【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度新日鉄エンジニアリング株式会社「分子ゲート機能CO2分離膜モジュール開発促進」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化炭素を含む混合ガスを、請求項1〜3のいずれかに記載の複合分離膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含む二酸化炭素の分離方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の複合分離膜は、高分子重合体及びアミン化合物を含む高分子膜と、多孔質支持膜とが積層されているものであり、
前記アミン化合物は、下記式[I]及び/又は[II]で示されるアミドアミノ基を有しており、かつ前記高分子膜の両面に疎水性層が積層されていることを特徴とする。
【化3】
(式中、A
1は炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。)
【化4】
(式中、A
2は炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。)
なお、本発明において複合分離膜とは、ガス分離能を有する高分子膜、疎水性層、及び多孔質支持膜が一体に形成されたものをいう。
【0020】
高分子重合体内に固定化されるアミン化合物は、前記式[I]及び/又は[II]で示されるアミドアミノ基を有するアミン化合物である。式[I]又は[II]中、A
1又はA
2で示される炭素数1〜3の二価有機残基としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜3のアルキレン基が挙げられる。このようなアルキレン基の具体例としては、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH(CH
3)−等が挙げられ、これらのうち特に−CH
2−が好ましい。
【0021】
アミン化合物は、式[I]及び/又は[II]で示されるアミドアミノ基を1個以上有していればよく、アミドアミノ基の数は特に制限されないが、2〜4096個有していることが好ましく、より好ましくは3〜128個である。
【0022】
また、アミン化合物において、アミドアミノ基が占める重量分率は特に制限されない。二酸化炭素と水素の分離能を高める観点から、アミドアミノ基が占める重量分率は5%以上であることが好ましく、より好ましくは10〜94%であり、さらに好ましくは15〜53%である。
【0023】
前記アミン化合物において、式[I]又は[II]で示されるアミドアミノ基が結合する骨格としては、例えば次のものが挙げられる。
【化5】
【化6】
[式中、nは0〜10の整数を示す。]
【0024】
すなわち、本発明で用いるアミン化合物は、式[I]又は[II]で示されるアミドアミノ基が、上記式において米印の結合子の一部または全部に、直接またはアルキレン基を介して結合し、アミドアミノ基が結合してない結合子には、水素原子、アルキル基、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基等が結合した化合物である。
【0025】
前記アミン化合物としては、例えば、下記式で示される第0世代のポリアミドアミン系デンドリマー、及びこれら第0世代ポリアミドアミン系デンドリマーに対応する第1世代以上のものが挙げられる。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0026】
上記ポリアミドアミン系デンドリマーのうち、特に好適な化合物の一例として、下記ポリアミドアミン系デンドリマーが挙げられる。
【化14】
【0027】
なお、本発明で用いるポリアミドアミン系デンドリマーは、枝の長さがすべて等しいものと、そのうちの少なくとも1つがヒドロキシアルキル基またはアルキル基で置換され、枝の長さが異なるものを含む。また、表面基(すなわち、式[I]又は[II]で示されるアミドアミン基)の数が異なる各種のポリアミドアミン系デンドリマーを使用することができる。ポリアミドアミン系デンドリマーの表面基の数と世代の関係は、第0世代の表面基の数をa(aは3以上の整数を示す。)とすると、第b世代(bは整数を示す。)の表面基の数cは、次の通りである。
【数1】
本発明においては、市販品(例えば、アルドリッチ社製の第0〜10世代のPAMAMデンドリマー)を使用することもでき、とりわけ第0〜5世代のポリアミドアミン系デンドリマーを好適に使用することができる。第0世代の表面基の数が4個の場合の世代ごとの表面基の数を下記表1に示す。
【表1】
【0028】
式[I]で示されるアミドアミン基を有するアミン化合物は、公知の有機合成法に従って製造することができる。当該アミン化合物の合成方法の一例として、メチルエステル基を有する母核化合物と、下記式[Ia]で示されるアミン化合物を反応させる方法が例示される。かかる方法によれば、メチルエステル基を有する化合物の該メチルエステル基が式[I]で示されるアミドアミン基に変換されて、式[II]で示されるアミドアミン基を有するアミン化合物を製造することができる。下式は、当該合成法において、メチルエステル基が式[I]で示されるアミドアミン基に変換される式である。
【化15】
[式中、A
1およびnは前記と同意義を示す。]
