特許第5969133号(P5969133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969133樹脂組成物ならびにそれを使用した銅張積層板およびプリント回路板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969133
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】樹脂組成物ならびにそれを使用した銅張積層板およびプリント回路板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/56 20060101AFI20160804BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160804BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20160804BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C08G59/56
   C08L63/00 C
   C08J5/24CFC
   H05K1/03 610L
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-532284(P2015-532284)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公表番号】特表2015-535865(P2015-535865A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】CN2013082192
(87)【国際公開番号】WO2015024256
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】515007925
【氏名又は名称】台光電子材料(昆山)有限公司
【氏名又は名称原語表記】ELITE ELECTRONIC MATERIAL (KUNSHAN) CO. LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 栄 涛
(72)【発明者】
【氏名】林 育 徳
(72)【発明者】
【氏名】田 文 君
(72)【発明者】
【氏名】馬 子 倩
(72)【発明者】
【氏名】呂 文 峰
(72)【発明者】
【氏名】賈 寧 寧
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−212269(JP,A)
【文献】 特表2013−521381(JP,A)
【文献】 特開2012−025925(JP,A)
【文献】 特開2012−171971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
C08L 63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)100重量部のエポキシ樹脂と、
(B)10〜80重量部のベンゾオキサジン樹脂と、
(C)10〜50重量部のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂と、
(D)0.5〜5重量部のアミン系硬化剤と
30〜70重量部の難燃剤とを含み、
ジアリルビスフェノールA(DABPA)を含まない、
樹脂組成物。
【請求項2】
前述ベンゾオキサジン樹脂:ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂:アミン系硬化剤の配合割合は、重量比率で、順に(10〜60):(15〜35):(0.5〜3)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前述ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂は、以下のような構造式の化合物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

ただし、nは1〜5の正整数で、Zは、-H、-CH3から選ばれる一つまたはその組合わせである。
【請求項4】
前述アミン系硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフィドおよびジシアンジアミドからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前述エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、ビスフェノールADエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、3官能団エポキシ樹脂、4官能団エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DOPOを含有するエポキシ樹脂、DOPO-HQを含有するエポキシ樹脂、p-キシレンエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ベンゾピラン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、イソシアネート改質エポキシ樹脂、フェノール・ベンズアルデヒドエポキシ樹脂およびフェノールアラルキルノボラックエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前述ベンゾオキサジン樹脂は、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミノジフェニルエーテル型ベンゾオキサジン樹脂およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
