(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969168
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】床材の接合構造、その使用方法及びメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20160804BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20160804BHJP
E04F 15/04 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
E04F15/02 U
E04F15/02 G
E04F15/18 C
E04F15/04 601A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-27147(P2011-27147)
(22)【出願日】2011年2月10日
(65)【公開番号】特開2012-167439(P2012-167439A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100131901
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 雅典
(74)【代理人】
【識別番号】100132012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 嗣也
(74)【代理人】
【識別番号】100141276
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 康二
(74)【代理人】
【識別番号】100143409
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100157093
【弁理士】
【氏名又は名称】間脇 八蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(74)【代理人】
【識別番号】100163197
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100163588
【弁理士】
【氏名又は名称】岡澤 祥平
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真唯
【審査官】
森次 顕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−252247(JP,A)
【文献】
特開2008−239721(JP,A)
【文献】
特開2007−056640(JP,A)
【文献】
特開2010−007131(JP,A)
【文献】
特開2004−129611(JP,A)
【文献】
特開2007−321074(JP,A)
【文献】
特開2010−070477(JP,A)
【文献】
特開2009−046928(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3136542(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
E04F 15/04
E04F 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材同士を互いに接合するようにした床材の接合構造であって、
上記床材同士の互いの接合部には、該床材表面側に開口し、粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部が形成されており、
上記床材同士の互いの接合端面の上端部には、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、
上記溜まり部の内面には、アレルゲン低減剤を含む塗料が塗布されていることを特徴とする床材の接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の床材の接合構造において、
上記各床材の裏面には、クッション材が設けられていることを特徴とする床材の接合構造。
【請求項3】
床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造の使用方法であって、
上記接合部を振動させることを特徴とする床材の接合構造の使用方法。
【請求項4】
床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造のメンテナンス方法であって、
上記溜まり部にアレルゲン低減剤を含むワックスを供給することを特徴とする床材の接合構造のメンテナンス方法。
【請求項5】
床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造のメンテナンス方法であって、
上記溜まり部にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給することを特徴とする床材の接合構造のメンテナンス方法。
【請求項6】
床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造のメンテナンス方法であって、
上記溜まり部にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給することを特徴とする床材の接合構造のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材同士を互いに接合するようにした床材の接合構造、その使用方法及びメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダニや花粉などのアレルゲンは、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎等の要因となっており、社会的にも問題視されている。