特許第5969061号(P5969061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969061
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】光触媒膜を備えたガラス物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/25 20060101AFI20160728BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20160728BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20160728BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20160728BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20160728BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160728BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C03C17/25 AZNM
   B01J35/02 J
   B01J35/02 H
   B01J37/08
   B01J37/02 301D
   C09D183/02
   C09D7/12
   C09D5/16
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-1535(P2015-1535)
(22)【出願日】2015年1月7日
(62)【分割の表示】特願2011-527580(P2011-527580)の分割
【原出願日】2010年8月17日
(65)【公開番号】特開2015-129081(P2015-129081A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】特願2009-188579(P2009-188579)
(32)【優先日】2009年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】籔田 武司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史佳
(72)【発明者】
【氏名】木戸 優敦
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】河津 光宏
(72)【発明者】
【氏名】神谷 和孝
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−264777(JP,A)
【文献】 特開平09−262483(JP,A)
【文献】 特開2002−080829(JP,A)
【文献】 特開2006−161022(JP,A)
【文献】 特開2009−136868(JP,A)
【文献】 特開2000−001340(JP,A)
【文献】 特開平09−207289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/23 − 17/25
B01J 35/02 − 35/10
B01J 37/02 − 37/08
B32B 17/06
B32B 27/18
C09D 5/16
C09D 7/12
C09D 183/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と前記ガラス板の表面に形成された光触媒膜とを備え、前記光触媒膜により前記ガラス板に入射する光の反射率が低減されたガラス物品の製造方法であって、
前記光触媒膜が、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、および酸化ケイ素からなるバインダー成分を含み、
前記酸化ケイ素粒子、前記酸化チタン粒子、および前記バインダー成分の総量に対し、前記酸化ケイ素粒子が50〜82質量%、前記酸化チタン粒子が8〜40質量%、前記バインダー成分が7〜20質量%の範囲で含まれており、
前記酸化ケイ素粒子の平均粒径が前記酸化チタン粒子の平均粒径の5倍以上であり、
前記酸化ケイ素粒子の平均粒径が500nm以下であり、前記酸化チタン粒子の平均粒径が80nm以下であり、
前記光触媒膜に含まれる一部の酸化ケイ素粒子が、突出酸化ケイ素粒子であり、
前記光触媒膜に含まれる一部の酸化チタン粒子が、前記突出酸化ケイ素粒子と前記ガラス板との間に介在し、
当該製造方法は、
前記光触媒膜の形成溶液を前記ガラス板の表面に塗布する工程と、
前記形成溶液を塗布したガラス板を乾燥させ、焼成する工程と、を含み、
前記形成溶液が、前記酸化ケイ素粒子、前記酸化チタン粒子、前記バインダー成分を供給するバインダー供給源、および界面活性剤を含む、ガラス物品の製造方法。
ただし、突出酸化ケイ素粒子とは、1)前記ガラス板に接触しておらず、2)当該酸化ケイ素粒子に接触する酸化チタン粒子がある場合には当該酸化チタン粒子の頂部よりも前記ガラス板から離れた位置に、当該酸化ケイ素粒子に接触する酸化チタン粒子がない場合には当該酸化ケイ素粒子に最も近接した酸化チタン粒子の頂部よりも前記ガラス板から離れた位置に、その頂部を有し、3)その頂部が前記光触媒膜の表面に露出している、酸化ケイ素粒子を指す。
【請求項2】
前記酸化ケイ素粒子、前記酸化チタン粒子、および前記バインダー成分の総量に対し、前記酸化ケイ素粒子が50〜57質量%、前記酸化チタン粒子が30〜40質量%、前記バインダー成分が8〜14質量%の範囲で含まれている、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記酸化ケイ素粒子、前記酸化チタン粒子、および前記バインダー成分の総量に対し、前記酸化ケイ素粒子が60〜82質量%、前記酸化チタン粒子が8〜25質量%、前記バインダー成分が10〜20質量%の範囲で含まれている、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記酸化ケイ素粒子、前記酸化チタン粒子、および前記バインダー成分の総量に対し、前記酸化ケイ素粒子が65〜75質量%、前記酸化チタン粒子が13〜23質量%、前記バインダー成分が10〜16質量%の範囲で含まれている、請求項3に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス板の表面に設定した一辺が500nmの正方形の領域において、前記突出酸化ケイ素粒子が4個以上存在する、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