【0029】
メチルエステル基を有する化合物と、式[Ia]で示されるアミン化合物との反応は、メチルエステル基を有する化合物1モルに対して、式[Ia]で示されるアミン化合物を、通常約3〜20モル、好ましくは約5〜10モルの割合で行われる。メチルエステル基を有する化合物と、式[Ia]で示されるアミン化合物との反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば公知のものを広く使用できる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒には、水が含まれていてもよい。反応は、通常約0〜40℃、好ましくは約20〜30℃で、約90〜180時間、好ましくは約160〜170時間撹拌を続けることにより行われる。原料として用いられるメチルエステル基を有する化合物、及び式[Ia]で示されるアミン化合物は公知の化合物を用いることができる。上記反応によって得られた反応混合物を、例えば、冷却した後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作に供して粗反応生成物を分離し、更に必要に応じてカラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作を行うことによって式[I]で示されるアミドアミン基を有するアミン化合物を単離精製することができる。
【0030】
また、式[II]で示されるアミドアミン基を有するアミン化合物は、アミノ基を有する母核化合物と下記式[IIa]で示される末端にメチルエステル基を有するアミン化合物を、前記と同様に反応させることにより製造することができる。
【化16】
[式中、A
2およびnは前記と同意義を示す。]
【0031】
高分子膜の形成材料である高分子重合体は特に制限されないが、架橋されたポリビニルアルコール、又は多官能重合性単量体を重合させて得られる高分子重合体を用いることが好ましい。
【0032】
ポリビニルアルコールを架橋させる架橋剤は特に制限されないが、下記式(1)にて表される架橋剤を用いることが好ましい。
M(OR
1)
n (1)
(式中、Mは三価以上の金属原子を示し、nは3〜6の整数を示し、R
1は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHR
2で示される基(式中、R
2は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NR
3R
4で示される基(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHR
5で示される基(式中、R
5は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NR
6R
7で示される基(式中、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
【0033】
前記式(1)で示される架橋剤について詳細に説明する。式(1)におけるMは三価以上の金属原子を示す。三価以上の金属原子としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又はコバルト等が挙げられ、好ましくはチタンである。R
1の炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖もしくは分枝状であってよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ペンチル基、イソヘキシル基、又はヘキシル基が挙げられる。R
1の炭素数2〜6のアルケニル基は、直鎖もしくは分枝状であってよく、具体的には、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−エチル−1−エテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、4−ペンテニル基が挙げられる。R
1の炭素数3〜10のシクロアルキル基は、具体的には、シクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、 シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。R
1の炭素数3〜10のシクロアルケニル基は、具体的には、1−シクロプロペニル基、2−シクロプロペニル基、1−シクロブテニル基、2−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、1−シクロオクテニル基、2−シクロオクテニル基、3−シクロオクテニル基、4−シクロオクテニル基、1−シクロノネニル基、2−シクロノネニル基、3−シクロノネニル基、4−シクロノネニル基、1−シクロデセニル基、2−シクロデセニル基、3−シクロデセニル基、4−シクロデセニル基、2,4−シクロペンタジエニル基、2,5−シクロヘキサジエニル基、2,4−シクロヘプタジエニル基、2,6−シクロヘブタジエニル基等が挙げられる。R
1の炭素数6〜10のアリール基は、具体的にはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。R
1の炭素数7〜12のアラルキル基は、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。R
