【文献】
Grubbs II,外,Chirped-pulse fourier transform microwave spectroscopy of the simple chiral compound bromofluoroacetonitrile,CHBrFCN,Journal of molecular spectroscopy,2009年,Vol.258,No.1-2,P.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロ波検波器のセットの第一のマイクロ波検波器が、前記第一の反射物中に形成された第一の開口を介して前記空洞に結合されており、かつ、該マイクロ波検波器のセットの第二のマイクロ波検波器が、前記第二の反射物中に形成された第二の開口を介して該空洞に結合されている、請求項10に記載の分光器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
定義
以下の定義は、本開示のいくつかの態様に関して記載される局面のいくつかに適用される。これらの定義は本明細書において同様に拡大されてもよい。
【0014】
本明細書において使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」という単数形は、文脈がそうでないことを明らかに指図しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、ある対象物の参照は、文脈がそうでないことを明らかに指図しない限り、複数の対象物を含むことができる。
【0015】
本明細書において使用される「セット」という語とは、1つまたは複数の対象物の集合をいう。したがって、例えば、対象物のセットは、単一の対象物または複数の対象物を含むことができる。あるセットの対象物はまた、そのセットのメンバーと呼ぶこともできる。あるセットの対象物は、同じであることもできるか、または異なることもできる。いくつかの例において、あるセットの対象物は1つまたは複数の共通の特徴を共有することができる。
【0016】
本明細書において使用される「実質的に」および「実質的な」という語とは、かなりの程度を指す。事象または情況とともに使用される場合、この語は、その事象または情況がそのとおりに起こる事例および、例えば本明細書に記載される態様の一般的な許容レベルまたは可変性を考慮して、その事象または情況がきわめて近似して起こる事例を指すことができる。
【0017】
キラル分子のエナンチオマー特異的検出
図1は、本開示の態様の、混合物中のキラル分子を識別するように構成された装置100を示す。装置100は、FTMW分光器として構成されており、かつ分析対象物と呼ばれる混合物を分析対象物供給源120から導入することができる容積104を画定するハウジング102を備える。分析対象物は、1つまたは複数の先験的に未知の極性成分を含むガス混合物である。装置100は、分析対象物中の特定種の各エナンチオマーの濃度を測定するように構成されている。種Xの2つのエナンチオマーをR-XおよびS-Xと呼ぶことができる。
【0018】
装置100は、以下でさらに説明するように、FTMW分光法の技術の拡張にしたがって作動する。この拡張は、いくつかの実施態様において、エナンチオマー依存単色Stark FTMW分光法と呼ぶことができる。実質的に、複素ラビ周波数のエナンチオマー依存符号は、実測量、この場合はアンサンブル偏波の符号または位相、ひいては誘起放射物の位相に移すことができる。
【0019】
分子の3つの回転定数A、B、およびCならびに対応する3つの双極子モーメントμ
a、μ
b、およびμ
cを指定すると、分子のキラリティを十分に指定することができる。μ
a、μ
b、およびμ
cのいずれか1つの符号を逆にすると、通常、反対のエナンチオマーの記述が得られる。いくつかの実施態様においては、一方のエナンチオマーがすべてプラスのμ
a、μ
b、およびμ
cを有し、他方のエナンチオマーがすべてマイナスのμ
a、μ
b、およびμ
cを有するような軸を決定することができる。軸はまた、両エナンチオマーに関してμ
aおよびμ
bがプラスであり、μ
cの符号によってR-およびS-エナンチオマーが区別されるように選択することができる。いずれの場合でも、μ
aμ
bμ
cの符号はエナンチオマー間で変わる。ここに記載される技術は、概して、気化させることができる広範囲の相対的に複雑な分子を包含する、非ゼロμ
a、μ
b、およびμ
cを有する任意の気相非対称コマ分子に適用することができる。
【0020】
電界と相互作用する分子のエネルギー準位および回転遷移強度は一般に、A、BおよびCならびに双極子モーメントの絶対値|μ
a|、|μ
b|、および|μ
c|に依存する。したがって、これらの準位または遷移強度の測定は一般に、分子のキラリティを決定することができない。対照的に、キラル状態の間の電気双極子遷移を表す複素ラビ周波数は、反対のエナンチオマーどうしで符号が異なることができる。大部分またはすべての遷移において電気的双極子遷移が許される3準位系を用いることにより、分子アンサンブルによって生成される(実の)巨視的振動電界の位相から、この複素ラビ周波数、ひいてはエナンチオマーを決定することができる。
【0021】
図1に示すように、装置100はまた、「従来の」FTMW分子識別に使用することもできる。従来のFTMW技術は、混合物中の極性気相分子を識別することができるが、概して、どちらのエナンチオマーが存在するのかを区別することができない。純粋なR-X、純粋なS-Xまたはラセミ混合物からの信号は区別不可能であることができる。
【0022】
従来のFTMW分光法においては、分析対象ガスが、アンテナAからの直線偏波マイクロ波の短く強いマイクロ波パルスP
1に曝露される。いくつかの実施態様において、パルスP
1は実質的に単色性であるが、単色性からの逸脱もまた考慮される。パルスP
1は、マイクロ波シンセサイザ106によって生成され、切替え可能な増幅器108によって増幅される。マイクロ波シンセサイザ106および切替え可能な増幅器108に代えて、またはそれらと組み合わせて、別の偏波マイクロ波供給源または発振器を使用することもできる。このパルスの強度および周波数は、所与の状態|f>におけるR-XまたはS-Xいずれかの分子の集団が、状態|f>と接続状態|g>との重ね合わせの中に分子を駆動することによって部分的に偏波されるような強度および周波数である。すると、分子は周波数ν
fgで振動電界ε
1を発生させ、この電界が、アンテナAによって収集され、通常は位相敏感ヘテロダイン検波技術によって記録または他のやり方で処理される。この放射物はデコヒーレンス期間τ
decoh持続し、その後、分子は衝突によって再熱化され、実験を繰り返すことができる。従来のFTMW分光法において、τ
decohは一般に約10
-3〜10
-5秒の範囲で異なる。一般的な用途においては、より高い感度を達成するために、多数回の反復実験を平均化することができる。様々な|f>および|g>に許容される遷移ν
fgに対応する特徴的な周波数のセットで分子の各種が放射するため、分析対象分子を識別することができる。従来のFTMW分光法において、R-XおよびS-Xは概して同じ周波数で放射し、したがって区別することはできない。アンテナAに代えて、またはそれと組み合わせて、別のマイクロ波検波器、例えば位相敏感マイクロ波検波器を使用することもできる。
【0023】
エナンチオマー特異的検出のために、装置100は、P
1によって偏波される分子の体積104に印加される電界E