前記突出酸化ケイ素粒子が、突出酸化ケイ素粒子に該当しない酸化ケイ素粒子を介して前記ガラス板に固定されている、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項7】
前記光触媒膜に含まれる一部の酸化チタン粒子が、突出酸化ケイ素粒子に該当しない酸化ケイ素粒子上で凝集した状態で前記光触媒膜の表面に露出している、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項8】
前記酸化チタン粒子の平均粒径が5nm以上であり、前記酸化ケイ素粒子の平均粒径が25nm以上である、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項9】
前記酸化ケイ素粒子および前記酸化チタン粒子が、最短径に対する最長径の比が1.0〜1.5の範囲にある実質的に球状の形状を有する、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板と光触媒膜とを備えたガラス物品に関する。本発明は、より詳しくは、光触媒機能とともに光の反射抑制機能を有する光触媒膜の膜強度の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン膜による光触媒機能を利用したガラス板がいわゆる「セルフクリーニングガラス」として製造され、市販されている。よく知られているように、酸化チタン膜の光触媒機能は、ガラス板の表面に付着した有機物を分解して有機物の付着力を弱め、雨水などによる有機物の洗浄を可能とする。
【0003】
酸化チタンの屈折率(アナターゼ型で約2.5)はガラスの屈折率よりも高いため、ガラス板の表面に酸化チタン膜を形成するとガラス板の光線反射率が増加する。このため、光線反射率の増加が特に望ましくない用途(例えば太陽電池、温室)における使用を考慮し、光線反射率の増加を抑制できる光触媒膜が提案されている。この光触媒膜は、酸化チタン粒子とともに、酸化チタンよりも屈折率が小さい酸化ケイ素粒子を膜に含ませることによって、膜の屈折率を低下させたものである。
【0004】
特開2006−162711号公報(特許文献1)には、図6に示したように、ナノサイズの酸化チタン粒子15が付着したサブミクロンサイズの酸化ケイ素粒子16により構成された光触媒膜11が開示されている(請求項1;図1)。特許文献1によると、光触媒膜11は、本来の光触媒機能とともに、反射抑制機能と両親媒性(水と液体パラフィンとの双方に対する低い接触角の実現)とを有するものとなる。光触媒膜11の両親媒性は、Wenzelの理論により説明できるように、酸化チタン粒子15の付着に伴う酸化ケイ素粒子16の表面粗さの増大によりもたらされている(段落0033−0036)。
【0005】
特許文献1に開示されている光触媒膜の成膜には静電付着法を用いなければならない。静電付着法は、成膜前の基板の帯電操作とともに、酸化ケイ素粒子と酸化チタン粒子とを2回に分けた塗布を必要とする方法であって、量産に適用すると、その製造効率の低さと製造コストの上昇とが問題となる。
【0006】
静電付着法では、基板を帯電させるためにPDDAやPSSのような有機成分からなるポリカチオンが用いられるが、ポリカチオンはその後の焼成により除去される。このため、特許文献1に開示されている光触媒膜は、ゾルゲル法により形成された光触媒膜とは異なり、基本的にバインダーがない構造をとる。粒子同士の間、あるいは粒子と基材との間に介在するバインダーを欠く光触媒膜は、その膜の強度が十分ではないため、とりわけ屋外における長期間の使用を考慮すると、実用的なものではない。
【0007】
以上のように、特許文献1に開示されている光触媒膜は、製造コストが高く、長期間の使用に適したものではない。
【0008】
特開2008−264777号公報(特許文献2)には、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、およびバインダー成分を含む光触媒膜が開示されている。この光触媒膜はゾルゲル法により形成することができる。バインダー成分は、加水分解性シリコーンの状態を基準として、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、およびバインダー成分の総量100質量部に対し、10質量部未満の割合で膜の形成溶液に添加される。ただし、加水分解性シリコーンは加水分解および重縮合を経て膜に残るため、現実に膜を構成するバインダーの量は加水分解性シリコーンを基準として示されている量よりも少なくなることに注意する必要がある。例えば特許文献2の表2の例9(比較例)に示されている加水分解性シリコーン10質量部の表示は、酸化ケイ素(SiO2)に換算した状態を基準とすると、膜中におけるバインダー成分の量が10質量部をやや下回ることを意味している。特許文献2においてバインダー成分の量が制限されているのは、粒子間に多くの空隙を確保して、分解すべきガスを光触媒膜の内部に導きやすくするためである(段落0013)。このため、特許文献2では、加水分解性シリコーンを実質的に添加しないことが好ましいとされている(段落0026)。
【0009】
特許文献2では、酸化チタン粒子の平均粒径は10nm以上100nm以下(請求項1)、酸化ケイ素粒子(無機酸化物粒子)の平均粒径は10nm以上40nm未満(請求項4)に調整されている。このように、特許文献2では、酸化ケイ素粒子の平均粒径は酸化チタン粒子の平均粒径の4倍以上にはならないこととされている。特許文献2の実施例の欄では、酸化ケイ素粒子として酸化チタン粒子よりも平均粒径が小さいものが選択されている。酸化チタン粒子よりも酸化ケイ素粒子が小さければ、酸化チタン粒子と基板との間に酸化ケイ素粒子が介在しやすくなり、特許文献2において考慮すべきとされている酸化チタン粒子による有機基材の浸食の防止(段落0014)には好都合となる。
