(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は一実施形態に係るエレベータの乗車検知システムの構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0010】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にカメラ12のレンズ部分を乗場15側に向けて設置されている。カメラ12は、例えば車載カメラなどの小型の監視用カメラであり、広角レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続撮影可能である。乗りかご11が各階に到着して戸開したときに、乗場15の状態を乗りかご11内のかごドア13付近の状態を含めて撮影する。
【0011】
このときの撮影範囲はL1+L2に調整されている(L1≫L2)。L1は乗場側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて例えば3mである。L2はかご側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて例えば50cmである。なお、L1,L2は奥行き方向の範囲であり、幅方向(奥行き方向と直交する方向)の範囲については少なくとも乗りかご11の横幅より大きいものとする。
【0012】
なお、各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明において、かごドア13を戸開しているときには乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0013】
カメラ12によって撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、
図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0014】
ここで、画像処理装置20には、記憶部21と利用者検知部22が備えられている。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存すると共に、利用者検知部22の処理に必要なデータを一時的に保持しておくためのバッファエリアを有する。このバッファエリアの1つが足元位置履歴保持部21aである。利用者検知部22は、カメラ12によって撮影された時系列的に連続した複数枚の画像の中でかごドア13に最も近い人・物の動きに着目して乗車意思のある利用者の有無を検知する。この利用者検知部22を機能的に分けると、動き検知部22a、位置推定部22b、乗車意思推定部22cで構成される。
【0015】
動き検知部22aは、各画像の輝度をブロック単位で比較して人・物の動きを検知する。ここで言う「人・物の動き」とは、乗場15の人物や車椅子等の移動体の動きのことである。
【0016】
位置推定部22bは、動き検知部22aによって各画像毎に検知された動きありのブロックの中からかごドア13に最も近いブロックを抽出し、当該ブロックにおけるかごドア13の中心(ドア間口の中心)から乗場方向の座標位置(
図5に示すY座標)を利用者の位置(足元位置)として推定する。乗車意思推定部22cは、位置推定部22bによって推定された位置の時系列変化に基づいて当該利用者の乗車意思の有無を判定する。
【0017】
なお、これらの機能(動き検知部22a、位置推定部22b、乗車意思推定部22c)はカメラ12に設けられていても良いし、かご制御装置30に設けられていても良い。
【0018】
かご制御装置30は、図示せぬエレベータ制御装置に接続され、このエレベータ制御装置との間で乗場呼びやかご呼びなどの各種信号を送受信する。なお、「乗場呼び」とは、各階の乗場15に設置された図示せぬ乗場呼び釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、乗りかご11のかご室内に設けられた図示せぬ行先呼び釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、行き先階の情報を含む。
【0019】
また、かご制御装置30は、戸開閉制御部31を備える。戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。ただし、かごドア13の戸開中に画像処理装置20の利用者検知部22によって乗車意思のある人物が検知された場合には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する。
【0020】
次に、
図2乃至
図7を参照して本実施形態における乗車意思検知方法について説明する。
【0021】
図2はカメラ12によって撮影された画像の一例を示す図である。図中のE1は位置推定エリア、ynは利用者の足元位置が検知されたY座標を表している。
図3は撮影画像をブロック単位で区切った状態を示す図である。なお、原画像を一辺W