述難燃剤は、ビスフェノールジフェニルリン酸塩、ポリリン酸アンモニウム、ヒドロキノン-ビス(ジフェニルリン酸塩)、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルリン酸塩)、トリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン、トリ(イソプロピルクロリド)リン酸塩、トリメチルリン酸塩、ジメチル-メチルリン酸塩、レゾルジノールジキシレニルリン酸塩、ホスファゼン、m-ベンジルホスフィン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレートおよびトリ(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)、DOPO含有フェノール樹脂、エチル-ビス(テトラブロモフタルイミド)、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモベンゼン)および2,4,6-トリ(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジンから選ばれる無ハロゲン難燃剤およびハロゲン系難燃剤の少なくとも一つである、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、無機フィラー、硬化促進剤、シランカップリング剤、強化剤、溶媒の一つまたはその組合わせを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、プリプレグ。
【請求項10】
請求項9に記載のプリプレグを含む銅張積層板。
【請求項11】
請求項10に記載の銅張積層板を含むプリント回路板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、特に銅張積層板およびプリント回路板に使用される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
既存技術では、DICYをエポキシ樹脂の硬化剤として使用するが、Tgが低下し(DSC測定でTg=140℃)、基板PCTの耐熱性がよくない場合がある。
【0003】
既存技術では、ベンゾオキサジン(Benzoxazine、Bz)樹脂をエポキシ樹脂の硬化剤として使用するが、ベンゾオキサジン樹脂では、共硬化剤でベンゾオキサジンを開環させた後、エポキシ樹脂と架橋する必要がある。日立化成(CN1088727C)では、フェノールノボラック樹脂を用いてBz樹脂と協同作用させるが、フェノールノボラック樹脂を使用すると、誘電率特性が高くなりすぎるため(Dk:約4.4、Df:約0.014@2GHz)、低誘電率の銅張積層板としての要求に満足できない。
【0004】
既有技術では、銅張積層板の低誘電率特性(Dk≦4.1、Df≦0.01@2GHz)のため、通常、原料のコストが高価のシアネート樹脂を使用するが、シアネート樹脂は、原料コストがエポキシ樹脂の約8倍以上であるため、高いコストによって、製品の競争力が低い。
【0005】
以上のように、本分野で、シアネート樹脂を使用しなくても、低誘電率特性が実現でき、且つ基板の高耐熱特性を兼ね持つ樹脂組成物が欠けている。
【0006】
そのため、本分野で、シアネート樹脂を使用しなくても、低誘電率特性が実現でき、且つ基板の高耐熱特性を兼ね持つ樹脂組成物の開発が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第一の目的は、このコストの難題を克服するため、本発明は、シアネート樹脂を使用しなくても、低誘電率特性が実現でき且つ基板の高耐熱特性を兼ね持つ樹脂組成物を開示することにある。
【0008】
本発明の第二の目的は、本発明の樹脂組成物を使用したプリプレグを得ることにある。
本発明の第三の目的は、本発明の樹脂組成物を使用した銅張積層板を得ることにある。
【0009】
本発明の第四の目的は、本発明の樹脂組成物を使用したプリント回路板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一は、
(A)100重量部のエポキシ樹脂と、
(B)10〜80重量部のベンゾオキサジン樹脂と、
(C)10〜50重量部のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂と、
(D)0.5〜5重量部のアミン系硬化剤と、
を含む樹脂組成物を提供する。
【0011】
前述樹脂組成物には、ジアリルビスフェノールA(DABPA)が含まれない。
本発明の一つの具体的な実施形態において、前述ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂は、以下のような構造式の化合物から選ばれる。
【0012】
【化1】
【0013】
ただし、nは1〜5の正整数で、Zは、-H、-CH3から選ばれる一つまたはその組合わせである。
【0014】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前述アミン系硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフィドおよびジシアンジアミドからなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0015】
本発明の一つの好適な実施形態において、前述アミン系硬化剤は、ジシアンジアミド(dicy)である。