【0010】
特許文献2に開示されている光触媒膜も、バインダーの量が少ないため、膜の強度は十分ではない。
【0011】
特開2010−134462号公報(特許文献3)には、二酸化チタンのマトリックスからなり、酸化ケイ素の粒子がマトリックス中に埋め込まれている光触媒膜が開示されている。この光触媒膜はゾルゲル法によって形成される。
【0012】
特許文献3に開示されている光触媒膜は、酸化ケイ素の粒子を有しているが、二酸化チタンの粒子は有していない。
【0013】
特許文献3において、発明を実施するための形態の欄には、平均球径が10nm〜15nmおよび18nm〜30nmである酸化ケイ素の粒子を用いて作製された光触媒膜が開示されている(段落0107、段落0108)。酸化ケイ素の粒子が小さすぎるため、特許文献3に開示されている光触媒膜の耐摩耗性は低く、膜の強度は十分ではない。
【0014】
特許文献3には、平均直径が10nm〜15nmであり、かつ長さが30nm〜150nmである細長い繊維状の酸化ケイ素の粒子を用いて作製された光触媒膜も開示されている(段落0111)。特許文献3に開示されている光触媒膜では、酸化ケイ素の粒子が繊維状であってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−162711号公報
【特許文献2】特開2008−264777号公報
【特許文献3】特開2010−134462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、ガラス板とその表面に形成された光触媒膜とを備え、光触媒膜によりガラス板に入射する光の反射率が低減されたガラス物品において、光触媒膜の光触媒機能と反射抑制機能とを維持しながら、光触媒膜の膜強度、具体的には耐摩耗性、を改善し、上記ガラス物品を長期間の使用に適したものへと改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ガラス板と前記ガラス板の表面に形成された光触媒膜とを備え、前記光触媒膜により前記ガラス板に入射する光の反射率が低減されたガラス物品であって、
前記光触媒膜が、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、および酸化ケイ素からなるバインダー成分を含み、
前記酸化ケイ素粒子、前記酸化チタン粒子、および前記バインダー成分の総量に対し、前記酸化ケイ素粒子が50〜82質量%、前記酸化チタン粒子が8〜40質量%、前記バインダー成分が7〜20質量%の範囲で含まれており、
前記酸化ケイ素粒子の平均粒径が前記酸化チタン粒子の平均粒径の5倍以上であり、
前記光触媒膜に含まれる一部の酸化ケイ素粒子が、突出酸化ケイ素粒子であり、
前記光触媒膜に含まれる一部の酸化チタン粒子が、前記突出酸化ケイ素粒子と前記ガラス板との間に介在している、ガラス物品、を提供する。
【0018】
本明細書において、突出酸化ケイ素粒子とは、1)前記ガラス板に接触しておらず、2)当該酸化ケイ素粒子に接触する酸化チタン粒子がある場合には当該酸化チタン粒子の頂部よりも前記ガラス板から離れた位置に、当該酸化ケイ素粒子に接触する酸化チタン粒子がない場合には当該酸化ケイ素粒子に最も近接した酸化チタン粒子の頂部よりも前記ガラス板から離れた位置に、その頂部を有し、3)その頂部が前記光触媒膜の表面に露出している、酸化ケイ素粒子を指す。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるガラス物品においては、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子およびバインダー成分の総量に対してバインダー成分を所定量以上含有させることにより、光触媒膜の膜強度を向上させることとした。また、バインダー成分の増量に伴う酸化チタン粒子による光触媒機能の低下を抑制するべく、酸化チタン粒子を上記総量に対して所定量以上含有させるとともに、酸化チタン粒子の平均粒径を酸化ケイ素粒子に対して相対的に小さくすることによって、酸化チタン粒子の単位質量あたりの表面積を確保することとした。また、酸化ケイ素粒子は、膜の強度確保と反射抑制機能の発現とのために、所定量以上を含有させることとした。
【0020】
本発明によるガラス物品では、酸化ケイ素粒子の一部が、ガラス板から離れているとともに周囲の酸化チタン粒子から突出した突出酸化ケイ素粒子となっている。このため、外部から膜に加えられる応力が直接作用する部分が、平均粒径が相対的に大きく膜中に安定して保持されている酸化ケイ素粒子になりやすい。また、酸化チタン粒子は、その一部が突出酸化ケイ素粒子とガラス板との間に入り込み、膜に応力が加えられても、ガラス板から脱落しにくくなっている。このように、本発明のガラス物品では、光触媒膜の膜構造も、膜の強度確保に適したものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のガラス物品の一例を示す断面図である。
図2参考例1により得た光触媒膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し た状態を示す図である。
図3参考例2により得た光触媒膜をSEMで観察した状態を示す図である。
図4】実施例により得た光触媒膜をSEMで観察した状態を示す図である。
図5】比較例1により得た光触媒膜をSEMで観察した状態を示す図である。
図6】特開2006−162711号公報(特許文献1)に開示された光触媒膜を 説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示したように、本発明によるガラス物品は、ガラス板2と、その表面上に形成された光触媒膜1とを備えている。
【0023】
光触媒膜1は、酸化チタン粒子5と、酸化ケイ素粒子6,7とを含んでいる。また、図示を省略するが、光触媒膜1には、酸化ケイ素からなるバインダー成分も含まれている。バインダー成分は、粒子の表面または粒子同士もしくは粒子と基板との接触部分に存在し、その接触部分において粒子同士または粒子と基板との間の結合力を増す役割を担っている。