xをスイッチオンまたはオフするように構成されている。電界E
xは、パルスP
1の後(例えば終了後、ピーク後またはP
1の実質部分の後)かつ放射物が収集される期間の前にスイッチオンまたはオフされ;したがって、電界はデコヒーレンス期間τ
decohよりも高速で切り替えられるべきである。図示される態様において、E
xは、P
1の偏波に対して実質的に直交する。この電界の切替えが周波数ν
fgで第二の振動電界ε
2を誘起し、この第二の電界ε
2は、P
1およびE
xの両方に対して実質的に直交する。ε
2は、第二のアンテナ、すなわちアンテナBによって収集され、かつ記録されまたは他のやり方でε
1とともに処理される。ε
2の符号(または位相)および大きさが差し引かれて、エナンチオマー過剰の量的指標を提供する。R-Xによって誘起される電界ε
2の符号は、S-Xによって誘起されるε
2の符号とは実質的に反対である。言い換えるならば、電界ε
2の位相はR-XとS-Xとの間で約πラジアンだけシフトし、優勢なエナンチオマー(例えばエナンチオマー過剰の符号)を示す。誘起電界ε
2の大きさがエナンチオマー過剰の程度を示す。R-XとS-Xとが等しい量で存在する場合には、ε
2はゼロに近づく。電界E
xは、電圧供給源+HVによって印加され、制御装置110によって切り替えられる。電圧供給源+HVおよび制御装置110に代えて、またはそれらと組み合わせて、別の電界供給源または発生器を使用することができる。エナンチオマーR-XおよびS-Xは、低雑音増幅器(LNA)112に運ばれるy偏波マイクロ波を検波するように向けられているアンテナBからの位相敏感検波によって区別される。LNA112は、その直交偏波のせいで偏波パルスから切り離され、それが保護スイッチの必要性をなくすことができる。LNA112からの信号の処理は、ハードウェア、ソフトウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして具現化することができるアナライザ114によって実施される。アンテナBに代えて、またはそれと組み合わせて、別のマイクロ波検波器、例えば位相敏感マイクロ波検波器を使用することができる。
【0024】
いくつかの実施態様において、容積104は、Xが有意な蒸気圧(例えば10
-6トルまたは10
-6トル超)を有するような温度またはその付近に保持された蒸気セルに相当し、ガスは、この蒸気圧またはそれ以下の圧力にある弁を通して導入される。他の実施態様において、ガスは、室温未満の(例えば室温よりもずっと低い)温度(例えば約1〜10Kまたは約1〜5K)に冷却された分子の強いパルス化供給源を提供するシードされた超音速ジェットによって容積104(真空チャンバに相当する)に導入される。さらに他の実施態様において、容積104は、極低温またはその付近に保持されたバッファガスセルに相当し、分析対象物の気相試料が容積104の側面の開口を介して導入される。極低温バッファガスセルへの分析対象物の導入は、熱ビームを使用して実施することもできる。
【0025】
容積104中の分析対象物は、周波数
の成分を含むマイクロ波の短く強いパルスP
1に曝露され、|f>および|g>は、許容電気双極子遷移によって接続されたXの2つの回転状態であり、ν
fg=ω
fg/2πである。パルスP
1は、実質的にz軸に沿って直線偏波される。以下の説明において、この許容遷移はc型遷移であると仮定されるが、同様な分析がa型およびb型遷移にも当てはまる。このパルスの強度および周波数は、R-XまたはS-Xいずれかの|f>状態にある典型的な分子が近似のπ/2パルスを受けて、分子を以下の状態のままにしておくような強度および周波数である。
【0026】
上記式中、ω
1は通常、ω
fgに実質的に等しく設定される。誘起信号が減衰することができる前に、x軸に対して実質的に平行な(かつP
1に実質的に直交する)実質的に空間的に均一な電界が印加される。非ゼロμ
a、μ
b、およびμ
cのシステムにおいて、この電界は、状態|f>および|g>を、電気双極子遷移によってこれらの状態の両方に接続される他の状態と混合する。この混合状態によって放出された放射物は、y軸に沿って偏波される成分、すなわちε
2を含む。ε
2はμ
aμ
bμ
cに比例し、したがって、特定のエナンチオマーとともに符号を変える。所与の種の両エナンチオマーが等しい量で存在する場合には、ε
2は0に近づく。
【0027】
図2は、基底状態1-2プロパンジオールを例示的種として使用して、本開示の態様に関連する準位構造を示す。分子は、始め、外部電界がない絶対的回転基底状態|0
000>にある。約12,315MHzのz偏波π/2パルスがc型遷移によって分子を|0
000>と|1
100>との重ね合わせに置く。次いで、x方向の電界が印加され、それが、これらの状態をa型およびb型行列要素によって|1
11M>状態と混合して、先に禁じられていたy偏波放射物を許容する。|1
01M>多様体はまた、y偏波放射物に寄与することもできるが、いくつかの実施態様の場合、分析において省略することができる。
【0028】
図3および4は、キラル分子1-2プロパンジオールのエナンチオマー特異的検出のシミュレーションの結果を示す。シミュレーションは、約200V/cmの印加電界の場合、予想されるキラリティ依存y偏波信号が約12.32GHzの「従来の」z偏波自由誘導減衰信号よりも適度に小さい(例えば約8倍の小ささ)ことを示す。より高いJ値においては、接続される準位どうしがさらに離間し、したがって、DC電界によってより非効率的に混合されるため、エナンチオマー依存信号はさらに減少することができる。それにもかかわらず、キラル種の高感度エナンチオマー特異的識別の場合にそのような信号強度を容易に検出することができる。
【0029】
いくつかの実施態様において、偏波パルスP
1と検波期間との間で電界E
xがスイッチオンされる。そのような実施態様の例示的なタイミングシーケンスが
図3Aに示されている。他の実施態様において、電界E
xは、偏波パルスP
1と実質的に同時かつ検波期間の前にスイッチオンおよびオフされる。そのような実施態様の例示的なタイミングシーケンスが
図4Aに示されている。さらに他の実施態様において、電界E
xは偏波パルスP
1と検波期間との間でスイッチオフされる。
【0030】
図5Aは、1-2プロパンジオールを例示的種として使用して、本開示の別の態様に関連する準位構造を示し、
図5Bは、1-2プロパンジオールのエナンチオマー特異的検出のシミュレーションの結果を示す。
図5Aを参照すると、はじめに基底状態にある分子が、c型マイクロ波遷移によって|0
000>と|1
100>との重ね合わせで調製される。電界E
xの変化が|1
1111>および|1
111-1>の成分をμ
aに比例する複合位相と混合する。これらの混合状態と基底状態との間の許容電気双極子放射物がb型遷移によってy方向に振動電界を発生させる。この電界ε
yはμ
aμ
bμ
cに比例し、したがって、エナンチオマーとともに符号を変える。約6,431MHzの|1
01>状態(図示せず)との混合もまた、小さな量だけキラルシグナチャに寄与する。
【0031】
印加電界E
z(マイクロ波)およびE
xが
図5Bに示されている。E
zの周波数は、|0
00>⇒|1
10>c型遷移に対応する約12,212MHzである。
図5B中、この電界は、見やすくするために約30MHzにミックスダウンされている。同じく、経時変動性電界E
xの変化によって誘起される、各エナンチオマーに関するシミュレーション分子y偏波が示されている。誘起y偏波もまた、見やすくするために約30MHzにミックスダウンされた状態で示されている。誘起y偏波のエナンチオマー依存位相が明らかである。