【0016】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前述エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、ビスフェノールADエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、3官能団エポキシ樹脂、4官能団エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DOPOを含有するエポキシ樹脂、DOPO-HQを含有するエポキシ樹脂、p-キシレンエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ベンゾピラン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、イソシアネート改質エポキシ樹脂、フェノール・ベンズアルデヒドエポキシ樹脂およびフェノールアラルキルノボラックエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0017】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前述ベンゾオキサジン樹脂は、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミノジフェニルエーテル型ベンゾオキサジン樹脂およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0018】
本発明の一つの具体的な実施形態において、さらに、30〜70重量部の難燃剤を含み、前述難燃剤は、ビスフェノールジフェニルリン酸塩、ポリリン酸アンモニウム、ヒドロキノン-ビス(ジフェニルリン酸塩)、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルリン酸塩)、トリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン、トリ(イソプロピルクロリド)リン酸塩、トリメチルリン酸塩、ジメチル-メチルリン酸塩、レゾルジノールジキシレニルリン酸塩、ホスファゼン、m-ベンジルホスフィン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレートおよびトリ(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)、DOPO含有フェノール樹脂、エチル-ビス(テトラブロモフタルイミド)、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモベンゼン)および2,4,6-トリ(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジンから選ばれる無ハロゲン難燃剤およびハロゲン系難燃剤の少なくとも一つである。
【0019】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前述難燃剤は、物理的混合または化学的方法によって成分(A)のエポキシ樹脂、または他の樹脂に架橋することができる。例えば、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)は、エポキシ樹脂に架橋し、DOPO含有エポキシ樹脂を形成することができる。
【0020】
本発明の第二は、本発明に係る樹脂組成物を含むプリプレグを提供する。
本発明の第三は、本発明に係るプリプレグを含む銅張積層板を提供する。
【0021】
本発明の第四は、本発明に係る銅張積層板を含むプリント回路板を提供する。
本発明の最良の実施形態
本発明者は、幅広く深く研究した結果、製造プロセスの改善によって、シアネート樹脂を使用しなくても、低誘電率特性が実現でき、且つ基板の高耐熱特性を兼ね持つ樹脂組成物を得たため、シアネートの使用量を減少し、ひいては使用せずに済む。これに基づき、本発明を完成させた。
【0022】
本発明は、コスト低下のため、シアネート樹脂を使用しなくても、低誘電率および高耐熱性の要求に満足できるが、本発明では、シアネート樹脂を配合から除外するわけではない。
【0023】
本発明において、用語の「含有」または「含む」は、各種の成分が一緒に本発明の混合物或いは組成物に用いられることを指す。そのため、用語の「主に〜からなる」と「〜からなる」は、用語の「含有」または「含む」に含まれる。
【0024】
本発明の発想は、以下の通りである。
本発明では、ベンゾオキサジン、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂およびアミン系硬化剤をエポキシ樹脂の硬化剤として使用し、且つジアリルビスフェノールAを含有せず、エポキシ樹脂と三種の硬化剤の協同作用によって、本発明の樹脂組成物に低誘電率および高基板耐熱性を与える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各方面について詳細に説明する。
概要
本発明は、
(A)100重量部のエポキシ樹脂と、
(B)10〜80重量部のベンゾオキサジン樹脂と、
(C)10〜50重量部のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂と、
(D)0.5〜5重量部のアミン系硬化剤と、
を含む樹脂組成物を提供する。
前述樹脂組成物には、ジアリルビスフェノールA(DABPA)が含まれない。
【0026】
本発明は、樹脂成分(A)のエポキシ樹脂と樹脂成分(B)のベンゾオキサジン樹脂、樹脂成分(C)のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂および樹脂成分(D)のアミン系硬化剤の間の協同作用を利用し、低誘電率特性および基板の高耐熱特性を兼ね持つ樹脂組成物を得る。前述樹脂成分には、ジアリルビスフェノールA(DABPA)が含まれない。そうではないと、基板の耐熱性(T288)が低下するおそれがある。
【0027】
樹脂成分(A):エポキシ樹脂
前述のように、本発明は、樹脂成分(A)のエポキシ樹脂、第一の硬化剤成分(B)のベンゾオキサジン樹脂、第二の硬化剤成分(C)のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂および第三の硬化剤成分(D)のアミン系硬化剤を樹脂成分とし、その協同作用を利用し、低誘電率特性および高基板耐熱性が実現する。
【0028】
通常のエポキシ樹脂は、一般的に、他の成分と協同作用するため、前述エポキシ樹脂に具体的な制限がなく、本発明の目的に支障が生じないものであればよい。