【0024】
光触媒膜1を構成する各粒子(酸化チタン粒子5、酸化ケイ素粒子6,7)は、光触媒膜を構成するために従来から用いられてきたものを特に制限なく使用できる。ただし、各粒子5,6,7は、酸化ケイ素粒子6,7の平均粒径が酸化チタン粒子5の平均粒径の5倍以上となるように選択する。この程度にまで平均粒径に差があると、酸化チタン粒子5は、相対的に大きい酸化ケイ素粒子6,7が互いに接触していたとしても、膜中の空隙、特に粒子6,7とガラス板1との間の空隙、に容易に入り込むことができる。
【0025】
完全に球体で同形である3つの酸化ケイ素粒子が平面上において他の2つに接するように最密に単層配置された場合を考えると、この3つの酸化ケイ素粒子の間に入り込める酸化チタン粒子の粒径は、酸化ケイ素粒子の粒径の約0.155倍(酸化ケイ素粒子の粒径が酸化チタン粒子の粒径の約6.5倍)となる。しかし、現実には、酸化ケイ素粒子6,7が最密に配置されることはない。したがって、酸化ケイ素粒子6,7の平均粒径が酸化チタン粒子5の平均粒径の6.5倍以上であれば尚よいことは勿論であるものの、実際には、上述したとおり、この比率が5倍以上であれば、酸化チタン粒子5は、酸化ケイ素粒子6,7の間や粒子6,7と基板2との間に十分入り込むことができる。
【0026】
酸化ケイ素粒子6,7の平均粒径は、10nm以上500nm以下が好ましく、50nm以上150nm以下がより好ましい。酸化ケイ素粒子6,7の平均粒径が大きすぎると、所望の反射抑制機能が得られなくなるとともに光触媒膜1のヘイズ率(曇価)が高くなりすぎることがある。他方、酸化ケイ素粒子6,7の平均粒径が小さすぎると、酸化チタン粒子5の平均粒径に対する比率を大きく確保することが困難となる。
【0027】
酸化チタン粒子5の平均粒径は、5nm以上80nm以下が好ましく、5nm以上20nm以下がより好ましい。酸化チタン粒子5の平均粒径が大きすぎると、酸化ケイ素粒子6,7の平均粒径との比率を望ましい範囲とすることが困難となる。また、酸化チタン粒子5の平均粒径が大きすぎると、酸化チタンの単位質量あたりの表面積を大きく確保できなくなり、光触媒機能が低下することがある。他方、酸化チタン粒子5の平均粒径が小さすぎると、コーティング液の調製中に酸化チタン粒子が凝集し、均一なコーティング液が得られないことがある。
【0028】
ここで、本明細書における膜中の粒子の平均粒径の算出の方法について説明しておく。平均粒径は、SEMにより、ガラス板2の表面に垂直な方向から5万倍〜50万倍の倍率で光触媒膜1を観察して求める。具体的には、粒子の全体を観察できる任意の50個について、その最長径および最短径を測定してその平均値を各粒子の粒径とし、50個の粒子の粒径の平均値をもって平均粒径とする。
【0029】
酸化チタン粒子5および酸化ケイ素粒子6,7は、それぞれ、その粒径が揃っていることが望ましい。酸化チタン粒子5の粒径は、上記のSEMによる観察に基づく測定値により記述して、そのすべてが2〜100nm、特に5〜20nmの範囲にあることが好ましい。また、酸化ケイ素粒子6,7の粒径は、上記の観察に基づく測定値により記述して、そのすべてが20〜250nm、特に50〜150nmの範囲にあることが好ましい。また、酸化チタン粒子5および酸化ケイ素粒子6,7は、そのすべてが実質的に球状であることが好ましい。ここで、実質的に球状とは、上記の観察に基づく最長径および最短径の測定値により記述して、その比率(最長径/最短径)が1.0〜1.5の範囲にあることをいう。実質的に球状の粒子を用いれば、粒子間の空隙を確保しやすくなる。
【0030】
一部の酸化ケイ素粒子7(7b)は、ガラス板2と直接接触しておらず、他の粒子5,6を介してガラス板2に接続されている。また、酸化ケイ素粒子7(7b)は、その周囲に存在する酸化チタン粒子5よりもその頂部が高い位置(図示上方)にある。酸化ケイ素粒子7は、より具体的には、それに接触している酸化チタン粒子5の頂部よりも高い位置(ガラス板2から離れた位置)にその頂部を有し、その頂部が膜表面に露出している。酸化ケイ素粒子7bは、それに接触している酸化チタン粒子は存在しないものの、それに最も近接している酸化チタン粒子5bの頂部よりも高い位置にその頂部を有する。上述したとおり、本明細書では、これらの酸化ケイ素粒子7(7b)を「突出酸化ケイ素粒子」と呼ぶ。突出酸化ケイ素粒子7(7b)は、外部から膜に応力が加えられたときにその応力に抗する役割を担う。なお、図1に示した酸化ケイ素粒子6aは、ガラス板2から離れているものの、これに接する酸化チタン粒子5aの頂部よりも低い位置に頂部を有するため、突出酸化ケイ素粒子には該当しない。
【0031】
図示した形態では、突出酸化ケイ素粒子7は、突出酸化ケイ素粒子7に該当しない酸化ケイ素粒子6により支えられ、酸化ケイ素粒子6を介してガラス板2に固定されている。酸化ケイ素粒子6,7同士、および酸化ケイ素粒子6とガラス板2との間にはバインダー成分が介在し、これら粒子6,7により構成される膜の骨格(酸化ケイ素骨格)を補強している。突出酸化ケイ素粒子7がその他の酸化ケイ素粒子6によって支持されガラス板2に固定されている構造(より詳しくは、突出酸化ケイ素粒子7から酸化ケイ素粒子6のみを経由してガラス板2に至るパスが存在するように突出酸化ケイ素粒子7が支持されている構造)は、膜の強度向上に適している。
【0032】
突出酸化ケイ素粒子7が多く存在すれば、光触媒膜1内の空隙も増えることになる。この空隙には、相対的に小さい酸化チタン粒子5が入り込む。このように、酸化チタン粒子5は、酸化ケイ素粒子6,7からなる膜の骨格の周囲において、外部から膜に加えられる応力を直接受けにくい位置に多く存在する。酸化チタン粒子5の一部は、突出酸化ケイ素粒子7の下方に形成された突出酸化ケイ素粒子7とガラス板2との間の空隙に侵入している。粒子が入り込みにくいこの空隙に酸化チタン粒子5が存在していれば、酸化チタン粒子5は膜の酸化ケイ素骨格の周囲の空隙に十分入り込んでいるといえる。酸化ケイ素粒子6,7およびガラス板2の間の空隙に酸化チタン粒子5が多く入り込めば、光触媒膜1の構造は全体として密になり、外部から加えられる応力に対する抵抗力が増す。また、微細な酸化チタン粒子5は、凝集することによってその光触媒機能を発現しやすくなることがある。酸化チタン粒子5を、空隙に多く入り込ませ、より凝集しやすくするための一つの方法は、膜の形成溶液に界面活性剤を添加することである。また、界面活性剤を添加することで、膜の外観が向上する。これは、界面活性剤の添加により膜の空隙に酸化チタン粒子が入り込んで膜が全体として密になり、膜の反射色のムラが減少することが原因と考えられる。
