【実施例】
【0019】
先ず、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の負圧ポンプ10は、車両に備えられる負圧ブースタ11の負圧室12内を、負圧にする真空ポンプの一種である。
負圧ポンプ10を作動させると、負圧管13、負圧室12内及び変圧室14内が負圧になっている。この状態でブレーキペダル16を踏むと負圧室12と変圧室14とが遮断され、変圧室14に空気が導入され、負圧室12と変圧室14との差圧により、ダイヤフラム17がリターンばね18を圧縮させる側へ変形し、プッシュロッド19を押し出す。結果、小さな踏力で大きな制動力が得られる。
【0020】
負圧ポンプ10の内部構造は後述の
図7で説明する。
図2では負圧ポンプ10の外観を説明する。
図2に示すように、基盤としてのボディ部30と、このボディ部30の上面にカバー体50が取付けられ、ボディ部30の下面にモータ70
が取付けられる。ボディ部30の幅狭の面31に吸気用の接続管21がビス22により取付けられ、ボディ部30から複数(この例では3個)の腕部32が延ばされ、腕部32にブッシュ33が嵌められる。このブッシュ33は車両に取付ける際、ラバーマウントの役割を果たす。
【0021】
次に負圧ポンプ10の内部について説明する。
図3に示すように、ボディ部30の上面に負圧を発生するポンプ部80が取付けられる。このポンプ部80は、カバー体50に設けられた収容室51に囲われる。カバー体50の内部に内壁63を設け、内壁63とカバー体の外壁52との空間を消音室53として形成する。
【0022】
次に負圧ポンプ10の構造を詳しく述べる。
図4に示すように、負圧ポンプ10は、基盤としてのボディ部30と、ボディ部30の上面34(本発明における一方の側面34)に設けられている複数(この例では4個)の雌ねじ穴35に長いボルト81をねじ込むことで取付けられるポンプ部80と、吸入ポート(詳細後述)に接続される接続管21と、ポンプ部80を覆うと共に、ボディ部30の上面34(本発明における一方の側面34)に設けられている複数(この例では4個)の雌ねじ穴36にビス54をねじ込むことで取付けられるカバー体50と、このボディ部30の下面37(他方の側面37)に複数(この例では2本)のビス71で取付けられ、モータ軸72がインボリュートスプライン軸であるモータ70とからなる。
【0023】
モータ70の側部に、モータ70へ給電する中間コネクタ(
図7、符号73)が設けられる。
ボディ部30は、モータ70をマウントするため及び車両に接続するための基盤であるため、厚くて剛性に富む、例えば鋳物などの金属製とすることが望まれる。ボディ部30の中心部にモータ軸72が挿入される軸穴38が設けられる。
【0024】
ボディ部30の一部は、カバー体50の消音室53と一体となる消音室53が形成される。ボディ部30のうちポンプ部80が取付けられる側面を、上面34とする。この上面34の外周及び消音室53の外周に沿ってシール材41が嵌められる。
【0025】
また、上面34に、軸穴38の上方から下方にかけて、軸穴38を中心とする半円形の吸気溝42が設けられており、この吸気溝42を囲うようにOリングなどのシール材43が上面34に嵌められる。
【0026】
カバー体50は、有底円筒の一部に傾斜部55が設けられた形状を呈し、ボディ部30の上面34に対向する底部56と、この底部56から上面34に向けて延びる筒部57と、この筒部57の端部に鍔状に形成されるフランジ部58とからなる。
【0027】
図5はポンプ部80の分解斜視図であり、ポンプ部80は、非円断面のロータ室82及び複数(この例では4個)のボルト穴83が設けられるケース84と、複数のベーン溝85が放射状に設けられ、中心にインボリュートスプライン穴86が設けられ、非円断面のロータ室82に回転自在に収納されるロータ87と、複数のベーン溝85に各々移動自在に収納されるベーン88と、複数(この例では4個)のボルト穴91及び上下2個の吸気孔92、93を有する吸気プレート94と、複数(この例では4個)のボルト穴96及び上下2個の排気出口97、98を有する蓋体101と、ボルト穴96、83、91に通される複数(この例では4本)の長いボルト81とからなる。
【0028】
図6は負圧ポンプ10の正面図であり、負圧ポンプ10は、ボディ部30の上面34に設けられ負圧を生成するポンプ部(
図4、符号80)と、ボディ部30の上面34に設けられポンプ部80を囲うカバー体50と、ボディ部30の下面37に設けられポンプ部80を駆動するモータ70とからなる、縦型の負圧ポンプである。詳細は後述するが、接続管21から吸引された空気は、負圧ポンプ10内部を通り、ボディ部30から下方に延びる排気管111から排出される。
【0029】
負圧ポンプの内部構造を
図7〜
図8に基づいて、さらに詳細に説明する。
図7は、
図4及び
図5に基づいて組立てられた負圧ポンプ10の断面図である。