1の炭素数2〜7のアシル基は、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基が挙げられる。R
1の式−NHR
2で示される基(式中、R
2は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NR
3R
4で示される基(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHR
5で示される基(式中、R
5は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NR
6R
7で示される基(式中、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)におけるR
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7の炭素数1〜6のアルキル基は、前記したものと同様である。R
1の1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基は、5〜10員脂肪族複素環基であってもよいし、5〜10員芳香族複素環基であってもよい。1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む、5〜10員複素環基としては、フラン、チオフェン、ピロール、2H−ピロール、ピラン、チオピラン、ピリジン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、イミダゾール、ピラゾール、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリン、モルフォリン、アゼピン、アゾシン等が挙げられる。「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基」は、飽和環基であってもよいし、不飽和環基であってもよい。「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環」は、「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜8員複素環」が好ましく、「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜7員複素環」が更に好ましい。また、「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環」は、「1〜2個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環」が好ましく、「1〜2個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜8員複素環」が更に好ましく、「1〜2個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜7員複素環」が更になお好ましい。
【0034】
前記したR
1のM及び基は互いに結合して環構造を形成していてもよい。前記したR
1の基又は環は置換基を有していてもよい。これらの基又は環が有していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のハロゲン原子;クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基、又はトリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ペンチル基、イソヘキシル基、又はヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、又はn−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;シアノ基;フェノキシ基;アミノ基;水酸基;等が好ましい例として挙げられる。
【0035】
上記架橋剤のうち、下記式にて表される架橋剤を用いることが好ましい。
Ti(OR
1)
4
(式中、R
1は、前記と同様である。)
【0036】
特に、下記式にて表される架橋剤を用いることが好ましい。
【化17】
(式中、iPrはイソプロピル基を意味する。)
【0038】
【化19】
【化20】
(式中、t−Buはtert−ブチル基を示す。)
【0039】
チタン系架橋剤は、PVAの水酸基と架橋反応する一方で、デンドリマーのアミノ基との反応性が低く、デンドリマーとは反応し難いため架橋剤として特に好ましい。
【0040】
ポリビニルアルコールは水溶液の形態で用いることが好ましい。この場合、水溶液の濃度は0.5〜30重量%、好ましくは1〜10重量%である。ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、通常約5千〜100万、好ましくは約4万〜40万である。重合度でいえば、通常約110〜23000、好ましくは約1,000〜10,000である。PVAが水酸基を有する親水性のポリマーであることから、デンドリマーとの相溶性に優れる上、PVAのガス透過量が小さく、PVA部分を通過するガス量が少ないため、他のポリマーに比べて、ガス分離膜の材料としてPVAは優れている。
【0041】