このようなアレルゲンを低減させる技術として、特許文献1〜3には、アレルゲンの低減機能が付与された床材(以下、単にアレルゲン低減床材という)が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1に開示のアレルゲン低減床材は、例えばフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子の抗アレルゲン剤(アレルゲン低減剤)を光硬化性塗料に溶解させ、床材トップコート用光硬化性塗料を得た後、この床材トップコート用光硬化性塗料を木質系床材に塗布することで得られる。特許文献2に開示のアレルゲン低減床材は、抗アレルゲン剤が担持された無機化合物を含有する硬化性樹脂組成物により形成された塗料を得た後、この塗料を木質板に塗布することで得られる。特許文献3に開示のアレルゲン低減床材は、抗アレルゲン剤が担持された無機化合物、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化型樹脂、1〜3個の(メタ)アクリロイル基を有するTg100℃以上のモノマー、及び1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素系モノマーを含有し、塗工環境温度における粘度が1500mPa・s以下である塗料を得た後、この塗料を木質板に塗布することで得られる。つまり、これらのアレルゲン低減床材では、床材の表面に抗アレルゲン剤を含む塗膜が形成される。このため、空気中のアレルゲンが床材表面に付着すると、このアレルゲンが塗膜中の抗アレルゲン剤によって不活性化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−239721号公報
【特許文献2】特開2010−173115号公報
【特許文献3】特開2010−174075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3のアレルゲン低減床材では、アレルゲンが床材表面に付着すると、このアレルゲンが不活性化される。逆に言えば、アレルゲンが床材表面に接触しないと、このアレルゲンは不活性化されないので、アレルゲンを確実且つ効率良く不活性化させることができないという問題がある。
【0006】
また、アレルゲンの低減機能は有限であるものが多く、この機能を持続させることが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、アレルゲンを確実且つ効率良く不活性化させることにある。また、アレルゲンの低減機能を持続させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、床材同士を互いに接合するようにした床材の接合構造であって、上記床材同士の互いの接合部には、該床材表面側に開口し、
粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部が形成されており、
上記床材同士の互いの接合端面の上端部には、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、上記溜まり部の内面には、アレルゲン低減剤を含む塗料が塗布されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、床材同士の互いの接合部に、床材表面側に開口し、アレルゲンを溜める溜まり部を形成している。この溜まり部は、床材表面よりも低い位置にあるのでアレルゲンが溜まりやすい。そして、アレルゲンが溜まった溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布しているので、そのアレルゲンは塗膜中のアレルゲン低減剤と接触する。このため、アレルゲンを確実且つ効率良く不活性化させることができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記各床材の裏面には、クッション材が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、各床材の裏面にクッション材を設けているので、人間が床材の上を歩行すると、床材のうち人間の足で踏んでいる部分と踏んでいない部分との間で大きな撓みが発生する。これにより、溜まり部に溜まったアレルゲンが溜まり部内を大きく移動し、そのアレルゲンは塗膜中のアレルゲン低減剤とより接触しやすくなる。このため、アレルゲンをより確実且つ効率良く不活性化させることができる。
【0012】
第3の発明は、床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、
粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、
上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造の使用方法であって、上記接合部を振動させることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、接合部を振動させるので、溜まり部に溜まったアレルゲンが溜まり部内を移動し、そのアレルゲンは塗膜中のアレルゲン低減剤とより接触しやすくなる。このため、アレルゲンをより確実且つ効率良く不活性化することができる。
【0014】
第4の発明は、床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、
粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、
上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造のメンテナンス方法であって、上記溜まり部にアレルゲン低減剤を含むワックスを供給することを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、溜まり部にアレルゲン低減剤を含むワックスを供給すると、このワックスは、粘度が高いので溜まり部全体に広がり、ワックスに含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部内面全体に固着され、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能が再生される。このため、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能を持続させることができる。
【0016】
