【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための船舶は、垂線間長が100m以上400m以下の範囲で、計画航海速力が10ノット以上40ノット以下の範囲の貨物又は船客の少なくとも一方を輸送する排水量型の船舶において、機関室の前端から後の船底が
水平に構成され、機関室の前端から前の船体が
前下がりの傾斜角を有して形成されるか、又は、船体中央から後の船底が
水平に構成され、船体中央から前の船体が
前下がりの傾斜角を有して形成されると共に、
船体が計画満載喫水線で静止状態にて浮かんだ時に、側面視で、船体中央の喫水深さにおける第1水平面よりも下に設けられた船体の船底が、前記第1水平面と、船体中央の船底と船首垂線位置における船体中央位置の計画満載喫水の125%深さの没水位置とを結ぶ線との範囲内にあるように構成される。
【0015】
この垂線間長が100m以上400m以下の範囲の船舶とすることで、本発明の対象船舶から小型船舶を除外し、計画航海速力が10ノット以上40ノット以下の範囲の船舶とすることで、高速船や戦闘用の高速船舶を除外し、貨物又は船客の少なくとも一方を輸送する排水量型の船舶とすることで、作業船や漁船や砕氷船等の特殊船を除外している。
【0016】
なお、垂線間長(Lpp)とは、舵柱もしくは舵頭材の中心である船尾垂線(後部垂線:A.P.)と、満載喫水線における船首材前端である船首垂線(前部垂線:F.P.)と間の距離であり、また、ノット(knot:kt,kn)は船のスピードを表わす単位で海里に基づくものであり、1ノットは1852m/h(1.852km/h)となる。
【0017】
また、排水量型の船舶とは、最も一般的な船体下部が水面下に沈むことで浮力を得る船舶であり、航行時と停船時のいずれでも浮力を得る方法に変りはない船舶のことをいう。この排水量型とは異なる船舶としては、滑走型や水中翼型やエアクッション型等がある。
【0018】
この構成によれば、船体中央(ミッドシップ)の喫水よりも深い部分に船体の一部を設けることができるので、推進効率が良い船首トリム状態と同じような状態で、満載喫水でもまた軽荷喫水でも航行できる。従って、運航時の推進効率を向上でき、燃費を低減できて、CO
2の排出も減少できる。なお、船体中央より前で第1水平面よりも下に設けられている船体の部分の船長方向の長さの下限は垂線間長の5%であるが、上限は、船体中央より前側全部となる。
【0019】
また、船体前半部で、船体の水面下の深さが深くなるので、船体形状の自由度が増して、水面付近の形状に対する制限が少なくなる。その結果、満載喫水と軽荷喫水の両方において水面付近の水線面形状を痩せさせた形状にすることができるようになるので、船体の抵抗を減少させることができる。つまり、従来技術では、船首側に浮心位置(lcb)をもつ場合に船首近傍部分が太った形状になっていたが、本発明の構造では、船底を深くすることにより船首近傍部分を痩せた形状にすることができる。
【0020】
また、船首部の喫水を深くすることができるので、軽荷喫水線よりも下に軽荷状態でも水上に露出しない大きな船首バルブを必要に応じて配置することができるようになるので、造波抵抗を著しく小さくできる。
【0021】
更に、満載喫水線の水線面に連続しており、その水線面の形状の影響を受ける船首部のフレア形状も痩せさせることができるので、凌波性を高めることができる。
【0022】
上記の船舶において、船体が単胴、即ち、水面下に沈んで水と直接接する船体が1つである船型であると、また、船舶が、バルク運搬船、チップ運搬船、液体タンカー(原油タンカー、石油タンカー、化学製品タンカー等)、ガスタンカー(LNG,LPG等)、自動車運搬船(PCC(Pure Car Carrier),PCTC(Pure Car & Truck Carrier)等)、フェリー、RORO、コンテナ運搬船、鉱石運搬船、客船の内の一つであると、上記の効果をより発揮できる。なお、単胴船とは異なる船型として双胴船や三胴船等がある。
【0024】
この構成によれば、現時点で設けられている船台やドックで容易に製造できる形状となる。また、船底がこの範囲に入ることにより、船底が船首側から船体中央側に向かって略滑らかに傾斜した船形となるので、船底周囲の流れが滑らかになり粘性圧力抵抗が少なくなる。
【0025】
上記の船舶において、船体が計画満載喫水線で静止状態にて浮かんだ時に、側面視で、上甲板が前下がりの傾斜角で−10°以上+10°以下の範囲にあるように構成する。言い換えれば、上甲板は船底との平行を維持せずに、計画満載喫水線と略平行であるように構成する。
【0026】