図7に示すように、軸穴38に転がり軸受102が設けられており、この軸受102にモータ軸72が支持される。モータ軸72の先端部は、ロータ87のインボリュートスプライン穴86に嵌り、先端が蓋体101の近傍まで達する。
【0030】
カバー体50のフランジ部58はシール材41の全周に接しており、このシール材41によってカバー体50内の気密性が確保される。
一方、シール材43の全周に吸気プレート94の表面が接しており、このシール材43と吸気プレート94で吸気溝42の開口が塞がれ、吸気通路103が形成される。結果、接続管21、吸入ポート24、吸気通路103及び2個の吸気孔(
図5、符号92、93)からなる吸気経路が形成される。
【0031】
他方、ポンプ部80の排気出口97、98からの排気は、収容室51に放出される。収容室51とポンプ部80との間の空間は、排気経路104の一部を形成する。この排気経路104は
図8にも現れる。
【0032】
図8に示すように、排気出口97、98からの排気を通す排気経路104は、収容室51のうちカバー体50とポンプ部80との間の空間と、収容室51と消音室53とを結ぶ連通路105と、消音室53と、消音室53の底59に設けられる凹部61と、この凹部61に接続される排気管62とからなる。連通路105はボディ部30に設けられる。
【0033】
次にボディ部30の一方の側面34について説明する。
図9に示すように、ボディ部30の一方の側面34には、排気経路104から離れた位置に、モータ軸72近傍からモータ(
図7、符号70)へ空気を供給する呼吸穴121が設けられる。呼吸穴121は、モータ70へ空気を供給してモータ70内が真空になることを防止するために設けられる。
【0034】
また、一方の側面34に、排気経路104から呼吸穴121へ空気を導く連絡経路122が設けられる。連絡経路122は、底面部123と、この底面部123より一段高い障壁124と、この障壁124より一段高く吸気プレート(
図7、符号94)に密着する上面部125とからなる。さらに、連絡経路122は、ポンプ部(
図7、符号80)側から見て、蛇行した形状を呈する。
【0035】
次に排気経路104を連通路105の軸に沿って切った断面図に基づいて説明する。
図10に示すように、ボディ部30は、収容室51を形成する上面34に下方に窪む収容室側凹部126が設けられる。この収容室側凹部126の最も低い位置に連通路105が設けられる。連通路105は、収容室側凹部126と消音室53とを結び、図左から右へ下方に傾斜される。なお、連通路105は、ボディ部30の幅狭の面31に穴加工することで形成され、開口部は鋼球127で塞がれる。
【0036】
次に消音室53について説明する。
図11に示すように、消音室53に、連通路105が設けられる。消音室53は、カバー体50と、ボディ部30に設けられる消音室の底59とに囲まれる空間である。消音室の底59に、下方へ窪む凹部61が設けられ、この凹部61の排気管62が接続される。消音部の底59は連通路105の連通部から図右に向かって下方に傾斜される。即ち、消音部の底59の最も低い位置に凹
部61が設けられ、凹部61から下方に延びる排気管62が設けられる。
【0037】
次に、負圧ポンプ10の消音作用を説明する。
図12に示すように、モータ(
図7、符号70)が作動すると、ポンプ部80の吸引作用により、外気が接続管21内に吸入される。この吸気は、吸入ポート24に吸入される(矢印(1))。
【0038】
吸入ポート24に入った吸気は、吸気孔92からポンプ部80に入り、加圧されて排気出口97から排出される(矢印(2))、又は、吸気通路103を通って吸気孔93からポンプ部80に入り、加圧されて排気出口98から排出される(矢印(3))。上下の排気出口97、98から排出された排気は、収容室51に流入する。
【0039】
図13に示すように、ポンプ部80で圧縮された空気は、収容室51に吐出される。この排気は、連通路105へ導かれ、連通路105を通って消音室53に放出され急激に膨張する(矢印(4)、(5)、(6))。空気は急に膨張することで音響エネルギーを消耗する。消音された排気は、排気管62から下方の大気中に放出される(矢印(7))。
【0040】
次に負圧ポンプ10の排水作用を説明する。
図14(a)に示すように、負圧ポンプ10内に結露により生じた水は、上面34に落ちる。上面34に落ちた水は、収容室側凹部126から連通路105を通って消音室53に流れる(矢印(8))。(b)に示すように、連通路105を通り抜けた水は、消音室の底59を流れ(矢印(9))、凹部61に集められ、排気管62から下方に排出される(矢印(10))。
【0041】
次に負圧ポンプ10の摩耗粉の除去作用を説明する。
図15に示すように、ポンプ部(