blockの格子状に区切ったものを「ブロック」と呼ぶ。
【0022】
カメラ12は乗りかご11の出入口上部に設置されている。したがって、乗りかご11が乗場15で戸開したときに、乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が撮影される。ここで、カメラ12を利用すると検知範囲が広がり、乗りかご11から少し離れた場所にいる利用者でも検知することができる。しかし、その一方で、乗りかご11に乗車しない人物を誤検知して、かごドア13を開いてしまう可能性がある。
【0023】
そこで、本システムでは、
図3に示すように、カメラ12で撮影した画像を一定サイズのブロックに区切り、人・物の動きがあるブロックを検知し、その動きありのブロックを追うことで乗車意思のある利用者であるか否かを判断する構成としている。
【0024】
なお、
図3の例では、ブロックの縦横の長さが同じであるが、縦と横の長さが異なっていても良い。また、画像全域にわたってブロックを均一な大きさとしても良いし、例えば画像上部ほど縦(Y方向)の長さを短くするなどの不均一な大きさにしても良い。これらにより、後に推定する足元位置をより高い分解能もしくは実空間での均一な分解能で求めることができる(画像上で均一に区切ると、実空間ではかごドア13から遠い方ほど疎な分解能となる)。
【0025】
図4は実空間での検知エリアを説明するための図である。
図5は実空間での座標系を説明するための図である。
【0026】
撮影画像から乗車意思のある利用者の動きを検知するため、まず、ブロック毎に動き検知エリアを設定しておく。具体的には、
図4に示すように、少なくとも位置推定エリアE1と乗車意思推定エリアE2を設定しておく。位置推定エリアE1は、乗場15からかごドア13に向かってくる利用者の身体の一部、具体的には利用者の足元位置を推定するエリアである。乗車意思推定エリアE2は、位置推定エリアE1で検知された利用者に乗車意思があるか否かを推定するエリアである。なお、乗車意思推定エリアE2は、上記位置推定エリアE1に含まれ、利用者の足元位置を推定するエリアでもある。すなわち、乗車意思推定エリアE2では、利用者の足元位置を推定すると共に当該利用者の乗車意思を推定する。
【0027】
実空間において、位置推定エリアE1はかごドア13の中心から乗場方向に向かってL3の距離を有し、例えば2mに設定されている(L3≦乗場側の撮影範囲L1)。位置推定エリアE1の横幅W1は、かごドア13の横幅W0以上の距離に設定されている。乗車意思推定エリアE2はかごドア13の中心から乗場方向に向かってL4の距離を有し、例えば1mに設定されている(L4≦L3)。乗車意思推定エリアE2の横幅W2は、かごドア13の横幅W0と略同じ距離に設定されている。
【0028】
なお、乗車意思推定エリアE2の横幅W2はW0よりも横幅が大きくても良い。また、乗車意思推定エリアE2は実空間で長方形ではなく、三方枠の死角を除く台形であっても良い。
【0029】
ここで、
図5に示すように、カメラ12は、乗りかご11の出入口に設けられたかごドア13と水平の方向をX軸、かごドア13の中心から乗場15の方向(かごドア13に対して垂直の方向)をY軸、乗りかご11の高さ方向をZ軸とした画像を撮影する。このカメラ12によって撮影された各画像において、
図4に示した位置推定エリアE1および乗車意思推定エリアE2の部分をブロック単位で比較することで、かごドア13の中心から乗場15の方向、つまりY軸方向に移動中の利用者の足元位置の動きを検知する。
【0030】
この様子を
図6および
図7に示す。
図6および
図7は画像比較による動き検知を説明するための図である。
図6は時間tで撮影された画像の一部、
図7は時間t+1で撮影された画像の一部を模式的に示している。
【0031】
図中のP1,P2は撮影画像上で動きありとして検知された利用者の画像部分であり、実際には画像比較により動きありとして検知されたブロックの集合体である。画像部分P1,P2の中でかごドア13に最も近い動きありのブロックBxを抽出し、そのブロックBxのY座標を追うことで乗車意思の有無を判定する。この場合、Y軸方向に点線で示すような等距離線(かごドア13と平行な等間隔の水平線)を引けば、ブロックBxとかごドア13とのY軸方向の距離が分かる。
【0032】
図6および
図7の例では、かごドア13に最も近い動きありのブロックBxの検知位置がy
n→y
n−1に変化しており、利用者がかごドア13に近づいてくることがわかる。
【0033】
次に、本システムの動作について詳しく説明する。
図8は本システムにおける全体の処理の流れを示すフローチャートである。
乗りかご11が任意の階の乗場15に到着すると(ステップS11のYes)、かご制御装置30は、かごドア13を戸開して乗りかご11に乗車する利用者を待つ(ステップS12)。
【0034】
