特許第5969045号(P5969045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5969045-添加物溶液を注入するための装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969045
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】添加物溶液を注入するための装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/30 20060101AFI20160728BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20160728BHJP
   C01D 3/26 20060101ALI20160728BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B05D1/30
   B05D7/00 K
   C01D3/26
   B05C5/00 102
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-543931(P2014-543931)
(86)(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公表番号】特表2015-500136(P2015-500136A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012074188
(87)【国際公開番号】WO2013083503
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】11191843.9
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バッケンズ,ヘンドリクス ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンロトリンジェン,テオドルス ヨハネス マリア
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−309179(JP,A)
【文献】 実開平07−028390(JP,U)
【文献】 特開平08−261690(JP,A)
【文献】 特開平06−312152(JP,A)
【文献】 特開平06−238218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00〜21/00
B05B1/00〜 1/36
B05D1/00〜 7/26
C01D3/26
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加物の水溶液(2)を微粒子材料(3)中へ注入するための方法であって、前記溶液は、微粒子材料を輸送するコンベア(4)の幅の少なくとも一部にわたって制御される流速を伴って重力の影響下で注がれ、
前記微粒子材料は、塩であり、前記添加物が非粘結剤であり、前記塩の輸送速度および前記溶液の流速は、塩の1トン当たり0.05〜5リットルの混合比を得るように調整される、方法。
【請求項2】
前記溶液が前記微粒子材料上にわたって滴下される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液は、前記コンベア(4)へ向けて傾けられる出口(11)の列を有する分配器(5)から注がれる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非粘結剤は、フェロシアン化鉄およびメソ酒石酸鉄を備えるグループから選択される少なくとも1つの化合物を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塩が、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加物、例えば非粘結剤の溶液を、微粒子材料、例えば塩、好ましくは塩化カリウム、より好ましくは塩化ナトリウムのバルク上にわたって注入するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ナトリウムは、特に長期間の保管中に水分に晒されると、大きな凝集塊を形成する傾向がある。これらの硬化塊は一般にケーキと称される。ケーキングを防止するために非粘結剤を塩に加えることができる。フェロシアン化ナトリウムまたはフェロシアン化カリウムがしばしば非粘結添加物として使用される。また、国際公開第2011/073017号および国際公開第2011/1510698号において論じられるように、メソ酒石酸のFe3+塩(FeMTA)を非粘結剤として使用できる。そのような非粘結剤は、一般に、水溶液として塩化ナトリウムに加えられる。