【0033】
酸化チタン粒子5は、突出酸化ケイ素粒子7の頂部より高い位置には存在しない(実質的にすべての(例えば95%以上の)粒子5が突出酸化ケイ素粒子7の頂部同士を結んで形成される面よりも下方に存在する)ものの、その一部は、突出酸化ケイ素粒子7に該当しない酸化ケイ素粒子6上で凝集した状態で膜表面に露出している。膜中におけるバインダー成分が少量に制限されているため、酸化チタン粒子5は、多孔質状に凝集し、膜表面に露出した部分においては特に、その光触媒機能を発揮しやすい状態となっている。
【0034】
突出酸化ケイ素粒子7は、ガラス板2の表面に一辺500nmの正方形の領域を設定したときに、3個以上存在することが好ましく、4個以上存在することがより好ましく、5個以上存在することがさらに好ましい。上記領域内における突出酸化ケイ素粒子7の個数はSEMで観察することによりカウントできる。
【0035】
光触媒膜1のバインダー成分としては、酸化ケイ素が適している。酸化ケイ素からなるバインダーは、酸化ケイ素粒子6,7およびガラス板2との親和性が高く、これら粒子6,7の補強に適している。また、酸化ケイ素からなるバインダーは、屈折率が低いため、光触媒膜1による反射抑制機能の発現にも有利である。
【0036】
酸化ケイ素からなるバインダーは、シリコンアルコキシドに代表される加水分解性シリコーン化合物をその供給源として用いるとよい。シリコンアルコキシドとしては、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド、シリコンテトライソプロポキシドなどが挙げられるが、ゾルゲル法により酸化ケイ素を形成可能なものとして知られている化合物であれば、バインダー供給源としての使用に特に制限はない。
【0037】
光触媒膜1において、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、および酸化ケイ素からなるバインダー成分の比率は、これらの総量に対して、酸化ケイ素粒子が50〜82質量%、酸化チタン粒子が8〜40質量%、バインダー成分が7〜20質量%であればよい。また、これらの総量に対して、酸化ケイ素粒子が50〜82質量%、酸化チタン粒子が8〜40質量%、バインダー成分が8〜20質量%であってもよい。
【0038】
好ましくは、これらの総量に対して、酸化ケイ素粒子が60〜82質量%、酸化チタン粒子が8〜25質量%、バインダー成分が10〜20質量%である。また、好ましくは、これらの総量に対して、酸化ケイ素粒子が60〜80質量%、酸化チタン粒子が10〜25質量%、バインダー成分が10〜18質量%である。
【0039】
特に好ましくは、これらの総量に対して、酸化ケイ素粒子が50〜57質量%、酸化チタン粒子が30〜40質量%、バインダー成分が8〜14質量%である。この場合に、特に優れた光触媒機能特性が得られやすい。また、優れた反射抑制機能特性も得られやすい。
【0040】
また、特に好ましくは、これらの総量に対して、酸化ケイ素粒子が65〜75質量%、酸化チタン粒子が13〜23質量%、バインダー成分が10〜16質量%である。この場合にも、特に優れた反射抑制機能特性が得られやすい。また、優れた光触媒機能特性も得られやすい。
【0041】
酸化ケイ素粒子が多すぎると、酸化チタン粒子の不足により光触媒機能が低下したりバインダー成分の不足により膜強度が低下したりする。酸化ケイ素粒子が少なすぎると、膜強度が低下したり反射抑制機能が低下したりする。酸化チタン粒子が多すぎると、反射抑制機能が低下したり膜強度が低下したりする。酸化チタン粒子が少なすぎると、光触媒機能が十分に得られない。バインダー成分が多すぎると、酸化チタン粒子が多孔質状に凝集している部分を覆って光触媒機能を低下させることがある。バインダー成分が少なすぎると、膜の強度が十分に得られない。
【0042】
光触媒膜1の膜厚は、特に制限はないが、例えば20nm〜500nm、特に50nm〜250nmとするとよい。
【0043】
光触媒膜1は、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子およびバインダー供給源を含む形成溶液(コーティング溶液)を用いたゾルゲル法により成膜することができる。ゾルゲル法による光触媒膜1の成膜の具体例は、次の実施例の欄において記述する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。まず、各実施例、比較例で作製したガラス物品(光触媒膜付きガラス板)の特性を評価するために実施した試験の内容を説明する。
【0045】
<光学特定評価>
分光光度計(島津製作所 UV−3100)を用いてガラス物品の光線透過率および光線反射率を測定した。反射率は、光触媒膜を形成した面を測定面とし、測定面に対し法線方向から光を入射させ、反射角8°の直接反射光を積分球に導入して測定した。この際、測定面と反対側の非測定面(光触媒膜を形成していない面)からの反射光を排除するため、非測定面はスプレー塗布により黒色に着色した。透過率は、非測定面を黒色に着色することなく、測定面に光を入射させ、透過光を積分球に導入して測定した。こうして得た透過または反射スペクトルから、波長400〜1200nmの範囲を平均化して、平均透過率および平均反射率を算出した。さらに、光触媒膜の形成に伴う平均透過率の変化を算出した。具体的には、光触媒膜を形成していないガラス板についても、上記と同様、平均透過率を測定し、光触媒膜の形成に伴う平均透過率の変化を算出した。
【0046】
<テーバー摩耗試験>
テーバー摩耗試験は、JIS R3212に準拠した摩耗試験によって行った。すなわち、市販のテーバー摩耗試験機(TABER INDUSTRIES社製5150 ABRASER)を用い、CS−10F摩耗輪を2.45Nの力で光触媒膜に押しつけながら、500回転させた。この試験前後にスガ試験機社製HZ−1Sを用いて全光線透過率を測定し、摩耗試験による全光線透過率の変化を算出した。また、膜の残存率(試験後に残存している膜の面積比率)を目視により確認し、膜の残存率が70%以上を「A」、30%以上70%未満を「B」、30%未満を「C」とした。