この構成によれば、本発明と同じ対象船舶における従来技術の船形との差異がより明確になると共に、現時点で設けられている船台やドックで容易に製造できる形状となる。また、船底がこの範囲に入ることにより、船底が船首側から船体中央側に向かって略滑らかに傾斜した船形となるので、船底周囲の流れが滑らかになり粘性圧力抵抗が少なくなる。更に、満載時には上甲板を略水平に保った状態で運航できるので、貨物や船客を略水平状態に保った甲板上で運搬することができる。
【0027】
上記の船舶において、船体が前記計画満載喫水線で静止状態にて浮かんだ時、及び、船体が計画軽荷喫水で静止状態にて浮かんだ時との両方で、プロペラ回転軸が水平面に
対して傾斜角で−10°以上+10°以下の範囲にあるように構成する。
【0028】
この構成によれば、満載状態でも軽荷状態でも、プロペラ回転軸を略水平に保ってプロペラを傾斜させることなく、言い換えれば、プロペラの推進力の方向を傾斜させることなく、プロペラの推進力の略全部を船体の推進に使用でき、推進効率が最も良い状態で運航できる。
【0029】
更に、貨物室、機関室、船橋、居住区を満載喫水状態と軽荷喫水状態の両方で略水平に維持しながら運航できるようになるので、貨物や機関室の機器類を傾斜させなくてよい。その結果、貨物であるコンテナや自動車などの固定が容易になるとともに、直立状態で使用できるので、保守が容易になり寿命も延びる。また、船客や乗組員が水平の甲板上で生活できるようになるので、快適性が増す。
【0030】
上記の船舶において、機関室を船体中央より船尾側に配置すると共に、船体が前記計画満載喫水線で静止状態にて浮かんだ時に、側面視で、少なくとも機関室の後端からプロペラ中心までの船底が水平面に対して後下がりの傾斜角で−10°以上+10°以下の範囲にあるように構成する。
【0031】
この構成によれば、機関室の船底をプロペラ回転軸に略平行することができるので、回転軸の芯だしや設置が容易となる。また、プロペラ回転軸と同様に、機関室の甲板とその上に載置される主機関等の機器類を略水平状態に維持でき、傾斜がなく無理のない略直立の状態で運転できるようになるので、機関の状態を良好に保つことができる。従って、保守点検が少なくなると寿命も延びるようになる。
【0032】
上記の目的を達成するための船舶の航行方法は、垂線間長が100m以上400m以下の範囲で、計画航海速力が10ノット以上40ノット以下の範囲の貨物又は船客の少なくとも輸送する、機関室の前端から後の船底が
水平に構成され、機関室の前端から前の船体が
前下がりの傾斜角を有して形成されるか、又は、船体中央から後の船底が
水平に構成され、船体中央から前の船体が
前下がりの傾斜角を有して形成される排水量型の船舶の航行方法において、
船体が計画満載喫水線で静止状態にて浮かんだ時に、側面視で、前記第1水平面よりも下に設けられた船体の船底が、前記第1水平面と、船体中央の船底と船首垂線位置における船体中央位置の計画満載喫水の125%深さの没水位置とを結ぶ線との範囲内にある状態で航行する方法である。
【0033】
この方法によれば、船体の浮心位置が船体中央よりも前になる状態で、船体中央より前側において、船体中央の喫水よりも深い部分に船体の一部を設けることができるので、推進効率が良い船首トリム状態と同じような状態で、満載喫水でもまた軽荷喫水でも航行できる。従って、運航時の推進効率を向上でき、燃費を低減できて、CO
2の排出も減少できる。
【0034】
また、この運行方法を行う船舶の構造は、船体前半部で、船体の水面下の深さが深くなるので、船体形状の自由度が増して、水面付近の形状に対する制限が少なくなる。その結果、水面付近の水線面形状を痩せさせた形状にしたり、軽荷喫水線よりも下に大きな船首バルブを配置したりすることができるようになるので、造波抵抗や粘性圧力抵抗を著しく小さくできる。更に、満載喫水線の水線面に連続しており、その水線面の形状の影響を受ける船首部のフレア形状も痩せさせることができるので、凌波性を高めることができる。
【0035】
また、上記の船舶の航行方法において、前記船舶の航行時に、プロペラ回転軸を水平面に
対して傾斜角で−10°以上+10°以下の範囲(略水平)の状態にして航行する。このように、船体が計画満載喫水線で静止状態にて浮かんだ時や船体が計画軽荷喫水線で静止状態にて浮かんだ時等の任意の運航時において、プロペラ回転軸を略水平に保ってプロペラを傾斜させることなく、言い換えれば、プロペラの推進力の方向を傾斜させることなく、プロペラの推進力の略全部を船体の推進に使用でき、推進効率が最も良い状態で運航できる。
【0036】
更に、貨物室、機関室、船橋、居住区を満載喫水状態と軽荷喫水状態の両方で略水平に維持しながら運航できるようになるので、貨物や機関室の機器類を傾斜させなくてよい。その結果、貨物であるコンテナや自動車などの固定が容易になるとともに、直立状態で使用できるので、保守が容易になり寿命も延びる。また、船客や乗組員が水平の甲板上で生活できるようになるので、快適性が増す。