特許第5969102号(P5969102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969102治療用イヌ免疫グロブリンおよびそれを用いる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969102
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】治療用イヌ免疫グロブリンおよびそれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20160728BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160728BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20160728BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20160728BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20160728BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20160728BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61K39/395 T
   A61K39/395 S
   A61P35/00
   A61P31/00 171
   !C07K19/00
   !C07K16/30
   !C07K16/24
   !C12N15/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-239920(P2015-239920)
(22)【出願日】2015年12月9日
(62)【分割の表示】特願2014-509820(P2014-509820)の分割
【原出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-41750(P2016-41750A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】61/483,481
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1114858.2
(32)【優先日】2011年8月29日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/531,439
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513279423
【氏名又は名称】エヌヴィーアイピー プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】ゲアリング ディヴィッド
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/117448(WO,A1)
【文献】 国際公開第2001/077332(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/110838(WO,A1)
【文献】 特開2005−143436(JP,A)
【文献】 特開2005−104936(JP,A)
【文献】 特開平04−040894(JP,A)
【文献】 Advanced Drug Delivery Reviews,2006年,Vol.58,p.640-656
【文献】 Veterinary Immunology and Immunopathology,2001年,Vol.80,p.259-270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体、融合タンパク質または抗体の結合性断片を含む、意図する標的が補体媒介性細胞傷害による免疫媒介性破壊のために選択されるイヌの治療処置用の医薬組成物であって、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含み、前記重鎖定常ドメインが、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合した場合にイヌにおいて補体媒介性細胞傷害を媒介する、前記医薬組成物。
【請求項2】
イヌの治療処置がイヌにおける癌または感染症の治療に関連する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
標的抗原が癌特異抗原である、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
癌特異抗原がサイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞表面受容体、ウイルスおよび補体カスケードの成分からなる群より選ばれる、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
癌特異抗原が、タンパク質CD2、CD4、CD8、CD20、EGFR、VEGFRおよびHER2からなる群より選ばれる、請求項3記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性細胞外メディエーターおよび/または細胞表面受容体のアンタゴニストとして使用するための、特定の重鎖定常領域を有するイヌまたはイヌ由来抗体に関する。本発明は、イヌ対象における炎症、疼痛、癌または感染などの状態の選択的治療の方法における抗体またはその断片の治療的使用に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンの定常ドメイン断片を用いて構築された組換え免疫グロブリンおよび融合タンパク質は、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患)、アレルギー(例えば、喘息)、癌(例えば、リンパ腫、乳癌、腸癌)、感染症(例えば、RSV感染)、疼痛(例えば、変形性関節症の疼痛、癌性疼痛、腰痛)および眼疾患(例えば、加齢性黄斑変性)を含む多くのヒト疾患を治療するために用いられている。
療法の分子標的には、サイトカインおよびケモカイン(例えば、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン5(IL−5)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、成長因子(例えば、神経成長因子(NGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子(TNF))、細胞表面受容体(例えば、HER−2、VEGFR、EGFR、CD20)、細胞表面結合成長因子(例えば、プロセシングを受けていない腫瘍壊死因子)、ウイルス(例えば、RSV)および補体カスケードの成分(例えば、C5)がある。疾患過程における関与の証拠のある多くの他の標的が公知である(例えば、内容が参照により本明細書に組み込まれる、IMGT/MAb-DB database Version 1.3.1 14 Dec 2011 (URL: www.imgt.org/mAb-DB/query)に記載されている)。
天然免疫グロブリンは、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンM(IgM)または免疫グロブリンE(IgE)を含む各種の主要なサブタイプとして産生され、感染に応答して、これらの免疫グロブリンは、標的抗原への結合による病原体認識、中和、破壊および除去に様々な役割を果たす。免疫グロブリンGは、(ヒトにおいて)IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4などの数種のアイソタイプ(アイソフォームとしても公知)として産生される。これらの抗体のアイソタイプは、構造、特に、定常領域、特にC1ドメインとC2ドメインの間の定常ドメイン(Fc)のヒンジ領域の周りのアミノ酸配列の差に関して異なっている。
【0003】
異なる抗体アイソタイプは、抗体が媒介する下流エフェクター機能に関しても異なっている。例えば、抗体の定常領域配列は、抗体のエフェクター機能(ADCC、補体結合および活性化)、薬物動態および物理的特性などの特性に対する強い影響を媒介し得る。異なるアイソタイプを有する抗体は、免疫細胞上のIgG Fc受容体に結合するそれらの能力に関しても異なっている。ヒトにおいて、IgG1およびIgG3は、血液中の補体酵素のカスケードによる標的の破壊を促進するために補体を動員するのに有効であり(CDC:補体依存性細胞傷害)、同様にIgG1およびIgG3は、抗体媒介性細胞傷害(ADCC)による破壊のために結合抗原を標的とする免疫細胞上のFc受容体に結合する。これに反して、IgG2およびIgG4は、補体を動員したり、ADCC媒介性攻撃を活性化したりはせず、単にその活性を阻害または中和するために高親和力で標的抗原に結合する。
組換え免疫グロブリンおよびそれから調製される融合タンパク質は、疾患介入の標的を考慮する場合、Fcアイソタイプの活性を考慮に入れてデザインされる。例えば、ヒト癌細胞の標的死滅のために抗体を使用することを目指す治療アプローチを考慮する場合、IgG1またはIgG3アイソタイプFcドメインにより組換え免疫グロブリンを構築することが好ましい。その理由は、これらのアイソタイプの使用により、CDCおよびADCCなどの免疫媒介性破壊メカニズムが促進されるからである。これに反して、感受性ヒト組織との関連で可溶性メディエーターを標的とする場合には、Fcドメインは、除外される(例えば、ヒト加齢性黄斑変性の治療において、VEGFを標的とするFabが好ましい)か、またはIgG2もしくはIgG4ドメイン(例えば、神経障害性もしくは炎症性疼痛との関連で神経成長因子を、または腎炎、感染もしくは慢性関節リウマチにおいて補体C5を標的とする)を用いて構築される。これらの考慮すべき事項は、ヒトIgG1 Fc治療法に基づく、慢性関節リウマチなどの治療における可溶性TNF受容体Fc融合タンパク質などの免疫グロブリン融合タンパク質にも適用される。
イヌならびにマウスおよびウマなどの他の種において、免疫グロブリンアイソフォームも存在するが、どの配列がCDCまたはADCCのような下流エフェクター機能を誘導するのに活性または不活性であるかを先験的に判断するのには不十分な相互間の相同性を有する。さらに、免疫グロブリンの数が種の間で異なっている(例えば、イヌにおいて、4つのIgG免疫グロブリンが存在し、これらは、caIgG−A、caIgG−B、caIgG−CおよびcaIgG−Dと定義されている(Tang et al., 2001)。ウマにおいては、7つのIgGアイソタイプが存在する(Wagner, 2006)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非ヒト動物種の特定の免疫グロブリンアイソタイプがFc受容体結合およびエフェクター機能を媒介することに関して活性であるか、または不活性であるかを配列分析または配列相同性のみから判断することは、可能でない。しかし、抗体の結合性断片または融合タンパク質などの抗体または抗体ベースの治療法の治療上の有効性を得るために、抗体の創出のためのアイソタイプ定常領域の選択は極めて重要であり得るので、これらが公知であるならば、著しく有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
広範な実験の後に、イヌIgG免疫グロブリンのアイソタイプが、特定のIgG抗体アイソタイプが免疫エフェクター機能を活性化することに関して活性であるが、他のIgG抗体アイソタイプは免疫エフェクター機能を活性化せず、したがって不活性であるというヒトIgG抗体で認められる特性を共有することが本発明者により驚くべきことに確認された。さらに、4つの公知のイヌ重鎖免疫グロブリン(HCA(caIgG−A)、HCB(caIgG−B)、HCC(caIgG−C)およびHCD(caIgG−D)として公知)について、本発明者は、4つのイヌ重鎖免疫グロブリンのうちの2つ(caIgG−BおよびcaIgG−C)の重鎖定常ドメインが、種々の治療標的を標的とする様々な組換え体として構築した場合、驚くべきことに補体に結合したが、他の2つ(caIgG−AおよびcaIgG−D)は結合しないことを驚くべきことに確認した。
【0006】
したがって、本発明は、標的の破壊が望まれるイヌの治療(例えば、癌または感染症治療に)に用いることができる、特定の組換えイヌ免疫グロブリンまたはそれから調製された融合タンパク質、および標的の破壊ではなく、標的の中和のみが望まれるイヌにおける治療処置(例えば、疼痛の治療に)に好ましい可能性がある特定の他のアイソフォームを定義する。
したがって、本発明は、それらの重鎖定常ドメインのアイソタイプに基づく、補体カスケードの第1の成分に結合するそれらの能力または別の状態により区別することができる組換えイヌ免疫グロブリンを提供する。結果として、また初めて、組換えイヌ免疫グロブリンは、意図する標的を、補体媒介性細胞傷害(CDC;例えば、in vivoでイヌ腫瘍を死滅させるのに用いる)による免疫媒介性破壊のために選択するのか、または標的を、単に望ましくない免疫媒介性破壊が存在しない状態での中和(例えば、神経の近傍における、または眼における)のために選択する目的のためかどうかというイヌにおける疾患の治療におけるそれらの使用目的に応じて選択することができる。
本発明の第1の態様によれば、イヌの治療処置に用いる抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を提供し、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、重鎖のアミノ酸配列は、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに下流免疫系エフェクター機能の活性化を最小限にする。