【0003】
非粘結剤だけでなく塩用の他の添加剤も、一般に、所望の濃度が得られるまで水中へ溶解され或いは水で希釈される。バッファタンク内での保管後に、溶液は、1またはそれ以上の注入ユニットへ分配される。これまでは、所定量の塩上にわたって溶液を噴射するノズルを備える注入ユニットが使用されてきた。そのようなシステムの一例が米国特許第4,107,274号に開示される。しかしながら、そのような注入ユニットは、霧の形態を成す添加物溶液の一部が最終的に塩上へと至らないという不都合を有する。添加物は比較的高価であるため、その損失を最小限に抑えることが望ましい。
【0004】
また、幾つかのタイプの非粘結剤、特にFeMTAは、結晶化して、これらの従来の注入ユニットのノズルを詰まらせる傾向がある。最終的に、酸性添加物、例えばFeMTAに関しては、使用される器具および周辺環境が激しい腐食に晒されることが分かってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/073017号
【特許文献2】国際公開第2011/1510698号
【特許文献3】米国特許第4,107,274号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、添加物の水溶液を所定量の微粒子材料中へ注入するための装置であって、添加物の損失が最小限に抑えられる装置を提供することである。また、多くの添加物(特に、塩用の非粘結剤、例えば塩化ナトリウムまたは塩化カリウム用のFeMTA)は本質的に酸性であるため、本発明の目的は、注入器具および周囲の器具の腐食を減らすおよび/もしくは詰まりの問題を最小限に抑えるまたは更に防止するように酸性添加物の水溶液を注入するのに特に適した装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、添加物の水溶液を所定量の微粒子材料中へ注入するための装置であって、該装置が、粒子材料を輸送するためのコンベアと、コンベアの上側に配置される1またはそれ以上の分配器とを備え、分配器が添加物の水溶液のための供給源に接続され、分配器がコンベアの幅の少なくとも一部にわたって延びる少なくとも1つの注出口を備える、装置を用いて達成される。分配器を添加物の溶液の連続的な供給に結び付けることにより、添加物を連続的プロセスで注入して計量できる。
【0008】
添加物の水溶液は、微粒子材料上に噴射されるのではなく、重力の影響下でのみ微粒子材料上に注がれる。特に、酸性添加物溶液を用いると、注ぐことによって、使用器具および周囲環境の腐食が噴射を用いるよりもかなり少なくなることが分かった。なお、明確にするため、“注ぐ”という用語は、噴射によらず、重力のみの使用によって溶液が注出口から出ることを示すために使用され、前記注出口は、均一に分布された注ぎ口の列を備えることが好ましい。前記用語は、液体の途切れない流れが常に存在することを示すように意図されない。特に、溶液は、滴下によって(すなわち、断続的な流れで)或いは連続的な流れを伴って出ることができる。
【0009】
微粒子材料流の全幅(すなわち、コンベア上に位置される微粒子材料の全幅)にわたって添加物の分配を最適化するため、注出口は、微粒子材料を輸送するコンベアセクションの幅に対応する幅を有するように形成され得る(この場合、「コンベアセクション」という用語は、微粒子材料が位置されるコンベアの区域または部分を示す)。
【0010】
本発明に係る微粒子材料は塩であることが好ましい。より好ましくは、微粒子材料は塩化カリウムであり、最も好ましくは、微粒子材料は塩化ナトリウムである。
【0011】
本発明に係る添加物は、好ましくは非粘結剤であり、最も好ましくはFeMTAまたはフェロシアン化鉄である。
【0012】
注出口は、例えば、流出を最小にするために好ましくは分配器の前側から突出する均一に分布された注ぎ口の列を備えることができる。“均一に分布された注ぎ口”とは、注出口が注ぎ口の列を備え、互いに隣接する注ぎ口間の距離に50%を超えないずれ、好ましくは25%を超えないずれ、最も好ましくは10%を超えないずれがあるように前記注ぎ口が互いに向かい合って位置されることを意味する。50%を超えるずれ、好ましくは25%を超えないずれ、および、最も好ましくは10%を超えないずれとは、互いに最も近い注出口の2つの注ぎ口間の距離が1cmである場合に、互いに隣接する他の注ぎ口間の距離のどこも1.5cmを超えない、好ましくは1.25cmを超えない、最も好ましくは1.1cmを超えないことを意味する。適した注ぎ口の例は、ガター、例えばV形状の断面を有するガターである。V形状の断面を有するガターが特に好ましい。ガターは、例えば、コンベアの輸送方向に対応する方向で、例えばコンベアの方向で下向きの傾きを伴って、分配器から突出してもよい。