【0047】
<往復摩耗試験>
往復摩耗試験(EN摩耗試験)は、EN規格1096−2:2001に準拠した摩耗試験によって行った。すなわち、EN−1096−2に明記された測定条件に合うように製造された平面摩耗試験機(大栄科学機器製作所)を用い、6rpmで回転させたフェルトを4Nの力で光触媒膜面に押し付けながら、平均速度7.2m/分の速さで500回往復させた。この試験後に膜の剥離状態を目視にて確認し、膜の剥離がない場合を「a」、膜の一部が剥離している場合を「b」として評価した。
【0048】
<光親水化評価>
光触媒膜の表面における水滴の接触角の紫外線照射による変化を測定した。紫外線照射は、ブラックライト(主波長352nm、1mW/cm2)を20時間照射することにより行った。水滴の接触角はドロップマスター300(協和界面科学製)により測定した。なお、紫外線照射前の膜の表面はエタノールで軽く拭いておいた。
【0049】
<メチレンブルー分解活性評価>
メチレンブルー分解活性指数をJIS R1703−2に準拠した方法で評価した。リングセルの端面に真空用シリコーングリスを塗り、光触媒膜の表面にリングセルを固定した。メチレンブルー水溶液(0.01mmol/L)35mLをリングセル内に入れ、光触媒膜にメチレンブルー水溶液を接触させるとともに、カバーガラスをセルの上に置いた。ブラックライト(主波長352nm、1mW/cm2)を用い、光触媒膜の表面のリングセルを固定した領域に、カバーガラスを通して紫外線を80分間照射した。紫外線照射前後において上記水溶液を3mL採取し、吸光度を測定した。吸光度の変化に基づいて、光触媒膜によるメチレンブルー分解活性指数(単位:nmol/L・min)を算出した。
【0050】
参考例1
エチレングリコールエチルエーテル(シグマアルドリッチ製;有機溶媒)27.6g、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−04;バインダー供給源)1.7g、コロイダルシリカ微粒子分散液(扶桑化学工業社製PL−7;固形分濃度22.9%、一次粒子径(平均粒径)75nm、分散媒:水)15.3g、酸化チタン微粒子分散液(固形分濃度20%、一次粒子径(平均粒径)10nm、分散媒:水)5.0g、1N塩酸(加水分解触媒)0.4gをガラス製容器に秤量し、これを40℃に保持したオーブン内で8時間攪拌して、高濃度溶液を得た。この高濃度溶液における固形分濃度は10%であり、酸化ケイ素粒子(コロイダルシリカ微粒子)、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は70:20:10となる。次いで、イソプロピルアルコール245.1g、プロピレングリコール12.9g、高濃度溶液42.0gの割合で混合し、コーティング溶液(膜の形成溶液)を調製した。このコーティング溶液における固形分濃度は1.4%である。
【0051】
引き続き、洗浄したガラス板(300×100mm;厚み5mm;ソーダライムガラス)の表面にコーティング液をスプレーコート法により塗布した。なお、コーティング液は、塗布直前まで攪拌を継続した。コーティング液を塗布したガラス板は300℃に設定したオーブン内で乾燥させ、その後、610℃に設定した電気炉内で8分間焼成した。こうして得た光触媒膜付きガラス板について、上記各特性を評価した。評価の結果を表1に示す。高濃度溶液およびコーティング液のそれぞれを製造する際に用いた各原料の添加量と、高濃度溶液の固形分濃度およびコーティング液の固形分濃度とを表3に示す。また、形成した光触媒膜をSEMで観察した状態を図2として示す。
【0052】
参考例2
表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合し、次いでコーティング液を調合した。各原料の添加量は表3に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。参考例2における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は70:15:15となる。こうして得た光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表1に示す。また、形成した光触媒膜をSEMで観察した状態を図3として示す。
【0053】
(実施例
表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。各原料の添加量は表3に示す量とした。次いで、表3に示した各原料を用いてコーティング液を調合した。具体的には、イソプロピルアルコール240.8g、プロピレングリコール12.8g、高濃度溶液45.0g、イソプロピルアルコールで10%に希釈した界面活性剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製CoatOSil3505)1.5gを混合してコーティング液を調製し、以降は参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は70:15:15となる。なお、上記界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤である。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表1に示す。
【0054】
(実施例
表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表3に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は55.2:35:9.8となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表1に示す。また、形成した光触媒膜をSEMで観察した状態を図4として示す。
【0055】
(実施例