特定の実施形態において、イヌの治療処置は、疼痛もしくは炎症または関節炎もしくは関節炎状態などのそれに関連する状態の治療に関連する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における疼痛もしくは炎症または関節炎もしくは関節炎状態などのそれに関連する状態の治療に用いる医薬の調製における、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに重鎖のアミノ酸配列が下流免疫系エフェクター機能の活性化を最小限にする、配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖定常ドメインを含む抗体、融合タンパク質またはその結合性断片の使用を提供する。
本発明のさらなる態様は、それを必要とするイヌ対象における疼痛もしくは炎症または関節炎もしくは関節炎状態などのそれに関連する状態を治療、抑制または改善する方法であって、
疼痛または炎症の治療または予防における特定の機能を有する標的抗原に特異的に結合する抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、下流免疫系エフェクター機能を活性化しない、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の抗体、融合タンパク質またはその結合性断片をイヌ対象に投与するステップと
を含む、方法を提供する。
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における疼痛または炎症を治療、抑制または改善するための医薬の調製に用いる、配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有するイヌ由来の抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を提供する。
【0008】
特定の実施形態において、疼痛は、神経障害性疼痛である。特に、疼痛は、周術期、術後または手術後疼痛であり得る。術後疼痛は、イヌにおける整形外科手術、軟組織手術、卵巣子宮摘出手技、去勢手技などを含み得るが、これらに限定されない手術手技の後に生じ得る。特定のさらなる実施形態において、疼痛は、癌または癌性状態に関連する慢性疼痛(腫瘍疼痛)である。特定のさらなる実施形態において、疼痛は、慢性関節リウマチ、変形性関節症、炎症または掻痒症に関連または起因する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における関節炎または関節炎状態の治療の方法であって、
疼痛または炎症の治療または予防における特定の機能を有する標的抗原に特異的に結合する抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、下流免疫系エフェクター機能を活性化しない、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の抗体、融合タンパク質またはその結合性断片をそのような治療を必要とするイヌ対象に投与するステップと
を含む、方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明の前述の方法は、本発明の抗体の有効性を増強かつ/または補完し得る少なくとも1つのさらなる薬剤を併用投与するステップをさらに含む。例えば、抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも1つの鎮痛薬、NSAID、オピオイド、コルチコステロイドまたはステロイドとともに併用投与することができる。適切な鎮痛薬の例は、ブトルファノール、10ブプレノルフィン、フェンタニル、フルニキシンメグルミン、メルピジン、モルヒネ、ナルブフィンおよびそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。適切なNSAIDSは、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、カルプロフェン、エトドラク、ケトプロフェン、メロキシカム、フィロコキシブ、ロベナコキシブ、デラコキシブなどを含むが、これらに限定されない。
【0010】
特定の実施形態において、前述の方法は、少なくとも1つのさらなる薬剤の投与を伴い得る。前記薬剤は、抗生物質、抗真菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬または同様の治療薬から選択される1つまたは複数の群であり得る治療上有効な薬剤であり得る。さらに、少なくとも1つのさらなる薬剤は、PEG受容体アンタゴニストなどの炎症のメディエーターの阻害薬(単数または複数)、シクロスポリンなどの免疫抑制薬、抗炎症性グルココルチコイドであり得る。特定のさらなる態様において、少なくとも1つのさらなる薬剤は、高齢のイヌにおいてますます優勢になり得る記憶喪失または関連する状態などの認知機能不全または障害の治療に用いられる薬剤であり得る。さらに、少なくとも1つのさらなる薬剤は、心血管機能不全の治療に、例えば、高血圧、心筋虚血、うっ血性心不全などを治療するために用いられる抗高血圧薬または他の化合物であり得る。さらに、少なくとも1つのさらなる薬剤は、利尿薬、血管拡張薬、ベータアドレナリン受容体アンタゴニスト、アンジオテンシンII変換酵素阻害薬、カルシウムチャンネル遮断薬およびHMG−CoAレダクターゼ阻害薬であり得る。
本発明の前述の態様の特定の実施形態において、下流免疫系エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞病原性(antibody dependent cellular pathogenesis)(ADCP)を含む群から選択される。特定の実施形態において、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列は、C1qに対する重鎖の結合を阻害し、これにより、補体カスケードおよび補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導が妨げられる。
【0011】
特定の実施形態において、標的抗原は、可溶性メディエーターである。特定の実施形態において、標的抗原は、神経成長因子(NGF)である。特定の実施形態において、抗体は、疼痛または炎症を媒介する受容体に特異的に結合し、拮抗する。特定のさらなる実施形態において、標的抗原は、サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン1および関連インターロイキンIL−2からIL−35まで、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子、オンコスタチンM)、成長因子(例えば、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子(TNF))、細胞表面受容体(例えば、HER−2、VEGFR、EGFR、CD20)、細胞表面結合成長因子(例えば、プロセシングを受けていない腫瘍壊死因子)、ウイルス(例えば、RSV)および補体カスケードの成分(例えば、C5、C5a)からなるが、これらに限定されない群から選択することができる。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、イヌの治療処置に用いる抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を提供し、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、重鎖のアミノ酸配列は、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに下流免疫系エフェクター機能の活性化を媒介する。
特定の実施形態において、イヌの治療処置は、癌性または悪性状態の治療に関連する。
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における癌性または悪性状態の治療に用いる医薬の調製における、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに重鎖のアミノ酸配列が下流免疫系エフェクター機能の活性化を媒介する、配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖定常ドメインを含む抗体、融合タンパク質またはその結合性断片の使用を提供する。
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における癌性または悪性状態の治療または予防の方法であって、
癌性または悪性状態の治療における特定の機能を有する標的抗原に特異的に結合する抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、下流免疫系エフェクター機能を活性化する、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の抗体、融合タンパク質または結合性断片をそのような治療を必要とするイヌ対象に投与するステップと
を含む、方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明の前述の方法は、本発明の抗体の有効性を増強かつ/または補完し得る少なくとも1つのさらなる薬剤を併用投与するステップをさらに含む。
【0013】
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における癌性または悪性状態の治療用の医薬の調製における、配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有するイヌ由来の抗体、融合タンパク質または結合性断片の使用を提供する。
本発明の前述の態様の特定の実施形態において、下流免疫系エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞病原性(ADCP)を含む群から選択される。具体的な実施形態において、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列は、C1qに対する重鎖の結合をもたらし、これにより、補体カスケードおよび補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導が妨げられる。特定の実施形態において、重鎖定常ドメインは、Fc受容体に対する結合をもたらし、これが、ひいてはADCPおよび/またはADCC免疫応答を媒介し得る。
【0014】
特定の実施形態において、標的抗原は、癌特異抗原である。本発明の特定のさらなる態様の特定の実施形態において、標的抗原は、イヌ腫瘍細胞上で発現する膜結合タンパク質の群から選択することができる。本発明のさらなる実施形態において、膜結合イヌ腫瘍タンパク質は、CD2、CD4、CD8、CD20、EGFR、VEGFR、HER2などを含むタンパク質の群から選択することができる。特定のさらなる実施形態において、標的抗原は、サイトカインおよびケモカイン(例えば、インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−3および数的にIL−35までのインターロイキン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子、オンコスタチンM)、成長因子(例えば、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子(TNF))、細胞表面受容体(例えば、HER−2、VEGFR、EGFR、CD20)、細胞表面結合成長因子(例えば、プロセシングを受けていない腫瘍壊死因子)、ウイルス(例えば、RSV)および補体カスケードの成分(例えば、C5、C5a)からなるが、これらに限定されない群から選択することができる。
【0015】
本発明のさらなる態様は、イヌにおける状態の治療に用いる抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、その標的抗原に結合するときにC1qに結合しない重鎖定常ドメインを有し、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製することができる、抗体、融合タンパク質または結合性断片を提供する。
特定の実施形態において、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する。特定の実施形態において、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号6、配列番号12および配列番号15からなる群から選択される重鎖定常ドメインを有する。
本発明のさらなる態様は、イヌにおける疼痛および/または炎症に関連する状態の治療用の医薬の調製における、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときにC1qに結合しない重鎖定常ドメインを含み、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製することができる、抗体、融合タンパク質または結合性断片の使用を提供する。
特定の実施形態において、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する。特定の実施形態において、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号6、配列番号12および配列番号15からなる群から選択される重鎖定常ドメインを有する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、それを必要とするイヌ対象における疼痛もしくは炎症または関節炎もしくは関節炎状態などのそれに関連する状態を治療、抑制または改善する方法であって、