【0013】
水溶液の供給源が分配器の内側空間に通じることが好ましい。内側空間から注ぎ口への溶液の流れを均一にするために、内側空間は、該内側空間の幅にわたって延び且つ内側空間の底部から距離を隔てる下縁を有する堰を備えることが好ましい。この実施形態は、添加物溶液が注ぎ口にわたって均一に分配されるという利点を有する。
【0014】
注出口がV形状断面を有するガターの形態を成す場合には、ガターにわたる添加物溶液の均一な分配をもたらすために、前記ガターの下端(すなわち、前記ガターのオーバーフローエッジ)を同じ水平高さにすることが好ましい。言い換えると、ガターにわたる添加物溶液の最適な分配のために、僅かに窪んだ或いは僅かに円形の形状を有する注出口ではなく、真っ直ぐで水平な注出口を有することが好ましい。
【0015】
好ましくは、本発明に係る装置は、装置の前壁から下方へ傾くガターを有する。
【0016】
分配器は、例えば、非腐食性の熱可塑性材料、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどから形成することができる。
【0017】
コンベアは一般にベルトコンベアである。バルク材料を輸送するのに適した他のコンベアも望ましい場合には使用できる。
【0018】
随意的に、1またはそれ以上の分配器を吊り下げるためにCardanサスペンションが使用されてもよい。Cardanサスペンションでは、第1の回動支持体が第2の回動支持体によって支持され、その場合、2つの回動軸は直交する。このようにすると、フレームの動きにかかわらず分配器が固定されたままであり、また、微粒子材料上にわたって水溶液を絶えず均等に分配できる。
【0019】
開示された装置を使用すると、添加物の水溶液は、微粒子材料を輸送するコンベアの幅の少なくとも一部にわたって溶液を制御された流速を伴って注ぐことにより、微粒子材料へと効果的に注入され得る。そのため、本発明は、添加物の水溶液(2)を微粒子材料(3)中へ注入するための方法であって、微粒子材料を輸送するコンベア(4)の幅の少なくとも一部にわたって制御される流速を伴って溶液が注がれる、方法にも関連する。溶液は、例えば、滴下によって注がれ或いは連続流を伴って注がれ得る。分配器を介した添加物溶液の連続供給およびコンベアによる微粒子材料の連続供給により、添加物を連続的または半連続的なプロセスで加えることができる。溶液は、望ましい場合には、更なる添加物または他の成分を備えてもよい。
【0020】
好ましくは親水性の微粒子材料の輸送速度および溶液の流速は、所望の混合比を得るために調整され得る。非粘結剤を塩(好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)へ注入する場合には、塩の1トン当たり約0.05〜約5リットルの非粘結溶液の混合比が特に有益である。
【0021】
本発明に係る方法は、例えば塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムを備える塩材料のバルク中へ向かう非粘結剤を計量するのに特に適する。前述したように、塩化ナトリウムに適した非粘結剤は、例えば、フェロシアン化鉄およびメソ酒石酸鉄(FeMTA)である。
【0022】
非粘結剤を注入した後、塩(好ましくは塩化カリウム、より好ましくは塩化ナトリウム)を更に輸送することができる。
【0023】
計量された添加物を微粒子材料中へ良好に混合させるために、微粒子材料を下側の高さにある次のコンベア上に堆積させることができる。必要に応じてこのステップを多数回繰り返すことができる。
【0024】
典型的な実施形態を示す添付図面を参照して本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る注入装置の典型的な実施形態を概略的に示す。
図2図1の器具の分配器を正面図で示す。