このとき、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12によって乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら(ステップS13)、以下のような利用者検知処理をリアルタイムで実行する(ステップS14)。
【0035】
利用者検知処理は、画像処理装置20に備えられた利用者検知部22によって実行される。この利用者検知処理は、動き検知処理(ステップS14a)、位置推定処理(ステップS14b)、乗車意思推定処理(ステップS14c)に分けられる。
【0036】
(a)動き検知処理
図9は上記ステップS14aの動き検知処理を示すフローチャートである。この動き検知処理は、上記利用者検知部22の構成要素の1つである動き検知部22aで実行される。
【0037】
動き検知部22aは、記憶部21に保持された各画像を1枚ずつ読み出し、ブロック毎に平均輝度値を算出する(ステップA11)。その際、動き検知部22aは、初期値として最初の画像が入力されたときに算出されたブロック毎の平均輝度値を記憶部21内の図示せぬバッファエリアに保持しておくものとする(ステップA12)。
【0038】
2枚目以降の画像が得られると、動き検知部22aは、現在の画像のブロック毎の平均輝度値と上記バッファエリアに保持された1つ前の画像のブロック毎の平均輝度値とを比較する(ステップA13)。その結果、現在の画像の中で予め設定された値以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、動き検知部22aは、当該ブロックを動きありのブロックとして判定する(ステップA14)。
【0039】
現在の画像に対する動きの有無を判定すると、動き検知部22aは、当該画像のブロック毎の平均輝度値を次の画像との比較用として上記バッファエリアに保持する(ステップA15)。
【0040】
以後同様にして、動き検知部22aは、カメラ12によって撮影された各画像の輝度値を時系列順にブロック単位で比較しながら動きの有無を判定することを繰り返す。
【0041】
(b)位置推定処理
図10は上記ステップS14bの位置推定処理を示すフローチャートである。この位置推定処理は、上記利用者検知部22の構成要素の1つである位置推定部22bで実行される。
【0042】
位置推定部22bは、動き検知部22aの検知結果に基づいて現在の画像の中で動きありのブロックをチェックする(ステップB11)。その結果、
図4に示した位置推定エリアE1内に動きありのブロックが存在した場合、利用者検知部22は、その動きありのブロックのうち、かごドア13に最も近いブロックを抽出する(ステップB12)。
【0043】
ここで、
図1に示したように、カメラ12は乗りかご11の出入口上部に乗場15に向けて設置されている。したがって、利用者が乗場15からかごドア13に向かっていた場合には、その利用者の右または左の足元の部分が撮影画像の一番手前つまりかごドア13側のブロックに映っている可能性が高い。そこで、位置推定部22bは、かごドア13に最も近い動きありのブロックのY座標(かごドア13の中心から乗場15方向の座標)を利用者の足元位置のデータとして求め、記憶部21内の足元位置履歴保持部21aに保持する(ステップB13)。
【0044】
以後同様にして、位置推定部22bは、各画像毎にかごドア13に最も近い動きありのブロックのY座標を利用者の足元位置のデータとして求め、記憶部21内の足元位置履歴保持部21aに保持していく。なお、このような足元位置の推定処理は、位置推定エリアE1内だけでなく、乗車意思推定エリアE2内でも同様に行われている。
【0045】
(c)乗車意思推定処理
図11は上記ステップS14cの乗車意思推定処理を示すフローチャートである。この乗車意思推定処理は、上記利用者検知部22の構成要素の1つである乗車意思推定部22cで実行される。
【0046】
乗車意思推定部22cは、上記足元位置履歴保持部21aに保持された各画像の利用者の足元位置のデータを平滑化する(ステップC11)。なお、平滑化の方法としては、例えば平均値フィルタやカルマンフィルタなどの一般的に知られている方法を用いるものとし、ここではその詳しい説明を省略する。
【0047】
足元位置のデータを平滑化したとき、変化量が所定値以上のデータが存在した場合(ステップC12のYes)、乗車意思推定部22cは、そのデータを外れ値として除外する(ステップC13)。なお、上記所定値は、利用者の標準的な歩行速度と撮影画像のフレームレートによって決められている。また、足元位置のデータを平滑化する前に外れ値を見つけて除外しておくことでも良い。
【0048】
図12に足元位置の変化状態を示す。横軸が時間、縦軸が位置(Y座標値)を示している。利用者が乗場15からかごドア13に向かって歩いてくる場合、時間経過に伴い、利用者の足元位置のY座標値が徐々に小さくなる。
【0049】
なお、例えば車椅子等の移動体であれば点線で示すような直線的なデータ変化になるが、利用者の場合には左右の足元が交互に検知されるので、実線のように湾曲したデータ変化になる。また、検知結果に何らかのノイズが入り込むと、瞬間的な足元位置の変化量が大きくなる。このような変化量の大きい足元位置のデータは外れ値として除外しておく。