前記ポリビニルアルコール内に固定化される前記アミン化合物の量は、ポリビニルアルコール水溶液100重量部に対して通常約1〜50重量部、好ましくは約3〜20重量部である。
【0042】
本発明の高分子膜としては、前記チタン系架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分を有するPVA内に、ポリアミドアミン系デンドリマーが固定されている高分子膜が特に好ましい。チタン系架橋剤は、ポリアミドアミン系デンドリマーとは反応せずに、PVAのみと反応する架橋剤であるため好ましく用いられる。
【0043】
一方、多官能重合性単量体は、炭素−炭素不飽和結合を2個以上有する重合可能な化合物であれば特に限定されない。例えば、多官能(メタ)アクリルアミド類、多官能(メタ)アクリレート類等の多官能アクリル系単量体;多官能ビニルエーテル類、ジビニルベンゼン等の多官能ビニル系単量体等が挙げられる。これらの多官能重合性単量体は、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
多官能(メタ)アクリルアミド類としては、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、エチジウムブロマイド−N,N’−ビスアクリルアミド(Ethidium bromide−N,N’−bisacrylamide)、エチジウムブロマイド−N,N’−ビスメタクリルアミド(Ethidium bromide−N,N’−bismethacrylamide)、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
【0045】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ジ(メタ)アクリレート類、トリ(メタ)アクリレート類、テトラ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0046】
ジ(メタ)アクリレート類としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0047】
トリ(メタ)アクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
テトラ(メタ)アクリレート類としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
多官能ビニルエーテル類としては、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0050】
また、必要に応じて、重合反応を上記多官能重合性単量体と単官能重合性単量体とを併用して行ってもよい。併用することにより、高分子重合体内の網目の大きさを調節することができる。
【0051】
単官能重合性単量体としては、単官能(メタ)アクリルアミド類、単官能(メタ)アクリレート類等の単官能アクリル系単量体、単官能ビニルエーテル類、単官能N−ビニル化合物類または単官能ビニル化合物類等の単官能ビニル系単量体、単官能α,β−不飽和化合物類等が挙げられる。
【0052】
単官能(メタ)アクリルアミド類としては、2−アセトアミドアクリル酸、(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド等が挙げられる。
【0053】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
単官能ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
単官能N−ビニル化合物類としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0056】
単官能ビニル化合物類としては、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0057】
単官能α,β−不飽和化合物類としては、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、クロトン酸、クロトン酸メチル等が挙げられる。
【0058】
高分子重合体内に固定化される式[I]及び/又は[II]で示されるアミドアミノ基を有するアミン化合物の量は、高分子重合体100重量部に対して通常2〜400重量部、好ましくは25〜250重量部、さらに好ましくは40〜100重量部である。
【0059】
本発明に用いる多孔質支持膜は、例えば、後述するポリマー等を用いて製造することができ、セラミックス又はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることもできる。具体的には、ポリマーを用いて製造する場合、ポリマーを溶媒に溶解して、原料溶液を得たのち、該原料溶液と、凝固液(溶媒と非溶媒の混合溶液)と接触させて、非溶媒濃度の上昇により相分離を誘起する方法(非溶媒誘起相分離法;NIPS法、特公平1−22003号公報参照)により、多孔質支持膜を製造することができる。前記セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ等が挙げられる。
【0060】