【0032】
いくつかの実施態様において、電界E
xが偏波パルスP
1の前にスイッチオンされ、偏波パルスP
1が印加され、次いで偏波パルスP
1と検波期間との間に電界E
xがスイッチオフされる。そのような実施態様の例示的なタイミングシーケンスが
図5Bに示されている。
【0033】
いくつかの実施態様において、容積104は、
図1に示すような空洞ミラーまたは反射物116および118のセットによって形成されるマイクロ波空洞内に少なくとも部分的に画定または収容される。そのような実施態様において、空洞は、分子の共鳴周波数ν
fgが空洞の伝送モードに一致する、またはその範囲に入るようにチューニングすることができる。空洞は、周波数ν
fgで実質的に同一の空間波動関数および実質的に直交する偏波を有する2つのモードをサポートすることができる。いくつかの実施態様において、空洞は、T
00モードで励起されるファブリー・ペロー(Fabry-Perot)型空洞であることができる。いくつかの実施態様においては、空洞ミラー116および118のいずれかまたは両方を平行移動または傾斜させて、空洞を所望の共鳴にチューニングすることができる。空洞内で切り替えられる電界E
xの空間的均一さを高めるために電極のセットを含めることができる。
【0034】
上述したように、容積(分析対象ガスが導入される)は、極低温またはその付近に保持されるバッファガスセルとして具現化されることができる。
図6は、本開示の別の態様の、極低温バッファガス供給源602を備える装置600を示す。
図1の装置100と同様に、装置600は、FTMW分光器として構成されており、分析対象物供給源620からの分析対象物を導入することができる容積を画定する。装置600の特定の作動局面および構成部品は、
図1の装置100に関する説明と同様に具現化することができ、以下、これらの局面および構成部品に関するさらなる詳細を繰り返すことはしない。
【0035】
図6を参照すると、装置600は、より高温の分析対象ガスをより低温のバッファガスに混入し、それによって分光分析のための過飽和混合物を形成するように構成されている。いくつかの実施態様において、より高温の分析対象ガスは、第一の温度で、分析対象ガスがバッファガスと混合される容積に向けて推進される。バッファガスは、第一の温度よりも低い第二の温度で、容積に向けて推進される。このようにして、分析対象ガスの効率的な冷却を達成して、得られるスペクトルの簡素化および分析対象ガス中のキラル種のエナンチオマー特異的検出のための感度の改善をもたらすことができる。
【0036】
本開示の態様はまた、チャープパルスFTMW分光法の技術を拡張して、複数の混合物成分の特異的エナンチオマーを実質的に同時に検出し、かつ定量するための広帯域エナンチオマー選択的ケミカルアナライザを実現するように具現化することもできる。
図7は、本開示の別の態様の、チャープパルスFTMW分光法を実施するための装置700を示す。装置700の特定の作動局面および構成部品は、
図1および6の装置100および600に関する説明と同様に具現化することができ、以下、これらの局面および構成部品に関するさらなる詳細を繰り返すことはしない。
【0037】
図7を参照すると、チャープパルスFTMW分光器は、混合物のマイクロ波スペクトルの広帯域を励起し、記録するための高帯域幅シンセサイザおよびデジタイザを備えることができる。この技術を装置700において具現化するために、パルスP
1は、τ
decoh未満の持続期間および2つの周波数ν
1およびν
2の間でほぼフラットなスペクトル密度を有し、ν
1<ν
fg<ν
2であるような少なくとも1つの可能な分析対象成分の周波数ν
fgの少なくとも1つを有する広帯域チャープパルスである。
図1の装置100に対する装置700の変更は、広帯域単一または二重偏波入力ホーン704と、広帯域二重偏波出力ホーン706と、入力ホーン704を介してチャープパルスを生成するための、チャープパルスマイクロ波シンセサイザ708および切替え可能な電力増幅器710を含むマイクロ波発振器とを含む。出力ホーン706は、1対の偏波方向に沿って広帯域放出放射物を収集する。1つの偏波方向に沿って放出された放射物(例えばy偏波)は、位相敏感検波のためのLNA712に通して運ばれ、別の偏波方向に沿って放出された放射物(例えばz偏波)は、「従来の」FTMW識別のためのLNA714に通して運ばれる。容積702は、
図6に示すような空洞を有しないが、他の実施態様においては、相対的に低いフィネスを有する広帯域空洞を含めることができる。
【0038】
本開示の態様はまた、エナンチオマー依存二色FTMW分光法と呼ばれるFTMW分光法の拡張を実施するように具現化することもできる。
図8は、FTMW分光法のそのような拡張を実施するための装置800を示す。装置800の特定の作動局面および構成部品は、
図1、6、および7の装置100、600、および700に関する説明と同様に具現化することができ、以下、これらの局面および構成部品に関するさらなる詳細を繰り返すことはしない。
【0039】
図8を参照すると、垂直線は、実質的にz方向に沿って直線偏波されているマイクロ波パルスP
1の波面および実質的にx方向に沿って直線偏波されている別のマイクロ波パルスP
2の波面を示す。パルスP
1およびP
2は、任意の順序で印加されることもできるし、実質的に同時に印加されることもできる。収集されたパルスP
3は、実質的にy方向に沿って直線偏波され、下向きに放射する。ホーンAがパルスP
1およびP
2を実質的に直交偏波で伝送し、ホーンBが「従来の」FTMW放射物を異なる偏波で収集する。ホーンCが、P
1およびP
2両方に対して実質的に直交する誘起放射物を収集する。
【0040】
事実上、実質的に直交する偏波のマイクロ波パルスP
1およびP
2は、それぞれa型およびb型遷移において使用されると、重ね合わせで分子を調製することができ、それが、c型遷移を介して接続される準位を含む。その遷移で放出された放射物の電界はμ
aμ
bμ
cに比例し、したがって、エナンチオマー間で約±180°の位相シフトを示す。ラセミ混合物においては、反対のエナンチオマーからの放射物が実質的に相殺されることができ、c型遷移から放出された放射物はほとんどまたはまったくない。
【0041】
離調二色FTMW分光法の場合、より強いエナンチオマー依存信号を出すようにパルスシーケンスを最適化することができる。そのようなパルスシーケンスの例が
図9に示されている。このパルスシーケンスにおいては、以下の2つのガウス形パルスP
1およびP
2が印加される:低い方の周波数ν
1(
図9では約20MHz)のx偏波を有するパルス、および、ν
transが、分析中の分子における許容マイクロ波遷移の周波数である、高い方の周波数ν
2=ν
trans−ν
1のz偏波を有するパルス。高い方の周波数パルスP
2の振幅は、それがν
1/2またはそれ未満の周波数のラビ振動を誘起する、すなわち、x方向に沿って印加される電界の各振動内で分子がπ/2またはそれ未満の回転を受けるようにチューニングされる。
図9に示すキラル分子アラニノールの場合のシミュレーション結果から明らかであるように、このパルスシーケンスは、y方向のエナンチオマー依存誘起偏波の振幅を劇的に増すことができる。さらなる恩典として、このパルスシーケンスは、z方向の非エナンチオマー依存偏波を抑制することができる。z方向偏波における大きな振幅の振動は、ときには、直交偏波空洞モード間の結合による系統偏差を招く可能性がある。