抗体がその標的抗原に結合するときにC1qに結合しない重鎖定常ドメインを含み、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製することができる、抗体、融合タンパク質または結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の抗体、融合タンパク質またはその結合性断片をイヌ対象に投与するステップと
を含む、方法を提供する。
特定の実施形態において、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する。特定の実施形態において、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片は、配列番号6、配列番号12および配列番号15からなる群から選択される重鎖定常ドメインを有する。
【0017】
様々なさらなる態様において、本発明は、(i)本発明の前述の抗体、融合タンパク質または結合性断片のいずれかをコードする核酸、(ii)前記核酸を運ぶベクター、(iii)前記ベクターを運ぶ宿主細胞に及ぶ。本発明はさらに、本発明の以上の陳述において定義した抗体および融合タンパク質を製造する方法に及ぶ。さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体または融合タンパク質ならびに少なくとも1つの担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物に及ぶ。
【0018】
本発明のさらなる態様は、標的抗原に特異的に結合させるためにイヌに治療的に投与することができ、組換え抗体、融合タンパク質またはその結合性断片へのC1q補体の結合および関連する補体依存性細胞傷害によって特徴付けられる免疫応答をさらに媒介する組換え抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片の重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプB(HCB、caIgG−B)、配列番号10のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプC(HCC、caIgG−C)または配列番号14のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖アイソタイプC(HCC、caIgG−C)を含む、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を提供する。
本発明のさらなる態様は、標的抗原への特異的結合が要求され、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片へのC1q補体の結合および関連する補体依存性細胞傷害によって特徴付けられる免疫応答が望ましい、状態の治療に用いる医薬の調製における、配列番号9のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプB(HCB、caIgG−B)、配列番号10のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプC(HCC、caIgG−C)または配列番号14のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖アイソタイプC(HCC、caIgG−C)を含む、前記抗体、融合タンパク質またはその結合性断片の使用を提供する。
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における癌性状態の治療の方法であって、
腫瘍特異抗原に対する結合特異性を有し、配列番号9のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプB(HCB、caIgG−B)、配列番号10のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプC(HCC、caIgG−C)または配列番号14のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖アイソタイプC(HCC、caIgG−C)をさらに含む、免疫グロブリン、融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の免疫グロブリン、融合タンパク質または結合性断片を、それを必要とするイヌ対象に投与するステップと
を含む、方法を提供する。
【0019】
様々なさらなる態様において、本発明は、所望の標的抗原に結合し、C1qに結合せず、したがって、補体依存性細胞傷害を伴う免疫応答を媒介しない重鎖定常ドメインを含む抗体または融合タンパク質に及ぶ。
したがって、本発明のさらなる態様において、標的抗原に特異的に結合させるためにイヌに治療的に投与することができる組換え抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、抗体または融合タンパク質の定常ドメインがC1q補体に結合せず、定常ドメインの重鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプA(HCA、caIgG−A)、配列番号11のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプD(HCD、caIgG−D)または配列番号13のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖アイソタイプB(HCB*、caIgG−B)を含む、組換え抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を提供する。
【0020】
本発明のさらなる態様は、標的抗原への特異的結合が要求され、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片へのC1q補体の結合および関連する補体依存性細胞傷害によって特徴付けられる免疫応答が望ましくない、状態の治療に用いる医薬の調製における、配列番号8のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプA(HCA、caIgG−A)、配列番号11のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプD(HCD、caIgG−D)または配列番号13のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプB(HCB*、caIgG−B)を含む前記抗体、融合タンパク質またはその結合性断片の使用を提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様は、イヌ対象における状態の治療の方法であって、
腫瘍特異抗原に対する結合特異性を有し、配列番号8のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプA(HCA、caIgG−A)、配列番号11のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプD(HCD、caIgG−D)または配列番号13のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプB(HCB*、caIgG−B)をさらに含む免疫グロブリン、融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の免疫グロブリン、融合タンパク質または結合性断片を、それを必要とするイヌ対象に投与するステップと
を含む、方法を提供する。
特定の実施形態において、CDC活性を欠く状態での抗体の構築のためにデザインされた脱グリコシル化定常ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を有するアラニン置換脱グリコシル化重鎖HCB(HCB*と表す)である。本発明のさらなる態様において、HCA、HCBまたはHCDの重鎖HCA、HCDまたはCDC不活性脱グリコシル化形(HCA*、HCB*またはHCD*:配列番号12、配列番号13および配列番号15)を組み込んでいる抗体は、イヌ成長因子、ホルモン、サイトカイン、ケモカインまたは補体カスケードの成分などの他の可溶性メディエーターに対して誘導される。特定の実施形態において、重鎖HCA、HCDまたはHCB*を組み込んでいる抗体は、CDCを誘導せずに、イヌにおけるイヌNGFの生物学的活性を中和する目的のためにイヌ神経成長因子(NGF)に対して誘導される。
【0022】
本発明の前述の態様の特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。特定のさらなる実施形態において、抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、イヌ化抗体、すなわち、イヌ対象に投与されたとき、それに対して中和抗体が産生されないように脱免疫化されたアミノ酸配列を有する抗体である。一般的に、抗体の重鎖定常ドメインは、該定常ドメインが下流エフェクター機能を媒介しないように選択するか、またはアミノ酸置換もしくは欠失により修飾する。特定の実施形態において、抗体は、少なくとも1つのリポーター分子にコンジュゲートされていてもよい。
特定のさらなる実施形態において、本発明の前述の態様の抗体または融合タンパク質の定常ドメインにおける少なくとも1つの残基は、当残基のグリコシル化を防ぐために置換するか、または欠失させることができる。本発明のさらなる態様において、イヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、サイトカンもしくはケモカイン受容体または他の貫膜タンパク質(例えば、TNF受容体)の細胞外ドメインに全部または一部融合させることができ、そのために、イヌ細胞外ドメイン−免疫グロブリン重鎖融合タンパク質がCDCを活性化しないことが望ましい場合(例えば、TNF受容体Fc融合タンパク質が可溶性TNFの中和のためにデザインされている場合)には、イヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインの全体または断片が群HCA、HCDまたはHCB*から選択され、また逆に、イヌ細胞外ドメイン−免疫グロブリン重鎖融合タンパク質が望ましい場合(例えば、TNF受容体Fc融合タンパク質が膜結合性TNF保有炎症性細胞を死滅させるようにデザインされている場合)には、イヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインが群HCB、HCCまたはHCC*から選択される。
【0023】
本発明のさらなる態様において、イヌ受容体−Fc融合タンパク質は、イヌ免疫グロブリンドメイン重鎖Fc領域と融合したイヌ細胞上に見いだされる膜結合受容体の細胞外ドメインの群から選択することができる。本発明のさらなる態様において、重鎖HCB、HCCまたはHCC*を組み込んでいる抗体は、それらの表面上のCD20へのこれらの抗体の結合によるイヌリンパ腫細胞のようなイヌCD20発現細胞のCDCを誘導する目的のためにCD20に対して誘導される。
さらに、イヌ化抗体は、イヌに存在する任意の他のエピトープとの交差反応性を示さないこと、さらにイヌに投与したときに本発明の抗体に対する中和抗体が発生しないことが好ましい。
【0024】
特定のさらなる実施形態において、重鎖の定常領域のアミノ酸配列への修飾は、本発明の抗体または融合タンパク質に対して行うことができる。前記修飾は、1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、置換または欠失を含み得る。前記アミノ酸の変更は、一般的に抗体の機能特性を修正するために行われる。例えば、アミノ酸修飾は、例えば、Fc受容体に結合する、補体を活性化する、またはADCCを誘導する抗体の能力を妨げることによって、抗体定常ドメインにより媒介される下流エフェクター機能を妨げるために行うことができる。さらに、修飾は、イヌに投与したときの抗体の循環半減期を修正するために重鎖定常ドメインのヒンジ領域のアミノ酸残基に対して行うことができる。
いくつかの実施形態において、本発明は、併用療法に用いる異なる結合特異性を有する他の抗体に連結または結合した本発明の抗体または結合性断片を含む多特異性または多価抗体を提供する。多特異性抗体は、第1のエピトープに特異的な少なくとも1つの抗体または結合性断片、および抗原上に存在する別のエピトープに、または異なる抗原に特異的な少なくとも1つの結合部位を含む。多価抗体は、同じエピトープに対する結合特異性を有する抗体または抗体の結合性断片を含む。したがって、特定の実施形態において、本発明は、本発明の抗体の、4つ以上のFv領域またはFab領域を含む抗体融合タンパク質に及ぶ。特定のさらなる実施形態において、本発明は、本発明による抗体またはその結合性断片が第2の標的に対する結合特異性を有する第2の抗体またはその結合性断片に連結されていて、前記標的が第1の抗原でない、二重特異性抗体に及ぶ。そのような多価、二重特異性または多特異性抗体は、当業者に周知であると思われる様々な組換え法により調製することができる。
【0025】
特定の実施形態において、抗体、融合タンパク質または抗原結合性断片は、約0.01mg/kg体重〜約10mg/kg体重、特に0.03mg/kg体重〜約3mg/kg体重の範囲の用量で前述の方法の一部としてイヌに投与する。
様々なさらなる態様において、本発明は、本発明のいずれかの前述の態様による抗体、融合タンパク質またはその結合性断片を含む組成物に及ぶ。特定の実施形態において、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む。特定の実施形態において、組成物は、少なくとも1つの鎮痛薬、NSAID、オピオイド、コルチコステロイドまたはステロイドをさらに含み得る。
