特許第5969077号(P5969077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5969077
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/34 20060101AFI20160728BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B66B1/34 A
   B66B1/06 K
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-50547(P2015-50547)
(22)【出願日】2015年3月13日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 祥太郎
【審査官】 芦原 康裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−056701(JP,A)
【文献】 特開2014−027458(JP,A)
【文献】 特開2014−057235(JP,A)
【文献】 特開2003−150001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 1/52
H04M 1/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごを駆動する駆動装置と、
この駆動装置の運転を含むエレベータ全体の運転制御を行う制御装置と、
乗場の任意の箇所に設置された非接触式の受電装置と、
通常運転中に上記乗りかごが待機状態になったことを検出する待機状態検出手段と、
この待機状態検出手段によって上記乗りかごの待機状態が検出されたときに、商用電源から上記駆動装置および上記制御装置へ供給される電力を遮断することで、待機時に復帰のためのトリガ用電源を残さない状態にする電源遮断手段と、
送電機能付きの携帯端末を上記受電装置に近付けることで得られる電力を利用して、上記電源遮断手段による電力遮断を解除する遮断解除手段と
を具備したことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
上記受電装置は、
上記乗場における上記乗りかごの乗降口に設けられた乗場ドアの近傍に設置されていることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
上記電源遮断手段によって上記駆動装置および上記制御装置に対する電力供給が遮断されたときに、上記乗場に上記乗りかごが待機状態にあることを通知する第1の通知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項4】
上記第1の通知手段は、
上記乗りかごを待機状態から復帰させる方法を含めて通知することを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。
【請求項5】
上記遮断解除手段によって電力遮断が解除されたときに、上記乗場に上記乗りかごが復帰状態にあることを通知する第2の通知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項6】
上記第2の通知手段は、
上記乗りかごが動き出すまでの復帰時間を含めて通知することを特徴とする請求項5記載のエレベータシステム。
【請求項7】
上記第1の通知手段は、
上記乗場における上記乗りかごの乗降口に設けられた乗場ドアの近傍に設置された表示器を通じて通知することを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。
【請求項8】
上記第2の通知手段は、
上記乗場における上記乗りかごの乗降口に設けられた乗場ドアの近傍に設置された表示器を通じて通知することを特徴とする請求項5記載のエレベータシステム。
【請求項9】
上記商用電源と上記制御装置との間の電力供給ラインに設けられた第1のスイッチと、
上記商用電源と上記駆動装置との間の電力供給ラインに設けられた第2のスイッチとを備え、
上記電源遮断手段は、
上記乗りかごが待機状態になったときに、上記第2のスイッチをOFFして上記駆動装置への電力供給を遮断した後、上記第1のスイッチをOFFして上記制御装置への電力供給を遮断することを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項10】
上記遮断解除手段は、
上記携帯端末が上記受電装置に接近したときに得られる電力を利用して、上記第1のスイッチをONして上記制御装置に対する電力遮断を解除し、上記第2のスイッチをONして上記駆動装置に対する電力遮断を解除することを特徴とする請求項9記載のエレベータシステム。
【請求項11】
上記受電装置は、
上記携帯端末から得られた電力を蓄えておくためのバッテリを有し、
上記遮断解除手段は、