【0050】
ここで、乗車意思推定部22cは、
図2に示した乗車意思推定エリアE2内の足元位置の動き(データ変化)を確認する(ステップC14)。その結果、乗車意思推定エリアE2内でY軸方向へかごドア13に向かっている利用者の足元位置の動き(データ変化)を確認できた場合には(ステップC15のYes)、乗車意思推定部22cは、当該利用者に乗車意思ありと判断する(ステップC16)。
【0051】
一方、乗車意思推定エリアE2内でY軸方向にかごドア13に向かっている利用者の足元位置の動きを確認できなかった場合には(ステップC15のNo)、乗車意思推定部22cは、当該利用者に乗車意思なしと判断する(ステップC17)。
【0052】
このように、かごドア13に最も近い動きありのブロックを利用者の足元位置とみなし、その足元位置のY軸方向の時間的な変化を追跡することで利用者の乗車意思の有無を推定することができる。
【0053】
図8に戻って、乗車意思ありの利用者が検知されると(ステップS15のYes)、画像処理装置20からかご制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。かご制御装置30は、この利用者検知信号を受信することによりかごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(ステップS16)。
【0054】
詳しくは、かごドア13が全戸開状態になると、かご制御装置30は戸開時間のカウント動作を開始し、所定の時間T(例えば1分)分をカウントした時点で戸閉を行う。この間に乗車意思ありの利用者が検知され、利用者検知信号が送られてくると、かご制御装置30はカウント動作を停止してカウント値をクリアする。これにより、上記時間Tの間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。
【0055】
なお、この間に新たな乗車意思ありの利用者が検知されると、再度カウント値がクリアされ、上記時間Tの間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。ただし、上記時間Tの間に何度も利用者が来てしまうと、かごドア13をいつまでも戸閉できない状況が続いてしまうので、許容時間Tx(例えば3分)を設けておき、この許容時間Txを経過した場合にかごドア13を強制的に戸閉することが好ましい。
【0056】
上記時間T分のカウント動作が終了すると(ステップS17)、かご制御装置30はかごドア13を戸閉し、乗りかご11を目的階に向けて出発させる(ステップS18)。
【0057】
このように本実施形態によれば、乗りかご11の出入口上部に設置したカメラ12によって乗場15を撮影した画像を解析することにより、例えば乗りかご11から少し離れた場所からかごドア13に向かって来る利用者を検知して戸開閉動作に反映させることができる。
【0058】
また、上記実施形態では乗場15で乗りかご11のかごドア13が戸開している状態を想定して説明したが、かごドア13が戸閉中であっても、カメラ12によって撮影された画像を用いて乗車意思のある利用者の有無が検知される。乗車意思のある利用者が検知されると、かご制御装置30の戸開閉制御部31によってかごドア13の戸閉動作が中断され、再度戸開動作が行われる。
【0059】
以下に、
図13のフローチャートを参照して、戸閉中の処理動作について説明する。
乗りかご11のかごドア13が全戸開の状態から所定の時間が経過すると、戸開閉制御部31によって戸閉動作が開始される(ステップS21)。このとき、カメラ12の撮影動作は継続的に行われている。上記画像処理装置20は、このカメラ12によって撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら(ステップS22)、利用者検知処理をリアルタイムで実行する(ステップS23)。
【0060】
利用者検知処理は、画像処理装置20に備えられた利用者検知部22によって実行される。この利用者検知処理は、動き検知処理(ステップS23a)、位置推定処理(ステップS23b)、乗車意思推定処理(ステップS23c)に分けられる。なお、これらの処理は、
図8のステップS14a,S14b,S14cと同様であるため、その詳しい説明は省略する。
【0061】
ここで、乗車意思ありの利用者が検知されると(ステップS24のYes)、画像処理装置20からかご制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。かご制御装置30は、戸閉中に上記利用者検知信号を受信すると、かごドア13の戸閉動作を中断して再度戸開動作(リオープン)を行う(ステップS25)。
【0062】
以降は、