【0042】
図9に示すパルスシーケンスに適した空洞は、実質的に類似した空間モード、実質的に直交の偏波およびわずかに異なる(例えば約ν
1異なる)共鳴周波数を有する2つの高品質係数モードを有することができる。そのような空洞は、ν
2におけるz偏波パルスおよびν
transにおける誘起y方向偏波が空洞によって共鳴的に増強されるように具現化することができる。そのような空洞は、指定された向きおよび指定された深さの溝またはスリットを1対のミラーの一方または両方に設けることによって具現化することができる。それに代えて、またはそれとともに、そのような空洞は、別のマイクロ波要素、例えば導波管スタブを偏波依存的に主空洞に弱く結合することによって具現化することができる。得られる空洞は、多数の他の望ましい性質、例えば直交偏波間の本質的にゼロのクロストークおよび直交モードの別々のアドレッシングを有することができる。
【0043】
二重共鳴二色FTMW分光法の場合、両パルス、すなわちz偏波を有するパルスおよびx偏波を有するパルスを、分子の共鳴で標的化することができ、それによってa型、b型およびc型遷移を直接アドレッシングすることが可能になる。x偏波パルスは、z偏波パルスに比較して低い周波数の軸方向無線周波数(RF)電界に対応することができる。いくつかの実施態様において、軸方向印加電界は、実質的に空間的に均一な電界が試料全体に印加されるのに十分な低さである。例えば、15cmセルを約1,000MHz以下の周波数の軸方向電界に供することができる。
【0044】
図10は、二重共鳴二色FTMW分光法に供することができる分子の準位構造を示す。A、B、およびCと呼ばれる3つの回転準位が関与している。記号ν
ABは、A⇒B遷移の周波数、すなわち式的には(E
A−E
B)/hを示す。
図10から、ν
AC=ν
AB+ν
BCであることが認められる。ここで、A、B、およびCは、E
A>E
B>E
Cである、すなわち準位が降順で記載されるように選択される。
【0045】
より具体的には、準位A、B、およびCは以下の条件に適合することができる。
(1)A⇒B、B⇒C、およびA⇒C遷移それぞれが許容電気双極子遷移に対応する。
(2)ν
ABまたはν
BCの一方が数MHz〜周波数ν
cutoffの間である。ν
cutoffは、波長c/ν
cutoff>2Lになるように選択され、Lは分光器の有効域のサイズである。例えば、Lが約15cmであるならば、ν
cutoffは約1,000MHzであることができる。
(3)他2つの遷移は、分光器によって駆動されて検波されるために適切な周波数である。最終的な信号強度はこの遷移強度に比例することができるため、望ましくは、これらの遷移の一方は強力である。
【0046】
準位A、B、およびCの適切な3つ組を有する分子は以下を示すことができる。
(1)分子中の最強の遷移の約4倍以内の強度を有する、約3GHz〜約18GHzの間の強い遷移。
(2)約5MHz〜約400MHzの間の妥当に強い遷移。
(3)適切な実験条件の場合で約10ワット未満の投射マイクロ波およびRFパワー。
【0047】
所与の3つ組においては、低周波遷移および高周波遷移の一方が駆動パルスに供される間、他方の高周波遷移における誘起放射物がモニタされる。いくつかの場合、
図10に示すように、これは、和周波数ν
3=ν
1+ν
2の誘起放射物を生じさせる。他の場合、誘起放射物は差周波数ν
3=ν
1−ν
2である。いくつかの態様においては、遷移の強度に基づいてこれらの式の一方または他方を選択することが有利であり、ν
3でモニタされる遷移が最強ラインに対応する。以下の実施例において、「ドライブ」とは、2つの高周波遷移の弱い方を指し、「ツイスト」とは、低周波遷移を指し、「リスン」とは、他方の(強い方の)高周波遷移を指す。[ベストの約0.xx]とは、従来のFTMW分光法において予想することができる最強信号に比較した予想信号の強度を示す。
【0048】
以下は広範囲のキラル分子に適した準位の3つ組の例である。いずれの場合も、「ドライブ」遷移は高周波遷移の一方であり、「ツイスト」遷移は低周波遷移(<400MHz)である。
【0049】
1-2プロパンジオール:
ドライブ|2 1 1>=>|2 2 1>c型、約14.796GHz
ツイスト|2 2 1>=>|2 2 0>a型、約0.100GHz
リスン|2 1 1>=>|2 2 0>b型、約14.896GHz、約3.89e-006の強度[ベストの約0.64]
【0050】
カルボン―エクアトリアル配座異性体2:
例1:
ドライブ|3 1 2>=>|3 2 2>c型、約4.630GHz
ツイスト|3 2 2>=>|4 1 3>b型、約0.462GHz
リスン|3 1 2>=>|4 1 3>a型、約5.091GHz、約4.14e-006の強度[ベストの約0.50]
例2:
ドライブ|6 1 5>=>|6 2 5>c型、約4.076GHz
ツイスト|6 2 5>=>|6 2 4>a型、約0.186GHz
リスン|6 1 5>=>|6 2 4>b型、約4.262GHz、約7.25e-006の強度[ベストの約0.88]
例3:
ドライブ|6 2 4>=>|6 3 4>c型、約7.960GHz
ツイスト|6 2 5>=>|6 2 4>a型、約0.186GHz
リスン|6 2 5>=>|6 3 4>b型、約8.146GHz、約6.03e-006の強度[ベストの約0.73]
【0051】
グリシドール:
例1:
ドライブ|1 0 1>=>|1 1 1>c型、約6.246GHz
ツイスト|1 1 1>=>|1 1 0>a型、約0.320GHz
リスン|1 0 1>=>|1 1 0>b型、約6.566GHz、約2.99e-006の強度[ベストの約0.84]
例2:
ドライブ|4 1 3>=>|4 2 3>c型、約17.638GHz
ツイスト|4 2 3>=>|4 2 2>a型、約0.179GHz
リスン|4 1 3>=>|4 2 2>b型、約17.817GHz、約2.78e-006の強度[ベストの約0.78]
【0052】
アラニノール-2:
例1:
ドライブ|2 1 1>=>|2 2 1>c型、約6.952GHz
ツイスト|2 2 1>=>|2 2 0>a型、約0.177GHz
リスン|2 1 1>=>|2 2 0>b型、約7.129GHz、約2.93e-006の強度[ベストの約0.32]
例2:
ドライブ|4 2 3>=>|4 3 1>c型、約14.309GHz
ツイスト|4 3 2>=>|4 3 1>a型、約0.170GHz
リスン|4 2 3>=>|4 3 2>b型、約14.139GHz、約2.94e-006の強度[ベストの約0.32]
【0053】
1,2ブタンジオール:
ドライブ|4 1 4>=>|4 2 2>c型、約16.319GHz
ツイスト|3 2 1>=>|4 1 4>b型、約0.290GHz
リスン|3 2 1>=>|4 2 2>a型、約16.609GHz、約4.07e-006の強度[ベストの約0.49]
【0054】
図11は、二重共鳴二色FTMW分光法のタイミングシミュレーションを示す。
図11の上パネルに示すように、z偏波パルスおよびx偏波パルスは連続的に印加されているが、これらのパルスは実質的に同時に印加されることもできる。また、両パルスの振幅を実質的に減らすこともできる。
【0055】
図12は、二重共鳴二色FTMW分光法を実施するための装置1200を示し、
図13は装置1200の駆動回路1300を示す。装置1200の特定の作動局面および構成部品は、
