】
【0115】
7−2.H2C16クローンとHeLa細胞での3E8抗体の生産能の比較
H2C16クローンでの3E8抗体の生産能を確認するために、MT−重鎖レトロウイルスを3回、MT−軽鎖レトロウイルスを2回形質感染した。この際、HeLa細胞でも、同じ方法で形質感染した。MT−重鎖レトロウイルス形質感染前日、H2C16クローンを6ウェルプレートにウェル当たり1×10
5個で播種した。形質感染当日、MOI5の濃度でレトロウイルスを添加し、形質感染の効率を高めるために、ポリブレン(8μg/ml)を添加し、32℃、2800rpmで90分間遠心分離した。該遠心分離後、37℃、5%CO
2条件で2時間細胞を培養した後、上澄み液を除去し、新たな培地に取り替えた。1日間培養後、前日と同じ方法で二番目の形質感染を進行した。新たな培地に取り替え後、37℃、5%CO
2条件で6時間細胞を培養した後、細胞をいずれもトリプシン処理して収穫した。該収穫した細胞を新たな6ウェルプレートにウェル当たり1×10
5個で播種した。1日間培養後、同じ方法で三番目の形質感染を進行した。新たな培地に取り替え後、37℃、5%CO
2条件で培養した。2日間培養後、細胞をいずれもトリプシン処理して収穫し、新たな6ウェルプレートにウェル当たり1×10
5個で播種した。37℃、5%CO
2条件で2日間培養後、MT−軽鎖レトロウイルス形質感染のために、細胞をいずれもトリプシン処理して収穫し、新たな6ウェルプレートにウェル当たり1×10
5個で播種した。37℃、5%CO
2条件で1日間培養後、MT−軽鎖レトロウイルスをMOI5の濃度で添加し、形質感染の効率を高めるために、ポリブレン(8μg/ml)を添加し、32℃、2800rpmで90分間遠心分離した。該遠心分離した後、37℃、5%CO
2条件で2時間細胞を培養した後、上澄み液を除去し、新たな培地に取り替えた。1日間培養後、前日と同じ方法で二番目の形質感染を進行した。新たな培地に取り替え後、37℃、5%CO
2条件で細胞を培養した。2日間培養後、細胞をいずれもトリプシン処理して収穫した。
【0116】
該収穫した細胞を6ウェルプレートにウェル当たり4×10
5個で播種した。37℃、5%CO
2条件で2日間培養後、上澄み液を除去し、新たな培地3mLを添加した。37℃、5%CO
2条件で1日間培養後、上澄み液を収穫した。該収穫した上澄み液内に3E8抗体含量を評価するために、ELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)方法を利用した。その結果、2つの細胞いずれも抗体生産が確認されたが、H2C16クローンが、HeLa細胞に比べて、抗体生産量が2倍以上高いことを確認した(
図17)。
【0117】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したので、当業者において、このような具体的な技術は、単に望ましい具現例であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではない点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物とによって定義される。