表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表3に示した各原料を用いて、実施例と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表3に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は54.4:34.8:10.8となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表1に示す。
【0056】
(実施例
表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表3に示した各原料を用いて、実施例と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表3に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は61.4:27.8:10.8となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表1に示す。
【0057】
(実施例
表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表3に示した各原料を用いて、実施例と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表3に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は51.5:35.5:13となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表1に示す。
【0058】
(実施例
表3に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表3に示した各原料を用いて、実施例と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表3に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は57.5:35:7.5となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表1に示す。
【0059】
(実施例
表4に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表4に示した各原料を用いて、実施例と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は58:31:11となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。
【0060】
(実施例
表4に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表4に示した各原料を用いて、実施例と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は52.5:38:9.5となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。
【0061】
(実施例
表4に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表4に示した各原料を用いて、実施例と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。実施例における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は51:39:10となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。
【0062】
参考例3
表4に示した各原料を用いて、参考例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表4に示した各原料を用いて、参考例1と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。参考例3における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は55:35:10となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。
【0063】
(比較例1)
エチレングリコールエチルエーテル27.7g、テトラエトキシシラン0.9g、コロイダルシリカ微粒子分散液18.6g、酸化チタン微粒子分散液2.5g、1N塩酸0.4gをガラス製容器に秤量し、これを40℃に保持したオーブン内で8時間攪拌して、高濃度溶液を得た。この高濃度溶液における固形分濃度は10%である。また、各原料の製造元および品番は参考例1に示したとおりである。次いで、イソプロピルアルコール248.0g、プロピレングリコール13.1g、高濃度溶液39.0gの割合で混合し、コーティング溶液を調製し、以降は参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。比較例1における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は85:10:5となる。コーティング溶液における固形分濃度は1.3%である。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。高濃度溶液およびコーティング液のそれぞれを製造する際に用いた各原料の添加量と、高濃度溶液の固形分濃度およびコーティング液の固形分濃度とを表4に示す。なお、比較例1では、テーバー摩耗試験により、膜のすべてがガラス板から脱落したため(残存率0%)、同試験前後の光線透過率の変化は測定しなかった。形成した光触媒膜をSEMで観察した状態を図5として示す。
【0064】
(比較例2)