多孔質支持膜の製造に用いるポリマーとしては、例えば、ポリスルホン(PSF)、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、トリアセチルセルロース、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、芳香族ナイロン、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリエーテル、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらのうち、化学的、機械的に安定である観点から、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。
【0061】
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。凝固時に凝固液へ溶媒が溶解するものであれば、特に限定されない。前記非溶媒としては、例えば水、一価アルコール、多価アルコール、エチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0062】
原料溶液の調製の際に、膨潤剤を添加して、凝固後の支持膜内の貫通孔を増加させ、ガス透過性を向上させることが好ましい。前記膨潤剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、食塩、塩化リチウム、臭化マグネシウムから選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。この膨潤剤の中で、ポリエチレングリコールが好ましく、特に重量平均分子量400〜800のポリエチレングリコールが好ましい。原料溶液および凝固液の濃度は、原料溶液と凝固液とを接触させ、非溶媒誘起相分離法により多孔質支持膜を得られる濃度であれば特に限定されないが、例えば、原料のポリマーとしてポリアリールエーテルスルホンを用いる場合、原料溶液は、製膜性から20〜35wt%溶液とするのが好ましい。
【0063】
原料溶液と凝固液との接触の方法は特に限定されないが、例えば、原料溶液を凝固液に浸漬する方法が挙げられる。凝固液中の溶媒濃度は特に限定されないが、原料溶液の凝固において、凝固液中の溶媒濃度を変化させることにより支持膜の構造が変化し、耐圧性を上げることができる。
【0064】
多孔質支持膜の細孔の孔径としては、100nm以下が好ましく、さらに好ましくは10nm以下である。多孔質支持膜の膜厚は、高分子膜のガス透過性が多孔質支持膜のガス透過性よりも大きくならない範囲であれば特に限定されないが、通常25〜125μmであり、好ましくは40〜75μmである。
【0065】
機械的強度を付与するために、多孔質支持膜には織布又は不織布が積層されていてもよい。
【0066】
高分子膜の両面に積層される疎水性層は、水を透過しにくい疎水性ポリマーにより形成されていればよく、特に疎水性層の純水に対する接触角が10°以上となるような疎水性ポリマーにより形成されていることが好ましい。接触角が10°未満の場合には、結露水が疎水性層を浸透しやすくなり、高分子膜中のアミン化合物が溶出しやすくなる。
【0067】
また、疎水性層は、CO
2透過速度が10
−11〜10
−7(m
3/m
2・Pa・s)であることが好ましい。CO
2透過速度が低すぎると疎水性層がガス透過抵抗となり、複合分離膜のガス透過性能が低下する。一方、CO
2透過速度が高すぎると疎水性層が多孔質になり、結露水が疎水性層を浸透しやすくなる。
【0068】
疎水性層の形成材料である疎水性ポリマーとしては、例えば、シリコーンエラストマーなどのエラストマー、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリ−1−トリメチルシリルプロピン、ポリジフェニルアセチレンなどが挙げられる。これらのうち、特にシリコーンエラストマーを用いることが好ましい。
【0069】
疎水性層の厚さは特に制限されないが、ガス透過性を高くし、かつ水透過性を低下させる観点から0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。
【0070】
以下に、本発明の複合分離膜の製造方法について説明する。
【0071】
本発明の複合分離膜の製造方法の第一態様としては、(1)基板上に疎水性ポリマーを含む有機溶液を塗布し、有機溶媒を除去して疎水性ポリマーを硬化させて疎水性層を形成する工程、(2)前記式[I]及び/又は[II]で示されるアミドアミン基を有するアミン化合物の存在下で、少なくとも多官能重合性単量体を重合反応させることにより、又はポリビニルアルコールを架橋剤で架橋することにより、生成する高分子重合体内に前記アミン化合物を固定化させて高分子膜を形成する工程、及び(3)疎水性層、高分子膜、疎水性層、及び多孔質支持膜の順に各部材を積層する工程を含む方法が挙げられる。
【0072】
(2)の製造工程において、前記アミン化合物の存在下で多官能重合性単量体を重合反応させる方法は、熱重合であっても光重合であってもよい。この場合、通常、熱重合開始剤又は光重合開始剤が用いられる。
【0073】
熱重合開始剤は公知のものを使用でき、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエー卜、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。また、熱重合時には硬化促進剤を混合して使用してもよい。硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、3級アミン等が挙げられる。