図1、6、7、および8の装置100、600、700、および800に関する説明と同様に具現化することができ、以下、これらの局面および構成部品に関するさらなる詳細を繰り返すことはしない。
【0056】
図12に示すように、空洞が装置1200から省略され、それにより、その設計の簡素化ならびに可動部品および精密機械加工部品の省略を可能にしている。マイクロ波は、二重偏波ホーンによって導入され、2つの偏波において検出されるが、他の実施態様においては、2つのホーンを含めることができる。マイクロ波はチャンバを横切り、球面ミラーによって反射されてホーンの中に戻される。マイクロ波は環状電極の中を通過する。電極および球面ミラーは高周波数RF電界に供されることができる。ミラーのキャパシタンスは、ボーダーラインキャパシタンスとして約10pFなどと低く設定することができる(約30オームのZ)。RF入力およびマイクロ波入力の両方の位相を適切に制御することができる。
【0057】
装置1200は、以下を含む数多くの利点を提供する。
(1)「従来の」非キラルFTMW分光法における最強ラインの約2倍の範囲内である高強度信号。
(2)コスト節約、信頼性の改善および放電に伴う問題の回避をもたらす、高電圧部品の省略。
(3)二重共鳴実験に関連する高い特異性。
(4)大きめのシステムの場合でさえ、控えめなパワーレベルで十分である。逆に、高RFパワーおよびマイクロ波パワーのいずれかまたは両方が使用可能である場合には、ゼロに近いμ
a、μ
b、およびμ
cの少なくとも1つを有する候補物質からの信号を分解することができる。これらの候補物質からのSN比はそれらの最高の双極子モーメント成分によって決まることができるが、一方、エネルギー収支は概ね最低の成分によって決まる。小さな双極子モーメント成分がより大きな駆動電界を指定し、また、短いデコヒーレンス時間もまた、より大きな駆動電界を指定する。例えば、約40ワットのRFまたはマイクロ波が、約0.1デバイのμ
a、μ
b、またはμ
cおよび約1μsのコヒーレンス時間を有する分子にとって十分な駆動遷移であることができる。
(5)複数対のRFパルスおよびマイクロ波パルスの同時印加を可能にするために並列化することができる。
【0058】
本開示の態様はまた、開口またはスリットアレイを介して実質的に直交する偏波の空洞モードへの結合を提供するように具現化することもできる。
図14は、本開示の別の態様の、FTMW分光法を実施するための装置1400を示す。装置1400の特定の作動局面および構成部品は、
図1、6、7、8、および12の装置100、600、700、800、および1200に関する説明と同様に具現化することができ、以下、これらの局面および構成部品に関するさらなる詳細を繰り返すことはしない。
【0059】
図14を参照すると、空洞が、実質的に直交する偏波のモードをサポートし、これらのモードは、ミラー(
図14ではミラー2と指定)に結合された導波管を介して別々にアドレッシングされ、かつミラー中に形成された開口(
図14ではAおよびBと指定)を介して空洞の中に結合されることができる。そのようなやり方の空洞中への結合は、過度な空洞の摂動なしで直交モード間の所望の分離を提供することができる。約60GHz未満または約12GHz〜約18GHzのような低めの周波数で作動する場合、導波管のいずれかまたは両方に代えて同軸ケーブを用いることができる。高めの周波数では、特定の実施態様の場合、導波管がより望ましいといえる。
【0060】
装置1400のさらなる変更は、印加電界の反転によって系統誤差を減らす技術に関する。エナンチオマー依存信号ε
yは、印加電界E
xの符号が反転すると、符号を変える。多くの系統誤差、例えば不均一な電界による位相シフトおよび公称的には直交するチャネル間のクロストークは、E
xの反対の符号どうしで実質的に同一である。印加電界E
xの実質的に等しく、かつ反対の符号でとられたトレースを減算することによってε
yの反転を用い、それにより、エナンチオマー依存信号を倍増しながらも系統誤差を相殺することができる。
【0061】
図14の態様において、系統誤差の相殺は以下のように進めることができる。ミラーに印加される電圧V
xの所与のプラス値の場合、偏波パルスP
1がV
mirror=V
xで印加されたのち一定の時間tでV
mirror=0に変更されて自由誘導減衰をもたらす条件下、誘起信号ε
yは測定される。この測定された信号をε
1(t)と指定することができる。次に、偏波パルスP
1がV
mirror=−V
xで印加されたのち同じ時間tでV
mirror=0に変更される条件下、ε
2(t)を測定する。次に、差信号ε
diff(t)=ε
1(t)−ε
2(t)の位相を計算する。ε
diff(t)の位相はエナンチオマーとともに変化し、かつε
1(t)またはε
2(t)のいずれかのみよりも系統誤差を受けにくい。この位相測定は示差的測定であることができる。すなわち、位相は、基準位相、例えばP
1の位相への比較によって測定される。
【0062】
図15は、本開示の別の態様の、FTMW分光法を実施するための装置1500を示す。装置1500の特定の作動局面および構成部品は、
図1、6、7、8、12、および14の装置100、600、700、800、1200、および1400に関する説明と同様に具現化することができ、以下、これらの局面および構成部品に関するさらなる詳細を繰り返すことはしない。
【0063】
図15を参照すると、マイクロ波域中の1対の偏波依存ミラー1503および1504が、相対的に長く細いスリットのアレイが1対のミラー1503および1504それぞれの中央部分に形成されるように具現化されている。スリットに対して実質的に平行に偏波されたマイクロ波は反射され、一方、スリットに対して実質的に垂直に偏波されたマイクロ波はわずかに伝送される。空洞モードの結合は、スリットのアレイ(
図11で1501および1502と指定)によって実施される。一方のミラー中のスリットは他方のミラー中のスリットに対して実質的に直交に向けられている。マイクロ波ホーン1505または1506がスリット1501および1502のアレイそれぞれの背後で結合されている。ホーン1505および1506は、スリットを通過する適切な偏波の放射物、すなわちスリットの長軸に対して実質的に直交する偏波を有する放射物を収集し、放出するように向けられている。スリットの厚さ、長さおよび幅が各直交偏波モードの品質係数Qを指定する。通常の作動において、Q
zおよびQ
yは実質的に等しく設定されることができるが、Q
zおよびQ
yはまた、異なるように設定されることもできる。両空洞モードは臨界結合または過結合されることができる。具体的には、空洞中のz偏波放射物の主要な損失機構はミラー1503中のy向きスリットのアレイを介することができ、空洞中のy偏波放射物の主要な損失機構はミラー1504中のz向きスリットのアレイを介することができる。スリット1501および1502のアレイの範囲は空洞のT
00モードとほぼ同じサイズであり、他方、ホーン1505および1506の出力開口は、スリット1501および1502のアレイとほぼ同じサイズであるように設定される。このサイズの合致が、空洞の空間モードとホーン1505および1506の出力モードとの間のモードマッチングを可能にする。このようなやり方で作動させることにより、各直交偏波モードの放射物を1対の結合された導波管または同軸ケーブルのそれぞれ1つに臨界結合することができる。
【0064】