図5、符号80)には回転体(ベーン88やロータ87)が内蔵され、この回転体が壁に摺接するため、僅かであるが摩耗粉が発生する。この摩耗粉が排気に混じって排気経路104に流れ、さらに連絡通路122に流入する。摩耗粉は、障壁124及び上面部125により、連絡通路122の奥に流れることが阻まれる(矢印(11))。連絡通路122の入口近傍の障壁124を乗り越えた摩耗粉は、連絡経路122が蛇行しているので、途中の障壁124及び上面部125により、奥に流入することが抑制される(矢印(12)、(13))。摩耗粉が除去された空気は、呼吸穴121からモータ軸72近傍に流れ(矢印(14))、モータ(
図7、符号70)内に供給される。排気経路104からモータの呼吸穴121へ連通する間に、連絡経路122が設けられ、呼吸穴121が連絡経路122内で最も高い位置である。呼吸穴121が連絡経路122内で最も高い位置にあるので、モータ70内への水の浸入を防ぐことができる。
【0042】
次に
図10の別態様について説明する。なお、
図10と共通する部分については、符号を流用して説明を省略する。
図16に示すように、カバー体50の内部に内壁63を設け、内壁63とカバー体50の外壁52との空間を消音室53として形成する。連通路131は、カバー体50の内壁63に貫通形成される。カバー体50に連通路131を設けることで、ボディ部30の加工を少なくし、ボディ部30の加工費の低減を図ることができる。
【0043】
次に
図7の別態様について説明する。なお、
図7と共通する部分については、符号を流用して説明を省略する。
図17に示すように、蓋体101にポンプ部80内から収容室51へ排気を流入させる排気出口97、98が設けられる。これらの排気出口97、98からパイプ状の導出管132、133が収容室51内へ延ばされる。ポンプ部80で圧縮された空気は、導出管132、133から排出され、収容室51で急膨張されることで音響エネルギーを消耗する。結果、収容室51でも消音効果の向上を図ることができる。
【0044】
次に
図11の別態様について説明する。なお、
図11と共通する部位については、符号を流用して説明を省略する。
図18に示すように、ボディ部30にて、排気管62に消音室53に延びる延長管部134が設けられる。この延長管部134に複数の微細孔135が設けられる。微細孔135により排気を共鳴させ、消音効果を向上させることができる。
【0045】
以上のように作用する負圧ポンプによれば、次に述べる効果が得られる。
図13に示すように、ボディ部30とカバー体50の少なくとも一方に、排気音を減衰させる消音室53が、収容室51とは別に形成され、ポンプ部80からの排気は、収容室51、この収容室51と消音室53とを結ぶ連通路105、消音室53の順で流され、排気管62を介して外へ排出される。
この構成によれば、ボディ部30とカバー体50の少なくとも一方に消音室53を形成したので、消音室53を負圧ポンプ10に内蔵することができ、消音室53又は消音機能を備える真空ポンプ10であっても小型化が可能なポンプ構造にすることができる。
【0046】
図10に示すように消音室は、ボディ部30とカバー体50の間に設けられ、連通路105は、ボディ部30に設けられている。
この構成によれば、消音室53は別に部品を用いることなくボディ部30とカバー体50の間に設け、連通路105はボディ部50を穴加工するだけで形成されるので、部品点数を増やすことなく消音効果を得られる消音室53を設けることができ、部品コストの低減を図ることができる。
【0047】
図16に示すように、カバー体50の内部に内壁63を設け、内壁63とカバー体50の外壁52との空間を消音室53として形成し、連通路131は、カバー体の内壁63に貫通形成した。カバー体50に消音室53を形成し、カバー体50の内壁63だけに連通路131を貫通形成するので、カバー体50だけの加工で済み、よりコストの低減を図ることができる。
【0048】
図17に示すように、蓋体101に、ポンプ部80内から収容室51内へ排気を流入させる排気出口97、98を設け、この排気出口97、98からパイプ状の導出管132、133を収容室51内へ延ばした。
この構成により、蓋体101にパイプ状の導出管132、133を設けたので、この導出管132、133から出た排気を収容室51内で急膨張させることができ、収容室51でも消音効果を得ることができる。
【0049】
図18に示すように、排気管62に、消音室53へ延びる延長管部134を設け、この延長管部134に、微細孔135を多数設けた。
この構成により、延長管部134に微細孔135を多数設けたので、これらの微細孔135により排気を共鳴させることができ、より消音効果を高くすることができる。
【0050】
尚、実施の形態では負圧ポンプとしてベーンポンプを説明したが、負圧ポンプはベーンポンプに限られるものではない。
さらには、本発明の負圧ポンプは、車両に備えられる負圧ブースタの負圧室内を、負圧にするための車両用の負圧ポンプに好適であるが、用途を格別に限定するものではなく、一般機械用、汎用機械用、一般設備用に適用することは差し支えない。