図8のステップS12に戻って上記同様の処理が繰り返される。ただし、戸閉中に乗車意思のある利用者が続けて検知されると、リオープンが繰り返され、乗りかご11の出発が遅れてしまう。したがって、乗車意思のある利用者を検知した場合でも、上述した許容時間Tx(例えば3分)が経過していれば、リオープンしないで戸閉することが好ましい。
【0063】
このように、戸閉中であっても乗車意思のある利用者の有無が検知され、当該検知結果を戸開閉動作に反映させることができる。したがって、利用者が戸閉途中の乗りかご11に乗ろうとしたときにドアにぶつかってしまうような事態を回避できる。
【0064】
なお、移動体が乗りかごの近くを通り過ぎた(乗場をX軸方向に横切った)だけにも関わらず、当該移動体に乗車意思があると誤って判断してしまうことを精度良く防ぐために、位置推定部22bは、
図10に示した位置推定処理に代えて、後述する位置推定処理を実行しても良い。以下では、まず、移動体が乗場をX軸方向に横切っただけにも関わらず、当該移動体に乗車意思があると誤って判断してしまう様子について説明する。
【0065】
図14乃至
図16は、移動体が乗場をX軸方向に横切った場合に、動き検知部22aによって動きありとして検知されたブロックの集合体を示す。
図14では時間tに撮影された画像の一部、
図15では時間t+1に撮影された画像の一部、
図16では時間t+2に撮影された画像の一部を模式的に示している。
【0066】
図14中のP3は、撮影画像上で動きありとして検知された移動体(ここでは人物)の右足の画像部分であり、
図15中のP4は、当該人物の左足の画像部分であり、
図16中のP5は、当該人物の右足の画像部分である。
図14および
図16に示すように、時間tおよび時間t+2の撮影画像上では、乗場をX軸方向に横切った人物の左足は動きありとして検知されない。これは、右足を進行方向(X軸正方向)に出すために左足を軸足とし、左足を動かしていないことに起因する。同様に、
図15に示すように、時間t+1の撮影画像上では、乗場をX軸方向に横切った人物の右足は動きありとして検知されない。これは、左足を進行方向(X軸正方向)に出すために右足を軸足とし、右足を動かしていないことに起因する。
【0067】
このため、時間tおよび時間t+2の撮影画像上からは、乗場をX軸方向に横切った人物の右足の画像部分P3の一部が、かごドア13に最も近い動きありのブロックBxとして抽出される。また、時間t+1の撮影画像上からは、乗場をX軸方向に横切った人物の左足の画像部分P4の一部が、かごドア13に最も近い動きありのブロックBxとして抽出される。
【0068】
この場合、Y軸方向に点線で示す等距離線によれば、かごドア13に最も近い動きありのブロックBxの検知位置は、時間tから時間t+2の間に、y
m→y
m+1→y
mと変化している。具体的には、かごドア13に最も近い動きありのブロックBxの検知位置は、
図17に示すように、y
m→y
m+1→y
m→…、のように繰り返し変化する。これによれば、利用者検知部22の乗車意思推定部22cは、人物が乗場をX軸方向に横切っただけにも関わらず、例えば時間t+1から時間t+2の間に、かごドア13に最も近い動きありのブロックBxの検知位置がY軸方向にかごドア13に向かっているので、当該人物に乗車意思があると誤って判断してしまう可能性がある。
【0069】
このような誤った判断を精度良く防ぐために、位置推定部22bは、
図10に示した位置推定処理に代えて、
図18に示す位置推定処理を実行する。なお、
図10に示す位置推定処理と同様な処理については同一の符号を付し、ここではその詳しい説明は省略する。
【0070】
ステップB12の後、位置推定部22bは、現在の撮影画像から所定フレーム前までの各撮影画像毎に求められた足元位置のデータ(履歴データ)を記憶部21内の足元位置履歴保持部21aから取得する(ステップB21)。
【0071】
位置推定部22bは、取得された所定フレーム前までの各足元位置のデータを参照して、現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標を補正するかどうかを決定する(ステップB22)。
【0072】
具体的には、位置推定部22bは、取得された所定フレーム前までの各足元位置のデータにより各々示されるかごドア13に最も近いブロックのY座標のうち、かごドア13に最も近いY座標(すなわち、最も小さいY座標)と、現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標とを比較することで、現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標を補正するかどうかを決定する。
【0073】
現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標を補正する場合、つまり、当該Y座標が、所定フレーム前までの足元位置のデータにより示されるY座標よりも大きい場合(ステップB22のYes)、位置推定部22bは、現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標を、所定フレーム前までの足元位置のデータにより示されるY座標に補正し、補正後のY座標を、現在の足元位置のデータとして、記憶部21内の足元位置履歴保持部21aに保持する(ステップB23)。