スリットを通して伝送される大部分のマイクロ波はホーン1505および1506によって収集されることができるが、マイクロ波の一部は反射してミラー1503および1504に向けて戻される可能性がある。他方、これらの反射したマイクロ波の一部は空洞の中に再伝送されることができる。例えばミラー1503および1504ならびにホーン1505および1506の間に誘電体のシート(例えば
図15では1507によって指定する)を配置することにより、この反射分を増強することができる。ホーン1505および1506または誘電体シートから反射するマイクロ波は、ホーン1505および1506ならびに誘電体の形状寸法に依存する位相シフトをもって空洞に再び入るため、例えばミラー1503の背面とホーン1505との間の間隙Dの調節によるこの形状寸法のチューニングが偏波依存チューニングを生じさせることができる。このようなやり方の動作により、直交偏波モードの周波数および品質係数Qの別々のチューニングを達成することができる。そのような空洞は、二色エナンチオマー依存分光法のための空洞のチューニング可能な実施態様を代表することができる。
【0065】
空洞増強エナンチオマー特異的分光法の場合、偏波パルスの強度および得られる信号の両方を空洞の高い品質係数Qによって増強することができる。Q値は、空洞モードの周波数とそのモードの線幅との比率として指定することができる。Q値は通常、有意に高めることはできない。理由は、空洞が、線幅の逆数に比例する期間にわたり継続することができる「リングダウン」すると、通常、弱いマイクロ波信号が検出されるからである。いくつかの態様において、空洞は、「高Q値」と「低Q値」との間の迅速な切替えを可能にするように具現化することができる。そのようなQ値切替え空洞は、以下の順序にしたがって作動させることができる。
1.空洞を「高Q値」に設定し、マイクロ波パルスまたはパルスシーケンスを導入する。それが、分子試料中に振動双極子を誘起することができる。
2.試料中の分子を偏波させたのち短期間、空洞を「低Q値」に切り替える。この切替えが、振動する分子にはほとんどまたはまったく影響することなく、直前に導入されたマイクロ波パルスを効率的に減衰させることができる。
3.次に、空洞を「高Q値」に戻して、振動する分子から検出される信号を増強することができる。
【0066】
このようなQ切替え空洞は、通常は空洞のリングダウンに伴うむだ時間なしで、高Q値空洞の恩典(例えば高い偏波および高い感度)を提供することができる。Q値切替え空洞は、例えばアンテナ、開口またはスリットのアレイを介して空洞を同軸ケーブルに弱く結合し、その同軸ケーブルを、高速切替え可能なマイクロ波スイッチ、例えばpinダイオードに結合することによって具現化することができる。
【0067】
装置100、600、700、800、1200、1400、および1500は、少なくとも1対の校正技術の1つにしたがって校正することができる。1つの技術において、校正は、既知の量の純粋なR-XおよびS-Xを分光器に導入することによってエナンチオマーR-XおよびS-Xごとに実施される。かつ、未知の分析対象物からの信号を校正信号に比較することができる。別の技術においては、既知の量の1つまたは複数の純粋なキラル物質Уを分光器に導入する。キラル物質Уは、空洞およびマイクロ波成分の位相敏感応答を分光器の帯域幅の実質的部分(例えば実質的に帯域幅全体)で描き出すことができるような十分に高密度の回転スペクトルを有する。かつ、この応答関数およびXの計算上または既知の分子定数から、任意の種Xからのエナンチオマー依存応答を予測することができる。
【0068】
本開示の特定の態様は円二色性分光法とは異なる。円二色性分光法は通常、電気双極子遷移と、磁気双極子遷移または電気四極子遷移のいずれかとの間の干渉効果に依存する。これら弱めの遷移なしでは、通常、左円偏波光への分子の応答と右円偏波光への分子の応答とを区別することはできない。したがって、旋光効果は通常、一般にマイクロ波域の場合に当てはまるように、波長が分子のサイズよりも大きいまたはずっと大きい長い波長限界の中で消滅する。対照的に、いくつかの態様におけるFTMW分光法の拡張は、主として、または唯一、電気双極子遷移に基づくことができる。加えて、いくつかの態様の拡張は、パルスP
1のマイクロ波と分析対象分子との間の共鳴相互作用を含むことができる。この共鳴相互作用は、気相分子中の相対的に長いデコヒーレンス時間によって可能になる。対照的に、円二色性分光法は通常、非共鳴性であり、非常に短いデコヒーレンス時間を有する液体試料に対して実施される。
【0069】
前記には特定の態様が説明されているが、他の態様が本開示によって考慮され、包含される。例えば、Balle-Flygare型分光器に加えて、同軸配向ビーム共振装置(coaxially oriented beam-resonator arrangement)(COBRA)型分光器または共振器に適用されたStark効果のための同軸整列電極(coaxially aligned electrodes for Stark effect applied in resonator)(CAESAR)型分光器のような他のタイプの分光器を機能強化して、エナンチオマー特異的検出を提供することができる。FTMW分光器に加えて、分光器はまた、他のタイプの回転分光法、例えばマイクロ波・マイクロ波二重共鳴分光法、赤外・マイクロ波二重共鳴分光法またはマイクロ波・UV二重共鳴分光法を実施するように構成されることもできる。例えば、z方向の偏波マイクロ波パルスに代えてz偏波赤外レーザパルスを用いることもできる。エナンチオマーは、y偏波赤外自由誘導減衰の位相敏感ヘテロダイン検波によって検出することができる。それに代えて、またはそれとともに、検波動作の代わりに第二の位相制御y偏波赤外パルスの追加が一方のエナンチオマーを優先的に励起振動状態のままにしておくことができる。その後、この状態の分子を第三の光源によって光解離または他のやり方で選択的にアドレッシングして、元々はラセミの試料の正味のエナンチオ精製を得ることができる。
【実施例】
【0070】
当業者のために説明を示し、提供するために、以下の実施例が本開示のいくつかの態様の特定の局面を説明する。実施例は、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。実施例は、本開示のいくつかの態様を理解し、実施するのに有用な具体的方法を提供するだけである。
【0071】
1,2-プロパンジオールのキラリティのエナンチオマー特異的検出
本実施例においては、R-、S-およびラセミ1,2-プロパンジオールを使用して、エナンチオマー特異的検出技術を実証する。キラル1,2-プロパンジオールの2つのエナンチオマーが
図16に示されている。この分子は、関連する分子定数が十分に特性決定され、かつ、エナンチオピュアな形態で容易に入手可能(Sigma Aldrich)であるため、プロトタイプとして選択した。室温で、1,2-プロパンジオールのサイズまたはより大きな分子は、1つの回転準位から得られる信号を希釈する多数の量子状態を占有する(例えば、1,2プロパンジオールの場合、約5,000超の占有状態)。試料の冷却が占有状態の数を減らし、試料の共鳴偏波を増す。本実施例においては、参照により全体として本明細書に組み入れられるD. Patterson and J. M. Doyle, Molecular Physics 110, 1757(2012)に記載された技術を使用して分子ガスを冷却する。この冷却手法にしたがって、温かい分子を、閉サイクルパルス管冷凍機に熱的に固定された極低温バッファガスセルに注入して、分子を約7Kの温度に冷却する。
【0072】
実験装置の模式図が