【0074】
熱重合開始剤の添加量は、多官能重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1重量部である。
【0075】
光重合開始剤は公知のものを使用でき、例えば、以下のような化合物が挙げられる。これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0076】
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン、そのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類。
【0077】
2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;アシルフォスフィンオキサイド類;キサントン類。
【0078】
光重合開始剤の添加量は、多官能重合性単量体100重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜3重量部である。
【0079】
多官能重合性単量体を光硬化させる場合には、光重合開始剤と共に増感剤として塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としてはアミンを用いることが好ましく、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの中で特に三級アミンが好適である。
【0080】
三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、メチルジブタノールアミン、エチルジエタノールアミン、エチルジイソプロパノールアミン、エチルジブタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、プロピルジイソプロパノールアミン、プロピルジブタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルブタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、ジエチルブタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジプロピルイソプロパノールアミン、ジプロピルブタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジブチルイソプロパノールアミン、ジブチルブタノールアミン、メチルエチルエタノールアミン、メチルエチルイソプロパノールアミン、メチルエチルブタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、テトラエタノールエチレンジアミン、テトラプロパノールエチレンジアミン等が挙げられる。また、これら水酸基含有三級アミンにエチレンオキサイドを付加させてポリエチレングリコール鎖を導入したもの、水酸基含有三級アミンに水酸基と反応性を有する官能基を含有するモノマーを付加させて重合性二重結合を導入したもの、ポリマーまたはオリゴマーに三級アミノ基を導入したもの等を用いてもよい。これらのアミンは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
増感剤の添加量は、光重合開始剤100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜8重量部である。
【0082】
重合反応は、適当な溶媒中で、熱重合の場合は加熱により、光重合の場合は紫外線等の照射により行うことが好ましい。溶媒としては、前記アミン化合物及び多官能重合性単量体を溶解するものであれば特に限定されないが、通常アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)が好適に使用できる。熱重合は、通常約40〜90℃、好ましくは約60〜70℃で、通常約2〜24時間、好ましくは約5〜10時間行われる。光重合は、通常約200〜400nm、好ましくは約250〜360nmの紫外線を用いて、通常約30秒〜10分、好ましくは約1〜3分照射することにより行われる。なお、熱重合と光重合とは併用して行うこともでき、例えば、熱重合の後に光重合を行うか、光重合させた後に熱重合するか、あるいは光重合と熱重合を同時に行うこともできる。
【0083】
上記製造方法により、高分子重合体が生成すると同時に、該高分子重合体内に前記アミン化合物が固定化され、高分子膜が得られる。高分子膜としては、三次元網目構造を有する高分子重合体の該網目構造内に前記アミン化合物が封入され、固定化されているものが好適である。
【0084】
(3)の製造工程において、疎水性層、高分子膜、疎水性層、及び多孔質支持膜の順に各部材を積層する方法としては公知の方法を採用することができ、例えば、ラミネート法が挙げられる。ラミネート法としては、例えば、ドライラミネート、ホットメルトラミネート等が挙げられる。具体的には、接着剤又は接着フィルムを用いてこれらを貼り合わせる。
【0085】