上記バッテリに蓄えられた電力の一部を使って上記電源遮断手段による電力遮断を解除することを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、待機電力の削減機能を備えたエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マンション等のビルに設置されたエレベータや家庭用のエレベータでは、利用頻度が少なく、待機状態にあることが多いため、待機中に消費される電力(待機電力)が問題となる。
【0003】
このような待機電力を削減するため、外部のボタン操作によって待機状態から通常運転状態へ復帰させるためのトリガ用電源を残して、エレベータの制御電源と動力電源を遮断する方法がある。「制御電源」とは、制御装置(制御盤)の駆動に必要な電源のことである。「動力電源」とは、インバータなどを含む駆動装置の駆動に必要な電源のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した方法では、待機状態から復帰させるためのトリガ用電源を残しておく必要があるため、完全には待機電力をゼロにすることはできない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、待機電力をゼロにして待機でき、また、待機状態から簡単に復帰させることのできるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、乗りかごを駆動する駆動装置と、この駆動装置の運転を含むエレベータ全体の運転制御を行う制御装置と、乗場の任意の箇所に設置された非接触式の受電装置と、通常運転中に上記乗りかごが待機状態になったことを検出する待機状態検出手段と、この待機状態検出手段によって上記乗りかごの待機状態が検出されたときに、商用電源から上記駆動装置および上記制御装置へ供給される電力を遮断することで、待機時に復帰のためのトリガ用電源を残さない状態にする電源遮断手段と、送電機能付きの携帯端末を上記受電装置に近付けることで得られる電力を利用して、上記電源遮断手段による電力遮断を解除する遮断解除手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図2図2は同実施形態における受電装置の設置例を示す図である。
図3図3は同実施形態における受電装置の設置例を示す図である。
図4図4は同実施形態における受電装置と送電装置との間の非接触給電の原理を説明するための図である。
図5図5は同実施形態におけるエレベータシステムの動作を示すフローチャートである。
図6図6は第2の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図7図7は同実施形態における表示器の設置例を示す図である。
図8図8は同実施形態における表示器に表示されるメッセージの一例を示す図であり、図8(a)は電源遮断によりエレベータが待機状態にあるときに表示されるメッセージの一例であり、同図(b)は電源遮断の解除によりエレベータが復帰状態にあるときに表示されるメッセージの一例である。
図9図9は第2の実施形態におけるエレベータシステムの動作を示すフローチャートである。
図10図10は第3の実施形態における受電装置の構成を示す図である。
図11図11は同実施形態における受電装置に設けられたバッテリの利用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。本実施形態では、例えばマンション等のビルに設置されたエレベータや家庭用のエレベータなど、利用頻度が少ないエレベータを想定している。なお、「エレベータ」とは、基本的に「乗りかご」のことを言う。
【0011】
図1に示すように、エレベータシステムは、駆動装置10と制御装置20とを備える。駆動装置10は、コンバータ11、平滑コンデンサ12、インバータ13を有し、制御装置30の指示に従って巻上機2を駆動する。
【0012】
なお、コンバータ11は、商用電源1から供給される交流電圧を直流電圧に変換するものである。商用電源1は、三相の交流電源からなる。平滑コンデンサ12は、コンバータ11によって変換された直流電圧のリプルを平滑する。インバータ13は、コンバータ11から平滑コンデンサ12を介して与えられた直流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)制御により任意の周波数、電圧値の交流電圧に変換し、これを駆動電力として巻上機2に供給する。
【0013】
巻上機2は、同期電動機からなり、駆動装置10からの電力供給によって回転する。巻上機2には図示せぬシーブを介してロープ3が巻回されており、そのロープ3の一端には乗りかご4、他端にはカウンタウェイト5が連結されている。これにより、巻上機2の回転に伴い、ロープ3を介して乗りかご4とカウンタウェイト5がつるべ式に昇降動作する。
【0014】
制御装置30は、図示せぬ制御盤の中に組み込まれており、駆動装置10の制御を含むエレベータ全体の運転制御を行う。制御装置30は、商用電源1にトランス21を介して接続されている。トランス21は、商用電源1の電力を制御装置20の駆動に必要な電圧に降圧して制御装置20に供給している。
【0015】