【0029】
本発明の樹脂組成物において、前述成分(A)のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA(bisphenol A)エポキシ樹脂、ビスフェノールF(bisphenol F)エポキシ樹脂、ビスフェノールS(bisphenol S)エポキシ樹脂、ビスフェノールAD(bisphenol AD)エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック(bisphenol A novolac)エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック(o-cresol novolac)エポキシ樹脂、3官能団(trifunctional)エポキシ樹脂、4官能団(tetrafunctional)エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型(dicyclopentadiene type、DCPD type)エポキシ樹脂、DOPOを含有するエポキシ樹脂、DOPO-HQを含有するエポキシ樹脂、p-キシレンエポキシ樹脂(p-xylene epoxy resin)、ナフタレン型エポキシ樹脂、ベンゾピラン(benzopyran)型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック(biphenyl novolac)エポキシ樹脂、イソシアネート改質(isocyanate modified)エポキシ樹脂、フェノール・ベンズアルデヒド(phenol benzaldehyde)エポキシ樹脂およびフェノールアラルキルノボラック(phenol aralkyl novolac)エポキシ樹脂の一つまたはその組合わせである。ここで、DOPOエポキシ樹脂は、DOPO-PNエポキシ樹脂、DOPO-CNEエポキシ樹脂、DOPO-BPNエポキシ樹脂でもよく、DOPO-HQエポキシ樹脂は、DOPO-HQ-PNエポキシ樹脂、DOPO-HQ-CNEエポキシ樹脂、DOPO-HQ-BPNエポキシ樹脂でもよい。
【0030】
第一の硬化剤:成分(B)のベンゾオキサジン樹脂
本発明は三種の硬化剤の間の協同を充分に利用する。具体的に、本発明の樹脂組成物において、前述成分(B)のベンゾオキサジン樹脂は、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミノジフェニルエーテル型ベンゾオキサジン樹脂およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂の一つまたはその組合わせである。より具体的に、好ましくは以下の一般式(1)〜(3)から選ばれる少なくとも一つである。
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
ただし、X及びXは、それぞれ独立にR又はAr又は-SO2-で、Rは、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-、-CH2-及び置換又は無置換のジシクロペンタジエニルから選ばれ、Arは、置換又は無置換のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フェノールアルデヒド、ビスフェノールA、ビスフェノールAフェノールアルデヒド、ビスフェノールF官能団から選ばれる。例えば、Huntsmanによって販売される商品名LZ-8270、LZ-8280、LZ-8290、MT 35700、MT 35800が挙げられる。
【0035】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前述ベンゾオキサジン樹脂は、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミノジフェニルエーテル型ベンゾオキサジン樹脂およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0036】
本発明の樹脂組成物において、100重量部のエポキシ樹脂に対して、10〜80重量部のベンゾオキサジンを添加する。この範囲で添加するベンゾオキサジン樹脂の含有量であれば、当該樹脂組成物を期待の低誘電損失値(Df)にできる。ベンゾオキサジン樹脂が10重量部未満であれば、期待の低誘電損失値にできず、80重量部を超えると、前述樹脂組成物で製造された基板は耐熱性が劣る。
【0037】
第二の硬化剤:成分(C)のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂
本発明の樹脂組成物において、100重量部のエポキシ樹脂に対して、10〜50重量部のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂を添加する。この範囲で添加するジシクロペンタジエン・フェノール樹脂の含有量であれば、当該樹脂組成物を期待の誘電率の値(Dk)にできる。ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂が10重量部未満であれば、期待の低誘電率値にできず、基板は耐熱性(T288、Tg)が劣る。50重量部を超えると、前述樹脂組成物で製造された基板はガラス転移温度(Tg)が低下する。
【0038】
本発明の樹脂組成物において、100重量部のエポキシ樹脂に対して、好ましくは10〜40重量部のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂を添加する。
【0039】
硬化剤成分におけるジアリルビスフェノールA(DABPA)の除外
前述硬化剤組成物には、ジアリルビスフェノールA(DABPA)が含まれない。
【0040】
発明者は、以前の実験において、エポキシ樹脂にジアリルビスフェノールA(DABPA)樹脂を添加すると、当該樹脂組成物は優れた架橋性に達し、且つTgおよび樹脂と銅箔のピール強度を向上させることを見出した。