第5の発明は、床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、
粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、
上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造のメンテナンス方法であって、上記溜まり部にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給することを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給すると、この水溶液が溜まり部に速やかに浸透し、水溶液に含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部内面に直ちに固着され、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能が即座に再生される。このため、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能を持続させることができる。
【0018】
また、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給すると、アレルゲンは水に溶けやすいので、水溶液に、溜まり部に溜まった不活性化されていないアレルゲンが溶け、このアレルゲンが水溶液に含まれるアレルゲン低減剤と接触し、アレルゲンがより確実且つ効率良く不活性化される。
【0019】
第6の発明は、床材同士を互いに接合し、該床材同士の互いの接合部に、該床材表面側に開口し、
粒子状のアレルゲンを溜める溜まり部を形成し、
上記床材同士の互いの接合端面の上端部に、上側に行くに従って該接合端面とは反対側に向かって傾斜する傾斜面を形成し、該溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布するようにした床材の接合構造のメンテナンス方法であって、上記溜まり部にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給することを特徴とするものである。
【0020】
これによれば、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給すると、この揮発性溶液は揮発性があるので、揮発性溶液が溜まり部に速やかに浸透して揮発し、揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤が直ちに乾燥する。これにより、揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部内面にすぐに固着され、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能が即座に再生される。このため、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能を持続させることができる。
【0021】
また、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給すると、溜まり部に溜まった不活性化されていないアレルゲンがその揮発性溶液によって不活性化が促進され、さらに、そのアレルゲンが揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤と接触する。このため、アレルゲンをより確実且つ効率良く不活性化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、床材同士の互いの接合部に、床材表面側に開口し、アレルゲンを溜める溜まり部を形成しており、この溜まり部は、床材表面よりも低い位置にあるのでアレルゲンが溜まりやすく、そして、アレルゲンが溜まった溜まり部の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布しているので、そのアレルゲンは塗膜中のアレルゲン低減剤と接触するため、アレルゲンを確実且つ効率良く不活性化させることができる。
【0023】
また、別の発明によれば、接合部を振動させるので、溜まり部に溜まったアレルゲンが溜まり部内を移動し、そのアレルゲンは塗膜中のアレルゲン低減剤とより接触しやすくなるため、アレルゲンをより確実且つ効率良く不活性化することができる。
【0024】
また、別の発明によれば、溜まり部にアレルゲン低減剤を含むワックスを供給すると、このワックスは、粘度が高いので溜まり部全体に広がり、ワックスに含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部内面全体に固着され、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能が再生されるため、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能を持続させることができる。
【0025】
また、別の発明によれば、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給すると、この水溶液が溜まり部に速やかに浸透し、水溶液に含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部内面に直ちに固着され、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能が即座に再生されるため、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能を持続させることができる。
【0026】
さらに、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給すると、アレルゲンは水に溶けやすいので、水溶液に、溜まり部に溜まった不活性化されていないアレルゲンが溶け、このアレルゲンが水溶液に含まれるアレルゲン低減剤と接触し、アレルゲンがより確実且つ効率良く不活性化される。
【0027】