様々なさらなる態様において、本発明は、本発明の抗体、融合タンパク質または抗体の結合性断片をコードする単離核酸に及ぶ。したがって、本発明のさらなる態様は、本発明の前述の態様のいずれかによる抗体、融合タンパク質または抗原結合性断片をコードする単離核酸を提供する。特定の実施形態において、単離核酸は、それに作動可能に連結した1つまたは複数の調節配列をさらにコードする。
【0026】
さらなる態様において、本発明の重鎖可変ドメインおよび/もしくは軽鎖可変ドメインまたは重鎖定常ドメインおよび/もしくは軽鎖定常ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。特定の実施形態において、発現ベクターは、1つまたは複数の調節配列をさらに含む。特定の実施形態において、ベクターは、プラスミドまたはレトロウイルスベクターである。さらなる態様は、本発明の前述の態様の発現ベクターを組み込んでいる宿主細胞を提供する。本発明のさらなる態様は、本発明の前述の態様のいずれかの抗体を産生する宿主細胞を提供する。
本発明のさらなる態様は、本発明の前述の態様の宿主細胞を培養して、細胞に抗体を発現させるステップを含む、本発明の抗体または融合タンパク質を製造する方法を提供する。本発明のさらなる態様は、適切な宿主細胞中で本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖を発現する本発明の前述の態様の1つもしくは複数のポリヌクレオチド/核酸またはベクターを発現させるステップと、宿主細胞中で一緒に、または異なる宿主細胞中で別個に発現させることができる発現ポリペプチドを回収するステップと、抗体を単離するステップとを含む、本発明の抗体または融合タンパク質を製造する方法を提供する。本発明のさらなる態様は、配列番号8〜配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する抗体または融合タンパク質をコードする有効量のポリヌクレオチドをイヌに投与するステップを含む、イヌにおける疼痛を治療、改善または抑制する方法を提供する。
【0027】
イヌ抗体の精製
望ましくない免疫エフェクター活性がない状態で標的の中和が望ましいイヌ抗体の場合において、本発明者は、CDC活性を欠いているイヌ重鎖の天然アイソフォームもブドウ球菌属プロテインAに対してあったとしても非常に不十分に結合し、したがって、抗体のこの一般的な精製の方法を製造に用いることができないことを驚くべきことに発見した。本発明者は、代替精製戦略の使用による、また製造中のグリコシル化を防ぐための重鎖の変異による、この制約を克服する3つの方法を述べる。これらの方法により調製される精製抗体は、本発明者により製造され、望ましくない免疫原性を伴わずにイヌにおいてin vivoで安全かつ有効であるという望ましい特性を有することが示された。
本発明のさらなる態様は、供給源混合物からのイヌ由来免疫グロブリンまたは配列番号8のアミノ酸配列を有するアイソタイプAのイヌ重鎖定常ドメイン(HCA、caIgG−A)もしくは配列番号11のアミノ酸配列を有するアイソタイプDのイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメイン(HCD、caIgG−D)を含む免疫グロブリンもしくは融合タンパク質の精製の方法であって、
(i)標的免疫グロブリンまたは融合タンパク質を含む供給源混合物を準備するステップと、
(ii)供給源混合物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけるステップと、
(iii)供給源混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけるステップと、
(iv)供給源混合物をサイズ排除クロマトグラフィーにかけるステップと
を含む、方法を提供する。
特定の実施形態において、該方法は、リン酸緩衝生理食塩水で緩衝液を交換するステップを含む。一般的に該方法により、高い純度および生物活性のものに分画されている精製抗体が得られる。
【0028】
本発明のさらなる態様は、プロテインAクロマトグラフィーにより精製することができる脱グリコシル化イヌ抗体の製造の方法を提供する。
本発明の様々なさらなる態様において、イヌの治療処置に用いる、本明細書に明示した方法のいずれかに従って製造されるイヌもしくはイヌ由来抗体または融合タンパク質を提供する。様々なさらなる態様において、イヌにおける免疫媒介性状態または疼痛に関連する状態を治療するのに用いる医薬の調製における抗イヌNGF抗体の使用を提供する。
【0029】
本発明のさらなる態様は、供給源混合物からのイヌ由来免疫グロブリンまたは配列番号8のアミノ酸配列を有するアイソタイプAのイヌ重鎖定常ドメイン(HCA、caIgG−A)もしくは配列番号11のアミノ酸配列を有するアイソタイプDのイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメイン(HCD、caIgG−D)を含む免疫グロブリンもしくは融合タンパク質の精製の方法であって、
(i)標的免疫グロブリンを含む供給源混合物を準備するステップと、
(ii)供給源混合物をカプトアドヒア(captoadhere)アフィニティークロマトグラフィーにかけるステップと、
(iii)供給源混合物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけるステップと
を含む、方法を提供する。
本発明のさらなる態様は、イヌの治療に用いる本発明の前述の態様の精製方法により生産される抗体または融合タンパク質に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)ELISAによるマウスNGFへのイヌ重鎖の4種の異なるアイソタイプ(HCA、HCB、HCC、HCD)を用いて構築した抗NGF抗体(トランスフェクトCHO細胞の上清中に発現した)の同等の結合を示すグラフである。(B)TF−1細胞のNGF増殖の同等の阻害を示すグラフである。
図2】抗C1q ELISAにより測定したNGF結合抗イヌNGF抗体アイソタイプへの補体の示差的結合を示すグラフである。
図3】(a)抗C1q ELISAにより測定した補体へのNGF捕捉グリコシル化および脱グリコシル化イヌ化抗NGFモノクローナル抗体の結合を示すグラフである。(b)抗C1q ELISAにより測定した補体へのNGF捕捉グリコシル化および脱グリコシル化イヌ化抗NGFモノクローナル抗体の結合を示すグラフである。
図4】抗C1q ELISAにより測定した補体へのNGF捕捉イヌ化抗NGFモノクローナル抗体(MAbs)、抗イヌVEGF MAbsおよび抗ヒトCD20/イヌHCBキメラMAbの結合を示すグラフである。特に、図4A、4Bおよび4Cに種々のイヌ重鎖アイソタイプを用いて構築した抗体への補体の結合を示す。イヌ化モノクローナル抗体(MAb)をCHO細胞中で発現させ、補体C1qに結合するそれらの能力について試験した。パネルA−ヒト化抗体アイソタイプ(huN−G1、huN−G4)と比較したイヌ化抗NGF抗体(caN−HCB、caN−HCC);パネルB−イヌHCA(caV−HCA)およびHCB(caV−HCB)アイソタイプを用いて構築した抗VEGF抗体;パネルC−マウスIgG2aアイソタイプ(muB−2a)と比較したHCBアイソタイプ(mub−HCA)を用いて構築した抗CD20抗体。
図5】プロテインAにより精製し、ウエスタンブロットにより抗イヌポリクローナル免疫グロブリンを用いて検出した抗NGF抗体アイソタイプの相対的回収を示す図である。図1からの上清をプロテインAカラム上に通し、特異的に結合した物質を溶出した。等容積の溶出液をSDS−PAGEにかけた。洗浄およびフロースルー画分におけるかなりの物質によって示されたようにイヌアイソタイプHCA、HCCおよびHCDは、プロテインAに弱く結合していた。図A〜DにプロテインAによるイヌ抗体アイソタイプHCA、HCB、HCCおよびHCDの相対的回収を示す。L、負荷;W、洗浄;P、精製;F、フロースルー。図1からの抗NGF抗体上清をこの実験に用いた。
図6A】(1)陰イオン交換クロマトグラフィー、(2)疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび(3)サイズ排除クロマトグラフィーを含む3ステップ法(方法I)を用いた抗イヌNGF抗体(HCAアイソタイプ)の定量的精製におけるサイズ排除HPLCによる分画の結果を示す図である。
図6B】(1)陰イオン交換クロマトグラフィー、(2)疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび(3)サイズ排除クロマトグラフィーを含む3ステップ法(方法I)を用いた抗イヌNGF抗体(HCAアイソタイプ)の定量的精製における各ステップの後の画分の還元SDS−PAGEゲルを示す図である。
図6C】カプトアドヒアクロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーを含む2ステップ法(方法II)を用いた本発明の抗イヌNGF抗体の定量的精製における非還元および還元条件下でのSDS−PAGE分析を示す図である。レーン1は、MWSであり、レーン2は、抗イヌNGF抗体2μg/mLおよび0μl還元剤であり、レーン3は、抗イヌNGF抗体4μg/mLおよび0μl還元剤であり、レーン4は、抗イヌNGF抗体6μg/mLおよび0μl還元剤であり、レーン5は、MWSであり、レーン6は、抗イヌNGF抗体2μg/mLおよび3μl還元剤であり、レーン7は、抗イヌNGF抗体4μg/mLおよび3μl還元剤であり、レーン8は、抗イヌNGF抗体6μg/mLおよび3μl還元剤であり、レーン9は、MWSである。
図6D】カプトアドヒアクロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーを含む2ステップ法(方法II)を用いた本発明の抗イヌNGF抗体の定量的精製における精製済み抗イヌNGF抗体のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。
図7A】方法IおよびIIにより精製した抗イヌNGF抗体(HCAアイソタイプ)の非還元および還元SDS−PAGEによる比較を示す図である。
図7B】方法IおよびIIにより精製した抗イヌNGF抗体(HCAアイソタイプ)の抗NGF ELISAによる比較を示す図である。
図8】体重(上パネル)および温度(下パネル)がイヌへの抗イヌNGF抗体(HCAアイソタイプ、方法Iにより精製)の静脈内投与後に安定であることを示す図である。
図9】イヌへの静脈内注射後の血漿中抗イヌNGFモノクローナル抗体濃度の動態分析を示す図である。ビーグル犬に2mg/kgの抗NGF抗体を静脈内注射し、血漿の試料を表示した時点に採取し、NGF ELISAにより抗NGFモノクローナル抗体を検出した。抗イヌNGFモノクローナル抗体は、驚くべきことに約9日の長い消失(ベータ)相半減期を有していた。
図10】抗イヌNGFモノクローナル抗体(HCAアイソタイプ、方法Iにより精製)がイヌにおける炎症性疼痛を低減することを示す図である。カオリンを−1日目に、抗体または溶媒対照を0日目にビーグル犬の足蹠に注射し、跛行を視覚採点スケールにより測定した。
【発明を実施するための形態】
【0031】
広範な実験の後に、本発明者は、種々の重鎖定常ドメインアイソタイプを用いて数種のイヌモノクローナル抗体をデザインし、構築し、驚くべきことに、下流エフェクター機能を媒介するそれらの能力(または別の状態)から、また特に補体に結合するそれらの能力から有用な特性を推測することができることを示した。それに沿って、本発明者は、異なるイヌ免疫グロブリンサブタイプによって媒介される異なる生物学的効果を同定した。補体結合性イヌ抗体アイソタイプについては、この有用な特性は、同じ抗体が結合した細胞をin vivoでの補体誘導性細胞傷害(complement directed cytotoxicity)(CDC)に導くことにある。この機能特性が望ましい例は、腫瘍抗原に対して誘導された抗体が、補体系を抗体が結合した細胞を破壊のための標的にするように導くイヌ癌療法にある。
【0032】
これに反して、補体に結合せず、したがって、CDCを引き起こさない抗体アイソタイプは、例えば、神経の近傍、眼もしくは既に炎症を起こした組織において、または単に抗体の予見されない副作用のリスクを低減する願望のため、補体活性が望ましくない場合に好ましい。
したがって、明らかに、どのイヌアイソタイプがイヌにおける抗体療法のデザインおよび使用に適するのかを予測する能力は、極めて望ましく、有用である。
4種の異なるイヌ免疫グロブリンGアイソタイプが記載されている(caIgG−A(イヌ免疫グロブリンGアイソタイプA)、caIgG−B、caIgG−CおよびcaIgG−D− Tang et al., 2001)。簡単にするために(かつ異なる抗体の構造の区別および軽鎖成分との区別を可能にするために)、重鎖定常ドメインを本明細書でHCA(caIgG−A)、HCB(caIgG−B)、HCC(caIgG−C)およびHCD(caIgG−D)と呼ぶ。
【0033】
抗体の精製
抗NGF抗体の望ましいHCAおよびHCDアイソフォームを精製する工程において、治療用タンパク質の大規模精製をもたらすためにプロテインAアフィニティーカラムクロマトグラフィーの形で産業において製造規模で用いられるリガンドであるプロテインAにいずれも結合しなかったというさらなる驚くべき発見が本発明者によりなされた。図5に小規模でのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる抗NGF抗体のHCA、HCB、HCCおよびHCDアイソフォームの相対的回収を示す。したがって、HCAまたはHCDアイソフォームを精製するために他の方法が必要であった。その理由は、これらは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができなかったからである。広範な実験の後に、本発明者は、caN−HCA−kLC抗体構築物またはHCAもしくはHCD重鎖アイソタイプを有する他のイヌ抗体を精製するために用いることができた2つの代替法(本明細書で方法Iおよび方法IIと呼ぶ)を驚くべきことに特定した。