【0041】
しかし、本発明者は、更なる実験において、意外に、前述ジアリルビスフェノールA(DABPA)を除外し、ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂だけ使用する場合、逆に基板の耐熱性(T288)の向上により有利であることを見出した。
【0042】
第三の硬化剤:成分(D)のアミン系硬化剤
本発明の樹脂組成物において、前述成分(D)のアミン系硬化剤は、官能団のアミノ基(amino)を有する樹脂、好ましくは官能団のジアミノ基(diamino)を有する樹脂である。より具体的に、前述アミン系硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン(diamino diphenyl sulfone)、ジアミノジフェニルメタン(diamino diphenyl methane)、ジアミノジフェニルエーテル(diamino diphenyl ether)、ジアミノジフェニルスルフィド(diamino diphenyl sulfide)、ジシアンジアミド(dicyandiamide、DICY)の一つまたはその組合わせでもよい。中でも、前述アミン系硬化剤は、好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-diamino diphenyl sulfone)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(4,4’-diamino diphenyl methane)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-diamino diphenyl ether)、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド(4,4’-diamino diphenyl sulfide)、ジシアンジアミド(dicyandiamide, DICY)の一つまたはその組合わせである。
【0043】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前述アミン系硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフィドおよびジシアンジアミドからなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0044】
好適な前述アミン系硬化剤は、ジシアンジアミド(dicy)である。
本発明の樹脂組成物において、100重量部のエポキシ樹脂に対して、0.5〜5重量部のアミン系硬化剤を添加する。この範囲で添加するアミン系硬化剤の含有量であれば、当該樹脂組成物の銅箔のピール強度値を向上させる。アミン系硬化剤が0.5重量部未満であれば、期待のピール強度にできず、5重量部を超えると、前述樹脂組成物で製造された基板は吸湿性が上昇し、基板PCT測定(銅基板を含まない圧力鍋蒸気加熱測定)で基板が剥離する(delamination, fail)。
【0045】
本発明の樹脂組成物において、100重量部のエポキシ樹脂に対して、好ましくは0.5〜3重量部のアミン系硬化剤を添加する。
【0046】
さらに、本発明の樹脂組成物において、100重量部のエポキシ樹脂に対して、より好ましくは0.5〜3重量部のジシアンジアミドを添加する。
【0047】
三つの成分の協同
三種の硬化剤成分の配合割合は以下の通りである。
【0048】
(B)10〜80重量部のベンゾオキサジン樹脂、
(C)10〜50重量部のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂、
(D)0.5〜5重量部のアミン系硬化剤。
【0049】
そのため、三種の成分の配合割合は、順に(10〜80):(10〜50):(0.5〜5)で、より優れた協同効果を得るため、好ましくはベンゾオキサジン樹脂:ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂:アミン系硬化剤は、10〜60:15〜35:0.5〜3である。
【0050】
前述のように、発明者は、前述ジアリルビスフェノールA(DABPA)を除外し、ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂だけ使用する場合、逆に前述基板の耐熱性(T288)がさらに向上することを見出した。
【0051】
さらに、本発明において、第三の硬化剤成分(D)のDICYと他の硬化剤の組合わせが好適に使用される。既存技術では、DICYをエポキシ樹脂の硬化剤として使用すると、Tgが低下し(DSC測定でTg=140℃)、基板PCTの耐熱性がよくないと言われている。本発明者は、第一の硬化剤成分(B)のベンゾオキサジン樹脂、第二の硬化剤成分(C)のジシクロペンタジエン・フェノール樹脂および第三の硬化剤成分(D)のDICYの協同作用によって、より優れた効果が得られることを見出した。本発明の実施例E13に示されるように、優れた効果が得られるが、DDSよりDICYを使用する場合の効果が良い。実施例7において、DICYが増加し、ピール強度も向上し、且つTgの要求に満足できた。比較例C14及び実施例E14から、前述ジアリルビスフェノールA(DABPA)を除外し、ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂だけ使用する場合、逆に前述銅含有基板の耐熱性(T288)がさらに向上したことがわかる。
【0052】
他の成分
本発明の一つの具体的な実施形態において、さらに30〜70重量部の難燃剤を含む。前述難燃剤は、ハロゲン系難燃剤、または無ハロゲン難燃剤から選ばれる。
【0053】