【0074】
一方、現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標を補正しない場合、つまり、当該Y座標が、所定フレーム前までの足元位置のデータにより示されるY座標よりも小さい場合(ステップB22のNo)、位置推定部22bは、現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標を、現在の足元位置のデータとして、記憶部21内の足元位置履歴保持部21aに保持する(ステップB24)。
【0075】
なお、上記所定フレームは、標準的な歩行周期と同程度の時間(例えば0.5秒)に相当するフレームまたは標準的な歩行周期よりも長い時間に相当するフレームに設定される。例えば、カメラ12が1秒間に30コマの画像を連続撮影可能である場合、上記所定フレームは15フレームに設定される。歩行周期とは、右足および左足の各々で1歩ずつ進むのに要する時間を示す。
図14乃至
図17によれば、時間tから時間t+2までの時間が歩行周期に相当する。
【0076】
ステップB23,B24の処理が実行されると、位置推定部22bはブロックB11に戻り、以降同様にして、人物の足元位置のデータを求め、これを記憶部21内の足元位置履歴保持部21aに保持していく。なお、足元位置履歴保持部21aは、上記所定フレーム前までの足元位置のデータを保持していれば良い。つまり、上記所定フレーム前より以前の足元位置のデータは、足元位置履歴保持部21aから適宜削除される。
【0077】
図18に示す位置推定処理によれば、
図15に示すように、右足を軸足とし、動かしていなかったとしても、時間t+1の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近い動きありのブロックBxのY座標y
m+1を、
図14に示す時間tの撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近い動きありのブロックBxのY座標y
mに補正することができる。このため、移動体が乗場をX軸方向に横切った場合のかごドア13に最も近い動きありのブロックBxの検知位置は、
図19の実線部分のように一定となる。つまり、移動体が乗場をX軸方向に横切ったとしても、乗車意思推定部22cによって、当該移動体に乗車意思があると誤って判断されてしまう可能性を低減させることができる。
【0078】
このように、位置推定部22bが現在の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近いブロックのY座標を、過去の足元位置のデータを参照して補正する機能をさらに有していることにより、乗車意思のある利用者だけを正しく高精度に検知して戸開閉動作に反映させることができる。
【0079】
なお上述では、移動体が乗場をX軸方向に横切る(すなわち、乗車意思がない人物を補正対象にした)場合を想定したが、移動体がかごドア13に向かう(すなわち、乗車意思がある利用者を補正対象にした)場合も同様に、
図18に示す位置推定処理により、かごドア13に最も近い動きありのブロックのY座標は補正される。具体的には、
図20に示すように、時間t+1の撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近い動きありのブロックのY座標y
l+1は、時間tの撮影画像から抽出されたかごドア13に最も近い動きありのブロックのY座標y
lに補正される。これによれば、移動体がかごドア13に向かう場合のかごドア13に最も近い動きありのブロックの検知位置は、
図20の実線部分のように階段状となる。
【0080】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、乗車意思のある利用者を広範囲に正確に検知してドアの開閉制御に反映させることのできるエレベータの乗車検知システムを提供することができる。
【0081】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータの乗車検知システムは、撮像手段、動き検知手段、位置推定手段、履歴保持手段、乗車意思推定手段及び制御手段を備えている。位置推定手段は、動き検知手段によって検知された動きありのブロックの中からドアに最も近いブロックを画像毎に抽出し、当該ブロックにおける上記ドアの中心から乗場方向の座標位置を人物の位置として推定する。履歴保持手段は、位置推定手段によって推定された人物の位置を示す位置データのうち、現在から所定時間前までの位置データを履歴データとして保持する。位置推定手段は、履歴保持手段に保持された履歴データを参照して、推定された人物の位置を補正するかどうかを決定する。