接着剤は特に限定されないが、水系接着剤(例えば、α−オレフィン系接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤等)、水分散系接着剤(例えば、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂エマルジョン接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤等)、溶剤系接着剤(例えば、ニトロセルロース接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤等)、反応系接着剤(例えば、シアノアクリレート系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤等)、ホットメルト接着剤(例えば、エチレン−酢酸ビニル樹脂ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤等)等が挙げられる。接着フィルムとしては、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の熱可塑性透明樹脂からなるフィルム等が挙げられる。高分子膜及び多孔質支持膜のガス透過性を妨げない範囲であれば、接着剤又は接着フィルムの層の厚さは特に限定されない。
【0086】
本発明の複合分離膜の製造方法の第二態様としては、(1)多孔質支持膜上に疎水性ポリマーを含む有機溶液を塗布し、有機溶媒を除去して疎水性ポリマーを硬化させて疎水性層を多孔質支持膜上に形成する工程、(2)多孔質支持膜上に形成した疎水性層上に、前記式[I]及び/又は[II]で示されるアミドアミン基を有するアミン化合物及び多官能重合性単量体を含むモノマー溶液、又は前記アミン化合物、ポリビニルアルコール、及び架橋剤を含む混合溶液を塗布し、あるいは疎水性層を有する多孔質支持膜を前記モノマー溶液又は前記混合溶液に浸漬し、前記多官能重合性単量体を重合反応又はポリビニルアルコールを架橋させることにより、生成する高分子重合体内に前記アミン化合物が固定化されてなる高分子膜を疎水性層上に形成する工程、及び(3)高分子膜上に疎水性ポリマーを含む有機溶液を塗布し、有機溶媒を除去して疎水性ポリマーを硬化させて疎水性層を高分子膜上に形成する工程を含む方法が挙げられる。
【0087】
(2)の製造工程において、前記アミン化合物及び多官能重合性単量体を含むモノマー溶液は、前記アミン化合物及び多官能重合性単量体を溶媒に溶解させて調製する。
【0088】
溶媒は特に限定されず、重合反応を阻害しない溶媒であれば公知のものを広く使用できる。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒には水が含まれていてもよい。
【0089】
モノマー溶液には、通常、上記した重合開始剤が添加される。光重合を行う場合は、上記した増感剤を添加することができる。熱重合開始剤、光重合開始剤、及び増感剤の使用量は上記と同様である。
【0090】
塗布又は浸漬の方法は特に限定されないが、公知のスピンコーティング法又はディップコーティング法が好ましい。
【0091】
スピンコーティング法は、疎水性層を回転させながら、その表面にモノマー溶液又は混合溶液を所定量滴下し、モノマー溶液又は混合溶液を均一塗布する方法である。スピンコーティングにおけるモノマー溶液又は混合溶液の滴下量は、0.1〜1μl/mm
2程度であることが好ましい。スピンコーティングにおける回転速度は、500〜4000rpm程度であることが好ましい。
【0092】
ディップコーティング法は、モノマー溶液又は混合溶液中に疎水性層を有する多孔質支持膜を浸し、ついで1〜10mm/sec程度で引き上げることにより、疎水性層上にモノマー溶液又は混合溶液を塗布する方法である。
【0093】
第二態様の複合分離膜の製造方法によると、各部材を接着剤等を介することなく直接積層することができるため、密着性の高い複合分離膜を製造することができる。また、接着剤等を用いていないので、ガス透過性能に優れる複合分離膜を製造することができる。
【0094】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、二酸化炭素を含む混合ガスを、前記複合分離膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含む。
【0095】
前記分離方法においては、複合分離膜のガス供給側とガス透過側との間に圧力差を設けておくことが好ましい。圧力差は、通常、ガス透過側を減圧にすることにより設けられる。また、前記分離方法は、通常5〜80℃、好ましくは室温〜50℃の温度条件下で行うことが好ましい。
【0096】
混合ガスは、少なくとも二酸化炭素を含むガスであれば特に制限されないが、二酸化炭素と他のガスとの分離性能を向上させるためには、混合ガスの相対湿度を30%以上に調整しておくことが好ましく、より好ましくは60〜100%である。
【0097】
前記分離方法は、例えば、火力発電所、鉄鋼プラント等で発生する燃焼排ガスから二酸化炭素(CO
2)を分離する際に好適に用いられる。
【実施例】
【0098】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0099】
実施例1
(多孔質支持膜の作製)