前述ハロゲン系難燃剤は、臭素系難燃剤でもよいが、特に限定されず、好ましくはエチル-ビス(テトラブロモフタルイミド)(例えばAlbemarleから購入のSAYTEX BT-93)、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモベンゼン)(例えばAlbemarleから購入のSAYTEX 8010)および2,4,6-トリ(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン(例えばICL Industrial社から購入のFR-245)から選ばれる少なくとも一つである。
【0054】
前述無ハロゲン難燃剤は、窒素含有難燃剤またはリン含有難燃剤を使用してもよいが、ビスフェノールジフェニルリン酸塩(bisphenol diphenyl phosphate)、ポリリン酸アンモニウム(ammonium poly phosphate)、ヒドロキノン-ビス(ジフェニルリン酸塩)(hydroquinone bis-(diphenyl phosphate))、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルリン酸塩)(bisphenol A bis-(diphenylphosphate))、トリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tri(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、トリ(イソプロピルクロリド)リン酸塩、トリメチルリン酸塩(trimethyl phosphate、TMP)、ジメチル-メチルリン酸塩(dimethyl methyl phosphonate, DMMP)、レゾルジノールジキシレニルリン酸塩(resorcinol bis(dixylenyl phosphate)、RDXP、例えばPX-200)、ホスファゼン(phosphazene、例えばSPB-100)、m-ベンジルホスフィン(m-phenylene methylphosphonate、PMP)、ポリリン酸メラミン(melamine polyphosphate)、メラミンシアヌレート(melamine cyanurate)及びトリ(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(tri-hydroxy ethyl isocyanurate)などの少なくとも一つを選択して添加してもよいが、これらに限定されない。また、無ハロゲン難燃剤は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(9,10-dihydro-9-oxa-10-phosphaphenanthrene-10-oxide、DOPO)、DOPO含有フェノール樹脂(例えばDOPO-HQ、DOPO-PN、DOPO-BPN)なども使用してもよく、ここで、DOPO-BPNは、DOPO-BPAN、DOPO-BPFN、DOPO-BPSNなどのビスフェノール-フェノールアルデヒド化合物であってもいい。
【0055】
本発明の樹脂組成物にいて、さらに、無機フィラー(filler)、硬化促進剤(curing accelerator)、シランカップリング剤(silane coupling agent)、強化剤(toughening agent)、溶媒(solvent)の一つまたはその組合わせを含んでもよい。
【0056】
本発明の樹脂組成物にさらに添加される無機フィラーの主な作用は、樹脂組成物の熱伝導性を向上させ、熱膨張性や機械的強度などの特性を改善することで、且つ無機フィラーは、均一に当該樹脂組成物に分布するため、好適である。中でも、無機フィラーは、シリカ(溶融状態、非溶融状態、多孔質または中空型)、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化アルミニウムケイ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、マイカ、ベーマイト(boehmite、AlOOH)、焼成タルク、タルク、窒化ケイ素、焼成カオリンを含む。また、無機フィラーは、球状、繊維状、板状、粒子状、シート状または髭状でもよく、必要によってシランカップリング剤で前処理してもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物において、100重量部のエポキシ樹脂に対して、10〜150重量部の無機フィラーを添加する。無機フィラーの含有量が10重量部未満の場合、顕著な熱伝導性がなく、且つ熱膨張性および機械的強度などの特性も改善されない。150重量部を超えると、当該樹脂組成物の穴埋めの流動性が劣り、PCBの穴あけプロセスにおけるドリルの摩耗が大きい。より具体的に、本発明の樹脂組成物において、好ましくは30〜70重量部の無機フィラーを添加する。
【0058】
本発明に係る硬化促進剤は、ルイス塩基またはルイス酸などの触媒(catalyst)を含んでもよい。ここで、ルイス塩基は、イミダゾール(imidazole)、トリフッ化ホウ素-アミン複合体、塩化エチルトリフェニルホスホニウム(ethyltriphenyl phosphonium chloride)、2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole、2MI)、2-フェニルイミダゾール(2-phenyl-1H-imidazole、2PZ)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2-ethyl-4-methylimidazole,、2E4MI)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine, TPP)および4-ジメチルアミノピリジン(4-dimethylaminopyridine、DMAP)の一つまたは複数種を含んでもよい。ルイス酸は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの金属塩系化合物、例えばオクタン酸亜鉛、オクタン酸コバルトなどの金属触媒である。
【0059】