また、別の発明によれば、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給すると、この揮発性溶液は揮発性があるので、揮発性溶液が溜まり部に速やかに浸透して揮発し、揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤が直ちに乾燥することにより、揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部内面にすぐに固着され、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能が即座に再生されるため、溜まり部におけるアレルゲンの低減機能を持続させることができる。
【0028】
さらに、溜まり部にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給すると、溜まり部に溜まった不活性化されていないアレルゲンがその揮発性溶液によって不活性化が促進され、さらに、そのアレルゲンが揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤と接触するため、アレルゲンをより確実且つ効率良く不活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る床材の接合構造を示す概略断面図であり、左図は全体図、右図は左図の要部拡大図である。
【
図2】床材同士を互いに接合する前の状態を示す概略断面図である。
【
図3】床材の接合構造の溜まり部にアレルゲン低減剤を含むワックス、アレルゲン低減剤を含む水溶液又はアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給する場合の様子を示す概略断面図であり、(a)は供給前の図、(b)は供給後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
(床材の接合構造の構成)
本発明の実施形態に係る床材の接合構造は、室内空間に設置され、
図1に示すように、床材1,1同士を互いに接合するようにしたものである。床材1は、合板やMDF、ハードボード、パーティクルボード、単板積層材などの単体又はこれらの複合板からなる木質系基材からなる矩形状や雁行形状のものである。
図1(a)及び
図2に示すように、本実施形態では、床材1の互いに平行な端面には、断面略コ字状の雌実10とこの雌実10に嵌合可能な雄実11とが施されており、隣接する床材1,1の雌実10と雄実11とを嵌合させることにより、床材1,1同士は互いに接合されている。尚、床材1,1同士は、所謂、合じゃくりなどにより互いに接合されても良い。
【0032】
図1に示すように、床材1,1同士の互いの接合部2には、床材1表面(上面)側に(上側に向かって)開口し、ダニや花粉などの粒子状のアレルゲンaを溜める孔状の溜まり部20が形成されている。この溜まり部20は、本実施形態では、床材1,1同士の互いの接合端面21,21の間に形成された断面略ハット状の狭小な隙間部であり、床材1裏面(下面)側にも(下側に向かっても)開口しており、各接合端面21の上端部に、上側に行くに従って該接合端面21とは反対側に向かって傾斜する傾斜面21aが形成されている。このように接合端面21に傾斜面21aを形成すると、溜まり部20の上側開口部20aが大きくなり、この大きな開口部20aによりアレルゲンaは溜まり部20に進入しやすくなる。
【0033】
溜まり部20の内面には、アレルゲン低減剤を含む塗料が予め塗布固着されることにより、アレルゲン低減剤を含む塗膜3,3が形成されている。塗料は、例えば、紫外線硬化樹脂を主成分としている。塗料は、本実施形態では、床材1,1同士の互いの接合端面21,21の両面のうち傾斜面21a以外のほぼ全面に塗布されている。尚、塗料は、両接合端面21,21のうちいずれか一方の面のみに塗布されても良いし、また、両接合端面21,21のうち上側垂直面21b,21bのみに塗布されても良いし、両接合端面21,21のうち雌実10と雄実11との嵌合部部分のみに塗布されても良い。塗料は、床材
1,1同士を互いに接合する前において、例えばロールコーターやフローコーター、刷毛などを用いて塗布される。
【0034】
アレルゲン低減剤は、略球形状の固形粒子状の材料あるいは水溶液の材料で構成されている。尚、アレルゲン低減剤の形状は、球形状以外にも、例えば円柱形や楕円形等、他の形状を採用することもできる。
【0035】
アレルゲン低減剤として、ポリフェノールやタンパク質分解酵素、尿素等の有機化合物、イオン官能基を付与した微粒子、無機塩を配合した化合物などがある。
【0036】
アレルゲン低減剤は、そのまま用いても良いし、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などに混合して用いても良い。また、アレルゲン低減剤は、単一種類で使用しても良いし、複数種類を組み合わせても良い。使用されるアレルゲン低減剤は、低減対象とされるアレルゲンaに応じて適宜選択すれば良い。
【0037】
また、各床材1の裏面全面には、不織布や発泡樹脂板、ゴム板等の弾性シートなどからなるクッション材4が粘着されている。
【0038】
(床材の接合構造の作用と使用方法)
以下、上述の如く構成された床材1の接合構造の作用と使用方法について説明する。
【0039】
室内空間に存在するアレルゲンaは、
図1(a)に示すように、床材1表面に付着したり、溜まり部20に進入して溜まったりする。この溜まり部20は、床材1表面よりも低い位置にあるのでアレルゲンaが溜まりやすい。そして、アレルゲンaが溜まった溜まり部20の内面に、アレルゲン低減剤を含む塗料を塗布しているので、そのアレルゲンaは塗膜3,3中のアレルゲン低減剤と接触反応し、アレルゲンaが確実且つ効率良く不活性化される。さらに、溜まり部20は、接合部2に生じた狭小な隙間部であるので、溜まり部20に溜まったアレルゲンaが塗膜3,3中のアレルゲン低減剤と密着し、そのアレルゲンaは塗膜3,3中のアレルゲン低減剤とより接触反応しやすくなり、アレルゲンaがより確実且つ効率良く不活性化される。また、アレルゲン低減剤を含む塗料を接合端面21,21の両面のほぼ全面に塗布しているので、アレルゲンaの、塗膜3,3中のアレルゲン低減剤との接触面積が大きくなり(具体的には、その接触面積が、床材1表面にアレルゲン低減剤を含む塗膜を形成した場合におけるその表面に付着したアレルゲンaの、その塗膜中のアレルゲン低減剤との接触面積の約2倍になる(