【0034】
第1の方法は、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーの組合せを含む。第2の方法は、カプトアドヒアアフィニティークロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーの組合せを含む。図6に2つの方法のそれぞれによる、抗NGF抗体を含むHCAの精製を示す。高度に精製された物質がそれぞれの方法によって得られ、2つの方法は、NGF ELISAによる同様の生物活性を有する物質をもたらした(図7)。HCAおよびHCDアイソタイプは、HCBおよびHCCアイソタイプに対するよりも互いに同様に関連しているので、それらの方法は、両方のアイソタイプについて用いられる。
抗体の精製のさらなる探索において、本発明者は、脱グリコシルHCB*アイソタイプ抗NGF抗体が、HCBアイソタイプと同様に、プロテインAに依然として結合することでき、したがって、CDC活性の欠如およびプロテインAクロマトグラフィーによる精製という望ましい特性を有することを驚くべきことに見いだした。
【0035】
イヌ安全性試験
望まれていないCDC活性を有さないようにデザインされている本発明の抗体がイヌに投与して安全であることを示すために、高度に精製した抗NGF HCAアイソタイプ抗体を静脈内注射により3匹のイヌに注射した(施設内動物倫理委員会(CRL、Ireland)による事前の承認の後に)。図8に獣医により観察された行動変化の欠如に加えて、3匹のイヌがHCAアイソタイプ抗体の注射(単回2mg/kg投与)の後に体重変化または発熱を示さなかったことを示す。
【0036】
3匹のイヌにおけるHCAアイソタイプ抗体の血漿動態は、約9日の長いベータ半減期を含む、2相分布およびクリアランスメカニズムと一致していた(図9)。14日のフォローアップ期間にわたる迅速なクリアランスの欠如は、それらがイヌ抗体に対する抗抗体応答反応でないことと一致していた。これに反して、ヒト免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、イヌにおいて免疫原性であり、注入の約8または9日後に血漿から速やかに除去される(Richter 1999, Drug Met. Disp. 27, 21-25)。
【0037】
炎症のイヌモデル
すべての実験は、施設内動物倫理委員会(CRL、Ireland)の事前の承認により実施した。約24時間後に始まり、イヌが一時的に跛行になる原因になる自己消散性炎症を発生させるためにビーグル犬の1本の後肢の足蹠にカオリンを注射した(=−1日目)。このモデルにおいて、カオリンに対する初期炎症反応が沈静化すると、イヌは、約1〜2週間の期間にわたって徐々に跛行が少なくなり、その後、完全な回復を示す。
3匹のイヌの群に200μg/kg体重の抗イヌ(HCAアイソタイプ)NGFモノクローナル抗体または溶媒対照としてのリン酸緩衝生理食塩水を静脈内注射した(=0日目)。イヌを視覚採点法により7日間にわたり跛行について評価した(スコア0、無跛行(完全な体重支持);スコア1、軽度の跛行(完全な体重支持はないが、十分に歩行している);スコア2、中等度の跛行(わずかに体重を支持し、十分な歩行はできない);スコア3、重度の跛行(無体重支持))。観察は、どのイヌがどの注射を受けたかについて盲検化した。
【0038】
結果を図10に示す。跛行スコアは、抗NGFモノクローナル抗体の投与を受けたイヌにおいて溶媒対照と比較して注射後3日目までに低下し、これにより、抗NGFモノクローナル抗体が溶媒単独で認められたのと比べてイヌにおける疼痛を低減する効果を示したことがわかる。活性の遅延は、約30時間の遅い組織分布(アルファ)相を示した抗イヌNGFモノクローナル抗体の血漿薬物動態および足蹠部の比較的に不十分な血管分布と一致している。図10に示す結果は、本発明の抗イヌNGF抗体がイヌにおける炎症性疼痛を低減し、結果として起こる跛行の低減が伴うことを示すものである。
総合すると、本発明者により記述された結果は、CDC不活性のHCAアイソタイプを用いて構築された精製イヌ抗体が、イヌにおいて安全かつ有効であり、望ましい長い半減期を有することを示すものである。
本明細書で言及したすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記述した実施形態の様々な修正形態および変形形態は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して記述したが、請求した本発明をそのような特定の実施形態に必要以上に限定すべきでないことを理解すべきである。実際、当業者に明らかである本発明を実施する記載された形態の様々な修正は、本発明の範囲内にあるものとする。
【0039】
定義
別途定義しない限り、本明細書で用いたすべての技術および科学用語は、本発明の分野の技術者によって一般的に理解される意味を有する。用語の意味および適用範囲は、明確であるべきであるが、多義性がある場合、本明細書に示す定義が辞書または外部定義に優先する。
本明細書を通して、文脈上他の状態が要求されない限り、用語「含む(comprise)」もしくは「包含する(include)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」、「包含する(includes)」もしくは「包含すること(including)」などの変形形態は、記載された整数または整数の群の包含を意味するが、他の整数または整数の群の除外は意味しないと理解される。
【0040】
本明細書で用いているように、「a」、「an」および「the」などの用語は、文脈上他の状態が明確に要求されない限り、単数形および複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「活性薬(an active agent)」または「薬理学的に活性な薬剤(a pharmacologically active agent)」への言及は、単一の活性薬ならびに組み合わされた2種以上の活性薬を含み、一方で「担体(a carrier)」への言及は、2種以上の担体の混合物ならびに単一の担体などを含む。さらに、文脈上他の状態が要求されない限り、単数形の用語は、複数状態を含むものとし、複数形の用語は、単数状態を含むものとする。
本明細書で定義したように、「疼痛」という用語は、実際もしくは潜在的組織損傷に伴う、またはそのような損傷に関して表現される不愉快な感覚的および精神的経験を意味する。
【0041】
術中または術後疼痛に関連して、米国動物福祉法(Animal Welfare Act 2002. AWA regulations, CFR, Title 9 (動物および動物製品(Animals and Animal Product)), Chapter 1 (農務省動植物防疫局(Animal and Plant Health Inspection Service, Department of Agriculture)). Subchapter A (動物福祉(Animal Welfare), Parts 1-4)は、有痛性処置を、当該処置が施された人間における軽度または瞬間的な疼痛または苦痛以上のもの、すなわち、注射または他の比較的重要でない処置によって引き起こされる疼痛を超える疼痛を引き起こすと合理的に予想されるような処置と定義している。したがって、イヌが有痛性外科処置を受ける場合、動物は術後鎮痛薬の投与を受けるべきである。
さらなる例において、イヌは、慢性関節リウマチ、変形性関節症、炎症または癌性もしくは悪性状態などの関連症状の結果としての顕著または慢性疼痛を経験している可能性がある。
【0042】
「侵害受容」という用語は、侵害刺激の知覚を意味する。本明細書で定義したように、「神経障害性疼痛」(「神経痛」としても公知)は、神経からのシグナルに関連する問題によってもたらされる疼痛である。それは、体性感覚系を冒す病変または疾患の結果として生じ得る。神経障害性疼痛の原因が存在し、それは、自発的に起こる感覚異常と呼ばれる異常な感覚に関連し得る。あるいは、それは、通常疼痛を引き起こさないような接触または刺激によって疼痛が始まったり、悪化したりするときに生ずる異痛症に関連し得る。例えば、三叉神経痛がある場合には、顔面へのわずかな接触が疼痛を誘発することがあり、または糖尿病性神経障害がある場合には、寝具の圧力が疼痛を誘発することがある。神経障害性疼痛は、通常疼痛を引き起こさないような接触または刺激によって疼痛が始まったり、悪化したりする異痛症にも起因し得る。例えば、対象が三叉神経痛を有する場合には、顔面へのわずかな接触が疼痛を誘発することがある。痛覚過敏に関連する神経障害性疼痛は、激しい痛みが、通常わずかな不快感をもたらすような刺激または接触に起因することを意味するが、錯感覚は、例えば、ピンや針などの疼痛を引き起こす部位と接触しているものが存在していないときでさえ不快感または苦痛な感覚が起こることを意味する。他の形の神経障害性疼痛は、皮膚におけるアレルギーまたは炎症反応に関連し得る掻痒症または痒みならびに組織損傷および修復過程に起因する炎症性疼痛を伴う。
【0043】
本明細書で定義したように、「NGF中和抗体」という用語または類似の用語は、NGFの生物学的活性化またはシグナル伝達を中和することができる抗体を言う。拮抗抗体または遮断抗体と呼ばれることもある中和抗体は、特異的に、好ましくは選択的にNGFに結合し、NGFの1つまたは複数の生物学的活性を阻害する。例えば、中和抗体は、細胞膜結合TrkAまたはp75受容体のようなその標的リガンドへのNGFの結合を阻害し得る。
【0044】
本明細書で用いているように、「生物学的活性」という用語は、分子の1つまたは複数の固有の生物学的特性(in vivoで認められるような天然に存在するか、または組換え手段によりもたらされるもしくは可能になるかにかかわりなく)を意味する。生物学的特性は、受容体結合および/または活性化、細胞シグナル伝達または細胞増殖の誘導、細胞成長の抑制、サイトカインまたはケモカイン産生の誘導、アポトーシスの誘導および酵素活性を含むが、これらに限定されない。
「相補性決定領域(CDR)」という用語は、本明細書で用いているように、Kabatら(Kabat, E.A.,Wu, T.T., Perry, H., Gottesman, K. and Foeller, C. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. NIH Publication No. 91-3242)によって概説されたように天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性と特異性とを合わせて定めるアミノ酸配列を意味する。「フレームワーク領域(FR)」という用語は、本明細書で用いているように、CDRsの間に介在しているアミノ酸配列を意味する。抗体のこれらの部分は、CDRsを適切な配向に保持する役割を果たす(CDRsが抗原に結合することを可能にする)。
【0045】
「定常領域(CR)」という用語は、本明細書で用いているように、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を意味する。本発明において、定常領域は、一般的にイヌ定常領域、すなわち、対象のイヌ化抗体の定常領域がイヌ免疫グロブリンに由来することを意味する。
「キメラ抗体」という用語は、本明細書で用いているように、一般的に異なる種のものである、2つの異なる抗体に由来する配列を含む抗体を意味する。最も一般的には、キメラ抗体は、標的エピトープに特異的に結合するドナー種(donor specifies)に由来する可変ドメインおよび抗体を投与すべき標的種から得られた抗体に由来する定常ドメインを含む。
【0046】
「免疫原性」という用語は、本明細書で用いているように、受容者に投与したときに免疫応答(体液性または細胞性)を誘発する標的タンパク質または治療用部分の能力の尺度を意味する。本発明は、対象イヌ化抗体の免疫原性に関係する。好ましくは、本発明の抗体は、免疫原性を有さない、すなわち、イヌに投与したときにそれらに対して中和抗体が産生されず、さらに、抗体のFc領域によってエフェクター機能が媒介されない。
「同一性」または「配列同一性」という用語は、本明細書で用いているように、整列配列における特定のアミノ酸残基の位置において、アミノ酸残基が整列配列間で同じであることを意味する。「類似性」または「配列類似性」という用語は、本明細書で用いているように、整列配列における任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で類似した種類のものであることを示す。例えば、ロイシンは、イソロイシンまたはバリン残基に置換することができる。これは、保存的置換と呼ばれることがある。好ましくは、本発明のアミノ酸配列がそれに含まれているアミノ酸残基のいずれかの保存的置換により修飾される場合、これらの変化は、非修飾抗体と比較したとき、得られる抗体の結合特異性または機能的活性に影響を及ぼさない。
【0047】
本発明の(天然)ポリペプチドおよびその機能的誘導体に関する配列同一性は、配列を整列させ、最大の百分率の相同性を達成するために必要な場合にギャップを導入した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮せずに、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の百分率に関するものである。NまたはC末端の伸長も挿入も、配列同一性または相同性を減少させると解釈しないものとする。2つ以上のアミノ酸配列のアライメントを実施し、それらの配列同一性または相同性を判定するための方法およびコンピュータプログラムは、当業者に周知である。例えば、2つのアミノ酸配列の同一性または類似性の百分率は、アルゴリズム、例えば、BLAST(Altschul et al. 1990)、FASTA(Pearson & Lipman 1988)またはSmith−Watermanアルゴリズム(Smith & Waterman 1981)を用いて容易に計算することができる。