商用電源1と制御装置20との間には、電力遮断手段として用いられる電力遮断スイッチSW1が介在されている。通常は、電力遮断スイッチSW1はONしており(閉じた状態)、制御装置20から出力される電力遮断切替え指令C1によってOFFに切り替えられる。電力遮断スイッチSW1がONのとき、商用電源1からトランス21を介して制御装置20に所要の電力が供給される。電力遮断スイッチSW1がOFFのとき、商用電源1から制御装置20に対する電力供給が遮断される。
【0016】
同様に、商用電源1と駆動装置10との間には、電力遮断手段として用いられる電力遮断スイッチSW2が介在されている。通常は、電力遮断スイッチSW2はONしており(閉じた状態)、制御装置20から出力される電力遮断切替え指令C2によってOFFに切り替えられる。電力遮断スイッチSW2がONのとき、商用電源1から駆動装置10に所要の電力が供給される。電力遮断スイッチSW2がOFFのとき、商用電源1から駆動装置10に対する電力供給が遮断される。
【0017】
ここで、本実施形態では、電力遮断状態を解除するための構成として、非接触式の受電装置22とリレー23が備えられている。受電装置22は、非接触式の送電装置30から供給される電力を受電し、その受電した電力を復帰電力Pとしてリレー23に出力する。リレー23は、例えばSSR(Solid State Relay)などのフォトカプラからなる。リレー23は、遮断解除手段として用いられ、受電装置22から出力される復帰電力Pによって動作し、電力遮断スイッチSW1をOFFからONへ切り替える。
【0018】
図2および図3は受電装置22の設置例を示す図である。
【0019】
受電装置22は、乗場40の任意の箇所に設置される。図2の例では、乗場40における乗りかご4の乗降口に開閉自在に設けられた乗場ドア41の近傍に受電装置22が設置されている。この場合、エレベータの利用者が容易に確認でき、また、その後の利用者のボタン操作のことを考慮して、乗場呼びボタン42の近傍に受電装置22を設置しておくことが好ましい。
【0020】
受電装置22は、各階のどこでも受電できるように、すべての階の乗場40に上記同様にして設置されている。
【0021】
また、複数台のエレベータ(乗りかご)を有する群管理システムであれば、各エレベータに共通で少なくとも1つの受電装置22が設置されていれば良い。図3の例では、2台のエレベータの乗場ドア41a,41bの間に受電装置22が設置されている。なお、図中の42a,42bは乗場呼びボタンである。
【0022】
一方、送電装置30は、利用者が持つ携帯端末31に組み込まれている。携帯端末31は、エレベータの利用者が個人的に所持している端末装置A、または、ビルが貸し出している端末装置Bを含む。
【0023】
端末装置Aには、利用者が携帯して利用可能な通信機器(携帯電話機、スマートフォン等)や情報機器(PDA(Personal Digital Assistants),ノートPC,タブレット端末,スマートウォッチ等)が含まれる。端末装置Aの場合、送電装置30に相当する非接触給電用の送電機能が搭載されている必要がある。
【0024】
端末装置Bは、非接触給電専用機器としてビル側で用意したものであり、各階の所定の場所に置かれているか、あるいは、事前に各階の住居人等に配布されているものとする。利用者個人の端末装置Aに送電機能が搭載されていない場合に、この端末装置Bを用いてエレベータ(乗りかご4)を通常運転へ復帰させる。
【0025】
利用者が携帯端末31を乗場40に設置された受電装置22に近付けると、受電装置22と送電装置30との間で非接触給電が行われる。これにより、携帯端末31の電力がエレベータ側に送られ、エレベータが待機状態から通常運転状態へ復帰する。
【0026】
なお、非接触給電の方式としては、「電磁誘導方式」,「電磁界共鳴方式」,「マイクロ波送電方式」などがある。本実施形態では、「電磁誘導方式」を用いるものとする。「電磁誘導方式」は、2つのコイル間に発生する電磁誘導を利用して電力を伝送する方式であり、送電距離が数十mmと短いが、簡易な回路で実現できる。
【0027】
図4は受電装置22と送電装置30との間の非接触給電の原理を説明するための図である。
【0028】
送電装置30は、発振回路52と、この発振回路52に接続された一次コイル53とで構成される。発振回路52は、携帯端末31のバッテリ51に接続されている。一方、受電装置22は、二次コイル54と、整流回路55と、平滑回路56とで構成される。
【0029】
携帯端末31に設けられた送電装置30の一次コイル53と受電装置22の二次コイル54とを磁気的に結合し、発振回路52によって一次コイル53に発生する交流磁場で二次コイル54に電圧を発生させることで電力を非接触で送る。受電装置22に送られた電力は、整流回路55、平滑回路56を介してリレー23に出力される。
【0030】
次に、第1の実施形態の動作を説明する。
【0031】
図5は第1の実施形態におけるエレベータシステムの動作を示すフローチャートである。
【0032】
通常の運転時は、エレベータの乗りかご4が所定の速度で移動しながら、各階に停止して運転サービスを行っている。このとき、電力遮断スイッチSW1,SW2はONの状態であり、商用電源1から制御装置20と駆動装置10に対して所要の電力が供給されている。