図3図2の分配器を側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、添加物、好ましくは非粘結剤の水溶液2を、所定量の微粒子材料中へ、例えば塩3(好ましくは塩化カリウム、より好ましくは塩化ナトリウムである)中へ注入するための注入装置1を示す。注入装置1は、微粒子材料、例えば塩3を輸送するためのベルトコンベア4と、ベルトコンベア4の上側に配置される分配器5とを備える。分配器5は、添加物、好ましくは非粘結剤の水溶液のための供給源(図示せず)に作用可能に接続される。分配器5はプラスチック材料の容器7を備える(明確にするために、分配器5は全体の分配ユニットを示す。すなわち、分配器は部分6から15を備える)。容器7は、凹部9を備える上縁を伴う前壁8を有する。凹部9には、V形状の注ぎ口またはガター6の列により形成される注出口10が設けられる。ガター6は、水平面と角度を成して前壁8から下方へ突出する。また、分配器5は、分配器5をフレーム(図示せず)に対して吊り下げるための2つのサスペンションバー13が設けられる後壁11も備える。前壁8は、図面に矢印Aにより示されるベルトコンベア4の輸送方向で垂直線と約10〜約70度の角度を成して傾く。
【0027】
分配器5は内側空間14を備え、該内側空間は、内側空間14の全幅にわたって延びる堰15によって分割される。堰15は、内側空間14の底部17から距離を隔てる下縁16を有する(図3参照)。堰15は、ガター6の列へ向かう溶液の流れを均一にするのに役立つ。
【0028】
添加物、好ましくは非粘結剤の水溶液2が供給ラインを介して供給されると、溶液2が分配器5の容器7内へ流れる。溶液2は、ガター6を介して流れて、ベルトコンベア4上の微粒子材料、例えば塩3(好ましくは塩化カリウム、より好ましくは塩化ナトリウムである)上へと重力下で滴下する或いは真っ直ぐに流下する。微粒子材料が塩であり且つ添加物が非粘結剤である場合には、塩の輸送速度および非粘結剤溶液の流速は、塩の1トン当たり約0.05〜約5リットルの混合比を得るように調整されることが好ましい。 なお、本発明には以下の態様も含まれる。
[項1]添加物の水溶液(2)を所定量の微粒子材料中へ注入するための装置(1)であって、該装置は、微粒子材料を輸送するためのコンベア(4)と、前記コンベアの上側に配置される1またはそれ以上の分配器(5)とを備え、前記分配器は、添加物の水溶液のための供給源に接続され、前記分配器は、前記コンベア(4)の幅の少なくとも一部にわたって延びる少なくとも1つの注出口(10)を備える、装置(1)。
[項2]前記注出口(10)は、微粒子材料を輸送するコンベアセクションの幅にわたって延びる[項1]に記載の装置。
[項3]前記注出口(10)は、均一に分布された注ぎ口(6)の列を備える[項1]または[項2]に記載の装置。
[項4]前記注ぎ口(6)の少なくとも一部がガターの形状を成す[項3]に記載の装置。
[項5]前記ガター(6)がV形状断面を有する[項4]に記載の装置。
[項6]前記ガターは、装置の前壁から下方へ傾く[項4]または[項5]に記載の装置。
[項7]前記ガター(6)が前記分配器(5)の前壁(8)から突出し、前記前壁が前記ベルトコンベア(4)へ向けて傾く[項4]、[項5]または[項6]に記載の装置。
[項8]前記分配器(5)が熱可塑性材料から成る[項1]から[項7]のいずれか一項に記載の装置。
[項9]前記コンベアがベルトコンベア(4)である[項1]から[項8]のいずれか一項に記載の装置。
[項10]前記1またはそれ以上の分配器がCardanサスペンションによって支持される[項1]から[項9]のいずれか一項に記載の装置。
[項11]水溶液の前記供給源が前記分配器(5)の内側空間(14)内へ通じ、前記内側空間が堰(15)を備え、この堰(15)は、前記内側空間の幅にわたって延びるとともに、前記内側空間の底部(17)から距離を隔てる下縁(16)を有する[項1]から[項10]のいずれか一項に記載の装置。
[項12]添加物の水溶液(2)を微粒子材料(3)中へ注入するための方法であって、前記溶液は、微粒子材料を輸送するコンベア(4)の幅の少なくとも一部にわたって制御される流速を伴って重力の影響下で注がれる、方法。
[項13]前記溶液が前記微粒子材料上にわたって滴下される[項12]に記載の方法。
[項14]前記溶液は、前記ベルトコンベア(4)へ向けて傾けられる出口(11)の列を有する分配器(5)から注がれる[項12]または[項13]に記載の方法。
[項15]前記微粒子材料は、塩、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウムであり、前記添加物が非粘結剤であり、前記塩の輸送速度および前記溶液の流速は、塩の1トン当たり0.05〜5リットルの混合比を得るように調整される[項12]、[項13]、または、[項14]に記載の方法。
[項16]前記非粘結剤は、フェロシアン化鉄およびメソ酒石酸鉄を備えるグループから選択される少なくとも1つの化合物を備える[項15]に記載の方法。
図1
図2
図3