図1(a)に示す床材1表面に付着したアレルゲンaを参照))、アレルゲンaがより確実且つ効率良く不活性化される。
【0040】
ところで、人間が床材1の上を歩行すると、床材1が上下だけでなく左右にも振動し、これに伴って、接合部2も上下左右に振動する。これにより、溜まり部20に溜まったアレルゲンaが溜まり部20内を撹拌移動し、そのアレルゲンaは塗膜3,3中のアレルゲン低減剤と接触反応しやすくなり、アレルゲンaがより確実且つ効率良く不活性化される。また、各床材1の裏面にクッション材4を設けているので、人間が床材1の上を歩行すると、床材1のうち人間の足で踏んでいる部分と踏んでいない部分との間で大きな撓みが発生する。これにより、溜まり部20に溜まったアレルゲンaの溜まり部20内での移動量が大きくなり、そのアレルゲンaは塗膜3,3中のアレルゲン低減剤とより接触反応しやすくなり、アレルゲンaがより確実且つ効率良く不活性化される。
【0041】
(床材の接合構造のメンテナンス方法)
以下、上述の如く構成された床材1の接合構造のメンテナンス方法について説明する。
【0042】
床材1の使用を開始してから時間が経過すると、塗膜3,3中のアレルゲン低減剤自体の、アレルゲンaの低減機能が低下したり、
図3(a)に示すように、塗膜3,3が溜まり部20の内面から剥離したりすることにより(塗膜3中の白抜き部分を参照)、溜まり部20におけるアレルゲンaの低減機能が低下する。そこで、床材1の使用開始後、必要に応じて、床材1の表面をアレルゲン低減剤を含むワックスでワックスがけすることなどにより、溜まり部20にアレルゲン低減剤を含むワックスを滴下供給する。
【0043】
このワックスとして、ウレタンやアクリルなどの樹脂ワックス、ロウなどの水性ワックスがある。使用されるワックスは、床材1の材質に基づいて決定される。溜まり部20にアレルゲン低減剤を含むワックスを供給すると、ワックスは、粘度が高いので溜まり部20全体に広がり、
図3(b)に示すように、ワックスに含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部20内面全体に固着され、溜まり部20におけるアレルゲンaの低減機能が再生される。このため、溜まり部20におけるアレルゲンaの低減機能が持続される。
【0044】
また、床材1の使用開始後、必要に応じて、
図3(a)に示すように、床材1の表面をアレルゲン低減剤を含む水溶液で水拭きすることなどにより、溜まり部20にアレルゲン低減剤を含む水溶液を滴下供給しても良い。
【0045】
このように溜まり部20にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給すると、この水溶液が溜まり部20に速やかに浸透し、
図3(b)に示すように、水溶液に含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部20内面に直ちに固着され、溜まり部20におけるアレルゲンaの低減機能が即座に再生される。このため、溜まり部20におけるアレルゲンaの低減機能が持続される。さらに、アレルゲンaは水に溶けやすいので、溜まり部20にアレルゲン低減剤を含む水溶液を供給すると、この水溶液に、溜まり部20に溜まった不活性化されていないアレルゲンaが溶け、このアレルゲンaが水溶液に含まれるアレルゲン低減剤と接触反応し、アレルゲンaがより確実且つ効率良く不活性化される。
【0046】
また、床材1の使用開始後、必要に応じて、
図3(a)に示すように、溜まり部20にアレルゲン低減剤を含むアルコールなどの揮発性溶液を滴下供給しても良い。
【0047】
このように溜まり部20にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給すると、この揮発性溶液は文字通り揮発性があるので、揮発性溶液が溜まり部20に速やかに浸透して揮発し、揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤が直ちに乾燥する。これにより、
図3(b)に示すように、揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤が、アレルゲン低減剤が剥離した部分を含む溜まり部20内面にすぐに固着され、溜まり部20におけるアレルゲンaの低減機能が即座に再生される。このため、溜まり部20におけるアレルゲンaの低減機能が持続される。さらに、溜まり部20にアレルゲン低減剤を含む揮発性溶液を供給すると、溜まり部20に溜まった不活性化されていないアレルゲンaがその揮発性溶液によって不活性化が促進され、さらに、そのアレルゲンaが揮発性溶液に含まれるアレルゲン低減剤と接触反応し、アレルゲンaがより確実且つ効率良く不活性化される。
【0048】
尚、このメンテナンスで使用されるアレルゲン低減剤は、溜まり部20の内面に予め塗布されたアレルゲン低減剤と同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良い。また、そのアレルゲン低減剤は、単一種類で使用しても良いし、複数種類を組み合わせても良い。
【0049】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、溜まり部20を断面略ハット状としているが、これに限らず、例え
ば、雄実11の上面と両接合端面21,21の上側垂直面21b,21bとで区画され且つ床材1表面側のみに開口した断面略矩形状としても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、各床材1の裏面にクッション材4を設けているが、これを設けなくても良い。但し、アレルゲンaの確実且つ効率的な不活性化の観点からは、設けた方が良い。
【0051】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0052】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明は、アレルゲンを確実且つ効率良く不活性化させたり、アレルゲンの低減機能を持続させたりすることが必要な、フローリング床の床材の実加工が施された部分等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0054】
1 床材
2 接合部
20 溜まり部
3 塗膜
4 クッション材
a アレルゲン