図17に示されている。極低温セルの2つの壁は、分子を励起および検出するために使用されるチューナブル平凸ファブリー・ペローマイクロ波空洞を画定するミラーによって形成されている。空洞の横および縦の各空間モードが直交偏波の2つの(縮退)モードをサポートする。これらのモードは、平面ミラーに取り付けられ、開口を介して空洞に結合された導波管(
図17ではAおよびBと指定)を介して別々にアドレッシングすることができる。平面ミラーの電圧を高速で変化させることによって空洞軸に対して平行な経時変動性電界E
xを印加することができ(V
mirror=±500ボルト、E
x=±65V/cm)、この電圧は、高電圧スイッチによって約100nsの切替え時間で制御される。
【0073】
実験手順は次のとおりである。温かい(約300K)供給管から分子が実質的に連続的に極低温セルに入る。セルに入ると、分子は、低温ヘリウムバッファガスとの衝突によって冷め始める。分子がセルの中央領域に拡散するまでに分子は約7Kの回転温度に達している。低温分子は、セルの中を拡散する場合、低温セル壁に到達するまでの数ミリ秒間は気相のままであり、壁に到達したところで凍結する。得られる検出される信号は、主として、または実質的に唯一、低温気相分子から生じる。印加電界の実験手順はE
xの印加から始まる。その後、空洞は、E
z(t)=z-hat E
mwcos(ωt)の強い直線偏波マイクロ波電界で駆動される。励起周波数ωは、約12,212MHzの1,2-プロパンジオールの基底状態配座の|0
00>⇒|1
10>回転遷移にチューニングされる。E
zの最大の大きさおよびパルス長τ
pulseは、すべての分子に関して|Ω|τ
pulse≦π/2を出すように調節され、Ωはラビ周波数である。このマイクロ波パルスは、分子アンサンブル中にz方向の振動電気双極子偏波を誘起する。マイクロ波パルスの終了から約200ns後、電界E
xはゼロに設定される。E
xは、約200nsの範囲内で、つまり分子デコヒーレンス速度に比べて高速かつωに比べて低速で切り替えられる。E
xの変化が、振動分子双極子のかなりの部分を誘起してy偏波で放射させる。
【0074】
これらの実験条件下、キラリティ依存y偏波はz偏波の振幅の約10%を有する。エナンチオマー依存位相を有する誘起電界ε
yは増幅され、記録される。分子は、通常は約5μs後にヘリウム原子との衝突によって回転的に再熱化するまで、このようにして放射し続ける。これで1つの実験サイクルが完了し、実験サイクルは、E
xをオンに戻すことによって再び開始することができる。従来のFTMW分光法におけるように、空洞の別々の部分にある分子は、試料を偏波させるために使用された元の空洞モードの中に構成的に放射する。直交偏波を有するモードは実質的に同一の空間構造を共有するため、この特徴はここでも保持されている。キラリティ依存信号ε
yはE
XE
Zに比例する。検出されるマイクロ波電界におけるいくらかの系統偏差を相殺するために、等しくかつ反対のE
x値でとられたトレースを減算することにより、E
xによるε
yの符号の変化を用いる。
【0075】
図18は、1,2プロパンジオールのS-およびR-エナンチオマーならびにラセミ混合物の平均化信号を示す。各信号は、E
x=+65V/cmでとられたタイムトレースとE
x=−65V/cmでとられたタイムトレースとの差を表す。予想どおり、S-およびR-エナンチオマーは180°の位相シフトを示す。反対のエナンチオマーおよびラセミ混合物は異例に高い信頼性で分割される。ハミルトニアン積分計算(
図5に示す)は実験データとすばらしく一致している。誘起電界ε
yは、ε
y∝nT
5/2にしたがってスケーリングし、nは分子密度であり、Tは温度である。このスケーリングは、数ミリトルの適度な蒸気圧にあるキラル分子の室温ガスの同様なマイクロ波分析がエナンチオマー特異的分析に十分な感度を有し、それを次世代分析技術として特に魅力的なものにすることを示唆する。
【0076】
実験詳細:実験においては、セルへの約1.5×10
18個のヘリウム原子s
-1の流量が約10
14原子cm
-3のセル内推定ヘリウム密度を提供する。約5×10
17個の1,2プロパンジオール分子s
-1をセルに向けて噴霧する。セル内の1,2-プロパンジオール密度は、約10
12分子cm
-3であると推定される。約7kHzの実験繰返し率は、使用される高電圧スイッチの最大切替え周波数に基づく。この制限がなければ、またはE
xがゼロに設定された場合、率は、約200kHzの分子再熱化速度に基づく。印加電界E
xは±65V/cm(ミラー2上で±500ボルト)である。この高電圧は、Behlke HTS 151高電圧MOSFETスイッチを介して切り替えられる。偏波パルスは通常、持続期間が約200nsであり、最大マイクロ波電界E
zは、ラビ周波数Ωの測定から約0.5V/cmであると推定される。空洞をT
11(n=6)モードで作動させたが、別のモード(例えばT
00モード)を使用することもできる。空洞のミラー2を可撓性じゃばらに取り付け、軸方向に約1cm移動させて空洞をチューニングした。このチューニングは、回転フィードスルーを介して空洞の外側のノブに接続された3本の断熱性フレキシブルシャフトによって達成した。アルミニウム空洞は、約105の測定フィネス、約8.1cmの長さおよびその球面ミラー上の約22.5cmの曲率半径を有する。分子のための入力開口は約1.1cmの直径を有し、結合開口AおよびBは約0.8cmの直径を有する。開口AおよびBを介して接続される導波管は、約12GHz〜約18GHzで作動するWR-62である。ε
yは、空洞をリングダウンさせるために約2μs待ったのち検波される。信号は、真空チャンバのすぐ外で保護ダイオードまたはスイッチなしで接続されたLNA(Pasternack PE1524)によって増幅される。増幅された信号は、約20MHzまでミックスダウンされ、さらに増幅され、高速信号アベレージャ(Agilent U1084)によってデジタル化される。
図18中の各データ点は、140,000の平均、約20秒の実験時間および約1ミリグラムの1,2プロパンジオールを表す。
【0077】
本実施例において使用した分子定数は、回転定数の場合、A=8572.055MHz、B=3640.106MHzおよびC=2790.966MHzであり、双極子モーメント成分の場合、μ
a=1.201デバイ、μ
b=1.916デバイおよびμ
c=0.365デバイである。
【0078】
回転3波混合による高感度キラル分析
本実施例は、マイクロ波域におけるキラリティ誘起3波混合を実証する。バルク3波混合がキラル環境において実現され、エナンチオマー過剰の高感度種選択的プローブを提供する。使用される回転遷移は、3波混合を観察するために使用される狭い共鳴および二重共鳴条件を有し、キラル分子種の複雑な混合物内でさえ、きわめて選択的なエナンチオマー識別を提供する。この技術は、ここでは1,2-プロパンジオールにおいて実証されるが、1,3-ブタンジオール、カルボン、リモネンおよびアラニノールを含む広範なクラスのキラル分子におけるエナンチオマー過剰率を高感度で測定するために使用することができる。本実施例においては、周波数ν
1およびν
2の2つの直交共鳴印加電界を使用して和周波数ν
3=ν
1+ν
2の相互直交放射物を誘起することにより、3波混合の1種である和周波数生成を実証する。この誘起放射物の位相はエナンチオマーとともに符号を変え、この誘起放射物の振幅はエナンチオマー過剰率の高感度定量測定値をもたらす。
【0079】
周波数ν
1のz偏波電界E
zを使用してc型遷移を駆動し、周波数ν