【0048】
本明細書で用いているように、第2のアミノ酸残基との「最高の相同性」を有するアミノ酸残基への言及は、第2のアミノ酸残基と共通の大部分の特性および性質を有するアミノ酸残基を意味する。アミノ酸残基が第2のアミノ酸残基との最高の相同性を有するかどうかを判定する際に、一般的に、例えば、電荷、極性、疎水性、サイドアームの質量およびサイドアームの大きさなどであるが、これらに限定されない因子の評価を行うことができる。
「対応する位置」という用語は、本明細書で用いているように、2つの配列の間の最大の配列同一性を可能にするように2つの配列を整列させた場合に、第1の配列における指定されたアミノ酸残基に対応する位置における第2の配列に存在するアミノ酸残基が、第1の配列における位置と同じ位置である第2の配列における位置を指すものであることを意味する。対応する位置におけるアミノ酸残基は、同じKabat番号付けを有する。
【0049】
「から本質的になる」または「から本質的になること」という用語は、本明細書で用いているように、付加的な特徴または要素がイヌNGFに対する結合特異性を有する抗体または抗体断片の能力に実質的に影響を及ぼさないならば、ポリペプチドが、記載されているものを超える付加的な特徴または要素を有していてもよいことを意味する。すなわち、ポリペプチドを含む抗体または抗体断片は、イヌNGFに結合し、イヌNGFの機能活性に拮抗する抗体または抗体断片の能力を妨げない付加的な特徴または要素を有していてもよい。そのような修飾は、抗体の免疫原性を低減するためにアミノ酸配列に導入することができる。例えば、指定された配列から本質的になるポリペプチドは、配列のいずれかの末端または両末端に1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超える付加、欠失または置換アミノ酸を含んでいてもよく、ただし、これは、これらのアミノ酸が、イヌNGFへの結合における抗体または抗体断片の役割を妨害、阻害、阻止または遮断せず、その生物学的機能を奪わないという条件のもとである。同様に、本発明のイヌNGF拮抗抗体に寄与するポリペプチド分子は、1つまたは複数の官能基で化学的に修飾されていてもよく、ただし、これは、そのような官能基が、イヌNGFに結合し、その機能に拮抗する抗体または抗体断片の能力を妨げないという条件のもとである。
【0050】
本明細書で用いているように、「有効量」または「治療有効量」という用語は、必要な治療効果をもたらすのに必要な本発明の薬剤、結合化合物、小分子、融合タンパク質またはペプチド模倣薬の量を意味する。
「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」という用語は、隣接する残基のアルファアミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合により互いに連結された線状の一連のアミノ酸残基を示すために本明細書において同義で用いる。アミノ酸残基は、通常天然「L」異性体の形である。しかし、「D」異性体における残基は、所望の機能特性がポリペプチドにより保持されている限り、任意のL−アミノ酸残基に置換することができる。
【0051】
本明細書で定義したように、「抗体」は、対象の標的抗原、この場合には、組換えにより調製することができる、または免疫グロブリン遺伝子もしくは免疫グロブリン遺伝子の断片により遺伝的にコードされ得る、1つまたは複数のポリペプチドを有するイヌ神経成長因子に特異的に結合する抗原結合性タンパク質を含む。「抗体」という用語は、モノクローナルおよびキメラ抗体、特にイヌ化抗体を含み、ポリクローナル抗体またはあらゆるクラスもしくはサブタイプの抗体をさらに含む。「抗体」はさらに、ハイブリッド抗体、二重特異性抗体、ヘテロ抗体に、抗原結合性を保持するその機能的断片に及ぶ。
「に特異的に結合する」という語句は、タンパク質の異種集団に存在する特定のタンパク質または標的への抗体の結合を意味する。したがって、特定のイムノアッセイ条件で存在する場合、抗体は、特定のタンパク質、この場合、イヌNGFに結合し、試料中に存在する他のタンパク質に有意な量で結合しない。
【0052】
本明細書で定義したように、「イヌ」は、「犬」と呼ばれることもある。イヌは、三命名法による名称カニス・ルプス・ファミリアーリス(Canis lupus familiaris)(Canis familiaris domesticus)またはカニス・ルプス・ディンゴ(Canis lupus dingo)を有する亜種に属すると分類することができる。イヌは、任意の犬の種を含み、野生およびペット品種の両方を含み、後者は、コンパニオン動物とも呼ばれている。
【0053】
例示の目的のために記載するものであって、本発明に対する制限であると解釈されることを意図するものでない以下の実施例に関して、本発明を述べることとする。本発明の方法および技術は、当技術分野で周知であり、特に示さない限り、本明細書を通して引用し、述べた種々の一般的およびより詳細な参考文献に記載されている従来の方法に従って一般的に実施される。
【0054】
本発明の具体的な実施態様をいくつか例示的に以下に列挙する。
(1)イヌの治療処置に用いる抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、重鎖のアミノ酸配列が、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに下流免疫系エフェクター機能の活性化を最小限にする、抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(2)イヌの治療処置が疼痛もしくは炎症またはそれに関連する状態の治療に関連する、(1)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(3)イヌの治療処置が関節炎または関節炎状態の治療に関連する、(2)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(4)疼痛が神経障害性疼痛、腫瘍痛、慢性関節リウマチに関連する、または起因する疼痛、変形性関節症に関連する、または起因する疼痛、炎症に関連する、または起因する疼痛および掻痒症に関連する、または起因する疼痛からなる群から選択される、(2)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(5)下流免疫系エフェクター機能が補体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および抗体依存性細胞病原性からなる群から選択される、(1)から(4)までのいずれかに記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(6)標的抗原がサイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞表面受容体、ウイルスおよび補体カスケードの成分からなる群から選択される、(1)から(5)までのいずれかに記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(7)イヌ対象における疼痛または炎症の治療に用いる医薬の調製における、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに重鎖のアミノ酸配列が下流免疫系エフェクター機能の活性化を最小限にする、配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖定常ドメインを含む抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片の使用。
(8)疼痛が神経障害性疼痛、腫瘍痛、慢性関節リウマチに関連する、または起因する疼痛、変形性関節症に関連する、または起因する疼痛、炎症に関連する、または起因する疼痛および掻痒症に関連する、または起因する疼痛からなる群から選択される、(7)に記載の使用。
(9)下流免疫系エフェクター機能が補体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および抗体依存性細胞病原性からなる群から選択される、(7)または(8)のいずれかに記載の使用。
(10)標的抗原がサイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞表面受容体、ウイルスおよび補体カスケードの成分からなる群から選択される、(7)から(9)までのいずれかに記載の使用。
(11)それを必要とするイヌ対象における疼痛または炎症を治療、抑制または改善する方法であって、
疼痛または炎症の治療または予防における特定の機能を有する標的抗原に特異的に結合する抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片であって、配列番号8、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、下流免疫系エフェクター機能を活性化しない、抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の抗体、融合タンパク質または結合性断片をイヌ対象に投与するステップとを含む、方法。
(12)疼痛が神経障害性疼痛、腫瘍痛、慢性関節リウマチに関連する、または起因する疼痛、変形性関節症に関連する、または起因する疼痛、炎症に関連する、または起因する疼痛および掻痒症に関連する、または起因する疼痛からなる群から選択される、(11)に記載の方法。
(13)下流免疫系エフェクター機能が補体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および抗体依存性細胞病原性からなる群から選択される、(11)または(12)に記載の方法。
(14)標的抗原がサイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞表面受容体、ウイルスおよび補体カスケードの成分からなる群から選択される、(11)から(13)までのいずれかに記載の方法。
(15)鎮痛薬、NSAID、オピオイド、コルチコステロイドおよびステロイドからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる薬剤を併用投与するステップをさらに含む、(11)から(14)までのいずれかに記載の方法。
(16)イヌの治療処置に用いる抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、前記抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、重鎖のアミノ酸配列が、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに下流免疫系エフェクター機能の活性化を媒介する、抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(17)治療処置が癌性または悪性状態の治療に関連する、(16)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(18)下流免疫系エフェクター機能が補体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および抗体依存性細胞病原性からなる群から選択される、(16)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(19)標的抗原が癌特異抗原である、(16)から(18)までのいずれかに記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(20)癌特異抗原がサイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞表面受容体、ウイルスおよび補体カスケードの成分からなる群から選択される、(19)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(21)癌特異抗原がタンパク質CD2、CD4、CD8、CD20、EGFR、VEGFRおよびHER2からなる群から選択される、(19)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(22)イヌ対象における癌性または悪性状態の治療に用いる医薬の調製における、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときに重鎖のアミノ酸配列が下流免疫系エフェクター機能の活性化を媒介する、配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖定常ドメインを含む抗体、融合タンパク質またはその結合性断片の使用。
(23)下流免疫系エフェクター機能が補体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および抗体依存性細胞病原性からなる群から選択される、(22)に記載の使用。
(24)標的抗原が癌特異抗原である、(22)または(23)に記載の使用。
(25)癌特異抗原がサイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞表面受容体、ウイルスおよび補体カスケードの成分からなる群から選択される、(24)に記載の使用。
(26)癌特異抗原がタンパク質CD2、CD4、CD8、CD20、EGFR、VEGFRおよびHER2からなる群から選択される、(24)に記載の使用。
(27)イヌ対象における癌性または悪性状態の治療または予防の方法であって、