【0033】
ここで、制御装置20は、乗りかご4が待機状態(無人かつ無方向停止状態)になったことを検出すると(ステップS11のYes)、電力遮断切替え指令C2を出力して電力遮断スイッチSW2をOFFして、商用電源1から駆動装置10への電力供給を遮断する(ステップS12)。
【0034】
続いて、制御装置20は、電力遮断切替え指令C1を出力して電力遮断スイッチSW1をOFFすることにより、商用電源1から制御装置20への電力供給を自ら遮断する(ステップS13)。
【0035】
このように、待機時には駆動装置10の動力電源と制御装置20の制御電源の両方を遮断することで省電力化を図る。この場合、復帰のためのトリガ用電源を残しておく必要はなく、エレベータシステムに関係する全ての電力をシャットダウンして待機電力ゼロを実現できる。一般にマンションビルのように利用頻度が少ないビルに設置されたエレベータでは、待機時間が長いので、その間の待機電力をゼロにできることは省エネ効果が非常に高い。
【0036】
一方、エレベータを待機状態から復帰させる場合には、図2および図3に示したように、利用者が持つ携帯端末31を乗場40に設置された受電装置22に近付ける。携帯端末31には送電装置30が組み込まれており、受電装置22に近付けることで、送電装置30から受電装置22へ非接触で電力を送ることができる。
【0037】
受電装置22に電力が給電されると(ステップS14のYes)、そのときの電力が復帰電力Pとしてリレー23に出力され、電力遮断スイッチSW1をON動作させる(ステップS15)。電力遮断スイッチSW1をONすると、商用電源1からトランス21を介して制御装置20に対して電力が供給され、制御装置20が起動される。
【0038】
起動後、制御装置20は、直ちに電力遮断切替え指令C2を出力して電力遮断スイッチSW2をONする(ステップS16)。電力遮断スイッチSW2をONすると、商用電源1から駆動装置10に対して電力が供給される。
【0039】
このようにして、制御装置20と駆動装置10に対する電力供給が再開され、エレベータが通常運転状態に復帰する。したがって、利用者が乗場40に設置された乗場呼びボタン42を押下すれば、駆動装置10によって巻上機2が駆動され、乗りかご4が当該階床に応答する。
【0040】
このように第1の実施形態によれば、エレベータの駆動電源および制御電源を遮断して待機する場合において、復帰のためのトリガ用電源を残さずに全ての電源を遮断できるので、待機電力をゼロの状態にできる。また、利用者が持つ携帯端末31を利用し、その携帯端末31の電力を非接触給電により送ってエレベータを復帰させるので、外部から電力を取り込むための配線は不要であり、携帯端末31を受電装置22に近付けるだけで簡単に復帰させることができる。
【0041】
なお、上記第1の実施形態では、復帰時の電力遮断スイッチSW2のOFFからONへの切替えを制御装置20によって行う構成としたが、携帯端末31から得られる復帰電力Pを利用して電力遮断スイッチSW1と共に電力遮断スイッチSW2をONすることでも良い。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0043】
エレベータが待機状態にあるときは、乗場呼びボタン42を何度押しても乗りかご4が動かないので、利用者は故障中と勘違いすることがある。そこで、第2の実施形態では、エレベータの現在の状態(待機状態/復帰状態)を利用者に知らしめるようにしたものである。
【0044】
図6は第2の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。なお、上記第1の実施形態における図1の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0045】
第2の実施形態では、上記第1の実施形態の構成に加え、乗場40に表示器24が設けられている。表示器24は、制御装置20の指示に従ってエレベータ(乗りかご4)の現在の状態を表示すると共に、待機状態にあるときには復帰の方法を併せて表示する。表示器24としては、電力がない状態で表示内容を維持可能な電子ペーパーなどが用いられる。なお、電子ペーパーの構造については一般的に知られているため、ここではその詳しい説明を省略するものとする。
【0046】
図7は表示器24の設置例を示す図である。
【0047】
表示器24は、乗場40の任意の箇所に設置される。図7の例では、乗場ドア41の近傍に表示器24が設置されている。この場合、エレベータの利用者が直ぐに視認でき、しかも、その後に携帯端末31を受電装置22に近付けることを考慮すると、受電装置22のすぐに近くに表示器24を設置しておくことが好ましい。
【0048】
図8は表示器24に表示されるメッセージの一例を示す図である。
【0049】
図8(a)は電源遮断によりエレベータが待機状態にあるときに表示されるメッセージの一例であり、同図(b)は電源遮断の解除によりエレベータが復帰状態にあるときに表示されるメッセージの一例である。
【0050】
次に、第2の実施形態の動作を説明する。
【0051】