2のx偏波電界E
xを使用してa型遷移を駆動する。これらのパルスがb型遷移から周波数ν
3=ν
1+ν
2のy偏波放射物ε
yを誘起する。弱パルス限界では、ε
yはμ
aμ
bμ
cに比例し、エナンチオマーとともに符号を変える。エナンチオピュアな試料の場合、|ε
y|の予想振幅は「従来の」FTMW分光法で生成される最大振幅電界に匹敵し、一方、ラセミ試料の場合、|ε
y|=0である。
【0080】
実験装置の模式図が
図19に示されている。共鳴電界E
zおよびE
xが2つの直交方向に印加され、一方、誘起放射物ε
yが第三の(y)直交方向に偏波される。E
zは、低温ガス試料中にマイクロ波のパルスをz偏波ホーンから球面ミラーに向けて放送することによって印加される。このミラーがマイクロ波を反射し、第二のy偏波ホーン上に再集束させる。入射マイクロ波と反射マイクロ波との組み合わせがE
zを形成する。ホーンの正面には電極があり、この電極を独立的に充電して、電極と球面ミラーとの間にx偏波電界E
xを発生させることができる。誘起電界ε
yはE
zとともに伝播し、第二のマイクロ波ホーンによって収集される。
【0081】
実験手順は次のとおりである。気相1,2-プロパンジオール分子(Sigma-Aldrich)の実質的に連続的な流れが、温かい供給管(約300K)から低温セル(約6K)に入る。分子は、低温ヘリウムバッファガスとの衝突によって冷める。低温分子は、低温セル壁へと拡散するまでの数ミリ秒間は気相のままであり、壁に拡散したところで凍結する。分子は、2つの実質的に同期の3μsec持続期間の電界パルスE
zおよびE
xに供される。E
zは周波数ν
1を有し、この周波数は、1,2-プロパンジオール中、約14,796MHzでの|2
11>→|2
21>の遷移を含め、約14,791から約14,799MHzへとチャープする。E
xは、|2
21>→|2
20>遷移にチューニングされた約100.5MHzの周波数ν
2を有し、強度|E
x|≒1.5V/cmを有する。パルスE
zおよびE
xの組み合わせが、はじめは|2
11>状態にある分子をエナンチオマー依存複素係数α
iによって重ね合わせ|Ψ>=α
1|2
11>+α
2|2
21>+α
3|2
20>へと共鳴的に駆動する。すべての外部電界がオフにされると、アンサンブルは非ゼロ偏波Pで3つすべての偏波方向に放射する。P
zはν
12で振動し、P
xはν
23で振動し、P
yはν
13で振動する。P
zおよびP
yに対応する誘起マイクロ波電界ε
zおよびε
yは、マイクロ波ホーンによって収集され、かつ増幅されて、それぞれ電圧V
zおよびV
yを生成する。
【0082】
V
zおよびV
yは位相反復可能な方法で記録される。このために、E
zは、約14,760MHzの周波数ν
S1の自走搬送波信号S
1を31〜39MHz位相反復可能なチャープC
1で単側波帯変調することによって生成され、それは他方で、直接デジタル合成によって生成され、かつデータ取得システムを位相安定的に起動するためにも使用される。E
xは、自励発振器S
2によって周波数ν
2で駆動される切替え増幅器によって生成される。V
zはS
1と混合されて、位相反復可能なエナンチオマー非依存信号V
1を約35.8MHzの周波数ν
12−ν
S1で生成し、一方、V
yは、S
1と混合されたのちS
2と混合されて、位相反復可能なエナンチオマー依存信号V
3を同じく約35.8MHzの周波数ν
13−ν
S1−ν
S2で生成する。ベースバンドチャープC
1の第一の立ち上がりエッジで起動される高速信号アベレージャ(Agilent U1084A)が信号をデジタル化し、平均化する。パルスシーケンス全体が約50KHzで繰り返され、多くのV
zおよびV
yトレースが蓄積され、平均化される。
【0083】
V
3の符号はエナンチオマー依存性である。ラセミ試料中、S-およびR-エナンチオマーからの誘起放射物は互いに反対であり、検出可能な信号は記録されない。非キラルバルク材料の場合に3波混合は厳密に禁じられるため、ラセミ混合物は通常、装置中の任意の幾何学的誤差にもかかわらず、和周波数ν
1+ν
2では放射しないことが注目されるべきである。ラセミ試料の場合のこのゼロバックグラウンドが本技術の利点を提供して、それを、わずかなエナンチオマー過剰を検出する際に特に高感度なものにする。
【0084】
図20は、1,2-プロパンジオールのS-エナンチオマー、R-エナンチオマーおよびラセミ混合物の放射信号を示す。予想どおり、信号はエナンチオマーとともに符号を変える。
図21は、調製した0.05エナンチオマー過剰率混合物およびラセミ試料の繰り返し測定を示す。2つの試料を容易に分割することができる。
【0085】
本開示の態様は、様々なコンピュータ具現化動作を実行するためのコンピュータコードをその上に有する非一時的コンピュータ読取り可能な記憶媒体に関する。「コンピュータ読取り可能な記憶媒体」という語とは、本明細書において、本明細書に記載される動作、方法および技術を実施するための一連の命令またはコンピュータコードを記憶またはコード化することができる任意の媒体を含むために使用される。媒介およびコンピュータコードは、本開示の態様のために特別に設計され、構成されたものであってもよいか、またはコンピュータソフトウェア分野の当業者には周知かつ使用可能な種類であってもよい。コンピュータ読取り可能な記憶媒体の例は、磁気媒体、例えばハードディスク、フロッピーディスクおよび磁気テープ;光学媒体、例えばCD-ROMおよびホログラフィック装置;磁気光学媒体、例えばフロプティカルディスク;ならびにプログラムコードを記憶し、実行するように特別に構成されたハードウェア装置、例えば特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブル論理装置(「PLD」)ならびにROMおよびRAM装置を含むが、それらに限定されなるわけではない。コンピュータコードの例は、コンパイラによって生成されるような機械コードおよびインタープリタまたはコンパイラを使用してコンピュータによって実行される高水準コードを含むファイルを含む。例えば、態様は、Java、C++または他のオブジェクト指向プログラミング言語および開発ツールを使用して具現化され得る。コンピュータコードのさらなる例は暗号化コードおよび圧縮コードを含む。そのうえ、態様は、遠隔コンピュータ(例えばサーバコンピュータ)から伝送チャネルを経由して要求側コンピュータ(例えばクライアントコンピュータまたは異なるサーバコンピュータ)に伝送され得るコンピュータプログラム製品としてダウンロードされ得る。別の態様は、機械実行可能なソフトウェア命令に代わる、またはそれと組み合わされるハードワイヤード回路として具現化され得る。
【0086】
具体的な態様を参照しながら本発明を説明したが、特許請求の範囲によって画定される本発明の精神および範囲を逸脱することなく、様々な変更を加え、均等物を置換し得ることが当業者に理解されよう。加えて、特定の状況、材料、組成物、方法または処理を本発明の目的、精神および範囲に適合させるために多くの修飾を加え得る。すべてのそのような修飾は、本明細書に続く特許請求の範囲内であると解釈される。特に、本明細書に開示される方法は、ある特定の順序で実施される特定の動作を参照して説明されたが、本発明の教示を逸脱することなく、これらの動作を組み合わせたり、再分したり、順序変更したりして均等な方法を形成し得ることが理解されよう。したがって、本明細書において具体的に示されない限り、動作の順序およびグループ分けは本発明の限定ではない。