癌性または悪性状態の治療における特定の機能を有する標的抗原に特異的に結合する抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片であって、配列番号9、配列番号10または配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有し、下流免疫系エフェクター機能を活性化する、抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の抗体、融合タンパク質または結合性断片をそのような治療を必要とするイヌ対象に投与するステップと
を含む、方法。
(28)下流免疫系エフェクター機能が補体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および抗体依存性細胞病原性からなる群から選択される、(27)に記載の方法。
(29)標的抗原が癌特異抗原である、(27)または(28)に記載の方法。
(30)癌特異抗原がサイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞表面受容体、ウイルスおよび補体カスケードの成分からなる群から選択される、(29)に記載の方法。
(31)癌特異抗原がタンパク質CD2、CD4、CD8、CD20、EGFR、VEGFRおよびHER2からなる群から選択される、(29)に記載の方法。
(32)イヌにおける状態の治療に用いる抗体、融合タンパク質またはその結合性断片であって、その標的抗原に結合するときにC1qに結合しない重鎖定常ドメインを有し、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製することができる、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片。
(33)抗体が配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する、(32)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(34)抗体が配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する、(32)に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(35)イヌにおける疼痛および/または炎症に関連する状態の治療用の医薬の調製における、抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときにC1qに結合しない重鎖定常ドメインを含み、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製することができる、抗体、融合タンパク質またはその結合性断片の使用。
(36)抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する、(35)に記載の使用。
(37)抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号12、配列番号13および配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する、(35)に記載の使用。
(38)それを必要とするイヌ対象における疼痛または炎症を治療、抑制または改善する方法であって、
抗体、融合タンパク質または結合性断片がその標的抗原に結合するときにC1qに結合しない重鎖定常ドメインを含み、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製することができる、抗体または融合タンパク質またはその結合性断片を準備するステップと、
治療有効量の抗体、融合タンパク質または結合性断片をイヌ対象に投与するステップとを含む、方法。
(39)抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する、(38)に記載の方法。
(40)抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する、(38)に記載の方法。
(41)標的抗原に特異的に結合させるためにイヌに治療的に投与することができる組換え抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片であって、抗体、融合タンパク質または結合性断片の定常ドメインがC1q補体に結合せず、定常ドメインの重鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプA、配列番号11のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプDまたは配列番号13のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプBを含む、組換え抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片。
(42)抗体、融合タンパク質または結合性断片が配列番号6、配列番号12、配列番号13および配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを有する、(41)に記載の組換え抗体、融合タンパク質または結合性断片。
(43)標的抗原に特異的に結合させるためにイヌに治療的に投与することができ、組換え抗体、融合タンパク質またはその結合性断片へのC1q補体の結合および関連する補体依存性細胞障害によって特徴付けられる免疫応答をさらに媒介する組換え抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片であって、抗体、融合タンパク質または結合性断片の重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプB、配列番号10のアミノ酸配列を有するイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインアイソタイプCまたは配列番号14のアミノ酸配列を有する脱グリコシルイヌ免疫グロブリン重鎖アイソタイプCを含む、抗体もしくは融合タンパク質またはその結合性断片。
(44)(41)から(43)までのいずれかに記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片および少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
(45)(41)から(43)までのいずれか1項に記載の抗体、融合タンパク質または結合性断片をコードする単離核酸、前記核酸を含む発現ベクターまたは前記発現ベクターを含む宿主細胞。
(46)供給源混合物からのイヌ由来免疫グロブリンまたは配列番号8のアミノ酸配列を有するアイソタイプAのイヌ重鎖定常ドメインもしくは配列番号11のアミノ酸配列を有するアイソタイプDのイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含む免疫グロブリンもしくは融合タンパク質の精製の方法であって、
(i)標的免疫グロブリンまたは融合タンパク質を含む供給源混合物を準備するステップと、
(ii)供給源混合物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけるステップと、
(iii)供給源混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけるステップと、
(iv)供給源混合物をサイズ排除クロマトグラフィーにかけるステップと
を含む、方法。
(47)供給源混合物からのイヌ由来免疫グロブリンまたは配列番号8のアミノ酸配列を有するアイソタイプAのイヌ重鎖定常ドメインもしくは配列番号11のアミノ酸配列を有するアイソタイプDのイヌ免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含む免疫グロブリンもしくは融合タンパク質の精製の方法であって、
(i)標的免疫グロブリンまたは融合タンパク質を含む供給源混合物を準備するステップと、
(ii)供給源混合物をカプトアドヒアアフィニティークロマトグラフィーにかけるステップと、
(iii)供給源混合物を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけるステップと
を含む、方法。
(48)イヌの治療に用いる(46)または(47)に記載の精製方法により生産される抗体または融合タンパク質。
【実施例】
【0055】
(例1)
各種のイヌアイソタイプを有する抗イヌNGF抗体のデザインおよび製造
イヌNGFに対する抗体(caN抗体と呼ぶ)をデザインし、HCA(配列番号1)、HCB(配列番号2)、HCC(配列番号3)またはHCD(配列番号4)から選択される重鎖定常ドメイン(CH2およびCH3)に連結した同一可変重ドメイン(VH)を用いて構築した。可変軽鎖(VL)は、イヌカッパ定常ドメイン(配列番号5)に連結した。コドンの最適選択および完全な化学遺伝子合成ならびに哺乳類細胞発現ベクターpcDNA3.1+へのクローニングにより、組み合せたアミノ酸配列を哺乳類細胞中で発現可能な形に変換した。具体的には、デザインしたアミノ酸を合成によるcDNAの発現可能な形に構築し、哺乳類細胞発現ベクターpcDNA3.1(+)にクローニングした。全抗体配列は、イヌ化可変ドメイン配列をC末端イヌ定常重または定常軽鎖配列と組み合せることにより生成させた。イヌ化aD11 VHドメインを4つの重鎖アイソタイプHCA、HCB、HCCおよびHCD(配列番号1〜配列番号4)のそれぞれと、またイヌ化aD11 VLドメインをイヌカッパ軽鎖定常ドメイン(配列番号5)と組み合せた。コドンの最適選択および完全な化学遺伝子合成ならびに哺乳類細胞発現ベクターpcDNA3.1+へのクローニングにより、組み合せたアミノ酸配列を哺乳類細胞中で発現可能な形に変換した。
【0056】
イヌ化重および軽鎖cDNAプラスミドの組合せ(配列番号5プラス配列番号1(HCA)を用いたcaN−HCA−kLC、配列番号5プラス配列番号2(HCB)を用いたcaN−HCB−kLC、配列番号5プラス配列番号3(HCC)を用いたcaN−HCC−kLCおよび配列番号5プラス配列番号4(HCD)を用いたcaN−HCD−kLC)をCHO細胞にトランスフェクトし、上清を採取し、ELISA法でNGFと反応させた。インキュベーションおよび洗浄ステップの後、結合イヌ抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合したヤギ抗イヌIgG特異的ポリクローナル抗体との反応性により検出し、TMBを用いて発色させた。得られた生成物の光学濃度を450nmで測定し、モック空ベクタートランスフェクト上清からの生成物と比較した。4つのイヌ化抗体アイソタイプのNGFへの結合の結果を図1に示す。これらの抗体のそれぞれが同じ軽鎖(caN−kLC)を有しており、これは、イヌカッパ定常ドメインを含む軽鎖である。各抗体は、異なる重鎖定常ドメインを有する。したがって、特定の重鎖可変ドメインが4種の異なる定常ドメインの1つと組み合わされている(caN−HCA、caN−HCB、caN−HCCまたはcaN−HCD)。NGFへの同等な結合がイヌ重鎖アイソタイプのそれぞれについて認められた。
抗体上清をELISAアッセイによりNGF結合(図1A)について、TF−1細胞増殖阻害アッセイによりNGF中和(図1B)について試験した。図1でわかるように、4種のアイソタイプがこれらのアッセイにおいて互いに同等の活性を有していた。すなわち、それらはすべて、イヌNGFに特異的に結合した。
【0057】
(例2)
NGF捕捉イヌ化抗体により誘導される補体沈着
次いで、4つの抗体含有上清を、NGFに結合したときに補体に結合するそれらの能力について補体C1q ELISAを用いて評価した。プレートを100μl/ウエルの5μg/mlマウスNGFで被覆し、5%BSA/PBSでブロックした。被覆ウエルを、PBS/1%BSA(100μl/ウエル)で希釈した組換えイヌ化抗NGF IgGアイソタイプを含む細胞培養上清とともに室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、0.5mM MgCl2、2mM CaCl2、0.05%Tween−20、0.1%ゼラチンおよび0.5%BSAを含むベロナール緩衝生理食塩水で1/100に希釈した100μl/ウエルのヒト血清とともに室温で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをPBS/1%BSAで1/800に希釈の100μlのヒツジ抗C1q−HRP(Serotec)とともにインキュベートした。洗浄後、プレートを100μl TMB基質の添加により発色させた。すべての補体C1q結合をA450マイナス熱不活性化補体バックグラウンドとして表した。100μlの2N H2SO4の添加により発色を停止させ、450nmで吸光度を読み取った。
【0058】
結果を図2に示す。これらの結果は、固定化イヌ化HCBおよびHCC型抗体にC1qが結合すること、ならびにイヌ化HCAおよびHCD型抗体にC1qが結合しないことを示している。したがって、結果は、驚くべきことに、異なるイヌ由来の重鎖が異なる補体結合性、ひいては活性化特性を示し、またHCAおよびHCD型重鎖を有するイヌ化抗体がイヌNGFに拮抗するのに用いるのが意外にも好ましいことを示している。したがって、イヌNGFに特異的に結合するが、CDCを媒介しない抗体を製造する能力は、極めて有利である。その理由は、NGFに特異的に結合するが、NGFを発現する細胞の近傍における免疫応答を媒介する抗体は、極めて望ましくないことになるからである。
【0059】
(例3)
HCBおよびHCC重鎖アイソタイプを有する抗イヌNGFモノクローナル抗体のNFG捕捉N−グリコシル化および脱グリコシル変異体の補体結合性