ポリスルホン(Solvay Advanced Polymers Co.、商品名:Udel P-3500)54gをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)246gに溶解させてポリスルホン溶液を得た。ポリスルホン溶液を、ガラス板上に固定したPET不織布上にアプリケータ(ギャップ250μm)を用いて塗布し、その後、当該ガラス板を水中に浸漬してポリスルホンを凝固させた。さらに、流水中で約1時間洗浄して溶媒であるDMFを抽出した。その後、室温で12時間乾燥させて、PET不織布上にポリスルホン多孔層を有する多孔性支持膜を作製した。
【0100】
(複合分離膜の作製)
2成分型シリコーンエラストマー(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名:RTV-615、A液及びB液)を重量比10:1(A液:B液)で混合し、さらにヘキサンで希釈してエラストマー溶液(シリコーン濃度3重量%)を調製した。
作製した多孔性支持膜上に、調製したエラストマー溶液をアプリケータ(ギャップ100μm)を用いて塗布し、130℃のオーブン中で10分間キュアしてシリコーンエラストマーを硬化させて、多孔性支持膜上に疎水性層(厚み1μm)を形成した。
下記式で示される第0世代ポリアミドアミンデンドリマーを50重量%含むメタノール溶液(アルドリッチ社製)を40℃の水浴中にてロータリーエバポレータを用いて5時間減圧蒸留し、一晩真空乾燥してポリアミドアミンデンドリマーのみを単離した。
【化21】
ポリビニルアルコール(和光純薬工業社製、重合度:2000、ケン化度:98%以上)5gを95gの純水に溶解させてポリビニルアルコール溶液(ポリビニルアルコール濃度5重量%)を調製した。
単離したポリアミドアミンデンドリマー3g、調製したポリビニルアルコール溶液40g、及びジイソプロポキシ(ビストリエタノールアミネート)チタンを80重量%含むイソプロパノール溶液(マツモトファインケミカル社製、オルガチックスTC−400)0.125gを混合して混合溶液を調製した。
多孔性支持膜上に形成した疎水性層上に、調製した前記混合溶液をアプリケータ(ギャップ1500μm)を用いて塗布し、1日自然乾燥させた。その後、120℃で1時間熱処理を行い、疎水性層上に高分子膜(厚み150μm)を形成した。
その後、高分子膜上に、前記エラストマー溶液をアプリケータ(ギャップ100μm)を用いて塗布し、130℃のオーブン中で10分間キュアしてシリコーンエラストマーを硬化させて、高分子膜上に疎水性層(厚み1μm)を形成して複合分離膜を作製した。
【0101】
比較例1
実施例1において、高分子膜の両面に疎水性層を設けなかった以外は実施例1と同様の方法で複合分離膜を作製した。
【0102】
〔測定及び評価方法〕
(分離係数α、パーミアンス(透過率)Q
CO2及びQ
Heの測定)
ガス透過測定装置(ジーエルサイエンス株式会社製)を用いた。複合分離膜の供給側にCO
2ガス(80体積%)及びHeガス(20体積%)を含む混合ガスを大気圧下で供給し、透過側には大気圧の乾燥させたArガスを流通させた。なお、混合ガスはバブラーを用いて80%に加湿した。透過側のArガスの一部を所定時間の間隔でガスクロマトグラフに導入してCO
2ガス及びHeガスの濃度変化を測定した。時間経過に対するCO
2ガス及びHeガスの濃度の増加量からCO
2ガス及びHeガスのパーミアンスを求めた。混合ガスを供給して30分毎に15時間測定し、性能(数値)が安定したときの数値を採用した。
ガス透過測定装置の設定条件、ガスクロマトグラフィーの分析条件、ガスのパーミアンスの算出方法は以下のとおりである。
【0103】
<ガス透過測定装置の設定条件>
供給ガス量:100cc/min
供給ガス組成:CO
2ガス(80体積%)、Heガス(20体積%)
透過側流量ガス:Arガス
透過側流量ガス量:10cc/min
透過面積:8.04cm
2
測定温度:40℃
バブラー温度:35.9℃
【0104】
<ガスクロマトグラフィーの分析条件>
Arキャリアーガス量:10cc/min
TCD温度:150℃
オーブン温度:80℃
TCD電流:70mA
TCD極性:[−]LOW
TCD LOOP:1ml シリコスチール管 1/16”×1.0×650mm
【0105】
<分離係数α、パーミアンスQ
CO2及びQ
Heの算出方法>
ガスクロマトグラフィーで求めた透過側流量ガス中のガス濃度からガスの透過量Nを算出して、下記式1及び2によりパーミアンスQ
CO2及びQ
Heを計算した。また、下記式3により分離係数αを計算した。
【数2】
(式中、N
CO2及びN
HeはCO
2ガス及びHeガスの透過量、P
f及びP
Pは供給及び透過ガスの全圧、Aは膜面積、X
CO2及びX
Heは供給ガス中のCO
2ガス及びHeガスのモル分率、Y
CO2及びY
Heは透過ガス中のCO
2ガス及びHeガスのモル分率を表す。)
【0106】
(耐水性評価)
作製した複合分離膜を24時間純水中に浸漬し、その後、上記と同様の方法で分離係数α、パーミアンスQ
CO2及びQ
Heを測定した。
【0107】
【表2】
【0108】
表2から、実施例1の複合分離膜は、疎水性層が設けられているため、高分子膜からのアミン化合物の溶出が防止され、24時間純水中に浸漬した場合であっても分離性能の低下が抑制されていることがわかる。一方、比較例1の複合分離膜は、疎水性層が設けられておらず、高分子膜が露出しているため、結露水によって高分子膜からアミン化合物が溶出していると考えられる。特に、比較例1の複合分離膜を24時間純水中に浸漬した場合には、高分子膜からのアミン化合物の溶出により分離性能の低下が著しい。