表4に示した各原料を用いて、比較例1と同様にして高濃度溶液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。次いで、表4に示した各原料を用いてコーティング液を調合した。具体的には、イソプロピルアルコール247.4g、プロピレングリコール13.1g、高濃度溶液39.0g、イソプロピルアルコールで10%に希釈した界面活性剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製CoatOSil1211)0.6gを混合してコーティング液を調製し、以降は参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。比較例2における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は、比較例1と同様、85:10:5となる。コーティング溶液における固形分濃度は1.3%である。なお、上記界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤である。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。比較例2においても、テーバー摩耗試験により、膜のすべてがガラス板から脱落したため(残存率0%)、同試験前後の光線透過率の変化は測定しなかった。
【0065】
(比較例3)
表4に示した各原料を用いて、比較例1と同様にして高濃度溶液を調合し、次いでコーティング液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。比較例3における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は85:5:10となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。
【0066】
(比較例4)
表4に示した各原料を用いて、比較例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表4に示した各原料を用いて、比較例2と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。比較例4における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は70:0:30となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。
【0067】
(比較例5)
表4に示した各原料を用いて、比較例1と同様にして高濃度溶液を調合した。次いで、表4に示した各原料を用いて、比較例2と同様にしてコーティング液を調合した。各原料の添加量は表4に示す量とした。さらに参考例1と同様にして、光触媒膜付きガラス板を得た。比較例5における、酸化ケイ素粒子、酸化チタン微粒子、およびSiO2に換算したバインダー成分の質量比は48.5:36:15.5となる。この光触媒膜付きガラス板についての評価の結果を表2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
実施例1〜により得た光触媒膜付きガラス板は、いずれも、光触媒機能および反射抑制機能を有する。実施例1〜により得た光触媒膜付きガラス板は、波長400−1200nmの平均反射率が3.1%以下であり、好ましい反射抑制機能特性を有する。波長400−1200nmの平均反射率が2.9%以下であれば、さらに好ましい反射抑制機能特性を有する。また、実施例1〜により得た光触媒膜付きガラス板は、メチレンブルー分解活性指数が3nmol/L・min以上であり、優れた光触媒機能特性を有する。さらに、実施例1〜により得た光触媒膜付きガラス板は、テーバー摩耗試験後でも膜の少なくとも一部が残存し、EN摩耗試験後でも膜が剥離していなかった。SEMを用いた観察によると(図2図4)、実施例による光触媒膜には多数の突出酸化ケイ素粒子が存在していることが確認できる。光触媒膜が局所的に厚くなっている部分は突出酸化ケイ素粒子により構成されており、突出酸化ケイ素粒子は、ガラス板の表面上の一辺500nmの正方形の領域あたり、少なく見積もっても5個以上存在している。突出酸化ケイ素粒子が複数の酸化ケイ素粒子に支持されてガラス板に固定されていることも見て取れる。また、酸化チタン粒子が、酸化ケイ素粒子同士および同粒子と基板との間において凝集していること、その一部が突出酸化ケイ素粒子とガラス板との間に介在していること、その別の一部が凝集した状態で膜表面に露出していること、も確認できる。バインダーの量が少ないため、酸化チタン粒子は、粒子間に空隙が確保された多孔質状態で凝集している。さらに、酸化チタン粒子の実質的にすべて(個数ベースで95%以上)は、突出酸化ケイ素粒子の頂部同士を結んで形成される面よりも下方に存在している。
【0073】
光触媒膜の最表面には突出酸化ケイ素粒子が存在していることが、優れた反射抑制機能を発現し、かつ高い耐摩耗性を有している一因であると考えられる。また、酸化チタン粒子が光触媒膜の最表面には存在しないが、最表面の近傍に存在することが、優れた光触媒機能を発現する一因であると考えられる。
【0074】
参考例2と実施例とをそれぞれ対比すると、界面活性剤の添加により、テーバー摩耗試験後の光線透過率の変化がやや小さくなったことがわかる。これは、界面活性剤の添加により膜の空隙に酸化チタン粒子が入り込んで膜が全体として密になったためと考えられる。また、上記の対比により、界面活性剤の添加がメチレンブルーの分解活性指数を向上させたことも確認できる。この原因を特定するべく膜の構造をさらに詳細に解析したところ、界面活性剤の添加により酸化チタン粒子が凝集した部分が増加したことが確認できた。酸化チタン粒子が多孔質状に凝集した部分がメチレンブルーの分解に寄与したと考えられる。
【0075】
なお、各実施例による光触媒膜のSEMによる観察結果から、光触媒膜の膜厚が100〜200nmの範囲にあること、酸化ケイ素粒子および酸化チタン粒子が実質的に球状であってその平均粒径は原料について上述した値にほぼ一致していること、も確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、膜の強度を改善した光触媒膜を備えたガラス物品を提供できる。このガラス物品は、多方面で有用であるが、とりわけ屋外において長期間の使用が予定されるガラス物品、例えば太陽電池用カバーガラス、温室用ガラスなどとして大きな利用価値を有する。
図1
図6
図2
図3
図4
図5