本発明に係るシランカップリング剤は、シラン化合物(silane)とシロキサン化合物(siloxane)を含んでもよく、官能団の種類によって、アミノシラン化合物(amino silane)、アミノシロキサン化合物(amino siloxane)、エポキシシラン化合物(epoxy silane)およびエポキシシロキサン化合物(epoxy siloxane)に分かれる。
【0060】
本発明に係る強化剤は、ゴム(rubber)樹脂、カルボキシル基末端ブタジエンアクリルニトリルゴム(carboxyl-terminated butadiene acrylonitrile rubber、CTBN)、コアシェル型ゴム(core-shell rubber)等の添加物から選ばれる。
【0061】
本発明に係る溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、ブタノン(メチルエチルケトン)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、酢酸メトキシエチル、酢酸エトキシエチル、酢酸プロポキシエチル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールメチルエーテルなどの溶媒またはその混合溶媒から選ばれる。
【0062】
本発明に係る樹脂組成物は、さらに、ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether)樹脂、シアネート(cyanate ester)樹脂、イソシアネート(isocyanate ester)樹脂、マレイミド(maleimide)樹脂、ポリエステル(polyester)樹脂、スチレン(styrene)樹脂、ブタジエン(butadiene)樹脂、フェノキシ(phenoxy)樹脂、ポリアミド(polyamide)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂の一つまたはその組合わせを含んでもよい。
【0063】
プリプレグ
本発明は、本発明に係る組成物を含むプリプレグを提供する。
【0064】
本発明のもう一つの目的は、低誘導率、低誘電損失、耐熱や難燃などの特性を有するプリプレグ(prepreg)を開示することにある。これによって、本発明で開示されるプリプレグは、補強材と前述の樹脂組成物を含んでもよいが、当該樹脂組成物を含浸などの方法で当該補強材に付着させ、且つ高温加熱で半硬化状態とする。ここで、補強材は、繊維材料、織布および不織布、例えばガラス繊維布などでもよいが、当該プリプレグの機械的強度を向上させるものである。また、当該補強材は、必要によって、シランカップリング剤またはシロキサンカップリング剤で前処理してもよいが、例えばシランカップリング剤で前処理したガラス繊維布が挙げられる。
【0065】
前述のプリプレグは、高温加熱または高温・高圧での加熱で硬化して硬化フィルムまたは固体絶縁層を形成するが、樹脂組成物が溶媒を含むと、当該溶媒は高温加熱の中で発揮して除去される。
【0066】
銅張積層板
本発明は、本発明に係るプリプレグを含む銅張積層板を提供する。
【0067】
本発明のまた一つの目的は、低誘導率特性、耐熱性、難燃性などの特性を有し、且つ特に高速度で高周波数の信号を伝達する回路板に適する銅張積層板(copper clad laminate)を開示することにある。これによって、本発明は、2枚または2枚以上の銅箔と少なくとも一つの絶縁層とを含む銅張積層板を提供する。ここで、銅箔は、さらに銅とアルミニウム、ニッケル、白金、銀、金などの少なくとも1種との合金を含んでもよい。絶縁層は、前述のプリプレグを高温高圧で硬化させてなるもので、例えば前述プリプレグを2枚の銅箔の間に積層して高温と高圧で圧着してなるものが挙げられる。
【0068】
本発明に係る銅張積層板は、低誘電率と低誘電損失、優れた耐熱性および難燃性から選ばれた少なくとも一つの利点を有する。当該銅張積層板は、さらに回路制作などの加工をした後、回路板を形成することができ、且つ当該回路板を電子部材と接合して高温、高湿度などの過酷な環境で操作してもその品質に影響しない。
【0069】
プリント回路板
本発明は、本発明に係る銅張積層板を含むプリント回路板を提供する。
【0070】
本発明のまた一つの目的は、低誘導率特性、耐熱性や難燃性などの特性を有し、且つ特に高速度で高周波数の信号の伝達に適するプリント回路板(printed circuit board)を開示することにある。ここで、当該回路板は、少なくとも1枚の前述銅張積層板を含み、且つ当該回路板は、既知の制作方法で作られる。
【0071】
具体的な説明がない場合、本発明の各種の原料はすべて市販品として得られ、または本分野の通常の方法で製造される。特に定義や説明がない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、本分野の技術者に知られている意味と同様である。また、記載の内容と類似或いは同等の方法及び材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。
【0072】
本発明の他の主旨は、本文の公開される内容によって、この分野の技術者にとっては明らかになっている。
【実施例】
【0073】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、国家標準に従って測定する。相応の国家標準がない場合、汎用の国際標準、通常の条件、またはメーカーが推薦する条件で行われる。特に説明しない限り、すべての部は重量部で、すべての百分比は重量百分比で、前述の重合体の分子量は数平均分子量である。
【0074】
実施例1〜14および比較例1〜14
SEC-365:イソシアネート改質エポキシ樹脂、Shin-Aから購入。
【0075】
EXA-9900:ナフタレン環含有エポキシ樹脂、大日本インク化学(D.I.C.)から購入。
HP-7200H:ジシクロペンタジエン・フェノールエポキシ樹脂、大日本インク化学(D.I.C.)から購入。
【0076】
NC-3000:ビフェニルエポキシ樹脂、日本化薬(Nippon Kayaku)から購入。