図9は第2の実施形態におけるエレベータシステムの動作を示すフローチャートである。
【0052】
通常の運転時は、エレベータの乗りかご4が所定の速度で移動しながら、各階に停止して運転サービスを行っている。このとき、電力遮断スイッチSW1,SW2はONの状態であり、商用電源1から制御装置20と駆動装置10に対して所要の電力が供給されている。
【0053】
ここで、制御装置20は、乗りかご4が待機状態(無人かつ無方向停止状態)になったことを検出すると(ステップS21のYes)、電力遮断切替え指令C2を出力して電力遮断スイッチSW2をOFFして、商用電源1から駆動装置10への電力供給を遮断する(ステップS22)。このとき、制御装置20は、エレベータが待機状態にあることを表示器24に表示する(ステップS23)。
【0054】
具体的には、図8(a)に示すように、例えば「待機中」といったメッセージ61を表示器24に表示することで、乗場40に来た利用者にエレベータが待機状態にあることを知らせる。その際、例えば「エレベータを利用する場合には端末装置を近付けて下さい。」といったメッセージ62を併せて表示することで、利用者に復帰させる方法を知らせることができる。
【0055】
続いて、制御装置20は、電力遮断切替え指令C1を出力して電力遮断スイッチSW1をOFFすることにより、商用電源1から制御装置20への電力供給を自ら遮断する(ステップS24)。
【0056】
この場合、上記表示器24として、例えば電子ペーパーのように、電力なしの状態で表示内容を維持可能な表示媒体を使用することで、制御電源を遮断した後も図8(a)のメッセージ61,62を保つことができる。したがって、エレベータ待機中の間に乗場40に来た利用者はメッセージ61から現在の状態を把握でき、さらに、メッセージ62から復帰方法を知ることができる。
【0057】
一方、待機状態から復帰させる場合には、図2および図3に示したように、利用者が持つ携帯端末31を乗場40に設置された受電装置22に近付ける。携帯端末31には送電装置30が組み込まれており、受電装置22に近付けることで、送電装置30から受電装置22へ非接触で電力を送ることができる。
【0058】
受電装置22に電力が給電されると(ステップS25のYes)、そのときの電力が復帰電力Pとしてリレー23に出力され、電力遮断スイッチSW1をON動作させる(ステップS26)。電力遮断スイッチSW1をONすると、商用電源1からトランス21を介して制御装置20に対して電力が供給され、制御装置20が起動される。起動後、制御装置20は、エレベータが復帰状態にあることを表示器24に表示する(ステップS27)。
【0059】
具体的には、図8(b)に示すように、例えば「復帰中」といったメッセージ63を表示器24に表示することで、乗場40に来た利用者にエレベータが復帰状態にあることを知らせる。その際、例えば「あと30秒でエレベータが動きます。しばらくお待ち下さい。」といったメッセージ64を併せて表示することで、利用者に復帰までの時間を伝えることができる。なお、上記メッセージ64で伝える復帰時間は、電源立ち上げ後に乗りかご4を動かすことのできる標準的な時間である。
【0060】
続いて、制御装置20は、電力遮断切替え指令C2を出力して電力遮断スイッチSW2をONする(ステップS28)。電力遮断スイッチSW2をONすると、商用電源1から駆動装置10に対して電力が供給される。
【0061】
このように第2の実施形態によれば、エレベータが待機状態にあるのか復帰状態にあるかを乗場に来た利用者が把握することができる。さらに、待機状態にあるときには、利用者は復帰させる方法を含めて知ることができる。また、復帰状態にあるときには、利用者は復帰までの時間を含めて知ることができる。
【0062】
なお、エレベータの現在の状態を通知する方法として、例えば乗場40の任意の箇所にランプを設置しておき、待機状態のときにはランプを消灯、復帰状態のときはランプを点灯することでも良い。
【0063】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0064】
復帰のトリガとして必要な電力(復帰電力P)を得るためには、携帯端末31を受電装置22に所定の時間(例えば30秒)の間近付けておかなければならない。また、携帯端末31側のバッテリ残量が少ないと、復帰のための十分な電力が得られないこともある。そこで、第3の実施形態では、復帰の際に携帯端末31から得た電力の一部を蓄えておき、次回の復帰時に利用する構成としたものである。
【0065】
図10は第3の実施形態における受電装置22の構成を示す図である。なお、図4と同じ部分には同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0066】
第3の実施形態において、受電装置22にはバッテリ57が設けられている。バッテリ57は、携帯端末31から送電装置30と受電装置22との間の非接触給電によって得られた電力の一部を蓄える。「電力の一部」とは、復帰電力Pに必要な電力の残りのことである。このバッテリ57に蓄えられた電力は、次回の復帰時に利用される。
【0067】