HCBおよびHCC重鎖アイソタイプを用いた抗イヌNGFモノクローナル抗体のN−グリコシル化および脱グリコシル変異体のNGFへの結合性の比較を行った。配列番号5および配列番号2(HCB)、配列番号5および配列番号6(HCB*)、配列番号5および配列番号3(HCC)または配列番号5および配列番号7(HCC*)により表示される軽鎖および重鎖対をコードする発現ベクターをCHO細胞にコトランスフェクトし、上清を結合ELISAによりマウスNGFと比較した。結果を図3に示す。左側パネルにHCB重鎖(HCB)、脱グリコシルHCB重鎖(HCB*)、HCC重鎖(HCC)または脱グリコシルHCC重鎖(HCC*)を用いて構築した抗NGF MAbsの発現のELISAによる検出を示す。−白抜きバーは、未希釈の上清を示し、陰影付きバーは、1/10希釈の上清を示し、Cは、未希釈陰性対照上清を示す。NGFへの同等の結合が認められた。
【0060】
同様に、HCBおよびHCCの定常ドメインN結合グリコシル化部位を除去するようにデザインされた抗体(HCB*(配列番号6)およびHCC*(配列番号7)と呼ぶ)を、それらの補体結合性を除去しようとして軽鎖と共発現させ、補体活性について評価した(図3)。驚くべきことに、脱グリコシル化HCB*は、補体に結合することができなかったが、脱グリコシル化HCC*は、補体に結合することができるままであった。補体結合を媒介しないイヌ由来のグリコシル化および脱グリコシル化重鎖が特定されたことは、NGFが侵害受容に関与する可溶性メディエーターであるので、特に好都合な所見である。
CHO細胞トランスフェクタント上清を、例2で述べたC1q ELISAアッセイを用いて補体を動員する能力について試験した。結果を図3の右側パネルに示す。総合すると、図3における結果は、補体C1qを動員する能力がB型重鎖におけるN結合グリコシル化部位の除去(HCB*)により無効にされ、C型重鎖における同様の変異(HCC*)により減弱したことを示している。
【0061】
したがって、全く驚くべきことに、抗体がHCA、HCDサブタイプまたは脱グリコシル化HCB*アイソタイプのイヌ由来重鎖を有する場合、イヌNGFへの抗体の結合が補体活性化(ならびに場合によってはADCCおよびADCPなどの他の下流エフェクター機能)をもたらさないことが本明細書で示されている。したがって、前記抗体は、細胞膜結合TrkAまたはp75受容体へのイヌNGFの結合を妨げることにより、イヌNGFなどの標的の生物学的機能活性に拮抗する際に、関連する下流の細胞内シグナル伝達カスケードを阻害する。さらに、NGFの発現は神経の近傍で頻繁に起こるので、HCA、HCDまたはHCB*サブタイプのイヌ由来重鎖を有する、そのようなNGF拮抗または中和抗体は、より広い免疫応答を動員することなく、イヌNGFの生物学的活性を奪う。したがって、結果は、驚くべきことに、異なるイヌ由来の重鎖が異なる補体結合性および活性化特性を示し、またHCAおよびHCD型重鎖を有するイヌ化抗体がイヌNGFに拮抗するのに用いるのが意外にも好ましいことが示されたことを示している。補体固定を媒介しないイヌ由来の重鎖が特定されたことは、NGFが可溶性メディエーターであるので、特に好都合な所見である。そのような機能特性は、予期しないものであると同時に、極めて望ましい。
【0062】
(例4)
他の抗原:VEGFおよびCD20に対するイヌ重鎖定常ドメインを有する抗体の製造ならびにそれらの補体への結合
異なるイヌ重鎖アイソタイプが補体への示差的結合を有するという驚くべき結果を考慮して、例1で述べたのと同じ方法を用いてCHO細胞中で発現させたイヌ重鎖定常ドメインを用いて、抗VEGFおよび抗CD20抗体を同様に構築した。補体ELISAにおけるこれらの抗体上清からのアッセイ結果を図4に示す。結果を、それらの同族抗原への結合後に補体を動員するそれらの能力について上述の抗NGF抗体と比較した。
【0063】
結果を図4に示す。パネルAにイヌ重鎖アイソタイプBおよびCを用いて構築したイヌ化NGF MAbならびにヒト重鎖アイソタイプIgG1およびIgG4を用いて構築したヒト化抗体をNGF被覆プレート上に捕捉し、ヒト血清とともにインキュベートし、結合C1qを、HRPにコンジュゲートした抗C1qポリクローナル抗体を用いてELSAにより検出したことを示す。パネルBにイヌ重鎖アイソタイプAおよびB(配列番号8、配列番号9)を用いて構築したVEGF捕捉イヌ化抗VEGF MAbsへの補体C1qの結合の結果を示す。パネルCにhuCD20細胞外ドメインペプチド上に捕捉された抗CD20 MAbへの補体C1qの結合の結果を示す(muB−2a:マウス抗ヒトCD20 MAbおよびmuB−HCB:イヌ重鎖アイソタイプB(配列番号9)とのキメラ融合タンパク質として発現させたマウス抗ヒトCD20 MAb)。すべての補体C1q結合をA450マイナス熱不活性化補体バックグラウンドとして表した。
【0064】
総合すると、これらのデータは、HCAではなく、HCBイヌ重鎖定常ドメインを用いて構築した抗VEGF抗体が補体を動員することができ、イヌHCBを用いて構築した抗CD20抗体が補体に結合することができ、したがって、上述の補体への抗NGF抗体アイソタイプの示差的結合と同等であることを示している。要約すると、これらのデータは、HCBおよびHCCアイソタイプを用いて構築した抗原捕捉抗体が補体に結合するのに対して、HCAおよびHCDはそうでないという驚くべき所見を裏付けるものである。HCBおよびHCCアイソタイプが補体に結合するということが特定されたことは、例えば、VEGF発現またはCD20発現腫瘍細胞の腫瘍細胞死滅に特に好都合である。
【0065】
これらの実験の結果は、イヌ重鎖定常ドメインHCA、HCDおよび脱グリコシル化HCB(HCB*)アイソタイプを含む抗体がCDC活性を媒介しない免疫グロブリンに結果的になるという例1の予期されなかった所見を裏付けるものである。したがって、本発明者は、そのようなイヌ由来の重鎖が、CDC媒介性免疫応答が望まれない治療法に用いる免疫グロブリンにおいて有用性を有することを初めて確認した。そのような使用の例は、サイトカインもしくはケモカイン、成長因子、ホルモンおよびin vivoでの補体自体を含む、または、疼痛、黄斑変性もしくは炎症などの疾患における他の細胞外メディエーターのイヌ免疫グロブリンによる阻害に見いだすことができる。
HCA、HCDおよびHCB*アイソタイプは、CDC不活性抗体のデザインに最も有用であるが、本発明者はまた、驚くべきことにHCB(caIgG−B)およびHCC(caIgG−C)アイソタイプのイヌ抗体がCDC活性抗体のデザインに有用であることを確認した。そのような抗体は、例えば、癌治療における破壊のために細胞を標的とする場合に有用である。CD20、HER2およびEGFRを含む、CDC活性抗体を用いて標的化される多くのヒト腫瘍抗原が存在する。したがって、HCBおよびHCCアイソタイプを用いて構築されるイヌ抗体は、イヌにおいて併用を有する。
【0066】
(例5)
CHO細胞中の発現の後の抗NGFモノクローナル抗体の精製
HCAおよびHCDアイソタイプのイヌNGFモノクローナル抗体は、補体への結合の望ましい欠如を有する(図2)が、フドウ球菌属プロテインAに弱く結合する(図5)ので、代替精製法を開発した(図6)。抗イヌNGFモノクローナル抗体(重鎖アイソタイプHCAを用いて構築した)をCHO細胞中で発現させ、広範な実験の後に、2つの代替精製法によってイヌ抗NGF抗体を高純度(図6A、6Dに示すように、>89%モノマーIgGピーク)に分画することができたことが驚くべきことに見いだされた。
【0067】
第1の方法において、抗イヌNGFモノクローナル抗体を陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した(方法I−図6AおよびB)。第2の方法において、抗NGF抗体をカプトアドヒアアフィニティークロマトグラフィーと続く陰イオン交換クロマトグラフィーにより精製することができた(方法II−図6CおよびD)。
いずれかの方法により精製された抗NGFモノクローナル抗体の主ピークは、約150kDaの分子量に対応する。SDS−PAGEおよびELISA(図7)の比較により、方法IおよびIIによって同様の純度および生物活性を有する抗体調製物が得られることがわかる。これらの方法によって得られた精製抗NGFモノクローナル抗体をTF−1 NGF中和アッセイ(図1に記載した)で試験したところ、高い効力を有することが示された(IC50 13pM抗NGF中和37pM NGF;示さず)。
【0068】
(例6)
抗イヌNGFモノクローナル抗体はイヌに安全に静脈内投与することができ、発熱を引き起こさない
イヌHCA型重鎖を含む発現ベクターに由来する抗イヌNGFモノクローナル抗体をCHO細胞中で発現させ、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーの組合せにより精製し(方法I、図6AおよびB)、緩衝液をリン酸緩衝生理食塩水に交換した。抗体を2mg/kg体重でビーグル犬に静脈内注射し、獣医による目視検査により毒性の徴候、体重、体温および血漿生化学の変化について評価した。図8に体重および体温の測定を示す。これらまたは測定した血漿生化学分析対象(ナトリウム、カリウム、塩素、カルシウム、塩酸塩、尿素、クレアチニン、グルコース、コレステロール、ビリルビン、アラニン、トランスアミナーゼ、アルカリフォスファターゼ、アミラーゼ、リパーゼ、総蛋白またはアルブミンを含む:示さず)に変化は認められなかった。
【0069】
(例7)
in vivoでの抗イヌ(HCAアイソタイプ)NGFモノクローナル抗体の血漿薬物動態は長い血清半減期および免疫原性の欠如を示す
イヌHCA型重鎖を発現する発現ベクターに由来する抗イヌNGFモノクローナル抗体をCHO細胞中で発現させ、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーの組合せにより精製し、緩衝液をリン酸緩衝生理食塩水に交換した(方法I、図6AおよびB)。抗体を2mg/kg体重でビーグル犬に静脈内注射し、血漿試料を次の2週間にわたり種々の時点に採取した。希釈血漿試料を、標的としてのNGFおよび抗イヌポリクローナル抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ二次試薬を用いたELISAにより、また図1に従って発色させて、抗イヌNGF抗体濃度について評価した。結果を図9に示す。測定された血漿濃度は、2相の動態と一致し、約33時間の組織分布(アルファ)相半減期と驚くべきことに約9日の長い消失(ベータ)相を示した。
【0070】
100時間から300時間までの抗イヌNGF抗体の血漿濃度の急激な低下がないことは、イヌ血液中に組換え抗NGFモノクローナル抗体に対する先在性の中和抗体が存在しないことも、注入後にそのような中和抗体が発生しなかったことも示している。比較すると、組換えヒト免疫グロブリンベースのタンパク質は、注入後約200時間にイヌ血液中で抗体により中和される(Richter et al, Drug Metabolism and Disposition 27: 21, 1998)。したがって、これらの結果は、本発明の抗イヌNGF抗体が静脈内注射後にin vivoで長い血清半減期(約9日)を有すること、および注射した抗NGF抗体を長時間にわたって中和する先在性の抗体も新たに発生した抗体も存在しないことを示すものである。
【0071】
(例8)
in vivoで炎症性疼痛を低減する抗イヌNGFモノクローナル抗体の効果
抗体療法:
イヌHCA型重鎖を含む発現ベクターに由来する抗イヌNGFモノクローナル抗体をCHO細胞中で発現させ、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーの組合せにより精製し(方法I)、緩衝液をリン酸緩衝生理食塩水に交換した。
【0072】
炎症のイヌモデル
すべての実験は、施設内倫理委員会(CRL、Ireland)の事前の承認により実施した。約24時間後に始まり、イヌが一時的に跛行になる原因になる自己消散性炎症を発生させるためにビーグル犬の1本の後肢の足蹠にカオリンを注射した(=−1日目)。
このモデルにおいて、カオリンに対する初期炎症反応が沈静化すると、イヌは、約1〜2週間の期間にわたって徐々に跛行が少なくなり、その後、完全な回復を示す。
3匹のイヌの群に200μg/kg体重の抗イヌNGFモノクローナル抗体または溶媒対照としてのリン酸緩衝生理食塩水を静脈内注射した(=0日目)。イヌを視覚採点法により7日間にわたり跛行について評価した(スコア0、無跛行(完全な体重支持);スコア1、軽度の跛行(完全な体重支持はないが、十分に歩行している);スコア2、中等度の跛行(わずかに体重を支持し、十分な歩行はできない);スコア3、重度の跛行(無体重支持))。観察は、どのイヌがどの注射を受けたかについて盲検化した。
【0073】
結果を図10に示す。跛行スコアは、抗NGFモノクローナル抗体の投与を受けたイヌにおいて溶媒対照と比較して注射後3日目までに低下し、これにより、抗NGFモノクローナル抗体が溶媒単独で認められたのと比べてイヌにおける疼痛を低減する効果を示したことがわかる。活性の遅延は、約30時間の遅い組織分布(アルファ)相を示した抗イヌNGFモノクローナル抗体の血漿薬物動態および足蹠部の比較的に不十分な血管分布と一致している。図10に示す結果は、本発明の抗イヌNGF抗体がイヌにおける炎症性疼痛を低減し、結果として起こる跛行の低減が伴うことを示すものである。
【0074】
本明細書で言及したすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記述した実施形態の様々な修正形態および変形形態は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して記述したが、請求した本発明をそのような特定の実施形態に必要以上に限定すべきでないことを理解すべきである。実際、当業者に明らかである本発明を実施する記載された形態の様々な修正は、本発明の範囲内にあるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]