LZ 8280:ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、Huntsmanから購入。
【0077】
MT 35700:ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、Huntsmanから購入。
MT 35800:フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、Huntsmanから購入。
【0078】
PF-3500:ジアミノジフェニルエーテル型ベンゾオキサジン樹脂、長春樹脂から購入。
PD-9110:ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂、長春プラスチック(Chang Chun Plastics)購入。
【0079】
Dicy:ジシアンジアミド、勤裕から購入。
DDS:4,4-ジアミノジフェニルスルホン、Atul LTDから購入。
【0080】
SPB-100:ホスファゼン化合物、大塚化学から購入。
XZ92741:リン含有難燃剤、ダウ・ケミカルから購入。
【0081】
PX-200:縮合リン酸エステル、大八化学から購入。
8010:エタン-1,2-ビス(ペンタブロモベンゼン)、Albemarleから購入。
【0082】
BT-93:エチル-ビス(テトラブロモフタルイミド)、Albemarleから購入。
Fused silica:溶融シリカ、Silicon から購入。
【0083】
2PZ:2-フェニルイミダゾール、四国化成から購入。
6020:アミノシラン、ダウコーニングから購入。
【0084】
前述実施例1〜14および比較例1〜14の配合は、以下の表1及び表2に示す。実施例のサンプルは、E1〜E14に、比較例のサンプルは、C1〜C14に示す。
【0085】
前述実施例1〜14及び比較例1〜14の樹脂組成物を、バッチで撹拌槽で均一に混合した後、含浸槽に置き、さらにガラス繊維布を前述含浸槽に通らせ、樹脂組成物をガラス繊維布に付着させ、さらに加熱で半硬化状態にしてプリプレグが得られた。
【0086】
前述バッチで得られたプリプレグを、同じバッチのプリプレグ4枚と18μmの銅箔2枚を取り、銅箔、4枚のプリプレグ、銅箔の順に積層し、さらに真空条件で200℃で2時間圧着して銅張積層板を形成し、4枚のプリプレグが硬化して2枚の銅箔の間の絶縁層となった。
【0087】
前述銅箔含有基板及び銅箔をそれぞれエッチングした銅を含有しない基板を物性量の測定に供し、物性量の測定項目は、ガラス転移温度(Tg、DSC示差走査熱量計、differential scanning calorimetry)、耐熱性T-288 (銅含有基板テスト、288℃で加熱されて剥離しない時間、熱機械分析装置(Thermomechanical analysis、TMA)によって銅含有基板の288℃における耐熱性を測定し、加熱されて剥離しない時間で耐熱性を評価し、長いほど優れる)、PCT (2atm/3時間) (銅を含有しない基板の圧力鍋蒸気加熱テスト、121℃で高圧で加熱して(pressure cooking at 121℃)3時間吸湿した後はんだ浸漬テストを行い、288℃のはんだ炉内ではんだ浸漬テストを行い、20秒で剥離の有無を観察する)、銅箔と基板のピール強度(peeling strength(剥離強度、テンシロン万能試験機で測定)、P/S、half ounce copper foil(0.5オンス銅箔)、銅箔と基板のピール強度が高いほど優れる)、銅含有基板のはんだ浸漬テスト(solder dip、S/D、288℃、10秒、耐熱回数を測定)、誘電率(dielectric constant、Dk、Dkが低いほど優れるが、AETマイクロ波誘電分析装置で銅を含有しない基板のDk値を測定)、誘電正接(dissipation factor、Df、Dfが低いほど優れるが、AETマイクロ波誘電分析装置で銅を含有しない基板のDf値を測定)、難燃テスト(flaming test、UL94、ここで、グレードの優劣はV-0 > V-1 > V-2の順である)を含む。それぞれ実施例1〜14の樹脂組成物の測定結果を表1に、比較例1〜14の樹脂組成物の測定結果を表2に示す。
【0088】
【表1-1】
【0089】
【表1-2】
【0090】
【表2-1】
【0091】
【表2-2】
【0092】
結論:
実施例1〜14では、ベンゾオキサジン、ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂およびアミン系硬化剤を併用し、基板を同時に耐熱(T288、Tg、S/D)、耐湿熱(PCT)、銅箔のピール強度(P/S)、低誘電率(Dk & Df)および難燃性の要求に満足させた。
【0093】
実施例E6とE7を比較すると、E7では、より多いdicyを使用し、銅箔のピール強度(P/S)を向上させた。
【0094】
比較例C1〜C2では、ジアリルビスフェノールA樹脂(DABPA)を使用したことで、基板の耐熱性が顕著に低下した(T288)。しかし、実施例E14では、ジアリルビスフェノールA樹脂(DABPA)を含有しなかったため、基板の耐熱性(T288)が比較例C14よりも顕著に優れた。
【0095】
比較例C3〜C13では、配合におけるいずれかの成分が本発明で限定された相応の含有量範囲から離れたため、C3〜C13は同時に耐熱(T288、Tg、S/D)、耐湿熱(PCT)、銅箔のピール強度(P/S)、低誘電率(Dk & Df)および難燃性の要求に満足することができなかった。
【0096】
以上の説明は本発明の好ましい実施例だけで、本発明の実質の技術内容の範囲を限定するものではなく、本発明の実質の技術内容は広義的に出願の請求の範囲に定義され、他の人が完成した技術実体或いは方法は、出願の請求の範囲に定義されたものとまったく同じものであれば、或いは効果が同等の変更であれば、いずれもその請求の範囲に含まれるとみなされる。
【0097】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。