図11を用いて説明する。
上述したように、待機状態から復帰させる場合には、利用者が持つ携帯端末31を乗場40に設置された受電装置22に近付ける。携帯端末31には送電装置30が組み込まれており、受電装置22に近付けることで、送電装置30から受電装置22へ非接触で電力を送ることができる。受電装置22に送られた電力は、整流回路55、平滑回路56を介してバッテリ57に一時的に蓄えられる。
【0068】
ここで、図11(a)に示すように、バッテリ57の全容量の80%程度(L1とする)の電力が蓄えられたとする。この電力の一部が復帰電力Pとしてリレー23に出力され、そのときの残量が同図(b)に示すL2の位置であったとする。
【0069】
このような場合、次回の復帰時にバッテリ57の残量分を利用することができるので、同図(c)に示すように、携帯端末31から送る電力は前回よりも少なくて済み、送電時間も短縮することができる。
【0070】
このように第3の実施形態によれば、受電装置22にバッテリ57を設けておき、復帰時に携帯端末31から得た電力の一部を蓄えておき、次回の復帰時にその電力を利用する。これにより、次回の携帯端末31からの送電量を削減でき、送電時間を短縮して少しでも早くエレベータを復帰させることができる。
【0071】
(応用例)
(1)DCSの乗場行先階登録装置と組み合わせた方法
大型施設等で複数号機が群管理されたシステムにおいて、各号機毎に非接触給電の受電装置を設けるとコストアップとなり、システムが煩雑化する。また、1つの号機だけを復電させても、システム全体を正常に動作できない可能性もある。
【0072】
そこで、DCSの乗場行先階登録装置に非接触給電の受電装置22を設け、そこに非接触給電の送電機能付き端末装置31をかざすことで、システム全体(各号機)を一括で復帰させる。
【0073】
なお、DCSとは、行先階制御システム(Destination Control System)のことである。DCSは、乗場にて利用者が行先階を登録可能な乗場行先階登録装置を有し、この乗場行先階登録装置によって登録された行先階に基づいて、複数台の号機(乗りかご)の中から最適な号機を選出して、当該乗場に応答させる。この場合、同じ行先階の利用者を同じ号機に乗車させることで、輸送効率の向上を図っている。
【0074】
(2)非接触受電装置に併設したバックアップ回路
利用者が送電機能付きの端末装置31(上述した端末装置A)を持たず、また、ビルにも送電機能付きの端末装置31(上述した端末装置B)が用意されていない場合には、利用者がエレベータを利用できない。
【0075】
そこで、受電装置22を非接触給電の他に別の発電装置や給電装置からの受電も可能な回路構成とする。例えば、受電装置22に発電装置(手回し発電、圧電素子を利用した発電、太陽光発電等)を設置し、その発電によって得られる電力を図10に示した受電装置22のバッテリ57に給電する回路構成とすることで、エレベータ用の復帰電源として利用できる。
【0076】
また、利用者が持つ外部バッテリ(携帯装置充電用の外部バッテリ等)に接続可能な汎用コネクタ(USB等)を併設し、外部バッテリの電力を受電装置22のバッテリ57に給電する回路構成とすることで、エレベータ用の復帰電源として利用できる。
【0077】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、待機電力をゼロにして待機でき、また、待機状態から簡単に復帰させることのできるエレベータシステムを提供することができる。
【0078】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…商用電源、2…巻上機、3…ロープ、4…乗りかご、5…カウンタウェイト、10…駆動装置、11…コンバータ、12…平滑コンデンサ、13…インバータ、20…制御装置、21…トランス、22…受電装置、23…リレー、24…表示器、30…送電装置、31…携帯端末制御電源トランス、32…非常用電源装置、33…制御電源装置、34…照明電源装置、40…乗場、41…乗場ドア、42…乗場呼びボタン、51…バッテリ、52…発振回路、53…一次コイル、54…二次コイル、55…整流回路、56…平滑回路、57…バッテリ、61〜64…メッセージ、C1,C2…電力遮断切替え指令、P…復帰電力。
【要約】
【課題】待機電力をゼロにして待機でき、また、待機状態から簡単に復帰させる。
【解決手段】一実施形態にかかるエレベータシステムは、駆動装置10と、制御装置20と、非接触式の受電装置22と、電源遮断手段として用いられる電力遮断スイッチSW1,SW2と、遮断解除手段として用いられるリレー23とを備える。受電装置22は、乗場の任意の箇所に設置される。電力遮断スイッチSW1,SW2は、乗りかご4が待機状態になったときに、商用電源1から駆動装置10および制御装置20へ供給される電力を遮断する。リレー23は、送電機能付きの携帯端末31を受電装置22に近付けることで得られる電力を利用して、電力遮断スイッチSW1,SW2による電力遮断を解除する。
【選択図】図1
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